説明

ポリアミド樹脂発泡体の製造方法およびポリアミド樹脂発泡体

【課題】ポリアミド樹脂組成物と発泡剤を混合し、溶融成形する事を特徴とする製造方法において、軽量化しつつ、優れた機械強度を示すポリアミド樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】(A1)PA三元共重合体を含むことを特徴とする(A)ポリアミド樹脂組成物と(B)発泡剤を混合し、溶融成形することを特徴とするポリアミド樹脂発泡体の製造方法であって、(A)ポリアミド樹脂組成物のポリマー部分100重量部に対し、(B)発泡剤0.2〜2重量部を混合することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物と発泡剤を混合し、溶融成形する事によって得られるポリアミド樹脂発泡体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡成形は、軽量化技術としては一般的で、汎用プラスチックであるポリプロピレン(以降、PPと称す)やポリエチレン(以降、PE)、ポリスチレン(以降、PS)から得られる発泡製品の工法として活用されている。汎用プラスチックよりも高耐熱特性を示すエンジニアリングプラスチックであるポリアミド(以降、PA)樹脂では、特許文献1にあるようにPA66樹脂を用いて実施された例も過去にある。しかし特許文献1によると、PA66樹脂に特定の化合物を特定量含有しないと、実用化レベルの発泡体を得る事ができないとある。つまり、発泡し軽量化できても、高い機械物性を得る事ができないといえる。またPA66樹脂は、融点(以降、Tmと称す)と結晶化温度(以降、Tcと称す)の差が小さいので固化に要する時間が他のPAに比べ短くなり、発泡する前に固化が完了し易い。つまりPA66樹脂は、発泡成形に適していなかった。PA66樹脂よりもTmとTcの差が大きいPA6樹脂を用いても、本発明者の検討によれば、発泡し軽量化できても満足できる機械強度を有する発泡体を得る事ができないものであった。
【特許文献1】特開2001−234058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、PA樹脂組成物に発泡剤を混合して得られる発泡体の製造方法において、前記PA樹脂組成物が発泡成形に適したPA樹脂と、前記発泡剤をブレンドし、溶融成形する事により、軽量化しつつ機械物性にすぐれた発泡体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明は、(A1)PA三元共重合体を含むことを特徴とする(A)ポリアミド樹脂組成物と(B)発泡剤を混合することで、溶融成形した際に、適度な発泡性を有しており、軽量化と優れた機械物性をもつポリアミド樹脂発泡体の製造方法を採用するものである。
【0005】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.(A1)ポリアミド三元共重合体を含む(A)ポリアミド樹脂組成物と(B)発泡剤含む(D)マスターバッチとを混合し、溶融成形することを特徴とするポリアミド樹脂発泡体の製造方法。
2.上記1記載(A)ポリアミド樹脂組成物のポリマー成分100重量部に対し、(B)発泡剤0.2〜2重量部を混合する事を特徴とする上記1記載のポリアミド樹脂発泡体の製造方法。
3.上記1記載の(A1)ポリアミド三元共重合体が、(a1)ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸から誘導されるアミド単位70〜85重量%、(a2)ジアミン及び芳香族ジカルボン酸から誘導されたアミド単位5〜20重量%、および(a3)ラクタムから誘導されるアミド単位1〜10重量%を含むポリアミド三元共重合体であり、かつ(a2)ジアミン及び芳香族ジカルボン酸から誘導されたアミド単位と(a3)ラクタムから誘導されるアミド単位との重量比(a2)/(a3)が1以上である上記1または2記載のポリアミド樹脂発泡体の製造方法。
4.上記1または記載の(B)発泡剤の分解温度が200〜250℃であることを特徴とする上記1〜3のいずれか記載のポリアミド樹脂発泡体の製造方法。
5.(A1)ポリアミド三元共重合体を含むポリアミド樹脂組成物(A)を発泡させたポリアミド樹脂発泡体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、三元共重合体を含むPA樹脂組成物と発泡剤とを溶融成形し、更に成形条件として未発泡体として完全に充填できる樹脂量よりも少ない樹脂量にする事で、軽量化しつつ機械物性に優れるPA樹脂発泡体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0008】
本発明における(A)PA樹脂組成物は(A1)PA三元共重合体が含まれる事を特徴とし、(A1)PA三元共重合体全体を100重量%とし、各繰返し構造単位の共重合割合が(a1)ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸から誘導されるアミド単位70〜85重量%、(a2)ジアミン及び芳香族ジカルボン酸から誘導されたアミド単位5〜20重量%、(a3)ラクタムから誘導されるアミド単位1〜14重量%であり、特に(a3)は2〜12重量%が好ましく、また(a2)/(a3)の重量比が1以上であることを特徴とする。これらの重量比は共重合体を製造する際の原料の割合を調整することにより、達成される。
【0009】
(a1)ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸から誘導されるアミド単位の重量比が70重量%以上とすることで、発泡体としたときの機械特性を良好に保つことができるので好ましい。また、85重量%以下とすることで、発泡体としたときの外観に優れたものが得られるので好ましい。また(a2)ジアミン及び芳香族ジカルボン酸から誘導されたアミド単位を5重量%以上とすることで、発泡体としたときの外観に優れたものが得られるので好ましい。また、20重量%未満とすることで、発泡体としたときの機械特性を良好に保つことができるので好ましい。また(a3)ラクタムから誘導されるアミド単位を1重量%以上とすることで、固化速度を適度な速度とすることができるので、ガラス繊維浮きなどを防ぐことができ、発泡体としたときの外観に優れたものが得られるので好ましい。(a3)ラクタムから誘導されるアミド単位を10重量%以下とすることや(a2)/(a3)の重量比を1以上とすることで、到達結晶化度が低くなり過ぎることがないので、発泡体としたときの機械特性を良好に保つことができるので好ましい。
【0010】
なお、(a2)/(a3)の重量比の上限については特に制限はないが、本発明においては靭性の観点から4以下が好ましい。また、(a3)単位を持たず、(a1)単位と(a2)単位の二元共重合ポリアミド樹脂では結晶化温度(Tc)が高い為、満足できる発泡体を得ることができない。
【0011】
本発明において、(a1)ジアミンおよび脂肪族ジカルボン酸から誘導されるアミド単位としては、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸、セバシン酸などから誘導されるアミド単位が好ましく、(a2)ジアミンおよび芳香族ジカルボン酸から誘導されるアミド単位としては、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸、テレフタル酸などから誘導されるアミド単位が好ましく、(a3)ラクタムから誘導されるアミド単位としては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等から誘導されるアミド単位が好ましく用いられる。
【0012】
上記(A1)PA三元共重合体としては、ヘキサメチレンアジパミド(以降、PA66)/ヘキサメチレンイソフタラミド(以降、6I)/カプロアミド(以降、PA6)、PA66/ヘキサメチレンテレフタラミド(以降、6T)/PA6、ヘキサメチレンセバカミド(以降、PA610)/6I/PA6、PA610/6T/PA6、ヘキサメチレンドデカミド(以降、PA612)/6I/PA6、PA612/6T/PA6、PA66/6I/ラウロアミド(以降、PA12)、PA66/6T/PA12等が挙げられる。
【0013】
本発明では、(A)PA樹脂組成物に(A)PA三元共重合体を含有させることで、発泡の成長を促進させることができる。その分子量は特に限定がなく公知の分子量範囲であればよいが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として1.5〜3.0の範囲のものが好ましく、特に1.8〜2.3の範囲のものが好ましい。
【0014】
本発明で用いられる(A)PA樹脂組成物は、高温時の機械特性を向上させるために、本発明の効果を損なわない程度に(A2)他のPA樹脂を併用する事ができる。併用できるPA樹脂に特に限定はないものの、PA66樹脂が好ましい。(A2)他のPA樹脂の配合量としては、(A1)PA三元共重合体100重量部に対して、30〜300重量部が好ましい。更に30〜100重量部が好ましい。配合量を30重量部以上とすることで、発泡体の高温時の機械物性を優れた者にすることができるので好ましい。一方、配合量を300重量部以下とすることで、満足できる発泡体を得ることができる。
【0015】
本発明で用いる(B)発泡剤は、(A)PA樹脂組成物を発泡させることができればよい。発泡剤の配合量としては、(A)PA樹脂組成物のポリマー成分100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましい。更に0.5〜1.5重量部が好ましい。配合量が0.1重量部以上とすることで、適度な発泡が形成でき、軽量化できる。5重量部以下とすることで、優れた機械物性を示す発泡体を得る事ができる。
【0016】
また本発明で使用する(B)発泡剤としては、(B)発泡剤の分解温度(以降、Tdとする)が200〜250℃であることが好ましく、210〜230℃が更に好ましい。Tdが200℃以下の場合は、発泡させる為に必要なガス量以上のガスが発生してしまい、得られる発泡体において満足できる外観を得る事ができない。一方Tdが250℃以上の場合は、発泡させる為に必要なガス量が発生しない為、発泡体を得る事ができない。
【0017】
本発明で使用できる(B)発泡剤は、例えば炭酸アンモニウム及び重炭酸ソーダ等の無機化合物、並びにアゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物及びアジド化合物等の有機化合物等が使用できる。上記アゾ化合物としてはアゾジカルボンアミド(以降、ADCAと称す)、2,2−アゾイチブチロニトリル、アゾヘキサヒドロベンゾニトリル、及びジアゾアミノベンゼン等が例示でき、中でもADCAが好まれて活用されている。上記スルホヒドラジド化合物としてはベンゼンスルホヒドラジド、ベンゼン−1,3−ジスルホヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3−ジスルホヒドラジド及びジフェニルオキシド−4,4−ジスルホヒドラジド−等が例示でき、上記ニトロソ化合物としてはN,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)及びN,N−ジメチルテレフタレート等が例示でき、上記アジド化合物としてはテレフタルアジド及びP−第三ブチルベンズアジド等が例示できる。
【0018】
これらの発泡剤を分解して得られる発生ガスとしては、窒素ガス(N)、二酸化炭素ガス(CO)、一酸化炭素(CO)、アンモニア(NH)があり、中でも発泡性及び環境面において最も良好なNが一般的に活用されている。
【0019】
また(B)発泡剤は、(A)ポリアミド樹脂組成物中に均一に分散させる為に、(B)発泡剤と(B)発泡剤の分解温度よりも低い融点である(C)熱可塑性樹脂をベース材からなる(D)発泡剤マスターバッチとして、(A)ポリアミド樹脂組成物と混合して使用できる。ベース材となる(C)熱可塑性樹脂は、(B)発泡剤のTdよりも低い融点であれば特に制限なく使用でき、例えばポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。(B)発泡剤と(C)熱可塑性樹脂の配合比率としては、(C)熱可塑性樹脂100重量部に対し、発泡剤11〜100重量部が好ましい。11重量部を下回ると、(A)ポリアミド樹脂組成物に混合する(D)マスターバッチ量が多くなるため初期機械物性が低くなってしまう。一方100重量部を上回ると、発泡剤の分散性の問題から、マスターバッチ化が困難である。
【0020】
本発明で用いられる(A)PA樹脂組成物は、機械物性を向上させるために(E)強化材が好ましく用いられる。(E)強化材としては、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はない。ガラス繊維としては、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被膜あるいは集束されていてもよい。なお、本発明に使用できる上記の強化材はその表面をシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などのカップリング剤その他の表面処理剤および膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。ガラス繊維以外の(E)強化材としては、板状、棒状、球状などの形状を持った長径と短径の比率であるアスペクト比が5以下のものが挙げられ、このような(E)強化材としては、例えば、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、アスベスト、アルミノシリケート、珪酸カルシウムなどの非膨潤性珪酸塩、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドロマイト、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素などが挙げられる。こられは中空であってもよく、さらにはこれら強化材を2種類以上用いることも可能である。また、これら(E)強化材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で処理して使用してもよい。
【0021】
これらガラス繊維以外の(E)強化材の中でも、剛性、表面外観、寸法安定性に優れる点でガラスビーズ、タルク、マイカ、ワラステナイト、カオリンが好ましい。平均粒径は0.5〜10μmであることが好ましい。平均粒径が0.5μm未満では凝集が起こりやすく剛性に劣る場合がある。また平均粒径が10μmを超えると剛性、表面外観に劣る場合がある。なお、平均粒径は、レーザー回折法により測定した粒径の50%積算値として求めることができる。
【0022】
また(E)強化材の配合量は、本発明の効果を損なわない程度の量として、(A)PA樹脂組成物ポリマー成分を100重量部として40〜250重量部が好ましい。更に60〜125重量部が好ましい。40重量部を下回ると、射出成形した際に固化に要する時間が長くなるので、成形が困難になる。一方、250重量部を上回ると、満足できる発泡体を得る事ができない。
【0023】
また、本発明で用いられる(A)PA樹脂組成物には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物が好ましく用いられる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの銅化合物などが挙げられる。中でも1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第一銅、ヨウ化第一銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、(A)PA樹脂組成物全体100重量部として0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が2重量部よりも多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになり、0.01重量部より少ないと、長期耐熱性を向上が十分ではない。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリ化合物を添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化リチウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0024】
本発明における(A)PA樹脂組成物中には本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体を添加することができる。
【0025】
本発明の(A)PA樹脂組成物を得る方法としては、特に制限はないが、溶融混練において、たとえば2軸押出機で溶融混練する場合に(A1)PA三元共重合体と、(A2)他のPA樹脂と、(E)強化材と、銅化合物とをあらかじめブレンダーを用いてブレンドし、メインフィーダーから供給する方法。(A1)PA三元共重合体と、(A2)他のPA樹脂と、銅化合物とをあらかじめブレンダーを用いてブレンドし、メインフィーダーから供給し、(E)強化材を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する方法が挙げられ、サイドフィードする際のサイドフィード位置としては、元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から1/5〜4/5の位置で行うことが好ましい。また事前に(A1)三元共重合体と、(A2)他のPA樹脂と、銅化合物とを溶融混練した後、(E)強化剤と溶融混練する方法なども挙げられる。
【0026】
また、上記方法で得られる(A)PA樹脂組成物と(B)発泡剤を混合する方法としては、特に制限はないが、(A)PA樹脂組成物と前記(D)発泡剤マスターバッチとをブレンダーを用いてブレンドし、成形機に供給する方法。(A)PA樹脂組成物と(B)発泡剤とをブレンダーを用いてブレンドし、成形機に供給する方法が挙げられる。
【0027】
本発明の発泡体は公知の方法で成形でき、その成形方法に関しても制限はなく射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、押出成形、吹込成形、プレス成形等を利用することができる。中でも射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形から選ばれる一方法を採用することが生産性に優れ工業的に本発明を実施する上で好ましい。特に射出成形を用いる場合は、通常ショートショット法を採用し、スプルー、ランナーを含むキャビティの50〜95%を射出する事が好ましい。70〜90%の樹脂量が更に好ましい。キャビティの50%を下回ると、発泡体がショートショットになってしまい、満足できる発泡体を得る事ができない。キャビティの95%上回ると、軽量化する事ができない。
【0028】
本発明のPA樹脂発泡体の製造方法は、軽量化しつつ機械物性に優れる発泡体を得られる事から、この製造方法を活かしてシフトレバーベースやその他シフトレバーを構成する部品、ウィンドレギュレータードアノブスイッチ類、レバーコントローラー、ドアミラーやルームミラー、バックミラー等を車体に保持する車両用鏡体保持部品、ドアーハンドル、サンバイザーアーム、アシストグリップ、レバースイッチ類、シフトノブ、シリンダーヘッドカバー、エンジン遮音カバー、タイミングベルトカバーなどのカバー類、各種スイッチやセンサーのケース類、ホイールキャップ、フューエルフィラーキャップ、チャイルドシート部品などの自動車関連部品や、自転車部品、車椅子およびベビーカー部品、椅子脚、肘掛け、手摺り、窓枠、ドアノブ、床材およびその支柱、ボルトやねじ等の生活関連部品や家具建材関連部品、パソコンの筐体など電気・電子機器関連における用途などに好適に用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げてさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。実施例および比較例に用いた測定方法を以下に示す。
【0030】
(1)比重
ISO1183に従って、下記試験片を用い、測定した。
試験片:ISO1874−2に準じた試験片の平行部から10×10×4mmtに切削。
【0031】
(2)軽量化率
(1)で得られたそれぞれの比重と以下の算出式より、軽量化率を求めた。
【0032】
軽量化率=(未発泡体の比重−発泡体の比重)/未発泡体の比重×100(%)
(3)材料強度
以下の標準方法に従って測定した。
引張強度(23℃、絶乾):ISO 527−1、ISO 527−2
曲げ強度、曲げ弾性率(23℃、絶乾):ISO 178。
【0033】
参考例1 (A1)PA三元共重合体の製造
実施例で用いた(A1)PA三元共重合体は以下の方法で重合した。
(a1)ヘキサメチレンアジパミド単位81重量%、(a2)ヘキサメチレンイソフタラミド単位15重量%および(a3)ε−カプロアミド単位4重量%と、6.1×10−5mol/gの安息香酸((株)伏見製作所製)を投入し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内をNで置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cmに調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥した。得られたペレットの硫酸相対粘度を測定した結果、その値は2.3であった。
【0034】
参考例2 PAニ元共重合体の製造
比較例で用いたPAニ元共重合体は以下の方法で重合した。
【0035】
ヘキサメチレンアジパミド単位81重量%、(a2)ヘキサメチレンイソフタラミド単位19重量%と、6.1×10−5mol/gの安息香酸((株)伏見製作所製)を投入し、投入した全量と同量の純水を加え、重合缶内をNで置換した後、攪拌しながら加熱を開始し、缶内圧力を最大20kg/cmに調整しながら最終到達温度を270℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥した。得られたペレットの硫酸相対粘度を測定した結果、その値は2.7であった。
【0036】
参考例3 PA66樹脂の製造
比較例で用いたPA66樹脂は以下の方法で重合した。ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸1500g、イオン交換水375gを秤量し、重合缶に仕込み、常圧、窒素フロー下で攪拌しながら最終到達温度260℃とし反応させた。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。得られたペレットは95℃熱水中で20時間処理し、未反応モノマーや低重合物を抽出除去した。抽出後のペレットは80℃で50時間以上乾燥した。得られたペレットの硫酸相対粘度を測定した結果、その値は2.7であった。
【0037】
参考例4 成形品の作成
実施例および比較例で使用した比重、引張強さ、曲げ強度、曲げ弾性率の試験用成形品は次の方法で作成した。ISO1874−2に準じ、日精樹脂工業(株)製の射出成形機NEX1000により、シリンダ温度290℃、金型表面温度80℃、スクリュー回転数120rpm、射出/冷却=20/20秒を固定条件とし、前記ショートショット法としてキャビティの70%に(A)ポリアミド樹脂組成物と(B)発泡剤を含む(D)発泡剤マスターバッチの混合物を射出成形した。
【0038】
参考例5 硫酸相対粘度測定方法
JIS−K6810に従って98%硫酸での相対粘度を測定した。
【0039】
参考例6 融点測定方法
示唆走査熱量分析(DSC)法を用いて、昇温速度20℃/minで、融点+30℃の温度まで昇温することにより、昇温時に得られる結晶化温度を測定した。
【0040】
参考例7 結晶化温度測定方法
示唆走査熱量分析(DSC)法を用いて、昇温速度20℃/minで、融点+30℃の温度まで昇温し、昇温完了後5min保持した後、降温速度20℃/minで降温することにより、降温時に得られる結晶化温度を測定した。
【0041】
[実施例1]
参考例1に示した重合方法で製造された(A1)PA三元共重合体を100重量部、 ガラス繊維[日本電気硝子(株)製:商品名T−289]を100重量部の割合で2軸押出機(東芝機械社製:ZSK57)を用いてシリンダ設定温度290℃、スクリュー回転数200rpmの条件下で溶融混練を行った。その際、(A1)は元込めで、(E)強化材であるガラス繊維はサイドフィードした。サイドフィード位置としては元込め位置から吐出口までの長さを1として、元込め位置から3/5の位置から行った。溶融混錬した後、ストランド状のガットを冷却バスで冷却し、カッターを用いてペレットを得た。得られた(A)ポリアミド樹脂組成物100重量部と(B)発泡剤を20重量%含有した(D)発泡剤マスターバッチである[永和化成製:EE206]5重量部とを混合し、参考例4に示した方法により得られた製品を、前記測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0042】
〔比較例1〕
実施例1に示した(A1)PA三元共重合体を参考例2に示した重合方法で製造されたPAニ元共重合体としたこと以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレット100重量部と(B)発泡剤を20重量%含有(D)発泡剤マスターバッチ[永和化成製:EE206]5重量部とを混合し、参考例4により得られた製品を、前記測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0043】
〔比較例2〕
実施例1に示した(A1)PA三元共重合体を参考例3に示した重合方法で製造されたPA66樹脂としたこと以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。得られたペレット100重量部と(B)発泡剤を20重量%含有(D)発泡剤マスターバッチ[永和化成製:EE206]5重量部とを混合し、参考例4により得られた製品を、前記測定方法によって諸特性を調べた。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1および比較例1、2より、特定共重合比率の(A1)PA三元共重合体に(E)強化材であるガラス繊維を配合して得られた(A)ポリアミド樹脂組成物に(D)発泡剤マスターバッチを混合し、射出成形を用い、ショートショット法によって得られるPA樹脂発泡体の製造方法は、軽量化しつつ、優れた機械物性を示す発泡体を得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)ポリアミド三元共重合体を含む(A)ポリアミド樹脂組成物と(B)発泡剤を含む(D)マスターバッチを混合し、溶融成形することを特徴とするポリアミド樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
(A)ポリアミド樹脂組成物のポリマー部分100重量部に対し、(B)発泡剤0.2〜2重量部を混合することを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
(A1)ポリアミド三元共重合体が、(a1)ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸から誘導されるアミド単位70〜85重量%、(a2)ジアミン及び芳香族ジカルボン酸から誘導されたアミド単位5〜20重量%、および(a3)ラクタムから誘導されるアミド単位1〜10重量%を含むポリアミド三元共重合体であり、かつ(a2)ジアミン及び芳香族ジカルボン酸から誘導されたアミド単位と(a3)ラクタムから誘導されるアミド単位との重量比(a2)/(a3)が1以上である請求項1または2記載のポリアミド樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
(B)発泡剤の分解温度が200〜250℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリアミド樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
(A1)ポリアミド三元共重合体を含むポリアミド樹脂組成物(A)を発泡させたポリアミド樹脂発泡体。

【公開番号】特開2009−249549(P2009−249549A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100861(P2008−100861)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】