説明

ポリアミドマルチフィラメント糸、その製造方法、インナー用編成物

【課題】防透性、吸水性および吸湿性に優れ、ソフトなタッチを持つインナー用途に優れたポリアミドフィラメント糸およびその編成物の製造を課題とする。
【解決手段】2種類以上の異なる断面形状の単糸を有し、酸化チタンを1〜5重量%およびポリビニルピロリドンを3〜7重量%含有するポリアミドマルチフィラメント糸において、略丸断面形状の単糸A、3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bとを有し、下記要件を全て満たすことを特長とするポリアミドマルチフィラメント糸。
(1)略丸断面の単糸Aの繊度と3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bの繊度との比が1/3〜3である。
(2)略丸断面の単糸Aのフィラメント数と3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bのフィラメント数との比が1/3〜3である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防透性、吸水性および吸湿性に優れ、ソフトなタッチを持つインナー用途に優れたポリアミドマルチフィラメント糸、その製造法およびその編成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドフィラメント糸は、高強度・高耐摩耗性・ソフト性・染色鮮明性を持ち、ポリエステル繊維に比べ吸湿性に優れることから、主にパンティストッキングやタイツといったレッグウェア、ランジェリーやショーツなどインナーウェア、スポーツ・カジュアルウェアなどの用途に用いられている。
【0003】
中でも、インナーウェアにおいては、直接肌と接触するため、衣服内の湿度を快適な湿度に保つことが重要となる。また、インナーウェアにおいては、肌を透けさせないということが欠かせない要素である。元来、合成繊維であるポリアミドフィラメント糸は、天然繊維に比べ、吸放湿性に劣り、艶消し剤を添加しなければ、透明な繊維である。そこで、特許文献1では、吸湿剤および艶消し剤を添加することにより、吸放湿性および防透性を付与している。しかし、吸湿剤の添加のみでは、衣服内の水蒸気は吸収するものの、汗など水滴化した水については吸収しないため、温湿度の高い環境下では、快適性を保つことが出来なかった。
【0004】
また、上記特許文献においてポリアミド繊維は丸孔口金を用いて紡糸されているため、適度な艶感のある落ち着いた色調を得ることが困難であった。
【0005】
また、特許文献2では、凹部を有する断面形状の単糸と凹部を有しない断面形状の単糸からなるポリエステル仮撚糸が提案されているが、ポリエステル仮撚糸では吸水性・吸湿性ともに劣っており、凹部を有する断面形状の単糸と凹部を有しない断面形状の単糸との大きさや単糸数の比率を規定しないために、防透性が求められる糸としては適した構成になっておらず、ポリエステル糸では、屈折率がポリアミドに比べ小さいために、落ち着いた色調を出すことが出来なかった。また、特許文献2においては、ふくらみ感・ドライ感などの質感、吸水性は得られるものの、適度な艶感のある落ち着いた色調を得ることは困難であった。
【特許文献1】特開2004−060129号公報([17]〜[27]段落)
【特許文献2】特許2964639号公報([15]〜[26]段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、吸湿性だけでなく、吸水性にも優れ、さらに防透性に優れたポリアミドマルチフィラメント糸およびその製造方法を提供することを課題とし、、特にインナーウェアに好適なポリアミドフィラメント糸、その製造方法およびインナー用編成物を提供することを課題とする。に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の製造方法は、次の要件からなる。すなわち、
(1)2種類以上の異なる断面形状の単糸を有し、酸化チタンを1〜5重量%およびポリビニルピロリドンを3〜7重量%含有するポリアミドマルチフィラメント糸において、略丸断面形状の単糸A、3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bとを有し、下記要件を全て満たすことを特徴とするポリアミドマルチフィラメント糸、
(A)略丸断面の単糸Aの繊度と3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bの繊度との比が1/3〜3である、
(B)略丸断面の単糸Aのフィラメント数と3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bのフィラメント数との比が1/3〜3である、
(2)(1)に記載のポリアミドマルチフィラメント糸からなるインナー用編成物、
(3)ポリビニルピロリドンを10〜50重量%含有するポリアミドチップと酸化チタンを1〜20重量%含有するポリアミドチップとをブレンド後、溶融し、計量部と形状規制部の2枚からなる口金を用いて製造することを特徴とする請求項1に記載のポリアミドマルチフィラメント糸の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
吸湿剤および艶消し剤を適正量添加し、略丸断面形状の単糸A、3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bという2種類以上の異なる繊維断面を有するポリアミドマルチフィラメント糸を製造することにより、吸水性および吸湿性、防透性に優れた、特にインナーに好適なポリアミドマルチフィラメント糸、編成物を製造することが出来、従来のポリアミド糸では達成することの出来なかった適度な艶感のある落ち着いた色調を出すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は2種類以上の異なる断面形状の単糸を有し、酸化チタンを1〜5重量%およびポリビニルピロリドンを3〜7重量%含有するポリアミドマルチフィラメント糸であり、特定の形状を有する単糸を組み合わせたものであり、それらの単糸の繊度の比およびフィラメント数の比が特定の範囲にあるものである。
【0010】
本発明におけるのポリアミドマルチフィラメント糸を構成するポリアミドは、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリカプリルアミド(ナイロン8)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)などに例示されるように、炭化水素基がアミド結合を介して連結された高分子量体であり、その種類は特に限定されないが、ナイロン6であることがポリビニルピロリドンとの相溶性の点から好ましい。本発明におけるポリアミドは、ホモポリマーのみならず、それらポリアミドの共重合体であっても良いが、好ましくは2種類以下のポリアミド繰り返し単位構造からなり、その構造単位の比率も100/0〜80/20の範囲に有ることがさらに好ましい。これは、3種類以上のポリアミドからなる共重合ポリアミドは、繊維化した際の構造がルーズとなるため、融点・洗濯堅牢性が低くなる傾向にあるためである。同様の理由で、2種類であっても、その比率が20/80〜80/20の範囲にある場合には、繊維化した際の構造がルーズとなるため、融点・洗濯堅牢性が低くなる傾向にある。
【0011】
本発明が提供するポリアミドマルチフィラメント糸は、酸化チタンを1〜5重量%含むことを必要とする。酸化チタン含有率が1重量%未満の場合には、防透度が不十分となり、酸化チタン含有率が5重量%を越える場合には、製糸困難となる。また、用いる酸化チタンの1次粒子の平均粒径は、0.1〜2μmであることが好ましい。ここで1次粒子とは粒子が凝集していない完全に単離された状態の粒子をいう。1次粒子の平均粒径が0.1μmよりも小さい場合には、表面の活性が高くなるために凝集しやすくなり、結果として2次粒子としての粒径が大きくなる。この場合には、溶融紡糸時の製糸性の悪化の原因となる。ここで2次粒子とは1次粒子が凝集した集合体をいう。また、1次粒子の平均粒径が2μmよりも大きい場合には、溶融紡糸時の製糸性の悪化を招く。上記一次粒径は、遠心沈降法を用いて測定し、粒径に対する重量分布を求め、重量分布のモード値(重量値が最も大きくなる粒径)とする。
【0012】
さらに、本発明のポリアミドマルチフィラメント糸は、ポリビニルピロリドンを3〜7重量%含有することを必要とする。ポリビニルピロリドン含有率が3重量%未満の場合には、吸湿性が不十分となる。ポリビニルピロリドン含有率が7重量%を越える場合には、繊維化した際の構造がルーズとなるため、洗濯堅牢度が不十分となる。
【0013】
また、本発明が提供するポリアミドマルチフィラメント糸に含まれるポリビニルピロリドンとしては、ポリビニルピロリドン中に含まれるビニルピロリドン含有率をポリビニルピロリドンに対して0.1重量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.05重量%以下である。このビニルピロリドン含有率が好ましい範囲に有る場合には、未染色状態でのイエローインデックスを10以下とすることができ、衣料用として好適な色調のくすみのない繊維が得られるのである。ビニルピロリドン含有率が0.1重量%以下のポリビニルピロリドンは、重合時に溶媒としてイソプロピルアルコールを用いることにより得られる。また、その際に、重合開始剤として過酸化水素系の触媒を用いないことで、ビニルピロリドンの発生を抑制できるため、重合開始剤として過酸化水素系の触媒を用いないことが好ましい。
【0014】
また、本発明で用いるポリビニルピロリドンは、そのK値が20〜70であることが好ましく、さらに好ましくは20〜60である。K値はポリビニルピロリドンの重合度に関係する指標であり、ポリビニルピロリドンの重合度を測定するのに、一般的に用いられる指標である。以下にその求め方を示す。
【0015】
ポリビニルピロリドンを濃度1%の水溶液とし、その相対粘度を測定し、Fikentscher式により、kの値を求める。
【0016】
logZ=C[75k/(1+1.5kC)+k]
ここで、Zは濃度Cの水溶液の相対粘度、Cは水溶液の濃度を溶液濃度で示したものである。
【0017】
求めたkの値を1000倍することでK値が求められる。測定は3回行い、その平均値を用いる。
K値が高くなりすぎると、ポリアミド中に練り込む際の粘度上昇が大きくなり、溶融吐出によるチップ化が困難となり、生産性が低下する。一方、K値が20未満である場合には、ポリアミド中に練り込んだ際に、ポリアミド分子鎖とポリビニルピロリドンとの絡み合いが弱く、水溶性の高いポリビニルピロリドンが、ポリマー表面にブリードアウトしやすくなる。
【0018】
このように水溶性成分の溶出率を抑制するためには、ポリビニルピロリドンとポリアミドとの分子鎖の絡み合いを強くする手法が望ましい。例えば、ポリビニルピロリドンをエクストルーダにより、ポリアミド中に練り込み、マスターポリマーとする方法が、ポリアミドとポリビニルピロリドン分子鎖の絡み合いを強くすることができて好ましい。
【0019】
その練り込みは、低酸素濃度での練り込み法により行うことが、紡糸時の糸切れを低減させるために好ましく、窒素などの不活性気体をホッパーやシリンダーに流して、酸素濃度を低減させる方法をとるのが好ましい。マスターポリマー中にポリビニルピロリドンを練り込む場合のポリビニルピロリドンの含有量は10〜50重量%であるのが好ましい。
【0020】
このようにして得たマスターポリマーチップは、実質的にポリビニルピロリドン無添加のポリアミドチップとチップブレンドして、ポリビニルピロリドン含有量を調整した後に、溶融紡糸され常法により繊維化される。
【0021】
本発明が提供するポリアミドマルチフィラメント糸は、その効果が阻害されない限り、その他の添加剤を添加することが出来、その種類は特に限定されない。
【0022】
本発明が提供するポリアミドマルチフィラメント糸は、2種類以上の異なる断面形状のフィラメント糸から構成され、略丸断面形状の単糸A、3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bとを有することを必要とする。
【0023】
本発明のいう略丸断面とは、その断面の周がなす曲線が変曲点を持たない形状で、かつ下記式[1]を満たす断面をいう。すなわち図3は略丸断面の単糸Aの一例を示す断面概略図であるが、これを用いて説明すると、断面の重心4を通る直線で切り取られる線分のうち、最長のものの長さをm、最短のものの長さをmとしたときに、
/m<3 [1]
を満たす断面であり、任意の3本の単糸を用いて測定した平均値をいう。
【0024】
ポリアミドマルチフィラメント糸が略丸断面の単糸を持たない場合には、布帛にした場合に、断面が平坦部を持つこととなり、ある角度での反射強度が大きくなるために、光沢感を持つため、ダル感・ナチュラル感が損なわれるためである。
【0025】
また、3〜8個の葉を有する断面の単糸を持たない場合には、吸水性が不十分となる。これは、略丸断面の単糸Aと3〜8個の葉を有する断面の単糸Bとの間もしくは、3〜8個の葉を有する断面の単糸B同士の間に、毛細管現象による水の吸収効果が著しく低下するためである。また、吸水性の観点から、単糸Bの葉の数は3〜6が好ましい。
【0026】
単糸Bを3〜8個の葉を有する断面とする理由について、以下に述べる。葉が2以下の場合には、単糸Bと別の単糸との間で構成される間隙が毛細管現象を引き起こすに足る十分な毛細管を形成する機会が極端に少なくなるためである。葉が9以上の場合には、葉と葉の間隔が小さくなりすぎるために、葉と葉の間に他の単糸が入り込む可能性が小さくなり、毛細管現象を引き起こすに足る十分な毛細管を形成することが出来なくなる。この毛細管が形成される可能性は、葉が3〜6の時に大きくなるため、葉は3〜6が好ましく、回転対称の形状がさらに好ましい。図1は本発明におけるポリアミドマルチフィラメント糸の断面の一例を示す断面概略図であり、図2(a)は3〜8個の葉を有する断面の単糸Bの一例を示す断面概略図であるが、略丸断面の単糸A(1)が一つまたは二つ以上の3〜8個の葉を有する断面の単糸B(2)の葉と葉の間に入り込む、もしくは複数の3〜8個の葉を有する断面の単糸B(2)同士がその葉と葉の間に入り込む態様となっている。そしてこれら単糸間で構成される間隙が毛細管現象を引き起こすことにより、優れた吸水性が得られるのである。
【0027】
また、単糸Bにおいて、隣り合う葉は開き具合や大きさ、形状が適度な範囲にあることが好ましい。図2(b)は3〜8個の葉を有する断面の単糸Bの葉の断面形状を表す後述の式b/aを算出するための説明図である。3〜8個の葉を有する断面の単糸Bから任意に選び出した3本の単糸をかみそりで糸長方向に対し垂直な面に切断し、得られた断面をマイクロスコープで1000倍に拡大し、写真に写し取る。その写真を用いて、図2(b)に示すように、1つの葉とその隣の葉の両方に接する接線f12が2つの葉との接点f、fにより切り取られる線分の長さaと、2つの葉が形成する底点gと2つの葉に接する接線f12との距離bを測り取り、b/aを求める。全ての葉について同様の方法でb/a、b/a・・・・と求め、それらの平均値b’/a’を求める。同様にして、b’/a’を任意の3本の単糸それぞれについて求め、それら3本の単糸のb’/a’の平均値をb/aとする。この時のb/aが0.1〜0.6であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.3である。
【0028】
また、単糸Aのフィラメント数Aと単糸Bのフィラメント数Bとの比A/Bは1/3〜3/1であることが必要であり、望ましくは4/6〜7/3である。これは、1/3よりも実質的に丸断面のフィラメント数が少ない場合には、ダル感・ナチュラル感が不足し、丸断面のフィラメント数が少ないほど、ダル感・ナチュラル感が減じられ、光沢感が強くなるために、布帛にした際に適度な艶感のある落ち着いた色感も得られなくなるためである。また、3/1よりも実質的に丸断面のフィラメント数が多い場合には吸水性が不十分となり、丸断面のフィラメント数が多いほど、吸水性が減じられる傾向にあり、布帛にした際に艶感が得られなくなる。
【0029】
また、略丸断面のフィラメント糸の単糸繊度Aと3〜8個の葉を有する断面をもつフィラメント糸の単糸繊度Bとの比A/Bが1/3〜3であることが必要であり、好ましくは1/2〜2である。略丸断面のフィラメント糸の単糸繊度と3〜8個の葉を有する断面をもつフィラメント糸の単糸繊度との比が1/3よりも小さくなる場合には、ダル感・ナチュラル感が不足する。略丸断面のフィラメント糸の単糸繊度と3〜8個の葉を有する断面をもつフィラメント糸の単糸繊度との比が3よりも大きくなる場合には、十分に毛細管現象を活用できないために、吸水性が不十分となる。なお本発明において上記単糸Aと単糸Bの単糸繊度の比は、SEMによる断面写真から、略丸断面の単糸Aの断面積の総和S、3〜8個の葉を有する断面の単糸Bの断面積の総和Sを求め、S、SをそれぞれA、Bで除した値S/A、S/Bの比S/Aより求められる値とする。
【0030】
すなわち本発明においては、単糸Bと単糸Aとの大きさや単糸数の比率を適切な範囲とすることにより、従来のポリアミド糸では達成することの出来なかった適度な艶感のある落ち着いた色調を出すことが可能となるのみならず、さらに新たな色感を持つ布帛を形成することが可能となるのである。
【0031】
本発明のポリアミドマルチフィラメント糸の基本的な製造方法は、一旦未延伸糸を得、その後延伸する2工程法のUY/DT法であっても、半延伸糸(POY糸)もしくは延伸糸(DSD糸)を1工程で巻き取る一工程法のいずれの方法でも製造できるが、生産性の観点から一工程法で製造することが好ましい。これは、未延伸糸が吸湿のために、延伸までの間にタテ方向に膨潤し、ドラムから糸層が抜け落ち易いためである。
【0032】
また、2種類以上の異なる断面形状の単糸を有するマルチフィラメント糸を製造するための方法としては、1枚の口金に3〜8個の葉を有する断面形状の紡糸孔と略丸断面形状の紡糸孔の両方を持つ口金を用いる繊維のマルチフィラメント糸の製造方法、3〜8個の葉を有する断面形状の紡糸孔のみを有する口金および略丸断面形状の紡糸孔のみを有する口金のそれぞれから糸を紡出し、混繊後に引き取るマルチフィラメント糸の製造方法、3〜8個の葉を有する断面形状の紡糸孔のみを有する口金および略丸断面形状の紡糸孔のみを有する口金のそれぞれから糸を紡出し、巻き取り後、後工程で混繊するマルチフィラメント糸の製造方法などが挙げられるが、本発明のようにポリアミドを用いる場合、その特性は、給油条件や冷却条件により影響を受けやすいため、製品品位の上から1枚の口金に3〜8個の葉を有する断面形状の紡糸孔と略丸断面形状の紡糸孔の両方を持つ口金を用いて生産することが好ましい。また、生産性の観点からも1枚の口金に3〜8個の葉を有する断面形状の紡糸孔と略丸断面形状の紡糸孔の両方を持つ口金を用いて生産することが好ましい。
【0033】
また、糸の長手方向での均一性を得るためには、口金孔から均一にポリマーが吐出されることが好ましいが、これを達成するには、後述するように口金孔でのポリマーの圧力損失を適正な範囲に調整することが好ましい。この圧力損失の制御は口金孔の大きさと深度により決まるため、ポリマーの形状を規定する部分機能を3〜8個の葉を有する断面形状の紡糸孔と略丸断面形状の紡糸孔の両方を持つ1枚構成の口金とすると、目標とする断面形状と圧力損失の両者が適正な範囲になるように設計することが必要である。また、溶融粘度の低いポリマーの場合には口金孔を小さくする必要が生じるが、バラスが大きくなり、断面を精密に制御する必要がある。
【0034】
またこのように本発明のポリアミドフィラメント糸の製造において使用される口金は、本発明の効果を阻害しない限り、特に限定されないが、図5に示すような計量部(M)と形状規制部(S)の2枚よりなる口金を使用することが好ましい。図5(a)は計量部(M) と形状規制部(S)からなる口金の断面図の一例であり、図5(b)は計量部(M)を示す上面図の一例、図5(c)は形状規制部(S)を示す底面図の一例である。計量部(m)(5)と形状規制部(S)(6)は、それぞれ吐出ポリマーが流れるための孔(図示せず)を有し、ポリマーの吐出口として機能するよう孔の位置が調整された状態で重ね合わされ、計量部(M) (5)と形状規制部(S) (6)を固定するためのピン(7)で互いに固定される。計量部(M)(5)は主に吐出するポリマーの圧力損失を調整し、計量部(M)(5)の孔から、その孔とつながっている形状規制部(S) (6)の孔に流れ込むポリマーの量を一定にする働きをもつ。この圧力損失の調整は計量部(M) (5)の口金孔の孔径・深度を適正な値とすることで行う。形状規制部(S) (6)は、孔より吐出される糸の断面形状を決定し、吐出されるポリマーの流速を調整する働きを持ち、形状規制部が有する孔の形状で吐出される糸の断面形状を調整し、孔の大きさで流速を調整する。
【0035】
本発明においては、計量部(M)となる部分は全て丸孔で構成され、略丸断面の単糸と3〜8個の葉を有する断面をもつ単糸の単糸繊度比によって、口金でのポリマーの圧力損失が4〜15MPaになるように、孔径を適宜選択することが好ましい。圧力損失が4MPa未満の場合には、それぞれの孔から吐出されるポリマーの計量性が悪くなり、斑などが生じやすくなり、糸の品位が低下する。圧力損失が15MPaを越える場合には、計量部(M)にかかる圧力が大きくなり、ポリマーの漏れなどを起こしやすくなるためである。形状規制部(S)は、それぞれの単糸の断面形状に合わせて適宜、孔の形状を決定し、吐出されるポリマーの流速は孔の大きさで調整することができる。
【0036】
本発明のポリアミドマルチフィラメント糸の製造方法の具体的例として以下の方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。すなわち、ポリビニルピロリドンなどを2軸のダブルフライトのエクストルーダーを用いて、酸化チタンを含有しないポリアミドに練り混み、マスターペレットを得る。このマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された酸化チタンを好ましくは1.5〜10重量%含有するナイロン6チップとを好ましくは20:80〜80:20でブレンドし、溶融温度260℃で図6(a)〜(d)のような孔配列の口金より吐出し、冷却後、含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、さらに含水系エマルジョン油剤を給油した後、3300〜4800m/minでローラーに引き取った後、好ましくは150〜200℃に加熱された加熱ローラーとの間で好ましくは1.1〜1.7倍の延伸倍率で延伸し、好ましくは3500〜5200m/minで巻き取り、本発明のポリアミドフィラメント糸を得る方法が挙げられる。
【0037】
また、上記と同様の方法でポリマーを吐出し、含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、さらに含水系エマルジョン油剤を給油した後、3300〜5200m/minでローラーに引き取った後、加熱しないローラーで延伸しないで、もしくは、好ましくは1〜1.2倍の延伸倍率で延伸して、好ましくは3500〜5200m/minで巻き取ることでも、本発明のポリアミドフィラメント糸を得ることができる。
【0038】
また、本発明のポリアミドフィラメント糸は、インナーに好適であり、様々な編成物とすることが好ましい。
【0039】
編地の製編としては、経編地であるトリコット地、ラッセル地、および丸編地であるシングル丸編地、ダブル丸編地、成形丸編地、あるいは、横編地の成形横編地のいずれであってもよい。また、編組織は、経編地のハーフ組織、バックハーフ組織、クインズコード組織、サテン組織、サテンネット組織、パワーネット組織、トリコネット組織、その他変化組織等、さらには丸編地の天竺組織、天竺リバーシブル組織、フライス組織、インターロック組織、リバーシブル組織、その他変化組織等、特に限定されることなく使用できる。
【0040】
また、本発明のポリアミドフィラメント糸は、添加剤の種類に応じてではあるが、適宜、一般的に用いられる方法により、精練・リラックス処理・染色・機能加工をすることができ、精練剤・金属封鎖キレート剤・固着剤・均染剤など各種薬剤が使用できる。また、機能加工においても、防汚加工、抗菌加工、制菌加工、消臭加工、防臭加工、吸汗加工、吸湿加工、防透加工、摩擦難溶融加工、紫外線防止加工、さらに、後加工としてエンボス加工、起毛加工、オパール加工等最終狙い商品の要求特性に応じて適宜付与することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。評価方法は、以下の通りである。
【0042】
(1)ビニルピロリドン含有率
繊維試料100mgにヘキサフルオロイソプロパノール3mlとクロロホルム1mlとを加え、繊維を溶解する。得られた溶液に、エタノールを加えてポリマー成分を再沈させ20mlに定溶する。溶液成分を定法により、GC14A(島津製作所(株)製)を用いてガスクロマトグラフィーで分析を実施する。カラムはNB−1(15m)を使用する。ビニルピロリドンの定量は、バレロラクタムの検量線をあらかじめ作成して行う。下記式によりビニルピロリドン含有率を求める。測定は3回行い、その平均値を用いる。
【0043】
ビニルピロリドン含有率=(GCピーク面積/検量線係数)×溶液量/試料量×100(%)ここで、それぞれ単位は、ビニルピロリドン含有率が[重量%]、(GCピーク面積/検量線係数)が[mg/ml]、溶液量が[ml]、試料量が[mg]である。
【0044】
なお、溶液量とは、エタノールを加えてポリマー成分(ポリビニルピロリドン)を再沈させた後に得られた溶液の量であり、溶液中にビニルピロリドンは溶解している。試料量とは再沈させて得られたポリマー成分(ポリビニルピロリドン)の量である。
【0045】
本発明の実施例、比較例中のビニルピロリドン含有率は、製造したポリアミドマルチフィラメントを用いて、ビニルピロリドン含有率を算出している。
【0046】
(2)K値
ポリビニルピロリドンを濃度1%の水溶液とし、その相対粘度を測定し、Fikentscher式により、kの値を求めた。
【0047】
logZ=C[75k/(1+1.5kC)+k]
ここで、Zは濃度Cの水溶液の相対粘度、Cは水溶液の濃度を溶液濃度で示したものである。
【0048】
求めたkの値を1000倍することでK値を求めた。測定は3回行い、その平均値を用いた。
【0049】
(3)断面評価
糸を繊維長方向に垂直に切断し、この切断面をSEMで観察し、画像としてコンピュータに取り込んだ。写し取られた断面から、略丸断面またはそれに近い単糸のうち、3つを任意に選び出し、それぞれ重心および重心を通る線分のうち、最長のものの長さmと最短のものの長さmを求めた。それぞれの単糸から求めたmとmからm/mを計算し、平均値を求めた。
【0050】
また、単糸Aと単糸Bの単糸繊度の比は次の方法により求めた。
【0051】
まず、断面写真から、略丸断面の単糸Aの断面積の総和S、3〜8個の葉を有する断面の単糸Bの断面積の総和Sを求め、S、Sをそれぞれ単糸Aのフィラメント数A、単糸Bのフィラメント数Bで除した値S/A、S/Bの比S/Aより求めた。
【0052】
(4)吸湿性評価
吸湿性の評価として、ΔMRを用いた。ΔMRは以下によって求めた。
【0053】
ポリアミドフィラメント糸を使用して、27ゲージの筒編み機により編成した試料を精練した後、風乾後、約1g測り取る。測り取った筒編みをガラス秤量瓶(風袋重量F)に入れ、乾燥機中で110℃で2時間乾燥する。ガラス秤量瓶を密封し、デシケータ内で30分放冷した後、試料の入ったガラス秤量瓶の総重量(G)を測定する。次に、温度20℃、湿度65%RHに設定された恒温恒湿槽“レインボー”((株)田葉井製作所製)にガラス秤量瓶の蓋を開放状態で入れ、24時間静置する。その後、再びガラス秤量瓶の蓋を密封状態にして、デシケータ内で30分静置した後、試料の入ったガラス秤量瓶の総重量(H)を測定する。引き続き、温度30℃、湿度90%RHに設定された恒温恒湿槽にガラス秤量瓶の蓋を開放状態で入れ、24時間静置する。その後、再びガラス秤量瓶の蓋を密封状態にして、デシケータ内で30分静置した後、試料の入ったガラス秤量瓶の総重量(I)を測定する。ΔMRを以下の式より求める。
ΔMR(%)=[(I−H)/(G−F)]×100
ここで、F、G、I、Hの単位はgとする。測定は3回行い、その平均値を用いる。
【0054】
(5)吸水性評価
吸水性の評価はJIS L1096「一般織物試験法」におけるバイレック法を準用して、次の方法を実施した。ポリアミドフィラメント糸を使用して、タテ密度60本/cm、ヨコ密度35本/cmの平織物を作製した。この試料を1cm×約15cmに切り取ったものをタテ(長手方向がタテ地)、ヨコ(長手方向がヨコ地)ともに5枚づつ用意する。次に図4に示すように試料片の一端をつかみ固定し、他端の端から2cm程度を20℃±2℃に調整した蒸留水に浸し、5分間静置する。5分間の静置中に、蒸留水が布帛内に拡散するので、5分後の蒸留水の上昇距離を求める。これをタテ・ヨコそれぞれ5回づつ行い、その平均値を取る。
【0055】
(6)製糸性評価
それぞれ1t紡糸した時の糸切れ回数を次の基準で評価した。
○:2回/t以下
△:2〜4回/t
×:4回/t超
【0056】
(7)洗濯堅牢性評価
JIS L 0844「洗濯に関する染色堅牢度試験方法(A−2法)」に従って行った。
【0057】
(8)酸化チタン濃度
試料5gを測り取り、磁性るつぼに入れ、800℃の電気炉内で3時間加熱焼成することで完全に灰化させた後、デシケータ内で1時間放冷し、その灰化物の重量を測定し、3回の測定値の平均値で求めた。
【0058】
(9)ダル感評価
本発明のポリアミドフィラメント糸を使用して、27ゲージの筒編み機により編成し、精練した後、濃度1%owfの染料Nylosan Blue N−GFL 167%(クラリアントジャパン株式会社製)を布帛に完全に吸尽させ、乾燥したものを試料とし、官能評価によりダル感の評価を行った。官能評価は以下の方法で行った。
【0059】
評価する試料と同繊度、同フィラメント数で酸化チタン含有率が0.2%のナイロン6糸を使用し、27ゲージの筒編み機により編成し、精練した後、濃度1%owfの染料Nylosan Blue N−GFL 167%を完全吸尽させたものと比較を行い、次の評価尺度で10人が評価を行い、その平均点をダル感の評価値とした。
3点 比較用布帛に比べ、ダル感が特に高い
2点 比較用布帛に比べ、ダル感がやや高い
1点 比較用布帛に比べ、ダル感で同程度
0点 比較用布帛に比べ、ダル感が低い
【0060】
(10)防透性評価
本発明のポリアミドフィラメント糸を使用して、32ゲージの筒編み機により編成し、精練した後、110℃30分乾燥した布帛を試料とした。
【0061】
カラースタンダード白板上に静置した時の布帛のL値(Lw)と黒板状に静置したときの布帛のL値(Lb)を、色差計Σ80(日本電色工業(株)製)により測定し、次の式により、防透性を求める。
【0062】
防透性=100−((L−L)/(L−L))×100
ここで、Lはカラースタンダード白板L値、Lは黒板L値である。測定は10回の平均値を用いた。
【0063】
数値が大きいほど、防透性に優れており、85以上で十分な防透性を持つと判定した。
【0064】
(11)布帛色感評価
ポリアミドマルチフィラメント糸を600本使用して整経したものをタテ糸に使用し、ヨコ糸にも本発明のポリアミドマルチフィラメント糸を使用して、トリコットに編み上げた後、濃度1%owfの染料 167%(クラリアントジャパン株式会社製)を布帛に完全に吸尽させ、色調を10人の官能評価で行った。比較には、丸断面の同繊度、同フィラメント数のポリアミドフィラメント糸を同様の方法にてトリコットに編み上げたものを用いた。
【0065】
官能評価は、丸断面ポリアミドフィラメント糸からなるトリコット地と本発明のポリアミドフィラメント糸からなるトリコット地とを並べ、本発明のポリアミドフィラメント糸からなるトリコット地が適度な艶感、落ち着いた色調等があり良いと言った人を1点、どちらも変わらないと言った人を0点、本発明のポリアミドフィラメント糸からなるトリコット地が艶感が適度でなく(過剰な艶がある、ないしは艶がない)、色調に落ち着きがなく、悪いと言った人を−1点とし、その合計点で評価した。合計点が7点以上の場合に、色感がよいと評価した。
【0066】
実施例1
イソプロピルアルコールを溶媒として、通常の方法で合成されたK値が30、ビニルピロリドン含有率が0.02重量%のポリビニルピロリドン(BASF社製“ルビテック”K30スペシャルグレード)をφ40mm、2軸のダブルフライトのエクストルーダーを用いて、酸化チタンを含有しないナイロン6に練り混み、ガット状に押し出し、冷却後にペレタイズすることで、ポリビニルピロリドン含有率が20重量%のマスターペレットを得た。練り混みの際に、ホッパー・シリンダーには窒素を流し込んだ。
【0067】
このポリビニルピロリドン含有率が20重量%のマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融部(スピンブロック)13に投入し、溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金12より吐出し、冷却風装置14により冷却後、給油装置15により1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡装置16により交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minで冷ローラー17に引き取った後、150℃に加熱されたホットローラー18との間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り機19で巻き取り、単糸繊度1.4デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.6デシテックスの六葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0068】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、1回/tと良好であった。また、前記(1)の方法で測定したポリビニルピロリドンのビニルピロリドン含有率は0.02重量%であった。
【0069】
実施例2
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.5μmの酸化チタンを6重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの六葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0070】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、2回/tと良好であった。
【0071】
実施例3
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと15:85でブレンドし、図7に示すプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(b)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、3700m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.3倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度3.6デシテックスの真円状の断面14フィラメントと単糸繊度2.7デシテックスの六葉断面10フィラメントとからなる78デシテックス24フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0072】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、0回/tと良好であった。
【0073】
実施例4
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを6重量%含有したナイロン6チップと33:67でブレンドし、図7に示すプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、3650m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.35倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの六葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0074】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、2回/tと良好であった。
【0075】
実施例5
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと15:85でブレンドし、図7に示すプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(b)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度4.3デシテックスの真円状の断面14フィラメントと単糸繊度1.7デシテックスの六葉断面10フィラメントとからなる78デシテックス24フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0076】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、0回/tと良好であった。
【0077】
実施例6
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと15:85でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6ポリアミドマルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(b)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、3900m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.25倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度2.3デシテックスの真円状の断面14フィラメントと単糸繊度3.5デシテックスの六葉断面10フィラメントとからなる67デシテックス24フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0078】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、0回/tと良好であった。
【0079】
実施例7
実施例1で用いたマスターペレットを通常の方法で乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(c)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.5デシテックスの真円状の断面22フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの六葉断面10フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0080】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、1回/tと良好であった。
【0081】
実施例8
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(d)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.8デシテックスの真円状の断面10フィラメントと単糸繊度1.2デシテックスの六葉断面22フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0082】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、1回/tと良好であった。
【0083】
実施例9
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6アミドマルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.4デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.6デシテックスの八葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0084】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、0回/tと良好であった。
【0085】
実施例10
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.4デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.6デシテックスの三葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0086】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、1回/tと良好であった。
【0087】
実施例11
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの長径と短径の比m/mが2.5の楕円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの三葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0088】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。製糸性は、1回/tと良好であった。
【0089】
実施例12
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと15:85でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(b)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、3700m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.3倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度2.3デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度2.6デシテックスの三葉断面14フィラメントとからなる78デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0090】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、酸化チタン濃度が適正範囲より少なく、防透性・色感が不十分であった。製糸性は、1回/tと良好であった。
【0091】
比較例1
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.5μmの酸化チタンを0.2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6ポリアミドマルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの六葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0092】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、酸化チタン濃度が適正範囲より少なく、防透性・色感が不十分であった。製糸性は、0回/tであった。
【0093】
比較例2
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを10重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸の製造を試みた。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの六葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得ようとしたが、製糸困難であった。
【0094】
比較例3
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと10:90でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4150m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.15倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの六葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0095】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、PVP濃度が適正範囲より少なく、吸湿性が不十分であった。製糸性は、1回/tであった。
【0096】
比較例4
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと40:60でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、6マルチフィラメントマルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、3850m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.25倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの六葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロンマルチフィラメント6糸を得た。
【0097】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、PVP濃度が適正範囲より多く、洗濯堅牢性が不十分であった。製糸性は、4回/tと不十分であった。
【0098】
比較例5
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの長径と短径の比m/mが4の楕円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの三葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0099】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、略丸断面の単糸の長径と短径の比m/mが適正範囲になく、吸水性・色感が不十分であった。製糸性は、1回/tであった。
【0100】
比較例6
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(b)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、3850m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.25倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度4.7デシテックスの真円状の断面14フィラメントと単糸繊度1.2デシテックスの六葉断面10フィラメントとからなる78デシテックス24フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0101】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、略丸断面の単糸Aと3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bとの単糸繊度の比が適正範囲よりも大きく、吸水性・色感が不十分であった。製糸性は、2回/tであった。
【0102】
比較例7
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(b)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、3950m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.25倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.3デシテックスの真円状の断面14フィラメントと単糸繊度5.0デシテックスの六葉断面10フィラメントとからなる68デシテックス24フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0103】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、略丸断面の単糸Aと3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bとの単糸繊度の比が適正範囲よりも小さく、ダル感・色感が不十分であった。製糸性は、1回/tであった。
【0104】
比較例8
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(e)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、3950m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.25倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.3デシテックスの真円状の断面28フィラメントと単糸繊度1.2デシテックスの六葉断面6マルチフィラメントフィラメントとからなる44デシテックス34フィラメントのナイロン6糸を得た。
【0105】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、略丸断面の単糸Aと3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bとのフィラメント数の比が適正範囲よりも小さく、ダル感・色感が不十分であった。製糸性は、1回/tであった。
【0106】
比較例9
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(f)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、3950m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.25倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.7デシテックスの真円状の断面6フィラメントと単糸繊度1.2デシテックスの六葉断面28フィラメントとからなる44デシテックス34フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0107】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、略丸断面の単糸Aと3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bとのフィラメント数の比が適正範囲よりも大きく、吸水性・色感が不十分であった。製糸性は、2回/tであった。
【0108】
比較例10
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ナイロン6マルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの十葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのナイロン6マルチフィラメント糸を得た。
【0109】
このナイロン6マルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、単糸Bの断面が十葉と適正範囲から外れており、毛細管効果が十分に発揮されず、吸水性・色感が不十分であった。製糸性は、1回/tであった。
【0110】
比較例11
実施例1で用いたマスターペレットを乾燥し、これと乾燥された平均粒径0.4μmの酸化チタンを2重量%含有したナイロン6チップと25:75でブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ポリアミドマルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度260℃で26ホールの丸孔を持つ口金より吐出し、冷却後、1重量%の含水系エマルジョン油剤を給油し、交絡後、10%の含水系エマルジョン油剤を給油した後、4000m/minでローラーに引き取った後、150℃に加熱された加熱ローラーとの間で延伸倍率1.2倍で延伸し、4700m/minで巻き取り、44デシテックス26フィラメントのナイロン6糸を得た。このナイロン糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。表1に示したように、丸断面のみからなるために、十分な毛細管効果が得られず、吸水性・色感が不十分であった。製糸性は、1回/tであった。
【0111】
比較例12
平均粒径0.4μmの酸化チタンを1.5重量%含有したポリエチレンテレフタレートチップをブレンドし、図7に示すようなプロセスで、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸を得た。すなわち、原料を溶融温度290℃で計量部と図6(a)のような孔配列の形状規定部の2枚よりなる口金より吐出し、冷却後、油剤を給油し、交絡後、4000m/minでローラーに引き取り、延伸倍率1.1倍で延伸し、4350m/minで巻き取り、単糸繊度1.6デシテックスの真円状の断面18フィラメントと単糸繊度1.1デシテックスの六葉断面14フィラメントとからなる44デシテックス32フィラメントのポリエチレンテレフタレート糸を得た。
【0112】
このポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸を用いて、吸水性・吸湿性・洗濯堅牢性・防透性・色感の評価を実施した。結果は表1に示した。表1に示したように、吸湿性、吸水性・色感ともに不十分であった。製糸性は、0回/tであった。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
表1〜2の結果から分かるように、本発明の方法により、吸水性および吸湿性、防透性・色感に優れた、特にインナーに好適なポリアミドマルチフィラメント糸、編成物を製糸性良く製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明が提供するポリアミドマルチフィラメント糸の一例を示す断面概略図である。
【図2】(a)は3〜8個の葉を有する断面の単糸Bの一例を示す断面概略図であり、(b)は3〜8個の葉を有する断面の単糸Bの葉の断面形状を表す式b/aを算出するための説明図である。
【図3】略丸断面の単糸Aの一例を示す断面概略図である。
【図4】実施例で吸水性の評価に使用したバイレック法の概略説明図である。
【図5】(a)は計量部(M) と形状規制部(S)からなる口金の断面図の一例であり、 (b)は計量部(M)を示す上面図の一例であり、(c)は形状規制部(S)を示す上面図の一例である。
【図6】(a)は実施例1、2、4、9〜11および比較例1〜5、10を製造するのに用いた口金(形状規定部)の概略図の一例であり、(b)は実施例3、5、6および比較例6、7を製造するのに用いた口金(形状規定部)の概略図の一例であり、(c)は実施例7を製造するのに用いた口金(形状規定部)の概略図である。また、(d)は実施例8を製造するのに用いた口金(形状規定部)の概略図であり、(e)は比較例8を製造するのに用いた口金(形状規定部)の概略図であり、(f)は比較例9を製造するのに用いた口金(形状規定部)の概略図である。
【図7】本発明が提供するポリアミドフィラメント糸を製造するのに用いたプロセス図の一例である。
【符号の説明】
【0117】
1:略丸断面の単糸A
2:3〜8個の葉を有する断面の単糸B
3:葉
4:略丸断面の単糸Aの重心
5:計量部(M)
6:形状規制部(S)
7:計量部(M) と形状規制部(S)を固定するためのピン
8:計量部(M)における略丸断面の単糸Aを吐出する孔
9:計量部(M)における3〜8個の葉を有する断面の単糸Bを吐出する孔
10:形状規制部(S)における略丸断面の単糸Aを吐出する孔
11:形状規制部(S)における3〜8個の葉を有する断面の単糸Bを吐出する孔
12:口金
13:溶融部(スピンブロック)
14:冷却風装置
15:給油装置
16:交絡装置
17:冷ローラー
18:ホットローラー
19:巻き取り機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の異なる断面形状の単糸を有し、酸化チタンを1〜5重量%およびポリビニルピロリドンを3〜7重量%含有するポリアミドマルチフィラメント糸において、略丸断面形状の単糸A、3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bとを有し、下記要件を全て満たすことを特徴とするポリアミドマルチフィラメント糸。
(1)略丸断面の単糸Aの繊度と3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bの繊度との比が1/3〜3である。
(2)略丸断面の単糸Aのフィラメント数と3〜8個の葉を有する断面形状の単糸Bのフィラメント数との比が1/3〜3である。
【請求項2】
請求項1記載のポリアミドマルチフィラメント糸からなるインナー用編成物。
【請求項3】
ポリビニルピロリドンを10〜50重量%含有するポリアミドチップと酸化チタンを1〜20重量%含有するポリアミドチップとをブレンド後、溶融し、計量部と形状規制部の2枚からなる口金を用いて製造することを特徴とする請求項1に記載のポリアミドマルチフィラメント糸の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−233380(P2006−233380A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51143(P2005−51143)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】