説明

ポリアミドおよびその成形体

【課題】機械的物性に優れたポリアミドを提供する。
【解決手段】2,5−フランジカルボン酸と、脂肪族ジアミンまたは含脂環ジアミンからなり、96%濃硫酸中、濃度1g/dL、25℃で測定した相対粘度が2.0以上であるポリアミド、および脂肪族ジアミンの炭素数が5〜12であるか、含脂環ジアミンの炭素数が6以上であるポリアミド、および脂肪族ジアミンが、1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタデカンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンであるポリアミド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,5−フランジカルボン酸を用いたポリアミドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化や石油資源枯渇の問題が深刻化しつつあり、地球環境保全の見地から、バイオマスプラスチックの利用が注目されている。バイオマスプラスチックとしては、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネート、さらに最近ではバイオポリエチレン等も開発されている。しかしながら、これらのバイオマスプラスチックは融点が180℃未満で耐熱性に劣るものである。プラスチックの耐熱性を高める方法として、分子鎖中に芳香環を導入することが有効であるが、バイオマス由来で芳香環を有するモノマーは限られている。その中で、2,5−フランジカルボン酸は芳香族でありながらバイオマスから得られ、これを用いたポリアミドは、上記バイオマスプラスチックより耐熱性が高いことが期待されている。
【0003】
2,5−フランジカルボン酸を用いたポリアミドとしては、例えば、非特許文献1に、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−ブタンジアミン、エチレンジアミンと2,5−フランジカルボン酸を組み合せたポリアミドが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal.(Russian Edition)、29(10)、p1076−1078、1963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1で開示されている2,5−フランジカルボン酸とジアミンからなるポリアミドは、最も高い{ln(相対粘度)/濃度}を有するものでも、硫酸を溶媒とし、濃度0.5g/dLで測定した場合の{ln(相対粘度)/濃度}が0.79(仮に、非特許文献1において{ln(相対粘度)/濃度}は20℃で測定していたと考えると、同じポリアミドを、96%硫酸を溶媒とし、濃度0.5g/dL、25℃で測定した場合の相対粘度は1.48となる。)と低いため、成形体としての利用は困難である。
【0006】
本発明は、2,5−フランジカルボン酸をその構成に有し、機械的物性に優れたポリアミドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような課題を解決するため鋭意検討の結果、相対粘度2.0以上に高粘度化することで機械的物性が向上することを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0008】
(1)2,5−フランジカルボン酸と、脂肪族ジアミンまたは含脂環ジアミンからなり、96%濃硫酸中、濃度1g/dL、25℃で測定した相対粘度が2.0以上であるポリアミド。
(2)脂肪族ジアミンの炭素数が5〜12であるか、含脂環ジアミンの炭素数が6以上である(1)記載のポリアミド。
(3)脂肪族ジアミンが、1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタデカンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンである(1)または(2)記載のポリアミド。
(4)生物起源炭素含有量が50%以上である(1)〜(3)いずれかに記載のポリアミド。
(5)(1)〜(4)いずれかに記載のポリアミドからなる成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械的物性に優れたポリアミドを提供することができる。また、ジアミン成分を適宜選択することにより、所望の耐熱性、吸水性のポリアミドとすることができ、またポリアミドの生物起源炭素含有率を50%以上とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリアミドは、ジカルボン酸成分とジアミン成分から構成される。
【0011】
ジカルボン酸成分としては、2,5−フランジカルボン酸を用いる必要がある。2,5−フランジカルボン酸は、そのエステル誘導体を加水分解することで得ることができる。エステル誘導体は、例えば、ガラクトースを硝酸酸化して得られるガラクタル酸から合成することができ(特開2008−127282号公報)、また、フルクトース等の単糖から合成することができる(Topics in Catalysis、13、p237−242、2000)。
【0012】
2,5−フランジカルボン酸の共重合量は、全ジカルボン酸成分に対して、50〜100モル%とすることが好ましく、80〜100モル%とすることがより好ましく、100モル%とすることがさらに好ましい。2,5−フランジカルボン酸の共重合量を50モル%以上とすることで、ポリアミド中の植物由来モノマーの割合が多くなり、生物起源炭素含有率を容易に25%以上とすることができる。
【0013】
ジカルボン酸成分を構成する他のジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0014】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシブタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェノキシエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−3,3’−ジカルボン酸等が挙げられる。中でも、テレフタル酸は、汎用性の点から好ましい。
【0015】
脂環族ジカルボン酸としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、水添ダイマー酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ダイマー酸等が挙げられる。
【0017】
ジアミン成分としては、炭素数5〜12の脂肪族ジアミンまたは炭素数が6以上の含脂環ジアミン(以後、併せて「特定ジアミン」と略称する場合がある。)であることが好ましい。炭素数5〜12の脂肪族ジアミンまたは炭素数が6以上の含脂環ジアミンとすることで、適度な融点とすることができ、耐熱性を有し、成形加工が容易なポリアミドとすることができる。また、低吸水性のポリアミドとすることができる。特定ジアミンとしては、1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
【0018】
特定ポリアミドのうち、1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンは、植物由来の原料からも得ることができる。前記ポリアミドは、植物由来の原料を、バイオ発酵またはオゾン分解等で、対応するジカルボン酸を合成し、さらに、それをアミノ化することで得ることができる。植物由来の原料としては、例えば、1,5−ペンタンジアミンの場合は廃糖蜜の発酵で得られるL−リジン、1,8−オクタンジアミンおよび1,9−ノナンジアミンの場合はオリーブ油や米糠油から得られるオレイン酸、1,10−デカンジアミンの場合はひまし油から得られるリシノール酸等が挙げられる。
【0019】
特定ジアミンの共重合量は、全ジアミン酸成分に対して、50〜100モル%とすることが好ましく、80〜100モル%とすることがより好ましく、100モル%とすることがさらに好ましい。特定ジアミンが2種以上共重合している場合は、それらのジアミンの合計量とする。特定ジアミンの共重合量を50モル%以上とすることで、耐熱性を向上させ、低吸水率とすることができる。
【0020】
本発明のポリアミドの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、塩を作製したのち、その塩を重合する方法を挙げることができる。
【0021】
ポリアミドの塩を得る方法としては、ジカルボン酸成分とジアミン成分を水中で反応させて塩を得る方法を挙げることができる。用いる水の量は、ジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対して、2質量部以上とすることが好ましく、10質量部以上とすることがより好ましい。反応温度は、常圧下では80〜100℃とすることが好ましく、加圧条件下では100〜150℃で反応させることが好ましい。反応時間は、反応温度に達してから0.1〜3時間とすることが好ましく、0.1〜2時間とすることがより好ましい。
【0022】
塩を重合する方法としては、重縮合反応で生成する水を系外に排出しつつ、ジアミン成分の揮発を抑制するために、加圧下でおこなう方法が好ましい。塩の重合は、ポリアミドの融点以上の温度で溶融重合をおこなってもよいし、ポリアミドの融点未満の温度で固相重合をおこなってもよい。圧力は、大気圧以上10MPa以下とすることが好ましい。溶融重合をおこなう場合、その反応温度は、{(ポリアミドの融点)+10℃}〜350℃とすることが好ましく、その反応時間は、反応温度に達してから0.5〜6時間とすることが好ましい。固相重合をおこなう場合、その反応温度は、{(ポリアミドの融点)−100℃}以上、(ポリアミドの融点)未満でおこなうことが好ましく、その反応時間は、反応温度に達してから0.5〜100時間とすることが好ましい。塩の重合をおこなった後、さらに分子量を上げるため、常圧下、不活性ガス流通下で重合を継続しておこなってもよいし、また減圧下で重合を継続しておこなってもよい。不活性ガス流通下で重合を継続する場合、不活性ガスの流量は0.01〜10L/(kg・分)とすることが好ましい。また、減圧下で重合を継続する場合、減圧度は1000Pa以下とすることが好ましい。
【0023】
重合する際、重合速度向上の点から、触媒を用いることが好ましい。触媒としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、ジカルボン酸成分とジアミン成分の合計のモル数に対して、2モル%以下が好ましい。
【0024】
また、重合度調整や分解、着色抑制等の目的で、末端封鎖剤を用いてもよい。末端封鎖剤としては、モノカルボン酸、モノアミンが挙げられる。モノカルボン酸としては、酢酸、ラウリン酸、安息香酸等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。末端封鎖剤の添加量は、ジカルボン酸成分とジアミン成分の合計のモル数に対して、5モル%以下が好ましい。
【0025】
本発明のポリアミドの生物起源炭素含有率は、ジアミン成分を適宜選択することにより、25%以上とすることが好ましく、50%以上とすることがより好ましい。生物起源炭素含有率を25%以上とすることで、環境面でのメリットが大きくなる。また、96%濃硫酸中、濃度1g/dL、25℃での相対粘度は、2.0以上とすることが必要で、2.5以上とすることが好ましい。相対粘度が2.0未満の場合、成形体が脆くなるので好ましくない。
【0026】
本発明において、ポリアミドの融点は180℃以上とすることができる。ポリアミドの融点を180℃とすれば、バイオプラスチックの分野において、これまでのバイオプラスチックに比較して十分に耐熱性が高いといえる。また、ポリアミドの吸水率は1%以下とすることができる。吸水率を1%以下とすることで、成形してから長時間保管しても寸法が変化することを抑制することができる。
【0027】
また、本発明のポリアミドを成形体とした場合、その衝撃強度は、2kJ/m以上とすることができる。衝撃強度を、2kJ/m以上とすることで、成形体として十分に使用することができる。
【0028】
本発明のポリアミドには、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、繊維状補強材、充填材、顔料等を添加してもよい。繊維状補強材としては、ガラス繊維や炭素繊維等が挙げられ、充填材としては、タルク、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイト、フィラー等が挙げられ、顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。添加剤は、ジカルボン酸成分とジアミン成分の合計に対して、20質量%以下が好ましい。
【0029】
本発明のポリアミドは、射出成形、押出成形、ブロー成形等公知の成形方法により、各種成形品に加工することができる。
【0030】
本発明のポリアミド成形品は、自動車のトランスミッション周り、エンジン周り、ランプ周りで使用する自動車部品、事務機器等の電気・電子部品として使用できる。自動車のトランスミッション周りとしては、シフトレバー、ギアボックス等の台座に用いるベースプレート、エンジン周りとしては、シリンダーヘッドカバー、エンジンマウント、エアインテークマニホールド、スロットルボディ、エアインテークパイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ラジエータホース、ウォーターポンプレンレット、ウォーターポンプアウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルターハウジング、オイルフィルターキャップ、オイルレベルゲージ、タイミングベルトカバー、エンジンカバー等、ランプ周りとしては、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ランプエクステンション、ランプソケット等に好適に用いられる。また、電気・電子部品としては、コネクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、抵抗器、ICやLEDのハウジング等が挙げられる。
【0031】
また、本発明のポリアミドは公知の製膜方法や紡糸方法により、フィルム、シート、繊維に加工することができる。
【0032】
フィルムとしては、スピーカー振動板、フィルムコンデンサ、絶縁フィルム、各種包装フィルム等として使用できる。また、産業資材用繊維としては、エアーバッグ基布、フィルター等として使用できる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0034】
1.分析方法
(1)樹脂組成
高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製ECA500 NMR)を用いて、H−NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から樹脂組成を求めた(分解能:500MHz、溶媒:トリフルオロ酢酸−d/重水=9/1(体積比))、温度:25℃)。
【0035】
(2)生物起源炭素含有率
ASTM D6868 06に準拠して測定した。
【0036】
(3)融点
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用いて、常温から300℃まで20℃/分で昇温した後、5分間保持後、500℃/分で25℃まで降温し、5分間保持後、300℃まで20℃/分で昇温した。2回目の昇温時に得られた曲線の融解に由来するピークの頂点を融点とした。
【0037】
(4)相対粘度(ηrel
96%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
【0038】
(5)吸水率
ポリアミドを十分に乾燥した後、射出成形機(東芝機械社製EC−100型)を用いて成形し、長さ125mm×幅12mm×厚み0.8mmの成形片を作製した。なお、シリンダ温度は(ポリアミドの融点+20℃)、金型温度は100℃とした。
得られた成形片を、25℃の水中に24時間静置し、静置前の成形片の質量の値を基準として、下記式により吸水率を算出した。
吸水率(%)=(静置後の成形片の質量)/(静置前の成形片の質量)×100
【0039】
(6)シャルピー衝撃強度
(5)で作製した成形片にノッチを付けて、ISO179に従って測定した。
【0040】
2.原料
(1)2,5−フランジカルボン酸(植物由来)
反応容器に、ガラクタル酸(レモンやリンゴの果実からの抽出物)250質量部、1−ブタノール2500質量部、硫酸500質量部を添加し、油浴中で8時間加熱還流した。生成した水は共沸により除去した。反応後、ジイソプロピルエーテル1500質量部と蒸留水1000質量部を加えて洗浄し、さらに、1質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液1000質量部を加えて1回、蒸留水1000質量部を加えて2回洗浄した。その後、有機層を取り出し、減圧蒸留をおこない(150℃/1.4mmHg)、2,5−フランジカルボン酸ジブチルを得た。収率は48モル%であった。得られた2,5−フランジカルボン酸ジブチルを、メタノールを用いて再結晶した後、加水分解して、2,5−フランジカルボン酸を得た。
【0041】
(2)1,4−ブタンジアミン(石油由来)
東京化成工業社製
【0042】
(3)1,5−ペンタンジアミン(植物由来)
大腸菌由来のリジン脱炭酸酵素を発現させた遺伝子組換え大腸菌E.coli JM109株を構築し、ジャーファーメンタで培養し、発現誘導剤イソプロピル−β−チオガラクトピラノシドを0.2mMとなるように加えてリジン脱炭酸酵素の発現を誘導した。カダベリンの発酵合成は、飼料用L−リジン塩酸塩(廃糖蜜から発酵で製造)2.8kgを純水4.2kgに溶解し、殺菌処理した上記菌体の懸濁液120mL(濃度10質量%)と補酵素ビタミンB6水溶液(10mM)75mLを加え、40℃24時間攪拌することによっておこなった。得られたカダベリン発酵液7.2L(カダベリン濃度25質量%)に、カダベリンのアミノ基当量以上の水酸化ナトリウムを加えてカダベリン塩酸塩をフリー体とした。沈殿した塩化ナトリウムを濾別した後、減圧蒸留をおこない、1,5−ペンタンジアミンを得た。
【0043】
(4)1,6−ヘキサンジアミン(石油由来)
東レ社製
(5)1,10−デカンジアミン(植物由来)
ひまし油由来、小倉合成工業社製
(6)1,12−ドデカンジアミン(石油由来)
インビスタ社製
【0044】
(7)1,4−シクロヘキサンジアミン(石油由来)
ビヨンド・インダストリーズ社製
(8)4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(石油由来)
BASF社製
【0045】
実施例1
ジカルボン酸として2,5−フランジカルボン酸156質量部、ジアミンとして1,10−デカンジアミン172質量部、末端封鎖剤として安息香酸1.2質量部、触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物0.1質量部、水100質量部からなる混合物(ジカルボン酸:ジアミン:末端封鎖剤=100:100:1、モル比)を、ダブルヘリカル撹拌翼を備えたオートクレーブ中で、窒素雰囲気下、125℃において、20回転/分で1時間撹拌した。その後、圧力を0.5MPaに保ちながら水蒸気を排出しつつ、230℃まで昇温し、1時間保った後、常圧に戻し、窒素気流下で3時間反応をおこなった。
その後、窒素圧でポリアミドをノズルからストランド状に押出し、ストランドカッターで切断してペレット化をおこなった。
【0046】
実施例2〜8、比較例1
樹脂組成を変更する以外は、実施例1と同様に、ポリアミドの重合をおこなった。
【0047】
表1に、樹脂組成および特性値を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1〜8は、いずれも、シャルピー衝撃強度も比較的高く機械的物性が良好であり、融点が180℃以上と耐熱性も高かった。また、原料として植物由来モノマーを多く用いていたため、生物起源炭素含有率が50%以上と高かった。
実施例1〜7は、脂肪族ジアミンの炭素数が5〜12または含脂環ジアミンの炭素数が6以上であったため、低吸水性であった。
【0050】
比較例1は、ポリアミドの相対粘度が低かったため、シャルピー衝撃強度が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,5−フランジカルボン酸と、脂肪族ジアミンまたは含脂環ジアミンからなり、96%濃硫酸中、濃度1g/dL、25℃で測定した相対粘度が2.0以上であるポリアミド。
【請求項2】
脂肪族ジアミンの炭素数が5〜12であるか、含脂環ジアミンの炭素数が6以上である請求項1記載のポリアミド。
【請求項3】
脂肪族ジアミンが、1,5−ペンタンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタデカンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンである請求項1または2記載のポリアミド。
【請求項4】
生物起源炭素含有量が50%以上である請求項1〜3いずれかに記載のポリアミド。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載のポリアミドからなる成形体。

【公開番号】特開2013−6963(P2013−6963A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140718(P2011−140718)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】