説明

ポリアミドヤーン方法およびポリアミドヤーン

固相重縮合装置中で合成溶融紡糸ポリアミドフィラメントを製造するための方法が開示される。先行技術の固相重縮合装置と比較して、装置へのパージ(補給)ガスの流量が増加し、装置の全圧は下がる。結果、ポリマーフレークから熱分解による夾雑物を除去することが、ヤーンクオリティの改良と、同時に紡糸口金のふきとり寿命の延長に寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドヤーンを製造するための改良された方法、および衣料品用途において使用するための改良されたポリアミドヤーンに関する。
【背景技術】
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、ポリマーフレーク(ポリマーチップまたはポリマー粒状物とも呼ばれる)再溶融方法を使用した、ポリアミドヤーンを紡糸するための改良された方法に関する。先行技術のポリマーフレーク再溶融方法の多くでは、強力(tenacity)および靱性(toughness)がより高いヤーンを紡糸するために、固相重合器を用いてポリマー相対粘度(RV)を高いレベルにまで上げている。ヤーンクオリティ(yarn quality)は、その強力および靱性の影響を直接受け、各種の衣料品用途により広く受け入れられる製品が得られる。
【0003】
米国特許公報(特許文献1)(ラオ(Rao)ら)においては、固相重合器すなわちSPP(固相重縮合装置と呼ばれることもある)をポリアミドフレーク再溶融方法と組み合わせて使用するための調節方法が開示されていて、極めて均質で再現性のある方法でポリマーのRVを上げている。米国特許公報(特許文献2)(シュウィン(Schwinn)ら)には、押出しをする前に非常に露点の低いガスを用いて処理することにより、極めて高いRVのポリアミドポリマーフィラメントを形成するためのSPP法および装置が開示されている。これら先行技術の手段はポリマーRVを上昇させ、ポリマーのRVを均質で高い値に調節することができる一方、いずれの手段も方法の中断や基本的な紡糸方法の生産性に関する問題には対処していない。
【0004】
ポリアミドヤーン、特にナイロン66ヤーンの製造においては、紡糸口金プレートの毛管の出口側の周りに認められる望ましくない堆積物を除去するために、ヤーンの巻取りが頻繁に中断される。除去しないと、それらの堆積物が蓄積されて1週間に「数ミリメートル」の厚みに達する((非特許文献1)参照)。そのような堆積物は、フィラメントの曲がり(bend)または屈曲(knee)の原因となる。フィラメントの大半で曲がりが起きると、それを修正してやらないと、最終的にはフィラメントの破断や、ヤーンの欠陥、そして予定外の方法の中断につながる。特に方法の中断の回数が多くなると、ヤーンの紡糸方法の効率が低下してしまう。
【0005】
フィラメントの艶消し剤含量を上げるにつれて、フィラメントの曲がりの問題が大きくなる傾向がある。二酸化チタン(TiO)は一般的に使用される艶消し顔料である。ポリアミドポリマー中のTiO含量が0.03〜約1.0重量パーセントの範囲である場合、フィラメントは、いわゆる艶(bright)から中艶消し(mid−dull)となる。しかしながら、ポリアミドポリマー中のTiO含量が、1パーセントより上で約3重量パーセントまでになると、多くの衣料品用途で望ましい、艶消し(dull)または「完全な艶消し(fully dull)」のフィラメントが得られる。フィラメントの曲がりに関して、方法の問題が一層現れやすくなるのが、艶消しのフィラメントヤーンの場合である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,952,345号明細書
【特許文献2】米国特許第6,235,390号明細書
【非特許文献1】フルネ(Fourne)『シンセティック・ファイバーズ(Synthetic Fibers)』1998年、第4章、p.359、C.ハンザー・パブリッシャー(C.Hanser Publishers、ミュンヘン(Munich))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリアミドヤーン製造方法で毛管の出口面上の紡糸口金プレートを清掃することを、当業界では「紡糸口金のふきとり(spinneret wiping)」と呼ぶことが多い。紡糸口金のふきとり事象の間の時間は、ふきとり周期時間またはふきとり寿命と呼ばれているが、それぞれの事象は、望ましくない堆積物の蓄積のために必要となっているのである。紡糸口金面の清掃の間隔である、紡糸口金のふきとり周期が長いほど、好ましい。長年の間、必要な紡糸口金のふきとり事象、ふきとり周期の間隔を広げ、その結果としてポリアミドヤーン紡糸方法の生産性を上げるための手段が求められてきた。当業界では長い間、生産性がより高いポリアミドヤーン紡糸方法を得る必要性を感じていた。フィラメントの破断回数、ヤーンクオリティ欠陥、そして予定外の方法の中断を減らせば、生産性に直接効果があるということは、当業者にはよくわかってはいたものの、そのような欠陥に影響を与え改善するような手段がこれまでは得られなかった。
【0008】
この目的を認識しておけば、以下の説明から、本発明のその他の目的も明確になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、パージガス(補給(make−up)ガス)の流量を上げ、かつSPPの全圧を下げることによって、先行技術の問題点を解消し、熱分解生成物を除去しやすくするものである。その結果、ポリマーフレークから熱分解による夾雑物を除去することが、「ヤーンクオリティ」の改良と、同時に紡糸口金のふきとり寿命の延長に寄与する。
【0010】
本発明の目的を達成するために、衣料品用途において使用するためのポリアミドヤーンを製造する改良方法が提供されるが、それに含まれるのは、
約1〜約3.5重量パーセントのTiOを含むポリアミドポリマーを固相重縮合装置に供給する工程;
固相重縮合装置に、窒素および水蒸気から構成されるパージガスを、1時間あたりポリアミドポリマー1kgあたり約2〜約3kg/時間の範囲の流量で供給する工程;
ポリアミドポリマーを固相重縮合装置中で、パージガスを用いて処理する工程;
処理したポリアミドポリマーを溶融押出し装置へ運ぶ工程;
ポリアミドポリマーを溶融押出し装置中で溶融する工程;
溶融したポリアミドポリマーを、紡糸口金プレートを通して押出す工程;および
ポリアミドポリマーの少なくとも1本の連続フィラメントを形成する工程である。
【0011】
また別な態様においては、本発明は、合成溶融紡糸ポリアミドフィラメントに関し、それには、
固相重縮合装置中で、約100〜約125kPa(14.7〜18ポンド/平方インチ(絶対圧))の範囲の系の圧力で、特に約115kPa(16.5ポンド/平方インチ(絶対圧))として、パージガスを用いて前もって処理した合成ポリアミドポリマーが含まれ;
その処理したポリアミドポリマーには艶消し顔料がさらに含まれ;そして
ここでその合成溶融紡糸ポリアミドフィラメントが約32.8を超えるヤーンクオリティを有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下の詳細な説明においては、全ての図面において同様の要素に対しては同様の参照符号を用いている。
【0013】
本発明は、SPP装置を用いたポリマーフレーク再溶融方法を使用した、ポリアミドヤーンを紡糸するための改良方法に関する。この方法改良が特徴としているのは、必要とされる紡糸口金プレートのふきとり事象の時間間隔を延長させることである。その結果、この改良方法は、ポリアミドヤーンの生産性が改良されるという特徴を有する。
【0014】
本発明はさらに、ヤーン強力および伸びから計算される「ヤーンクオリティ(Yarn Quality)」を有する、改良された艶消しのポリアミドヤーンに関する。ヤーンクオリティは、応力−歪み曲線より下の部分の面積の推定値であって、ヤーンの「靱性(toughness)」を示唆するものであり、当業者にはよく知られている。このヤーンクオリティが改良されることで、各種広い用途で受け入れられる衣料品用のポリアミドヤーンが得られる。それらの用途の例を挙げれば、たて編み織布、丸編み織布、シームレス編み衣料品、靴下製品および軽デニール(light denier)工業用織布などがあるが、これらに限定される訳ではない。
【0015】
図2aおよび2bに、固相重合(SPP)、ポリマーフレークの溶融、およびそのポリマーからの合成繊維溶融紡糸の全体的な方法を示している。図2aでは、ポリマーフレークを10から受容器20に導入し、供給容器40へ運び、そこで乾燥窒素パージガス(補給ガスと呼ばれることもある)を30から、1時間あたりポリマーフレーク1kgあたり約2〜約3kg/時間の流量で導入する。このポリマーフレークは典型的にはそのRVが約36〜約38であるが、それをSPP容器50に運び、場合によっては110から導入される窒素ガスと、120から導入される水蒸気とにより、さらに処理する。このように水蒸気により加湿した窒素ガスを、ブロワー70で循環させて、80で加熱して定められた温度としてから、SSP容器50の中のポリマーフレークと接触させる。いくつかのベントポート(100および90)を設けて、SPP容器50の中の全圧を調節するが、その全圧は、大気圧(101kPa)よりは高く、たとえば約110〜約123kPaの圧力なるように調節することができる。循環させる窒素ガスおよび水蒸気はすべて、120℃〜220℃の範囲、より好ましくは150℃〜190℃の範囲の高温としておいて、ポリマー相対粘度RVで測定されるポリマー分子量が均質に増大するようにする。SPPで処理されたポリマーはそのRVが50〜53の範囲となっているが、それをポート130から抜き出して、図2bの溶融押出機140のバレルの中に送り込む。ポリマーは押出機中で溶融されてから定量ポンプ150に押し込まれ、そこで溶融ポリマーは決められた速度で、紡糸フィルターパック160、次いで紡糸口金プレート170へと送られる。紡糸口金プレート170には、複数の通路すなわち毛管が設けられているが、それらは、ヤーンを含むそれぞれ個々のフィラメントを形成させるのに対応させたものである(図3aの側面図および図3bの平面図参照)。個々のフィラメント200は、状態調節した空気190のサイドドラフトを有する急冷筒(quench cabinet)180の中で冷却され、集束され、そして210でヤーンに当業者公知の一次仕上げ剤(primary finish)で給油される。ヤーンは送りロール220によって対になった引取りロール230に送られ、そこで延伸と配向を行わせて延伸ヤーンとし、それをロール240から、当業界で一般に使用されていて場合によってはヤーンの後処理工程として用いられる、ヤーン安定化装置250に送る。最後にヤーンを270でヤーンパッケージとして巻取るが、ヤーンの速度は、4000〜6000m/分の範囲である。このヤーンのRVを測定すると、約51〜約54となっている。このような速度で巻取りを行っている途中で、紡糸口金プレートの出口側表面の清掃を目的として、方法を中断させる必要があると、その生産性に極端な影響を与える。紡糸口金プレートをふきとる際には、本来は巻き取れる筈だった製品の実質的に全部を廃棄しなければならない。
【0016】
図2aおよび2bに示した方法により製造したヤーンは、伸びが22〜約60%、熱湯収縮が3〜約10%の範囲、ヤーン強力が3〜約7g/デニールの範囲の延伸ヤーンであって、ヤーンのRVは変化させることが可能であるが、約40〜約60の範囲内に充分調節することができる。このヤーンの優れた性質を特徴付ける誘導パラメーターが、ヤーンクオリティと呼ばれるもので、式1に示されるように、ヤーン強力(g/デニール)と%伸びの平方根との積で表される。
「ヤーンクオリティ」=強力×(伸び)1/2 式1
【0017】
このヤーンクオリティは、ヤーンの「靱性」の尺度を近似したものである。当業者には知られているが、ヤーンの荷重・伸び線図より下の面積は、ヤーンを伸ばすための仕事量に比例する。たとえば、強力を単位デニールあたりの力として表し、伸びを単位長さあたりの変化パーセントで表せば、荷重・伸び線図は応力−歪み曲線となる。この場合、応力−歪み曲線より下の面積が、ヤーンを伸ばすための仕事量、またはヤーンの靱性となる。
【0018】
驚くべきことには、ヤーンの靱性の向上と、紡糸口金のふきとりの間に必要とされる時間の延長とが、SPPを運転する方法に対してある種の修正を施すことによりもたらされることが見いだされた。窒素パージガスの流量を、1時間あたりポリマー1kgあたり約0.5kg/時間から、1時間あたりポリマー1kgあたり約2.5kg/時間に増加することによって、40デニール13フィラメントのナイロン66艶消しヤーン(1.5%TiO)の場合の紡糸口金のふきとり寿命を、約1.5時間から約10時間にまで延ばすことができた(図1a参照)。SPPの系の圧力を下げることで、ふきとり寿命の延長がさらに延びることも、同時に観察された有意なことである。40デニール13フィラメントの艶消しヤーンの最初の試験では、系の圧力を約121kPa(17.5ポンド/平方インチ)から約114kPa(16.5ポンド/平方インチ)に下げることによって、ふきとり頻度が、約6時間から10〜11時間の範囲にまで低下した(図1b参照)。それぞれの場合で、紡糸口金のふきとり寿命は、ヤーンの束の中の全部の単一フィラメント内の10%が、紡糸口金プレート面(図3bの175)の毛管の出口側で曲がりを示すまでの時間として求めたものである。10%フィラメント曲がりまでの時間の測定は、急冷筒の内部で紡糸口金プレート面に照明をあてて、オペレーターが観察して直接計数して求めることにより実施した。
【0019】
本発明者らは、本発明の作用に関するあらゆるメカニズムにこだわるわけではないが、SPP装置中で、加熱加湿窒素雰囲気が、添加した水蒸気のために、ポリアミド固相重合における分解生成物を抽出しているのではないかと考えている。そのような熱分解による生成物は、高温の窒素循環ガス雰囲気中で、水と容易に反応することができ、通常のパージ方法により、SPPのベントポートから除去可能なほど、高い揮発性を有するようになったのであろう。それらの熱分解生成物が除去されないとすると、ダイマーが生成し、それがポリマーと一緒に移動し、紡糸口金の毛管出口面の周りの堆積物の原因となるのであろうとの仮説を立てることができる。ふきとる作業で取り除かれるのが、それらの堆積物である。パージ(補給)ガスの流量を上げ、かつSPP内の全圧を低下させることによって、熱分解生成物の除去がより容易になるものと考えられる。結果として、ポリマーフレークから熱分解不純物を除去することによって、「ヤーンクオリティ」(式1で定義したもの)を改良すると同時に、熱による堆積物の量を減らすことによって紡糸口金のふきとり寿命を延ばすこととなる。さらに、それによってふきとり周期の時間も長くなる。
【0020】
(試験方法)
ヤーン強力およびヤーン伸びは、ASTM D2256−80に従い、インストロン(INSTRON)試験装置(米国02021、マサチューセッツ州カントン(Canton,Massachusetts)のインストロン・コーポレーション(Instron Corp.)製)を使用し、クロスヘッド速度は一定で測定する。強力は、デニールあたりの力(グラム)として表し、伸びパーセントは、破断荷重での試験片の長さの増加を元の長さに対するパーセントとして表す。
【0021】
強力と伸びの値から得られるヤーンクオリティは、式1に従って計算する。
【0022】
ポリマーの相対粘度RVは、ASTM D789−86に従って、ギ酸中で測定する。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
紡糸口金のふきとり寿命を、40デニール(44dtex)13フィラメントのヤーンを紡糸することにより、窒素パージガス(補給ガス)の流量の関数として検討した。最初に、1.5重量%のTiOを含む、RVが37.5のナイロン66ポリマーをSPP中で処理したが、その際窒素パージガス(補給ガス)の流量を1時間あたりポリマー1kgあたり0.5、1.0および2.5kgN/時間とし、いずれの場合においても、SPP系の圧力は114kPa(16.5ポンド/平方インチ)一定とした。RVが51.5となったその処理ポリマーを、押出機中で溶融させ、40−13ヤーンを製造するために使用される紡糸機に供給したが、その方法では、条件調節した空気で急冷させ、集束し、一次仕上げ紡糸オイルでヤーンを処理し、非加熱ゴデットロールを用いてヤーンを延伸させ、加熱流体を用いてヤーンを安定化させ、ヤーンを交絡させ、そして約5300メートル/分の速度で巻き取った。実施例のヤーン(A、BおよびC)を製造する過程で、毛管の出口面上の紡糸口金プレート170(図3bの平面図における175)では、少なくとも10%のフィラメントの曲がりが起きたらふきとる必要があるとした。4回の試験データを表1に示し、図1aにプロットした。
【0024】
【表1】

【0025】
(実施例2)
本発明の1つの実施例では、40デニール(44dtex)13フィラメントのヤーンを、1.5重量%のTiOを含む、RVが37.5のナイロン66ポリマーをSPP中で処理したが、その際窒素パージガス(補給ガス)の流量を1時間あたりポリマー1kgあたり2.5kgN/時間とし、いずれの場合においても、SPP系の圧力は114kPa(16.5ポンド/平方インチ)一定とした。RVが51.5となったその処理ポリマーを、押出機中で溶融させ、40−13ヤーンを製造するために使用される紡糸機に供給したが、その方法では、条件調節した空気で急冷させ、集束し、一次仕上げ紡糸オイルでヤーンを処理し、非加熱ゴデットロールを用いてヤーンを延伸させ、加熱流体を用いてヤーンを安定化させ、ヤーンを交絡させ、そして約5300メートル/分の速度で巻き取った。実施例のヤーンを製造する過程で、毛管の出口面上の紡糸口金プレート170(図3bの平面図における175)では、少なくとも10%のフィラメントの曲がりが起きたので、ヤーンの巻取り10時間ごとに、ふきとることが必要であった。巻取りをした40−13ヤーンのRV、強力および伸びを測定した。RVは52.5であった。強力と伸びの測定値を使用して、式1により、「ヤーンクオリティ」を計算した。このパラメーターは、ヤーンの靱性、またはヤーンを延伸させるのに必要な仕事量に関連するが、この場合は33.1であることが判った。
【0026】
(実施例3)
40デニール(44dtex)13フィラメントのヤーンを紡糸することにより、紡糸口金のふきとり寿命を、SPP装置内の全圧の関数として検討した。最初に、1.5重量%のTiOを含む、RVが37.5のナイロン66ポリマーをSPP中で処理したが、その際窒素パージガス(補給ガス)の流量を1時間あたりポリマー1kgあたり2.5kgN/時間とし、SPP系の圧力は、114kPa(16.5ポンド/平方インチ)から121kPa(17.5ポンド/平方インチ)に、そして最終的には128kPa(18.5ポンド/平方インチ)へと変化させた。RVが51.5となったその処理ポリマーを、押出機中で溶融させ、40−13ヤーンを製造するために使用される紡糸機に供給したが、その方法では、条件調節した空気で急冷させ、集束し、一次仕上げ紡糸オイルでヤーンを処理し、非加熱ゴデットロールを用いてヤーンを延伸させ、加熱流体を用いてヤーンを安定化させ、ヤーンを交絡させ、そして約5300メートル/分の速度で巻き取った。実施例のヤーン(A、B、CおよびD)を製造する過程で、毛管の出口面上の紡糸口金プレート170(図3bの平面図における175)では、少なくとも10%のフィラメントの曲がりが起きたらふきとりが必要であるとした。4回の実験のデータを表2に示し、図1bにプロットした(測定点を×印で示した)。
【0027】
【表2】

【0028】
(比較例1)
先行技術による比較例においては、40デニール(44dtex)13フィラメントのヤーンを、1.5重量%のTiOを含む、RVが37.5のナイロン66ポリマーをSSP中で処理することにより製造したが、その際窒素パージガスの流量をSSP中のガス容積で、1時間あたりポリマー1kgあたり0.5kgN/時間とし、系の圧力は121kPa(17.5ポンド/平方インチ)とした。その処理ポリマー(RV:51.5)を、押出機中で溶融させ、40−13ヤーンを製造するために使用される紡糸機に供給したが、その方法では、条件調節した空気で急冷させ、集束し、一次仕上げ紡糸オイルでヤーンを処理し、非加熱ゴデットロールを用いてヤーンを延伸させ、加熱流体を用いてヤーンを安定化させ、ヤーンを交絡させ、そして約5300メートル/分の速度で巻き取った。この例のヤーンを製造する過程で、毛管の出口面上の紡糸口金プレートでは、少なくとも10%のフィラメントの曲がりが起きたので、ヤーンの巻取り1.5時間ごとに、ふきとることが必要であった。巻取りをした40−13ヤーンの強力と伸びを、本発明実施例と同様にして正確に測定した。このヤーンで測定したRVは、前と同様に52.5RVであった。強力と伸びの値から式1を用いて計算した「ヤーンクオリティ」パラメーターは、31.5であることが判った。
【0029】
実施例3によるデータ(×で示した点)と比較例1によるデータ(Zで示した点)を、10%フィラメント曲がりまでの時間とヤーンクオリティ(式1)との関係を表す図1bにプロットした。充分に大きいヤーンクオリティまたは靱性を有し、同時に、10%フィラメント曲がりまでの時間から判るような、より長い紡糸口金のふきとり周期を有するヤーンを得るには、SPP中の系の全圧が約114kPaと低く、そして窒素ガスのパージ流量が1時間あたりポリマー1kgあたり約2.5kgN/時間と高い場合が最も望ましいことが判る。
【0030】
SPP装置の運転に関してこれらの修正を施すことにより、紡糸方法の生産性の向上が実現される。最も重要なのは、連続方法を中断する必要性が、24時間あたり6回以上から、24時間あたり約2回まで減少することである。さらに、SPP装置および紡糸システムを運転する従来の手段に比較して、より大きい「クオリティ」(靱性)を有するヤーンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】10%フィラメント曲がりまでの時間と、SPP装置中でのパージガス流量との間の関係を表す図である。
【図1b】10%フィラメント曲がりまでの時間と、ヤーンクオリティとの間の関係を表す図である。
【図2a】ともにSPP装置および溶融紡糸方法を表す図である。
【図2b】ともにSPP装置および溶融紡糸方法を表す図である。
【図3a】紡糸口金プレートの側面図である。
【図3b】紡糸口金プレートの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成溶融紡糸ポリアミドフィラメントを製造するための方法であって、
ポリアミドポリマーを固相重縮合装置に供給する工程;
前記固相重縮合装置にパージガスを、1時間あたりポリマー1kgあたり約2〜約3kg/時間の範囲の流量で供給する工程;
前記固相重縮合装置中で前記ポリアミドポリマーを、約110〜約120kPaの固相重縮合系圧力で、前記パージガスを用いて処理する工程;
前記処理したポリアミドポリマーを溶融押出し装置へ運ぶ工程;
前記ポリアミドポリマーを前記溶融押出し装置中で溶融する工程;
前記溶融したポリアミドポリマーを、紡糸口金プレートを通して押出す工程;および
ポリアミドポリマーの少なくとも1本の連続フィラメントを形成する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フィラメントを急冷する工程および冷却する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィラメントを後処理する工程と前記フィラメントを巻取る工程とをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
毛管の出口側面上の前記紡糸口金プレートを周期的にふきとる工程をさらに含み、それぞれのふきとる周期が約8〜約12時間の間隔で隔たっていることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パージガスが、1時間あたりポリマー1kgあたり約2〜約3kg/時間の範囲の流量で供給される窒素ガスから構成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
約32.8より大きい「ヤーンクオリティ」を有する、艶消しの合成溶融紡糸ポリアミドフィラメントであって、「ヤーンクオリティ」は、「ヤーンクオリティ」=[強力(グラム/デニール)]×(%伸び)1/2で定義され、
前記ヤーンが、
合成ポリアミドポリマーを固相重縮合装置に供給する工程;
前記固相重縮合装置の中で、約110〜約120kPaの範囲の系の圧力で前記合成ポリアミドポリマーを処理する工程;
前記処理したポリアミドポリマーを溶融押出し装置へ運ぶ工程;
前記ポリアミドポリマーを前記溶融押出し装置中で溶融する工程;
前記溶融したポリアミドポリマーを、紡糸口金プレートを通して押出す工程;および
ポリアミドポリマーの少なくとも1本の連続フィラメントを形成する工程、
を含む方法により製造されることを特徴とするフィラメント。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2006−516307(P2006−516307A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536127(P2004−536127)
【出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/027949
【国際公開番号】WO2004/025005
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【Fターム(参考)】