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ポリアミド捲縮糸およびカーペット
説明

ポリアミド捲縮糸およびカーペット

【課題】球晶の生成が少ないにもかかわらず、繊維構造形成過程での結晶性が良好なポリアミド組成物を用いて、捲縮特性に優れ、踏んだ感触が良く、圧縮弾性回復率に優れ、ヘタリ難いカーペット用に適したポリアミド捲縮糸を提供する。
【解決手段】ヘキサメチレンアジパミド単位からなるポリアミドを含み、下記(1)〜(3)式を満足するポリアミド組成物からなり、下記(A)〜(E)の繊維特性を有するポリアミド捲縮糸。(1)Tc(270)−Tc(300)≧15℃(2)Tc(300)≦188℃、Tc(270)≧200℃(3)Tm≧260℃ここで、Tc(T)は温度T℃で溶融して測定した冷却結晶化ピーク温度、Tmは融点を示す。(A)繊度=400〜4000dtex(B)単糸繊度=3〜100dtex(C)強度=2.0〜5.5cN/dtex(D)沸騰水収縮率=2〜10%(E)捲縮伸長率=12〜22%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タフテッドカーペット用ポリアミド捲縮糸として好適な、球晶の生成が少なく、特異な結晶化挙動を示すポリアミド組成物からなるポリアミド捲縮糸およびカーペットに関する。さらに詳しくは、単糸繊度が太いにもかかわらず球晶の生成が少ないため、捲縮特性に優れており、タフテッドカーペットとして用いた時に、踏んだ感触が良く、圧縮弾性回復率に優れ、ヘタリ難いという特徴を有し、特に、サキソニー撚り捲縮糸カットパイルカーペットのような高級カーペット用として好適なポリアミド捲縮糸およびそれからなるカーペットに関するものである。さらには、捲縮糸の製造時において、延伸性および捲縮加工性に優れ、糸切れが少なく製糸収率に優れたポリアミド捲縮糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド繊維は、その捲縮特性、耐ヘタリ性や耐摩耗性等の耐久性、易染色性等の特徴を活かし、カーペット用捲縮糸として有用されている。
【0003】
特にポリヘキサメチレンアジパミド(以下ナイロン66と称す)繊維は、汎用されるポリアミド繊維の中では融点が高く耐熱性に優れるため、例えばナイロン6繊維に比べ高温での捲縮加工が可能であり、明らかに捲縮特性が優れているばかりか、特に高捲縮性、高弾性回復性に優れるため、カーペットとして用いた時に、カバリング性、踏み応え性、耐ヘタリ性等が良いという特徴を有する。
【0004】
しかしながら、ナイロン66は、結晶化速度が速いため、紡糸冷却時に球晶が生成し易く、特に冷却し難い太単糸繊度糸を製糸する場合には著しく球晶が生成する傾向がある。
【0005】
カーペット用捲縮糸は特に単糸繊度が太く、通常は10〜30dtexであり、これは、一般の衣料用繊維の数dtexや産業用繊維の3〜7dtexに比べて大分太い。しかるに、繊維に球晶が生成すると、延伸し難くなるため、通常、高強度繊維を製造しにくいが、捲縮糸の場合も、延伸工程で十分な分子鎖の配向が達せられていないと、捲縮加工工程で十分な捲縮付与が行われず、高い捲縮特性が得られないという問題があった。更に、撚糸をした後スチームセットを行うサキソニー撚り捲縮糸カーペットの様な高級カーペットとして用いようとすると、撚りセット性に劣り、ピンポイント性やボリューム感、反発性が十分得られない等の欠点がある。しかも、球晶が著しく生成すると、透明感がなくなり、染色しても鮮明に発色しない等の欠点も生ずることがある。また、球晶が多く生成していると、目的とする捲縮糸を得るために、より過酷な延伸条件や捲縮加工条件を適用せざるを得ず、その結果、延伸性や捲縮加工性が低下し、糸切れが生じて収率が低下するという欠点もある。
【0006】
ナイロン66繊維における球晶の生成の主な原因は以下の通りである。
【0007】
すなわち、ポリアミドポリマの重合工程および溶融紡糸工程で、ポリアミドポリマが熱分解し、該熱分解によって生成した微小異物が球晶核となること、および耐熱剤や着色剤等の添加剤が熱分解して微小な異物を生成し、それらが球晶核となることである。特に、重合中および溶融紡糸中に、ポリマの流れが悪く長時間滞留してポリマ自身が熱分解、ゲル化して球晶核となる微小異物を生成することが多い。また、球晶生成は、上記球晶核の生成に加え、結晶の成長によって球晶が形成されるため、ポリアミドポリマの結晶化速度にも依存する。特に、ナイロン66は結晶化速度が速いために、球晶生成とそれによる製糸障害が顕著である。そこで、球晶の生成を抑制する技術として、熱分解、ゲル化抑制剤の添加や、共重合成分を微量共重合して結晶化速度を低下させる方法等が行われている。また、特定の共重合成分を加えて、熱分解が生じてもゲル化し難い共重合ポリアミドとする方法も提案されている。
【0008】
また、球晶を抑制する別の方法としては、紡糸冷却過程で急冷して、結晶化温度域を短時間で通過させるという製糸技術も一般に適用されている。
【0009】
そこで、球晶を抑制して製糸性を向上させ、高品質のポリアミド繊維を製造することを目的として、共重合ポリアミドを用い、ポリマの結晶化速度を低下させて球晶を抑制する方法、およびポリアミドポリマの熱分解、ゲル化を抑制して球晶を抑制する方法等に関し、例えば、以下に述べる四つの方法が提案されている。
【0010】
まず、ナイロン66の球晶(球状集合体)の抑制とゲル化時間の増加により、製糸性を向上させることを目的とし、2−メチルペンタメチレンジアミンおよび他のアミド単位を含有する三元ポリアミドおよび多元ポリアミド、ならびにこれから製造した製品とする方法(例えば、特許文献1参照)が知られており、この方法によれば、球晶生成の減少、ゲル化時間の増加が可能となり、BCF用原糸の延伸性、光学的透明度、染色速度等、有用な効果が得られることが開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術による共重合ポリマは、融点降下が比較的大きく、同文献の実施例においても、融点降下の最も小さいもので2.1℃、多くは5〜10℃も融点降下している。かかる融点降下は、通常のカーペット用BCF製品では、性能として顕著に不利にはならないこともあるが、ナイロン66ホモポリマ捲縮糸のような高温での捲縮加工ができなくなり、高捲縮糸が得難くなる。特にサキソニー撚り捲縮糸とした時には、撚りスチームセット性が劣り、ピンポイント性や反発性に富んだ高級カーペットを得ることが困難である。すなわち、特許文献1に記載の方法では、球晶生成は抑制されるものの、繊維構造形成時の結晶性も同時に低下してしまい、ナイロン66捲縮糸の優れた特徴が失われてしまうという問題があった。
【0012】
次に、BCFカーペット用ナイロン66繊維の球晶を抑制し、フィラメントの表面が平滑で、室温で染色可能なナイロン66繊維を提供することを目的とし、この目的を、ナイロン66を主成分とし、これにナイロン6を少量共重合することによって達成する方法(例えば、特許文献2参照)、より具体的には、ヘキサメチレンアジパミドを94〜96%、カプロラクタムを1〜6%、水溶性無機カルシウム塩を0.001〜2%配合したN66共重合ポリアミドを適用する方法が知られている。
【0013】
特許文献2に記載の技術は、カプロラクタムを共重合することによって、ナイロン66の結晶化速度を低下させることを特徴としており、この方法によれば、カーペット用BCFのように、単糸繊度が太く冷却し難い繊維においては、その球晶抑制効果は顕著に認められる。しかしながら、カプロラクタムを共重合する方法は、球晶抑制効果は大きいものの、同時にポリマの融点降下も大きい。特許文献2には具体的に記載されてはいないが、そこで得られた共重合ナイロン66は、前記特許文献1の場合と同様に、N66捲縮糸独特の高捲縮が得られにくく、サキソニー撚り捲縮糸として用いようとすると、ピンポイント性や反発性に劣り、高級カーペット用として十分な品質が得られないという問題を包含していた。
【0014】
また、ポリヘキサメチレンアジパミドを主たる構成成分とするポリアミドの熱安定性の改善、ゲル発生や球晶抑制、連続バッチ性の改善を図ることを目的とし、この目的を、主としてポリヘキサメチレンアジパミド単位からなるポリアミドに、特定の直鎖状脂肪族ジアミンとジカルボン酸からなるアミド単位を0.5〜20モル%共重合させ、かつカルボキシル基濃度とアミノ基濃度との比が特定範囲に入るように末端基濃度をコントロールすることによって達成する方法(例えば、特許文献3参照)が知られており、この文献の実施例には、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸塩に、特定の直鎖状脂肪族ジアミンとジカルボン酸からなるアミド単位として、1,4ジアミノブタン/アジピン酸を2.9モル%共重合したポリアミドの例が記載されている。
【0015】
しかしながら、特許文献3における1,4ジアミノブタン/アジピン酸を2.9モル%共重合したポリアミドの融点は、ヘキサメチレンアジパミドホモポリマの融点より4℃も低いため、本来のN66捲縮糸の有する高捲縮性が得られず、特に、サキソニー撚り捲縮糸カーペットに用いようとしても、ピンポイント性や反発性に劣り、高級カーペット用として十分な品質が得られないために適用することは困難である。また、冷却結晶化温度は219℃と比較的高く、ホモポリマ(比較例1)の221℃に対して僅かに2℃の差のため、球晶抑制効果が十分とは言えないものであった。
【0016】
さらに、ポリヘキサメチレンアジパミドを主たる構成成分とするポリアミドの熱安定性の改善、ゲル発生や球晶抑制、連続バッチ性の改善を図ることを目的とし、この目的を、80〜99.5モル%のヘキサメチレンアジパミド単位と、0.5〜20モル%のジアミンと芳香族構造を含有するジカルボン酸とからなるアミド単位とから構成される共重合ポリアミドであって、カルボキシル基濃度とアミノ基濃度との比が特定範囲に入るように末端基濃度をコントロールすることによって達成する方法(例えば、特許文献4参照)が知られており、この文献の実施例には、ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸塩に、ジアミンと芳香族構造を含有するジカルボン酸からなるアミド単位として、ヘキサメチレンアジピン酸/テレフタル酸を2.9モル%共重合したポリアミドの例が開示されている。
【0017】
しかしながら、特許文献4におけるヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸を2.9モル%共重合したポリアミドの冷却結晶化温度は219℃と比較的高く、ホモポリマ(比較例1)の221℃に対して僅かに2℃の差のため、球晶抑制効果が十分とは言えないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】:特表平6−502671号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】:米国特許4,919,876号公報(明細書)
【特許文献3】:特開2000−38444号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】:特開2000−53762号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、ポリヘキサメチレンアジパミドを主成分とする共重合ポリアミドからなり、球晶の生成が少ないにもかかわらず、繊維構造形成過程での結晶性が良好な共重合ポリアミドを用いることにより、高捲縮であり、踏んだ時の感触が良く、圧縮弾性回復率に優れ、ヘタリ難いタフテッドカーペット用に適したポリアミド捲縮糸およびそれからなるカーペットを得ることにあり、特に、サキソニー撚り捲縮糸カーペット等の高級カーペットに好適なポリアミド捲縮糸を得ることを課題とする。また、更なる目的は、製造時に延伸性および捲縮加工性に優れ、糸切れが少なく製糸収率に優れたポリアミド捲縮糸を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明によれば、主としてヘキサメチレンアジパミド単位からなるポリアミドを含むと共に下記(1)、(2)および(3)式を満足するポリアミド組成物からなり、下記(A)〜(E)の繊維特性を有することを特徴とするポリアミド捲縮糸が提供される。
Tc(270)−Tc(300)≧15℃ ・・・ (1)
Tc(300)≦188℃、Tc(270)≧200℃ ・・・ (2)
Tm≧260℃ ・・・ (3)
【0021】
ここで、Tc(T)は温度T℃で溶融して測定した冷却結晶化ピーク温度、Tmは融点を示す。
(A)繊度=400〜4000dtex
(B)単糸繊度=3〜100dtex
(C)強度=2.0〜5.5cN/dtex
(D)沸騰水収縮率=2〜10%
(E)捲縮伸長率=12〜22%
【0022】
なお、本発明のポリアミド捲縮糸においては、
前記ポリアミド組成物が、ポリヘキサメチレンアジパミドおよび融点270〜300℃の化合物を含有すること、
前記融点270〜300℃の化合物がポリアミドであること、
前記融点270〜300℃のポリアミドが、ポリテトラメチレンアジパミドおよび/またはその共重合体であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0023】
また、本発明のカーペットは、上記ポリアミド捲縮糸を用いてなることを特徴とし、特にサキソニー撚り捲縮糸を用いたカットパイルカーペットであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、単糸繊度が太く冷却し難いにもかかわらず球晶の生成が少なく、高捲縮率のポリアミド捲縮糸が得られる。そして、本発明のポリアミド捲縮糸は、球晶生成が少ないにもかかわらず、繊維構造形成過程での結晶性は優れているため、タフテッドカーペットとして用いた時に、踏んだ感触が良く、圧縮弾性回復率に優れ、ヘタリ難いという特徴を有する。特に、サキソニー撚り捲縮糸カーペットとして用いた時には、撚りセット性が良く、ピンポイント性やボリューム感、反発性に優れた高級感溢れるカーペットが得られる。また、捲縮糸の製造時に、延伸性および捲縮加工性に優れ、糸切れが少なく製糸収率に優れたポリアミド捲縮糸を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明について、以下に詳述する。
【0026】
本発明ポリアミド捲縮糸は、主としてヘキサメチレンアジパミド単位からなるポリアミドを含むと共に、下記(1)〜(3)式を満足するポリアミド組成物を製糸することで得られる。
【0027】
本発明のポリアミド捲縮糸に用いられるポリアミド組成物は、球晶抑制効果が著しいにも関わらず、繊維構造形成過程で結晶化が進みやすく、さらに、従来技術による共重合ポリアミドのような融点降下が極めて少ない。その結果、高捲縮率、圧縮弾性回復率が一層改善され、カバリング性や耐ヘタリ性に優れたカーペットが得られる。また、製糸工程および捲縮加工工程での糸切れが減少し、高収率で製品が得られるという利点を有する。かかる効果を有する本発明ポリアミド組成物は、下記(1)〜(3)式を満足することによって特徴づけられる。
Tc(270)−Tc(300)≧15℃ ・・・ (1)
Tc(300)≦188℃、Tc(270)≧200℃ ・・・ (2)
Tm≧260℃ ・・・ (3)
【0028】
ここで、Tc(T)は温度T℃で溶融して測定した冷却結晶化ピーク温度、Tmは融点であることを示す。融点Tmは、示差走査型熱量計を用い、サンプル量4mg、昇温速度80℃/分で完全に溶融させた後、降温速度80℃/分で冷却し、さらに昇温速度80℃/分で昇温させた時の融解に基づく吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとする(ただしn数を5とする平均値として求めるものとする)。結晶化温度(Tc)は、同様に示差走査型熱量計を用い、温度T℃まで昇温し、温度T℃で6分間保持し、その後、降温速度80℃/分で降温した際に観測される、結晶化に基づく発熱ピークのピークトップ温度を結晶化温度Tc(T)とする(ただしn数を5とする平均値として求めるものとする)。上記条件で測定した場合のヘキサメチレンジアミンとアジピン酸のみから重合されたポリヘキサメチレンアジパミド単体(以下ポリヘキサメチレンアジパミド単体と称す)の平均値はTc(300)=193(各測定値のばらつき193.0±0.2)℃、Tm=263(各測定値のばらつき263.3±0.2)℃である。
【0029】
上記(1)式は、ナイロン66の一般的な溶融紡糸温度である300℃まで昇温・溶融した後、冷却結晶化したときの結晶化温度Tc(300)が、ナイロン66の融点以上であるが、比較的低温である270℃で溶融した後、冷却結晶化したときの結晶化温度Tc(270)に比較して15℃以上低いことを示すものである。
【0030】
すなわち、本発明のポリアミド組成物は、比較的高温で溶融した場合には、冷却結晶化速度が遅く、逆に比較的低温で溶融した場合は結晶化速度が速いことを示し、300℃で溶融した場合は、結晶核となる成分はほぼ完全に溶解し、一方、270℃で溶融した場合は、結晶核となる成分が残存していることを意味している。
【0031】
Tc(300)が低いことは、溶融紡糸過程での結晶化が進み難く、球晶抑制効果が大きいため、球晶に起因する配向特性の低下や製糸性の悪化が抑制できる。一方、Tc(270)が高いことは、繊維構造形成過程で結晶化が進み易く、延伸によって配向した繊維構造が熱結晶化され易いことを意味し、高捲縮糸が得やすく、サキソニー撚り捲縮糸とした時に撚りセット性、ピンポイント性に優れ、その結果、高級感溢れる見栄えの良いカーペットに仕上がる。つまり、Tc(270)とTc(300)との結晶化温度差が大きいことは、溶融紡糸過程での球晶抑制効果と、延伸配向過程での繊維構造熱固定効果との両者を同時に満足することができ、高捲縮率、圧縮弾性回復率が一層改善され、カバリング性や耐ヘタリ性に優れたカーペットが得やすいことを意味する。この結晶化温度差は、15℃以上であることが必要であり、16℃以上であることが好ましい。上限としては、50℃以下であることが、上記特性の十分な効果が得られるという点で好ましい。
【0032】
ポリヘキサメチレンアジパミド単体の場合は、Tc(300)とTc(270)の温度差は通常12℃程度である。また、球晶抑制技術として従来から知られている、例えばラクタムなどの共重合ポリアミドは、Tc(300)とTc(270)共に低下するが、Tc(300)よりもTc(270)の低下が大きいため、溶融温度依存性は小さい。さらに、結晶核剤として知られている、タルク、シリカなどの無機微粒子またはポリヘキサメチレンテレフタレート(以下ナイロン6Tと称す)等の300℃の融点を超えるポリアミドを添加した場合は、Tc(270)とTc(300)が共に上昇するが、Tc(270)よりもTc(300)の上昇が大きいため、ラクタム共重合の場合と同様に溶融温度依存性は小さい。
【0033】
上記(2)式は、300℃で溶融して測定した該ポリアミド組成物の冷却結晶化ピーク温度Tc(300)が188℃以下であること、かつ、270℃で溶融して測定した該ポリアミド組成物の冷却結晶化ピーク温度Tc(270)が200℃以上であることを示す。つまり、本発明のポリアミド組成物のTc(300)が、ポリヘキサメチレンアジパミド単体のTc(300)である193℃よりも5℃以上低く、かつ、該ポリアミド組成物のTc(270)が、該ポリアミド組成物のTc(300)の最大温度である188℃にポリヘキサメチレンアジパミド単体のTc(300)とTc(270)の結晶化温度差である12℃を加えた200℃以上であることを意味する。
【0034】
すなわち、このことは、本発明のポリアミド組成物の球晶抑制効果が大きく、かつ、延伸配向過程での繊維構造熱固定効果との両者を同時に満足することができ、高捲縮率、圧縮弾性回復率が一層改善され、カバリング性や耐ヘタリ性に優れたカーペットが得やすいことを意味する。該ポリアミド組成物のTc(300)が188℃を越えると、結晶化速度を十分遅くできたとは言えず、球晶抑制効果が明確に得られない。また、該ポリアミド組成物のTc(270)が200℃未満の場合は、従来の共重合ポリアミドポリマと同様に延伸配向過程での繊維構造熱固定が十分できず、結果として、本発明の特徴である高捲縮糸が得られないばかりか、サキソニー撚り捲縮糸を製造する際の撚りセット性に劣り、高級感のあるカーペットが得られない。Tc(300)は186℃以下であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。またTc(270)は、201℃以上であることが好ましく、225℃以下であることがより好ましい。Tc(300)が180℃未満になると、繊維構造形成時の結晶化が十分進まないことから高捲縮糸が得られず、サキソニー撚り捲縮糸を製造する際の熱セット性が劣り、ピンポイント性が低下するため好ましくない。また、Tc(270)が225℃を越えるポリアミド組成物は見いだされていないが、Tc(270)は200〜225℃の範囲で十分な効果が得られる。
【0035】
更に、上記(3)式は、本発明のポリアミド組成物の融点Tmが260℃以上であること、つまり、ポリヘキサメチレンアジパミド単体からの融点降下が3℃以内であることを示している。融点降下は2℃以内、つまり融点が261℃以上であることが好ましい。上限は、一般的な条件で溶融紡糸が可能であれば特に規定するものではない。融点降下が3℃を越える、つまり、融点Tmが260℃以下である場合は、高捲縮糸が得難くなる。特にサキソニー撚り捲縮糸とした時には、撚りスチームセット性が劣り、ピンポイント性や反発性に富んだ高級カーペットを得ることが困難である。
【0036】
本発明においては、上記(1)および(2)式で示す結晶化特性を持ち、かつ、上記(3)式の融点を有するポリアミド組成物を製糸することにより、下記(A)〜(E)の繊維特性を有するポリアミド捲縮糸が得られる。
(A)繊度=400〜4000dtex
(B)単糸繊度=3〜100dtex
(C)強度=2.0〜5.5cN/dtex
(D)沸騰水収縮率=2〜10%
(E)捲縮伸長率=12〜22%
【0037】
本発明のポリアミド捲縮糸は、繊度が400〜4000dtexであることが必要であり、好ましくは500〜3000dtexである。400dtex未満、あるいは4000dtexを越える太繊度糸にも本発明技術を適用できるが、本発明の目的とするタフテッドカーペット用捲縮糸は通常この繊度範囲で用いられる。
【0038】
強度は2.0〜5.5cN/dtexであることが必要であり、好ましくは、2.0〜4.0cN/dtexである。2.0cN/dtex未満では、強度が不足してパイル切れが生じ、耐久性も劣るため好ましくない。5.5cN/dtexを越える強度は、通常、タフテッドカーペット用捲縮糸としては必要としない。
【0039】
沸騰水収縮率は2〜10%であることが必要であり、好ましくは3〜8%である。2%未満を得ようとすると、本発明の高捲縮率を達成することが困難である。一方、10%を越えると収縮率が高すぎるため、ボリューム感が失われ、カバリング性も低下するため好ましくない。
【0040】
捲縮伸長率は12〜22%であることが必要であり、好ましくは14〜20%である。12%未満では、捲縮不足で、伸長弾性回復性に劣り、ヘタリ易いなど良好なタフテッドカーペットは得られない。一方、22%を越えると、捲縮が発現し過ぎて、ボリューム感やカバリング性は優れているものの、腰がなく、踏み応えのないカーペットとなるため好まれない。
【0041】
次に、本発明のポリアミド捲縮糸に用いられるポリアミド組成物は、ポリヘキサメチレンアジパミドおよび融点270〜300℃の化合物を含有することを特徴とするポリアミド組成物であることが好ましい。融点が270℃未満の化合物を用いたポリアミド組成物の場合には、前記300℃で溶融して測定した冷却結晶化ピーク温度Tc(300)は十分低下するが、270℃で溶解して測定した冷却結晶化ピーク温度Tc(270)も同時に低下することになる。かかるポリアミド組成物は、従来の共重合ポリマと同様に、繊維構造形成時の結晶化が十分進まず、結果として、本発明の特徴である高捲縮糸が得られず、サキソニー撚り捲縮糸を製造する際の撚りセット性に劣り、高級感のあるカーペットが得られない。一方、融点が300℃を越える化合物を用いたポリアミド組成物では、安定したポリマが得にくく、従って、ポリアミド繊維を製造することが困難である。融点が270℃以上300℃未満である化合物を添加する際に、270℃で溶融させた場合には添加物が結晶核剤として作用し、Tc(270)が高く維持でき、300℃で溶融させた場合には添加物が結晶化抑制剤として作用し、Tc(300)が低くなる。
【0042】
融点270〜300℃の化合物の添加量は、主としてヘキサメチレンアジパミド単位からなるポリアミドの原料であるナイロン66モノマ100重量部に対して0.5〜5重量部であることが好ましく、1〜4重量部であることがより好ましい。添加量が0.5重量部未満では、ポリアミド組成物の球晶抑制効果が十分でない。一方、5重量部を越えると、繊維構造形成時の結晶化が進みにくくなり、本発明の特徴である高捲縮糸が得られず、サキソニー撚り捲縮糸を製造する際の撚りセット性に劣り、高級感のあるカーペットが得られない。
【0043】
上記化合物は、融点270〜300℃の温度範囲を満足しておれば特に種類は限定されるものではないが、好ましくはポリヘキサメチレンアジパミドと構造が類似であり、ポリヘキサメチレンアジパミド中に微分散が可能なポリアミドである。特に好ましくはポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)および/またはその共重合体である。これらのポリマを、前記本発明ポリアミド組成物の特性を満足するよう、ヘキサメチレンアジパミド単位からなるポリアミドの原料であるナイロン66モノマ100重量部に対して0.5〜5重量部添加することが好ましい。また、前記融点270〜300℃のポリアミドは、単独で添加しても良いが、他の2種以上のポリアミド成分を添加することもできる。
【0044】
本発明のポリアミド捲縮糸は、その高捲縮性、圧縮弾性回復性、踏み応え感、および耐久性を有するため、パイルカーペットやカットパイルカーペット等のタフテッドカーペット用として用いることができる。特に、サキソニー撚りセット捲縮糸カーペットとして用いた時、そのピンポイント性、仕立て性の良さから、高級感に溢れたカーペットが得られる。また、本発明のポリアミド組成物を用いて捲縮糸を製造すると、製糸性および捲縮加工性が良いため、捲縮糸の製品収率が良く、かつ、タフト性も良いという利点を有する。
【0045】
以下に、本発明ポリアミド捲縮糸の製造法について、特にサキソニー撚り捲縮糸を例として略述する。
【0046】
本発明のポリアミド繊維に用いられるポリアミド組成物の製造においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、モノカルボン酸等の末端封鎖剤、酸化チタン等の艶消し剤、燐化合物等の重合触媒や耐熱剤、銅化合物およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物等の酸化防止剤や耐熱安定剤および主構成単位であるテトラメチレンジアミン単位とアジピン酸単位以外の1種または2種以上のラクタム単位、ジカルボン酸単位、ジアミン単位を有するポリアミドを任意の時点で添加することができる。また、液相重合は、連続重合法でもバッチ重合法によっても製造することができ、その後、固相重合を行い、重合度を上げることも可能である。本発明ポリアミド組成物から得られるポリアミド繊維の製造方法を以下の通り一例として示す。
【0047】
まず、オートクレーブに、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル量の50〜90重量%水溶液、および本発明の融点270〜300℃の化合物を、ヘキサメチレンアジパミド単位からなるポリアミドの原料であるナイロン66モノマ100重量部に対して0.5〜5重量部仕込む。窒素置換し、内圧が1.7〜1.8MPaに到達するまで密閉加熱を行う。内圧1.7〜1.8MPaを維持しながらオートクレーブ内温が250〜260℃に達するまで行い、その後、加熱を継続しながら約1〜2時間をかけて内圧を徐々に大気圧まで放圧し、この間に内温を280〜290℃まで上昇させる。そして、オートクレーブ内を減圧し、重合を進めた後、加圧し、重合したポリマを直径2〜4mm程度のストランド状に押し出し、3〜5mm程度にカッティングしてポリマチップとする。ポリマチップの相対粘度は2.5〜3.0であることが好ましい。
【0048】
次に、上記ポリマチップをバッチ式乾燥装置または塔式連続乾燥装置によって乾燥する。乾燥したポリマチップは、水分率0.07〜0.10に調湿した後、製糸ホッパーに供給する。
【0049】
本発明のポリアミド捲縮糸は、前記共重合ポリアミドを公知の溶融紡糸、冷却、給油、延伸、および捲縮加工処理の各工程からなる通常の捲縮糸製造工程を通して得られる。本発明に用いる溶融紡糸装置はエクストルーダー型紡糸機でもプレッシャーメルター型紡糸機でも使用可能であるが、製品の均一性、製糸収率等の点でエクストルーダー型紡糸機が好ましく、原着ポリマー等をブレンド紡糸する場合は特に有利である。着色剤としては、有機物および無機物のどちらでもよいが、一般にはカーボンブラックやベンガラ、フタロシアニン系の顔料が好ましく用いられ、要求される色相に応じて適宜使用することができる。捲縮糸への着色剤の添加率は、特に限定されず適宜設定すれば良いが、通常は捲縮糸を構成する成分全体に対して、0.01〜3.0%が好ましい。
【0050】
本発明ポリアミド捲縮糸の断面は異形断面であり、Y型、田型、扁平、中空その他種々の形状とすることができる。特に、本発明のポリアミド捲縮糸に適した断面形状は、Y型、Y型中空、田型、扁平、扁平中空等である。かかる断面形状の捲縮糸を得るため、ポリマーの分子量、紡糸温度、口金孔形状、吐出量、冷却等の紡糸条件を適切に設定して行う。Y型やY型中空断面形状等における変型度は、1.5〜6.0が好ましく。2.0〜5.0がより好ましい。ここで言う変形度とは、単糸横断面の外接円の直径Dと、単糸横断面の内接円の直径dの比(D/d)で表され、変形度が1.5未満であるとマルチフィラメントにおいて単糸間の空隙が少なくなり、カーペットの嵩高性や風合いが低下する。また、変形度が6.0を超える場合は製糸性が悪化したり、単糸切れ・タルミ等品位が悪くなったりすることがある。中空断面の場合は、中空率が5〜30%であることが好ましく、10〜20%がより好ましい。中空率が5%未満であると、カーペットの嵩高性や風合いが低下する。中空率が30%を超える場合は製糸性が悪化したり、単糸切れ・タルミ等品位が悪くなったりすることがある。また中空部の数に限定はなく、1つでも田型断面など複数であってもよい。溶融紡糸された糸条は、冷風によって冷却固化され、次いで油剤を付与した後、所定の引き取り速度で回転する引き取りロールに捲回して引き取る。引き取り速度は300〜1000m/分が好ましい。引き取った糸条は、通常、引き続き延伸および捲縮加工を連続して行う。別の方法として、未延伸糸で一旦巻き取った後、別工程で延伸および捲縮加工を行う方法、あるいは延伸糸を一旦巻き取った後、別工程で捲縮加工を行う方法も可能である。
【0051】
本発明のポリアミド捲縮糸は、高い捲縮伸長率を有するが、そのためには延伸工程で十分な分子鎖の配向を高めてから捲縮加工することが必要である。延伸倍率は2.0〜4.0倍の範囲で行い、伸度が30〜80%となるよう延伸することが好ましい。
【0052】
次いで、延伸された糸条を、捲縮付与装置を通して捲縮加工処理する。捲縮は加熱流体を用いて行われる。本発明のポリアミド捲縮糸は、通常、該捲縮加工ノズルを有するジェットノズル方式で捲縮加工され、ニードル内を通過する糸条に周囲から加熱蒸気等250〜280℃の高温流体を接触させ、大気中に放出し冷却することで捲縮を付与する。更に、捲縮を固定する目的で、捲縮ノズルを通過した捲縮糸に冷風を吹きつけたり、内部に吸引するロータリーフィルターの表面に捲縮糸を堆積させて冷却したりする方法等も採用される。
【0053】
捲縮加工された捲縮糸には、適度なストレッチを与えて、捲縮を一部潜在化させた後、巻き取り機で巻き取る。捲縮糸は巻き取り前に集束性を付与するため、通常交絡処理を与える。
【0054】
上記の方法で得られた捲縮糸は、このまま、または2種又は3種の異染性捲縮糸と混繊してタフティングし、タフテッドカーペットとする。
【0055】
また、サキソニー撚り捲縮糸の場合は、撚糸してから用いる。撚糸は片撚りし、次いで2本又は3本逆方向に撚り合わせて諸撚りとする。撚り数は100〜290t/m、好ましくは150〜260t/mで行う。
【0056】
上記諸撚り捲縮糸は、スチームセッターで処理して撚り固定を行い、サキソニー撚り捲縮糸とする。該サキソニー撚り捲縮糸を、タフティングしてカットパイルカーペットとする。スチームセッターは、例えばスペルバ社製のスペルバセット機を用いて行う。通常、120〜270℃の飽和または過熱スチームを用い、30秒〜3分間、好ましくは50秒〜2分間熱処理する。
【0057】
タフティングは公知の通常の方法で行うことが可能であるが、サキソニー撚り捲縮糸の繊度や捲縮特性等を考慮して、ステッチ、ゲージ、パイル高さ等を決定する。例えば、高級感を発現させるためのタフト規格は、例えば、目付:600〜900g/m、ステッチ:10〜20個/インチ、ゲージ:1/8〜1/15G、パイル長=5〜12mm、が好ましい。
【0058】
そして、タフトされたカットパイルカーペットは、公知の方法により染色およびバッキングが行われる。染色は連続染色、ウィンス染色、あるいはロープ染色等、いずれも可能である。勿論、原着捲縮糸やチーズ染色糸を用いたカーペットは染色することなく、バッキングすることができる。
【0059】
次に、サキソニー撚り捲縮糸の集束性を少し乱してボリューム感をだす目的で、起毛処理またはウォータージェットパンチ処理を施すこともある。これらの処理は、バッキング工程に連続して実施しても、別工程で行っても良い。タフト反を一定速度で移動させながら、針または高圧水流を機械的にカットパイル面に衝突させ、サキソニー撚り捲縮糸の表層部分の単糸を分離させる。
【0060】
かくして、本発明のサキソニー撚り捲縮糸およびそれを用いてなるカットパイルカーペットが得られる。本発明のポリアミド捲縮糸は、前記本発明で特定した特性を有し、かつそれを用いてなるサキソニー撚り捲縮糸およびカットパイルカーペットは、ボリューム感、ポイント感、反発性、高級感等に優れたカーペットであり、特に高級ロールカーペットや高級車用ラインマットとして好適である。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、明細書本文および実施例に記載
した特性値の定義および測定法は以下の通りである。
【0062】
(1)相対粘度:試料0.25gを98%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。相対粘度はポリマ溶液と硫酸の落下秒数の比から求めた。
【0063】
(2)水分率:平沼産業(株)社製のカールフィッシャー測定装置(気化装置:SE−24型、電解槽:AQ−6型)を用い測定した。試料は3gとし、水分気化に用いる窒素は、220℃、200ml/minとした。
【0064】
(3)融点(Tm):Perkin−Elmer社製Diamond DSCの示差走査型熱量計を用いて測定した。サンプル量4mg、昇温速度80℃/分で測定し、融解吸熱曲線のピーク温度を融点とした。
【0065】
(4)結晶化温度(Tc):Perkin−Elmer社製DSC−7型の示差走査型熱量計を用いて測定した。サンプル量4mg、昇温速度80℃/分で温度T℃まで昇温し、温度T℃で6分間保持した後、80℃/分の降温速度で冷却し、結晶化発熱曲線のピーク温度をTc(T)とした。
【0066】
(5)総繊度:JIS L1013(2010) 8.3.1 b)B法により、正量繊度を測定して総繊度とした。
【0067】
(6)単糸繊度:繊度をフィラメント数で除して求めた。
【0068】
(7)強度・伸度:JIS L1013(2010) 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100を用い、掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分で行った。なお、伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
【0069】
(8)沸騰水収縮率:JIS L1013(2010)8.18.1 b)フィラメント寸法変化率(B法)に従って測定した。
【0070】
(9)変形度:試料の単糸断面を切り出し、KEYENCE社製デジタルマイクロスコープ「VHX−500」を用いて500倍で観察し、単糸繊維断面の凸部の外接円の直径Dと、単糸断面の凹部の内接円の直径dの比(D/d)から求め、10サンプルの平均値から算出した。
【0071】
(10)球晶生成度:未延伸糸フィラメントを試料とし、パラフィンで包埋して切片を取り、この切片をスライドグラス上で、キシレンを滴下してパラフィンを溶解除去し、観察用試料とした。偏光顕微鏡で200倍で観察し、画像をプリントアントして、断面に占める球晶の面積(%)を求めた。
【0072】
(11)捲縮伸長率:かせ状にした糸条を、20℃、65%RHの室内に3時間放置して放縮させる。次いで、沸騰水中に20分間浸漬して沸騰水処理を行う。騰水処理したかせ状の糸条を12時間前述の室内で放置乾燥させる。次に、該糸条を1m程度の長さに切り取り、糸条の総繊度をA(dtex)とすると17.7A(μN)(1.8A(mg))の初荷重を30秒間加えた後の糸条の長さL1を先ず測定する。 次に、883A(μN)(90A(mg))の定荷重を30秒間加えた後の糸条の長さL2を測定する。本発明における捲縮伸長率G(%)はL1,L2より、以下の式から求める。
G=((L2−L1)/L1)×100(%)
【0073】
(12)カーペット評価(1)官能評価:外観評価による腰、ポイント感、色調(染色性)および見栄えについて、それぞれ以下の通り4段階で評価した。
◎:従来のN66BCFサキソニーより相当優れたレベル
○:従来のN66BCFサキソニーよりやや優れたレベル
△:従来のN66BCFサキソニーと同等レベル
×:従来のN66BCFサキソニーより劣るレベル
【0074】
(13)カーペット評価(2)実用評価:捲縮のへたり耐久性としてJIS L1021−6(2007)3.2の方法に従い1000mmの面積の円形加圧子を使用し測定し、上記の(12)項記載の4段階で評価した。
【0075】
(14)糸切れ頻度:生産量1t当たりの糸切れ回数を求め、糸切れ頻度を回/tで示した。
【0076】
[実施例1]
6mのオートクレーブに、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との塩であるヘキサメチレンジアンモニウムアジペート(AH塩)の90重量%水溶液3000kgおよびあらかじめミキサーで粉砕し、36メッシュを通過し、100メッシュにとどまる粉末を分取したナイロン46(アルドリッチケミカル社製、融点:293℃)を、表1に記載の量仕込んで、液相重合を行った。
【0077】
液相重合条件は、密閉系でオートクレーブを300℃で加熱し、内圧が1.7MPaまで上昇した時点(内温210℃)で、圧力を維持するようにオートクレーブ上部のバルブを開け圧力を制御した。内温が245℃に到達した時点から内圧を1時間で0.1MPaまで徐々に放圧した。さらに真空ポンプを用いて系内の圧力を0.05MPaまで減じ15分間維持し重合を終えた。次に、重合により得られたポリアミドを、直径約3mmのストランド状に冷水中に押し出し、長さ約3mmにカッティングしてポリマチップを得た。得られたポリマチップの相対粘度は2.81であった。
【0078】
次に、得られたポリアミド組成物をバッチ式乾燥装置を用いて105℃で乾燥し、乾燥チップを得た。乾燥したポリマチップは、水分率0.10%に調湿した後、製糸ホッパーに供給した。
【0079】
45φのエクストルーダー型紡糸機を用いて溶融紡糸した。紡糸温度は300℃、Y型孔(スリット長/スリット幅=4.5)を有する口金を用いて、捲縮糸の総繊度1360dtex、フィラメント数136、単糸繊度10dtexとなるよう製糸した。引き取り速度は800m/分、延伸倍率2.2倍、延伸温度230℃で熱延伸した。次いで延伸糸条は連続して270℃の捲縮ノズルで捲縮処理したのち、0.12cN/dtexをかけてストレッチし、捲縮を潜在化した後、交絡ノズルを通して、約15個/mの交絡を付与して巻き取った。なお、球晶生成度の評価に用いた未延伸糸は、引き取りロールに少量捲きつかせてサンプリングした。
【0080】
次いで、上記で得られた捲縮糸を、ベルドール式撚糸機によって、下撚りをZ方向に240t/m、上より240t/mの撚りをかけて撚り捲縮糸とした。更に、該撚り捲縮糸はスペルバー式スチーム処理機で150℃で1分間処理をして、本発明のサキソニー撚り捲縮糸とした。
【0081】
得られたサキソニー撚り捲縮糸を次のタフト規格でタフティングして、カットパイルカーペットとした。
【0082】
目付:700g/m、ゲージ:1/10G、パイル高さ:8mm、ステッチ数:16個/インチ、パイル:カットパイル
上記カットパイルを、98℃×60分でウインス染色を行い、乾燥して本発明カットパイルカーペットを得た。
【0083】
上記重合、製糸および高次加工条件によって得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表1に示した。
【0084】
[実施例2]
ナイロン46の添加量を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド組成物を得た。ポリマチップの相対粘度は、2.83であった。さらに実施例1と同様にして得られたポリアミド組成物の溶融紡糸等を行った。得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表1に示した。
【0085】
[実施例3]
ナイロン46の添加量を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド組成物を得た。ポリマチップの相対粘度は、2.84であった。さらに実施例1と同様にして得られたポリアミド組成物の溶融紡糸等を行った。得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表1に示した。
【0086】
[実施例4]
ナイロン46の代わりに、表1に記載のナイロン46/ナイロン66の共重合体(モル比:ナイロン46/66=95/5、融点Tm=288℃、テトラメチレンアジパミド(ナイロン46成分)とヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66成分)の共重合体(以下“/”は共重合を意味する))を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド組成物を得た。ポリマチップの相対粘度は、2.81であった。さらに実施例1と同様にして得られたポリアミド組成物の溶融紡糸等を行った。得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表1に示した。
【0087】
[実施例5]
ナイロン46の代わりに、表1に記載のナイロン46/ナイロン66の共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド組成物を得た。ポリマチップの相対粘度は、2.82であった。さらに実施例1と同様にして得られたポリアミド組成物の溶融紡糸等を行った。得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表1に示した。
【0088】
【表1】

【0089】
[比較例1]
ナイロン46を添加しない以外は、実施例1と同様にしてポリアミド組成物を得た。ポリマチップの相対粘度は、2.83であった。さらに実施例1と同様にして得られたポリアミド組成物の溶融紡糸等を行った。得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表2に示した。
【0090】
[比較例2]
ナイロン46の添加量を表2に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様にしてポリアミド組成物を得た。ポリマチップの相対粘度は、2.80であった。さらに実施例1と同様にして得られたポリアミド組成物の溶融紡糸等を行った。得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表2に示した。
【0091】
[比較例3]
ナイロン46/ナイロン66の共重合体を8重量部用いた以外は、実施例4と同様にしてポリアミド組成物を得た。ポリマチップの相対粘度は、2.82であった。さらに実施例1と同様にして得られたポリアミド組成物の溶融紡糸等を行った。得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表2に示した。
【0092】
[比較例4]
ナイロン46の代わりに、表1に記載のナイロン6(東レ社製“CM1010”融点Tm=220℃)を用いた以外は、実施例3と同様にしてポリアミド組成物を得た。ポリマチップの相対粘度は、2.81であった。さらに実施例1と同様にして得られたポリアミド組成物の溶融紡糸等を行った。得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表2に示した。
【0093】
[比較例5]
ナイロン46の代わりに、表1に記載のナイロン6T(アーレン社製“AE4200”融点Tm=320℃)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアミド組成物を得た。ポリマチップの相対粘度は、2.83であった。さらに実施例1と同様にして得られたポリアミド組成物の溶融紡糸等を行った。得られたポリアミド組成物、ポリアミド捲縮糸およびカットパイルカーペットの特性を表2に示した。
【0094】
【表2】

【0095】
実施例1〜5および比較例1〜5は、サキソニー撚りセット捲縮糸カーペットの評価となる。表1の結果より、実施例はいずれも本発明のポリマ特性および捲縮糸特性を満足しており、かつ、サキソニー撚りセット捲縮糸カーペットとして重要な踏んだ感触が良く、ヘタリ難いという特徴を十分満足していることが分かる。一方、比較例は、いずれも本発明のポリアミド組成物のポリマ特性のいずれかを満たしていないため、捲縮糸特性およびサキソニー撚りセット捲縮糸カーペット特性が劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のポリアミド捲縮糸は、単糸繊度が太く冷却し難いにもかかわらず球晶の生成が少なく、高捲縮率であることから、タフテッドカーペットとして用いた時、踏んだ感触が良く、圧縮弾性回復率に優れ、ヘタリ難いという特徴を有する。特に、サキソニー撚り捲縮糸カーペットのような高級カーペット用として好適である。また、製造時に延伸性および捲縮加工性に優れ、糸切れが少なく製糸収率に優れたポリアミド捲縮糸を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてヘキサメチレンアジパミド単位からなるポリアミドを含むと共に、下記(1)、(2)および(3)式を満足するポリアミド組成物からなり、下記(A)〜(E)の繊維特性を有することを特徴とするポリアミド捲縮糸。
Tc(270)−Tc(300)≧15℃ ・・・ (1)
Tc(300)≦188℃、Tc(270)≧200℃ ・・・ (2)
Tm≧260℃ ・・・ (3)
ここで、Tc(T)は温度T℃で溶融して測定した冷却結晶化ピーク温度、Tmは融点を示す。
(A)繊度=400〜4000dtex
(B)単糸繊度=3〜100dtex
(C)強度=2.0〜5.5cN/dtex
(D)沸騰水収縮率=2〜10%
(E)捲縮伸長率=12〜22%
【請求項2】
前記ポリアミド組成物が、ポリヘキサメチレンアジパミドおよび融点270〜300℃の化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のポリアミド捲縮糸。
【請求項3】
前記融点270〜300℃の化合物が、ポリアミドであることを特徴とする請求項2記載のポリアミド捲縮糸。
【請求項4】
前記融点270〜300℃のポリアミドが、ポリテトラメチレンアジパミドおよび/またはその共重合体であることを特徴とする請求項2または3項記載のポリアミド捲縮糸。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のポリアミド捲縮糸を用いてなることを特徴とするカーペット。
【請求項6】
サキソニー撚り捲縮糸を用いたカットパイルカーペットであることを特徴とする請求項5記載のカーペット。

【公開番号】特開2013−36147(P2013−36147A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174788(P2011−174788)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】