説明

ポリアミドフィラメント糸および製造方法

【課題】機能性薬剤の耐久性を向上させる微細孔を有するポリアミド糸およびその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】特定の微細孔を有する無機粒子を特定量含有し、下記を全て満たすポリアミドフィラメント糸。
(1)糸の繊維長方向の5点における無機粒子の最大の濃度Dが0.8Da<D<1.2Da、(2)糸の横断面において、繊維横断面の中心に近いセグメントと、外周部から近いセグメントの2つに分割して、それぞれのセグメントの無機粒子濃度を測定した時に、濃度の高いセグメントの無機粒子濃度をD、濃度の低いセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度をDとしたときに、D<1.2D、(3)10μm以上の粗大粒子が0.01mm2中3個以下、(4)無機粒子の粒径に対する重量分布の重量累積値が50%、75%となる時の粒径をそれぞれU1、Uとしたときに、U−U1<2μm

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドフィラメント糸およびその製造方法に関する。さらに詳しくはポリアミドフィラメント糸に種々の機能性薬剤を付与した際に、付与した機能剤の洗濯耐久性や徐放性アップを図る方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィラメント糸、ポリアミドフィラメント糸に代表される合成繊維は、布帛に形成した後、撥水剤、吸水剤、静電防止剤、防汚剤、抗菌剤など種々の機能性薬剤を含浸、コートすることで、様々な機能を付与している。しかし、これら後加工による機能性薬剤付与は、洗濯などにより機能性薬剤が脱落し、その効果が時間の経過とともに減少する欠点がある。また、香料を含浸することにより、香りを発する衣服やビタミン誘導体などを含浸することにより、着用中に皮膚から薬剤が人体に取り込まれて、健康効果や美白効果を狙ったものもあるが、これらの薬剤も繊維表面に付着させただけだと効果を長く保つことが出来ない。特許文献1には、布帛形成後に香料を内包させたマイクロカプセルとバインダーとを含む薬剤に含浸させて、香りを発する繊維が提案されている。布帛形成後にマイクロカプセルを付着させる方法では、繊維表面に付着させたマイクロカプセルは内包した薬剤の拡散が起こりやすいために徐放性に乏しく、また特許文献1のように中空化した繊維内部にマイクロカプセルを浸透させる方法では、液通り性およびマイクロカプセルの粒径がマイクロメーターオーダーと大きいことから、中空内部にまでマイクロカプセルが浸透しにくいということ、撚糸、仮撚りなどの加工を施した場合には中空部が潰れるために、マイクロカプセルがさらに浸透しにくくなることなどの問題がある。
【0003】
特許文献2には、紡糸口金内でマイクロカプセルを含むポリマーが鞘に、マイクロカプセルを含まないポリマーが芯に配置されるように合流させる方法が提案されているが、口金の構成が複雑であり、コストが高くなるという問題がある。また、この方法で製造された繊維は、表面にしかマイクロカプセルが存在しないため、機能性薬剤の持続性、徐放性の面で十分とは言えなかった。
【0004】
また、特許文献3には、細孔容積と比表面積を規定したシリカ系無機粒子を含有した、吸湿性に優れたポリエステルが提案されているが、水分子のような小さなものはポリエステル内を浸透するものの、分子の大きな機能性薬剤は、ポリエステル内を浸透しにくいという問題がある。また、特許文献3の発明においては、機能性薬剤の持続性、徐放性という本発明とは目的を異とするために、平均細孔半径について、言及していない。
【0005】
さらに特許文献4には、色素とメソポーラス物質を含むポリアミド繊維が開示されており、メソポーラス物質をポリアミドの重合時に添加する方法、重合時から紡糸までの間の工程で混練する方法(マスターペレット化する方法、ポリアミドチップにメソポーラス物質をまぶした後、紡糸機内にポリアミドチップを投入する方法、紡糸機内配管および紡糸パック内の静止型混練機を通して混練する方法)を用いることが記載されている。しかしながら、マスターペレット化する方法では、メソポーラス物質のような粒子は凝集しやすいために、粗大粒子が生成しやすくなるため、凝集を抑制し、製糸性をより一層改善することが望まれていた。また、ポリアミドチップにメソポーラス物質をまぶした後、紡糸機内にポリアミドチップを投入する方法や紡糸機内配管および紡糸パック内の静止型混練機を通して混練する方法であってもなお、ポリアミドフィラメント糸内のメソポーラス物質の分散性が悪く、効果が不十分であり、色素の種類によっては、メソポーラス物質の分散性が不十分なことによる色の不均一化を生じるなどの課題が生じたり、洗濯耐久性が不十分であるなど、より一層の改善が望まれていた。
【特許文献1】特開平6−228880号公報([0018]〜[0024]段落)
【特許文献2】特開平11―350240号公報([009]〜[0019]段落)
【特許文献3】特開2001―329430号公報([0013]〜[0017]段落)
【特許文献4】特開2003−27334([0007]、[0021])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、微細孔を有する無機粒子を添加が添加されたポリアミドフィラメント糸を安価に安定的に製造し、後加工で付与される機能性薬剤の効果の持続性、徐放性アップを図ったポリアミドフィラメント糸およびその製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のポリアミドフィラメント糸およびその製造方法は、次の要件からなる。すなわち、
(1)比表面積が200〜1000m2/g、平均細孔径が1〜25nm、平均粒径が0.1〜5μmである、微細孔を有する無機粒子を含有量が0.5〜10wt%となるように配合した、(A)〜(D)を全て満たすことを特長とするポリアミドフィラメント糸。
【0008】
(A)ポリアミドフィラメント糸の繊維長方向の任意の5点における微細孔を有する無機粒子の濃度Dが0.8Da<D<1.2Daである。
ただし、Dは任意の点における濃度、Daは平均濃度を示す。
【0009】
(B)ポリアミドフィラメント糸の横断面において、繊維横断面の中心に近いセグメントと、外周部から近いセグメントの2つに分割して、それぞれのセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度を測定した時に、濃度の高いセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度をD、濃度の低いセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度ををDとしたときに、D<1.2Dである。
【0010】
(C)10μm以上の粗大粒子が0.01mm2中3個以下である。
【0011】
(D)微細孔を有する無機粒子の粒径に対する重量分布をそれぞれ求めたときの重量累積値が50%、75%となる時の粒径をそれぞれU1、Uとしたときに、U−U1<2μmである。
(2)微細孔を有する無機粒子がシリカであることを特長とする(1)に記載のポリアミドフィラメント糸。
(3)機能性薬剤を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載のポリアミドフィラメント糸。
(4)熱可塑性樹脂ペレットに、微細孔を有する無機粒子粉体を、溶融部前で連続的に添加することを特徴とする熱可塑性フィラメント糸の製造方法。
(5)熱可塑性ペレットに、比表面積が200〜1000m2/g、平均細孔径が1〜25nm、平均粒径が0.1〜5μmである、微細孔を有する無機粒子粉体を溶融部前で、連続的に添加することを特徴とする熱可塑性フィラメント糸の製造方法。
(6)微細孔を有する無機粒子粉体の計量を下記(A)〜(C)の構成とするテーブルフィーダーで行うことを特徴とする(4)または(5)に記載の熱可塑性フィラメント糸の製造方法。
【0012】
(A)テーブルフィーダー内圧を紡糸ホッパー内圧と同圧となるように密閉された構造である。
【0013】
(B)粉体貯留槽を上部に、粉体計量槽を下部に持つ2槽からなり、それぞれの槽に槽の中心を回転軸とする2種類の撹拌翼を持ち、そのうち1種類の撹拌翼は回転軸と垂直に取り付けられ、回転方向側に行くに従って厚みが薄くなる構造の撹拌翼であり、他方の撹拌翼は槽の外周で垂直方向に延びた撹拌翼を持つ。
【0014】
(C)内径10〜200mmの粉体供給筒を持つ。
(7)熱可塑性樹脂がポリアミドである(4)〜(6)のいずれか記載の熱可塑性フィラメント糸の製造方法。
(8)微細孔を有する無機粒子がシリカであることを特長とする(4)〜(7)のいずれかに記載の熱可塑性フィラメント糸の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ポリアミドフィラメント糸に微細孔を有する無機粒子を添加することで、後加工で付与される機能性薬剤の効果の持続性、徐放性に優れたポリアミドフィラメント糸を安価に安定的に製造することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明におけるポリアミドとは、ナイロン6(ポリカプロアミド)、ナイロン8(ポリオクタンアミド)、ナイロン12(ポリドデカンアミド)、ナイロン66(ポリヘキサメチレンアジパミド)・ナイロン610(ポリヘキサメチレンセバカミド)などに例示されるように、炭化水素基がアミド結合を介して連結された高分子量体であり、その種類は特に限定されない。本発明におけるポリアミドは、ホモポリマーのみならず、それらポリアミドの共重合体をも包含する。また、通常、繊維で使用されるポリアミドには、耐熱剤・耐光剤・老防剤などの各種添加剤、静電剤・艶消し剤などの添加剤が使用されるが、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、これらの添加剤を含んでいてもよい。
【0017】
本発明のフィラメント糸は、ポリアミドであることを必要とする。これは次の理由による。
【0018】
本発明は、フィラメント糸の内部に存在する微細孔を有する無機粒子に、後の工程で付与される機能性薬剤が取り込まれ、使用に際して、機能性薬剤を徐々に放出したり、脱落その他による機能性薬剤の効果が減少することを防ぐことを目的としている。その観点から、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル糸やポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン糸などは、繊維構造が密に詰まっているために、機能性薬剤が繊維内部に浸透せず、繊維内部に存在する微細孔を有する無機粒子が有効に活用されない。従って、機能性薬剤の徐放性、持続性が不十分となる。
【0019】
本発明における微細孔を有する無機粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられるが、微細孔を有する無機粒子で有れば、特に限定されない。中でもシリカは、一般的な酸、アルカリなどの薬品との反応性が乏しいので、特に好ましい。
【0020】
微細孔を有する無機粒子は一般的に知られる方法で製造することができ、微細孔を有するシリカの製法の一例を挙げると、次のような方法で製造できる。
【0021】
ケイ酸ナトリウムと水を所定の割合で混合、撹拌し、アクリルアミドポリマー水溶液を加えて、分散させ、5%硫酸水溶液を撹拌しながら加え、静置する。静置して得られた沈殿物を水中で再分散し、5%硫酸水溶液を撹拌しながら加え、沈殿物を濾過し、水洗後、得られた沈殿物を乾燥後、ヘンシルミキサーやボールミルといった粉砕型混合機で粉砕することで、微細孔を有するシリカが得られる。
【0022】
本発明で用いる微細孔を有する無機粒子は、比表面積が200〜1000m2/g、平均細孔径が1〜25nm、平均粒径が0.1〜5μmであることを必要とし、比表面積については300〜700m2/g、平均細孔半径については1〜10nm、平均粒径については0.3〜3μmが好ましい範囲である。
【0023】
比表面積が200m2/gよりも小さな場合には、無機粒子中の微細孔の容積が小さいために、繊維中に取り込まれる機能性薬剤の量が少ないために、機能の持続性が不十分となり、機能の持続性から、比表面積を300m2/g以上とするのが好ましい。比表面積が1000m2/gよりも大きい場合には、凝集が起こりやすくなるため、粒径の小さな無機粒子が得られにくくなるとともに、紡糸工程中においても凝集が起こるために、糸切れが多発し、糸切れの観点から比表面積を700m2/g以下とするのが好ましい。上記比表面積はBET法により測定することができる。
【0024】
また、平均細孔径が1nmよりも小さい場合には、機能性薬剤が細孔に取り込まれないため、機能の持続性、徐放性が不十分となる。平均細孔径が25nmよりも大きい場合には、機能性薬剤が細孔に取り込まれるものの、機能薬剤の分子径に比して細孔の径が大きすぎるため、洗濯などの際に細孔からの流出が大きく、機能の持続性、徐放性が不十分となり、機能の持続性、徐放性の観点から、平均細孔径は10nm以下が好ましい。上記平均細孔径はBET法により測定することができる。
【0025】
微細孔を有する無機粒子の平均粒径が0.1μmよりも小さい場合には、凝集が起こりやすくなるため、安価に粒径のバラツキの小さな無機粒子を得ることが困難である。また、無機粒子の平均粒径が0.1μm以下のものを得られた場合にも、溶融紡糸中に凝集が起こるために、糸切れが多発する。凝集を防ぐ観点から平均粒径は0.3μm以上が好ましい。微細孔を有する無機粒子の平均粒径が5μmよりも大きい場合には、紡糸の際に無機粒子が繊維中で異物として働くため、糸切れが多発し、糸切れの観点から平均粒径は3μm以下が好ましい。上記平均粒径は、密粒度分布測定装置を用い、コールターカウンター法により測定することにより求めた、粒径に対する重量分布のモード値(重量値が最も大きくなる粒径)とする。
【0026】
本発明のポリアミドフィラメント糸は微細孔を有する無機粒子を0.5〜10wt%含有することを必要とし、微細孔を有する無機粒子の含有率は1〜7wt%の範囲とすることが好ましい。微細孔を有する無機粒子の含有率が0.5wt%未満の場合には、ポリアミドフィラメント糸内に取り込まれる機能性薬剤の量が少なくなるために、機能の持続性、徐放性が不十分となり、機能の持続性、徐放性の観点から、微細孔を有する無機粒子の含有率を1wt%以上とすることが好ましい。微細孔を有する無機粒子の含有率が10wt%を越える場合には、微細孔を有する無機粒子が繊維形成の場合に異物として働くために、糸切れが多発し、糸切れの観点から、微細孔を有する無機粒子の含有率を7wt%以下とすることが好ましい。
【0027】
さらに、本発明のポリアミドフィラメント糸は、機能性薬剤の徐放性、持続性の観点から、次の(1)〜(4)の要件を満たすことが必要である。
(1)ポリアミドフィラメント糸の繊維長方向の任意の5点における微細孔を有する無機粒子の濃度Dが0.8Da<D<1.2Daであり、好ましくは0.9Da<D<1.1Daさらに好ましくは0.95Da<D<1.05Daである。
ただし、Dは任意の点における濃度、Daは平均濃度を示す。
(2)ポリアミドフィラメント糸の横断面において、繊維横断面の中心に近いセグメントと、外周部から近いセグメントの2つに分割して、それぞれのセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度を測定した時に、濃度の高いセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度をD、濃度の低いセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度ををDとしたときに、D<1.2Dであり、好ましくはD<1.1Dである。
(3)10μm以上の粗大粒子が0.01mm2中3個以下であり、好ましくは1個以下である。
(4)微細孔を有する無機粒子の粒径に対する重量分布をそれぞれ求めたときの重量累積値が50%、75%となる時の粒径をそれぞれU1、Uとしたときに、U−U1<2μmであり、好ましくはU−U1<1.2μmである。
【0028】
上記(1)(2)の範囲とすることは、ポリアミドフィラメント糸の繊維長方向および繊維の横断面方向に、微細孔を有する無機粒子の分布状態にバラツキがないことを意味する。
(1)の範囲から外れると、糸切れや布帛に編成、製織して染色した場合にタテスジやヨコ段などの品位欠点の原因となる。繊維中に無機粒子が存在すると、繊維が引き取られるまでに起こる配向化、結晶化が抑制される。そのため、粒子の分散状態に偏りが生じると、繊維長手方向の構造にバラツキを生じるため、タテスジやヨコ段などの品位欠点が起こりやすくなる。
【0029】
また、繊維横断面の中心に近いセグメントのほうが、外周部から近いセグメントに比べて、微細孔を有する無機粒子の濃度が高い場合には、外周部から近いセグメントで取り込まれる機能性薬剤が少なくなるために、初期の機能性薬剤効果が減じられたり、比較的分子量の大きな機能性薬剤の場合には取り込まれにくくなるために、機能が低下したり、機能加工に要する時間が多くかかったりする。
【0030】
逆に、繊維横断面の中心に近いセグメントのほうが、外周部から近いセグメントに比べて、微細孔を有する無機粒子の濃度が低い場合には、外周部から近いセグメントで取り込まれる機能性薬剤が多くなるために、機能性薬剤の繊維外への拡散しやすくなるため、機能性薬剤の洗濯耐久性や持続性が低下する。
【0031】
(3)の要件は、無機粒子が凝集してできる粗大粒子が少ないこと、すなわち無機粒子があまり凝集することなく分散していることを意味する。10μm以上の粗大粒子が0.01mm2中3個を越える場合には、紡糸パック中に用いられるフィルターの目詰まりを引き起こし、紡糸パック内の圧力が上昇して、ポリマー漏れを引き起こしたり、製糸性が悪化したりする。このポリマー漏れや製糸性が悪化は、粗大粒子の数が多いほど起こりやすいため、粗大粒子の数が少ないほど好ましい。
(4)の範囲とすることは、ポリアミドフィラメント糸中に含まれる微細孔を有する無機粒子の粒径のバラツキが小さいことを意味する。(4)の範囲を外れた場合には、微細孔を有する無機粒子の粒径のバラツキが大きいために、粒径の大きい粒子に機能性薬剤が取り込まれやすくなり、粒径の小さい粒子に機能性薬剤が取り込まれにくくなり、徐放性が低下したり、染色後の布帛品位が悪化したり、製糸性が悪化したりする。
【0032】
上記(1)〜(4)の要件を充足するか否かは、後述の実施例に記載した方法により確認することができる。
【0033】
微細孔を有する無機粒子をポリアミドフィラメント糸に添加して、上記ポリアミドフィラメント糸とする方法としては、高濃度の無機粒子を含むマスターペレットを製造し、マスターペレットとベースペレットをブレンドする方法、ポリアミド重合中に微細孔を有する無機粒子を添加する方法、紡糸工程で、直接、微細孔を有する無機粒子を、溶融部前で連続的に添加する方法など、本発明の要件を満たすならば、いずれの方法を用いても良いが、紡糸工程で直接、溶融部前で連続的に添加する方法が好ましい。高濃度の無機粒子を含むマスターペレットを製造し、マスターペレットとベースペレットをブレンドする方法においては、マスターペレットを製造する工程が増えるためにコストが高くなる。マスターペレットとベースペレットをブレンドする方法においては、マスターペレットとベースペレットとを均一にブレンドしたものを紡糸ホッパー内に投入して製造するのが一般的であるが、紡糸ホッパー内および溶融部までの間で、マスターペレットとベースペレットの比重や形状の違いなどにより、マスターペレットとベースペレットの分離が起こり、繊維長手方向での微細孔を有する無機粒子の濃度バラツキを生じやすい。これらの理由により、紡糸工程で、直接、微細孔を有する無機粒子粉末を溶融部前で連続的に添加する方法が好ましい。また、繊維長手方向での微細孔を有する無機粒子の濃度バラツキを出来るだけ抑えるために、溶融部にエクストルーダー型紡糸機を用いたり、溶融部から紡糸パックまでの配管内に、スタティックミキサーを導入したりすることが好ましい。さらには、エクストルーダー型紡糸機のスクリューは、バックフロー機能を持ったダブルフライト型スクリューを用いるのがより好ましい。
【0034】
また、マスターペレットを製造する工程では、ポリアミドポリマーと微細孔を有する無機粒子とを混合するが、溶融したポリアミドポリマーに高濃度の微細孔を有する無機粒子を添加することとなるために、微細孔を有する無機粒子の凝集を生じたりする。これらのデメリットを回避するためにも、微細孔を有する無機粒子粉末を溶融部前で連続的に添加する方法が好ましい。
【0035】
また、ポリアミド重合中に微細孔を有する無機粒子を添加する方法では、重合中に無機粒子の凝集が起こりやすい、重合反応を無機粒子が阻害し、重合時間が長くなる他、無機粒子の粒径が小さい場合には、増粘が起こりやすくなるため、紡糸工程で直接、溶融部前で連続的に添加する方法を用いるのが好ましい。
【0036】
また、ポリアミドチップに微細孔を有する無機粒子粉末をまぶした後、紡糸機内にポリアミドチップを投入する方法では、紡糸機上流部に設置されたホッパー内に投入した、微細孔を有する無機粒子粉末をまぶしたポリアミドチップが溶融部へ運ばれる間に、ホッパーや配管の壁面に微細孔を有する無機粒子粉末が付着して、添加濃度の低下を招いたり、品切のたびに清掃が必要になるなど作業効率の悪化を招く。また、乾燥から紡糸まで一環したプロセスの場合には、乾燥工程から紡糸工程にチップを送る際に風送を用いるのが一般的であるが、風送過程において、微細孔を有する無機粒子粉末が分離するために、微細孔を有する無機粒子粉末を直接添加する場合には、紡糸工程の溶融部直前でポリアミドチップに添加することが必要となる。この場合には、紡糸工程の溶融部直前で、ポリアミドチップに対して、少量の微細孔を有する無機粒子粉末を連続的に添加することが好ましい。
【0037】
本発明のポリアミドフィラメント糸の断面形状は特に限定されず、常法で用いられる溶融紡糸の方法で製造することができる。すなわち、図1に示すように、無機粒子を含むポリアミドペレットを溶融し、スピンブロック1内で加熱された紡糸パックに導入し、口金2より吐出、冷却風装置3で冷却、給油装置4で給油した後、交絡装置5で交絡し、引取、延伸して巻き取るという工程により製造される。溶融部においては、ポリマーの混練性の観点から、エクストルーダーであることが好ましい。引取、延伸部においては、未延伸糸を巻き取った後、延伸を後の工程で行うUY/DT法、半延伸糸(POY糸)もしくは延伸糸(DSD糸)を1工程で巻き取る一工程法のいずれの方法でも製造でき、生産性の観点から一工程法で製造することが好ましい。
【0038】
本発明の提供するポリアミドフィラメント糸は、一般的に用いられる方法で、編成および製織できる。
【0039】
編地の製編としては、経編地であるトリコット地、ラッセル地、および丸編地であるシングル丸編地、ダブル丸編地、成形丸編地、あるいは、横編地の成形横編地のいずれであってもよい。また、編組織は、経編地のハーフ組織、バックハーフ組織、クインズコード組織、サテン組織、サテンネット組織、パワーネット組織、トリコネット組織、その他変化組織等、さらには丸編地の天竺組織、天竺リバーシブル組織、フライス組織、インターロック組織、リバーシブル組織、その他変化組織等、特に限定されることなく使用できる。
【0040】
織物の製織としては、平織、綾織、朱子織や紗や絽といったからみ組織、ドビー組織、ジャガード組織など一般的な織物組織を適宜選択することができる。
【0041】
本発明の提供するポリアミドフィラメント糸は、その機能にあわせて、布帛組織を適宜選択することにより、衣料用である婦人用肌着のスリップ、キャミソール、ペチコート、ショーツ、タイツ、アンダーパンツ、Tシャツ、U首シャツ、丸首シャツ、ボディスーツ、ガードル等。紳士用肌着のTシャツ、U首シャツ、丸首シャツ、ランニングシャツ、アンダーパンツ、タイツ、ブリーフ等。スポーツウエア用のランニングシャツ・パンツ、競技用シャツ・パンツ、ゴルフシャツ、テニスシャツ、サイクルシャツ・パンツ、Tシャツ、ポロシャツ、アウトドアシャツ、野球用アンダーシャツ、トレーニングウエア、レオタード、水着、アスレ用アンダーパンツ、スキー用インナー、スピードスケートウエア等。一般アウター用のセーター、ベスト等。また、資材用としては、手袋、サポーター、汗取りバンド、帽子、裏地、靴のインナー材、芯地等に使用できる。
【0042】
また、本発明の提供するポリアミドフィラメント糸は、添加剤の種類に応じてではあるが、適宜、一般的に用いられる方法により、精練・リラックス処理・染色・機能加工をすることができ、精練剤・金属封鎖キレート剤・固着剤・均染剤など各種薬剤が使用できる。また、機能加工においても、防汚加工、抗菌加工、制菌加工、消臭加工、防臭加工、吸汗加工、吸湿加工、防透加工、摩擦難溶融加工、紫外線防止加工、さらに、後加工としてエンボス加工、起毛加工、オパール加工等最終狙い商品の要求特性に応じて適宜付与することができる。
【0043】
本発明が提供するポリアミドフィラメント糸の製造方法としては、本発明で規定する要件を充足する限り、特に制限はないが、ポリアミドペレットに、微細孔を有する無機粒子粉体を溶融部前で連続的に添加することにより製造することができる。この微細孔を有する無機粒子粉体を溶融部前で連続的に添加する製造方法は、ポリアミド以外の熱可塑性樹脂ペレット中に、微細孔を有する無機粒子を分散性よく添加する方法としても利用できる。微細孔を有する無機粒子粉体を溶融部前で連続的に添加する製造方法を利用できる熱可塑性樹脂の一例としては、ポリエステルテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂やポリプロピレン、ポリブチレンなどのポリオレフィン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
すなわち本発明の熱可塑性フィラメント糸の製造方法は「熱可塑性樹脂ペレットに、微細孔を有する無機粒子粉体を溶融部前で連続的に添加することを特徴とする」ものである。
【0045】
上記において微細孔を有する無機粒子粉体とは、平均粒径20μm以下の粉粒体であって、微細孔を有するものを指すが、平均粒径としてはやはり0.1〜5μmであるものを用いる場合にその効果が顕著である。粒径20μmを越えると、ポリアミド等熱可塑性樹脂ペレット中への均一な粉体添加が困難となり、溶融部でのポリアミドポリマー等熱可塑性樹脂中での分散も不十分となる。このように粒径の大きなものを添加する場合には、一般的にマスターペレットを製造した上で、マスターペレットとベースポリマーペレットを混合することが一般的であるが、本発明が提供する熱可塑性フィラメント糸の製造方法のメリットは、マスターペレットを製造するよりもコストが低くすみ、重合時添加において生じる無機粒子の粗大粒子の生成を回避できることにある。
【0046】
以下、ポリアミドフィラメント糸の製造方法を中心として本発明のフィラメントしの製造方法について詳述するが、この製造方法はポリアミドにおいて特に有効であるものの、上記のとおり他の熱可塑性樹脂にも適用できるものである。
【0047】
連続的に供給する方法としては、一定速度、一定量で安定的に供給できる装置を用いることが好ましく、テーブルフィーダーによる供給方法、計量升が連続的に回転することで粉体を添加する容積計量式による供給方法、スクリューフィーダーによる供給方法など、本発明のポリアミドフィラメント糸が得られる限りにおいて何れの方法でもよく、特に限定しないが、凝集を抑制して繊維中に均一に分散させるにはテーブルフィーダーによる供給方法が好ましい。これは、量の変動も少なく、一定速度で安定的に供給できるためである。また、計量升を用いる容積計量式などで、付着性の高い粉体を用いた場合には、計量升に残りやすく、ポリアミドフィラメント糸中の微細孔を有する無機粒子粉体濃度のバラツキが起こりやすくなるため、計量升を用いないテーブルフィーダーによる供給方法や、重量を制御する重量計量式による供給方法とするのが好ましい。スクリューフィーダーによる供給方法だと、付着性の高い粉体を用いた場合には、スクリューの溝に粉体が残りやすく、ポリアミドフィラメント糸中の微細孔を有する無機粒子粉体濃度のバラツキが起こりやすくなる。一般的に粉体の粒径が小さくなればなるほど、粉体の付着性は強くなるため、ポリアミドフィラメント糸中の微細孔を有する無機粒子粉体濃度のバラツキの観点から、テーブルフィーダーによる供給方法が好ましい。
【0048】
テーブルフィーダーは、添加する量によって決められた一定の速度で回転する、溝を持つテーブル内に粉体を導入し、溝に導入された粉体を切り鈎などによって吐出することで一定量の粉体を計量する機能を持つ、一般的に知られている形態のものが使用できるが、ポリアミド中に直接、微細孔を有する無機粉体を添加する場合、その添加量は非常に小さな量となるため、微細孔を有する無機粉体の計量性を向上させるために、溝幅を1〜10mmとすることが好ましい。これは、溝幅を狭くしすぎると、溝内に導入された微細孔を有する無機粉体が溝の壁面と付着しやすくなるために、吐出される微細孔を有する無機粉体の計量性が低下する傾向にあり、溝幅を広くしすぎると、微細孔を有する無機粉体の添加量が小さい場合にテーブルの回転数を小さくしないといけないために、微細孔を有する無機粉体の計量性が低下する傾向にある。
【0049】
粉体の安定吐出性を向上させるためには、下記のテーブルフィーダーであることが好ましい。以下に図2〜4を用いて説明する。図2は本発明で好ましく用いれられるテーブルフィーダーの一例である。図3(a)はテーブルフィーダーの粉体貯留槽の内部の一例について上方から見た概略図であり、図3(b)はそれを側面からみた概略図である。図4(a)はテーブルフィーダーの粉体計量槽の内部の一例について上方からみた概略図であり、図4(b)はその側面からみた概略図である。図4(c)は切り鉤の様子を示した説明図である。
【0050】
テーブルフィーダーは、粉体貯留槽9を上部に、粉体計量槽10を下部に持つ2槽からなり、モーター16で回転する、それぞれの槽の中心を通る回転軸15と、水平方向に設置された撹拌翼11、13および垂直方向に設置された撹拌翼12、14の2種類の撹拌翼を持つことが好ましい。この撹拌翼は各槽一組である必要はなく、複数組から成っても良いし、水平方向に設置された撹拌翼と垂直方向に設置された撹拌翼が一体となった撹拌翼とすることも可能である。なお、この例では、図3(a)、図4(a)に示すように、撹拌翼11、13は3本の撹拌翼が一体となった形状のものである。これらの回転翼11〜14は、粉体の撹拌性を向上させるとともに、粉体計量槽10にある粉体のかさ比重をより一定に保つ効果があるためである。
【0051】
図2のような構造を持つテーブルフィーダーを用いた場合、微細孔を有する無機粉体はテーブルフィーダー内の上部にある粉体貯留槽9に投入され(投入口は図示せず)、水平方向に設置された撹拌翼11および垂直方向に設置された撹拌翼12で撹拌されながら、粉体貯留槽9と粉体計量槽10の間に設置された仕切板18内の開口部23を通って、粉体計量槽10に移動する。粉体計量槽10に移動した微細孔を有する無機粉体は水平方向に設置された撹拌翼13および垂直方向に設置された撹拌翼14で撹拌され、テーブル19に設置された溝24に入った微細孔を有する無機粉体が、計量部仕切板25と切り鈎26で摺りきられることにより、粉体供給筒17に吐出される。粉体供給筒17に吐出された粉体は粉体供給筒17を通って、紡糸ホッパー21内に導入されたポリアミドチップに添加される。ポリアミドチップに添加された微細孔を有する無機粉体が、紡糸ホッパー21の壁面などに付着することを出来るだけ避けるために、粉体供給筒17の最下部とポリアミドチップの溶融部22との距離(粉体供給筒17の最下部からポリアミドチップが溶融状態になる部分までの距離をいい、溶融部がエクストルーダーである場合には、そのスクリューの軸の中心までの垂直距離をいう)は50cm以下とするのが好ましく、より好ましくは30cm以下である。
【0052】
また、テーブルフィーダーで計量された微細孔を有する無機粒子粉体は、紡糸ホッパー21内でポリアミドペレットに添加されるが、紡糸ホッパー21内に配管20より、供給されるポリアミドペレットが持ち込む窒素により、紡糸ホッパー内圧とテーブルフィーダー内圧に差が生じることがある。この場合、テーブルフィーダーの気密性が低いと、紡糸ホッパー21から粉体供給筒17を通って、テーブルフィーダー内へ窒素の流れ込みが起こり続け、その流速が大きい場合には、微細孔を有する無機粒子粉体の添加量に影響を与える。この観点から、テーブルフィーダー内圧と紡糸ホッパー内圧とが同圧にあるように密閉された構造とするのが好ましい。さらに、紡糸ホッパーとテーブルフィーダーの間に粉体流路とは別に、バイパスを設けるなどの方法で、紡糸ホッパーとテーブルフィーダーの圧力を等しく保つことが、より好ましい。
【0053】
また、図5(a)はテーブルフィーダーの水平方向に設置された撹拌翼の一例を上方から見た概略図であり、図5(b)は、図5(a)における撹拌翼11または13の矢印(A)方向からみた撹拌翼の一例を示す概略図、図5(c)は同様に図5(a)における撹拌翼11または13の矢印(A)方向からみた撹拌翼の別の一例を示す概略図である。また、図6(a)は、テーブルフィーダーの垂直方向に設置された撹拌翼の一例を上方から見た概略図であり、図6(b)はそれを側面から見た概略図である。これら図5で示したように、水平方向に設置された撹拌翼11、13は、回転の進行方向側に行くに従って、厚みが薄くなる構造とするのが好ましく、角度eは10〜45°とするのがより好ましい。これは、回転の進行方向側に行くに従って厚みが薄くなる構造とすることにより、粉体を切るように撹拌することができ、粉体のかさ比重をより均一化できるという理由による。
この図6で示したように、垂直方向に設置された撹拌翼14は、回転の進行方向に向かうほど外周に出ている構造となっているのが、より好ましい。また、垂直方向に設置された撹拌翼14の垂直方向部分の長さは、粉体計量槽10の高さの0.3〜0.9倍とするのがより好ましく、垂直方向に設置された撹拌翼12の垂直方向部分の長さは、粉体計量槽9の高さの0.5〜0.9倍とするのがより好ましい。これは、粉体の撹拌性および粉体がブリッジを組むのを防ぐ観点からである。また、テーブルフィーダーから紡糸ホッパーへの粉体供給筒17は、内径10〜200mmとするのが好ましく、内壁を鏡面加工とするのが、より好ましい。内径が10mm未満とすると粉体が供給筒に詰まりやすくなり、内径が200mmを越えるとテーブルフィーダー自体が大きくなり、またそれと共に紡糸ホッパーも大きくなるため、設備が占めるスペースが大きくなるなどのデメリットがある。
【0054】
本発明が提供するポリアミドフィラメント糸の製造方法で使用する無機粒子は、安息角を30〜50°の範囲であることが好ましい。一般的に粉体の粒径を小さくするほど安息角は大きくなるため、安息角30°よりも小さな粉体を作製することはコスト面などで不利となり、安息角が50°を越える場合には、粉体の流動性が悪くなるために、粉体の均一性面で不利となる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。評価方法は、以下の通りである。
【0056】
(1)比表面積、平均細孔径
比表面積・細孔分布測定装置(Sorptomatic Series 1800(カルロエルバ(株)製)を用い、BET法により測定した。
【0057】
(2)平均粒径
密粒度分布測定装置(“Multisizer3”ベックマン・コールター(株)製)を用い、コールターカウンター法により測定し、粒径に対する重量分布を求め、重量分布のモード値(重量値が最も大きくなる粒径)とした。
【0058】
(3)繊維中の無機粒子の含有率
測り取った試料(フィラメント糸)5gを磁性るつぼに入れ、800℃の電気炉内で3時間加熱焼成することで完全に灰化させた後、デシケータ内で1時間放冷し、その灰化物の重量を測定して、繊維中の無機粒子の含有率を求めた。繊維中に含まれる無機粒子が複数の場合には、採取した灰化物を硫酸およびフッ化水素酸で加熱分解し、希硝酸で溶解したものを、300〜600nmの波長域で原子吸光分析にかけ、その成分を求めた。
【0059】
(4)微細孔を有する無機粒子の分散状態
(A)ポリアミドフィラメント糸の繊維長方向の任意の5点における微細孔を有する無機粒子の濃度D、平均濃度Da
ポリアミドフィラメント糸を5cm切り取り、溶融し、流延させて、フィルム状にした後、X線マイクロアナライザーで分析を行った。X線マイクロアナライザーのピークより、微細孔を有する無機粒子の濃度(%)を求めた。これと同様の方法で、繊維長方向の任意の部分計5箇所について、微細孔を有する無機粒子の濃度の測定を行い、5カ所の平均をDaとした。なお、Dは個々値(D、D、D、D、D)を示す。
0.8Da<D<1.2Daを満たす要件はD〜Dが0.8Da<D<1.2Daを全て満たすこととした。
【0060】
(B)微細孔を有する無機粒子の粒径に対する重量分布をそれぞれ求めたときの重量累積値が50%となる時の粒径U1、75%となる時の粒径U
(A)で作製したフィルムを試料とし、透過型顕微鏡(TEM)でポリマー中に分布する無機粒子を画像(倍率1000倍)として取り込む。取り込んだ画像から、無機粒子の粒径と個数の分布を測定した。測定した無機粒子の粒径と個数の分布から、粒径に対する重量分布において、小さい方からの累積重量が50%になる粒径をUと75パーセントの粒径をUとした。なお、50%になる粒径をUと75パーセントの粒径をUは、繊維長方向に異なる部分5箇所について、それぞれ測定し、それらの平均値をした。凝集した2次粒子については、2次粒子としての粒径を採用した。
【0061】
(C)維横断面の、繊維横断面の中心に近いセグメントと、外周部から近いセグメントにおける微細孔を有する無機粒子の濃度D、D
ポリアミドフィラメント糸の切断面を切り取り、これを電子線マイクロアナライザーで定量元素分析を行うことにより、微細孔を有する無機粒子の濃度を求めた。測定は繊維断面中心から半径の1/2の円周を描いた際の内周側領域、外周側領域それぞれ3箇所について行い、それぞれの平均値を採用した。このように求めた中心に近いセグメントの微細孔を有する無機粒子の濃度と、外周部から近いセグメントの微細孔を有する無機粒子の濃度のうち、高いほうをD、低いほうをDとした。
【0062】
(5)テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの洗濯耐久試験
布帛の洗濯方法については、JIS L 0217「繊維製品の取扱い表示記号及びその表示方法」に記載の103法を用いた。布帛としては実施例で作成した天竺を用いた。洗濯回数は10回、20回で評価を行い、ブランクを洗濯回数0回とした。それぞれの洗濯回数後のテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの残留量が、洗濯前に対してどの程度になっているかを測定した。残留量が洗濯前(洗濯0回)の60〜100%を○、40〜59%を△、0〜39%を×とした。10回、20回のいずれかで×となった場合を不十分と判定した。
【0063】
テトラテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの定量方法は、布帛を切り出したもの20gを試料とし、300mlのイソプロパノール溶液に入れ、37℃で2時間振とうしてテトラヘキシルデカン酸アスコルビルを抽出した後に、上澄み液をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定し、得られたテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのピーク面積を求め、洗濯10回もしくは20回の試料から得られたテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのピーク面積を、洗濯回数0回の試料から得られたテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのピーク面積で割ることによって求めた。
【0064】
(6)テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの持続性評価
1ヶ月(30日)の評価後のテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの残留量が、評価前のテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの残留量と比較した。
評価は天竺を作製し、その天竺にテトラヘキシルデカン酸アスコルビルを浸漬した後の布帛を切り取り、両端を縫って筒状にしたものを1日あたり5時間、手首に皮膚の上から巻き付けることで行った。残留量が評価前の95〜100%の場合を×、70〜95%を○、50〜69%を△、0〜49%を×とした。×となった場合を不十分と判定した。
テトラテトラヘキシルデカン酸の定量方法は、(5)と同様とした。
【0065】
(7)香りの洗濯耐久試験
布帛の洗濯方法については、JIS L 0217「繊維製品の取扱い表示記号及びその表示方法」に記載の103法を用いた。洗濯回数は10回、20回で評価を行い、ブランクを洗濯回数0回とした。香りの違いについて、10人の被験者に対し、下の評価尺度で官能評価を行い、その合計得点を用いた。
2点:洗濯回数0回のものと同等以上の香りが感じられる。
1点:洗濯回数0回のものに劣るが、香りが感じられる。
0点:香りが感じられない。
10点未満を不十分とした。
【0066】
(8)香りの持続性評価
1ヶ月(30日)間、温度25℃、湿度50%下で放置したときのものと未使用のものを比較して、香りの違いについて、10人の被験者に対し、下の評価尺度で官能評価を行い、その合計得点を用いた。
2点:1ヶ月間放置したものについても、未使用のものと同等以上の香りが感じられる。
1点:1ヶ月間放置したものは、未使用のものに劣るが、香りが感じられる。
0点:1ヶ月間放置したものは、香りが感じられない。
10点未満を不十分とした。
【0067】
(9)製糸性評価
それぞれ1t紡糸した時の糸切れ回数を次の基準で評価した。
○:2回/t以下
△:2〜4回/t
×:4回/t超
×の場合を不十分と判定した。
【0068】
(10)糸中の粗大粒子数
ポリアミドフィラメント糸を5cm切り取り、溶融し、フィルム状にした後、透過型顕微鏡(TEM)でポリマー中に分布する無機粒子を画像(倍率1000倍)として取り込む。取り込んだ画像から、10μm以上の粒子数を求め、0.01mm2中の粒子数で表した。測定は5回行い、その平均値を採用した。
【0069】
(11)染め評価
以下の実施例で示した方法で紡糸を行い、紙管に6.0kgで巻き取った。このドラムを100gごとに糸を分巻きし、子糸を60本採取した。最外層の子糸をブランクとして、残りの59本の子糸との染め差の有無を評価した。評価は、ブランクとした子糸と残りの59本の各子糸が交互になるように筒編みを作成し、80℃、pH5.0に調整した水浴中で40分間染色し、5人の評価者が目視判定を行い、1つでも染め差が有った場合は×とした。5人の評価が分かれた場合には、多数の評価を採用した。
染料はNylosan Milling Blue N−GFL 167%(クラリアントジャパン株式会社製)を1%owf使用した。
【0070】
実施例1
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA530)を図7〜11で示したようなテーブルフィーダーを用いて供給した。図7はこのテーブルフィーダーの概略図である。図8(a)は図7のテーブルフィーダーの粉体貯留槽の内部について上方からみた概略図であり、図8(b)はそれを側面からみた概略図である。図9(a)はテーブルフィーダーの粉体計量槽の内部について上方からみた概略図である。図9(b)はそれを側面から見た概略図である。図9(c)は切り鉤の様子を示した説明図である。
図10は図8(a)、図9(a)の矢印(B)方向から見たときの水平方向に設置された撹拌翼11、13の概略図であり、図11はこのテーブルフィーダーの粉体貯留槽に設置された垂直方向撹拌翼を上方から見た概略図である。このテーブルフィーダーは、高さ200mm、直径200mmの粉体貯留槽9と高さ100mm、直径200mmの粉体計量槽10および内径50mmの粉体供給筒17を持ち、密閉化されたテーブルフィーダーである。このテーブルフィーダーを用いて上記シリカ粉末を、25℃、98%濃度の100%硫酸溶液中で測定した相対粘度(硫酸相対粘度)2.6のナイロン6ペレット中に含有量が3wt%となるように連続的に添加した。シリカの平均粒径、比表面積、平均細孔径は表1に示したとおりであった。テーブルフィーダーの粉体貯留槽9は、高さ8mm、角度eが39°、長さ95mmの水平方向に設置された撹拌翼11と、高さ150mmの垂直に立った部分が、回転軸から伸びる長さ95mmの水平部分に対して、75°の角度をもつ垂直方向に設置された撹拌翼12からなり、粉体計量槽10は、高さ8mm、角度eが39°、長さ95mmの水平方向に設置された撹拌翼13と高さ80mmの垂直に立った部分が、回転軸から伸びる長さ95mmの水平部分に対して、90°である垂直方向に設置された撹拌翼14からなり、粉体貯留槽9と粉体計量槽10の間には、直径20mmの開口部23を4つ持った仕切板18を設置した。テーブルの溝幅は5mm、深さは5mmとした。粉体供給筒17の最下部とポリアミドチップの溶融部22との距離は170mmとした。切り鈎26は溝24と計量部仕切板25と間にある粉体を全て掻き落とせるように設置した。
【0071】
このようなテーブルフィーダーでシリカをナイロン6ペレット中に添加したものを260℃で65φのダブルフライトスクリューを持つエクストルーダーで溶融し、エクストルーダーと連結した図1の紡糸プロセスの口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10重量%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍に延伸し、4600m/minで巻き取り、78デシテックス52フィラメントの丸断面のナイロン6糸を得た。得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は1回/tであった。
【0072】
このナイロン6糸を用いて、32ゲージのシングル丸編機を用いて、ウェル18本/cm、コース27本/cmの天竺を作製した。作製した天竺を、80℃に調整した10wt%のテトラヘキシルデカン酸アスコルビルおよび7wt%ラニリンアルコールを含んだ水溶液に1時間浸漬した。これを乾燥した後、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの定量は、試料をイソプロパノール溶液に入れ、37℃で2時間振とうした後に、上澄み液をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定し、得られたテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのピーク面積を求め、洗濯10回もしくは20回の試料から得られたテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのピーク面積を、洗濯回数0回の試料から得られたテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのピーク面積で割ることによって求めた。
【0073】
実施例2
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA310)を、実施例1と同様のテーブルフィーダーを用いて、硫酸相対粘度2.6のナイロン66ペレットに含有量が5wt%となるように添加した。シリカの平均粒径、比表面積、平均細孔径は表1に示したとおりであった。これを295℃で65φのダブルフライトスクリューを持つエクストルーダーで溶融し、口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10重量%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4120m/minでローラーに引き取った後、180℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.15倍に延伸し、4600m/minで巻き取り、78デシテックス52フィラメントの丸断面のナイロン66糸を得た。得られたナイロン66糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は1回/tであった。
【0074】
このナイロン66糸を用いて、32ゲージのシングル丸編機を用いて、ウェル18本/cm、コース27本/cmの天竺を作製した。作製した天竺をヒノキ抽出精油に浸漬した。これを乾燥した後、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。
【0075】
実施例3
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA530)のナイロン6への添加濃度を10wt%とし、その他の条件は実施例1と同様にした。得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は3回/tであった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。
【0076】
実施例4
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA740)のナイロン6への添加濃度を0.7wt%とし、その他の条件は実施例1と同様にした。得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は2回/tであった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。
【0077】
実施例5
40%NaOH水溶液と水酸化アルミニウムを重量比3:2の割合で攪拌しながら混合し、110℃で1時間加熱したのち冷却し、Na2 O:21%、Al2 3 :28%の組成からなるアルミン酸ナトリウムを得、このアルミン酸ナトリウムと40%NaOH水溶液を1:1で混合した溶液中に、Na2 O:9.7%、SiO2 :29.8%からなる3 号水ガラスと0.2%に調整した塩化カルシウム水溶液を重量比2:5の割合で混合した水溶液を滴下し混合し、80℃で2時間保持した。これをろ過、水洗、乾燥して、表1のようなゼオライト粉末を得た。このゼオライト粉末を図14〜16で示したようなスクリューフィーダーを用いて、ナイロン6ペレット中に含有量が3wt%となるように添加した。図14は上記スクリューフィーダーの概略図であり、図15はそのスクリューフィーダーの内部にあるスクリュー部を上からみた概略図であり、図16はそのスクリュー部分の拡大概略図である。スクリューフィーダーとしては高さ300mm、直径200mmの粉体貯留層27およびモーター29によって稼動する2軸のスクリュー28からなるスクリューフィーダーを用いた。スクリュー28は長さ300mm、直径40mmのスクリュー2本からなり、それぞれのスクリューは溝幅7mmの溝を持ち、溝と溝の間のピッチは1.5mmとした。また、スクリュー間の距離は2mmとした。粉体貯留層27に投入されたゼオライト粉末は、粉体貯留層27の下部に空けられた、30mm四方の開口部30より、スクリューの端部に移動し、スクリューによってスクリュー先端部に運搬される。先端部に運搬されたゼオライト粉末は、スクリューと平行な方向に15mm、垂直な方向に40mmに空けられた粉体吐出口31より吐出されて、ポリアミドペレットに添加される。その他の条件は実施例1と同様にした。得られたポリアミド糸のゼオライトの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は1回/tであった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。
【0078】
実施例6
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA530)を実施例1と同様のテーブルフィーダーを用いて、硫酸相対粘度2.6のナイロン66ペレットに含有量が1wt%となるように添加した。シリカの平均粒径、比表面積、平均細孔径は表1に示したとおりであった。これを290℃で65φのダブルフライトスクリューを持つエクストルーダーで溶融し、口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10重量%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4120m/minでローラーに引き取った後、180℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.15倍に延伸し、4600m/minで巻き取り、78デシテックス52フィラメントの丸断面のナイロン66糸を得た。得られたナイロン66糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は1回/tであった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。
【0079】
実施例7
実施例1で用いたテーブルフィーダーの代わりに、水平方向に設置された撹拌翼11および13が図12に示したように、高さ8mm、幅10mm、長さ95mmであり、テーブルフィーダーの粉体計量槽に設置された垂直方向撹拌翼14が図13に示したように回転軸から伸びる長さ95mmの水平部分に対して、90°であり、内径50mmの粉体供給筒を持つ以外は実施例1と同様のテーブルフィーダーを用い、その他の条件も実施例1と同様の方法でナイロン6糸を得た。図12は図8(a)、図9(B)において矢印(B)方向から見たテーブルフィーダーの粉体貯留槽および粉体計量槽に設置された水平方向に設置された撹拌翼の概略図であり、図13はテーブルフィーダーの粉体貯留槽に設置された垂直方向撹拌翼の上方から見た概略図である。
【0080】
得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施し、結果を表1〜3に示した。なお、製糸性は2回/tであった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。
【0081】
比較例1
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA530)のナイロン6への添加濃度を15wt%とし、その他の条件は実施例1と同様にした。得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は6回/tであった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。溶融紡糸での製糸性が悪く、不十分な結果となった。
【0082】
比較例2
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA530)のナイロン6への添加濃度を0.3wt%とし、その他の条件は実施例1と同様にした。得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は0回/tであった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。洗濯耐久性が不十分な結果となった。
【0083】
比較例3
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA770)のナイロン6を添加すること以外は、実施例1と同様にした。得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は8回/tであった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。溶融紡糸での製糸性が悪く、不十分な結果となった。
【0084】
比較例4
シリカ粉末(旭硝子(株)製SUNSPHERE H−53)のナイロン6を添加すること以外は、実施例1と同様にした。得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は6回/tで不十分であった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。洗濯耐久性が不十分な結果となった。
【0085】
比較例5
シリカ粉末(旭硝子(株)製SUNSPHERE NP−30)のナイロン6を添加すること以外は、実施例1と同様にした。得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は4回/tであった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。洗濯耐久性および持続性評価が不十分な結果となった。
【0086】
比較例6
実施例1で用いた粉末を実施例1で用いたテーブルフィーダーを用いて、相対粘度1.3のポリエチレンテレフタレートペレット中に含有量が3wt%となるように添加し、これを290℃で65φのダブルフライトスクリューを持つエクストルーダーで溶融し、口金より吐出し、冷却、給油、交絡後、4050m/minでローラーに引き取った後、180℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4500m/minで巻き取った。
【0087】
78デシテックス52フィラメントの丸断面のポリエチレンテレフタレート糸を得た。得られたポリエチレンテレフタレート糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は2回/tであった。
【0088】
このポリエチレンテレフタレート糸を用いて、32ゲージのシングル丸編機を用いて、ウェル20本/cm、コース29本/cmの天竺を作製し、実施例1と同様の方法で洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。洗濯耐久性および持続性評価が不十分な結果となった。
【0089】
比較例7
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA530)を分散させたスラリーをナイロン66ペレットに溶融混合し、10重量%のシリカ含有マスターチップを得た。このシリカ含有マスターチップとナイロン6ペレットを重量比で1:9の割合で混合し、プレッシャーメルター型の溶融紡糸機で290℃で溶融し、口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10重量%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4120m/minでローラーに引き取った後、180℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.15倍で延伸し、4600m/minで巻き取り、78デシテックス52フィラメントの丸断面のナイロン66糸を得た。得られたナイロン66糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は5回/tで不十分であった。実施例1と同様に天竺を作製し、洗濯耐久性試験および持続性評価を実施した。結果を表3に示した。製糸性、染め評価、洗濯耐久性が不十分な結果となった。
【0090】
比較例8
シリカ粉末(富士シリシア化学(株)製SYLYSIA530)30kgと、25℃、98%濃度の100%硫酸溶液中で測定した相対粘度(硫酸相対粘度)2.6のナイロン6ペレット970kgとを混合したものを、260℃で65φのダブルフライトスクリューを持つエクストルーダーで溶融し、口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10重量%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4600m/minで巻き取り、78デシテックス52フィラメントの丸断面のナイロン6糸を得た。得られたナイロン6糸のシリカの分散状態、粗大粒子数を測定し、染め評価を実施した。結果を表1〜3に示した。製糸性は4回/tであった。ポリアミドフィラメント糸中のシリカ濃度が2.7wt%と低めとなり、繊維長方向のシリカ濃度のバラツキが大きく、染め評価が不十分な結果となった。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
表1〜3の結果から分かるように、本発明の方法により、機能性薬剤の耐久性を向上させる微細孔を有するポリアミド糸を製糸性良く製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明が提供するポリアミドフィラメント糸を製造するのに用いたプロセス図の一例である。
【図2】本発明で好ましく用いれられるテーブルフィーダーの一例である。
【図3】図3(a)はテーブルフィーダーの粉体貯留槽の内部の一例について上方から見た概略図であり、図3(b)はそれを側面からみた概略図である。
【図4】図4(a)はテーブルフィーダーの粉体計量槽の内部の一例について上方からみた概略図であり、図4(b)はその側面からみた概略図である。図4(c)は切り鉤の様子を示した説明図である。
【図5】図5(a)はテーブルフィーダーの水平方向に設置された撹拌翼の一例を上方から見た概略図であり、図5(b)は、図5(a)における撹拌翼11または13の矢印(A)方向からみた撹拌翼の一例を示す概略図、図5(c)は同様に図5(a)における撹拌翼11または13の矢印A方向からみた撹拌翼の別の一例を示す概略図である。
【図6】図6(a)は、テーブルフィーダーの垂直方向に設置された撹拌翼の一例を上方から見た概略図であり、図6(b)はそれを側面から見た概略図である。
【図7】実施例1〜4、実施例6〜7、比較例1〜6で用いたテーブルフィーダーの概略図である。
【図8】図8(a)は図7のテーブルフィーダーの粉体貯留槽の内部について上方からみた概略図であり、図8(b)はそれを側面からみた概略図である。
【図9】図9(a)はテーブルフィーダーの粉体計量槽の内部について上方からみた概略図である。図9(b)はそれを側面から見た概略図である。図9(c)は切り鉤の様子を示した説明図である。
【図10】図8(a)、図9(a)の矢印(B)方向から見たときの水平方向に設置された撹拌翼11、13の概略図である。
【図11】実施例1〜4、実施例6、比較例1〜6で用いたテーブルフィーダーの粉体貯留槽に設置された垂直方向撹拌翼を上方から見た概略図である。
【図12】図8(a)、図9(B)において矢印(B)方向から見たテーブルフィーダーの粉体貯留槽および粉体計量槽に設置された水平方向に設置された撹拌翼の概略図である。
【図13】実施例7で用いたテーブルフィーダーの粉体貯留槽に設置された垂直方向撹拌翼の上方から見た概略図である。
【図14】実施例5で用いたスクリューフィーダーの概略図である。
【図15】図14のスクリューフィーダーの内部にあるスクリュー部を上からみた概略図である。
【図16】図16は図15のスクリュー部分の拡大概略図である。
【符号の説明】
【0096】
1:溶融部(スピンブロック)
2:口金
3:冷却風装置
4:給油装置
5:交絡装置
6:冷ローラー
7:ホットローラー
8:巻き取り機
9:粉体貯留槽
10:粉体計量槽
11:水平方向に設置された撹拌翼
12:垂直方向に設置された撹拌翼
13:水平方向に設置された撹拌翼
14:垂直方向に設置された撹拌翼
15:回転軸
16:モーター
17:粉体供給筒
18:仕切版
19:テーブル
20:ポリアミドチップの配管
21:紡糸ホッパー
22:溶融部
23:開口部(粉体の通り道)
24:溝
25:計量部仕切板
26:切り鈎
27:スクリューフィーダーの粉体貯留槽
28:スクリュー
29:モーター
30:開口部
31:粉体吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比表面積が200〜1000m2/g、平均細孔径が1〜25nm、平均粒径が0.1〜5μmである、微細孔を有する無機粒子を含有量が0.5〜10wt%となるように配合した、(1)〜(4)を全て満たすことを特長とするポリアミドフィラメント糸。
(1)ポリアミドフィラメント糸の繊維長方向の任意の5点における微細孔を有する無機粒子の濃度Dが0.8Da<D<1.2Daである。
ただし、Dは任意の点における濃度、Daは平均濃度を示す。
(2)ポリアミドフィラメント糸の横断面において、繊維横断面の中心に近いセグメントと、外周部から近いセグメントの2つに分割して、それぞれのセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度を測定した時に、濃度の高いセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度をD、濃度の低いセグメントの微細孔を有する無機粒子濃度ををDとしたときに、D<1.2Dである。
(3)10μm以上の粗大粒子が0.01mm2中3個以下である。
(4)微細孔を有する無機粒子の粒径に対する重量分布をそれぞれ求めたときの重量累積値が50%、75%となる時の粒径をそれぞれU1、Uとしたときに、U−U1<2μmである。
【請求項2】
微細孔を有する無機粒子がシリカであることを特長とする請求項1に記載のポリアミドフィラメント糸。
【請求項3】
機能性薬剤を含むことを特徴とする請求項1または2記載のポリアミドフィラメント糸。
【請求項4】
熱可塑性樹脂ペレットに、微細孔を有する無機粒子粉体を溶融部前で連続的に添加することを特徴とする熱可塑性フィラメント糸の製造方法。
【請求項5】
熱可塑性樹脂ペレットに、比表面積が200〜1000m2/g、平均細孔径が1〜25nm、平均粒径が0.1〜5μmである、微細孔を有する無機粒子粉体を溶融部前で、連続的に添加することを特徴とする熱可塑性フィラメント糸の製造方法。
【請求項6】
微細孔を有する無機粒子粉体の計量を下記の構成とするテーブルフィーダーで行うことを特徴とする請求項4または5に記載の熱可塑性フィラメント糸の製造方法。
(1)テーブルフィーダー内圧を紡糸ホッパー内圧と同圧となるように密閉された構造である。
(2)粉体貯留槽を上部に、粉体計量槽を下部に持つ2槽からなり、それぞれの槽に槽の中心を回転軸とする2種類の撹拌翼を持ち、そのうち1種類の撹拌翼は回転軸と垂直に取り付けられ、回転方向側に行くに従って厚みが薄くなる構造の撹拌翼であり、他方の撹拌翼は槽の外周で垂直方向に延びた撹拌翼を持つ。
(3)内径10〜200mmの粉体供給筒を持つ。
【請求項7】
熱可塑性樹脂がポリアミドである請求項4〜6のいずれか記載の熱可塑性フィラメント糸の製造方法。
【請求項8】
微細孔を有する無機粒子がシリカであることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の熱可塑性フィラメント糸の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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