説明

ポリアセタール組成物およびその組成物から作製される成形物

【課題】ホルムアルデヒド放散を低減するための、金属塩の混合物と共にポリアセタール樹脂を含有するポリマー組成物を提供する。
【解決手段】一実施形態において、金属塩の混合物は、ポリカルボン酸の金属塩と混ぜ合わせた脂肪酸の金属塩を含む。脂肪酸の金属塩はプロピオン酸カルシウムを含むことができ、ポリカルボン酸の金属塩はクエン酸カルシウムを含むことができる。これら金属塩は、特に組成物がアクリルポリマー粒子などの低光沢添加剤を含有する場合、ホルムアルデヒド放散を低減することが判明した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にポリアセタール樹脂を含有するポリマー組成物に、またこの組成物から作製される成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリオキシメチレン(POM)と称されるポリアセタールポリマーは、様々な用途において並外れて有用なエンジニアリング材料として確立されてきている。例えば、自動車産業や電気産業用の部品などの成形部品を構築する際に、POMが広く使用される。POMは、例えば、優れた機械的特性、優れた疲労抵抗、優れた耐摩耗性、優れた耐薬品性および優れた成形性を有する。
【0003】
ポリアセタール樹脂は多くの有用な特性を有するが、これらのポリマーは加熱した場合に劣化する傾向があり、酸化雰囲気中または酸性もしくはアルカリ性環境において本質的に不安定である。特に、ポリアセタール樹脂は、加工中に、またポリマーを部品に成形した後にホルムアルデヒドを放出する傾向がある。ホルムアルデヒドは汚染物質であるだけでなく、ポリマーと結合して配置され得る金属成分に悪影響を及ぼす恐れがある。例えば、ホルムアルデヒドは容易に酸化してギ酸となり、このギ酸が金属を腐食し、または変色を生じさせることがある。
【0004】
上記に鑑み、劣化を抑制するために、ポリアセタールポリマーを含有する組成物を成形する際に様々な安定剤を使用することが、当業者により提案されてきた。例えば、特開平8−208946号公報(特許文献1)に、特開昭60−90250号公報(特許文献2)に、特開平7−173368号公報(特許文献3)に、また特開平7−331028号公報(特許文献4)に様々な安定剤が開示されている。過去に提案されてきた様々な安定剤として、例えば、ジシアンジアミドまたはアミノ置換トリアジン化合物などの窒素含有化合物が挙げられる。
【0005】
一般的に、メラミン、ベンゾグアナミン、ヒドラジンなど上述の安定剤を使用することにより、低ホルムアルデヒド放散の性能を実現することにいくらか成功している。しかしながら、一部の用途においては、低光沢またはマット仕上げを有するポリアセタールポリマーから品物および部品を製造することが望ましい。したがって、これらの実施形態においては、ポリマー組成物に低光沢添加剤を添加することができる。しかしながら、表面光沢を低減するために低光沢添加剤を添加すると、上記安定剤が存在する場合でさえホルムアルデヒド放散が著しく増大することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−208946号公報
【特許文献2】特開昭60−90250号公報
【特許文献3】特開平7−173368号公報
【特許文献4】特開平7−331028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、ポリアセタール樹脂を含有するポリマー配合物においてホルムアルデヒド放散を低減するにあたって、さらなる改善が依然として必要である。特に、ホルムアルデヒド放散が低減された低光沢製品をもたらすポリアセタール樹脂を含有するポリマー組成物に関する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、本開示は、主にポリアセタール樹脂を含有するポリマー組成物に、またこの組成物から作製される成形物を対象とする。本開示のポリマー組成物は特に、溶融加工時に、また製品を成形した後にホルムアルデヒド放散を阻止および/または低減するように調合される。一実施形態においては、例えば、非常に低いホルムアルデヒド放散レベルで低光沢品が製造されるように、本開示のポリマー組成物を調合する。
【0009】
例えば、一実施形態においては、本開示は成形物を対象とする。この成形物は、光沢計を用いて角度60°で測定した場合に光沢が約10光沢単位未満である外表面を有し、特に、光沢計を用いて角度60°で測定した場合に約6光沢単位未満である光沢を有することができるポリマー品を含むことができる。このポリマー品は、ポリオキシメチレンポリマーなどのポリアセタール樹脂を含有するポリマー組成物から形成する。ポリアセタール樹脂は、少なくとも約60重量%の量で組成物中に存在することができ、例えば約60重量%から約95重量%までなどの量で組成物中に存在することができる。本開示に従って、ホルムアルデヒド放散を減少させるために、ポリアセタール樹脂を少なくとも2種の金属塩と組み合わせる。第1の金属塩は脂肪酸の金属塩であり、第2の金属塩はポリカルボン酸の金属塩である。これら金属塩は、約15ppm未満のホルムアルデヒド放散を組成物が示すために十分な量で組成物中に存在し、例えば約10ppm未満、さらには約5ppm未満などのホルムアルデヒド放散を組成物が示すために十分な量で組成物中に存在する。Kraftfahrwesen e.V.(1994年7月)によって文書に記されたように、VDA275(ドイツ自動車工業会推奨(German Automotive Industry Recommendation)No.275)に従って、ホルムアルデヒド放散を測定する。
【0010】
脂肪酸の金属塩は、約3個から約20個までの炭素原子を含有する炭素鎖を有する脂肪酸の金属塩を含むことができる。脂肪酸の金属塩は、アルカリ土類金属塩を含むことができる。一実施形態においては、脂肪酸の金属塩はジカルボン酸の金属塩を含むことができる。特定の例としては、プロピオン酸塩の金属塩および/またはステアリン酸塩の金属塩が挙げられる。例えば、一実施形態においては、脂肪酸の金属塩は、プロピオン酸カルシウムおよび/または12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムを含むことができる。
【0011】
ポリカルボン酸の金属塩は、脂肪酸の金属塩とは異なる。ポリカルボン酸の金属塩は、例えば、トリカルボン酸の金属塩を含むことができる。ポリカルボン酸の金属塩は、アルカリ土類金属塩を含むことができる。特定の一実施形態においては、ポリカルボン酸の金属塩はクエン酸カルシウムを含むことができる。
【0012】
上記金属塩は、一般的には約2重量%未満の量で、例えば約0.1重量%から約1重量%までなどの量で、組成物中に存在することができる。一実施形態においては、金属塩は約0.05重量%から約0.5重量%の量で存在する。
【0013】
低光沢またはマット仕上げを有する成形物を製造するために、この組成物は低光沢添加剤を含有することができる。低光沢添加剤は、ポリマー粒子などの粒子を含むことができる。過去に、低光沢添加剤が、ホルムアルデヒド放散を増大させる傾向があることは分かっていた。しかしながら、上記金属塩は、この作用を相殺することが判明した。本開示に従って使用することができる低光沢添加剤として、酸化亜鉛などの金属塩、ポリテトラフルオロエチレン粒子、アクリルポリマー粒子が挙げられる。
【0014】
一般に、本開示の組成物には任意の適切なポリアセタール樹脂を組み込むことができる。一実施形態においては、ポリアセタール樹脂の初期ホルムアルデヒド含有量は、約1,000ppm未満でよく、例えば、約20ppmから約500ppmまでなど、約20ppmから約250ppmまでなど、約20ppmから約150ppmなどである。
【0015】
一実施形態においては、ホルムアルデヒド放散をさらに低減するために、窒素化合物などのホルムアルデヒド捕捉剤を他の成分と組み合わせることもできる。この点に関して、窒素含有化合物が存在すると、ホルムアルデヒド放散のさらなる低減が可能となることがある。窒素含有化合物は、例えば、アミノ置換炭素原子またはカルボニル基に隣接する窒素原子を少なくとも1個有する複素環化合物を含むことができる。例えば、使用することができる窒素含有化合物の例として、アミノ置換トリアジンが挙げられる。特定の一実施形態においては、窒素含有化合物は、ベンゾグアナミンなどのグアナミンを含むことができる。
【0016】
存在する場合、ホルムアルデヒド捕捉剤は、一般的には2重量%未満の量で組成物中に存在することができ、例えば、約0.01重量%から約2重量%までなど、約0.05重量%から約0.5重量%までなどの量で組成物中に存在することができる。ホルムアルデヒド捕捉剤は、例えば、成形品を製造する場合に、この材料がプレートアウトしたり、表面欠陥が生成されたりすることのないような量で添加すべきである。初期のホルムアルデヒド含有量が比較的少ない(約20ppmから、約1000ppm未満まで、例えば500ppm未満など)ポリアセタール樹脂と共にホルムアルデヒド捕捉剤を少量使用することによって、ホルムアルデヒド捕捉剤を、結果として生じる組成物内に完全に分散させることができ、成形部品の形成時に組成物中に可溶化させることさえできる。この点について、一実施形態においては、ホルムアルデヒド捕捉剤が、結果として生じる製品内で認識される粒径を有していなくてもよい。
【0017】
様々な他の成分および材料を組成物中に含有させることもできる。例えば、組成物は1種または複数種の潤滑剤、核形成剤(nucleant)、1種または複数種の顔料、1種または複数種の安定剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0018】
一実施形態においては、組成物は1種または複数種の光安定剤を含有することができる。光安定剤は、一実施形態において、紫外線にさらされた場合に成形物に安定性を付与することができる。使用することができる光安定剤として、ヒンダードアミン光安定剤と、1種または複数種のフェノール安定剤とが挙げられる。
【0019】
本開示に従って作製されるポリマー組成物は、数多くの用途において使用することができる。例えば、一実施形態においては、あらゆる業種用の様々な成形部品を形成するために、この組成物を使用することができる。特定の一実施形態においては、例えば、自動車部品を製造する際にこの組成物を使用することができる。
他の特徴および態様を以下により詳細に論じる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本考察は例示的な諸実施形態についての説明にすぎず、本開示のより広範な態様を限定することを目的としないことが、当業者には理解されよう。
【0021】
一般に、本開示は、ポリアセタールポリマー組成物を、またホルムアルデヒド放散の低減を示すそれら組成物から作製される成形物を対象とする。一実施形態においては、低光沢またはマット(艶消し)仕上げを有する製品を製造するために、このポリアセタールポリマー組成物を調合する。過去には、光沢を下げるためにポリアセタール組成物に取り込まれた添加剤が、ホルムアルデヒド捕捉剤の存在下でさえホルムアルデヒド放散を増大させる傾向があった。本開示に従って、任意の低光沢添加剤の作用を相殺するために、組成物に金属塩の混合物(ブレンド)を混合する。しかしながら、ホルムアルデヒド放散を低減するために他の用途(低光沢用途に加えて)において、この金属塩の混合物を使用することができることを理解されたい。
【0022】
本開示による調合組成物においてポリアセタール樹脂と混合される金属塩の混合物は、少なくとも2種の異なる金属塩の組合せを含む。第1の金属塩は、例えば、脂肪酸の金属塩を含むことができ、特に脂肪酸のアルカリ土類金属塩を含むことができる。脂肪酸は、一般的に約3個の炭素原子から約20個の炭素原子までの炭素鎖を含有することができる。この脂肪酸は、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を含むことができる。
【0023】
一実施形態においては、この脂肪酸の金属塩は、プロピオン酸、ステアリン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等の金属塩を含むことができる。特定の一実施形態においては、脂肪酸の金属塩は、プロピオン酸カルシウムおよび/または12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムを含むことができる。上記カルシウム塩は共に、ジカルボン酸の塩である。
【0024】
この脂肪酸の金属塩は、別の異なる上記脂肪酸の金属塩と同一ではないポリカルボン酸の金属塩と混合することができる。このポリカルボン酸の金属塩は、アルカリ土類金属塩を含むこともできる。一実施形態においては、ポリカルボン酸の金属塩はトリカルボン酸の金属塩を含むことができる。例えば、一実施形態においては、ポリカルボン酸の金属塩はクエン酸カルシウムを含むことができる。
【0025】
ホルムアルデヒド放散を低減するために、金属塩は、比較的少ない量で調合物中に存在することができる。例えば、各金属塩を組成物中に約0.01重量%から約2重量%までの量で含有させることができ、例えば約0.5重量%から約1重量%までとすることができる。特定の一実施形態においては、例えば、各金属塩は約0.1重量%の量で存在することができる。
【0026】
上記金属塩の組合せは、公知のホルムアルデヒド捕捉剤の存在下でさえホルムアルデヒド放散を増大させることで知られている1種または複数種の低光沢添加剤を調合物が含有する場合であっても、ポリアセタールポリマーからのホルムアルデヒド放散を低減することができる。例えば、約10ppm未満など、約5ppm未満など、さらには約3ppm未満などといった、約15ppm未満のVDA275に従うホルムアルデヒド放散を示す、ポリアセタールポリマーを含有するポリマー組成物を本開示に従って生成することができる。ポリアセタールポリマー組成物のホルムアルデヒド放散は、実質的にゼロであっても、または一部の実施形態においては約1ppmを超えていてもよい。
【0027】
この金属塩の組合せなしでは、ポリアセタールポリマーを低光沢添加剤と組み合わせる実施形態において、1種または複数種のホルムアルデヒド捕捉剤を含有する場合であっても、組成物が100ppmを超えるホルムアルデヒド放散を示すことがある。プロピオン酸カルシウムなど、単一の金属塩を調合物に含めると、40%を超えて、例えば50%を超えて、さらには60%を超えて、ホルムアルデヒド放散を低減することができる。しかしながら、ポリカルボン酸の金属塩をさらに添加すると、相乗的にホルムアルデヒド放散が15ppmをはるかに下回るまで低減することが判明した。
【0028】
本開示に従って作製されるポリマー組成物が、主にポリアセタール樹脂で構成されるポリマーマトリックス(母材)を含み、このポリアセタール樹脂は一般にポリオキシメチレンポリマーとも称される。一般に、本開示に従って任意の適切なポリアセタール樹脂を使用することができる。特定の一実施形態においては、比較的少量のホルムアルデヒド含有量を含有するポリアセタール樹脂を使用する。例えば、ポリアセタール樹脂の初期ホルムアルデヒド含有量は、約1,000ppm未満でよく、例えば約20ppmから約500ppmまでなどである。例えば、ポリアセタール樹脂は、約20ppmから約250ppmまでの量で、例えば約20ppmから約150ppmまでの量で、ホルムアルデヒドを含有することができる。
【0029】
ポリアセタール樹脂は、ホモポリマーまたはコポリマーを含むことができ、またエンドキャップ(end cap)を含むことができる。ホモポリマーは、カチオン性またはアニオン性で開始することができる、ホルムアルデヒドまたはトリオキサンの重合を行うことによって得ることができる。これらホモポリマーは、ポリマー鎖中に主にオキシメチレン単位を含有することができる。一方、ポリアセタールコポリマーは、側方のオキシメチレン単位に沿ってオキシアルキレン単位を含有することができる。オキシアルキレン単位は、例えば、約2個から約8個の炭素単位を含有することができ、また直鎖状であっても、または分岐していてもよい。一実施形態においては、ホモポリマーまたはコポリマーは、エステル化による劣化またはエーテル化による劣化に耐えるよう化学的に安定化させたヒドロキシ末端基を有することができる。
【0030】
上述のように、ホモポリマーは一般的に、好ましくは適切な触媒の存在下でホルムアルデヒドまたはトリオキサンを重合させることによって調製する。特に適切な触媒の例が、三フッ化ホウ素およびトリフルオロメタンスルホン酸である。
【0031】
ポリオキシメチレンコポリマーは、−CHO−繰り返し単位に沿って、下記式の繰り返し単位を最大50mol%、例えば0.1mol%から20mol%まで、特に0.5mol%から10mol%まで、含有することができる:
【0032】
【化1】

【0033】
式中、互いに独立したR〜Rは水素原子、C〜Cアルキル基、または炭素数1〜4のハロ置換アルキル基であり、Rは−CH−、−O−CH−、あるいはC〜CアルキルもしくはC〜Cハロアルキル置換メチレン基、または対応するオキシメチレン基であり、nは0〜3である。
【0034】
これらの基は、環状エーテルの開環によってコポリマーに有利に導入することができる。好ましい環状エーテルが下記式の環状エーテルである:
【0035】
【化2】

【0036】
式中、R〜Rおよびnは上述の通りである。
【0037】
例として言及することができる環状エーテルは、エチレンオキシド、プロピレン1,2−オキシド、ブチレン1,2−オキシド、ブチレン1,3−オキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソランおよび1,3−ジオキセパンであり、例として言及することができるコモノマーが、ポリジオキソランやポリジオキセパンなどの、直鎖オリゴホルマールまたはポリホルマールである。
【0038】
オキシメチレンターポリマーもまた使用することができ、例えば、上述の環状エーテルの1種と、また第3のモノマー、好ましくは下記式の二官能性化合物と、トリオキサンを反応させることによって調製されるオキシメチレンターポリマーも利用される:
【0039】
【化3】

【0040】
式中、Zは化学結合、−O−または−ORO−(R=C〜CアルキレンまたはC〜Cシクロアルキレン)である。
【0041】
このタイプの好ましいモノマーは、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテル、及び、グリシジル単位と、ホルムアルデヒド、ジオキサンまたはトリオキサンとがモル比2:1で構成されるジエーテルであり、また、グリシジル化合物2molと炭素数2〜8の脂肪族ジオール1molとで構成されるジエーテル、例えば、ほんの数例を挙げると、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,3−シクロブタンジオール、1,2−プロパンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジオールのジグリシジルエーテルである。
【0042】
本明細書中で定義するポリアセタール樹脂は、エンドキャップされた樹脂を含むこともできる。そのような樹脂は、例えば、ペンダントヒドロキシル基を有することができる。そのようなポリマーは、例えば、参照により本明細書中に援用される米国特許第5,043,398号明細書に記載されている。
【0043】
一実施形態においては、ポリアセタールポリマーはヘミホルマール末端基および/またはホルミル末端基を含有することができる。特に、本開示の方法は、ポリマーがヘミホルマール末端基およびことによるとホルミル末端基を含有する場合でさえ、ポリアセタールポリマーのホルムアルデヒド放散を有利に著しく低減することができると考えられる。例えば、一実施形態においては、ポリアセタールポリマーは、1.0mmol/kgを超える量で、例えば1.5mmol/kgを超える量で、ヘミホルマール末端基を含有することができる。代替の実施形態においては、ポリアセタールポリマーは、2mmol/kgを超える量で、例えば2.5mmol/kgを超える量で、ホルミル末端基を含有することができる。
【0044】
上述のようにポリオキシメチレンポリマーを形成するために使用するプロセスは、特定の用途によって異なることがある。しかしながら、ホルムアルデヒド含有量が比較的少ないポリアセタール樹脂を結果的にもたらすプロセスを使用することができる。この点において、一実施形態においては、参照により共に本明細書中に援用される米国特許出願公開第2007/0027300号公報および/または米国特許出願公開第2008/0242800号公報に記載されているような溶液加水分解プロセスによりポリマーを作製することができる。例えば、一実施形態においては、脂肪族または脂環式ジオール単位を含有するポリオキシメチレンポリマーを、トリオールエチレンと共にメタノールおよび水を使用することによって溶液加水分解により分解することができる。
【0045】
本開示に従って使用することができるポリアセタール樹脂またはポリオキシメチレンは一般的に、摂氏約150℃を超える融点を有する。このポリマーの分子量は一般的に、約2,000から約1,000,000までの範囲に及ぶことができ、例えば約7,000から約150,000などである。このポリマーのメルトフローレート(MVR190−2.16)は約0.3g/10分から約20g/10分まで、特に約2g/10分から約9g/10分まででよい(ISO1133)。
【0046】
上述のように、ポリアセタール樹脂を金属塩の混合物、特に脂肪酸の金属塩およびポリカルボン酸の金属塩と混合する。金属塩の混合物に加えて、ポリマー組成物は様々な他の原料を含有することができる。例えば、低光沢用途においては、ポリマー組成物は低光沢添加剤を含有することができる。低光沢添加剤は、例えば、粒子を含むことができる。これら粒子は、最終生成物にテクスチャ(質感、風合い)を付与することができ、および/または光拡散体として機能することができる。低光沢添加剤は光沢を減少させ、成形部品にマットな(艶消しの)表面をもたらすことができる。使用することができる低光沢添加剤の例として、一実施形態においては、アクリルコポリマー粒子などのアクリルポリマー粒子が挙げられる。低光沢添加剤の一例は、例えば、ダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)によって販売されているPARALOID EXL−5136調整剤を含む。他の低光沢添加剤は、酸化亜鉛粒子などの金属酸化物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子および/またはポリメチルメタクリレート粒子を含むことができる。
【0047】
所望のレベルにまで光沢を低下させるために十分な1種または複数種の低光沢添加剤が、組成物中に存在することができる。一実施形態においては、例えば、本開示に従って作製される成形部品は、光沢計を用いて角度60°で測定した場合、約10光沢単位未満の光沢を示すことができ、例えば約8光沢単位未満など、約6光沢単位未満などの光沢を示すことができる。例えば、1種または複数種の低光沢添加剤が、少なくとも約2重量%の量で、例えば少なくとも約5重量%の量で、少なくとも約8重量%の量で、組成物中に存在することができる。一般に、低光沢添加剤は、約25重量%未満の量で、例えば約20重量%未満の量で、約15重量%未満の量で、存在することになる。
【0048】
金属塩の混合物と、1種または複数種の低光沢添加剤とをポリマー組成物に混合するために、一実施形態においては、成形品の製造時に上記添加剤をポリアセタールポリマーと溶融混合することができる。しかしながら、他の諸実施形態においては、ペレットを形成するための押出加工時など、溶融加工時に上記添加剤をポリアセタール樹脂と部分的または全体的に混ぜ合わせることができる。調合したペレットはその後、成形物を形成するために使用することができる。
【0049】
ポリマー組成物からのホルムアルデヒド放散をさらに低減するために、組成物は、窒素含有化合物などのホルムアルデヒド捕捉剤を含有することができる。ホルムアルデヒド捕捉剤は、ホルムアルデヒドを反応させ結合させる化合物である。組成物に窒素含有化合物を混合する場合、ポリアセタールポリマーの初期ホルムアルデヒド含有量は望ましくは低い。例えば、約500ppm未満の初期ホルムアルデヒド含有量を有するポリアセタールポリマーを使用することによって、窒素含有化合物がポリマー内に良好に分散し、実際に、ポリマー内に可溶化することが判明した。一方、過去には、ホルムアルデヒド含有量がより高いポリアセタールポリマーを使用した場合、ポリマーの他の特性を妨げないようにして窒素含有化合物をポリマー中に含有させる際に問題に直面した。例えば、ホルムアルデヒド含有量がより高いポリアセタールポリマーを使用した場合、窒素含有化合物は、結果として得られるポリマーマトリックス内に粒子を形成することがある。それに対して、上述のように組成物に混合される窒素含有化合物は、生じるポリマー内に微細分散することができ、粒径が1マイクロメートル未満であり、さらに好ましくは識別可能な粒径を有しない。
【0050】
一般に、組成物中に存在するホルムアルデヒド捕捉剤の総量は比較的少ない。例えば、ホルムアルデヒド捕捉剤は、約2重量%未満の量で存在することができ、例えば約0.01重量%から約2重量%まで、約0.05重量%から約0.5重量%までなどの量で存在することができる(ワックスやヒンダードアミンなどの、ホルムアルデヒド捕捉剤と見なされないが、組成物中に存在することができる他の窒素含有化合物を除く)。例えば、アミノトリアジン化合物、アラントイン、ヒドラジド、ポリアミド、メラミンまたはこれらの混合物を含めた、任意の適切なホルムアルデヒド捕捉剤を組成物に含めることができる。一実施形態においては、窒素含有化合物は、アミノ置換炭素原子またはカルボニル基に隣接する少なくとも1個の窒素原子を有する複素環化合物を含むことができる。特定の一実施形態においては、例えば、窒素含有化合物はベンゾグアナミンを含むことができる。
【0051】
さらに他の諸実施形態においては、窒素含有化合物は、メラミン変性フェノール、ポリフェノール、アミノ酸、窒素含有リン化合物、アセトアセタミド化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、ヘミアセタール化合物、他のグアナミン、ヒダントイン、尿素誘導体を含む尿素等を含むことができる。
【0052】
窒素含有化合物は、低分子量化合物または高分子量化合物を含むことができる。低分子量を有する窒素含有化合物は、例えば、脂肪族アミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、芳香族アミン(例えば、o−トルイジン、p−トルイジン、p−フェニレンジアミン、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−アミノ安息香酸エチル、またはp−アミノ安息香酸エチルなどの芳香族第2級または第3級アミン)、イミド化合物(例えば、フタルイミド、トリメリトイミドおよびピロメリトイミド)、トリアゾール化合物(例えば、ベンゾトリアゾール)、テトラゾール化合物(例えば、5,5’−ビテトラゾールのアミン塩、またはその金属塩)、アミド化合物(例えば、マロンアミドやイソフタルジアミドなどのポリカルボン酸アミド、およびp−アミノベンズアミド)、ヒドラジンまたはその誘導体[例えば、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボン酸ヒドラジド(ステアリン酸ヒドラジド、12−ヒドロキシステアリン酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドまたはドデカン二酸ジヒドラジド;および、安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、またはベンゼントリカルボン酸トリヒドラジドなどの芳香族カルボン酸ジヒドラジド)などの脂肪族カルボン酸ヒドラジド]、ポリアミノトリアジン[例えば、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、スクシノグアナミン、アジポグアナミン、1,3,6−トリス(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアジニル)ヘキサン、フタログアナミン、またはCTU−グアナミンなどのグアナミンまたはその誘導体、メラミンまたはその誘導体(例えば、メラミン、およびメラム、メレム、メロンなどメラミンの縮合物)]、有機酸と共にメラミンおよびメラミン誘導体を含有するポリアミノトリアジン化合物の塩[例えば、(イソ)シアヌル酸との塩(例えば、シアヌル酸メラミン)]、無機酸と共にメラミンおよびメラミン誘導体を含有するポリアミノトリアジン化合物の塩[例えば、ホウ酸メラミンなどのホウ酸との塩、およびリン酸メラミンなどのリン酸との塩]、ウラシルまたはその誘導体(例えば、ウラシルおよびウリジン)、シトシンおよびその誘導体(例えば、シトシンおよびシチジン)、グアニジンまたはその誘導体(例えば、グアニジンやシアノグアニジンなどの非環状グアニジン;およびクレアチニンなどの環状グアニジン)、尿素またはその誘導体[例えば、ビウレット、ビ尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、アセチレン尿素、アセチレン尿素の誘導体(例えば、アルキル置換化合物、アリール置換化合物、アラルキル置換化合物、アシル置換化合物、ヒドロキシメチル置換化合物、およびアルコキシメチル置換化合物)、イソブチリデンジウレア、クロチリデンジウレア(crotylidene diurea)、ホルムアルデヒドとの尿素の縮合物、ヒダントイン、置換ヒダントイン誘導体(例えば、1−メチルヒダントイン、5−プロピルヒダントイン、または5,5−ジメチルヒダントインなどのモノまたはジC1〜4アルキル置換化合物;5−フェニルヒダントインや5,5−ジフェニルヒダントインなどのアリール置換化合物;および、5−メチル−5−フェニルヒダントインなどのアルキルアリール置換化合物)、アラントイン、置換アラントイン誘導体(例えば、モノ、ジまたはトリC1〜4アルキル置換化合物およびアリール置換化合物)、アラントインの金属塩(例えば、アラントインジヒドロキシアルミニウム、アラントインモノヒドロキシアルミニウム、またはアラントインアルミニウムなどの、元素周期表の第IIIB族の金属元素とのアラントインの塩)、アラントインとアルデヒド化合物との反応生成物(例えば、アラントインとホルムアルデヒドとの付加物)、アラントインとイミダゾール化合物との化合物(例えば、アラントイン dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム)、有機酸塩]を含むことができる。
【0053】
窒素含有樹脂は、例えば、ポリビニルアミンのホモポリマーまたはコポリマー、ポリアリルアミンのホモポリマーまたはコポリマー、ホルムアルデヒドを用いることによる反応から得られるアミノ樹脂(例えば、グアナミン樹脂、メラミン樹脂、グアニジン樹脂などの縮合樹脂;フェノール−メラミン樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン樹脂、または芳香族ポリアミン−メラミン樹脂などの共縮合樹脂)、芳香族アミン−ホルムアルデヒド樹脂(例えば、アニリン樹脂)、ポリアミド樹脂(例えば、ナイロン3(ポリ−β−アラニン)、ナイロン46、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、ナイロン6−10、ナイロン6−11、ナイロン6−12、またはナイロン6−66−610、メチロール基またはアルコキシメチル基を含有する置換ポリアミドなどのホモ重合または共重合ポリアミド)、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリアクリル(メタクリル)アミド、アクリルアミド(メタクリルアミド)と他のビニルモノマーとのコポリマー、ポリ(ビニルラクタム)、ビニルラクタムと他のビニルモノマーとのコポリマー(例えば、特開昭55−52338号公報、および米国特許第3,204,014号明細書に記載されているホモポリマーまたはコポリマー)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)またはその誘導体(例えば、N−ビニルホルムアミド−N−ビニルアミンコポリマー)(例えば、三菱化学株式会社製の商品名「PNVEシリーズ」)、N−ビニルホルムアミドと他のビニルモノマーとのコポリマー、ポリ(N−ビニルカルボン酸アミド)、N−ビニルカルボン酸アミドと他のビニルモノマーとのコポリマー(例えば、特開2001−247745号公報、特開2001−131386号公報、特開平8−311302号公報および特開昭59−86614号公報、米国特許第5,455,042号明細書、米国特許第5,407,996号明細書および米国特許第5,338,815号明細書に記載されているホモポリマーまたはコポリマー、ならびに昭和電工株式会社製の商品名「Noniolex」および「Cleatech」)およびその他を含むことができる。
【0054】
これら窒素含有化合物は単独で、または組み合わせて使用することができる。
【0055】
特定の一実施形態においては、好ましい窒素含有化合物は、グアナミン化合物(例えば、アジポグアナミンおよびCTU−グアナミン、)、メラミンまたはその誘導体[特に、メラミンまたはメラミン縮合物(例えば、メラムおよびメレム)]、グアニジン誘導体(例えば、シアノグアニジンおよびクレアチニン)、尿素誘導体[例えば、ビ尿素、尿素とホルムアルデヒドとの縮合物、アラントインおよびアラントインの金属塩(アラントインジヒドロキシアルミニウムなど)]、ヒドラジン誘導体(例えば、カルボン酸ヒドラジン)、窒素含有樹脂[例えば、アミノ樹脂(メラミン樹脂やメラミン−ホルムアルデヒド樹脂などのアミノ樹脂;架橋メラミン樹脂などの架橋アミノ樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリアクリル(メタクリル)アミド、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルカルボン酸アミド)、およびポリ(ビニルラクタム)]を含む。中でも、特に、ビ尿素、アラントイン、アラントインの金属塩、カルボン酸ヒドラジドおよびポリアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも一種と、上記式(I)によって表される単位を有するグアナミン化合物とを組み合わせて使用すると、造形品から発生するホルムアルデヒド量の著しい低減をもたらすことができる。この窒素含有化合物は、化合物[特に、カルボン酸ヒドラジド(例えば、脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび芳香族カルボン酸ヒドラジドからなる群から選択される少なくとも一種)]を含有する樹脂マスターバッチとして、使用することができる。窒素含有化合物[例えば、尿素化合物(例えば、ビ尿素)、およびカルボン酸ヒドラジド(例えば、脂肪族カルボン酸ヒドラジドおよび芳香族カルボン酸ヒドラジドからなる群から選択される少なくとも一種)]は、熱可塑性樹脂(例えば、ポリアセタール樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂およびポリエステル系樹脂)とこの化合物を溶融混合することによって、マスターバッチの形で使用することができる。窒素含有化合物は、この化合物を含有する樹脂マスターバッチとして使用することができる。
【0056】
上記成分に加えて、ポリマー組成物は様々な他の添加剤および成分を含有することができる。例えば、この組成物は着色剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工助剤および充填剤を含有することができる。
【0057】
使用することができる着色剤として、二酸化チタン、群青、コバルトブルーなど任意の所望の無機顔料、ならびにフタロシアニン、アントラキノン等など他の有機顔料および染料を挙げることができる。他の着色剤として、カーボンブラックまたは他の様々なポリマー可溶性染料が挙げられる。これらの着色剤は一般的に、最大約2重量%の量で組成物中に存在することができる。
【0058】
一実施形態においては、組成物は核形成剤を含有することができる。核形成剤は、例えば、結晶化度を増大させることができ、またオキシメチレンターポリマーを含むことができる。特定の一実施形態においては、例えば、核形成剤はブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレンオキシドおよびトリオキサンのターポリマーを含むことができる。核形成剤は、約0.05重量%を超える量で、例えば約0.1重量%を超える量で、組成物中に存在することができる。核形成剤は、約2重量%未満の量で、例えば約1重量%未満の量で組成物中に存在することもできる。
【0059】
組成物中に存在することができるさらに別の添加剤は、酸化防止剤としての機能を果たすことができる立体障害フェノール化合物である。市販されているこのような化合物の例は、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF)、トリエチレングリコールビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート](Irganox 245、BASF)、3,3’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオノヒドラジド](Irganox MD 1024、BASF)、ヘキサメチレングリコールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 259、BASF)、および3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(Lowinox BHT、Chemtura)である。好ましいものとして、Irganox 1010、特にIrganox 245が挙げられる。上記化合物は、約2重量%未満の量で、例えば約0.01重量%から約1重量%までの量で、組成物中に存在することができる。
【0060】
組成物中に存在することができる光安定剤として、立体障害アミンが挙げられる。このような化合物として、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル化合物、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Tinuvin 770、BASF)またはコハク酸ジメチルのポリマー、および1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン(Tinuvin 622、BASF)が挙げられる。一実施形態においては、光安定剤は2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4,6−ビス(1−エチル−1−フェニル−エチル)フェノール(Tinuvin 234)を含むことができる。使用することができる他のヒンダードアミン光安定剤として、N−メチル化されたオリゴマー化合物が挙げられる。例えば、ヒンダードアミン光安定剤の別の例は、Adeka Palmaroleから入手可能なADK STAB LA−63光安定化剤を含む。
【0061】
1種または複数種の光安定剤が、一般的には約5重量%未満の量で、例えば4重量%未満の量で、約2重量%未満の量で、組成物中に存在することができる。光安定剤は、存在する場合、約0.1重量%を超える量で、例えば約0.5重量%を超える量で、含めることができる。
【0062】
上記光安定剤は、組成物を紫外線から保護することができる。上記光安定剤に加えて、やはり組成物中に存在することができる紫外線安定剤または吸収剤として、ベンゾフェノンまたはベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0063】
組成物に含めることができる充填剤として、ガラスビーズ、珪灰石、ローム、二硫化モリブデンまたは黒鉛、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの無機もしくは有機繊維が挙げられる。ガラス繊維は、例えば、約3mmを超える長さを有することができ、例えば5mmから約50mmまでの長さを有することができる。組成物は、熱可塑性もしくは熱硬化性ポリマー添加剤、またはポリエチレン、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート、ポリブタジエン、ポリスチレンなどのエラストマー、または1,3−ブタジエン、イソプレン、n−ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレートもしくはこれらの混合物を重合させることによってそのコアが調製され、スチレン、アクリロニトリルもしくはアクリレート(メタクリレート)を重合させることによってそのシェルが調製されたグラフトコポリマーをさらに含むことができる。
【0064】
一実施形態においては、組成物は1種または複数種の潤滑剤を含有することもできる。潤滑剤は、ポリマーワックス組成物を含むことができる。組成物に含めることができる潤滑剤として、例えば、n,n’−エチレンビスステアラミド(n,n’−エチレンビスステアリルアミド)が挙げられる。一実施形態においては、ポリエチレングリコールポリマーが組成物中に存在することができる。このポリエチレングリコールは、例えば、約1000から約5000まで、例えば約3000から約4000までの分子量を有することができる。一実施形態においては、例えば、PEG−75が存在することができる。
【0065】
本開示のポリマー組成物は、様々な成形部品を製造するために使用することができる。これらの部品は、射出成形プロセスなど任意の適切な成形プロセスにより、またはブロー成形プロセスにより形成することができる。本開示に従って作製することができるポリマー品としては、ノブ、ドアハンドル、自動車内装パネル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
本開示は、以下の実施例を参照することでより理解することができる。
【実施例】
【0067】
実施例1
本開示に従って作製した調合物の一例は次の通りである:
【0068】
【表1】

【0069】
上記調合物は、約15ppm未満、例えば10ppm未満などのホルムアルデヒド放散を示すと考えられる。
【0070】
本発明に対するこれらの、また他の変更および変形は、特に添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。加えて、様々な実施形態の態様を全体的に、または部分的に入れ替えることができることを理解されたい。さらに、上記説明はほんの一例にすぎず、添付の該特許請求の範囲にさらにそのように記載されている本発明を限定することを意図するものではないことが当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面を有する成形ポリマー品を含む成形物であって、
前記外表面は、角度60°で測定すると約10光沢単位未満の光沢を有し、前記ポリマー品は、脂肪酸の金属塩およびポリカルボン酸の金属塩と混合したポリアセタール樹脂を含むポリマー組成物から形成され、
前記脂肪酸の前記金属塩が、前記ポリカルボン酸の前記金属塩とは異なり、前記脂肪酸の前記金属塩および前記ポリカルボン酸の前記金属塩が、約15ppm未満のVDA275に従うホルムアルデヒド放散を前記組成物が示すために十分な量で、前記ポリマー組成物中に存在する、前記成形物。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、約10ppm未満のVDA275に従うホルムアルデヒド放散を示す、請求項1に記載の成形物。
【請求項3】
前記ポリマー組成物が、約5ppm未満のVDA275に従うホルムアルデヒド放散を示す、請求項1に記載の成形物。
【請求項4】
前記脂肪酸の前記金属塩が、約3個から約20個までの炭素原子を含有する炭素鎖を有する脂肪酸の金属塩を含み、前記ポリカルボン酸の前記金属塩が、トリカルボン酸の金属塩を含む、請求項1に記載の成形物。
【請求項5】
前記脂肪酸の前記金属塩および前記ポリカルボン酸の前記金属塩が共に、アルカリ土類金属塩を含む、請求項4に記載の成形物。
【請求項6】
前記脂肪酸の前記金属塩がプロピオン酸塩またはステアリン酸塩を含み、前記ポリカルボン酸の前記金属塩がクエン酸塩を含む、請求項4に記載の成形物。
【請求項7】
前記脂肪酸の前記金属塩がプロピオン酸カルシウムを含み、前記ポリカルボン酸の前記金属塩がクエン酸カルシウムを含む、請求項1に記載の成形物。
【請求項8】
前記ポリマー組成物が低光沢添加剤をさらに含有する、請求項1に記載の成形物。
【請求項9】
前記低光沢添加剤がアクリルポリマー粒子を含む、請求項8に記載の成形物。
【請求項10】
前記ポリマー組成物がホルムアルデヒド捕捉剤をさらに含有する、請求項1に記載の成形物。
【請求項11】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤がベンゾグアナミンを含む、請求項10に記載の成形物。
【請求項12】
前記ポリマー組成物が酸化防止剤をさらに含有する、請求項1に記載の成形物。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が少なくとも1種の光安定剤をさらに含有し、前記少なくとも1種の光安定剤がヒンダードアミン光安定剤を含む、請求項12に記載の成形物。
【請求項14】
前記ポリアセタール樹脂がポリオキシメチレンポリマーを含み、前記ポリオキシメチレンポリマーが、少なくとも60重量%の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1に記載の成形物。
【請求項15】
ポリアセタールポリマー組成物であって、
少なくとも60重量%の量で前記組成物中に存在し、ポリオキシメチレンポリマーを含むポリアセタール樹脂;
約3重量%から約20重量%までの量で前記ポリマー組成物中に存在し、粒子を含む低光沢添加剤;および
トリカルボン酸の金属塩と混合した脂肪酸の金属塩を含む金属塩の混合物であり、約10ppm未満のVDA275に従うホルムアルデヒド放散を前記組成物が示すために十分な量で前記組成物中に存在する、前記金属塩の混合物;
を含むポリアセタールポリマー組成物。
【請求項16】
前記脂肪酸の前記金属塩がプロピオン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウムまたはこれらの混合物を含む、請求項15に記載のポリアセタールポリマー組成物。
【請求項17】
前記トリカルボン酸の前記金属塩がクエン酸カルシウムを含む、請求項15に記載のポリアセタールポリマー組成物。
【請求項18】
前記トリカルボン酸の前記金属塩がクエン酸カルシウムを含む、請求項16に記載のポリアセタールポリマー組成物。
【請求項19】
潤滑剤、ホルムアルデヒド捕捉剤、および少なくとも1種の光安定剤をさらに含有する、請求項15に記載のポリアセタールポリマー組成物。
【請求項20】
前記ホルムアルデヒド捕捉剤がベンゾグアナミンを含む、請求項19に記載のポリアセタールポリマー組成物。

【公開番号】特開2012−233185(P2012−233185A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−102436(P2012−102436)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(500100822)ティコナ・エルエルシー (19)
【Fターム(参考)】