説明

ポリアゾールフィルムの処理方法

本発明はポリアゾールフィルムの処理方法であって、それによりフィルムは液体で満たされた槽を少なくとも2回通過する。フィルムは、一つのドラムから解かれ、その他のドラムに巻き上げられ、フィルムの方向は、ドラムの回転方向を変更することによって、処理中は変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアゾール(polyazole)フィルムを液体で処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた化学的、熱的、機械的な特性のため、酸ドープポリマー膜は、多くの分野で使用でき、特にPEM(poplymer electrolyte membrane)燃料電池のポリマー電解質膜として好ましい。
【0003】
基本的なポリアゾール膜は、濃縮リン酸または硫酸でドープされ、PEM燃料電池のプロトン伝導体(proton conductor)及びセパレータとして作用する。
【0004】
ポリアゾールポリマーの優れた特性のため、かかるポリマー電解質膜は、膜−電極ユニット(MEU)を作製するために加工されるとき、100℃を超える、特に120℃を超える長期作動温度で、燃料電池に用いられる。この高い長期作動温度は、MEU中にある貴金属に基づく触媒活性を増加させる。特に、炭化水素の改質を利用するとき、大量の一酸化炭素が改質ガス中に存在し、これらは、通常、高価なガスのワークアップ(work−up)またはガス精製により除去されるはずである。作動温度を増加させる能力は、高濃度のCO不純物に長期間耐ええる。
【0005】
ポリアゾールポリマーに基づくポリマー電解質膜を使用すると、第1に、高価なガスのワークアップ(work−up)またはガス精製を省略できる場合もあり、第2に、膜−電極ユニットにロードされる触媒を減少させることができる。両者は、PEM燃料電池システムのコストが余りにも高いため、PEM燃料電池を大規模に使用するために、必ずしも必要ではない条件である。
【0006】
酸によるドーピングは、フィルムの機械的な特性をかなり変更する。このように、例えば、伸縮率は初期値の10%に減少するので、ポリアゾールフィルムは、ドーピング後相対的に低い機械的安定性を有する。さらに、フィルム面積は、ドーピングの結果、50%まで増加する。
【0007】
問題を含む特性のため、これらのフィルムは、フィルムを水または酸の浴に浸し、その後、液浴を数回変更することにより、純粋なマニュアルプロセスにおいて酸でドープされる。
【0008】
方法に関連する問題は、特に、液体を大量に消費することにある。さらに、従来技術によるプロセスは、柔軟性がなく、労働集約的である。ポリアゾールフィルムは、最初に極めて低い柔軟性を示すが、柔軟性は、機械的な安定性は減少するけれども、酸処理に基づいて大きく増加することに注目すべきである。
【0009】
さらに、有機溶媒から一般的にカーストされたフィルムは、健康に有害な、高濃度の溶媒残留物を含む。過去において、これらの溶媒、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)は乾燥することによって除去されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、上記問題を解消する方法を提供することにある。その方法は、ポリアゾールフィルムの簡単で、安全で、信頼できる処理を許容する。
【0011】
また、本発明の別の目的は、極めて柔軟で、処理中に生ずるフィルムの機械的な挙動におけるかなりの変化に適応でき、それによって労働力の増加しない方法を提供することにある。
【0012】
さらに、その方法は、特に液体の消費量が少ないはずである。また、その方法は費用がかからないはずである。
【0013】
また、本発明の目的は、有害な溶媒をできる限り除去する方法を提供することにある。特に、その方法は、異なるプラントを必要とすることなく、溶媒の除去とポリアゾールフィルムのドーピングの双方を許容するはずである。
【0014】
さらに、その方法は、ポリアゾールフィルムの機械的な安定性を改良できるはずである。これらの特性は、特に、フィルムの伸縮率、引張強さ(tear strength)、破壊靭性を含む。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的は、ポリアゾールフィルムを処理する方法によって達成される、ここで、その方法では、フィルムは、糸巻きから解いて別の糸巻きに巻き、フィルムの移動方向を、糸巻きの回転方向を変えることによって、処理中に変更させて、液体を満たした槽(trough)を少なくとも二度通過する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
織物の分野では、この方法は、例えば染色の場合に公知である。しかし、織物に対し、フィルムは、短時間に大量の液体を吸収することができない。そのうえ、織物は本質的に機械的な特性を保持し、その寸法は、処理中に若干変化する。
【0017】
したがって、本発明によって与えられる解は、その方法はフィルム特性の変化に適応するので、特に驚くべきである。さらに、フィルムは、処理に悪影響を与えることなく、極めて短時間で槽にある液体と接触する。驚くべきことに、フィルムの処理は、巻き上げた状態で、フィルムとともに巻き上げられた液体によって行われると思われる。
【0018】
本発明によれば、ポリアゾールを含むフィルムが処理される。酸処理前に、これらのフィルムは、特に制限されることなく、少なくとも50質量%、好ましくは70質量%のポリアゾールを一般的に含む。かかるポリマーはそれ自体公知である。
【0019】
ポリアゾールは、次の一般式(I)および/または(II)および/または(III)および/または(IV)および/または(V)および/または(VI)および/または(VII)および/または(VIII)および/または(IX)および/または(X)および/または(XI)および/または(XII)および/または(XIII)および/または(XIV)および/または(XV)および/または(XVI)および/または(XVII)および/または(XVIII)および/または(XIX)および/または(XX)および/または(XXI)および/または(XXII)の繰返しアゾールユニットを含む:
【0020】
【化1】

【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
ここで、ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる4価の芳香族または複素環式芳香族の基(group)、
ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる2価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる2価もしくは3価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる3価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる3価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる4価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる2価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる2価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる3価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルArは、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる2価もしくは3価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルAr10は、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる2価もしくは3価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルAr11は、同一または相違し、各々は一環または多環でありえる2価の芳香族または複素環式芳香族の基、
ラジカルXは、同一または相違し、各々は酸素、イオウ、または水素原子を発生するアミノ基、1〜20の炭素原子を有する基、好ましくは分岐または非分岐のアルキルまたはアルコキシ基、またはさらなるラジカルとしてのアリール基、
ラジカルRは、同一または相違し、各々は水素、アルキル基または芳香族基、
n,mは、それぞれ10またはそれ以上の整数、好ましくは100またはそれ以上の整数である。
【0025】
好ましい芳香族または複素環式芳香族の基は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、ジフェニルジメチルメタン、ビスフェノン、ジフェニルスルフォン、キノリン、ピリジン、ビピリジン(bipyridine)、ピリダジン(pyridazine)、ピリミジン(pyrimidine)、ピラジン(pyrazine)、トリアジン(triazine)、テトラジン(tetrazine)、ピロール(pyrrole)、ピラゾール(pyrazole)、アントラセン(anthracene)、ベンゾピロール(benzopyrrole)、ベンゾトリアゾール(benzotriazole)、ベンゾオキサチアジアゾール(benzooxathiadiazole)、ベンゾオキサジアゾール(benzooxadiazole)、ベンゾピリジン(benzopyridine)、ベンゾピラジン(benzopyrazine)、ベンゾピラジジン(benzopyrazidine)、ベンゾピリミジン(benzopyrimidine)、ベンゾピラジン(benzopyrazine)、ベンゾトリアジン(benzotriazine)、インドリジン(indolizine)、キノリジン(quinolizine)、ピリドピリジン(pyridopyridine)、イミダゾピリミジン(imidazopyrimidine)、ピラジノピリミジン(pyrazinopyrimidine)、カルバゾール(carbazole)、アシリジン(aciridine)、フェナジン(phenazine)、ベンゾキノリン(benzoquinoline)、フェノキサジン(phenoxazine)、フェノチアジン(phenothiazine)、アクリジジン(acridizine)、ベンズオプテリジン(benzopteridine)、フェナンスロリン(phenanthroline)及びフェナンスレン(phenanthrene)、各々は置換されていてもよい、から誘導される。
【0026】
Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、いかなる置換パターンも持つことができる;例えば、フェニレンの場合、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar、Ar10、Ar11は、オルソ−、メタ−またはパラ−フェニレンでありえる。特に、好適な基は、ベンゼンおよびビフェニレン、各々は置換されていてもよい、から誘導される。
【0027】
好適なアルキル基は、炭素数1〜4の短鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピルまたはイソプロピルおよびt−ブチル基である。
【0028】
好適な芳香族基は、フェニルまたはナフチル基である。アルキル基と芳香族基は、置換されていてもよい。
【0029】
好適な置換基は、フッ素などのハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、またはメチルまたはエチルなどの短鎖アルキル基である。
【0030】
繰返しユニット内のラジカルXは同一である式(I)の繰返しユニットを有するポリアゾール類が好ましい。
【0031】
ポリアゾール類は、原則として、異なる繰返しユニット、例えば、ラジカルXが異なるユニットを有することができる。しかし、繰返しユニットにおいて同一のラジカルXであることが好ましい。
【0032】
さらに好適なポリアゾールポリマーは、ポリイミダゾール類(polyimidazoles)、ポリベンゾチアゾール類(polybenzothiazoles)、ポリベンズオキサゾール類(polybenzoxazoles)、ポリオキサジアゾール類(polyoxadiazoles)、ポリキノキサリン類(polyquinoxalines)、ポリチアジアゾール類(polythiadiazoles)、ポリ(ピリジン類)(poly(pyridines))、ポリ(ピリミジン類)(poly(pyrimidines))、およびポリ(テトラザピレン類)(poly(tetrazapyrenes))である。
【0033】
本発明の別の実施態様において、繰返しアゾールユニットを含むポリマーは、互いに相違する式(I)〜(XXII)の少なくとも二つのユニットを含む共重合体またはブレンドである。そのポリマーは、ブロック共重合体(ジブロック、トリブロック)、ランダム共重合体、周期的な(periodic)共重合体および/または交互ポリマーの形態である。
【0034】
本発明の特に好適な実施態様において、繰返しアゾールユニットを含むポリマーは、式(I)および/または(II)のユニットだけを含むポリアゾールである。
【0035】
ポリマー中の繰返しアゾールユニットの数は、10またはそれ以上であることが好ましい。特に好適なポリマーは、少なくとも100の繰返しアゾールユニットを含む。
【0036】
本発明では、繰返しベンズイミダゾールユニットを含むポリマーが好ましい。繰返しベンズイミダゾールユニットを含む特に有益なポリマーの具体例は、次式で表される:
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
ここで、nおよびmは、各々10またはそれ以上の整数であり、好ましくは100またはそれ以上の整数である。
【0043】
好適なポリアゾール類、しかし特にポリベンズイミダゾール類は、高分子量を有する。固有粘度として測定すると、少なくとも1.0dl/g、好ましくは少なくとも1.2dl/gである。
【0044】
かかるポリアゾール類の製法は公知である:一以上の芳香族テトラアミノ化合物は、溶融状態で、カルボン酸モノマー当り少なくとも2つの酸基を含む1以上の芳香族カルボン酸類またはそのエステル類と反応させてプレポリマーを形成する。プレポリマーは反応器中で固化し、その後機械的に粉砕される。粉砕されたプレポリマーは、通常、400℃までの温度、固体重合で十分に重合される。好適なポリベンズイミダゾール類は、セラニーズAGから商品名Celazole(TM)として入手できる。
【0045】
ポリマーフィルムを生産するため、ポリアゾールを、更なるステップで、ジメチルアセトアミド(DMAc)などの極性、中性溶媒に溶解させ、フィルムは、古典的な方法で生産される。
【0046】
溶媒残留物を除去するため、この方法で得られたフィルムは、本発明の方法によって洗浄液で処理することができる。この洗浄液は、好ましくはアルコール類、ケトン類、アルカン類(脂肪族または脂環式)、エーテル類(脂肪族または脂環式)、エステル類、カルボン酸類であり、上記化合物の部材はハロゲン化でき、さらに水、無機酸(例えば、HPO,HSO)、それらの混合物である。
【0047】
特に、C1−C10アルコール類、C2−C5ケトン類、C1−C10アルカン類(脂肪族または脂環式)、C2−C6エーテル類(脂肪族または脂環式)、C2−C5エステル類、C1−C3カルボン酸類、ジクロロメタン、水、無機酸(例えば、HPO,HSO)、それらの混合物が使用される。なかでも、水が特に好ましい。
【0048】
洗浄後、フィルムは乾燥して洗浄液を除去できる。乾燥は、選ばれた処理液体の部分蒸気圧の関数として実施される。乾燥は、通常、大気圧、20℃〜200℃の温度で行われる。より温和な乾燥は、減圧下でも行われる。乾燥の代わりに、膜は軽くはたくと、余分の処理液体が除去される。このオーダーは臨界的ではない。
【0049】
ポリアゾールフィルムの溶媒残留物を上記のようにフリーにすると、驚くべきことにフィルムの機械的な特性を改良する。これらの特性には、特に、フィルムの伸縮率、引張強さ、破壊靭性が含まれる。
【0050】
これらのフィルムにプロトンを伝導する能力を与えるため、フィルムは酸でドープされる。本発明の方法は、特に、この目的にも有益である。この意味において、酸類には、全ての公知のルイス酸とブレンステッド酸が含まれ、好ましくは無機ルイス酸とブレンステッド酸である。
【0051】
さらに、ポリ酸類、特に、イソポリ酸類、ヘテロポリ酸類、各種酸類の混合物も用いることができる。本発明では、ヘテロポリ酸類は少なくとも二つの異なる中央原子を有する無機ポリ酸類であり、それぞれの場合、金属(好ましくはCr,Mo,V,W)と非金属(好ましくはAs,I,P,Se,Si,Te)の弱ポリ塩基オキソ酸類から部分的な混合無水物類として形成される。特に、12−モリブドリン酸、12−タングストリン酸が好ましい。
【0052】
本発明のポリマーの導電率は、ドーピングの程度によって影響を受け得る。導電率は、最高値に到達するまで、ドーパント濃度に比例して増加する。本発明によれば、ドーピングの程度は、ポリマーの繰返し単位のモル当りの酸のモルとして報告される。本発明では、ドーピングの程度は3〜15、特に6〜12が好ましい。
【0053】
本発明で特に好適なドーパントは、硫酸またはリン酸である。特に好適なドーパントはリン酸(HPO)である。ここで、高濃度の酸が通常使用される。本発明の特別な態様によれば、リン酸の濃度は、ドーパントの質量に対し、少なくとも50質量%、特に少なくとも80質量%である。
【0054】
さらに、酸の一部または全部をビニルホスホン酸および/またはビニルスルホン酸のグループを含むモノマーによって置き換えることができるので、フィルムを膨潤させることができる。膨潤フィルムは、その後、ドイツ特許出願10210499.2または10209419.5に記載された方法で重合する。
【0055】
フィルムは、フィルムの移動方向を糸巻きの回転方向を変更することによって変えながら、液体槽を少なくとも2回、好ましくは少なくとも10回、特に好ましくは少なくとも25回通過させる。
【0056】
液体中を通過する際に運搬されるフィルムの速度は、液体およびフィルムのタイプに依存する。一般的に、フィルムは、液体槽中を0.5〜100m/min、特に1.0〜25m/minの速度で引っ張られる。
【0057】
液体を通過するフィルムの経路の長さは、好ましくは0.05〜10m、特に0.15〜2mである。
【0058】
本発明の特別な実施態様において、処理時間は2分〜10時間、好ましくは15分〜3時間の範囲である。
【0059】
液体槽を通過するためにフィルムが運搬される際の速度は、それ自体公知の方法で制御することができる。好適な方法には、特に、速度指示ローラーまたは回転速度を測定することによって、糸巻きの回転速度を制御することが含まれる。
【0060】
本発明の特別な実施態様において、フィルムの特に均一で、滑らかで、しわのない巻上げは、撤回力(drawback force)によって達成される。フィルムは、液体で満たされた槽を、フィルムの単位幅当り撤回力で0.5〜200N/m、好ましくは1〜150N/m、特に好ましくは12〜60N/mの範囲で運搬されることが好ましい。その幅は、この場合、液体処理前に移動する方向に垂直なフィルムの寸法である。20cm〜200cmの幅を有するフィルムに基づく、好適な撤回力は、制限されることなく、0.1〜400N,さらに好ましくは0.2〜300N,特に好ましくは2.4〜120Nの範囲にある。
【0061】
本発明の特別な態様によると、液体は、最初の処理後フィルムに残るのは少なくとも1g/cm、特に少なくとも10g/cm、最初の処理後にフィルムに付着する。この値は、液体処理から生ずる質量の増加に基づくものである。
【0062】
フィルムを洗浄液、例えば、水で処理する際に、1〜1000ml/m、さらに好ましくは5〜250ml/m、特に15〜150ml/m、特に好ましくは25〜75ml/mの範囲のものが、制限されることなく、フィルムに付着することが好ましい。フィルムが酸、例えば、リン酸でドープされると、1〜1000ml/m、さらに好ましくは10〜800ml/m、特に50〜600ml/m、特に好ましくは100〜400ml/mの範囲のものが、フィルムに付着することが好ましい。液体槽で処理後フィルムに付着し、フィルムに浸入する液体の量は、フィルムが液体槽を通過する際に運搬される速度によって制御することができる。
【0063】
また、液量は、処理が行われる温度に従属する。本発明の方法が実施される温度は、臨界的ではなく、広範に変化できる。しかし、本発明の方法は、一般に、温度範囲は液体の物理的な特性に従属するけれども、0〜150℃、好ましくは10℃〜100℃の範囲で行われる。
【0064】
特別な実施態様において、槽に存在する液体は、必要により、新しくし、または他の液体で置き換えることができる。この方法で、例えば、汚染した液体を同じタイプの新鮮な液体で置き換えることができる。さらに、液体はその他の液体で置き換えることができる。この方法は、その他の装置を用いることなくフィルムの洗浄およびドープの双方をすることができる。この方法は、個々の成分を添加しながら、バッチあるいは連続方式で行うことができる。
【0065】
ジガー(jigger)は、例えばデートマー フリース(Dietmar Fries)、トレーニング マテリアル、ティーチング アシッド「Textilveredelung、 Beschichten」(Arbeitgeberkreis Gesamttextil AGK(1992),第2.13頁に記載されているが、本発明に方法を実施するために特に好適である。これらの装置は、特に、会社、Mathis AGおよびKuester AG、から入手される。
【0066】
本発明は、本発明を制限することなく、図1に示されるジガーを使用するために添付図面に示される。
【0067】
ポリアゾールフィルム(1)は、糸巻き(2)から解かれ、第2の糸巻き(3)で巻き上げられ、その方法において、例えばローラー(4)で運搬される。フィルムは、槽(5)を通って運搬され、槽でローラー(6)を回る。槽において、フィルムは液体で処理される。フィルムが槽を去り、別のローラーを通過した後、余分の液体は、必要により、フィルムが巻き上げられる前に、別のローラー(7)で発生する圧力で除去することができる。液体は、通常、ポリアゾールフィルムに付着するので、この液体は、巻き上げ状態でもフィルムに作用する。
【0068】
液体と接触するジガーの全ての部分は、さびの発生しない材料から造られる。これは、フィルムを濃縮した酸でドーピングするのに有効である。ローラーおよび糸巻きは、例えば、ステンレススチールで造られる。
【0069】
フィルム上の撤回力の速度は、例えば、速度指示ローラーまたは張力計ローラーとして設計されるローラー(4)および/または(6)で決定される。また、装置には、ローラーの速度や回転方向を調節する電子制御系が備わっている。装置は、このように設計されるので、フィルム(1)が一つの糸巻き(2)から第2の糸巻き(3)に移動した後に、移動方向を自動的に変更できる。
【0070】
さらに、ジガー、特に槽(5)の温度を制御する手段は、巻き上げられたフィルムに導入された熱エネルギーが、特に、糸巻き(2)と(3)の回転速度に従属するように、与えられる。
【0071】
さらに、ジガーは、槽および糸巻きを取り囲むカバー(8)を有し、環境から分離する。この方法で、液体の蒸発が抑えられる。また、吸湿性液体、例えば、濃縮したリン酸は水分から保護され、その場合、ジガーは乾燥空気または窒素でパージされる。
【実施例】
【0072】
本発明は、本発明は実施例に限定されることなく、実施例および比較例によって下記に示される。
【0073】
実施例1
モデルWJ650 ジガー(Mathis AG)から、幅42cm、約25質量%のDMAcを含んだPBIフィルムが約20m供給された。ジガーの槽は、3リットルの水で満たされていた。ジガーの水は、80℃に加熱された。フィルムは、水で30回処理された。ジガーは、フィルムを約5s各回(液体を通過する経路の長さ:約25cm)浸されながら、撤回力10Nで3.0m/minで作動を受けた。
【0074】
フィルムの残りの溶媒量は、カールフィッシャー(KF)滴定で測定した。メトラー−トレド(Mettler−Toledo)装置を使用し、フィルムの水分量を、下記に示すように、KF滴定で直接的に決定する。密閉サンプル瓶中の試料を250℃に加熱し、この温度で乾燥する。この方法で放出されたガスは、密閉した滴定容器に直接的に送られ、KF試薬を用いて分析する。水分量の決定に加えて、残りの溶媒量を、乾燥前後の質量の測定によって決定する。処理後のDMAc量は0.0%であった。
【0075】
比較例1
実施例1で用いたPBIフィルムは、従来の方法を用い、40℃で乾燥した。処理後KF法で測定したDMAc量は2%であった。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に用いた槽の一例を示す図面である。(実施例1)
【符号の説明】
【0077】
1 フィルム
2 糸巻き
3 糸巻き
4 ローラー
5 槽
6 ローラー
7 ローラー
8 カバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムは、液体で満たされた槽を少なくとも2度通過し、その処理の際、該フィルムは糸巻きから解かれて別の糸巻きに巻き上げられ、該フィルムの移動方向は、該糸巻きの回転方向を変えることによって変更されることを特徴とするポリアゾールフィルムの処理方法。
【請求項2】
前記槽中の液体は、最初の処理後に変えられることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記液体は、最初の処理後に前記フィルムに付着することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1g/mの液体が前記フィルムに付着することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記液体は水を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記液体は、酸、ビニルスルホン酸グループを含むモノマーおよび/またはビニルホスホン酸グループを含むモノマーを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸はリン酸、前記ビニルスルホン酸グループを含むモノマーはビニルスルホン酸、前記ビニルホスホン酸グループを含むモノマーはビニルホスホン酸である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記フィルムは液体の槽を少なくとも10回通過することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルムは、液体の槽を0.5〜100m/minの速度で通過することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記フィルムは、前記フィルムの単位幅当りの撤回力で0.5〜200N/mの範囲で運搬されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フィルムは、15分〜3時間処理されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ジガーはポリアゾールフィルムの処理に使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−501321(P2006−501321A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525327(P2004−525327)
【出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008250
【国際公開番号】WO2004/013211
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(504335714)ペメアス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【氏名又は名称原語表記】PEMEAS GMBH
【Fターム(参考)】