説明

ポリアミド樹脂を含む車両外装部品をコーティングするための方法ならびにそれによってコーティングされた部品および物品

ポリアミドと、ノボラック樹脂と、強化剤とを含むポリアミド組成物を含む車両外装部品をコーティングするための方法。ポリアミド組成物が無機充填剤、核剤、および他の添加剤をさらに含んでもよい。本明細書に記載された方法によってコーティングされた物品もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドと、ノボラック樹脂と、強化剤とを含むポリアミド組成物を含む車両外装部品をコーティングするための方法ならびに前記方法によってコーティングされた前記部品に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、モーターサイクル、レクリエーション車、農作業機などの自動車および他の車両の車体は通常、シートメタルから作製されている。金属部品は、自動車および他の車両のために望ましい平滑な、光沢表面を有するように製造することができる。金属車体部品の良好な耐熱性は、オンラインコーティング方法を用いてそれらを便宜的にコーティングすることを可能にする。オンラインコーティング方法において、金属車体部品が車両のシャーシに取り付けられ、プライマーの電着、いわゆる「Eコート」によって耐腐蝕性処理を提供するのにある程度は役立つ第1のコーティングが与えられる。次に、車両の外部は、プライマーサーフェーサーコート、所望の着色剤を含有するベースコート、およびクリアコートなどが挙げられる付加的なコーティング層で処理される。これらのコーティング工程の間、いくつかの場合、車体を少なくとも30分もの間、200℃を超える炉温度に暴露することができる。特に、Eコートは、硬化する間、高温への長時間の暴露を必要とする場合がある。
【0003】
ポリマー材料は金属に比べて軽量であり、かつ入り組んだおよび複雑な形状を有する部品に容易に成形可能であるので、ポリマー材料から車両外装部品を作製することが望ましい。しかしながら、ポリマー材料は、コーティングされた時に非常に似たまたは同一の色調、光沢、車両のコーティングされた金属部品に対する短波値および長波値を有する物品に成形可能でなければならない。また、成形されたポリマー物品は、良好な耐衝撃性、剛性、耐化学薬品性、および寸法安定性を有さなくてはならない。
【0004】
オフラインコーティング方法において、ポリマー部品は、車体の他の部分とは別個にコーティングされ、車体の他の部分がオンライン方法においてコーティングされた後に取り付けられる。これは、ポリマー部品がオンラインコーティング方法の高温に暴露される必要がないことを意味する。この方法の欠点としては、費用がかかり、ポリマー部品と金属部品との間の正確な色合わせの達成が難しいことなどが挙げられる。
【0005】
インラインコーティング方法において、金属外装部品だけが電着プライマーコーティング方法およびその可能な高温乾燥工程にかけられる。次いでポリマー部品を、後続のコーティング工程のために車両の車体に付加する。しかしながら、これは、粉塵および他の不純物を方法に導入する場合があるコーティング方法に付加的な工程および遮断を必要とする。
【0006】
従って、Eコート工程の前に車体に取り付け、標準オンラインコーティング方法を用いて、存在する一切の金属部品と一緒にコーティングすることができるポリマー外装部品を作製することが望ましい。これは、熱変形および熱歪みなしにEコート工程および後続のコーティング工程のために使用される条件に耐えることができるポリマー組成物の使用を必要とする。
【0007】
このようなポリマー外装部品は、オンラインコーティング方法において使用される温度において良好な剛性を有すると共に湿気に暴露される時に良好な寸法安定性を有し、低い線膨張率を有するポリマー組成物から作製される必要がある。米国特許公報(特許文献1)には、オンラインラッカー塗に適した耐衝撃性改質ポリアミド組成物が開示されている。(特許文献2)には、ポリアミド、耐衝撃性改質剤、およびフェノール−ホルムアルデヒド樹脂または少なくとも2個のフェノール性ヒドロキシル基を有するオリゴマーまたはポリマー化合物を含む組成物が開示されている。
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0073773号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/009706号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4,174,358号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
可視ポリマー表面を有する、少なくとも1つのポリマー部品から集成された支持体をコーティングするための方法が本明細書において開示および権利請求され、前記支持体の前記可視表面上に少なくとも1つのコーティングを適用し、硬化させる連続工程を含み、前記支持体の前記可視表面を構成する前記ポリマー部品の少なくとも一部が、
a.約40〜約98重量パーセントのポリアミドと、
b.約1〜約20重量パーセントのノボラック樹脂と、
c.約1〜約30重量パーセントの強化剤と、
d.0〜約40重量パーセントの無機充填剤と、を含むポリアミド組成物を含み、重量パーセンテージが前記組成物の全重量を基準にしている。
【0010】
「可視」ポリマー表面とは、車両または部品の外部から見ることができるそれらの表面を意味する。すなわち、これらの表面は、消費者が見る対象であり、よく見える位置から隠されていない。
【0011】
また、本発明によって権利請求される方法によってコーティングされた物品が本明細書において開示および権利請求される。これらは、フェンダー、フード、トランクドア、リフトアップテールゲート、ドア、サイドパネル、保護モールディング、スポイラー、ハブキャップ、ボディシル、ドアシル、ドアハンドル、ラジエーターグリル、タンクフラップ、ミラーハウジング、あるいはバンパーのいずれも包含することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法は、ポリアミド樹脂組成物から作製された車両外装部品などの支持体のコーティングを提供する。車両部品は、オンライン方法またはオフラインまたはインライン方法を用いてコーティングされてもよい。車両の例には、自動車、トラック、バン、モーターサイクル、自転車、全地形用車両の他、ボートおよび船などの水上車、スノーモービル、芝刈り機、トラクターおよび他の農作業機、航空機、ブルドーザーおよび他の建設機械などがある。外装部品の例には、フェンダー、フード、トランクドア、リフトアップテールゲート、ドア、サイドパネル、保護モールディング、スポイラー、ハブキャップ、ボディシル、ドアシル、ドアハンドル、ラジエーターグリル、タンクフラップ、バンパー、ミラーハウジング、および他の外装部品などがある。
【0013】
本発明において用いられるポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド、ノボラック樹脂、強化剤、および任意選択的に、無機充填剤などの他の成分を含む。
【0014】
ポリアミドは、少なくとも1つの熱可塑性ポリアミドである。適したポリアミドは、ジカルボン酸とジアミンとの縮合生成物、および/またはアミノカルボン酸、および/または環状ラクタムの開環重合生成物であってもよい。適したジカルボン酸には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などがある。適したジアミンには、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシリレンジアミン、およびp−キシリレンジアミンなどがある。適したアミノカルボン酸は、11−アミノドデカン酸である。適した環状ラクタムはカプロラクタムおよびラウロラクタムである。好ましい脂肪族ポリアミドには、ポリアミド6;ポリアミド6,6;ポリアミド4,6;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;ポリアミド11;ポリアミド12;半芳香族ポリアミド、例えばポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)の他、ヘキサメチレン−テレフタルアミドおよびヘキサメチレンアジパミドのポリアミド(ポリアミド6,T/6,6);ヘキサメチレンテレフタルアミドおよび2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドのポリアミド(ポリアミド6,T/D,T)およびこれらのポリマーのコポリマーおよび混合物などがある。好ましいポリアミドはポリアミド6,6である。
【0015】
ポリアミドは、組成物の全重量を基準にして約40〜約98重量パーセント、または好ましくは約50〜約90重量パーセントにおいて存在する。使用されたポリアミドは好ましくは、組成物から製造された車体部品に適用されたどんなコーティング層の硬化温度よりも少なくとも約20℃高い融点を有する。
【0016】
熱可塑性フェノール−ホルムアルデヒド樹脂としても公知であるノボラック樹脂は、フェノールまたは置換フェノールのモル過剰量が存在するように酸または他の触媒の存在下で少なくとも1つのアルデヒドを少なくとも1つのフェノールまたは置換フェノールと反応させることによって調製することができる。適したフェノールおよび置換フェノールには、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−ブチルフェノール、t−ブチルカテコール、レソルシノール、ビスフェノールA、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、イソアミルサリチレート、ベンジルサリチレート、メチルサリチレート、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどがある。適したアルデヒドおよびアルデヒド前駆体には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサンなどがある。1つより多いアルデヒドおよび/またはフェノールがノボラックの調製において用いられてもよい。2つ以上の異なったノボラックのブレンドもまた、用いられてもよい。従来のプラスチック成形のために使用できるいずれの熱可塑性ノボラックも適しているが、500〜1500の数平均分子量が、最小のそりおよび最適な機械的性質を提供する。
【0017】
ノボラック樹脂は、組成物の全重量を基準にして約1〜約20重量パーセント、または好ましくは約5〜約15重量パーセントにおいて存在する。
【0018】
強化剤は、ポリアミド樹脂を強化するために適したいずれかの強化剤である。適した強化剤の例は、米国特許公報(特許文献3)(その内容を参照により本願明細書に援用するものとする)に示されている。好ましい強化剤はカルボキシル置換ポリオレフィンであり、それらは、結合したカルボン酸部分をポリオレフィン主鎖自体にかまたは側鎖に有するポリオレフィンである。「カルボン酸部分」とは、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステル、酸無水物、モノカルボン酸およびエステル、および塩の1つまたは複数などのカルボキシル基を意味する。カルボン酸塩は、中和されたカルボン酸である。有用な強化剤は、ジカルボキシル置換ポリオレフィンであり、それらは、結合したジカルボン部分をポリオレフィン主鎖自体にかまたは側鎖に有するポリオレフィンである。「ジカルボン部分」とは、ジカルボン酸、ジエステル、ジカルボン酸モノエステル、および酸無水物などの1つまたは複数などのジカルボン酸基を意味する。
【0019】
強化剤は好ましくは、エチレン/α−オレフィンポリオレフィンベースである。1,4−ヘキサジエンまたはジシクロペンタジエンなどのジエンモノマーが任意選択的に、ポリオレフィンの調製に用いられてもよい。好ましいポリオレフィンは、1,4−ヘキサジエンおよび/またはジシクロペンタジエンおよびエチレン/プロピレンコポリマーから製造されたエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ポリマーである。カルボキシル部分は、不飽和カルボキシル含有モノマーと共重合することによって、ポリオレフィンを調製する間に導入されてもよい。好ましいのは、エチレンと無水マレイン酸モノエチルエステルとのコポリマーである。カルボキシル部分はまた、ポリオレフィンを酸、エステル、二酸、ジエステル、酸エステル、または無水物など、カルボキシル部分を含有する不飽和化合物でグラフトすることによって導入されてもよい。好ましいグラフト剤は無水マレイン酸である。好ましい強化剤は、無水マレイン酸でグラフトされたEPDMポリマーまたはエチレン/プロピレンコポリマーである。ポリエチレン、ポリプロピレン、およびEPDMポリマーなどのポリオレフィンと、カルボキシル部分を含有する不飽和化合物でグラフトされたポリオレフィンとのブレンドを強化剤として用いてもよい。他の好ましい強化剤はイオノマーであり、それらは、亜鉛、マンガン、マグネシウムなどの2価の金属カチオンで部分中和されたカルボキシル基含有ポリマーである。好ましいイオノマーは、亜鉛で部分中和されたエチレン/アクリル酸およびエチレン/メタクリル酸コポリマーである。イオノマーは、本願特許出願人から商品名サーリン(Surlyns)(登録商標)として市販されている。
【0020】
強化剤は、組成物の全重量を基準にして約1〜約30重量パーセント、または好ましくは約4〜約30重量パーセントにおいて存在する。
【0021】
本発明において用いられるポリアミド組成物は、任意選択的に、前記組成物の全重量を基準にしてウォラストナイト、タルク、マイカ、か焼クレー、およびガラスビードなどの無機充填剤を約40重量パーセントまでさらに含んでもよい。無機充填剤は好ましくは、本発明の方法を用いてコーティングされた車体部品が、非常に似たまたは同一の色調、光沢、車のコーティングされた金属部品に対する短波値および長波値を有するように選択される。コーティングされた金属部品が車両上に存在しないとき、無機充填剤は好ましくは、車体部品が、適切な規格および要件を満たす表面の外観を有するように選択される。使用されるとき、無機充填剤は好ましくは、組成物の全重量を基準にして約5〜約40重量パーセント、またはより好ましくは約5〜約30重量パーセントにおいて存在する。
【0022】
本発明において用いられるポリアミド組成物は、任意選択的に、核剤を5重量パーセントまでさらに含んでもよい。適した核剤の例は微粉砕タルクである。使用されるとき、核剤は好ましくは、ポリアミド組成物の全重量を基準にして約0.05〜約5重量パーセント、またはより好ましくは約0.05〜約1重量パーセントにおいて存在する。
【0023】
本発明において用いられるポリアミド組成物は、任意選択的に、酸化防止剤などの熱安定剤、光安定剤、潤滑剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料などの添加剤をさらに含んでもよい。使用されるとき、添加剤は好ましくは、前記組成物の全重量を基準にして約0.05〜約5重量パーセントにおいて存在する。
【0024】
本発明において用いられるポリアミド組成物は溶融ブレンドされ、いずれの周知の製造方法によって製造されてもよい。構成材料は、樹脂組成物を提供するために、一軸または二軸スクリュー押出機、ブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサなどの溶融ミキサを用いて十分に混合可能である。あるいは、材料の一部が溶融ミキサ中で混合されてもよく、次いで材料の残りが添加されてさらに溶融混合されてもよい。
【0025】
ポリアミド組成物をいずれかの適した溶融加工技術を用いてコーティングされる、車両外装部品などの支持体に形成してもよい。射出成形、押出、ブロー成形、射出ブロー成形および熱成形などの当業界に公知の一般に使用される溶融成形方法が好ましい。
【0026】
ポリアミド組成物を含む車両外装部品は、良好な靭性、良好な寸法安定性、高い表面光沢、良好なコーティング接着性、低い線熱膨張率、および電着耐腐蝕性コーティング(Eコート)を硬化するために典型的に用いられるような高温に暴露した時の良好な耐変形性の組合せを有する。
【0027】
当業者によって理解されるように、車両外装部品は、任意選択的に、静電補助コーティング方法のために十分な導電率を有する部品を提供する導電性プライマーでコーティングされてもよい。部品は、任意選択的に亜鉛めっきおよび非亜鉛めっき鋼、アルミニウムおよびアルミニウム合金、およびマグネシウムおよびマグネシウム合金などの金属など、いずれかの適切な材料から作製された他の外装部品の存在下で車両のフレームに取り付けられてもよい。オフラインまたはインラインコーティング方法の一部であってもよい本発明の1つの実施態様において、任意選択的に車両フレームに取り付けられた、本発明において用いられるポリアミド組成物を含む少なくとも1つの部分は、外装部品の少なくとも可視表面に好ましくは噴霧方法によって適用された、より好ましくは静電補助噴霧方法によって適用された少なくとも1つのコーティング層で処理される。複数のコーティング層から形成された従来のマルチコート構造物の例には、プライマーサーフェーサー/トップコート;プライマーサーフェーサー/ベースコート/クリアコート;ベースコート/クリアコート;およびプライマーサーフェーサー代用層/ベースコート/クリアコートなどがある。
【0028】
プライマーサーフェーサーまたはプライマーサーフェーサー代用コーティングは、部品の表面を平滑にし、欠陥を除去し、ストーンチップ保護を提供するように設計される。それらはまた、後続の装飾用および保護トップコーティングのために表面を準備する。ベースコートは典型的に、顔料などの着色剤を含有し、要素に対して保護を提供する。マルチコート構造物は、高い耐引っ掻き性を提供することができる透明な封止用コートで表面の一部または全てにわたってさらにコーティングされてもよい。
【0029】
コーティング層は、当業者に公知の従来のコーティング剤を用いて適用されてもよい。コーティング剤は、粉末コーティング剤であるか、または、例えば、水および/または有機溶剤を希釈剤として含有する液体コーティング剤であってもよい。コーティング剤は、単一または多成分コーティング剤であってもよい。それらは、物理的にまたは酸化によってもしくは化学架橋剤を用いることによって乾燥されてもよい。プライマーサーフェーサートップコート、クリアコート、および封止用コートは好ましくは、熱的に(例えば対流および/または赤外線によって)および/または紫外線などの放射線によって硬化されうるシステムを用いて化学架橋される。
【0030】
1つより多いコーティング層が適用される場合、各コーティング層は、後続の層を適用する前に別々に硬化される必要はない。当業者によって理解されるように、コーティング層は湿潤層に適用されてもよく、および2つ以上の層が一緒に硬化されてもよい。例えば、ベースコートとクリアコートの場合、ベースコートを適用した後、任意選択的に短い蒸発分離段階の後、クリアコートをベースコートと一緒に適用し、硬化してもよい。
【0031】
オンラインコーティング方法の一部であってもよい本発明の方法の別の実施態様において、上述のように1つまたは複数の付加的なコーティング層を適用する前に、任意選択的に車両のフレームに取り付けられる本発明において用いられるポリアミド組成物を含む少なくとも1つの車両外装部品および少なくとも1つの金属の車両外装部品が、当業者に公知の従来の電着方法において耐腐蝕性電着プライマーコーティング(「Eコート」と称される)で処理される。適したコーティング剤は、約10〜約30重量パーセントの固形分を有する水系組成物を包含する。
【0032】
適したコーティング剤は当業者に公知のアノード電着組成物であってもよい。アノードコーティング組成物において用いられるバインダーには、ポリエステル、エポキシ樹脂エステル、(メタ)アクリルコポリマー樹脂、約300〜約10,000の重量平均分子量および約35〜約300mg KOH/gの酸値に相当するカルボキシル基含有量を有するマレイネート油またはポリブタジエン油などが挙げられるがそれらに限定されない。カルボキシル基の少なくとも一部は好ましくは、塩基による中和によってカルボキシレート基に変換される。バインダーは自己架橋性であってもよく、または別個の架橋剤で架橋されてもよい。
【0033】
また、適したコーティング剤がカソード電着組成物であってもよい。好ましいカソード電着組成物は、カチオン基または塩基性基など、カチオン基に変換されうる基を有するバインダーを含有する。適した基の例には、アミノ;第四アンモニウムなどのアンモニウム;ホスホニウム;および/またはスルホニウム基などが挙げられる。窒素含有塩基性基が好ましく、四級化された形態で存在してもよく、またはギ酸、乳酸、メタンスルホン酸あるいは酢酸などの有機モノカルボン酸などの従来の中和剤でカチオン基に変換されてもよい。好ましいのは、約20〜約200mg KOH/gのアミン値に相当する第一、第二、および/または第三アミノ基を有する塩基性樹脂である。バインダーの重量平均分子量は、約300〜約10,000であるのが好ましい。適したバインダーの例には、アミノ(メタ)アクリル樹脂、アミノエポキシ樹脂、末端二重結合を有するアミノエポキシ樹脂、第一ヒドロキシル基を有するアミノエポキシ樹脂、アミノポリウレタン樹脂、アミノ基含有ポリブタジエン樹脂、または改質エポキシ樹脂/二酸化炭素アミン反応生成物などがある。バインダーは自己架橋性であってもよく、または混合物中に存在する別個の架橋剤で架橋されてもよい。適した架橋剤の例には、アミノプラスチック樹脂、ブロックトポリイソシアネート、末端二重結合を有する架橋剤、ポリエポキシ化合物、またはエステル交換可能な基を含有する架橋剤などがある。
【0034】
電着コーティング組成物は、顔料、充填剤、および/または従来のコーティング添加剤をさらに含有してもよい。適した顔料の例には、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、カオリン、タルクまたは二酸化ケイ素などの従来の無機および/または有機有色顔料および/または充填剤がある。添加剤の例には、湿潤剤、中和剤、均染剤、触媒、腐蝕防止剤、クレーター防止剤、消泡剤、および溶剤などがある。
【0035】
当業者に公知の電着コーティング方法を用いてもよい。電着電圧は約200〜約500Vであってもよい。コーティングを堆積後、支持体は、当業者に公知の方法で、例えば、水で洗浄することによって一切の過剰なまたは接着性であるが堆積されていないコーティングを清浄することができる。次にコーティングされた車両外装部品は電着コーティングを架橋するために約200〜約220℃までの炉温度において焼成される。
【実施例】
【0036】
実施例1〜3および比較例1および2に用いられた組成物は、8バレルベルストルフ(Berstorff)40mm二軸押出機を用いて表1に示された成分を配合することによって調製された。成分を押出機の後部に供給した。バレル温度は約280℃に設定され、約285〜290℃の溶融温度をもたらす。押出機を出たとき、溶融ポリマーは水槽中で急冷され、ペレット化される。得られた組成物を用いて試験用の試験片を成形した。
【0037】
表1に用いられた成分は以下の通りである。
ポリアミド66:ギ酸で測定した時に49の相対粘度を有するポリアミド6,6
ノボラック樹脂:スケネクタディ・インターナショナル社(Schenectady International, Inc.)によって供給されたHRJ12700CF
強化剤A:エチレン−オクテンコポリマー
強化剤B:0.9重量パーセントの無水マレイン酸でグラフトされたエチレン−プロピレンコポリマー
クロダミド(Crodamide)212:英国、イーストヨークシャーのクロダ・ユニバーサル社(Croda Universal,Ltd.,East Yorkshire,U.K.)によって供給されたステアリルエルカアミド
ステアミック(Steamic)OOS:オーストリア、ガンツのルゼナック・ナインチュ(Luzenac Naintsch,Ganz,Austria)によって供給されたタルク
【0038】
(機械的性質)
組成物の引張性質をISO157−1/2によって測定した。ノッチ付シャルピー衝撃強さをISO179/1eAによって測定した。ノッチ無しシャルピー衝撃強さをISO179/1eUによって測定した。結果を表1に示す。
【0039】
(塗装方法)
130×130×3mmの寸法の試験片を、水系2K導電性プライマー(アクゾ・ノーベル(Akzo Nobel)製の製品番号01−77037/129495 3941020/180A)でコーティングし、30分間80℃において乾燥させた。試験片を30分間190℃において焼成して代表的なeコート焼成温度をシミュレートした。引き続いて、水系プライマーサーフェーサー(アクゾ・ノーベル(AkzoNobel)製のチタン銀VL−207−7073)を適用し、試験片を10分間80℃において、次いで20分間160℃において乾燥させた。試験片を室温まで冷却し、水系ベースコート(BASF製のチタン銀FW61−911M−0950)をプライマーサーフェーサー層上に適用した。ベースコートを10分間80℃において乾燥させ、次いで室温に冷却した。次に溶剤系2Kクリアコート(デュポン・パフォーマンス・コーティング(DuPont Performance Coatings,GmbH Co.KG)、ドイツ、ヴッパータル(Wuppertal,Germany)の2K Clear 40496.0)を適用し、20分間145℃において乾燥させた。全てのコーティング層を手動で空気圧で適用した。
【0040】
(塗料接着性試験)
上述のように塗装された試験片の塗料接着性をISO2409によるクロスカット試験を用いて測定した。結果を表1に示す。「0」の結果は、塗料が試験中に表面からとれず、塗料接着性が良好であることを示す。
【0041】
(ヒートサグ試験)
耐ヒートサグ性は、Eコーティング工程において使用するための組成物の適性を評価し、材料が30分間200℃の代表的なEコート乾燥温度に耐えることができる能力を測定する試験である。組成物を169×26×2mmの寸法の試験片に成形する。試験片を、バーの97mm以外を全て支持する金属取付具内に置き、97mm部分が支持されずに垂下状態にされるようにする。バーの支持されない端部から取付具の底部までの距離を測定する。取付具を30分間200℃の炉内に置き、その後、それを炉から取り出し、約30〜45分にわたって室温に冷却させた。室温に達すると、バーの支持されない端部から取付具の底部までの距離を再び測定し、結果を加熱前の初期距離から差し引いた。結果は「ヒートサグ」として定義される。結果を表1に示す。約15mm以下のヒートサグが多くの適用に適している。
【0042】
(塗装表面の態様)
塗装表面の態様を、ウェイブスキャンDOI(画像の明瞭さ)測定値を用いて決定する。平行に配置された3つのレーザー光線を、組成物から成形されたプラックの表面に向かって60°の角度に向け、反射された光を、表面にわたって20cmまで移動する測定用ヘッドによって検出し、データポイントを0.027mmごとに取る。DOI(画像の明瞭さ)値および長波および短波値を計算する。結果は、表面の外観の質を示す。DOIの値は0〜100の範囲であり、ここでは100が最良であり、少なくとも85の値が許容範囲であると思われる。結果を表1に示す。
【0043】
(吸湿)
ISO 1110に記載されているように、吸湿を70℃および62%相対湿度において130×130×3mm試験片で測定した。試験片の初期重量を基準にして吸湿のパーセントとして結果を表1に示す。
【0044】
実施例1と比較例1との比較は、ノボラック樹脂の存在が吸湿の減少した支持体をもたらすことを示す。実施例2と比較例2との比較は、強化剤の存在が、衝撃強さの改良された支持体をもたらすことを示す。
【0045】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視ポリマー表面を有する、少なくとも1つのポリマー部品から集成された支持体をコーティングするための方法であって、前記支持体の前記可視表面上に少なくとも1つのコーティングを適用し、硬化させる連続工程を含み、前記支持体の前記可視表面を構成する前記ポリマー部品の少なくとも一部が、
a.約40〜約98重量パーセントのポリアミドと、
b.約1〜約20重量パーセントのノボラック樹脂と、
c.約1〜約30重量パーセントの強化剤と、
d.0〜約40重量パーセント無機充填剤と、を含むポリアミド組成物を含み、
重量パーセンテージが前記組成物の全重量を基準にしていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ポリアミド組成物が核剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強化剤が、無水マレイン酸でグラフトされたEPDMポリオレフィンまたは無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/プロピレンコポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリアミドがポリアミド6,6であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコーティングが、プライマーサーフェーサーおよびトップコート;プライマーサーフェーサー、ベースコートおよびクリアコート;ベースコートおよびクリアコート;またはプライマーサーフェーサー代用層、ベースコートおよびクリアコートを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法によってコーティングされることを特徴とする物品。
【請求項7】
フェンダー、フード、トランクドア、リフトアップテールゲート、ドア、サイドパネル、保護モールディング、スポイラー、ハブキャップ、ドアシル、ボディシル、ドアハンドル、ラジエーターグリル、タンクフラップ、ミラーハウジング、またはバンパーの形態であることを特徴とする請求項6に記載の物品。
【請求項8】
金属およびプラスチックの可視表面を有する、金属部品と少なくとも1つのポリマー部品とから集成された支持体をコーティングするための方法であって、(1)前記支持体を電着コーティングし、堆積されていない電着コーティング剤を前記支持体から除去して堆積された電着コーティングを熱架橋し、それによって電着コーティングプライマーを金属表面上に形成する工程と、(2)前記支持体の前記可視表面上に少なくとも1つのコーティングを適用し、硬化させる工程との連続工程を含み、前記支持体の前記可視表面を構成する前記ポリマー部品の少なくとも一部が、
a.約40〜約98重量パーセントのポリアミドと、
b.約1〜約20重量パーセントのノボラック樹脂と、
c.約1〜約30重量パーセントの強化剤と、
d.0〜約40重量パーセント無機充填剤とを含むポリアミド組成物を含み、
重量パーセンテージが前記組成物の全重量を基準にしていることを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記ポリアミド組成物が核剤をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記強化剤が、無水マレイン酸でグラフトされたEPDMポリオレフィンまたは無水マレイン酸でグラフトされたエチレン/プロピレンコポリマーを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリアミドがポリアミド6,6であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
(2)の前記少なくとも1つのコーティングが、プライマーサーフェーサーおよびトップコート;プライマーサーフェーサー、ベースコートおよびクリアコート;ベースコートおよびクリアコート;およびプライマーサーフェーサー代用層、ベースコートおよびクリアコートを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法によってコーティングされることを特徴とする物品。
【請求項14】
フェンダー、フード、トランクドア、リフトアップテールゲート、ドア、サイドパネル、保護モールディング、スポイラー、ハブキャップ、ボディシル、ドアシル、ドアハンドル、ラジエーターグリル、タンクフラップ、ミラーハウジング、またはバンパーの形態であることを特徴とする請求項13に記載の物品。

【公表番号】特表2007−531619(P2007−531619A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506455(P2007−506455)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/010457
【国際公開番号】WO2005/113695
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】