説明

ポリアミド樹脂発泡成形品

【課題】 ポリアミド樹脂の有する本来の特性を損なうことなく、微細でかつ均一な発泡状態を有し、軽量化が可能であり、ヒケやソリが少ないポリアミド樹脂発泡成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】 超臨界流体を用いて発泡させたポリアミド樹脂発泡成形品であって、ポリアミド樹脂がリン酸カルシウムを含有することを特徴とするポリアミド樹脂発泡成形品である。また、リン酸カルシウムの粒径が0.01〜50μmであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂の有する本来の特性を損なうことなく微細かつ均一な発泡状態を有するポリアミド樹脂発泡成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、その優れた成形性、機械特性、耐久性、耐オイル・薬品性および耐磨耗性などを有していることから、これらの特性を生かして、自動車用途を始めとする種々の用途に広く利用されている。
【0003】
しかるに、ポリアミド樹脂の各種用途においては、さらなる軽量化の要望が強くなっており、そのためにポリアミド樹脂発泡成形品の製造方法の開発が行われている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、ポリアミド樹脂に関する有機または無機の分解性発泡剤による発泡成形方法、窒素や炭酸ガスのような不活性ガスを用いた発泡成形方法、および揮発性液体発泡剤による発泡成形方法などについて記載されている。
【0005】
一方、近年では、超臨界流体を用いた発泡成形技術の研究開発が盛んに行われており、射出成形機に超臨界状態の窒素ガスや炭酸ガスを導入して発泡成形品を得るという射出成形技術が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1〜4には超臨界流体を樹脂材料に連続的に導入して材料を発泡させて得られる発泡体が、特許文献5にはスチレン系樹脂50〜99重量部とポリプロピレン樹脂1〜50重量部からなる樹脂組成物を射出成形する際に超臨界流体を導入して発泡成形品を得る方法が、特許文献6には末端基濃度を規定したポリアミド樹脂を射出成形する際に超臨界流体を導入して発泡成形品を得る方法が知られている。
【0007】
また、超臨界流体を利用した射出成形によるポリアミド樹脂成形品の例が、非特許文献2に記載されている。
【非特許文献1】プラスチック技術全書、9巻、ポリアミド樹脂、工業調査会、1979年発行、29〜30ページ
【非特許文献2】プラスチックスエージ、2001年、1月号、123〜130ページ
【特許文献1】米国特許第4473665号明細書
【特許文献2】米国特許第5158986号明細書
【特許文献3】米国特許第5334356号明細書
【特許文献4】特許第2625576号公報
【特許文献5】特開平10−24436号公報
【特許文献6】特開2002−363326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記非特許文献1に記載されている有機または無機の分解性発泡剤による発泡成形方法、窒素や炭酸ガスのような不活性ガスを用いた発泡成形方法、および揮発性液体発泡剤による発泡成形方法では、ポリアミド樹脂の融点が高く、成形温度が高いこと、また、ポリアミド樹脂が化学構造的に化学発泡剤の分解温度を低下させる作用があることに起因して、微細かつ均一な発泡状態を形成させることが難しく、結果としてポリアミド樹脂本来の特性が発揮できないという問題点があった。
【0009】
また、前記特許文献1〜6には、超臨界流体を用いた発泡射出成形方法が記載されているものの、特許文献2〜5には、ポリアミド樹脂の発泡成形品に関する記載が全く無く、僅かに特許文献1には、その請求項24にポリアミド樹脂の使用について記載されてはいるが、実際にポリアミド樹脂に適用した実施例の記載は認められないばかりか、ポリアミド樹脂の種類や末端基構造などの化学構造の影響についても全く開示されておらず、リン酸カルシウムを配合した例は記載されていない。また、特許文献6には末端基濃度を規定したポリアミド樹脂に超臨界流体を導入して発泡成形品を得る方法、ガラス繊維や炭素繊維を強化材として用いた例が示されているが、リン酸カルシウムを適用した例は全く記載されていない。
【0010】
一方、非特許文献2には、超臨界流体を利用した射出成形によるポリアミド樹脂成形品が実例写真として記載されているものの、発泡状態や成形品の物性については全く開示されていないばかりか、使用したポリアミド樹脂の種類や末端基構造などの化学構造に関しても全く言及されておらず、リン酸カルシウムを配合した例も記載されていない。
【0011】
このように、リン酸カルシウムを配合したポリアミド樹脂を用いて、その特性を損なわずに、微細かつ均一な発泡状態を有する射出発泡成形品を得ることについては、これまで見出されていなかった。
【0012】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0013】
したがって、本発明の目的は、ポリアミド樹脂の有する本来の特性を損なうことなく微細かつ均一な発泡状態を有するポリアミド樹脂発泡成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく検討した結果、ポリアミド樹脂に特定の無機化合物、すなわちリン酸カルシウムを配合し、このポリアミド樹脂と超臨界流体とを射出成形機に導入して射出成形することによって、上記の目的に合致したポリアミド樹脂発泡成形品が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明は、
1.超臨界流体を用いて発泡させたポリアミド樹脂発泡成形品であって、ポリアミド樹脂がリン酸カルシウムを含有することを特徴とするポリアミド樹脂発泡成形品、
2.前記リン酸カルシウムの粒径が0.01〜50μmであることを特徴とする前記1記載のポリアミド樹脂発泡成形品、
3.前記リン酸カルシウムのBET法を用いて測定した表面積が30〜500m/gであることを特徴とする前記1ないし2に記載のポリアミド樹脂発泡成形品
を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のポリアミド樹脂発泡成形品は、ポリアミド樹脂の特性を保持したまま、微細かつ均一な発泡状態を有しており、軽量化が可能である上に、ヒケやソリが少ない。
【0017】
したがって、本発明によれば、各種ポリアミド樹脂成形品の軽量化、外観向上および寸法精度向上を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のポリアミド樹脂発泡成形品について詳細に説明する。なお、以下に述べる本発明において、「重量」とは「質量」を意味する。
【0019】
本発明で用いられるポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミド樹脂のことである。
【0020】
本発明で使用されるポリアミド樹脂の主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、p−アミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを、各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0021】
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂は、150℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂であり、具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6/66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリノナメチレンイソフタルアミド(ナイロン9I)、ポリノナメチレンテレフタルアミド/ポリノナメチレンイソフタルアミド(ナイロン9T/9I)、ナイロン12、ナイロン11およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。なお、ここで、Tはテレフタル酸単位を表し、Iはイソフタル酸単位を表す。
【0022】
本発明で使用するポリアミド樹脂のとりわけ好ましい例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11およびナイロン12を挙げることができ、さらにこれらポリアミド樹脂の耐熱性、振動溶着性などの特性向上を目的に、2種以上のポリアミド樹脂の混合物として用いることも実用上好適である。
【0023】
本発明で使用されるポリアミド樹脂の重合度には特に制限はないが、通常、ポリアミド樹脂1gを98%硫酸100mLに溶解した溶液を用いて25℃で測定した相対粘度ηrが2.0〜8.0、好ましくは2.3〜6.5、さらに好ましくは2.5〜4.5での範囲であることが望ましい。
【0024】
本発明で使用されるポリアミド樹脂の末端基濃度に特に制限はないが、通常は
末端アミノ基濃度[NH]が2×10−5〜13×10−5mol/gの範囲が好ましく、3×10−5〜10×10−5mol/gの範囲であることが更に好ましい。
【0025】
また、末端カルボキシル基濃度[COOH]については、通常は2×10−5〜13×10−5mol/gの範囲が好ましく、3×10−5〜10×10−5mol/gの範囲であることが更に好ましい。
【0026】
本発明で使用されるリン酸カルシウムとは、リン酸(HPO)の水素原子がカルシウム(Ca)に置換された化合物であり、水素原子1個がカルシウムと置き換わった第一リン酸カルシウムCa(HPO、水素原子2個がカルシウムと置き換わった第二リン酸カルシウムCaHPO、水素原子3個がカルシウムと置き換わった第三リン酸カルシウムCa(POがあげられ、更にピロリン酸カルシウムCa、ピロリン酸二水素カルシウムCaH、ヒドロキシアパタイトCa10(PO(OH)も使用可能である。更にこれらの化合物は無水塩であっても結晶水を含んだ含水タイプであってもかまわない。
【0027】
本発明で使用されるリン酸カルシウムの粒径に特に制限はないが、微細かつ均一な発泡状態を得るためには通常は0.01〜50μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜30μm、また、更に好ましくは0.1〜10μmである。
【0028】
本発明で使用されるリン酸カルシウムの比表面積には特に制限はないが、微細かつ均一な発泡状態を得るためには通常はBET法による比表面積が30〜500m/g、好ましくは40〜400m/g、更に好ましくは50〜200m/gである。
【0029】
本発明で使用されるリン酸カルシウムの配合量には特に制限はないが、微細かつ均一な発泡状態を得るためには通常はポリアミド樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部である。
【0030】
なお、本発明で使用するポリアミド樹脂は、必要に応じて無機充填剤を含有することができる。
【0031】
無機充填材としては、一般に強化ポリアミド樹脂に使用されるガラス繊維が好ましいが、その他の様々な繊維状または非繊維状の無機強化材を用いることにより、さらに成形品表面性などの改善を図ることが可能である。本発明で使用するガラス繊維の繊維径、繊維長については特に限定はない。その他の無機充填材の例としては、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填材などが挙げられ、これらは中空であってもよい。これら無機充填材を複数種類併用することも可能である。また、これら繊維状/非繊維状の無機充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で同時にもしくは予備的に処理して使用することは、より優れた機械的特性や成形品外観を得る意味において好ましい。
【0032】
本発明における無機充填材の添加量に特に制限は無いが、通常はポリアミド樹脂100重量部に対して50〜400重量部、好ましくはポリアミド樹脂100重量部に対して25〜300重量部である。
【0033】
さらに、本発明の目的を損なわない範囲であれば、要求される特性に応じて、主要構成成分であるポリアミド樹脂に対し、他のポリアミド樹脂や他のポリマー類、添加剤、結晶核剤、耐熱剤や紫外線吸収剤などの安定剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤およびカップリング剤などを添加することも可能である。
【0034】
本発明で使用される超臨界流体としては、ポリアミド樹脂の射出成形時に超臨界状態となって使用されるものである限り、特に制限はなく、単一物質であっても、混合物であってもかまわない。一般には、二酸化炭素、窒素、アルゴンおよびヘリウムなどの不活性ガスが使用され、二酸化炭素および窒素が好ましく用いられる。
【0035】
ポリアミド樹脂の射出成形時に注入される超臨界流体の量については、特に制限はないが、通常はポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.05〜50重量部、さらに好ましくは0.1〜30重量部の範囲である。
【0036】
本発明のポリアミド樹脂発泡成形品における気泡の大きさは、走査型電子顕微鏡を用いてISO TYPE−A試験片平行部中央の40mm×40mm内に観察できる気泡径の数平均径が0.1〜50μmである。好ましくは0.1〜30μm、更に好ましくは0.1〜20μmである。
【0037】
射出成形中に溶融ポリアミド樹脂に超臨界流体を注入する方法には、特に制限はないが、たとえば、気体状態の不活性ガスをそのまま注入する方法、加圧して注入する方法、減圧して注入する方法、および液体状態または超臨界流体状態の不活性ガスをプランジャーポンプなどにより注入する方法などが挙げられる。
【0038】
次に、本発明のポリアミド樹脂発泡成形品を製造する方法の一例を図1の構成概略図を用いて説明する。
【0039】
まず、成形材料としてのポリアミド樹脂ペレットAを押出機のホッパーBより供給し、加熱溶融させる。超臨界流体となる窒素や炭酸ガスなどの不活性ガスはボンベKより供給され、昇圧ポンプJによって昇圧された後、シリンダーD内の溶融したポリアミド樹脂に供給される。この際、シリンダーDの内部は、供給された不活性ガスが超臨界状態を保ち、溶融ポリアミド樹脂内に短時間で溶解・拡散されるように、臨界温度以上かつ臨界圧力以上に保たれている。例えば、窒素の場合の臨界温度は−127℃、臨界圧力は3.5MPaであり、炭酸ガスの場合の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.4MPaである。
【0040】
シリンダーD内にて溶融ポリアミド樹脂と不活性ガスがスクリューCによって混練され、さらにスタティックミキサーEおよび拡散チャンバーFで溶融ポリアミド樹脂と不活性ガスの完全相溶状態が形成され、続いて金型IのキャビティHに射出され、圧力解放されて微細発泡成形品が形成される。
【0041】
ここで、金型I内にカウンタープレッシャーを負荷させることにより発泡径をコントロールすることも可能であり、必要に応じてガスボンベLから不活性ガスを供給してもかまわない。その際の圧力としては特に制限はないが、0.5〜15MPaの範囲であることが好ましい。
【0042】
また、金型内で急激に圧力低下させて発泡を促進させる方法として、溶融ポリアミド樹脂を金型IのキャビティH内に射出した後、金型のコアの一部または全部を後退させて金型内容積を急激に増大させてもかまわない。
【0043】
本発明のポリアミド樹脂発泡成形品は、一般にポリアミド樹脂が適用し得るあらゆる用途に適用可能である。例えば、軽量化要求の大きい自動車分野としては、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、バランスシャフトギア、オイル制動バルブ、オイルレベルゲージ、オイルクリーナーケース、ラジエータータンク、ウォーターポンプインペラー、サーモスタットハウジング、クーリングファン、インタークーラータンク、エアーダクト、エアコントロールバルブ、エアレギュレーター、エアフローメーターハウジング、エアーダクトインテーク、サイレンサー、レゾネーター、排ガスポンプサイドシール、排ガスバルブ、キャブレター、ガソリン噴射ノズル、ピストンバルブ、キャブレターバルブ、サージタンク、フューエルフィルターハウジング、フューエルストレーナー、フューエルセジメンタルケース、キャニスター、EGIチューブ、ソレノイドバルブ、ガソリンフロート、ガソリンチャンバー、フューエルチェックバルブ、フューエルインジェクター、フューエルインジェクターコネクター、フューエルインジェクターノズルカバー、フューエルフィラーキャップ、マスターシリンダーピストン、クラッチオイルリザーバー、スラストワッシャー、シフトアームコーティング、シフトレバーノブ、トランスミッションケース、トルコンスラストワッシャー、トランスミッションブッシュ、パワーステアリングタンク、ステアリングコラムカバー、ステアリングホーンパッド、ステアリングボールジョイント、ホイールフルキャップ、ホイールキャップセンター、ホイールセンターハブキャップ、ブレーキオイルリザーバー、ブレーキオイルフロート、ブレーキリザーバーキャップ、サイドブレーキワイヤープロテクター、ラジエーターグリル、フロントエンドバンパー、リアエンドバンパー、バンパーモール、フロントフェンダー、サイドミラーステイ、サイドミラーハウジング、エンブレム、リトラクタブルヘッドランプカバー、電動ミラーベース、フューエルリッド、ボンネットフードルーパー、エクストラクトグリル、ドア、サイドルーバー、ドアラッチカバー、ドアサイドモール、アウタードアハンドル、ピラールーバー、トランクロアーバックフィニシャー、トランクリアエプロン、ハッチバックスライドブラケット、ライセンスプレート、ライセンスプレートポケット、フューエルリッド、サンルーフフレーム、サイドモール、ウィンドウピボット、ウィンドウガラススライダー、ウィンドウモール、エアースポイラー、インストゥルメントパネルコア、リッドアウター、センタークラスター、スイッチ、アッパーガーニッシュ、リッドクラスター、メーターフード、メーターパネル、グローブボックス、チェンジレバーカバー、グローブボックスリッド、グローブボックスノブ、グローブドアアウター、アッシュトレイランプハウジング、アッシュトレイパネル、サンバイザーブラケット、サンバイザーシャフト、サンバイザーホルダー、ピラーガーニッシュ、ルームミラーステイ、レギュレーターハンドル、ドアトリム、インサイドドアロックノブ、インナーロックノブ、ウィンドウレギュレーターハンドル、ウィンドウレギュレーターハンドルノブ、ルーフサイドレールガーニッシュ、アームレストインサート、アームレストベース、アームレストガイド、リアシェルフサイド、ヘッドレストガイド、シートベルトタングプレート、シートベルトリトラクターギア、シートベルトバックル、シートベルトスルーアンカー、リッドクラスター、安全ベルト機構部品、クーラーシロッコファン、クーラーバキュームポンプ、エアコンマグネットクラッチボビン、エアコンアクチュエーター、コンプレッサーバルブ、エアーベンチレーションフィン、エアコン調節ツマミ、ヒーターコアタンク、ヒーターバルブ、ジェネレーターコイルボビン、ジェネレーターカバー、ジェネレーターブッシュ、サーキットボード、ブラシホルダー、コンデンサーケース、レギュレーターケース、スターターレバー、スターターコイルボビン、スターターインターバルギア、ディストリビューターポイントブッシュ、イグニッションコイルケース、イグニッションコイルボビン、ディストリビューター絶縁端子、ディストリビューターキャップ、スリーブベアリング、ヘリカルギアー、バキュームコントローラー、ジャンクションボックス、ワイヤーハーネスコネクター、リレーターミナルベースケース、コイルボビン、ヒューズボックス、スイッチベース、リレーケース、各種スイッチ基板、ランプソケット、ランプリフレクター、バックホーンハウジング、サイレントギア、パワーウィンドウスイッチ基板ケース、ワイパーレバー、ウォッシャーモーターハウジング、ワイパーモーターインシュレーター、ワイパーアームヘッドカバー、ウォッシャーノズル、ワイパーアームヘッド、スピードメータードリブンギア、スピードメーターコントロール、メーターコネクター、回転センサー、スピードセンサー、パワーシートギアハウジング、ブラシホルダー、コンミュテーター、モーターギア、ボンネットクリップ、モールクリップ、内装クリップ、バンパークリップ、電気配線用バンドクリップ、アンテナインナーチューブ、フェンダー、スポイラー、ルーフレール、テールゲートおよびバンパーなどが挙げられる。
【0044】
また、その他の用途として、パソコン、液晶プロジェクター、モバイル機器、携帯電話などの筐体、内燃機関用途、電動工具ハウジング類などの機械部品を始め、各種電気・電子部品、医療機器、食品容器、家庭・事務用品、建材関係部品および家具用部品などが挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。また、実施例および比較例中に示された配合割合において特に注釈のない「%」は、全て重量%を意味する。
【0046】
また、各種特性の評価は次に記載の方法により行った。
【0047】
[ポリアミド樹脂の相対粘度(ηr)]
ポリアミド樹脂1gを正確に秤量して98%硫酸100mLに室温で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。
【0048】
[ポリアミド樹脂のアミノ末端基濃度]
ポリアミド樹脂0.5〜2gを正確に秤量し、フェノール/エタノール混合溶液(比率:84/16重量%)25mLに室温で溶解した。この溶液に指示薬としてチモールブルーを添加し、0.02規定の塩酸で滴定した。
【0049】
[ポリアミド樹脂のカルボキシル末端基濃度]
ポリアミド樹脂0.5〜2gを正確に秤量し、ベンジルアルコール20mLに195℃で溶解した。この溶液に指示薬としてフェノールフタレインを添加し、0.02規定の水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定した。
【0050】
[射出成形機および成形条件]
・射出成形機
図1に構成概略を示す射出成形機を使用した。
最大型締力は2000kNとした
スクリュー径は42mm(L/D=28)とした。
・射出成形条件
シリンダー温度は240℃とした
金型温度は60℃とした
射出速度は200mm/secとした。
・超臨界流体注入条件
超臨界流体は窒素または炭酸ガスを用いた
注入量はポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物100gに対して
1gとした。
【0051】
[比重]
得られた成形品を用い、ASTM D792に準じて測定した。
【0052】
[機械特性]
・引張強度: ASTM D638に準じて測定した。
・曲げ弾性率: ASTM D790に準じて測定した。
【0053】
[そり、ひけ]
50mm×50mm×30mmサイズで厚み1.5mmの箱を成形し、得られた成形品のそり、ヒケを目視により評価した。
【0054】
[気泡径]
走査型電子顕微鏡を用いてISO TYPE−A試験片平行部中央の40mm×40mm内に観察できる気泡500個について気泡径を測定し、その平均値を気泡径とした。
【0055】
[比表面積]
ユアサアイオニクス株式会社の流動法BET一点法比表面積測定装置MONOPSORBを用いて測定した。
【0056】
[リン酸カルシウム]
以下のリン酸カルシウムを使用した。丸尾カルシウム株式会社、和光純薬工業株式会社から入手し、粉砕あるいは篩かけすることにより、以下のような粒径、比表面積を有する粒子を調製した。
CaP−1(ヒドロキシアパタイト、平均粒径0.5μm、比表面積50m/g)
CaP−2(ヒドロキシアパタイト、平均粒径1.5μm、比表面積200m/g)
CaP−3(第三リン酸カルシウム、平均粒径0.1μm、比表面積100m/g)
CaP−4(第三リン酸カルシウム、平均粒径3.0μm、比表面積50m/g)
【0057】
[参考例1]ナイロン6樹脂(A−1)の製造
30Lのステンレス製オートクレーブに、ε−カプロラクタム10kg、安息香酸2.16g、イオン交換水200gを仕込み、窒素置換の後、密閉して250℃で12時間加熱・撹拌することによりナイロン6樹脂を調製した。得られたナイロン6樹脂(A−1)をオートクレーブの下部よりストランド状に引き取り、カッティングしてペレットとした。このペレットを沸騰水中で15時間抽出した後、80℃で24時間真空乾燥した。得られたナイロン6樹脂(A−1)の相対粘度ηrは2.69、末端アミノ基濃度[NH]は5.25×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は5.61×10−5mol/gであった。
【0058】
[参考例2]ナイロン6樹脂(A−2)の製造
安息香酸の代わりに、ヘキサメチレンジアミンを41.06g使用した以外は、参考例1と同様にしてナイロン6樹脂を製造した。得られたナイロン6樹脂(A−3)の相対粘度ηrは2.36、末端アミノ基濃度[NH]は9.01×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は3.85×10−5mol/gであった。
【0059】
[参考例3]ナイロン6樹脂(A−3)の製造
安息香酸を使用せず、重合時間を16時間に延長した以外は、参考例1と同様にしてナイロン6樹脂を製造した。得られたナイロン6樹脂(A−4)の相対粘度ηrは3.22、末端アミノ基濃度[NH]は3.86×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は4.14×10−5mol/gであった。
【0060】
[参考例4]ナイロン66樹脂(B−1)の製造
30Lのステンレス製オートクレーブに、ナイロン66塩(ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸の等モル塩)の80%水溶液および安息香酸(ナイロン66塩10kgに対して1.86g)を投入し、内温250℃、内圧1.5〜2.0MPaに保って3時間重合した。その後徐々に放圧しながら内圧を常圧に戻し、内温を270〜280℃に上げ、更に1時間重合させた。得られたナイロン66樹脂をオートクレーブの下部からストランドで抜き出し、ペレタイズした後、80℃で24時間真空乾燥した。得られたナイロン6樹脂(B−1)の相対粘度ηrは2.62、末端アミノ基濃度[NH]は5.38×10−5mol/g、末端カルボキシル基濃度[COOH]は5.60×10−5mol/gであった。
【0061】
[実施例1〜4]
参考例1で製造したナイロン6樹脂(A−1)100重量部にCaP−1〜CaP−4を2重量部配合し、30mmφ2軸押出機を用いて250℃で溶融混練した。ストランドをカットしてペレットとし、80℃で1晩真空乾燥した。該ペレットを使用し、超臨界流体として炭酸ガスを用いて超臨界発泡射出成形を行った。 また、成形品はASTM1号引張試験片および50mm×50mm×30mmサイズで厚み1.5mmの箱の2種を成形し、前者で比重、引張特性、曲げ特性を測定し、後者でソリ、ヒケの評価を行った。金型温度はいずれの場合も30℃とした。超臨界流体としては窒素または炭酸ガスを使用し、注入量はポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物100gに対して1gとした。得られた成形品の物性および外観の評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例5〜6]
リン酸カルシウムCaP−2の配合量を変更する以外は実施例1と同様にしてペレットを作成し、超臨界発泡成形を行った。
得られた成形品の物性および外観の評価結果を表1に示す。
【0063】
[実施例7〜8]
参考例2〜3で製造したナイロン樹脂(A−2)、(A−3)を使用する以外は実施例1と同様にしてペレットを作成し、超臨界発泡成形を行った。得られた成形品の物性および外観の評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例9]
参考例4で製造したナイロン樹脂(B−1)を使用し、リン酸カルシウムを溶融混練する際の温度を290℃とする以外は実施例1と同様にしてペレットを作成し、超臨界発泡成形を行った。得られた成形品の物性および外観の評価結果を表1に示す。
【0065】
[実施例10]
超臨界流体を炭酸ガスに変更する以外は実施例1と同様にしてペレットを作成し、超臨界発泡成形を行った。得られた成形品の物性および外観の評価結果を表1に示す。
【0066】
[実施例11]
参考例1製造したナイロン6樹脂(A−1)100重量部に対して、ガラス繊維(繊維径10μm、3mmチョップドストランド、日本電気ガラス社製…表ではGFと略称)を43重量部、CaP−2を2重量部を溶融混練した材料を使用し、超臨界流体として窒素ガスを用いて超臨界発泡成形を行った。得られた成形品の物性および外観の評価結果を表1に示す。
【0067】
[実施例12]
参考例1で製造したナイロン6樹脂(A−1)100重量部に対して、PAN系炭素繊維(繊維径7μm、6mmチョップドストランド、東レ製…表ではCFと略称)を43重量部、CaP−2を2重量部を溶融混練した材料を使用し、超臨界流体として窒素ガスを用いて超臨界発泡成形を行った。得られた成形品の物性および外観の評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
[参考例5〜15]
超臨界流体を注入しないこと以外は、実施例1〜9、実施例11〜12と同様にして射出成形を行った。すなわち、通常の射出成形である。得られた成形品の物性および外観の評価結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
[比較例1〜6]
リン酸カルシウムを使用しない以外は実施例1、実施例7〜12と同様にして超臨界発泡成形を行った。得られた成形品の物性および外観の評価結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
表1〜3の結果からは、次の事項が明らかである。
【0074】
実施例1〜4より、本発明のリン酸カルシウムを配合して超臨界発泡射出成形することにより、発泡が微細・均一であり、軽量かつ機械物性に優れた成形品が得られ、また、ソリやヒケのない箱状成形品が得られることがわかる。
【0075】
実施例5〜6より、リン酸カルシウム量を変えても、実施例1〜4と同様の効果が得られることがわかる。
【0076】
実施例7〜8より、ナイロン樹脂の末端基濃度を変えても、相対粘度を変えても実施1〜4と同様の効果が得られることがわかる。
【0077】
実施例9より、ナイロン66樹脂の場合でもナイロン6樹脂の実施例1〜4と同様の効果が得られることがわかる。
【0078】
実施例10より、超臨界流体を窒素から炭酸ガスに変更した場合にも、窒素を用いた実施例1〜9と同様の効果が得られることがわかる。
【0079】
実施例11〜12より、ガラス繊維を配合したナイロン樹脂組成物や炭素繊維を配合したナイロン樹脂組成物を用いた場合でも泡が微細・均一であり、軽量かつ機械物性に優れた成形品が得られ、また、ソリやヒケのない箱状成形品が得られることがわかる。
【0080】
比較例1〜3より、本発明のリン酸カルシウムを配合せずにナイロン6樹脂を超臨界発泡射出成形した場合には、ソリ、ヒケのない成形品が得られるものの、この成形品は気泡径が大きく、物性が低いことがわかる。また、超臨界流体を変えても同じ結果であることがわかる。
【0081】
比較例4より、本発明のリン酸カルシウムを配合せずにナイロン66樹脂を超臨界発泡射出成形した場合には、ソリ、ヒケのない成形品が得られるものの、この成形品は気泡径が大きく、機械物性が低いことがわかる。
【0082】
比較例5、6より、本発明のリン酸カルシウムを配合せずにガラス繊維あるいは炭素繊維を配合ナイロン樹脂を超臨界発泡射出成形した場合には、ソリ、ヒケのない成形品が得られるものの、この成形品は気泡径が大きく、機械物性が低いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は本発明で使用する射出成形機の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0084】
A 成形材料
B ホッパー
C スクリュー
D シリンダー
E スタティックミキサー
F 拡散チャンバー
G ノズル
H キャビティ(成形品)
I 金型
J 昇圧ポンプ
K ガスボンベ
L カウンタープレッシャー用ガスボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体を用いて発泡させたポリアミド樹脂発泡成形品であって、ポリアミド樹脂がリン酸カルシウムを含有することを特徴とするポリアミド樹脂発泡成形品。
【請求項2】
前記リン酸カルシウムの粒径が0.01〜50μmであることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂発泡成形品。
【請求項3】
前記リン酸カルシウムのBET法を用いて測定した表面積が30〜500m/gであることを特徴とする請求項1ないし2に記載のポリアミド樹脂発泡成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−8952(P2006−8952A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191960(P2004−191960)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】