説明

ポリアニリンおよびカーボンナノチューブを含有する絶縁ポリマー

本発明は、絶縁ポリマーマトリックス中にカーボンナノチューブおよび導電性ポリアニリンを含んでなる組成物、ならびにその組成物の作製方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁ポリマーのマトリックス中にカーボンナノチューブおよび導電性ポリアニリンを含んでなる組成物、ならびに前記組成物の作製方法に関する。まずナノチューブをポリアニリン溶液で処理すると、ナノチューブを使用して、電気導電率を増大させる状況においてナノチューブの使用量の削減が可能になることが判明した。
【背景技術】
【0002】
この30年間にわたって、能動電子デバイスで使用できるような、絶縁性ではなく導電性を有するポリマーの開発にかなり関心がもたれてきた。
【0003】
ポリマーの電気的諸特性の調整は、3つの異なる手法を利用して達成されてきた。
1)出発材料の化学組成および構造を変更することによる固有の内部特性の改変。
2)ホストポリマーと一緒に電荷移動錯体を形成することができるドーパントを組み込むことによる分子レベルでのポリマー特性の変更。この手法は、AsFやIなどの分子を、ポリアセチレンやポリカーボナートなどのポリマーに組み込む分子ドープである。さらに、
3)最も多用される手法は、導電性ポリマーを形成するために金属フレーク、カーボンブラック粒子などの微視的断片をホストポリマーに組み込むことによる所望の導電率の達成である。
【0004】
経路(2)は、ポリマー合成金属への最も効率的な経路を提供するが、いくつかの材料は、周囲条件下で安定性に欠ける傾向がある。
【0005】
あるいは、不活性ポリマーに導体を充填することによって、より適度な導電率値(0.001S/cm)を達成することができる。10−10〜10−1S/cmの導電率は容易に達成され、規格値に調整することができる。電気導電率は充填剤量に依存し、導電率は、充填剤濃度の臨界レベル(パーコレーション閾値)を超えた短い範囲にわたって充填剤量に強く依存している。高い導電率を達成するために高レベルの充填剤量10〜40%が使用されるので、ポリマー加工性は大きく妨げられる。
【0006】
一方、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィドなどの典型的な合成金属は、金属レジームで10〜10s/cmの範囲の導電率を示すことができる。しかし、これらの値は、強い酸化または還元反応によって得られるので、材料は周囲条件では不安定な傾向があり、実際の適用が限定される。
【0007】
主鎖にπ−電子系を有するポリアセチレン、または類似のポリ−(p−フェニレン)、およびポリピロールなどの有機導体は、一続きの芳香族環からなり、自然状態では優れた絶縁体であり、酸化または還元の際に金属導電性を有する錯体に変換されることがある。特に、ポリアセチレン(CH)の電気導電率は、ポリマーをドナーまたはアクセプタ分子でドープすると、1011倍増大する。この30年間にわたって、能動電子デバイスで使用できるような、絶縁性ではなく導電性を有するポリマーの開発にかなり関心がもたれてきた。
【0008】
ポリマーの電気的諸特性の調整は、3つの異なる手法を利用して達成されてきた。
(1)出発材料の化学組成および構造を変更することによる固有の内部特性の改変。
(2)ホストポリマーと一緒に電荷移動錯体を形成することができるドーパントを組み込むことによる分子レベルでのポリマー特性の変更。この手法は、AsFやIなどの分子を、ポリアセチレンやポリカーボナートなどのポリマーに組み込む分子ドープである。さらに、
(3)最も多用される手法は、導電性ポリマーを形成するために金属フレーク、カーボンブラック粒子などの微視的断片をホストポリマーに組み込むことによる所望の導電率の達成である。
【0009】
経路(2)は、ポリマー合成金属への最も効率的な経路を明らかに提供するが、いくつかの材料は、周囲条件下で安定性に欠ける傾向がある。ポリアセチレン、ポリ(1,6−ヘプタジイン)、およびポリプロピンの場合、非ドープポリマーは酸素中で不安定である。ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−フェニレンオキシド、およびポリ−p−フェニレンスルフィドは、酸素中で安定であるが、AsFなど強力なアクセプタでしかドープすることができず、いったんドープされると、周囲条件下で急速な加水分解の影響を受けやすい。ポリピロールは周囲条件下で安定であるが、他の望ましい特性のうちいくつか、最も顕著には可変導電性に欠ける。
【0010】
あるいは、不活性ポリマーに導体を充填することによって、より適度な導電率値(0.001S/cm)を達成することができる。10−10〜10−1S/cmの導電率は容易に達成され、規格値に調整することができる。電気導電率は充填剤量に依存し、導電率は、充填剤濃度の臨界レベル(パーコレーション閾値)を超えた短い範囲にわたって充填剤量に強く依存している。高い導電率を達成するために高レベルの充填剤量10〜40%が使用されるので、ポリマー加工性は大きく妨げられる。典型的な充填剤は、PAN誘導炭素繊維、金属化ガラス繊維、Alフレーク、Alロッド、およびカーボンブラックである。典型的な装填材および得られた導電率を、下記の表に示す。
【0011】
【表1】

【0012】
一方、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィドなどの典型的な合成金属は、金属レジームで10〜10s/cmの範囲の導電率を示すことができる。しかし、これらの値は、強い酸化または還元反応によって得られるので、材料は周囲条件では安定でない傾向があり、実際の適用が限定される。
【0013】
環境上安定な合成金属を求める探求は、ポリアニリン(PANI)における多大な試みをもたらした。これらの材料は金属状態ではより低い導電率を有するが、ポリマー主鎖で著しいπ非局在化も有するように見え、他の導電性ポリマーとは違って、それらは空気中で無期限に安定である。特に、ポリアニリンのエメラルジン塩基の形を、HClなど非酸化性希酸水溶液で金属導電性レジームにドープして、金属導電性を示すものの空気に対して安定で、大量生産が安価なエメラルジン塩を得る。ポリアニリンのエメラルジンの形は、主鎖の広範囲にわたる共役のために高い導電率を示すと考えられる。他のすべての共役ポリマーとは違って、材料の導電率は1つではなく2つの変数、すなわちPANIの酸化度とプロトン化度に依存する。最も高い導電率のPANIは、PANIショウノウスルホン酸塩(PANI−CSA)のm−クレゾール溶液から流延されたものであり、その導電率は、10−1〜10S/cmである鉱酸でプロトン化されたPANIより約2桁高い約10S/cmである。
【0014】
周囲条件で加工可能で安定な、金属導電性を有する安定なポリマー材料を達成することは、電子用途での導電性ポリマーの使用をさらに可能にするのに重要である。少量のカーボンナノチューブが、PANIの導電率を4〜5桁増大させることが以前に示されている。ナノチューブ濃度は、充填剤の必要とされた濃度よりかなり低いので、導電率を増大させながらホストポリマーの加工性を維持することができる。しかし、開発された印刷可能な配合物には、いくつかの欠点もあった。例えば、転写フィルムの解像度が重要である印刷用途では、いくつかのドープポリアニリンしか有用でなかった。さらに、多層TFT構造が構築されるとき、電子デバイスのシーケンシャル層間の接着が重要である。特に、TFT用途では、ゲート誘電体への転写PANI複合体の接着が困難であった。さらに、ドープPANIがフィルムの大部分を表わしている場合、酸はかなりの量である。電場下にある場合に酸が移動すれば、半導体のドーピイング、および性能劣化に至るはずである。この出願では、カーボンナノチューブを、絶縁マトリックスに組み込む前にポリアニリンでコートする場合、その電気的挙動は、チューブをドープPANI導電性マトリックスに組み込んだ場合に観察されるものに比べて変わらないままであることが示されている。これは、以前に開示されたSWNT/PANI組成物に比べていくつかの利点を提供する。同様な導電層および絶縁層用の結合剤材料を使用して、TFTを印刷することができる。シーケンシャル層の接着を、ポリマーのファミリーのガラス転移で調整することができる。PANIはチューブを接続する「糊」でしかないので、配合物中のPANIの量は、最小である。したがって、酸が移動する可能性はより低いだけでなく、周辺の絶縁マトリックスに移動するだけである。
【0015】
ニウ(Niu)の特許文献1は、カーボンナノファイバー、および電気化学キャパシタに使用するための電気化学的に活性な材料を含む複合電極について記載している。
【0016】
ケニー(Kenny)の特許文献2は、導電性ポリマーを含有する印刷画像用のコーティング配合物について記載している。
【0017】
特許文献3は、導電性ポリアニリンおよびカーボンナノチューブを含んでなる組成物について記載している。
【0018】
特許文献4は、導電性ポリアニリンおよびカーボンナノチューブを含んでなるレーザー印刷用の組成物について記載している。
【0019】
【特許文献1】米国特許第6,205,016号明細書
【特許文献2】米国特許第5,932,643号明細書
【特許文献3】米国特許出願第02/05486号明細書
【特許文献4】米国特許出願第03/05771号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
一方、本発明は、絶縁ポリマーマトリックス中に、導電性ポリアニリンとともに分散させたカーボンナノチューブを含んでなる組成物である。ポリアニリンとカーボンナノチューブとの分散体によって、パーコレーション、したがってナノチューブがポリアニリンとともに分散されていない場合より低いカーボンナノチューブ体積分率で金属様の値の電気導電率が可能になる。本発明は、上記に記載の組成物の作製方法でもある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、
a)絶縁ポリマーマトリックスと、
b)前記絶縁ポリマーマトリックス中に分散させた0.1〜10重量%のカーボンナノチューブと、
c)前記カーボンナノチューブとともに分散させた導電性ポリアニリンとを含んでなる組成物について記載する。
【0022】
また、本発明は、
a)カーボンナノチューブを、溶解させたポリアニリンも含有する溶媒中に分散して、第1の液体分散体を形成するステップと、
b)絶縁ポリマー溶液を前記第1の液体分散体に添加して、第2の液体分散体を形成するステップと、
c)前記第2の液体分散体を基板上に被着させ、前記溶媒を蒸発させるステップとを含んでなる方法でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
ここで、絶縁マトリックス中にポリアニリン(PANI)とともに分散させた少量のナノチューブは、導電性マトリックス中のナノチューブのために達成された非常に低いパーコレーション閾値を保持しながら、高導電率への経路を提供することが示されている。特に、良好なゲート誘電体である材料中にPANIとともに分散させたナノチューブを組み込むと、マイクロエレクトロニクスでの用途に適した導電率の材料、すなわち、プラスチック薄膜トランジスタ(TFT)中のゲート、ソース、ドレイン、相互接続などが得られる。これらの材料は、TFTの全ての層、特にゲート誘電体の作製方法に適合できる。
【0024】
本発明は、これらに限定されないがポリスチレン、エチルセルロース、ノブラック(Novlac)(登録商標)(デュポン、米国デラウェア州ウィルミントン(DuPont, Wilmington, DE))、ポリヒドロキシスチレンおよびそのコポリマー、ポリメチルメタクリラートおよびそのコポリマー、ならびにポリエチルメタクリラートなどの絶縁ポリマーマトリックス材料を含んでなる組成物である。絶縁ポリマーマトリックス内に、カーボンナノチューブと導電性ポリアニリンの混合物を分散させる。カーボンナノチューブと導電性ポリアニリンの混合物を、カーボンナノチューブをキシレンに分散し、次いでドープポリアニリン(例えばジノニルナフタレンスルホン酸、ベンジルスルホン酸、またはショウノウスルホン酸でドープして、ポリアニリンを導電性にする)を分散体に添加することによって生成する。ポリアニリンを、ポリアニリンのキシレン溶液として添加する。次いで、絶縁ポリマー溶液を分散体に添加する。この分散体を基板上に被着し、溶媒を蒸発させると、この被着物は、本発明の組成物であるカーボンナノチューブとドープポリアニリンの分散体を含有する絶縁ポリマーマトリックスを含んでなる。絶縁ポリマーマトリックス中に分散させたナノチューブとポリアニリンの量は、キシレン中の様々な成分の比を変えることによって変わり得る。パーコレーションを達成し、金属導電性を得るには、0.25重量%のレベルのカーボンナノチューブが必要とされる。また、本発明は、上記に記載するこの組成物を得るための方法も含んでなる。
【0025】
ポリアニリン/カーボンナノチューブ分散体と混合させた絶縁ポリマー溶液の被着用の基板は、熱転写印刷用のドナー素子とすることができる。例えば、マイラー(MYLAR)(登録商標)(デュポン、米国デラウェア州ウィルミントン(DuPont, Wilmington, DE))などの透明基板を使用することができる。分散体を被着した後、溶媒を蒸発させる。転写対象の材料でパターンニングされるレシーバ素子上に、ドナー素子を配置する。乾燥させた分散体のパターンがレシーバに転写されるように、レーザー放射線のパターンをドナー素子に曝露させる。
【0026】
あるいは、ポリアニリン/カーボンナノチューブ分散体と混合させた絶縁ポリマー溶液を、溶媒の蒸発の前に、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビアなどの印刷方法によってパターンニングすることができる。分散体を基板上にパターンニングして、次いで溶媒を蒸発させる。
【実施例】
【0027】
実施例1〜2
この実施例は、DNNSA−PANIでコートしたカーボンナノチューブを添加し、このPANIでコートしたチューブを絶縁マトリックスに組み込んだ場合の導電率に及ぼす効果を示している。導電性DNNSA−PANIマトリックス中のカーボンナノチューブの導電率も、比較のために含まれている。(本明細書では、ジノニルナフタレンスルホン酸は「DNNSA」である)。米国特許第5,863,465号明細書(1999年)(モンサント(Monsanto)特許)に報告されるように、ジノニルナフタレンスルホン酸を使用して、ポリアニリンをプロトン化した。固形分の20%がヒプコ(Hipco)単層カーボンナノチューブ(CNIインコーポレーティッド、米国テキサス州ヒューストン(CNI incorporated, Houston TX))であり、固形分の80%が固形分34%のDNNSA−PANIのキシレン溶液である、キシレン中合計2.5%の固体分を使用することによって、(単層ナノチューブ)SWNTを含むDNNSA−PANI分散体を作製した。下記の手順に従って、複合物を作製した。
・まず、CNTを10分間、周囲温度でホーン音波処理してキシレン中に分散した。
・上記に指定するとおりPANI/SWNT比4:1で、DNNSA−PANIを5分間、周囲温度でホーン音波処理してCNT/キシレン溶液に分散した。
・絶縁体溶液は、キシレン中10重量%のポリスチレン(アルドリッチ(Aldrich))を含んでなるものであった。
【0028】
PAni/ヒプコ(Hipco)分散体を、ポリスチレン溶液に0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、5、10%のNT濃度で分散した。次いで、この溶液を、Ag接点を有するガラススライド上にコートし、その導電率を測定した。
【0029】
デントン(Denton)真空装置(デントン(Denton)、米国ニュージャージー州チェリーヒル(Denton Inc. Cherry Hill, NJ))を使用して、アルミニウムマスクによって、2インチ×3インチの顕微鏡スライド上に、Ag接点を厚さ2000Åにスパッタリングした。Ag接点を有する顕微鏡スライドに、マイアー(Meyer)ロッド#4を用いてフィルムをコートし、真空オーブン中、60℃、45秒間乾燥した。コート面積は、1インチ×2インチであり、フィルム厚さは、約1ミクロンであった。厚さは、プロフィロメトリーで決定した。フィルム導電率は、標準4プローブ型測定法を用いて測定した。電流を2つの外部接点で測定した。これらの接点を1インチだけ離して、電位計(ケースレー(Keithley)、617)と直列のヒューレットパッカード(Hewlett Packard)電源に接続した。電圧は、ケースレー(Keithley)マルチメーターを用いて0.25インチ離れた2つの内部接点で測定した。抵抗率(単位、オーム−スクエア)をナノチューブ濃度の関数として下記の図に示す。導電率μは、次のように算出する:μ=ild/VA (1)
ただし、Vは、外部接点で測定された電圧であり、iは、2つの内側接点での電流であり、lは、内部接点間の距離であり、Aは、フィルムの面積であり、dは、フィルムの厚さである。
【0030】
図1の曲線は、DNNSA−PANIの導電率をSWNT濃度の関数として示し、ポリスチレンマトリックス中、DNNSA−PANIでコートされたSWNTの導電率をSWNTの濃度の関数として示す。図に示すとおり、両方の複合物者とも約0.25重量%のナノチューブ濃度でパーコレーションし、導電または絶縁マトリックス中に存在すると、1%以上の濃度差はないようである。
【0031】
実施例3〜5
実施例3は、DNNSA−PANIでコートしたカーボンナノチューブを添加し、このPANIでコートしたチューブをDNNSA−PANI絶縁マトリックス(実施例3)に組み込んだ場合に対して、エチルセルロース絶縁マトリックス(実施例4)に組み込んだ場合の導電率に及ぼす効果を示している。実施例5のデータは、エチルセルロースマトリックス中に分散させた裸SWNTの導電率を示している。実施例1〜2と同様にして、米国特許第5,863,465号明細書(1999年)(モンサント(Monsanto)特許)に報告されるように、ジノニルナフタレンスルホン酸を使用して、ポリアニリンをプロトン化した。固形分の20%がヒプコ(Hipco)(R0236)カーボンナノチューブ(CNIインコーポレーティッド、米国テキサス州ヒューストン(CNI incorporated, Houston TX))であり、固形分の80%が固形分34%のDNNSA−PANIのキシレン溶液である、キシレン中合計2.5%の固体分を使用することによって、DNNSA−PANI/SWNT分散体を作製した。先の実施例に記載する手順に従って、複合物を作製した。PAni/Hipco分散体を、ポリスチレン溶液に0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、5、10%のNT濃度で分散した。フィルムをコーティングする前に、デントン(Denton)真空装置(デントン(Denton)、米国ニュージャージー州チェリーヒル(Denton Inc. Cherry Hill, NJ))を使用して、アルミニウムマスクによって、2インチ×3インチの顕微鏡スライド上に、Ag接点を厚さ2000Åにスパッタリングした。Ag接点を有する顕微鏡スライドに、マイアー(Meyer)ロッド#4を用いてフィルムをコートし、真空オーブン中、60℃、45秒間乾燥した。コート面積は、1インチ×2インチであり、フィルム厚さは、約1ミクロンであった。厚さは、光学干渉計で決定した。エチルセルロース中ヒプコ(Hipco)分散体を、0.1、0.5、1、5、7、9、10、20%のNT濃度で作製した。1分間、ホーン音波処理して、NTを分散した。
【0032】
エチルセルロース(126−1)溶液中のPAni/ヒプコ(Hipco)分散体を、0.1、0.5、0.75、1、2、3、5、10%のNT濃度で作製した。
【0033】
実施例6
実施例6は、DNNSA−PANIでコートしたカーボンナノチューブを、DNNSA−PANI絶縁マトリックス(実施例3)に添加する場合に対して、ポリエチルメタクリラートマトリックス(実施例6)に添加する場合の導電率に及ぼす効果を示している。実施例6のデータは、ポリエチルメタクリラートマトリックス中に分散させたPANIでコートされたSWNTの導電率を示している。実施例1〜2と同様にして、米国特許第5,863,465号明細書(1999年)(モンサント(Monsanto)特許)に報告されるように、ジノニルナフタレンスルホン酸を使用して、ポリアニリンをプロトン化した。固形分の20%がヒプコ(Hipco)(R0236)カーボンナノチューブ(CNIインコーポレーティッド、米国テキサス州ヒューストン(CNI incorporated, Houston TX))であり、固形分の80%が固形分34%のDNNSA−PANIのキシレン溶液である、キシレン中合計2.5%の固体分を使用することによって、DNNSA−PANI/SWNT分散体を作製した。先の実施例に記載する手順に従って、複合物を作製した。
【0034】
PAni/ヒプコ(Hipco)分散体を、ポリスチレン溶液に0.1、0.5、1、5、10%のNT濃度で分散した。フィルムをコーティングする前に、デントン(Denton)真空装置(デントン(Denton)、米国ニュージャージー州チェリーヒル(Denton Inc. Cherry Hill, NJ))を使用して、アルミニウムマスクによって、2インチ×3インチの顕微鏡スライド上に、Ag接点を厚さ2000Åにスパッタリングした。Ag接点を有する顕微鏡スライドに、マイアー(Meyer)ロッド#4を用いてフィルムをコートし、真空オーブン中、60℃、45秒間乾燥した。コート面積は、1インチ×2インチであり、フィルム厚さは、約1ミクロンであった。厚さは、光学干渉計で決定した。
【0035】
実施例7〜9
実施例7は、充填剤としてカーボンブラックインクおよび導電性Agインクを使用するのに比べて、ナノチューブを使用して、PANIの導電率を増大させる利点を示している。
【0036】
キシレン(EMサイエンス(EM Science)、純度:98.5%)14.36gを、モンサントカンパニー(Monsanto Company)の開発段階(developmental)の導電性ポリアニリン溶液XICP−OSO1 0.9624gに添加することによって、キシレン中2.60重量%の導電性ポリアニリンを作製した。XICP−OSO1は、約48.16重量%のキシレン、12.62重量%のブチルセロソルブ、および41.4重量%の導電性ポリアニリンを含有している。
【0037】
ナノチューブをターピノール(turpinol)中に、1.43重量%で分散した。ナノチューブ/ターピノール混合物を、41.4%のPANI−XICP−OSO1溶液と混合する前に、24時間、周囲温度で音波処理した。0、0.25、0.5、0.75、1、1.25、1.5、1.75、2、4、6、10、20、および40%のナノチューブ濃度のナノチューブ/PANI溶液を、顕微鏡スライド上にコートし、真空オーブン中、60℃で、30秒間乾燥した。
【0038】
実施例8では、PANI−XICP−OSO1を、黒鉛インクPM−003A(アチソンコロイド、米国ミシガン州ポートヒューロン(Acheson colloids, Port Hurom, MI))と、0、5、10、20、40、および100重量%で混合した。
【0039】
実施例9では、PANI−XICP−OSO1を、Ag導電性インク#41823(アルファエイサー、米国マサチューセッツ州ワードヒル(Alfa−Aesar, Ward Hill, MA))と、0、5、10、20、40、80、および100重量%で混合した。
【0040】
コート面積は、1インチ×2インチであった。フィルム厚さは、光学干渉計で決定した。デントン(Denton)真空装置(デントン(Denton)、米国ニュージャージー州チェリーヒル(Denton Inc. Cherry Hill, NJ))を使用して、アルミニウムマスクによって、抵抗率測定用のAg接点を、厚さ4000Åにスパッタリングした。フィルム抵抗率は、標準4プローブ型測定法を用いて測定した。電流を2つの外部接点で測定した。これらの接点を1インチだけ離して、電位計(ケースレー(Keithley)、617)と直列のヒューレットパッカード(Hewlett Packard)電源に接続した。電圧は、ケースレー(Keithley)マルチメーターを用いて0.25インチ離れた2つの内部接点で測定した。抵抗率(単位、オーム−スクエア)を、ナノチューブ、黒鉛インク、およびAgインクの濃度の関数として下記の図に示す。下記の図4に示すように、フィルムの抵抗率は、導電性黒鉛インクまたはAgインクを20%未満充填した場合変化しないが、ナノチューブを2%しか充填していない場合4桁低下する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】SWNT(%)に対する導電率のグラフである。
【図2】SWNT(%)に対する導電率、DNNSA−Pani、SWNT/ECを示すグラフである。
【図3】SWNT(%)に対する導電率のグラフである。
【図4】充填剤(%)に対する抵抗率(オーム−スクエア)のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)絶縁ポリマーマトリックスと、
b)前記絶縁ポリマーマトリックス中に分散させた0.1〜10重量%のカーボンナノチューブと、
c)前記カーボンナノチューブ上にコートさせた導電性ポリアニリンとを含んでなる組成物。
【請求項2】
a)カーボンナノチューブを、溶解させたポリアニリンも含有する溶媒中に分散して、第1の液体分散体を形成するステップと、
b)絶縁ポリマー溶液を前記第1の液体分散体と混合して、第2の液体分散体を形成するステップと、
前記第2の液体分散体を基板上に被着させ、前記溶媒を蒸発させるステップとを含んでなる方法。
【請求項3】
前記基板が熱転写印刷用のドナー素子である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の液体分散体を基板上に被着させるステップが、インクジェット印刷、フレキソ印刷、およびグラビアよりなる群から選択される印刷方法で達成される請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−534780(P2007−534780A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536933(P2006−536933)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/035486
【国際公開番号】WO2005/040265
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】