説明

ポリアミド樹脂の製造方法

【課題】成形後の機械特性及び色調に優れ、さらにフィルム製膜や紡糸時の加工性に優れたポリアミド樹脂を製造する方法を提供すること。
【解決手段】(A)ポリアミド成分及び(B)亜リン酸金属塩を、樹脂温度315〜390℃、減圧度0.05MPa以上にて溶融混練する工程を含む、ポリアミド樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂はエンジニジニアリングプラスチックとして知られており、包装・容器などの汎用的な消費分野、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、及び航空・宇宙分野などの各種部品用の材料として広く利用されている。
近年、これら各種部品に関しては、一体化・軽量化などを目的として金属材料からポリアミド樹脂への代替要求が非常に高まっている。また、包装、容器などの軽量化などを目的として、ポリアミド樹脂のフィルム製膜性や紡糸性向上への要求が高まっている。その結果、ポリアミド樹脂に要求される性能レベルは一層高くなってきている。
【0003】
具体的には、金属材料に代替可能な高強度を有し、フィルム製膜性や紡糸性に優れ、過度の熱、光、薬品中などの厳しい環境下で使用可能な樹脂材料が強く要望されている。ポリアミド樹脂の高分子量化はこれらの要望に応える手法の一つである。
【0004】
ポリアミド樹脂の高分子量化を溶融重合で行う場合、溶融させたポリアミド樹脂の粘性上昇の問題があり強い撹拌が必要となる。この場合、撹拌によるせん断発熱によりポリアミド樹脂が劣化することが知られており好ましくない。また、ポリアミド樹脂の高分子量化を行う方法として、溶融重合後のポリアミド樹脂を固相重合させる方法が知られている。固相重合法において所望の高分子量ポリアミド樹脂を得るためには、多大な固相重合時間や熱エネルギーが必要である。また、色調などのポリアミド樹脂の品質確保や固相重合時間短縮のため窒素気流下や減圧下での工程が必要であり、固相重合方法は、安全上/経済上の問題を有している。
【0005】
一方、単一のポリアミド樹脂の欠点を補いつつその性能を向上させる目的で、2種以上のポリアミドに反応触媒を用いる手法が検討されてきた。
特許文献1には、2種又は3種以上のポリアミドの単独重合体を亜リン酸エステル化合物の存在下で溶融混練することにより幾分かのランダムな共重合体を作る方法が開示されている。
特許文献2には、グラフト及び/又はブロック共重合体を形成するために、1種以上のポリアミド、ポリエステル、及びβ−不飽和カルボン酸のホモポリマーを、圧力としては「減圧、大気圧または過圧」としているが、具体的には、「大気圧または自発生圧」で反応させる方法が開示されている。
特許文献3には、2種又は3種以上のポリアミドを亜リン酸エステル化合物と亜リン酸金属塩の存在下で溶融混練するポリアミド樹脂組成物及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許4417032号公報
【特許文献2】特開昭58−208324号公報
【特許文献3】国際公開第2001/072872号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に開示された技術は、触媒によりポリアミド−ポリアミド交換反応を促進する技術である。
また、特許文献1及び2において、減圧下で溶融混練することは何ら記載されていない。
さらに、特許文献3において、具体的に開示されているのは、溶融混練時の圧力については、減圧度が0.04以下のみであり、溶融混練時の樹脂温度については、290℃以下のみである。
したがって、特許文献1〜3に開示された技術では、高分子量化されたポリアミド樹脂を得ることは難しい。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、成形後の機械特性及び色調に優れ、さらにフィルム製膜や紡糸時の加工性に優れたポリアミド樹脂を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアミド成分に反応触媒として亜リン酸金属塩を配合し、従来と異なる温度条件、減圧条件下で溶融混練する製造方法により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
[1]
(A)ポリアミド成分及び(B)亜リン酸金属塩を、樹脂温度315〜390℃、減圧度0.05MPa以上にて溶融混練する工程を含む、ポリアミド樹脂の製造方法。
[2]
さらに(C)亜リン酸エステル化合物を配合して溶融混練する、[1]に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
[3]
さらに(D)分子量調整剤を配合して溶融混練する、[1]又は[2]に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
[4]
前記(A)100質量部に対して、前記(B)を0.05〜1質量部、所望により、前記(C)を0.05〜1質量部、前記(D)を0.01〜1質量部配合する、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂の製造方法。
[5]
(A)ポリアミド成分が少なくとも2種のポリアミドを含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、成形後の機械特性及び色調に優れ、さらにフィルム製膜や紡糸時の加工性に優れたポリアミド樹脂を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態のポリアミド樹脂の製造方法は、(A)ポリアミド成分及び(B)亜リン酸金属塩を、樹脂温度315〜390℃、減圧度0.05MPa以上で溶融混練する工程を含む、製造方法である。
本実施の形態において、(B)亜リン酸金属塩により(A)ポリアミド成分を高分子量化することができる。
また、本実施の形態の製造方法により得られるポリアミド樹脂は、金属材料に代替可能な高強度を有し、フィルム製膜や紡糸などの成形加工性に優れ、過度の熱、光、薬品中などの厳しい環境下でも使用可能であり、成形体とした際に機械特性及び色調などに優れた性能を有する高分子量ポリアミド樹脂である。
【0013】
[(A)ポリアミド成分]
本実施の形態において、「(A)ポリアミド成分」とは、主鎖中にアミド結合(−NHCO−)を有する重合体であるポリアミドを意味する。
ポリアミド成分としては、例えば、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリウンデカラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカラクタム(ポリアミド12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド(ポリアミド6C)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))などのポリアミドが挙げられる。
【0014】
ポリアミド成分としては、1種のポリアミドを用いてもよく、2種以上のポリアミドを組み合わせて用いてもよい。
2種以上のポリアミドを組み合わせるとは、ポリアミド成分として、少なくとも2種のポリアミドを含むことを意味し、ポリアミドを構成する単量体(構成単位)が同じポリアミドを用いてもよく、ポリアミドの構成単位が異なるポリアミドを用いてもよい。
少なくとも2種のポリアミドを含むポリアミド成分としては、上記ポリアミドを少なくとも2種含有していてもよく、上記ポリアミドを少なくとも2種含有する共重合ポリアミドであってもよい。
少なくとも2種のポリアミドを含むポリアミド成分を用いることにより、ポリアミド−ポリアミド交換反応を利用し、色調に優れた成形体に加工可能な高分子量ポリアミド樹脂を製造することができる。
【0015】
これらの中でも、ポリアミド成分として、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンシクロヘキシルアミド(ポリアミド6C)が好ましく、これらのうち少なくとも2種の異なるポリアミドを含んでいてもよい。
【0016】
本実施の形態において、「少なくとも2種の異なるポリアミドを含む」とは、構成単位が異なるポリアミドをポリアミド成分として含むことを意味する。
本実施の形態において、「構成単位が異なる」とは、以下の実施の形態に限定されるものではないが、例えば、2種のポリアミド成分として、構成単位がヘキサメチレンジアミンとアジピン酸であるポリアミド66と、構成単位がヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸であるポリアミド6Iとからなる場合などが挙げられる。
この場合、ポリアミド66とポリアミド6Iとでは、構成単位のジカルボン酸がアジピン酸とイソフタル酸と異なるため、ポリアミド66とポリアミド6Iとは構成単位が異なるポリアミドである。
また、構成単位がヘキサメチレンジアミンと、アジピン酸及びイソフタル酸とであるポリアミド66/6Iのような共重合ポリアミドも、構成単位が異なるポリアミドである。
【0017】
ポリアミド成分が「少なくとも2種の異なるポリアミドを含む」場合のポリアミド成分として、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6I、及びポリアミド6Cからなる群から選ばれる2種以上の組合せであることが好ましい。
【0018】
[(B)亜リン酸金属塩]
本実施の形態において、(B)亜リン酸金属塩とは、亜リン酸又は次亜リン酸と、元素周期律表の1、2、3、4、5、6、7、8、11、12、13族元素及びスズ、鉛などの金属との金属塩を意味する。
亜リン酸金属塩は、1種の亜リン酸金属塩を用いてもよく、2種以上の亜リン酸金属塩を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ポリアミド樹脂の高分子量化をより顕著に達成できるという観点から、好ましくは次亜リン酸金属塩であり、より好ましくは次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)及び次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO22)が挙げられる。
亜リン酸金属塩は、水和物であってもよく、次亜リン酸ナトリウム・一水和物(NaH2PO2・H2O)などが挙げられる。
【0020】
(A)ポリアミド成分及び(B)亜リン酸金属塩を溶融混練する工程において、亜リン酸金属塩の含有量は、ポリアミド成分の合計100質量部に対して、0.05〜1質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.75質量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.5質量部である。
亜リン酸金属塩の含有量が0.05質量部以上であれば、高分子量ポリアミド樹脂を得ることができ、また高温での溶融混練時に色調悪化や劣化を防止することができる。亜リン酸金属塩の含有量が1質量部以下であれば、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
【0021】
本実施の形態において、(A)ポリアミド成分及び(B)亜リン酸金属塩を溶融混練する工程において、(C)亜リン酸エステル化合物及び/又は(D)分子量調整剤をさらに配合して溶融混練してもよい。
亜リン酸エステル化合物をさらに配合して、溶融混練することにより、高分子量化をさらに促進することができる。また、原料として、少なくとも2種以上のポリアミドをポリアミド成分とする場合は、ポリアミド−ポリアミド交換反応をさらに促進することができる。
また、分子量調整剤をさらに配合して、溶融混練することは、過度の高分子量化を抑制することができ、所望の分子量にポリアミド樹脂の分子量を制御できるため好適である。
また、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸金属塩と、所望により、(C)亜リン酸エステル化合物と、を溶融混練して得られたポリアミド樹脂に、(D)分子量調製剤を展着して溶融混練してもよい。
【0022】
[(C)亜リン酸エステル化合物]
本実施の形態において、(C)亜リン酸エステル化合物としては、下記一般式(1)又は一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
一般式(1):
(RO)nP(OH)3-n
(式中、nは1、2又は3を示す。)
一般式(2):
(RO)mP(R)(OH)2-m
(式中、mは1又は2を示す。)
一般式(1)又は一般式(2)において、Rは、それぞれ独立して、脂肪族基若しくは芳香族基又はそれらの基の一部が置換基で置換された置換脂肪族基若しくは置換芳香族基を示す。
一般式(1)又は一般式(2)において、n又はmが2以上の場合、一般式(1)又は一般式(2)中、複数の(RO)基は同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ステアリル基、及びオレイル基などの脂肪族基、フェニル基及びビフェニル基などの芳香族基が挙げられる。
置換基としては、ヒドロキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、ノニル基、メトキシ基、及びエトキシ基などが挙げられる。
【0024】
亜リン酸エステル化合物として、上記一般式(1)で示されるホスファイト系化合物としては、好ましくは、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチル−ジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル−フェニル)ブタン、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトなどが挙げられる。
【0025】
亜リン酸エステル化合物として、上記一般式(2)で示されるホスフォナイト系化合物としては、好ましくは、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイトなどが挙げられる。
【0026】
亜リン酸エステル化合物は、1種の亜リン酸エステル化合物を用いてもよく、2種以上の亜リン酸エステル化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(A)ポリアミド成分及び(B)亜リン酸金属塩を溶融混練する工程において、さらに(C)亜リン酸エステル化合物を溶融混練する場合には、亜リン酸エステル化合物の含有量は、ポリアミド成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜1質量部であり、より好ましくは0.05〜0.75質量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.5質量部である。
亜リン酸エステル化合物の含有量が0.05質量部以上であれば、高分子量ポリアミド樹脂を得ることができ、また高温での溶融混練時に色調悪化や劣化を防止することができる。亜リン酸エステル化合物の含有量が1質量部以下であれば、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
【0028】
本実施の形態において、(B)亜リン酸金属塩及び、所望により、(C)亜リン酸エステル化合物を配合し溶融混練した場合、亜リン酸金属塩及び/又は亜リン酸エステル化合物はポリアミド樹脂に含まれることになるが、溶融混練後のポリアミド樹脂における亜リン酸金属塩及び亜リン酸エステル化合物の存在状態は特に限定されない。
該存在状態としては、例えば、亜リン酸金属塩及び亜リン酸エステル化合物のままで存在してもよく、リン酸金属塩又はリン酸エステルとして存在してもよく、これらが混在した状態であってもよい。また、亜リン酸金属塩及び亜リン酸エステル化合物が加水分解した状態、例えば、亜リン酸又はリン酸などの状態で存在してもよい。
【0029】
[(D)分子量調整剤]
本実施の形態において、(D)分子量調節剤としては、例えば、水、酢酸及びステアリン酸などのモノカルボン酸、アジピン酸、イソフタル酸及びテレフタル酸などのジカルボン酸、ステアリルアミンなどのモノアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミン、並びに酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、モンタン酸カルシウム、及びステアリルステアレートなどの脂肪酸化合物(脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルを含む)などが挙げられる。
分子量調整剤としては、成形性改良剤としての効果も有する脂肪酸化合物を用いることが好ましく、より好ましくは脂肪酸金属塩である。
分子量調整剤は、1種の分子量調整剤を用いてもよく、2種以上の分子量調整剤を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(A)ポリアミド成分及び(B)亜リン酸金属塩を溶融混練する工程において、さらに(D)分子量調整剤を溶融混練する場合には、分子量調節剤の含有量は、ポリアミド成分の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.025〜0.75質量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.5質量部である。
分子量調整剤の含有量が0.01質量部以上であれば、本実施の形態の目的を達成し得る過度の分子量上昇を抑制することができ、1質量部以下であれば、押出性や成形加工性に優れるポリアミド樹脂を得ることができる。
【0031】
(A)ポリアミド成分及び(B)亜リン酸金属塩と、所望により、(C)亜リン酸エステル化合物及び/又は(D)分子量調整剤と、の溶融混練方法としては、全成分を同時に混練する方法;予め予備混練した配合物を混練する方法、例えば、ポリアミド成分の予備混練物に亜リン酸金属塩などを配合して溶融混練する方法;押出機の途中から逐次各成分をフィードする方法、例えば、ポリアミド成分に押出機の途中から亜リン酸金属塩などを逐次フィードする方法;及びこれらを組み合わせた方法などが挙げられる。
(A)及び(B)を溶融混練する際に、(C)及び/又は(D)をさらに配合して溶融混練してもよく、(A)及び(B)、所望により、(C)をさらに配合して、溶融混練して得られるポリアミド樹脂に(D)をさらに配合(展着)して溶融混練してもよい。
また、亜リン酸金属塩、亜リン酸エステル化合物、分子量調整剤などの1種又は2種以上をディスクペレッターなどにより予めタブレット(錠剤)に加工して添加する方法も挙げられ、(B)〜(D)より選ばれる1種又は2種以上を混合後に加工しタブレット(錠剤)にして添加することもできる。
(B)〜(D)の各成分が粉体の場合は取扱上タブレットとして添加することは好ましい方法である。
【0032】
タブレットを加工する際、タブレット形成原料を粉砕することにより、原料の分散性をより向上させることもできる。
タブレットの造粒としては、特に限定されず、乾式造粒でもよく、水やポリアルキレングリコールを添加した湿式造粒でもよく、溶融混練中の分散性を上げるためには、湿式造粒が好ましい。
【0033】
ポリアミド樹脂の製造方法においては、必要に応じて本実施の形態の目的を損なわない範囲で、(A)〜(D)以外の(E)その他の化合物として、ポリアミド樹脂に用いられる通常の化合物、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、炭素繊維、及びアパタイト化合物などの無機充填材;三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、すず酸亜鉛、ヒドロキシすず酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、サクシノグアナミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、フタル酸メラミン、芳香族系ポリフォスフェート、及び複合ガラス粉末などの難燃剤;チタンホワイト、カーボンブラック、及びメタリック顔料などの顔料や着色剤;ポリアルキレングリコール及びその末端変性物;低分子量ポリエチレン;酸化低分子量ポリエチレン;置換ベンジリデンソルビトール;カプロラクタム類;並びにタルクなどの無機結晶核剤などを配合して溶融混練することができる。
【0034】
溶融混練を行う装置としては、公知の装置を用いることができる。例えば、単軸又は二軸押出機、バンバリーミキサー及びミキシングロールなどの溶融混練機などが好ましく用いられる。
この中でも脱揮機構(ベント)装置及びサイドフィーダー設備を装備した多軸押出機が好ましく、より好ましくは二軸押出機が用いられる。
【0035】
溶融混練する工程において、ポリアミド成分を高分子量化するため、減圧下で溶融混練する必要があり、減圧度0.05MPa以上において溶融混練を行う。
減圧度は、好ましくは0.05Paを超え、より好ましくは0.065MPaを超え、さらに好ましくは0.07MPa以上であり、0.1013MPa以下であることが好ましい。
減圧度が0.05MPa以上であれば、本実施の形態の目的を達成し得る程の高分子量ポリアミド樹脂を得ることができる。
【0036】
本実施の形態において、減圧度とは、大気圧を基準とし、脱揮領域の圧力と大気圧との差を意味する。
本実施の形態において、脱揮領域とは、溶融混練装置内で減圧装置に接続されて減圧装置と同程度の減圧度となる領域であり、装置壁、撹拌装置や充満樹脂などにより密閉状態となる領域である。
【0037】
減圧度を強めたとき粘度が上昇し押出が困難になる場合があるが、本実施の形態では樹脂温度を上げる、(D)分子量調整剤を配合するなどにより減圧装置(真空ポンプなど)の最大限(減圧度0.1013MPa)まで減圧することができる。
【0038】
減圧度の測定位置は、減圧装置(真空ポンプなど)から溶融混練部までのいずれの位置でもよいが、溶融混練部(押出機であればベントポート)がポリアミド樹脂の分子量を制御する上で好ましい。
減圧度の調整は減圧装置(真空ポンプなど)から減圧度測定位置までのいずれかの位置に弁又は弁付空気吸引ノズルを設置するが、減圧装置(真空ポンプなど)に近い位置が好ましい。
減圧装置(真空ポンプなど)から溶融混練部の間に、ベントガス中のドレンを貯めるドレンポットを設置することができる。ベントポットを設置している場合、空気吸引ノズルをベントポットに取り付けることが好ましい。
【0039】
本実施の形態において、(A)ポリアミド成分に、(B)亜リン酸金属塩、及び、所望により、(C)亜リン酸エステル化合物を配合しているため、通常より溶融混練が高温度でもポリアミド樹脂の劣化や色調悪化を少なくすることができ、また低滞留時間でも高分子量ポリアミド樹脂を得ることができる。
【0040】
溶融混練時の樹脂温度は、315〜390℃であり、330〜390℃が好ましい。
溶融混練時の樹脂温度が315℃以上であれば、高分子量化時の加工性に優れるポリアミド樹脂とすることができる。
溶融混練時の樹脂温度が390℃以下であれば、ポリアミド樹脂の劣化や色調悪化を防止することができる。
溶融混練時の樹脂温度は、例えば、溶融混練装置の押出部の先端ノズル付近の温度として測定することができ、溶融混練装置のヒーター温度を300℃以上に設定することで制御可能である。ヒーター温度が300℃以下の場合でも、溶融混練装置のスクリュー回転数を通常より高目にすることで所望の樹脂温度に制御することができる。
【0041】
溶融混練装置のヒーター温度としては、好ましくは300〜390℃であり、より好ましくは310〜360℃である。
溶融混練装置のスクリュー回転数としては、好ましくは200〜750rpmであり、より好ましくは250〜600rpmである。
樹脂温度の制御は押出機サイズの影響も受けるので、ヒーター温度とスクリュー回転数を適正に組み合わせることにより、所望の樹脂温度に調整することができる。
【0042】
溶融混練時の平均滞留時間は、好ましくは10秒以上であり、より好ましくは20秒以上である。
溶融混練時の平均滞留時間が10秒以上であれば、本実施の形態の目的を達成し得る程の高分子量ポリアミド樹脂を得ることができる。
平均滞留時間とは、溶融混練装置内での滞留時間が一定の場合はその滞留時間を意味し、滞留時間が不均一な場合は最も短い滞留時間と最も長い滞留時間の平均値を意味する。
溶融混練中の着色剤マスターバッチなど本実施形態のポリアミド樹脂とは色の異なる樹脂など、本実施形態のポリアミド樹脂とは区別できる樹脂など(以下、Xと略記する)を溶融混練装置に添加し、Xの排出開始時間と排出終了時間を計測し、排出開始時間と排出終了時間を平均することにより、平均滞留時間を測定することができる。
【0043】
本実施の形態において、ポリアミド樹脂は、(A)ポリアミド成分と、(B)亜リン酸金属塩とを配合し、樹脂温度315〜390℃の温度条件で、減圧度0.05MPa以上の減圧条件で、溶融混練することにより製造することができる。
【0044】
本実施の形態において、ポリアミド樹脂は、(A)ポリアミド成分、(B)亜リン酸金属塩を配合し、樹脂温度315〜390℃、減圧度0.05MPa以上で溶融混練することにより製造される。
本実施の形態において、ポリアミド樹脂の分子量はJIS−K6810に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度(ηr)として測定され、得られるポリアミド樹脂の成形性及び機械物性の点から、25℃の相対粘度(ηr)が、好ましくは2.0〜7.5であり、より好ましくは2.5〜7.0であり、さらに好ましくは3.0〜6.5であり、よりさらに好ましくは3.1以上である。
25℃の相対粘度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施の形態の製造方法によれば、25℃の相対粘度が上記範囲内であることによりフィルム破れや糸切れを防止することができるので、製膜性や紡糸性に優れるポリアミド樹脂を製造することができる。
【0045】
本実施の形態のポリアミド樹脂において、得られるポリアミド樹脂の表面外観の点から、JIS−K7121に準じて測定した結晶化温度が、好ましくは170℃〜250℃であり、より好ましくは175℃〜240℃であり、さらに好ましくは180℃〜235℃である。
結晶化温度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
無機充填材などの充填材を配合していないポリアミド樹脂において、得られるポリアミド樹脂の機械物性の点から、ASTMD638に準じて測定した引張強度が、好ましくは60MPa以上、より好ましくは65MPa以上、さらに好ましくは70MPa以上である。
無機充填材などの充填材を配合し強化したポリアミド樹脂において、ASTM638に準じて測定した引張強度が、好ましくは150MPa以上であり、より好ましくは160MPa以上であり、さらに好ましくは170MPa以上である。
引張強度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0047】
得られるポリアミド樹脂の機械物性の点から、ASTM638に準じて測定した引張伸度が、好ましくは2%以上であり、より好ましくは2.75%以上であり、さらに好ましくは3%以上である。
引張伸度は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0048】
得られるポリアミド樹脂の表面外観の点から、JIS−K7150に準じて測定したグロス値(Gs60゜)が、好ましくは20以上であり、より好ましくは30以上であり、さらに好ましくは40以上である。
グロス値(Gs60゜)は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0049】
本実施の形態の製造法により得られるポリアミド樹脂は、成形加工性に優れるため、公知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、発泡成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法を用いて良好に成形加工することができる。
本実施の形態におけるポリアミド樹脂を溶融混練する原料としては、ポリアミド樹脂の既成形体や部品類を粉砕するなどした、リワーク材料やリサイクル材料を用いることができる。本実施の形態の製造方法は、各種成形体又は部品類の再生への応用が期待される。
【0050】
本実施の形態におけるポリアミド樹脂から得られる成形体は、従来のポリアミド樹脂から得られる成形体に比べ、色調、表面外観、耐熱変色、耐候性、耐熱エージング性、耐光性、耐薬品性などに優れるため、自動車部品、電子電気部品、工業機械部品、各種ギア、押出用途などの各種部品への応用が期待される。
【実施例】
【0051】
以下、本実施の形態を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本実施の形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる評価方法は、以下のとおりである。
【0052】
1.ポリアミド樹脂の特性
(1−1)相対粘度(ηr)
JIS−K6810に準じて相対粘度を測定した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド樹脂1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作製し、25℃の温度条件下で測定した。
なお、相対粘度の測定においては、ポリアミド樹脂とは、ポリアミド成分に由来するものであり、ポリアミド樹脂を分解温度以上で焼却した場合の残留物分は含まない重さである。
【0053】
(1−2)結晶化温度(℃)
JIS−K7121に準じて結晶化温度を測定した。測定装置は、PERKIN−ELMER社製DSC−7型を用いた。測定条件は、窒素雰囲気下、約8mgのサンプルを300℃で2分間保った後、降温速度20℃/minで40℃まで降温したときに現れるピーク温度から結晶化温度を測定した。さらに40℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで昇温したときに現れるピーク温度から融点を測定した。
【0054】
2.成形品の作製及び特性
(2−1)成形品(ダンベル)の成形
射出成形機を用いて成形品を作製した。射出成形装置として日精樹脂工業(株)製PS40Eを用い、金型温度80℃に設定し、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で、ポリアミド樹脂ペレットからダンベル状の成形品を得た。
シリンダー温度は、前記(1−2)に準じて求めたポリアミド樹脂の融点より約15〜40℃高い温度条件に設定した。
【0055】
(2−2)引張強度(MPa)及び引張伸度(%)
ASTMD638に準じて、(2−1)で得られた成形品の引張強度及び引張伸度を測定した。
【0056】
(2−3)成形品(平板)の成形
射出成形機を用いて成形品を作製した。射出成形装置として日精樹脂工業(株)製FN3000を用い、金型温度80℃に設定し、射出15秒、冷却20秒の射出成形条件で、ポリアミド樹脂ペレットから平板状の成形品を得た。得られた平板の大きさは、縦90mm×横60mm×厚3mmであった。
シリンダー温度は、前記(1−2)に準じて求めたポリアミド樹脂の融点より約15〜40℃高い温度条件に設定した。
【0057】
(2−4)グロス値(Gs60゜)
堀場製ハンディー光沢計IG320を用いて、JIS−K7150に準じて、(2−3)で得られた成形品のGs60°を測定した。
【0058】
(2−5)色調(b値)
日本電色社製色差計ND−300Aを用いて、(2−3)で得られた成形品のb値を測定した。b値が小さいものほど色調が良好である。
【0059】
(2−6)フィルム製膜性
フィルム製膜装置は、テクノベル社製KZW15TW−25MC型二軸押出機の先端に幅:150mmのTダイを取り付けて使用した。Tダイから出た樹脂フィルムを引取巻取装置に導入し、冷却ロール部にて冷却固化させた後、巻取り装置部にロール状に巻き取った。フィルムの厚みが70μmになるよう調整し、フィルム製膜性は以下の4段階で評価した。
◎:厚み等の品質が安定した良好なフィルムを連続生産可能
○:連続生産可能であるが、厚みが不均一であったり、引取方向と垂直な方向に反りを生じるなどフィルムの品質が安定しない
△:フィルム生産時、フィルムが破れ、安定して製膜できない
×:樹脂粘度が低く、引取りが困難である
【0060】
[実施例1]
ポリアミド66(旭化成(株)製レオナ1300(25℃の相対粘度(ηr)2.84、水分率0.08質量%)、以下「PA66」と略記する)50質量部、及びポリアミド6(宇部興産(株)製SF1022A(25℃の相対粘度(ηr)3.45、水分率0.08質量%)、以下「PA6」と略記する)50質量部からなるポリアミド成分100質量部に、次亜リン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製)0.1質量部を配合した。二軸押出機(COPERION社製ZSK25)を用いて溶融混練を行った。スクリュー回転数265rpm、シリンダー温度350℃とし、先端ノズル付近の樹脂温度は331℃であった。押出レートは15Kg/hrであり、平均滞留時間は40秒であった。減圧度0.07MPaで押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリアミド樹脂を排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを、窒素雰囲気下、80℃で24時間乾燥した。評価結果を表1に示す。
【0061】
[実施例2]
トリス(2,4−t−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャルティケミカルズ社製IRGAFOS168)0.1質量部をさらに配合して、実施例1と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は335℃であった。評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例3]
減圧度0.095MPaとして、実施例2と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は337℃であった。評価結果を表1に示す。
【0063】
[実施例4]
モンタン酸カルシウム(クラリアント社製LicomontCaV102)0.1質量部をさらに配合して、実施例3と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は336℃であった。評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例5]
ポリアミド成分としてPA66 100質量部を用い、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は332℃であった。評価結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
PA66 50質量部、及びPA6 50質量部を配合し、二軸押出機(CORPERION社製:ZSK25)を用いて溶融混練を行った。スクリュー回転数265rpm、シリンダー温度280℃とし、先端ノズル付近の樹脂温度は291℃であった。押出レート15Kg/hrであり、平均滞留時間は40秒であった。減圧度0.095MPaで押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを、窒素雰囲気下、80℃で24時間乾燥した。評価結果を表1に示す。
【0066】
[比較例2]
シリンダー温度350℃として、比較例1と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は341℃であった。評価結果を表1に示す。
【0067】
[比較例3]
ポリアミド成分としてPA66 100質量部を用い、比較例1と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は295℃であった。評価結果を表1に示す。
【0068】
[比較例4]
ポリアミド成分としてPA66 100質量部を用い、比較例2と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は345℃であった。評価結果を表2に示す。
【0069】
[実施例6]
シリンダー温度350℃、スクリュー回転数550rpmとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は382℃であった。評価結果を表2に示す。
【0070】
[実施例7]
シリンダー温度310℃として、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は315℃であった。評価結果を表2に示す。
【0071】
[実施例8]
押出レート30Kg/hrとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は342℃であり、平均滞留時間は20秒であった。評価結果を表2に示す。
【0072】
[実施例9]
押出レートを7.6Kg/hrとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は355℃であり、平均滞留時間は59秒であった。評価結果を表2に示す。
【0073】
[比較例5]
シリンダー温度350℃、スクリュー回転数700rpmとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は401℃であった。押出機先端ノズルよりストランド状に引き取る際、ストランド切れが多発し、またノズルよりガスが噴出するなど、安定生産困難な状況であった。評価結果を表2に示す。
【0074】
[比較例6]
シリンダー温度300℃、スクリュー回転数250rpmとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は306℃であった。評価結果を表2に示す。
【0075】
[実施例10]
押出レート48Kg/hrとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は340℃であり、平均滞留時間は12.5秒であった。評価結果を表2に示す。
【0076】
[実施例11]
押出レート10Kg/hrとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は358℃であり、平均滞留時間は60秒であった。押出機先端ノズルよりストランド状に引き取る際、ストランドが切れることもあったが、生産は可能であった。評価結果を表3に示す。
【0077】
[実施例12]
押出レート7Kg/hrとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は342℃であり、平均滞留時間は86秒であった。評価結果を表3に示す。
【0078】
[実施例13]
減圧度0.07MPaとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は337℃であった。評価結果を表3に示す。
【0079】
[実施例14]
減圧度を0.065MPaとして、実施例4と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は337℃であった。評価結果を表3に示す。
【0080】
[実施例15]
ポリアミド成分100質量部に対して、旭ファイバーガラス株式会社製JA416(以下、「GF」と略記する)50質量部を、サイドフィーダーからさらに添加して、それぞれ実施例1と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は348℃であり、平均滞留時間は30秒であった。評価結果を表4に示す。
【0081】
[実施例16]
トリス(2,4−t−ジ−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャルティケミカルズ社製IRGAFOS168)0.1質量部をさらに配合して、実施例15と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であった。評価結果を表4に示す。
【0082】
[実施例17]
減圧度0.095MPaとして、実施例16と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は365℃であった。評価結果を表4に示す。
【0083】
[実施例18]
モンタン酸カルシウム(クラリアント社製 LicomontCaV102)0.1質量部をさらに配合して、実施例17と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は354℃であった。評価結果を表4に示す。
【0084】
[実施例19]
ポリアミド成分としてPA66 100質量部を用い、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は351℃であった。評価結果を表4に示す。
【0085】
[比較例7]
PA66 50質量部、及びPA6 50質量部を配合し、二軸押出機(CORPERION社製ZSK25)を用いて溶融混練を行った。サイドフィーダーからポリアミド成分100質量部に対して、GF 50質量部を添加した。スクリュー回転数265rpm、シリンダー温度280℃とし、先端ノズル付近の樹脂温度は309℃であった。押出レートは15Kg/hrであり、平均滞留時間は30秒であった。減圧度0.095MPaで押出を行った。先端ノズルからストランド状にポリマーを排出し、水冷・カッティングを行いペレットとした。該ペレットを窒素雰囲気下、80℃で24時間乾燥した。評価結果を表4に示す。
【0086】
[比較例8]
シリンダー温度350℃として、比較例7と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は355℃であった。評価結果を表4に示す。
【0087】
[比較例9]
ポリアミド成分としてPA66 100質量部を用い、比較例7と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は311℃であった。評価結果を表4に示す。
【0088】
[比較例10]
ポリアミド成分としてPA66 100質量部を用い、比較例8と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は355℃であった。評価結果を表5に示す。
【0089】
[実施例20]
シリンダー温度350℃、スクリュー回転数550rpmとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は389℃であった。評価結果を表5に示す。
【0090】
[実施例21]
シリンダー温度310℃として、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は315℃であった。評価結果を表5に示す。
【0091】
[実施例22]
押出レート30Kg/hrとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は345℃であり、平均滞留時間は15秒であった。評価結果を表5に示す。
【0092】
[実施例23]
押出レート7.6Kg/hrとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は362℃であり、平均滞留時間は59秒であった。評価結果を表5に示す。
【0093】
[比較例11]
シリンダー温度350℃、スクリュー回転数600rpmとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は399℃であった。押出機先端ノズルよりストランド状に引き取る際、ストランド切れが多発し、またノズルよりガスが噴出するなど、安定生産困難な状況であった。評価結果を表5に示す。
【0094】
[比較例12]
シリンダー温度300℃、スクリュー回転数250rpmとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は308℃であった。評価結果を表5に示す。
【0095】
[実施例24]
押出レート36Kg/hrとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は347℃であり、平均滞留時間は12.5秒であった。評価結果を表5に示す。
【0096】
[実施例25]
押出レート7.5Kg/hrとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は352℃であり、平均滞留時間は60秒であった。押出機先端ノズルよりストランド状に引き取る際、ストランドが切れることもあったが、生産は可能であった。評価結果を表6に示す。
【0097】
[実施例26]
押出レート5Kg/hrとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は349℃であり、平均滞留時間は90秒であった。評価結果を表6に示す。
【0098】
[実施例27]
減圧度0.07MPaとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は353℃であった。評価結果を表6に示す。
【0099】
[実施例28]
減圧度0.065MPaとして、実施例18と同様に実施した。先端ノズル付近の樹脂温度は352℃であった。評価結果を表6に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、成形後の機械特性及び色調に優れ、さらにフィルム製膜や紡糸時の加工性に優れた高分子量ポリアミド樹脂を製造することができる。
本発明は、自動車部品、電子電気部品、工業機械部品、各種ギア、押出用途などの分野において産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド成分及び(B)亜リン酸金属塩を、樹脂温度315〜390℃、減圧度0.05MPa以上にて溶融混練する工程を含む、ポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項2】
さらに(C)亜リン酸エステル化合物を配合して溶融混練する、請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項3】
さらに(D)分子量調整剤を配合して溶融混練する、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記(A)100質量部に対して、前記(B)を0.05〜1質量部、所望により、前記(C)を0.05〜1質量部、前記(D)を0.01〜1質量部配合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
【請求項5】
(A)ポリアミド成分が少なくとも2種のポリアミドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2011−26396(P2011−26396A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171746(P2009−171746)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】