説明

ポリアセタール樹脂組成物及び摺動部材

【課題】ホルムアルデヒドの放出量が低減されたポリアセタール樹脂組成物及び当該ポリアセタール樹脂組成物を成形することによる得られるホルムアルデヒドの放出量が低減された摺動性に優れた軸受等の摺動部材を提供する。
【解決手段】ポリアセタール樹脂(A)と摺動性改良剤(B)とから成る組成物100重量部に対し、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)0.05〜5重量部、炭素材(D)0.1〜5重量部及び/又は無機物フィラー(E)0.1〜5重量部を配合し、ポリアセタール樹脂組成物とした。また、当該組成物を成形し、摺動部材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形時のホルムアルデヒド臭気や成形品から放出されるホルムアルデヒド量が低減され、かつ摺動性に優れたポリアセタール樹脂組成物及びそれから成形される摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的性質、耐熱性、耐薬品性及び摺動性のバランスに優れ、かつその成形加工性が容易であることから、自動車部品、電気・電子機器部品、一般産業機械部品等に広く使用されている。しかしながら、近年においてはかかる部品における要求特性が高度化、かつ多様化しており、機械的性質や摺動性等の機能向上のみならず、成形品から揮発性有機化合物(VOC)の放出量の低減、すなわちポリアセタール樹脂において熱分解、自己酸化分解、酸及びアルカリによる分解、加水分解等により放出されるホルムアルデヒドの抑制が求められている。
【0003】
また、特に自動車の内装部品や家庭電化製品用部品、または電気・電子機器用部品の分野においては、ホルムアルデヒドを含むVOCの放出量の低減が求められている。
【0004】
ポリアセタール樹脂成形品からホルムアルデヒドの放出量を低減させる方法として、様々な方法が提案されている。例えば、ポリアセタール樹脂に対しヒドラジド化合物を添加することにより、放出されるホルムアルデヒド量を低減可能としたポリアセタール樹脂組成物(特許文献1)が提案されているが、単にヒドラジド化合物を添加するのみでは、ポリアセタール樹脂より放出されるホルムアルデヒド量の低減は達成されるものの熱安定性の充分な改善には至っておらず、また摺動用途においては摺動性を低下させる原因となっている。
【0005】
また、ポリアセタール樹脂に対し、アルカリ又はアルカリ土類金属化合物とヒドラジド誘導体もしくはメラミンとを共添加したポリアセタール樹脂組成物(特許文献2及び特許文献3)が提案されているが、熱安定性の改善は認められるが、ホルムアルデヒド放出量の低減は不充分であるばかりか摺動性を低下させる原因となっている。
【0006】
さらに、ポリアセタール樹脂とpKaが3.6以上のカルボキシ基含有化合物とを含むポリアセタール樹脂組成物(特許文献4)、ポリアセタール樹脂と変性フェノール樹脂(フェノール類と塩基性窒素含有化合物とアルデヒド類との縮合物)とで構成されるポリアセタール樹脂(特許文献5)などが提案されているが、成形品から放出されるホルムアルデヒド量を大きく低減させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−345648号公報
【特許文献2】特開平6−322230号公報
【特許文献3】特開平7−033953号公報
【特許文献4】特開2000−239484号公報
【特許文献5】特開2002−212384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ホルムアルデヒドの放出量が低減されたポリアセタール樹脂組成物及び当該ポリアセタール樹脂組成物を成形することによる得られるホルムアルデヒドの放出量が低減された摺動性に優れた軸受等の摺動部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ポリアセタール樹脂(A)と摺動性改良剤(B)とから成る組成物に対し、所定量の割合のホルムアルデヒド捕捉剤(C)と炭素材(D)及び/又は無機物フィラー(E)を配合して得られたポリアセタール樹脂組成物及び当該ポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる軸受等の摺動部材は、ホルムアルデヒドの放出量を低減することができると共に優れた摺動性を発揮することを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリアセタール樹脂(A)と摺動性改良剤(B)とから成る組成物100重量部に対し、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)0.05〜5重量部、炭素材(D)0.1〜5重量部及び/又は無機物フィラー(E)0.1〜5重量部を配合してなるポリアセタール樹脂組成物である。
【0011】
本発明によるポリアセタール樹脂組成物によれば、成形時のホルムアルデヒドの放出量を低減でき、このポリアセタール樹脂組成物を成形して得られる軸受等の摺動部材から放出されるホルムアルデヒド量を低減することができ、かつ摺動性に優れた軸受等の摺動部材を得ることができる。
【0012】
本発明の好適な形態において、摺動性改良剤(B)はオレフィン系共重合体(B−1)を含み、該オレフィン系共重合体(B−1)は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム30〜70重量%、ビニルアセテート含量が18〜45重量%のエチレン−ビニルアセテート共重合体30〜70重量%及びエチレンと炭素数4〜6のオレフィン−1との共重合体1〜25重量%から成る。
【0013】
この摺動性改良剤(B)としてのオレフィン系共重合体(B−1)は、ポリアセタール樹脂が具有する優れた機械的性質を低下させることなくポリアセタール樹脂に低摩擦性や耐摩耗性などの優れた摺動性を付与するものであり、ポリアセタール樹脂組成物を成形することによって得られる軸受等の摺動部材と相手材との摺動摩擦においては、優れた摺動性を発揮すると共に相手材との摺動摩擦において往々にして生じる摺動摩擦異音(きしみ音)の発生を防止することができる。また、このオレフィン系共重合体(B−1)は、ポリアセタール樹脂組成物の成形時のスクリューへの食込み性を良好にし、結果として優れた成形加工性を与える。
【0014】
この摺動性改良剤(B)としてのポリオレフィン系共重合体(B−1)は、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し、0.3〜10重量部の割合で配合されているのが好ましい。オレフィン系共重合体(B−1)の配合量が0.3重量部未満では、充分な摺動性を付与することができないばかりでなく成形時の成形加工性が得られず、また配合量が10重量部を超えて配合すると、摺動部材としての剛性などの機械的性質を損ねる虞がある。
【0015】
摺動性改良剤(B)として、上記ポリオレフィン系共重合体(B−1)に加えて、追加成分として官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を配合することができる。このスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)は、ポリアセタール樹脂(A)に上記ポリオレフィン系共重合体(B−1)と共に配合されることにより、ポリアセタール樹脂に低摩擦性や耐摩耗性などの摺動性を一層向上させると共に良好な成形加工性を付与するものである。この官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)は、ポリアセタール樹脂100重量部に対し、0.1〜10重量部の割合で配合されて好適である。
【0016】
さらに、摺動性改良剤(B)として、上記ポリオレフィン系共重合体(B−1)に加えて、あるいはポリオレフィン系共重合体(B−1)及び官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)に加えて潤滑油剤(B−3)を配合することができる。この潤滑油剤(B−3)は、常温または少なくとも成形温度において液状である潤滑剤であることが好ましく、特にポリアセタール樹脂組成物を成形することによって得られる摺動部材の摺動性を一層向上させることができる。潤滑油剤(B−3)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜10重量部が好ましい。
【0017】
潤滑油剤(B−3)としては、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、シリンダー油、ギヤ油、パラフィン系オイル等の鉱油;流動パラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の脂肪酸;ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、グリコール類、グリセリン、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール等のアルコール;および前記脂肪酸とアルコールからなるステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリストールテトラステアレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート等の脂肪酸エステル;ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸アミド;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸;モンタンワックス、カルナウバワックス等の天然ワックス;およびポリグリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン等の合成油を広範に使用できる。
【0018】
上記潤滑油剤(B−3)は1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。かかる潤滑油剤(B−3)のうち、取り扱いの容易さ、加工性、摺動性、機械的性質等の点から総合的にみると、パラフィン系オイル、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸エステル及びポリエチレンワックスが好ましい。潤滑油剤(B−3)の配合量が0.1重量部未満では、摺動性の向上に効果がなく、また配合量が10重量部を超えると成形によって得られた摺動部材の機械的性質の低下や表面外観の低下、スクリューへの噛み込み不良等を発生する虞がある。
【0019】
ポリアセタール樹脂組成物において、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)は、ヒドラジド化合物が使用されて好適である。このヒドラジド化合物は、下記一般式(1)で表わされるジカルボン酸ジヒドラジドであり、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン−2酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジドの少なくとも一つが使用される。特に、アジピン酸ジヒドラジド及びセバシン酸ジヒドラジドが好ましい。
NNHCO−R−CONHNH (1)
(式中、Rは炭素数2〜20の炭化水素を表す。)
【0020】
ホルムアルデヒド補足剤(C)としてのヒドラジド化合物は、ポリアセタール樹脂の具有するホルムアルデヒドの放出量を低減させる役割を果たす。
【0021】
ポリアセタール樹脂組成物に配合される炭素材(D)及び/又は無機物フィラー(E)は、ホルムアルデヒド放出量を低減させる共に摺動性を向上させる効果を発揮する。
【0022】
炭素材(D)としては、天然あるいは人造黒鉛(グラファイト)、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブなどの炭素繊維が挙げられ、これらのうちの少なくとも一つが選択されて配合されるのが好ましい。
【0023】
無機物フィラー(E)としては、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩が挙げられ、これらのうちの少なくとも一つが選択されて配合されるのが好ましい。
【0024】
本発明は、前記ポリアセタール樹脂組成物を成形することによって得られる摺動部材も包含する。この摺動部材においては、ホルムアルデヒドの放出量が低減されており、優れた摺動性が発揮される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ポリアセタール樹脂(A)に、摺動性改良剤(B)とホルムアルデヒド捕捉剤(C)と炭素材(D)及び/又は無機物フィラー(E)が所定量の割合で配合されているので、ホルムアルデヒドの放出量が低減されたポリアセタール樹脂組成物及びホルムアルデヒドの放出量が低減されかつ摺動性に優れた摺動部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されない。
【0027】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂(A)と摺動性改良剤(B)を含むポリアセタール樹脂(A)組成物100重量部に対し、ホルムアルデヒド補足剤(C)0.05〜5重量部、炭素材(D)0.1〜5重量部及び/又は無機物フィラー(E)0.1〜5重量部を配合して成るものである。
【0028】
上記ポリアセタール樹脂組成物において、ポリアセタール樹脂(A)は、オキシメチレン基(−CHO−)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、ポリアセタールホモポリマー又はポリオキシメチレンと、オキシメチレン単位とコモノマー単位とを含有するポリアセタールコポリマーが含まれる。本発明においては、ポリアセタールホモポリマー、ポリアセタールコポリマーのいずれも使用することが可能であるが、好ましいのはポリアセタールコポリマーである。
【0029】
ポリアセタール樹脂の分子量(数平均分子量)は、その成形が可能な限り特に制限はないが、20,000〜80,000の範囲である。そして、ASTM−D−1238法によるメルトフローレート(MFR)が測定可能であり、温度190℃、測定荷重2.160gの条件下において測定したMFRが0.1〜100g/minの範囲のものであることが好ましく、1.0〜5.0g/10minのものであることが特に好ましい。
【0030】
ポリアセタール樹脂の具体例としては、分子量50,000〜70,000のポリアセタールホモポリマー(例えば米国デュポン社製の商品名「デルリン」、旭化成工業社製の商品名「テナック4010」など)、分子量50,000のポリアセタールコポリマー(例えばポリプラスチックス社製の商品名「ジュラコン」など)が挙げられる。
【0031】
上記ポリアセタール樹脂に配合される摺動性改良剤(B)は、オレフィン共重合体(B−1)が単独使用されるか、下記で説明する(B−2)及び/または(B−3)成分と併用されるのが好ましい。このオレフィン共重合体(B−1)は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム30〜70重量%、好ましくは45〜50重量%と、ビニル−アセテート含量が18〜45重量%、好ましくは25〜30重量%のエチレン−ビニルアセテート共重合体30〜7重量%と、エチレンと炭素数4〜6のオレフィン−1との共重合体1〜25重量%から成る(ただし、当該3成分の合計は100重量%である。)。オレフィン共重合体(B−1)は、上記のエチレン−プロピレン−ジエンゴムとエチレン−ビニルアセテート共重合体と共重合体の成分を150〜300℃、好ましくは200〜250℃の温度で反応させることにより得られる。
【0032】
摺動性改良剤(B)としてのオレフィン共重合体(B−1)において、エチレン−プロピレン−ジエンゴムとしては、エチレン含有量が45〜80重量%であり、ジエン成分がジシクロペンタジエン、エチリデン−ノルボルネン又は1,4−ヘキサジエンであるエチレン−プロピレン−ジエンゴムが好ましい。エチレン含有量が65〜75重量%で、ジエン成分がジシクロペンタジエンであるエチレン−プロピレン−ジエンゴムが特に好ましい。
【0033】
エチレン−ビニルアセテート共重合体としては、ビニルアセテート含有量が18〜45重量%、好ましくは25〜30重量%であり、メルトインデックスが0.5〜25dg/minのエチレン−ビニルアセテート共重合体が好ましい。ビニルアセテート含有量が25〜30重量%であり、メルトインデックスが7〜11dg/minのエチレン−ビニルアセテート共重合体が特に好ましい。
【0034】
エチレンと炭素数4〜6のオレフィン−1との共重合体としては、エチレン−ブテン−1共重合体またはエチレン−ヘキセン−1共重合体などの分枝オレフィンポリマーが好ましい。
【0035】
上記したオレフィン系共重合体の中のエチレン−ピロピレン−ジエンゴムとエチレン−ビニルアセテート共重合体との配合割合は47〜53/53〜47(重量比)、好ましくは約50/約50(重量比)であるオレフィン共重合体が好ましい。上記3成分から成るオレフィン系共重合体の具体例としては、商品名「BOOSTER」(長瀬産業株式会社販売)が挙げられる。
【0036】
摺動性改良剤(B)としてのオレフィン共重合体(B−1)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し、0.3〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部、好ましくは1〜5重量部である。このオレフィン系共重合体(B−1)の配合量が0.3重量部未満では摺動部材とした時、摺動性が充分発揮されないばかりか、ポリアセタール樹脂の成形加工性の向上に効果が発揮されない虞があり、また配合量が10重量部を超えると摺動部材とした時、該摺動部材の機械的性質が損なわれる虞がある。
【0037】
摺動性改良剤(B)として、上記オレフィン共重合体(B−1)に加えて官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を配合することができる。この官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)の主鎖としては、ハードセグメントがポリスチレンであり、ソフトセグメントがポリブタジエン、ポリイソプレン又はこれらの水素添加ポリマーであるトリブロックコポリマーが好ましい。具体例としては、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、ポリスチレン−ポリ(エチレン・ブチレン)−ポリスチレン及びポリスチレン−ポリ(エチレン・プロピレン)−ポリスチレンが挙げられる。
【0038】
一方、付加される官能基としては、マレイン酸、エンドシス−ジシクロ〔2,2,1〕ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸)、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジメチル、マレイミド、塩化マレニルのグラフトモノマー等が挙げられ、特に、マレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が好ましい。
【0039】
官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)において、スチレン含有量は20〜30重量%、付加された官能基の含有量は0.005〜4.76重量%が好ましい。官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)の具体例としては、商品名「タフテックM」(旭化成工業社製)を例示し得る。「タフテックM」のソフトセグメントはポリブタジエンの水添加ポリマー、官能基はマレイン酸無水物である。
【0040】
この官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜6重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部である。
【0041】
摺動性改良剤(B)として、上記オレフィン系共重合体(B−1)に加えて、あるいはオレフィン系共重合体(B−1)及びスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)に加えて、常温または少なくとも成形加工温度において液状となる潤滑油剤(B−3)を配合することができる。
【0042】
潤滑油剤(B−3)としては、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、シリンダー油、ギヤ油、パラフィン系オイル等の鉱油;流動パラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の脂肪酸;ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、グリコール類、グリセリン、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール等のアルコール;および前記脂肪酸とアルコールからなるステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリストールテトラステアレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート等の脂肪酸エステル;ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸アミド;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸;モンタンワックス、カルナウバワックス等の天然ワックス;およびポリグリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン等の合成油を広範に使用できる。
【0043】
これらの潤滑油剤(B−3)は1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。かかる潤滑油剤(B−3)のうち、取り扱いの容易さ、加工性、摺動性、機械的性質等の点から総合的にみると、パラフィン系オイル、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸エステル及びポリエチレンワックスが好ましい。潤滑油剤(B−3)の配合量は、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲であり、好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0044】
潤滑油剤(B−3)の配合量が0.1重量部未満では、摺動性の向上に効果がなく、また配合量が10重量部を超えると成形によって得られた摺動部材の機械的性質の低下や表面外観の低下、スクリューへの噛み込み不良等を発生する虞がある。
【0045】
本発明のポリアセタール樹脂組成物において、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としては、分子中にヒドラジド基を2個以上有するヒドラジド化合物が使用されるのが好ましい。このヒドラジド化合物は、下記一般式(1)で表わされるジカルボン酸ジヒドラジドが好ましい。
NNHCO−R−CONHNH (1)
(式中、Rは炭素数2〜20の炭化水素を表す。)
中でも、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらジカルボン酸ジヒドラジドの中で好ましいのは、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジドであり、更に好ましいのはアジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドである。
【0046】
ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物は、ポリアセタール樹脂組成物中のホルムアルデヒドと化学反応により該ホルムアルデヒドを分解して他の物質に変換することによりホルムアルデヒドの放出量を低減させる作用をなす。そして、ヒドラジド化合物の配合量は、前記ポリアセタール樹脂(A)と摺動性改良剤(B)とから成る組成物100重量部に対し、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。これらヒドラジド化合物は1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ヒドラジド化合物の配合量が0.05重量部未満では加熱により発生したホルムアルデヒドの捕捉作用が充分でなく、また配合量が5重量部を超えると摺動部材としての 摺動性の低下を招く虞がある。またヒドラジド化合物の融点は160℃以上が好ましく、より好ましくは170℃以上である。
【0047】
ポリアセタール樹脂組成物に配合される炭素材(D)及び/又は無機物フィラー(E)は、ホルムアルデヒドの放出量を低減させる共に摺動性を向上させる効果を発揮する。この炭素材(D)及び/又は無機物フィラー(E)の配合によるホルムアルデヒド放出量の低減効果は詳らかではないが、本発明者らは次のように推察する。炭素材(D)及び/又は無機物フィラー(E)として、粒子サイズが微小で、かつ表面が物理吸着し易い、例えば多孔質、層状、粗面などの形態を有する炭素材(D)及び/又は無機物フィラー(E)を使用することにより、ホルムアルデヒドと物理的に吸着して組成物中に均一に分散されるため、前記ホルムアルデヒトとヒドラジド化合物の化学反応によるホルムアルデヒドの放出量の低減と相俟ってホルムアルデヒドの放出量の低減に効果を発揮するためであると推察する。
【0048】
炭素材(D)としては、天然あるいは人造黒鉛(グラファイト)、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、カーボンナノファイバーまたはカーボンナノチューブなどの炭素繊維が挙げられる。天然黒鉛としては平均粒径2.5μmの土状黒鉛が、また人造黒鉛としては平均粒径6μmの板状の人造黒鉛が使用されて好適である。カーボンブラックとしては、上記の他に一次粒子径が約200nm未満、好ましくは10nm〜100nm、DBP吸油量が100ml/100g以上、好ましくは300ml/100g以上、中空構造を有して一種のポーラス構造となっていて、さらに適度のチェーンストラクチャーを有している、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製の「ケッチェンブラックEC(商品名)」、「ケッチェンブラックEC−600JD(商品名)」が好ましい。これら炭素材(D)は1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これら炭素材(D)の配合量は、前記ポリアセタール樹脂(A)と摺動性改良剤(B)とから成る樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜5重量部である。
【0049】
無機物フィラー(E)としては、酸化ケイ素(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)などの金属水酸化物、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、炭酸リチウム(LiCO3)などの炭酸塩、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ネフェリンサイナイト、クリストバライト、ウォラストナイト(珪酸カルシウム)などのケイ酸塩が挙げられる。これら無機物フィラー(E)は1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これら無機物フィラー(E)の配合量は、前記ポリアセタール樹脂(A)と摺動性改良剤(B)とから成る樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜5重量部である。
【0050】
上記したポリアセタール樹脂組成物は、従来のポリアセタール樹脂の成形方法として一般に用いられている公知の方法により容易に成形することができる。例えば、各成分をそれぞれ計量し混合機によって混合して混合物(組成物)を作製し、この混合物を射出成形機もしくは押出成形機に供給して所望の形状の成形物(摺動部材)を成形する方法、あるいは混合物を一軸または二軸の押出機により溶融混練し、紐状の成形物に成形したのち裁断してペレットを作製し、そのペレットを成形原料として射出成形機あるいは押出成形機により成形する方法が採られる。
【0051】
本発明の摺動部材は、上記したポリアセタール樹脂組成物を射出成形機あるいは押出成形機により容易に製造される。本発明によれば、ホルムアルデヒドの放出量が低減されたポリアセタール樹脂組成物及びホルムアルデヒドの放出量が低減されかつ摺動性に優れ、成形加工性に優れた摺動部材を得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
摺動性改良剤(B)の作製
摺動性改良剤(B)としてのオレフィン共重合体(B−1)を次のようにして作製した。エチレン含有量が70重量%でジシクロペンタジエンをジエン成分とするエチレン−プロピレン−ジエンゴム(住友化学工業社製「エスプレンEDPM301(商品名)」)45重量部と、ビニルアセテート含有量が28重量%のエチレン−ビニルアセテート共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製「エバフレックスEV260(商品名)」)45重量部と、低密度ポリエチレンとヘキセン−1の共重合体(エクソン社製「ESCORENE LL−3201(商品名)」)10重量部とをスクリュー型押出機に投入し、200℃の温度で溶融混練して反応を行ったのち、ペレット化して摺動性改良剤(B)としてのオレフィン系共重合体(B−1)を作製した。
【0054】
実施例1
ポリアセタール樹脂(A)として、オキシメチレン単位とコモノマー単位とを含有し、分子量50,000のポリアセタールコポリマー(ポリプラスチック社製「ジュラコンM90(商品名)」で、以下、ポリアセタール樹脂(A)という。)を準備し、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対して、摺動性改良剤(B)として前記オレフィン系共重合体(B−1)を1.1重量部配合し、高速ミキサーで撹拌して該ポリアセタール樹脂(A)とオレフィン系共重合体(B−1)との混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物としてアジピン酸ジヒドラジド0.5重量部及び炭素材(D)として平均粒径2.5μmの土状黒鉛(天然黒鉛)0.2重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.91重量部、オレフィン系共重合体1.09重量部、アジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、土状黒鉛0.2重量部)を得た。
【0055】
この混合物(2)を二軸ベント式押出機に供給し、溶融混練して紐状の成形物に成形したのち裁断してペレットを作製し、このペレットを成形材料とした。次いで、この成形材料を、スクリュー型射出成形機(住友重機械社製、SG50、スクリュー径25mm)を用いて射出成形し、内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0056】
実施例2
前記実施例1と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例1で使用したアジピン酸ジヒドラジドと同様のアジピン酸ジヒドラジド0.5重量部及び炭素材(D)としてカーボンブラック(一次粒子径が10nm〜100nmのケッチェン・ブラック・インターナショナル社製の「ケッチェンブラックEC(商品名)」)0.4重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.91重量部、オレフィン系共重合体1.09重量部、アジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、ケッチェンブラック0.4重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0057】
実施例3
前記実施例1と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物としてセバシン酸ジヒドラジド0.5重量部及び炭素材(D)として前記実施例1で使用した土状黒鉛(天然黒鉛)と同様の土状黒鉛(天然黒鉛)0.2重量部と前記実施例2で使用したカーボンブラックと同様のカーボンブラック0.4重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.91重量部、オレフィン系共重合体1.09重量部、セバシン酸ジヒドラジド0.5重量部、土状黒鉛0.2重量部、ケッチェンブラック0.4重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0058】
実施例4
前記実施例1と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例3で使用したセバシン酸ジヒドラジドと同様のセバシン酸ジヒドラジド0.5重量部及び無機物フィラー(E)として比表面積が5m/gを呈するクレー0.1重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.91重量部、オレフィン系共重合体1.09重量部、セバシン酸ジヒドラジド0.5重量部、クレー0.1重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0059】
実施例5
前記実施例1と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1 重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例3で使用したセバシン酸ジヒドラジドと同様のセバシン酸ジヒドラジド0.5重量部、炭素材(D)として前記実施例2で使用したカーボンブラックと同様のカーボンブラック0.4重量部及び無機物フィラー(E)として平均粒径1〜10μmの炭酸ストロンチウム0.1重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.91重量部、オレフィン系共重合体1.09重量部、セバシン酸ジヒドラジド0.5重量部、カーボンブラック0.4重量部、炭酸ストロンチウム0.1重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0060】
実施例6
前記実施例2で得た混合物(1)に追加成分として潤滑油剤(B−3)としての合成潤滑油(三井化学社製「ルーカント(商品名)」)1重量部配合し、高速ミキサーで撹拌して該ポリアセタール樹脂(A)とオレフィン系共重合体(B−1)と潤滑油剤(B−3)との混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及び合成潤滑油1重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例1で使用したアジピン酸ジヒドラジドと同様のアジピン酸ジヒドラジド0.5重量部及び炭素材(D)として実施例2で使用したカーボンブラックと同様のカーボンブラック0.4重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂97.94重量部、オレフィン系共重合体1.08重量部、合成潤滑油0.98重量部、アジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、カーボンブラック0.4重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0061】
実施例7
前記実施例1と同様のポリアセタール樹脂(A)を準備し、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し、摺動性改良剤(B)として前記実施例1で使用したオレフィン系共重合体と同様のオレフィン系共重合体(B−1)1.1重量部及び官能基として無水マレイン酸が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)(旭化成工業社製「タフテックM(商品名)」)0.5重量部を配合し、高速ミキサーで撹拌してポリアセタール樹脂(A)とオレフィン系共重合体(B−1)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)との混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及びスチレン系エラストマー0.5重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例3で使用したセバシン酸ジヒドラジドと同様のセバシン酸ジヒドラジド0.5重量部及び炭素材(D)として前記実施例1で使用した土状黒鉛と同様の土状黒鉛0.2重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.43重量部、オレフィン系共重合体1.08重量部、スチレン系エラストマー0.49重量部、セバシン酸ジヒドラジド0.5重量部、土状黒鉛0.2重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0062】
実施例8
前記実施例7と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及びスチレン系熱可塑性エラストマー0.5重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例3で使用したセバシン酸ジヒドラジドと同様のセバシン酸ジヒドラジド0.5重量部及び炭素材(D)として前記実施例2で使用したカーボンブラックと同様のカーボンブラック0.4重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.43重量部、オレフィン系共重合体1.08重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー0.49重量部、セバシン酸ジヒドラジド0.5重量部、カーボンブラック0.4重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0063】
実施例9
前記実施例7と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及びスチレン系熱可塑性エラストマー0.5重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例3で使用したセバシン酸ジヒドラジドと同様のセバシン酸ジヒドラジド0.5重量部及び炭素材(D)として前記実施例1で使用した土状黒鉛と同様の土状黒鉛0.2重量部と前記実施例2で使用したカーボンブラックと同様のカーボンブラック0.4重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.43重量部、オレフィン系共重合体1.08重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー0.49重量部、セバシン酸ジヒドラジド0.5重量部、土状黒鉛0.2重量部、カーボンブラック0.4重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0064】
実施例10
前記実施例7と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及びスチレン系熱可塑性エラストマー0.5重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例1で使用したアジピン酸ジヒドラジドと同様のアジピン酸ジヒドラジド0.5重量部及び無機物フィラー(E)として前記実施例4で使用したクレーと同様のクレー0.1重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.43重量部、オレフィン系共重合体1.08重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー0.49重量部、アジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、クレー0.1重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0065】
実施例11
前記実施例7と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及びスチレン系熱可塑性エラストマー0.5重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例1で使用したアジピン酸ジヒドラジドと同様のアジピン酸ジヒドラジド0.5重量部及び無機物フィラー(E)として酸化ケイ素0.1重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.43重量部、オレフィン系共重合体1.08重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー0.49重量部、アジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、酸化ケイ素0.1重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0066】
実施例12
前記実施例7と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及びスチレン系熱可塑性エラストマー0.5重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例1で使用したアジピン酸ジヒドラジドと同様のアジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、炭素材(D)として前記実施例2で使用したカーボンブラック同様のカーボンブラック0.4重量部及び無機物フィラーとして前記実施例4で使用したクレーと同様のクレー0.1重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.43重量部、オレフィン系共重合体1.08重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー0.49重量部、アジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、カーボンブラック0.4重量部、クレー0.1重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0067】
実施例13
前記実施例7と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及びスチレン系熱可塑性エラストマー0.5重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例1で使用したアジピン酸ジヒドラジドと同様のアジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、炭素材(D)として前記実施例2で使用したカーボンブラックと同様のカーボンブラック0.4重量部及び無機物フィラーとして平均粒径1〜5μmの炭酸カルシウム0.1重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂98.43重量部、オレフィン系共重合体1.08重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー0.49重量部、アジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、カーボンブラック0.4重量部、炭酸カルシウム0.1重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0068】
実施例14
前記実施例7と同様の混合物(1)に追加成分として前記実施例6で使用した潤滑油剤と同様の潤滑油剤(B−3)としての合成潤滑油を1重量部配合し、高速ミキサーで撹拌して該ポリアセタール樹脂(A)とオレフィン系共重合体(B−1)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)と潤滑油剤(B−3)の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー0.5重量部及び合成潤滑油1重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例3で使用したセバシン酸ジヒドラジドと同様のセバシン酸ジヒドラジド0.5重量部及び炭素材(D)として前記実施例2で使用したカーボンブラックと同様のカーボンブラック0.4重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂97.47重量部、オレフィン系共重合体1.07重量部、スチレン系エラストマー0.49重量部、合成潤滑油0.97重量部、セバシン酸ジヒドラジド0.5重量部、カーボンブラック0.4重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0069】
実施例15
前記実施例14と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部、スチレン系エラストマー0.5重量部及び合成潤滑油1重量部)を得た。この混合物(1)100重量部に、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)としてのヒドラジド化合物として前記実施例1で使用したアジピン酸ジヒドラジドと同様のアジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、炭素材(D)として前記実施例2で使用したカーボンブラックと同様のカーボンブラック0.4重量部及び無機物フィラー(E)として前記実施例4で使用したクレーと同様のクレー0.1重量部を配合し、高速ミキサーにて撹拌して混合物(2)(ポリアセタール樹脂97.47重量部、オレフィン系共重合体1.07重量部、スチレン系エラストマー0.49重量部、合成潤滑油0.97重量部、アジピン酸ジヒドラジド0.5重量部、ケッチェンブラック0.4重量部、クレー0.1重量部)を得た。以下、前記実施例1と同様の方法で内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。また、同じ成形材料を使用し、かつ同じスクリュー型射出成形機を用いて射出成形し、ホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0070】
比較例1
前記実施例1と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部)を得た。この混合物(1)を二軸ベント式押出機に供給し、溶融混練して紐状の成形物に成形したのち裁断してペレットを作製し、このペレットを成形材料とした。次いで、この成形材料を前記実施例と同様にして射出成形し、内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。成形材料を同様の方法で射出成形してホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0071】
比較例2
前記実施例7と同様の混合物(1)(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及びスチレン系熱可塑性エラストマー0.5重量部)を得た。この混合物(1)を二軸ベント式押出機に供給し、溶融混練して紐状の成形物に成形したのち裁断してペレットを作製し、このペレットを成形材料とした。次いで、この成形材料を前記実施例と同様にして射出成形し、内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmの円筒状摺動部材を得た。成形材料を同様の方法で射出成形してホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0072】
比較例3
前記実施例6で使用した混合物(1)と同様の混合物(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部及び合成潤滑油1重量部)を得た。この混合物を二軸ベント式押出機に供給し、溶融混練して紐状の成形物に成形したのち裁断してペレットを作製し、このペレットを成形材料とした。次いで、この成形材料を前記実施例1と同様にして射出成形し、内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmに円筒状摺動部材を得た。また、この成形材料を同様の方法で射出成形してホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0073】
比較例4
前記実施例14で使用した混合物(1)と同様の混合物(ポリアセタール樹脂100重量部、オレフィン系共重合体1.1重量部、スチレン系熱可塑性エラストマー0.5重量部及び合成潤滑油1重量部)を得た。この混合物を二軸ベント式押出機に供給し、溶融混練して紐状の成形物に成形したのち裁断してペレットを作製し、このペレットを成形材料とした。次いで、この成形材料を前記実施例1と同様にして射出成形し、内径20mm、外径25.6mm、長さ15mmに円筒状摺動部材を得た。また、この成形材料を同様の方法で射出成形してホルムアルデヒド放出量の測定用試料として、一辺が30mm、厚さ3mmの方形状試験片を10個得た。
【0074】
次に、前記実施例1ないし実施例15及び比較例1ないし比較例4で得た円筒状摺動部材について、鈴木式摩擦摩耗試験機を用いて、表1に示す試験条件で摺動性(摩擦係数及び摩耗量)の評価を行った。その結果を表2ないし表5に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
また、方形状試験片を使用してホルムアルデヒドの放出量を次の測定方法にて測定した。
<測定方法>
上記各実施例及び比較例にて作製した一辺が30mm、厚さ3mmの10個の方形状試験片を、成形後1時間室温(25℃)に放置した後、無作為に3個取り出し、それぞれポリエチレン製袋に入れて14日間保管する。14日間経過後、各試験片を取り出すと共に、各試験片の端面から約0.1gの片を切り出し、この片を10リットルのデシケータ内に挿入する。デシケータを65℃の温度に加温された乾燥炉内に入れ、2時間放置した後、デシケータを乾燥炉から取り出し1時間大気中で放冷する。デシケータに検知器(理研計器社製FP−30)を取り付け、デシケータ中のガスを0.33L/minの速度で該検出器に吸収させ、濃度(ppm)を測定する。測定した濃度よりホルムアルデヒドの重量に換算し、ホルムアルデヒド濃度(μg/g)を求める。表2ないし表5のホルムアルデヒド放出量は、3個の試料を測定した平均値を示した。
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
上記試験結果から、実施例1ないし実施例15のポリアセタール樹脂組成物を成形して得た摺動部材は、ホルムアルデヒドの放出量(濃度)が比較例1ないし比較例4のポリアセタール樹脂組成物を成形して得た摺動部材よりも少なく、摺動性についてもほぼ同等の性能を示したことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ホルムアルデヒドの放出量を低減させることができ、該組成物を成形して得られる軸受等の摺動部材もまたホルムアルデヒドの放出量を低減させることができると共に摺動性に優れているものである。
【0083】
本発明は上述のとおり、成形品である軸受等の摺動部材から放出されるホルムアルデヒド量を低減したポリアセタール樹脂組成物及びその成形品である軸受等の摺動部材を提供するものである。本発明のポリアセタール樹脂組成物及び軸受等の摺動部材は、ホルムアルデヒドの放出量の低減が要求される自動車の内装部品や家庭電化製品用部品、または電気・電子機器用部品の分野に利用でき、これにより優れた性能、効果を発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂(A)と摺動性改良剤(B)とから成る組成物100重量部に対し、ホルムアルデヒド捕捉剤(C)0.05〜5重量部、炭素材(D)0.1〜5重量%及び/又は無機物フィラー(E)0.1〜5重量%を配合して成るポリアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
摺動性改良剤(B)は、オレフィン系共重合体(B−1)からなる請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
オレフィン系共重合体(B−1)は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム30〜70重量%、ビニルアセテート含量が18〜45重量%のエチレン−ビニルアセテート共重合体30〜70重量%及びエチレンと炭素数4〜6のオレフィン−1との共重合体1〜25重量%からなる請求項2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
摺動性改良剤(B)としてのオレフィン系共重合体(B−1)は、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し、0.3〜10重量部の割合で配合される請求項1から3のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項5】
摺動性改良剤(B)は、追加成分として官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を含む請求項1から4のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項6】
官能基が付加されたスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)は、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜10重量部の割合で配合される請求項5に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項7】
摺動性改良剤(B)は、さらに追加成分として潤滑油剤(B−3)を含む請求項1から6のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項8】
潤滑油剤(B−3)は、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜10重量部の割合で配合される請求項7に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項9】
ホルムアルデヒド捕捉剤(C)は、ヒドラジド化合物である請求項1から8のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項10】
ヒドラジド化合物は、下記一般式(1)で表わされるジカルボン酸ジヒドラジドである請求項1から9のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
NNHCO−R−CONHNH (1)
(式中、Rは炭素数2〜20の炭化水素を表す。)
【請求項11】
ヒドラジド化合物は、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン−2酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジドの少なくとも一つが選択されて配合される請求項9または10に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項12】
炭素材(D)は、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンナノファイバーの少なくとも一つが選択されて配合される請求項1から11のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項13】
無機物フィラー(E)は、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩の少なくとも一つが選択されて配合される請求項1から12のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂組成物を成形してなる摺動部材。

【公開番号】特開2010−270203(P2010−270203A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122063(P2009−122063)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】