説明

ポリアニリン組成物、及びそれからなる成形体

【課題】耐溶解性が高く、有用な導電度を有するポリアニリン組成物を提供する。
【解決手段】置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなるポリアニリン複合体、フェノール性化合物、シリコーン系化合物、及び溶媒を含むポリアニリン組成物、もしくは該ポリアニリン複合体、フェノール性化合物、ブロック化イソシアネート化合物、及び溶媒を含むポリアニリン組成物で、更に耐熱安定化剤として有機スルホン酸を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアニリン組成物、及びそれからなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリンは、導電性高分子として知られる材料である。ポリアニリンは、その電気的特性に加え、安価なアニリンから比較的簡便に合成でき、且つ導電性を示す状態で、空気等に対して優れた安定性を示すという利点を有する。
【0003】
導電性高分子であるポリアニリンを含む組成物は優れた導電性を有することから、当該組成物からなる成形体は、例えばパワーエレクトロニクス及びオプトエレクトロニクス分野の、静電及び帯電防止材料、透明電極及び導電性フィルム材料、コンデンサの誘電体及び電解質等として用いられている。
【0004】
ポリアニリンの製造方法としては、アニリン又はアニリン誘導体を電解酸化重合する方法又は化学酸化重合する方法が知られている。
電解酸化重合については、電極上でアニリンを重合する方法が、特許文献1や特許文献2に記載されている。電解酸化重合では、電気的特性等に優れたフィルムが得られるが、一般に化学酸化重合に比べて製造コストが高く、大量生産には適しておらず、また、複雑な形状の成形体を得ることも困難である。
一方、化学酸化重合によって、アニリン又はアニリン誘導体の導電性重合体を得るためには、一般に、非導電性塩基状態(いわゆるエメラルディン塩基状態)のポリアニリンにドーパント(ドーピング剤)を加えてプロトネーションする工程が必要である。しかしながら、非導電性塩基状態のポリアニリンは、大部分の有機溶剤に殆ど溶解しないため、工業的な製造に適するものではない。また、プロトネーション後に生成する導電性のポリアニリン複合体(いわゆるエメラルディン塩状態)は、実質的に不溶不融であり、導電性の複合材料及びその成形体を簡便に製造することは難しい。
【0005】
このような状況下、ドーピング後の導電性ポリアニリンの有機溶剤に対する親和性を改善した溶解型のポリアニリン組成物の提案がなされている(特許文献1〜4及び非特許文献1〜2)。しかし、特許文献1〜4及び非特許文献1〜2に記載の方法で得られる導電性ポリアニリンからなる成形体は、電気伝導率等の電気的特性が必ずしも優れているとは言えなかった。
【0006】
導電性ポリアニリンからなる成形体の導電性を高くするため、特許文献5は、実質的に水と混和しない有機溶剤に溶解している、(a)プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体、及び(b)フェノール性水酸基を有する化合物を含む導電性ポリアニリン組成物を開示している。また、特許文献5は、(b)フェノール類化合物の添加量は、(a)プロトネーションされた置換又は未置換ポリアニリン複合体に対して、通常0.01〜1000質量%、好ましくは0.5〜500質量%の範囲であると開示し、さらに、トルエンにジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム及びアニリンを溶解し、塩酸を加え、氷水浴にてフラスコを冷却し、過硫酸アンモニウムを塩酸に溶解した溶液を、滴下してアニリンの重合を行う方法を開示する。しかしながら、導電性高分子であるポリアニリンを含む組成物からなる成形体は、所定の溶剤に対する耐溶剤性が低いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−230825号公報
【特許文献2】特開昭62−149724号公報
【特許文献3】特開平7−70312号公報
【特許文献4】特開2003−183389号公報
【特許文献5】国際公開WO05/052058
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Synthetic metals,48,1992,91-97頁
【非特許文献2】J.Phys.:Condens.Matter,10,1998,8293-8303頁
【非特許文献3】POLYMER:30,1989,2305-2311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐溶解性が高く、有用な導電度を有するポリアニリン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以下のポリアニリン組成物等が提供される。
1.置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなるポリアニリン複合体、
フェノール性化合物、
シリコーン系化合物、及び
溶媒を含むポリアニリン組成物。
2.置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなるポリアニリン複合体、
フェノール性化合物、
シリコーン系化合物、及び
溶媒を用いて製造するポリアニリン組成物。
3.前記シリコーン系化合物が、下記式(X−1)で表わされる繰り返し単位を有する化合物であって、その両端がそれぞれ下記式(X−2)及び(X−3)で表わされる構造を有するシリコーン系化合物である1又は2に記載のポリアニリン組成物。
【化1】

(式中、R、R、R、R、R及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基である。
、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシアルキル基である。
l及びmは、それぞれ独立に、0以上の整数であり、nは1以上の整数である。)
4.前記シリコーン系化合物の重量平均分子量が100000以下である1〜3のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
5.前記シリコーン系化合物のR、R、R、R、R及びR12が、それぞれ独立に、無置換の鎖状飽和脂肪族炭化水素基、又は無置換の芳香族炭化水素基である1〜4のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
6.前記シリコーン系化合物のl+mが0〜3である1〜5のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
7.前記シリコーン系化合物のR、R、R、R、R及びR12の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である個数の割合が90%以下である1〜6のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
8.前記シリコーン系化合物の含有量が、ポリアニリン複合体に対して0.01wt%〜100wt%である1〜7のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
9.置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなるポリアニリン複合体、
フェノール性化合物、
2価のブロック化イソシネート化合物、及び
溶媒を含むポリアニリン組成物。
10.置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなるポリアニリン複合体、
フェノール性化合物、
2価のブロック化イソシネート化合物、及び
溶媒を用いて製造するポリアニリン組成物。
11.前記ブロック化イソシアネート化合物が、下記式(Y)で表わされる化合物がブロック化された化合物である9又は10に記載のポリアニリン組成物。
OCN−X−NCO (Y)
(式中、Xは2価の置換若しくは無置換の炭化水素基である。)
12.前記ブロック化イソシアネート化合物の含有量が、ポリアニリン複合体に対して0.01wt%〜100wt%である9〜11のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
13.前記ポリアニリン複合体のポリアニリン分子が、無置換のポリアニリン分子である1〜12のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
14.前記ポリアニリン複合体のプロトン供与体が、下記式(I)で表わされる化合物である1〜13のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
M(XARn)m (I)
(式中、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基であり、mはMの価数/Xの価数の値である。
Xは、アニオン基である。
Aは、置換又は無置換の炭化水素基である。
Rは、−H、−R101、−OR101、−COR101、−COOR101、−(C=O)−(COR101)、又は−(C=O)−(COOR101)で表わされる基であり、
101は、置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、−(R102O)x−R103で表わされる基、又は−(OSiR103)x−OR103で表わされる基である(R102はそれぞれ独立にアルキレン基であり、R103はそれぞれ独立に炭化水素基であり、xは1以上の整数である)。
nは1以上の整数である。)
15.前記ポリアニリン複合体のプロトン供与体が、下記式(III)で表わされる化合物である1〜14のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【化2】

(式中、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基であり、m’はMの価数である。
112及びR113は、それぞれ独立に、炭化水素基又は−(R114O)r−R115基[ここで、R114はそれぞれ独立に炭化水素基又はシリレン基であり、R115は水素原子、炭化水素基又はR116Si−基(ここで、R116はそれぞれ独立に炭化水素基である)であり、rは1以上の整数である]である。)
16.前記ポリアニリン複合体が、組成物中に溶解してなる1〜15のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
17.前記フェノール性化合物が、フェノール性水酸基を1つ有する化合物である1〜16のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
18.さらに耐熱安定化剤を含む1〜17のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
19.前記耐熱安定化剤が、スルホン酸基を1以上有する有機酸である18に記載のポリアニリン組成物。
20.1〜19のいずれかに記載のポリアニリン組成物から得られた成形体。
21.1〜19のいずれかに記載のポリアニリン組成物から得られたコンデンサ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐溶解性が高く、有用な導電度を有するポリアニリン組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ITOパターニングガラス基板の平面図である。
【図2】ポリアニリン薄膜を備えるITOパターニングガラス基板の平面図である。
【図3】パッキン及びザグリガラスで密閉してなるポリアニリン薄膜を備えるITOパターニングガラス基板の平面図である。
【図4】パッキン及びザグリガラスで密閉してなるポリアニリン薄膜を備えるITOパターニングガラス基板の平面中央横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[シリコーン系化合物含有ポリアニリン組成物]
本発明の第1のポリアニリン組成物は、ポリアニリン複合体、フェノール性化合物、シリコーン系化合物及び溶媒を含む組成物である。
本発明の第1のポリアニリン組成物は、シリコーン系化合物を含有することにより、当該組成物から得られる成形体は、優れた耐溶解性を有しながら導電性を維持することができる。これは、成形体作製時の乾燥工程において、組成物中のシリコーン系化合物が重合して高分子となり、得られる成形体が高分子とポリアニリン複合体とが絡み合った構造を有することで、耐溶解性が向上すると推測される。
【0014】
第1のポリアニリン組成物が含有するシリコーン系化合物は、シロキサン結合(Si−O結合)からなる主骨格を有し、末端に複数の水酸基又はアルコキシ基を有する化合物である。シリコーン系化合物は、好ましくは、下記式(X−1)で表わされる繰り返し単位を有し、その両端がそれぞれ下記式(X−2)及び(X−3)で表わされる構造を有するシリコーン系化合物である。
【化3】

(式中、R、R、R、R、R及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基である。
、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシアルキル基である。
l及びmは、それぞれ独立に、0以上の整数であり、nは1以上の整数である。)
【0015】
上記シリコーン系化合物の重量平均分子量は好ましくは100以上100000以下であり、より好ましくは500以上20000以下であり、さらに好ましくは500以上12000以下である。
シリコーン系化合物の重量平均分子量が100000以下の場合、シリコーン系化合物の溶解性がより高くなる。
【0016】
式(X−1)、(X−2)及び(X−3)のR、R、R、R、R及びR12の炭化水素基は、鎖状若しくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状若しくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水基を含む。
鎖状飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば直鎖若しくは分岐状のアルキル基が挙げられれる。
環状飽和脂肪族炭化水素基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、環状飽和脂肪族炭化水素基は、複数の環状飽和脂肪族炭化水素基が縮合した置換基であってもよく、例えばノルボルニル基、アダマンチル基、縮合アダマンチル基が挙げられる。
鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば直鎖若しくは分岐状のアルケニル基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
【0017】
上記R、R、R、R、R及びR12の鎖状若しくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状若しくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水基は、さらに置換基を有してもよく、当該置換基としては、アルキル基、アリール基、水酸基、アルキルアリール基、複素芳香族基である。なお、複素芳香族基は、上記R、R、R、R、R及びR12と縮合していてもよい。
【0018】
、R、R、R、R及びR12は、好ましくはそれぞれ独立に無置換の鎖状飽和脂肪族炭化水素基、又は無置換の芳香族炭化水素基である。
上記無置換の鎖状飽和脂肪族炭化水素基は、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
上記無置換の芳香族炭化水素基は、好ましくはフェニル基である。
【0019】
、R、R、R、R及びR12は、好ましくは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である個数の割合が90%以下であり、より好ましくは80%以下であり、さらに好ましくは60%以下である。置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である個数の割合が90%以下であることにより、耐熱安定性が向上する。
【0020】
式(X−1)、(X−2)及び(X−3)のR、R、R、R、R10及びR11は、好ましくは水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であり、最も好ましくは水素原子又はエチル基である。
【0021】
式(X−1)、(X−2)及び(X−3)のl+mは、好ましくはl+m=0〜3であり、より好ましくはl+m=0〜2であり、最も好ましくはl+m=1である。
【0022】
本発明の第1のポリアニリン組成物中の上記シリコーン系化合物の含有量は、ポリアニリン複合体に対して、好ましくは0.01wt%〜100wt%であり、より好ましくは1wt%〜50wt%であり、さらに好ましくは2wt%〜25wt%である。
【0023】
本発明の第1のポリアニリン組成物を乾燥して成形体を得る場合、当該乾燥条件は、好ましくは乾燥温度は150℃〜250℃,乾燥時間は5分〜360分である。
シリコーン系化合物を含まないポリアニリン組成物を乾燥する場合、乾燥条件は、例えば150℃5分であるが、本発明の第1のポリアニリン組成物は、シリコーン系化合物を含むので、シリコーン系化合物の重合反応が完了するまで乾燥を行うことが好ましい。
【0024】
[ブロック化イソシアネート化合物含有ポリアニリン組成物]
本発明の第2のポリアニリン組成物は、ポリアニリン複合体、フェノール性化合物、ブロック化イソシネート化合物、及び溶媒を含む組成物である。
本発明の第2のポリアニリン組成物は、ブロック化イソシアネート化合物を含むことにより、当該組成物から得られる成形体は、優れた耐溶解性を有しながら導電性を維持することができる。これは、成形体作製時の乾燥工程において、組成物中のブロック化イソシアネートがポリアニリン複合体と架橋し、得られる成形体が架橋構造を有することで、耐溶解性が向上すると推測される。
【0025】
第2のポリアニリン組成物が含有するブロック化イソシアネート化合物は、2価のブロック化イソシアネート化合物である。
ブロック化イソシアネート化合物の「ブロック化」とは、イソシアネート基がブロック化剤と反応していることを意味し、「2価の」ブロック化イソシアネート化合物とは、分子中に2つのブロック化されたイソシアネート基を有することを意味する。
【0026】
第2のポリアニリン組成物のブロック化イソシアネート化合物は、好ましくは下記式(Y)で表わされる化合物をブロック化した化合物である。
OCN−X−NCO (Y)
(式中、Xは2価の置換若しくは無置換の炭化水素基である。)
【0027】
Xの2価の炭化水素基は、鎖状若しくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状若しくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水基の2価の残基を含む。
2価の鎖状飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば直鎖若しくは分岐状のアルキレン基が挙げられる。
2価の環状飽和脂肪族炭化水素基としては、例えばシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基等のシクロアルキレン基が挙げられる。また、2価の環状飽和脂肪族炭化水素基は、複数の環状飽和脂肪族炭化水素基が縮合した置換基であってもよく、例えばノルボルニレン基、アダマンチレン基、縮合アダマンチレン基が挙げられる。
2価の鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば直鎖若しくは分岐状のアルケニレン基が挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基が挙げられる。
【0028】
上記Xの鎖状若しくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状若しくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基、及び芳香族炭化水基の2価の残基は、さらに置換基を有してもよく、当該置換基としては、アルキル基、アリール基、水酸基、アルキルアリール基、複素芳香族基である。
尚、複素芳香族基は、上記R、R、R、R、R及びR12と縮合していてもよい。
【0029】
Xは、好ましくは置換若しくは無置換の2価の鎖状飽和脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは無置換の2価の鎖状脂肪族炭化水素基である。
上記鎖状飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜12であり、より好ましくは4〜8である。また、X部分の分子量は、好ましくは10〜1000であり、より好ましくは30〜500であり、さらに好ましくは50〜300である。
【0030】
イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化するブロック化剤としては、例えばアセトオキシム、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム化合物、ε−カプロラクタム等のラクタム類、モノアルキルフェノール(クレゾール、ノニルフェノール等)等のアルキルフェノール類、3,5−キシレノール、ジ−t−ブチルフェノール等のジアルキルフェノール類、トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルのようなアセト酢酸エステル等の活性メチレン化合物類、メタノール、エタノール、n−ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等の水酸基含有エーテル類、乳酸エチル、乳酸アミル等の水酸基含有エステル類、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類、アセトアニリド、アクリルアマイド、ダイマー酸アマイド等の酸アミド類、イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール類、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール類、1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類、コハク酸イミド、フタル酸イミド等の酸イミド類等が挙げられる。ブロック化剤は、好ましくはオキシム化合物である。
【0031】
本発明の第2のポリアニリン組成物中の上記ブロック化イソシアネート化合物の含有量は、ポリアニリン複合体に対して、好ましくは0.01wt%〜100wt%であり、より好ましくは1wt%〜50wt%であり、さらに好ましくは2wt%〜25wt%である。
【0032】
本発明の第2のポリアニリン組成物を乾燥して、成形体を得る場合、当該乾燥条件は、好ましくは150〜170℃で5分〜20分である。
ブロック化イソシアネート化合物を含まないポリアニリン組成物を乾燥する場合、乾燥条件は、例えば150℃5分であるが、本発明の第2のポリアニリン組成物は、ブロック化イソシアネート化合物を含むので、ポリアニリンとイソシアネート化合物の結合反応が完了するまで乾燥を行うことが好ましい。
【0033】
本発明の第1のポリアニリン組成物及び本発明の第2のポリアニリン組成物(以下、これらをまとめて本発明のポリアニリン組成物という)が共通して含む成分について以下説明する。
【0034】
[ポリアニリン複合体]
本発明のポリアニリン組成物が含むポリアニリン複合体は、置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなる複合体である。
【0035】
ポリアニリン複合体の置換又は無置換のポリアニリン分子は、汎用性及び経済性の観点から、好ましくは無置換のポリアニリンである。
上記置換ポリアニリン分子の置換基としては、例えばメチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐の炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基(−CF基)等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0036】
置換もしくは無置換のポリアニリン分子は、好ましくは塩素原子を含まない酸の存在下で重合して得られるポリアニリン分子である。塩素原子を含まない酸とは、例えば1族〜16族及び18族に属する原子からなる酸であり、リン酸の存在下で重合して得られるポリアニリン分子が挙げられる。
塩素原子を含まない酸の存在下で得られたポリアニリン分子は、ポリアニリン複合体の塩素含有量をより低くすることができる。
ポリアニリン複合体の塩素含有量は、0.6重量%以下が好ましい。より好ましくは0.1重量%以下であり、さらに好ましくは0.04重量%以下であり、最も好ましくは0.0001重量%以下である。
ポリアニリン複合体の塩素含有量が0.6重量%超の場合、ポリアニリン複合体と接触する金属部分が腐食するおそれがある。
上記塩素含有量は、燃焼−イオンクロマト法によって測定することができる。
【0037】
ポリアニリン複合体のプロトン供与体が、置換又は無置換のポリアニリン分子にドープしていることは、紫外・可視・近赤外分光法やX線光電子分光法によって確認することができ、当該プロトン供与体は、ポリアニリン分子にキャリアを発生させるに十分な酸性を有していれば、特に化学構造上の制限なく使用できる。
上記プロトン供与体としては、例えばブレンステッド酸、又はそれらの塩が挙げられ、好ましくは有機酸、又はそれらの塩であり、さらに好ましくは下記式(I)で示されるプロトン供与体である。
M(XARn)m (I)
【0038】
式(I)のMは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基である。
上記有機遊離基としては、例えば、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、アニリニウム基が挙げられる。また、上記無機遊離基としては、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、セシウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄が挙げられる。
式(I)のXは、アニオン基であり、例えば−SO基、−PO2−基、−PO(OH)基、−OPO2−基、−OPO(OH)基、−COO基が挙げられ、好ましくは−SO基である。
【0039】
式(I)のAは(M(XARn)mのAの定義は)、置換又は無置換の炭化水素基である。
上記炭化水素基は、鎖状若しくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状若しくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基である。
鎖状の飽和脂肪族炭化水素としては、直鎖若しくは分岐状のアルキル基が挙げられる。環状の飽和脂肪族炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。ここで環状の飽和脂肪族炭化水素基は、複数の環状の飽和脂肪族炭化水素基が縮合していてもよい。例えば、ノルボルニル基、アダマンチル基、縮合したアダマンチル基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。鎖状の不飽和脂肪族炭化水素としては、直鎖若しくは分岐状のアルケニル基が挙げられる。
ここで、Aが置換の炭化水素基である場合の置換基は、アルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基又はエステル基である。
Aは、これら置換基の対応するn+1価の残基である。
【0040】
式(I)のRは、Aと結合しており、それぞれ独立して、−H、−R101、−OR101、−COR101、−COOR101、−(C=O)―(COR101)、又は―(C=O)―(COOR101)であり、R101は、置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、−(R102O)x−R103基、又は−(OSiR103)x−OR103(R102はそれぞれ独立にアルキレン基、R103はそれぞれ独立に炭化水素基であり、xは1以上の整数である)である。
101の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、直鎖若しくは分岐のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、エイコサニル基等が挙げられる。また、当該炭化水素基の置換基は、例えばアルキル基、シクロアルキル基、ビニル基、アリル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基又はエステル基である。R103の炭化水素基もR101と同様である。
式(I)のnは1以上の整数であり、式(I)のmは、Mの価数/Xの価数である。
【0041】
式(I)で示される化合物としては、ジアルキルベンゼンスルフォン酸、ジアルキルナフタレンスルフォン酸、又はエステル結合を2以上含有する化合物が好ましい。
上記エステル結合を2以上含有する化合物は、スルホフタール酸エステル、又は下式(II)で表される化合物がより好ましい。
【化4】

(式中、M及びXは、式(I)と同様である。Xは、−SO基が好ましい。)
【0042】
式(II)のR104及び2つのR105は、それぞれ独立して水素原子、炭化水素基又はR108Si−基(ここで、R108は炭化水素基であり、3つのR108は同一又は異なっていてもよい)である。
104及びR105が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、芳香環を含むアリール基、アルキルアリール基等が挙げられる。
108の炭化水素基としては、R104及びR105の場合と同様である。
【0043】
式(II)のR106及びR107は、それぞれ独立に、炭化水素基又は−(R109O)−R110基[ここで、R109は炭化水素基又はシリレン基であり、R110は水素原子、炭化水素基又はR111Si−(R111は、炭化水素基であり、3つのR111は同一又は異なっていてもよい)であり、qは1以上の整数である]である。
106及びR107が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1〜24、好ましくは炭素数4以上の直鎖若しくは分岐状のアルキル基、芳香環を含むアリール基、アルキルアリール基等が挙げられ、R106及びR107が炭化水素基である場合の炭化水素基の具体例としては、例えば、直鎖又は分岐状のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
【0044】
106及びR107における、R109が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1〜24の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、芳香環を含むアリーレン基、アルキルアリーレン基、アリールアルキレン基等である。また、R106及びR107における、R110及びR111が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、R104及びR105の場合と同様であり、qは、1〜10であることが好ましい。
【0045】
106及びR107が−(R109O)n−R110基である場合の式(II)で表わされる化合物の具体例としては、下記式で表わされる2つの化合物である。
【化5】

(式中、Xは式(I)と同様である。)
【0046】
上記式(II)で表わされる化合物は、下記式(III)で示されるスルホコハク酸誘導体であることがさらに好ましい。
【化6】

(式中、Mは、式(I)と同様である。m’は、Mの価数である。)
【0047】
式(III)のR112及びR113は、それぞれ独立に、炭化水素基又は−(R114O)r−R115基[ここで、R114はそれぞれ独立に炭化水素基又はシリレン基であり、R115は水素原子、炭化水素基又はR116Si−基(ここで、R116はそれぞれ独立に炭化水素基である)であり、rは1以上の整数である]である。
【0048】
112及びR113が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、R106及びR107と同様である。
112及びR113において、R114が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、上記R109と同様である。また、R112及びR113において、R115及びR116が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、上記R104及びR105と同様である。
rは、1〜10であることが好ましい。
【0049】
112及びR113が−(R114O)q−R115基である場合の具体例としては、R106及びR107における−(R109O)n−R110と同様である。
112及びR113の炭化水素基としては、R106及びR107と同様であり、ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等が好ましい。
【0050】
上記プロトン供与体はその構造を変えることにより、ポリアニリン複合体の導電性や、溶剤への溶解性をコントロールできることが知られている(特許第3384566号)。本発明においては、用途毎の要求特性によって最適なプロトン供与体を選択できる。
【0051】
ポリアニリン分子に対するプロトン供与体のドープ率は、好ましくは0.35以上0.65以下であり、より好ましくは0.42以上0.60以下であり、さらに好ましくは0.43以上0.57以下であり、特に好ましくは0.44以上0.55以下である。ドープ率が0.35未満である場合、ポリアニリン複合体の有機溶剤への溶解性が高くならないおそれがある。
尚、ドープ率は(ポリアニリン分子にドープしているプロトン供与体のモル数)/(ポリアニリンのモノマーユニットのモル数)で定義される。例えば無置換ポリアニリンとプロトン供与体を含むポリアニリン複合体のドープ率が0.5であることは、ポリアニリンのモノマーユニット分子2個に対し、プロトン供与体が1個ドープしていることを意味する。
尚、ドープ率は、ポリアニリン複合体中のプロトン供与体とポリアニリン分子のモノマーユニットのモル数が測定できれば算出可能である。例えば、プロトン供与体が有機スルホン酸の場合、プロトン供与体由来の硫黄原子のモル数と、ポリアニリンのモノマーユニット由来の窒素原子のモル数を、有機元素分析法により定量し、これらの値の比を取ることでドープ率を算出できる。但し、ドープ率の算出方法は、当該手段に限定されない。
【0052】
ポリアニリン複合体は、無置換ポリアニリン分子とプロトン供与体であるスルホン酸とを含み、下記式(5)を満たすことが好ましい。
0.42≦S/N≦0.60 (5)
(式中、Sはポリアニリン複合体に含まれる硫黄原子のモル数の合計であり、Nはポリアニリン複合体に含まれる窒素原子のモル数の合計である。
尚、上記窒素原子及び硫黄原子のモル数は、例えば有機元素分析法により測定した値である。)
【0053】
ポリアニリン複合体は、好ましくは組成物中に溶解している。
ここで「溶解している」とは、ポリアニリン複合体が組成物中に分子単位で均一に溶けていることを意味し、例えばポリアニリン複合体を組成物中溶解し、遠心分離機にて遠心力(1000G、30分)をかけても、組成物中にポリアニリン複合体の濃度勾配が生じないことから確認できる。
溶解しているポリアニリン複合体を含む組成物は、成膜した際に、粒界がない均一なポリアニリン複合体の膜を得ることができる。
【0054】
ポリアニリン複合体は、さらにリンを含んでも含まなくてもよい。
ポリアニリン複合体がリンを含む場合、リンの含有量は例えば10重量ppm以上5000重量ppm以下である。またリンの含有量は、例えば2000重量ppm以下、500重量ppm以下、250重量ppm以下である。
上記リンの含有量は、ICP発光分光分析法で測定することができる。
また、ポリアニリン複合体は、不純物として第12族元素(例えば亜鉛)を含まないことが好ましい。
【0055】
ポリアニリン複合体は、公知の方法(例えば塩酸存在下でのアニリンの重合)で製造することができるが、好ましくはプロトン供与体、リン酸、及びプロトン供与体とは異なる乳化剤を含み、2つの液相を有する溶液中で、置換又は無置換のアニリンを化学酸化重合することにより製造する。
【0056】
ここで「2つの液相を有する溶液」とは、溶液中に相溶しない2つの液相が存在する状態を意味する。例えば、溶液中に「高極性溶媒の相」と「低極性溶媒の相」が存在する状態、を意味する。
また、「2つの液相を有する溶液」は、片方の液相が連続相であり、他方の液相が分散相である状態も含む。例えば「高極性溶媒の相」が連続相であり「低極性溶媒の相」が分散相である状態、及び「低極性溶媒の相」が連続相であり「高極性溶媒の相」が分散相である状態が含まれる。
上記ポリアニリン複合体の製造方法に用いる高極性溶媒としては、水が好ましく、低極性溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0057】
上記プロトン供与体は、好ましくは下記式(I)で表わされる化合物であり、より好ましくは下記式(II)で表わされる化合物であり、さらに好ましくは下記式(III)で表わされる化合物である。
【化7】

(式中、M、X、A、R、R104、R105、R106、R107、R112、R113、n、m及びm’は、ポリアニリン複合体のプロトン供与体で説明した通りである。)
【0058】
上記乳化剤は、親水性部分がイオン性であるイオン性乳化剤、及び親水性部分が非イオン性である非イオン性乳化剤のどちらでも使用でき、また、1種又は2種以上の乳化剤を混合して使用してもよい。
【0059】
イオン性乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤及び双性乳化剤が挙げられる。
アニオン性乳化剤(陰イオン乳化剤)の具体例としては、脂肪酸、不均化ロジン石けん、高級アルコールエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、アルケニルコハク酸、ザルコシネート、及びそれらの塩が挙げられる。
カチオン性乳化剤(陽イオン乳化剤)の具体例としては、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩が挙げられる。
双性乳化剤(両イオン乳化剤)の具体例としては、アルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、アミノ酸型、アミンオキサイド型が挙げられる。
非イオン乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレングリセロールボレート脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0060】
上記乳化剤のうち、アニオン性乳化剤及び非イオン乳化剤が好ましい。
アニオン性乳化剤としては、リン酸エステル構造を有するアニオン性乳化剤がさらに好ましい。また、非イオン乳化剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル構造を有する非イオン乳化剤がさらに好ましい。
【0061】
プロトン供与体の使用量は、アニリン単量体1molに対して好ましくは0.1〜0.5molであり、より好ましくは0.3〜0.45molであり、さらに好ましくは0.35〜0.4molである。
プロトン供与体の使用量が当該範囲より多い場合、重合終了後に例えば「高極性溶剤の相」と「低極性溶剤の相」を分離することができないおそれがある。
【0062】
リン酸の使用濃度は、高極性溶媒に対して0.3〜6mol/Lであり、より好ましくは1〜4mol/Lであり、さらに好ましくは1〜2mol/Lである。
【0063】
乳化剤の使用量は、アニリン単量体1molに対して好ましくは0.001〜0.1molであり、より好ましくは0.002〜0.02molであり、さらに好ましくは0.003〜0.01molである。
乳化剤の使用量が当該範囲より多い場合、重合終了後に「高極性溶剤の相」と「低極性溶剤の相」を分離することができないおそれがある。
【0064】
化学酸化重合に用いる酸化剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素のような過酸化物;二クロム酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、硫酸カリウム鉄(III)、三塩化鉄(III)、二酸化マンガン、ヨウ素酸、過マンガン酸カリウム、あるいはパラトルエンスルホン酸鉄等が使用でき、好ましくは過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
これら酸化剤は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0065】
酸化剤の使用量は、アニリン単量体1molに対して好ましくは0.05〜1.8molであり、より好ましくは0.8〜1.6molであり、さらに好ましくは1.2〜1.4molである。酸化剤の使用量を当該範囲とすることで、十分な重合度が得られる。また、アニリンが十分に重合しているので、分液回収が容易であり、また重合体の溶解性が低下するおそれもない。
重合温度は通常−5〜60℃で、好ましくは−5〜40℃である。また、重合温度は重合反応の途中に変えてもよい。重合温度が当該範囲であることで、副反応を回避することができる。
【0066】
ポリアニリン複合体は、具体的には以下の方法で製造することができる。
プロトン供与体及び乳化剤をトルエンに溶解した溶液を、窒素等の不活性雰囲気の気流下においたセパラブルフラスコに入れ、さらにこの溶液に、置換又は無置換のアニリンを加える。その後、塩素を含まないリン酸を溶液に添加し、溶液温度を冷却する。
溶液内温を冷却した後、攪拌を行う。過硫酸アンモニウムをリン酸に溶解した溶液を、滴下ロートを用いて滴下し、反応させる。その後、溶液温度を上昇させ、反応を継続する。反応終了後、静置することで二相に分離した水相側を分液する。有機相側にトルエンを追加し、リン酸及びイオン交換水で洗浄を行うことでポリアニリン複合体(プロトネーションされたポリアニリン)トルエン溶液が得られる。
得られた複合体溶液に含まれる若干の不溶物を除去し、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収する。この溶液をエバポレーターに移し、加温及び減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、ポリアニリン複合体が得られる。
【0067】
[フェノール性化合物]
本発明のポリアニリン組成物が含むフェノール性化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されない。フェノール性水酸基を有する化合物とは、フェノール性水酸基を1つ有する化合物、フェノール性水酸基を複数有する化合物、及びフェノール性水酸基を1つ又は複数有する繰り返し単位から構成される高分子化合物である。
【0068】
フェノール性水酸基を1つ有する化合物は、好ましくは下記式(A)、(B)及び(C)で表わされる化合物である。
【化8】

(式中、nは1〜5の整数であり、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1である。
Rは、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基である。)
【0069】
式(A)で表されるフェノール性化合物において、−ORの置換位置はフェノール性水酸基に対し、メタ位、又はパラ位であることが好ましい。−ORの置換位置をメタ位又はパラ位とすることにより、フェノール性水酸基の立体障害が低減され、組成物の導電性をより高めることができる。
【0070】
式(A)で表わされるフェノール性化合物の具体例としては、メトキシフェノール、エトキシフェノール、プロポキシフェノール、イソプロポキシフェノール、ブチルオキシフェノール、イソブチルオキシフェノール、ターシャルブチルオキシフェノールが挙げられる。
【0071】
【化9】

(式中、nは0〜7の整数であり、好ましくは0〜3であり、より好ましくは1である。
Rは、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキルチオ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基である。)
【0072】
式(B)で表わされるフェノール性化合物の具体例としては、ヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0073】
【化10】

(式中、nは1〜5の整数であり、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1である。
Rは、それぞれ炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルキルチオ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基である。)
【0074】
式(C)で表わされる化合物の具体例としては、o−,m−若しくはp−クレゾール、o−,m−若しくはp−エチルフェノール、o−,m−若しくはp−プロピルフェノール、o−,m−若しくはp−ブチルフェノールが挙げられる。
【0075】
式(A)、(B)及び(C)のRについて、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャルブチル等が挙げられる。
アルケニル基としては、上述したアルキル基の分子内に不飽和結合を有する基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、ナフチル等が挙げられる。
アルキルアリール基、及びアリールアルキル基としては、上述したアルキル基とアリール基を組み合わせて得られる基等が挙げられる。
【0076】
上記フェノール性水酸基を1つ有する化合物の例を示したが、置換フェノール類の具体例としてはフェノール、o−,m−若しくはp−クロロフェノール、サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。フェノール性水酸基を複数有する化合物の具体例としてはカテコール、レゾルシノール、下記式(D)で表される化合物が挙げられる。
【化11】

(式中、Rは炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、ハロゲン原子、カルボン酸基、アミノ基、SH基、スルホン酸基、又は水酸基であり、複数のRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。nは0〜6の整数である。)
【0077】
式(D)で表わされるフェノール性化合物は、互いに隣接しない2以上の水酸基を有することが好ましい。
また、式(D)で表されるフェノール性化合物の具体例としては、1,6ナフタレンジオール、2,6ナフタレンジオール、2,7ナフタレンジオールが挙げられる。
【0078】
フェノール性水酸基を1つ又は複数有する繰り返し単位から構成される高分子化合物の具体例としては、フェノール樹脂、ポリフェノール、ポリ(ヒドロキシスチレン)が挙げられる。
【0079】
組成物中のフェノール性化合物の含有量は、好ましくはポリアニリン複合体1gに対してフェノール性化合物のモル濃度が0.01[mmol/g]以上100[mol/g]以下、より好ましくは0.05[mmol/g]以上1[mol/g]以下、さらに好ましくは0.1[mmol/g]以上500[mmol/g]以下、特に好ましくは0.2[mmol/g]以上80[mmol/g]以下の範囲である。
フェノール性化合物の含有量が少なすぎる場合、電気伝導率の改善効果が得られないおそれがある。一方、フェノール性化合物の含有量が多すぎる場合、膜質が悪くなるおそれがある。また、揮発除去する際に多大な熱や時間等の労力を必要としコスト増となる。
【0080】
[溶剤]
本発明のポリアニリン組成物が含む溶剤は、有機溶剤でも水等の無機溶剤でもよく、また1種単独でも2種以上の混合溶媒でもよい。好ましくは有機溶剤である。
また、有機溶剤は、水溶性有機溶剤でも、実質的に水に混和しない有機溶剤(水不混和性有機溶剤)でもよい。
【0081】
上記水溶性有機溶剤は、プロトン性極性溶媒でも非プロトン性極性溶媒でもよく、例えばイソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類、;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;Nメチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
上記水不混和性有機溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素系溶剤;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等の含ハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類溶剤、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類溶剤等が挙げられる。これらの中では、ドープされたポリアニリンの溶解性に優れる点でトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、クロロホルム、トリクロロエタン及び酢酸エチルが好ましい。
【0082】
溶剤として有機溶剤を用いる場合、水不混和性有機溶剤と水溶性有機溶剤を99〜50:1〜50(質量比)で混合した混合有機溶剤を用いることにより、保存時のゲル等の発生を防止でき、長期保存できることから好ましい。
上記混合有機溶剤の水不混和性有機溶剤としては、低極性有機溶剤が使用でき、当該低極性有機溶剤は、トルエンやクロロホルムが好ましい。また、混合有機溶剤の水溶性有機溶剤としては、高極性有機溶剤が使用でき、例えば、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,2−メトキシエタノール,2−エトキシエタノール,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン,テトラヒドロフラン又はジエチルエーテルが好ましい。
【0083】
溶剤中のポリアニリン複合体の割合は、溶剤の種類によるが、通常、900g/kg以下であり、好ましくは0.01g/kg以上300g/kg以下であり、より好ましくは10g/kg以上300g/kg以下であり、さらに好ましくは30g/kg以上300g/kg以下の範囲である。
ポリアニリン複合体の含有量が多すぎると、溶液状態が保持できなくなり、成形体を成形する際の取り扱いが困難になり、成形体の均一性が損なわれ、ひいては成形体の電気特性や機械的強度、透明性の低下を生じるおそれがある。一方、ポリアニリン複合体の含有量が少なすぎると、後述する方法により成膜したとき、非常に薄い膜しか製造できず、均一な導電性膜の製造が難しくなるおそれがある。
【0084】
[耐熱安定化剤]
本発明のポリアニリン組成物は、好ましくは耐熱安定化剤を含む。
上記耐熱安定化剤とは、酸性物質又は酸性物質の塩であり、酸性物質は有機酸(有機化合物の酸)、無機酸(無機化合物の酸)のいずれでもよい。また、本発明のポリアニリン組成物は、複数の耐熱安定化剤を含んでいてもよい。
【0085】
本発明の組成物が耐熱安定化剤として酸性物質のみを含む場合には、好ましくは当該酸性物質は、ポリアニリン複合体のプロトン供与体と異なる化合物であり、本発明の組成物が酸性物質の塩のみを含む場合には、好ましくは当該酸性物質の塩は、ポリアニリン複合体のプロトン供与体と異なり化合物である。また、本発明の組成物が耐熱安定化剤として酸性物質及び酸性物質の塩の両方を含む場合には、好ましくは当該酸性物質及び酸性物質の塩のうち、少なくとも1つはプロトン供与体と異なる化合物である。
【0086】
本発明の組成物が、耐熱安定化剤として酸性物質のみを含む場合には、好ましくは当該酸性物質は、フェノール性化合物とは異なる。本発明の組成物が、耐熱安定化剤として酸性物質の塩のみを含む場合には、好ましくは当該酸性物質の塩は、フェノール性化合物とは異なる。また、本発明の組成物が、耐熱安定化剤として酸性物質及び酸性物質の塩の両方を含む場合には、好ましくは当該酸性物質及び酸性物質の塩のうち少なくとも1つは、フェノール性化合物と異なる。
【0087】
耐熱安定化剤である酸性物質は、好ましくは有機酸であり、より好ましくはスルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基、又はホスホン酸基を1以上有する有機酸であり、さらに好ましくは、スルホン酸基を1以上有する有機酸である。
【0088】
上記スルホン酸基を1以上有する有機酸は、好ましくはスルホン酸基を1以上有する、環状、鎖状若しくは分岐のアルキルスルホン酸、置換若しくは無置換の芳香族スルホン酸、又はポリスルホン酸である。
上記アルキルスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸が挙げられる。ここでのアルキル基は、好ましくは炭素数が1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
上記芳香族スルホン酸としては、例えば、ベンゼン環を有するスルホン酸、ナフタレン骨格を有するスルホン酸、アントラセン骨格を有するスルホン酸、置換又は無置換のベンゼンスルホン酸、置換又は無置換のナフタレンスルホン酸及び置換又は無置換のアントラセンスルホン酸が挙げられ、好ましくはナフタレンスルホン酸である。具体例としては、ナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸が挙げられる。
ここで置換基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アシル基からなる群から選択される置換基であり、1以上置換していてもよい。
上記ポリスルホン酸は、高分子鎖の主鎖又は側鎖に複数のスルホン酸基が置換したスルホン酸である。例えば、ポリスチレンスルホン酸が挙げられる。
【0089】
上記カルボキシ基を1以上有する有機酸は、好ましくはカルボキシ基を1以上有する、環状、鎖状若しくは分岐のアルキルカルボン酸、置換若しくは無置換の芳香族カルボン酸、又はポリカルボン酸である。
上記アルキルカルボン酸としては、例えばウンデシレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、2−エチルヘキサン酸が挙げられる。ここでアルキル基は好ましくは炭素数が1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
上記置換若しくは無置換の芳香族カルボン酸としては、例えば、置換又は無置換のベンゼンカルボン酸及びナフタレンカルボン酸が挙げられる。ここで置換基は、例えば、スルホン酸基、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アシル基からなる群から選択される置換基であり、1以上置換していてもよい。具体例としては、サリチル酸、安息香酸、ナフトエ酸、トリメシン酸が挙げられる。
【0090】
上記リン酸基又はホスホン酸基を1以上有する有機酸は、好ましくはリン酸基又はホスホン酸基を1以上有する環状、鎖状若しくは分岐のアルキルリン酸若しくはアルキルホスホン酸;置換若しくは無置換の芳香族リン酸若しくは芳香族ホスホン酸;ポリリン酸若しくはポリホスホン酸である。
上記アルキルリン酸又はアルキルホスホン酸としては、例え、ドデシルリン酸、リン酸水素ビス(2−エチルヘキシル)が挙げられる。ここでアルキル基は好ましくは炭素数が1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基である。
上記芳香族リン酸及び芳香族ホスホン酸としては、置換又は無置換のベンゼンスルホン酸又はホスホン酸、及びナフタレンスルホン酸又はホスホン酸等が挙げられる。ここで置換基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アシル基からなる群から選択される置換基であり、1以上置換していてもよい。例えば、フェニルホスホン酸が挙げられる。
【0091】
本発明の組成物が含む酸性物質の塩としては、上記酸性物質の塩が挙げられる。
本発明の組成物は、耐熱安定化剤である酸性物質及び/又は酸性物質の塩を2つ以上含んでもよい。具体的には、本発明の組成物は、異なる複数の酸性物質及び/又は異なる複数の酸性物質の塩を含んでいてもよい。
【0092】
ポリアニリン複合体のプロトン供与体がスルホン酸であり、組成物が耐熱安定化剤として酸性物質のみを含む場合には、当該酸性物質がプロトン供与体と同一又は異なるスルホン酸であることが好ましい。また、組成物が耐熱安定化剤として酸性物質の塩のみを含む場合には、その酸性物質の塩が、ポリアニリン複合体のプロトン供与体と同一又は異なるスルホン酸の塩であることが好ましい。
組成物が耐熱安定化剤として酸性物質及び前記酸性物質の塩を含む場合には、酸性物質及び酸性物質の塩のうち少なくとも1つがプロトン供与体と同一又は異なるスルホン酸又はスルホン酸の塩であることが好ましい。
【0093】
本発明の組成物が耐熱安定化剤としてスルホン酸のみを含む場合には、好ましくは式(12)を満たすとよく、組成物が耐熱安定化剤としてスルホン酸の塩のみを含む場合には、好ましくは式(13)を満たすとよく、組成物が耐熱安定化剤としてスルホン酸及びスルホン酸の塩を含む場合には、好ましくは式(14)を満たすとよい。
0.01≦S/N≦0.5 (12)
0.01≦S/N≦0.5 (13)
0.01≦S/N≦0.5 (14)
(ここで、Sは組成物に含まれている全ての酸性物質の硫黄原子のモル数の合計であり、Nは組成物に含まれている全てのポリアニリン複合体の窒素原子のモル数の合計を意味し、Sは組成物に含まれている全ての酸性物質の塩の硫黄原子のモル数の合計であり、Nは組成物に含まれている全てのポリアニリン複合体の窒素原子のモル数の合計を意味し、Sは組成物に含まれている全ての酸性物質及び酸性物質の塩の硫黄原子のモル数の合計であり、Nは組成物に含まれている全てのポリアニリン複合体の窒素原子のモル数の合計を意味する。)
【0094】
本発明の組成物が上記式(12)、(13)又は(14)のいずれかを満たす場合、当該組成物は、好ましくはさらに下記式(11)を満たす。
0.36≦S/N≦1.15 (11)
(ここで、Sは組成物に含まれる硫黄原子のモル数であり、Nは組成物に含まれる窒素原子のモル数を意味する。)
【0095】
本発明の組成物が酸性物質のみを含む場合、当該酸性物質の酸性度(pKa)が5.0以下であることが好ましい。尚、酸性度の下限は特に制限されないが、例えば、酸性度が−4.0以下の酸性物質を含む場合では、ポリアニリン複合体が劣化するおそれがある。
本発明の組成物が酸性物質の塩のみを含む場合、当該酸性物質の塩の酸性度が5.0以下であることが好ましい。酸性度の下限については、上記酸性物質と同様である。
本発明の組成物が酸性物質及び酸性物質の塩の両方を含む場合、当該酸性物質の酸性度が5.0以下及び酸性度が5.0以下の酸性物質の塩のうち、少なくとも1つを満たすことが好ましい。酸性度の下限については、上記と同様である。
【0096】
酸性度(pKa)は、計算化学法によって定義される。即ちA.Klamtらが開発した量子化学計算により分子表面の電荷密度を計算し、異種分子間の相互作用を活量係数として算出するJournal of Physical Chemistryの1995年、第99巻、p.2224に記載された方法を用いる。
具体的には、「TURBOMOLE Version 6.1」(COSMO logic社製)を用いて、基底関数にTZVPを用いて構造を最適化し、この構造を用いてCOSMO−RS法計算を「COSMO therm Version C2.1 Release 01.10」(COSMO logic社製)により行う。
ここで、「COSMO therm Version C2.1 Release 01.10」に25℃の水溶媒中との条件と、分子の化学式と、脱プロトンした分子の化学式と、を入力することで、pKaを算出することができる。
【0097】
本発明の組成物において、耐熱安定化剤の含有量は、好ましくはポリアニリン複合体100質量部に対して1〜1000質量部であり、より好ましくは10〜100質量部である。
【0098】
本発明の組成物は、例えば90%重量以上、95重量%以上、99重量%以上、100重量%がポリアニリン複合体、溶剤、フェノール性化合物及び耐熱安定化剤からなってもよく、さらに他の樹脂、無機材料、硬化剤、可塑剤、有機導電材料等の添加剤を含んでもよい。
【0099】
他の樹脂は、例えば、バインダー基材、可塑剤、マトリックス基材として添加される。
他の樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコールが挙げられる。
また上記樹脂の代わりに、また樹脂と共に、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、もしくはこれら熱硬化性樹脂を形成し得る前駆体を含んでもよい。
【0100】
無機材料は、例えば、強度、表面硬度、寸法安定性その他の機械的物性の向上、あるいは導電性等の電気特性を向上する目的で添加される。
無機材料の具体例としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、チタニア(二酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)、Sn含有In(ITO)、Zn含有In、Inの共置換化合物(4価元素及び2価元素が3価のInに置換した酸化物)、Sb含有SnO(ATO)、ZnO、Al含有ZnO(AZO)、Ga含有ZnO(GZO)等が挙げられる。
【0101】
硬化剤は、例えば、強度、表面硬度、寸法安定性その他の機械的物性の向上等の目的で添加される。硬化剤の具体例としては、例えば、フェノール樹脂等の熱硬化剤、アクリレート系モノマーと光重合性開始剤による光硬化剤が挙げられる。
【0102】
可塑剤は、例えば、引張強度や曲げ強度等の機械的特性の向上等の目的で添加される。
可塑剤の具体例としては、例えば、フタル酸エステル類やリン酸エステル類が挙げられる。有機導電材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブのような炭素材料、あるいは、本発明で得られるポリアニリン以外の、導電性高分子等が挙げられる。
【0103】
上記成分を含む本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、公知の方法で調製することができる。本発明の組成物は、例えばWO05/052058に開示の方法により調製することができる。
【0104】
[成形体]
本発明のポリアニリン組成物から、成形体、導電性積層体(表面導電性物品)、導電性物品、導電性フィルムが得られる。
例えば本発明の組成物を乾燥し、溶剤を除去することによって成形体が得られる。当該成形体の形状は板状、棒状等どのような形状であってもよい。例えば、本発明の組成物を、所望の形状を有するガラスや樹脂フィルム、シート、不織布等の基材に塗布し、溶剤を除去することによって、導電性膜を有する導電性積層体を製造することができる。当該導電性積層体を真空成型や圧空成形等の公知の方法により所望の形状に加工することにより、導電性物品を製造することができる。成形の観点からは、基材は樹脂フィルム又はシート、不織布が好ましい。
【0105】
本発明の導電性膜(導電性フィルム)の厚さは、通常1mm以下、好ましくは10nm以上50μm以下の範囲である。この範囲の厚みの膜は、成膜時にひび割れが生じにくく、電気特性が均一である等の利点を有する。
【0106】
組成物の基材への塗布方法としては、キャスト法、スプレー法、ディップコート法、ドクターブレード法、バーコート法、スピンコート法、エレクトロスピニング法、スクリーン印刷、グラビア印刷法等、公知の方法を用いることができる。
【0107】
本発明の組成物は、基材を有しない自己支持型成形体とすることもできる。
自己支持型成形体とする場合には、好ましくは、組成物が上述した他の樹脂を含むようにすると、所望の機械的強度を有する成形体を得ることができる。
[コンデンサ]
本発明の組成物からコンデンサが得られる。
当該コンデンサとしては、具体的には、電解コンデンサ、電気二重層コンデンサが挙げられる。ここで電解コンデンサには、固体電解コンデンサが含まれる。
また、本発明の組成物からめっき下地剤又は防錆剤が得られる。
【実施例】
【0108】
製造例
[ポリアニリン複合体の製造]
エーロゾルOT(ジイソオクチルスルホコハク酸ナトリウム)37.8g及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル構造を有する非イオン乳化剤であるソルボンT−20(東邦化学工業株式会社製)1.47gをトルエン600mLに溶解した溶液を、窒素気流下においた6Lのセパラブルフラスコに入れ、さらにこの溶液に、22.2gのアニリンを加えた。その後、1Mリン酸1800mLを溶液に添加し、トルエンと水の2つの液相を有する溶液の温度を5℃に冷却した。
溶液内温が5℃に到達した時点で、毎分390回転で攪拌を行った。65.7gの過硫酸アンモニウムを1Mリン酸600mLに溶解した溶液を、滴下ロートを用いて2時間かけて滴下した。滴下開始から18時間、溶液内温を5℃に保ったまま反応を実施した。その後、反応温度を40℃まで上昇させ、1時間反応を継続した。その後、静置することで二相に分離した水相側を分液した。有機相側にトルエン1500mLを追加し、1Mリン酸600mLで1回、イオン交換水600mLで3回洗浄を行うことでポリアニリン複合体(プロトネーションされたポリアニリン)トルエン溶液を得た。
得られた複合体溶液に含まれる若干の不溶物を#5Cの濾紙により除去し、ポリアニリン複合体のトルエン溶液を回収した。この溶液をエバポレーターに移し、60℃の湯浴で加温し、減圧することにより、揮発分を蒸発留去し、43.0gのポリアニリン複合体を得た。
調製したポリアニリン複合体を有機物塩素分−電量滴定法により塩素含有量を測定した結果、塩素含有量が5重量ppm未満であることを確認した。
【0109】
実施例1
[ポリアニリン組成物]
得られた導電性ポリアニリン複合体7gをイソプロパノール(IPA)46.5g/4−tert−アミルフェノール(4−tert−ペンチルフェノール:tAP)46.5gに溶解し,均一な溶液を調製した。この溶液に2−ナフタレンスルホン酸0.65g及びSR−13(小西化学製)を0.21g添加し,均一な導電性ポリアニリン組成物を得た。
尚、上記SR−13は、下記構造を有する重量平均分子量が5000以上7000以下(メーカー公表値)のシリコーン系化合物である。
【化12】

【0110】
[導電度及び耐熱性の評価]
図1に示すパターニングによりITO電極が表面に形成された30mm角のガラス基板の上面に、得られた導電性ポリアニリン組成物約1mlをスピンコート法により塗布した。当該スピンコーティングにおいて、ガラス基板に導電性ポリアニリン組成物を滴下した後のガラス基板回転時間は15秒間であり、回転速度は1000rpmであった。その後、150℃/20分の乾燥を行い、導電性ポリアニリン薄膜を得た。図2に示すように、得られた薄膜を幅約2mmになるように不要な部分を削り取った。230℃で5分間熱処理を実施し、得られた薄膜の電気抵抗値、膜の幅、膜の長さ及び膜厚を測定し、薄膜の初期の電導度を算出した。結果を表1に示す。
【0111】
加熱処理後の導電性ポリアニリン薄膜上にスルホランを1g滴下し,80℃で2時間加熱した。加熱後、滴下したスルホランをガラス基板を傾けることにより除去し、薄膜を150℃で5分乾燥させた。その後、図3及び図4に示すように薄膜はパッキンとザグリガラスで密閉し(図3は平面図、図4は平面中央横断面図)、スルホラン浸漬後の薄膜の電気抵抗値を測定した。また、膜の幅、膜の長さ及び膜厚を測定し、スルホラン浸漬後の薄膜の電導度を算出した。その後、145℃の恒温槽に静置し、120時間経過後の電気抵抗値を測定した。結果を表1に示す。
【0112】
[耐溶解性の評価]
30mm角のガラス基板の上面に、得られた導電性ポリアニリン組成物約1mlをスピンコート法により塗布した。当該スピンコーティングにおいて、ガラス基板に導電性ポリアニリン組成物を滴下した後のガラス基板回転時間は15秒間であり、回転速度は1000rpmであった。その後、150℃/20分の乾燥を行い、導電性ポリアニリン薄膜を得た。230℃で5分間熱処理を実施した。熱処理後の導電性ポリアニリン薄膜上にスルホランを1g滴下し,80℃で2時間加熱した。加熱後、滴下したスルホランをガラス基板を傾けることにより除去した。除去したスルホランをサンプリングし、液体クロマトグラフィー法を用い、得られたピーク面積からドーパントであるAOTの定量分析を実施した。なお、この定量分析ではスルホラン1mlあたりに溶解したAOTの重量[μg]を分析した。結果を表1に示す。
尚、上記定量分析に用いた液体クロマトグラフィーは、以下の条件で行った。
装置 :Agilent社製 1100シリーズ
カラム:GLscince inertsil社製 ODS−3V(粒子径5μm、カラム内径4.6μm、カラム長250mm)
流量 :1.0ml/min
カラム温度:40℃
測定時間:0−15min
サンプル注入量:10μl
検出器:polymer laboratories社製 PL−ELS2100
【0113】
実施例2
SR−13の代わりに下記構造を有する重量平均分子量が1000以上10000以下(メーカー公表値)のシリコーン系化合物であるSR−33(小西化学製)を0.7g用いてポリアニリン組成物を調製した他は実施例1と同様にして、ポリアニリン薄膜を成膜し、評価した。結果を表1に示す。
【化13】

【0114】
実施例3
SR−13の代わりに下記組成を有するブロック化イソシアネート化合物であるデュラネートX1110(旭化成ケミカルズ株式会社製)を0.34g用いてポリアニリン組成物を調製し、且つポリアニリン薄膜を170℃/5分で乾燥して成膜した他は実施例1と同様にして、ポリアニリン薄膜を成膜し、評価した。結果を表1に示す。
デュラネートX1110は、下記組成を有し、NCO(CHNCOの2つのイソシアネート基がメチルエチルケトオキシムでブロック化されたブロック化イソシアネート化合物、及び若干残存したメチルエチルケトオキシムが2−エチルヘキサノールに溶解したものである。
ブロックイソシアネート:NCO(CHNCO誘導体のブロック化イソシアネート(ブロック化剤はメチルエチルケトオキシム)を50wt%
2−エチルヘキサノール:CCH(C)CHOHを49.6wt%
メチルエチルケトオキシム:CHC=NOHを0.4wt%
【0115】
比較例1
SR−13を添加せずにポリアニリン組成物を調製した他は実施例1と同様にして、ポリアニリン薄膜を成膜し、評価した。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
実施例4
SR−13の代わりにデュラネートX1100(旭化成ケミカルズ株式会社製)を0.63g用いた他は実施例1と同じ方法で作製した導電性ポリアニリン組成物を、10mm角のガラス基板の上面に,得られた導電性ポリアニリン組成物約0.2mlをスピンコート法により塗布した。当該スピンコーティングにおいて、ガラス基板に導電性ポリアニリン組成物を滴下した後のガラス基板回転時間は15秒間であり、回転速度は2000rpmであった。その後、乾燥温度150℃、乾燥時間20分の乾燥を行い、導電性ポリアニリン薄膜を得た。その後、230℃で5分間熱処理を実施し、20℃のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)の各溶媒に60分浸漬した状態で超音波洗浄器(株式会社)エスエヌディ製,品名:US−4)にて超音波を照射した。
浸漬後、導電性ポリアニリン薄膜が各溶媒に溶解しているか否かを目視で評価した。結果を表2に示す。尚、薄膜の溶解が見られない場合を「○」と評価し、薄膜の一部溶解が見られる場合を「×」と評価した。
【0118】
尚、上記デュラネートX1100は、下記組成を有し、NCO(CHNCOの2つのイソシアネート基がε−カプロラクタムでブロック化されているブロック化イソシアネート化合物、及び若干残存したε−カプロラクタムが2−エチルヘキサノールに溶解したものである。
ブロックイソシアネート:NCO(CHNCO誘導体のブロック化イソシアネート化合物(ブロック化剤は、ε−カプロラクタム)を50wt%
2−エチルヘキサノール:CCH(C)CHOHを49.6wt%
ε−カプロラクタム:下記化合物を0.4wt%
【化14】

【0119】
実施例5
デュラネートX1100の代わりにデュラネートX1110(旭化成ケミカルズ株式会社製)を0.68g用いてポリアニリン組成物を調製し、乾燥温度を150℃から170℃に変更し、及び乾燥時間を20分から5分に変更した他は実施例4と同様にして、導電性ポリアニリン薄膜を成膜し、評価した。結果を表2に示す。
【0120】
比較例2
デュラネートX1100を添加しなかった他は実施例4と同様にしてポリアニリン薄膜を成膜し、評価した。結果を表2に示す。
【0121】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明のポリアニリン組成物から得られる成形体は、パワーエレクトロニクス、オプトエレクトロニクス分野において、静電及び帯電防止材料、透明電極及び導電性フィルム材料、エレクトロルミネッセンス素子の材料、回路材料、電磁波遮蔽材料、コンデンサの誘電体及び電解質、太陽電池及び二次電池の極材料、燃料電池セパレータ材料等に、又はメッキ下地、防錆剤等に利用できる。
【符号の説明】
【0123】
10 ITOパターニング基板
20 ポリアニリン薄膜
30 テフロン(登録商標)パッキン
40 ザグリガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなるポリアニリン複合体、
フェノール性化合物、
シリコーン系化合物、及び
溶媒を含むポリアニリン組成物。
【請求項2】
置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなるポリアニリン複合体、
フェノール性化合物、
シリコーン系化合物、及び
溶媒を用いて製造するポリアニリン組成物。
【請求項3】
前記シリコーン系化合物が、下記式(X−1)で表わされる繰り返し単位を有する化合物であって、その両端がそれぞれ下記式(X−2)及び(X−3)で表わされる構造を有するシリコーン系化合物である請求項1又は2に記載のポリアニリン組成物。
【化15】

(式中、R、R、R、R、R及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基である。
、R、R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアルコキシアルキル基である。
l及びmは、それぞれ独立に、0以上の整数であり、nは1以上の整数である。)
【請求項4】
前記シリコーン系化合物の重量平均分子量が100000以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項5】
前記シリコーン系化合物のR、R、R、R、R及びR12が、それぞれ独立に、無置換の鎖状飽和脂肪族炭化水素基、又は無置換の芳香族炭化水素基である請求項1〜4のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項6】
前記シリコーン系化合物のl+mが0〜3である請求項1〜5のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項7】
前記シリコーン系化合物のR、R、R、R、R及びR12の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基である個数の割合が90%以下である請求項1〜6のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項8】
前記シリコーン系化合物の含有量が、ポリアニリン複合体に対して0.01wt%〜100wt%である請求項1〜7のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項9】
置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなるポリアニリン複合体、
フェノール性化合物、
2価のブロック化イソシネート化合物、及び
溶媒を含むポリアニリン組成物。
【請求項10】
置換若しくは無置換のポリアニリン分子にプロトン供与体がドープしてなるポリアニリン複合体、
フェノール性化合物、
2価のブロック化イソシネート化合物、及び
溶媒を用いて製造するポリアニリン組成物。
【請求項11】
前記ブロック化イソシアネート化合物が、下記式(Y)で表わされる化合物がブロック化された化合物である請求項9又は10に記載のポリアニリン組成物。
OCN−X−NCO (Y)
(式中、Xは2価の置換若しくは無置換の炭化水素基である。)
【請求項12】
前記ブロック化イソシアネート化合物の含有量が、ポリアニリン複合体に対して0.01wt%〜100wt%である請求項9〜11のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項13】
前記ポリアニリン複合体のポリアニリン分子が、無置換のポリアニリン分子である請求項1〜12のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項14】
前記ポリアニリン複合体のプロトン供与体が、下記式(I)で表わされる化合物である請求項1〜13のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
M(XARn)m (I)
(式中、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基であり、mはMの価数/Xの価数の値である。
Xは、アニオン基である。
Aは、置換又は無置換の炭化水素基である。
Rは、−H、−R101、−OR101、−COR101、−COOR101、−(C=O)−(COR101)、又は−(C=O)−(COOR101)で表わされる基であり、
101は、置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、−(R102O)x−R103で表わされる基、又は−(OSiR103)x−OR103で表わされる基である(R102はそれぞれ独立にアルキレン基であり、R103はそれぞれ独立に炭化水素基であり、xは1以上の整数である)。
nは1以上の整数である。)
【請求項15】
前記ポリアニリン複合体のプロトン供与体が、下記式(III)で表わされる化合物である請求項1〜14のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【化16】

(式中、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基であり、m’はMの価数である。
112及びR113は、それぞれ独立に、炭化水素基又は−(R114O)r−R115基[ここで、R114はそれぞれ独立に炭化水素基又はシリレン基であり、R115は水素原子、炭化水素基又はR116Si−基(ここで、R116はそれぞれ独立に炭化水素基である)であり、rは1以上の整数である]である。)
【請求項16】
前記ポリアニリン複合体が、組成物中に溶解してなる請求項1〜15のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項17】
前記フェノール性化合物が、フェノール性水酸基を1つ有する化合物である請求項1〜16のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項18】
さらに耐熱安定化剤を含む請求項1〜17のいずれかに記載のポリアニリン組成物。
【請求項19】
前記耐熱安定化剤が、スルホン酸基を1以上有する有機酸である請求項18に記載のポリアニリン組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載のポリアニリン組成物から得られた成形体。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれかに記載のポリアニリン組成物から得られたコンデンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−158620(P2012−158620A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17038(P2011−17038)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】