説明

ポリアミド樹脂組成物および成形品

【課題】機械的強度、剛性、耐候性に優れたポリアミド樹脂組成物の提供。
【解決手段】少なくとも、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂50〜75重量%と、ポリアミド6樹脂25〜50重量%とからなり、かつ、他のポリアミド樹脂の配合量が6重量%以下である、混合ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、無機充填材(B)100〜160重量部と、カーボンブラック(C)4〜20重量部を配合してなり、かつ、前記無機充填材(B)の少なくとも1種が、平均繊維径10μmを越え20μm以下のガラス繊維であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物およびこれを用いた成形品に関するものである。さらに詳しくは、機械的強度、剛性などの物性が優れた成形品が得られ、かつ、優れた外観と耐候性が要求される自動車外装部品、建材・住宅設備部品など屋外で使用される製品製造用のポリアミド樹脂組成物、および、このポリアミド樹脂組成物より得られる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、機械的特性、成形加工性、耐薬品性などが良好であるので、自動車部品、機械部品、建材・住宅設備部品の成形材料として広く使用されている。しかし、ポリアミド樹脂は極めて酸化劣化を受けやすく、長期間の屋外での使用中に分子鎖の切断による分子量の低下、これに伴う機械的強度の低下、部品(製品)表面への亀裂発生、変色などによる外観劣化などの好ましくない現象が起こる。これら酸化劣化や外観劣化は、熱や光によって促進され易く、屋外で使用される用途ではその使用が制約される。
【0003】
これらの劣化現象を防止する目的で、ポリアミド樹脂に種々の添加剤を添加することが検討されている。例えば、特許文献1では、ポリスチレン樹脂またはポリエチレン樹脂を添加することによって、表面外観等を向上させている。また、特許文献2では、MVRの異なる2種類のポリアミド樹脂組成物をブレンドすることによって、外観等を向上させている。
しかしながら、これらのポリアミド樹脂組成物では、成形品の表面外観向上、劣化現象の抑制に十分とは言えず、更なる改良が求められている。また、このような劣化減少を抑制しようとすると、ポリアミド樹脂自体が本来有している機械的強度、剛性などの優れた物性が低下してしまう場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−105198号公報
【特許文献2】特開2011−148267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の従来技術の課題を解決し、ポリアミド樹脂自体が本来有している機械的強度、剛性などの優れた物性を犠牲にせず、成形品の表面外観が良好で形状が制限されることがなく、長期間屋外で使用しても酸化劣化や外観劣化が起こり難く、耐候性に優れた成形品が得られるポリアミド樹脂組成物、および成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂と、ポリアミド6樹脂の混合ポリアミド樹脂(A)に、無機充填材(B)と、カーボンブラック(C)を配合し、かつ、無機充填材(B)として、平均繊維径10μmを越え20μm以下のガラス繊維を配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、以下の手段により、上記課題は解決された。
【0007】
<1>少なくとも、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂50〜75重量%と、ポリアミド6樹脂25〜50重量%とからなり、かつ、他のポリアミド樹脂の配合量が6重量%以下である、混合ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、無機充填材(B)100〜160重量部と、カーボンブラック(C)4〜20重量部を配合してなり、かつ、前記無機充填材(B)の少なくとも1種が、平均繊維径10μmを越え20μm以下のガラス繊維であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
<2>無機充填材(B)が、少なくとも、前記ガラス繊維と、マイカおよびタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種とからなる、<1>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<3>無機充填材(B)が、少なくとも、前記ガラス繊維40〜80重量%と、マイカ15〜60重量%とからなる、<2>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<4>ポリメタキシリレンアジパミド樹脂の相対粘度が1.8〜2.8であることを特徴とする<1>〜<3>のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
<5>無機充填材(B)が、少なくとも、前記ガラス繊維40〜80重量%と、マイカ15〜60重量%とからなり、かつ、他の無機充填材が10重量%以下である、<3>または<4>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<6><1>〜<5>のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
<7><1>〜<5>のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形によって成形することを特徴とする、成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ポリアミド樹脂自体が本来有している機械的強度、剛性などの優れた物性を犠牲にせず、成形品の形状が制限されることがなく、長期間屋外で使用しても酸化劣化や外観劣化が起こり難く、耐候性に優れた成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明における平均繊維径および平均繊維長としては、メーカーの公称値を用いることができる。平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定されるD50をいい、例えば、島津製作所社製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2100」を用いて測定を行うことができる。
【0011】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、少なくとも、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂50〜75重量%と、ポリアミド6樹脂25〜50重量%とからなり、かつ、他のポリアミド樹脂の配合量が6重量%以下である、混合ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、無機充填材(B)100〜160重量部と、カーボンブラック(C)4〜20重量部を配合してなり、かつ、前記無機充填材(B)の少なくとも1種が、平均繊維径10μmを越え20μm以下のガラス繊維であることを特徴とする。以下、これらの成分について詳細に説明する。
【0012】
<混合ポリアミド樹脂(A)>
本発明における混合ポリアミド樹脂は、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂50〜75重量%と、ポリアミド6樹脂25〜50重量%とからなり、かつ、他のポリアミド樹脂の配合量が6重量%以下である。好ましくは、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂55〜70重量%と、ポリアミド6樹脂30〜45重量%とからなり、かつ、他のポリアミド樹脂の配合量が3重量%以下である。
【0013】
<ポリメタキシリレンアジパミド樹脂>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂を含む。ポリメタキシリレンアジパミド樹脂の相対粘度は、好ましくは1.6〜3であり、より好ましくは1.7〜2.9であり、さらに好ましくは1.8〜2.8であり、特に好ましくは2.0〜2.4である。相対粘度が低すぎると機械的強度が不十分であり、高すぎると成形性が低下しやすい。
【0014】
<ポリアミド6樹脂>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド6樹脂を含む。
ポリアミド6樹脂の相対粘度は、好ましくは1.6〜3であり、より好ましくは1.7〜2.9であり、さらに好ましくは1.8〜2.8であり、特に好ましくは2.0〜2.4である。相対粘度が低すぎると機械的強度が不十分であり、高すぎると成形性が低下しやすい。
【0015】
<他のポリアミド樹脂>
本発明における混合ポリアミド樹脂は、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂およびポリアミド6樹脂以外の他のポリアミド樹脂を含んでいてもよい。他のポリアミド樹脂としては、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミドMP6/6T、ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸およびテレフタル酸からなるポリアミド66/6T、ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸およびテレフタル酸からなるポリアミド6I/6Tなどが挙げられ、2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、成形性の観点からポリアミド66が好ましい。
他のポリアミド樹脂の相対粘度は、好ましくは1.8〜3.5であり、より好ましくは1.9〜3.2であり、最も好ましくは2〜3.1である。相対粘度が低すぎると機械的強度が不十分であり、高すぎると成形性が低下しやすい。
他のポリアミド樹脂の融点は、230〜270℃であることが好ましい。
【0016】
<無機充填材(B)>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、混合ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、無機充填材(B)を100〜160重量部の割合で含む。無機充填材が100重量部よりも少ないと、機械的強度や剛性、外観等が劣り、160重量部を越えると、機械的強度や外観が劣る。すなわち、本発明では、無機充填材の配合量を適切なものとすることにより、機械的強度、剛性および外観を向上させることに成功したものである。無機充填材(B)の配合量は、混合ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、100〜140重量部の割合で含むことが好ましい。このように、無機充填材(B)の配合割合とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
【0017】
<ガラス繊維>
本発明では、前記無機充填材(B)の少なくとも1種が、平均繊維径10μmを越え20μm以下のガラス繊維であることを特徴とする。従来、ポリアミド樹脂組成物に添加されるガラス繊維は機械的強度の観点から、平均繊維径が10μm以下のものであったが、本発明では、このような比較的太い平均繊維径を有するガラス繊維を採用することにより、成形品外観、機械的強度をバランスよく向上させることが可能である。
ガラス繊維の平均繊維径は、好ましくは12〜17μmである。
【0018】
平均繊維径10μmを越え20μm以下のガラス繊維の配合量は、無機充填材(B)の合計量中、40〜80重量%であることが好ましく、45〜73重量%であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、成形品外観がより向上する傾向にある。
【0019】
<他の無機充填材>
本発明では、無機充填材(B)が、上記平均繊維径10μmを越え20μm以下のガラス繊維以外の他の無機充填材を含んでいてもよい。
他の無機充填材は、その種類に制限がなく、従来から知られている無機充填材であってよく、形状も特に制限がなく、繊維状、板状、針状、球状、粉末などいずれであってもよい。
他の無機充填材は、平均繊維径10μmを越え20μm以下のガラス繊維以外のガラス繊維、炭素繊維、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ウォラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウムウィスカー、ガラスビーズ、バルーン、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、マイカおよびタルクである。これらの成分は、1種でもまたは2種以上の混合物であってもよい。
【0020】
本発明では、特に、無機充填材として、上記ガラス繊維と、マイカおよびタルクの少なくとも1種を含むことが好ましく、上記ガラス繊維とマイカを含むことがより好ましい。
マイカの配合量は、無機充填材の15〜60重量%であることが好ましく、20〜55重量%であることが好ましい。
さらに、上記ガラス繊維とマイカ以外の無機充填材は、10重量%以下であることが好ましく、4重量%以下であることがさらに好ましい。また、上記ガラス繊維とマイカ以外の無機充填材は、タルクであることが好ましい。
【0021】
<カーボンブラック(C)>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、混合ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、カーボンブラック(C)4〜20重量部を含み、6〜15重量部含むことがより好ましい。配合量が4重量部未満であると、本発明に係るポリアミド樹脂組成物の耐候性向上効果が小さく、配合量が20重量部を越えると、ポリアミド樹脂組成物の強度・剛性、成形性を損なうこととなり、好ましくない。
本発明で用いるカーボンブラックは、その種類等特に限定されるものではないが、例えばサーマルブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどが挙げられる。カーボンブラックは、平均粒子径が10μm〜40μmの範囲、BET吸着法による比表面積が50〜300m2/gの範囲、ジブチルフタレートを用いた吸油量の測定値が50cc/100g〜150cc/100gの範囲であるものが好適である。
本発明では、カーボンブラックのマスターバッチを配合するのが、カーボンブラックの分散性を向上させる目的から好ましい。
【0022】
<その他成分>
さらに、ポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて、混合ポリアミド樹脂(A)、無機充填剤(B)、およびカーボンブラック(C)以外に他の成分、例えば、樹脂添加剤等を含有してもよい。例えば、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、染顔料、難燃剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。
これらの他の成分の含有量としては、ポリアミド樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは2重量部未満であり、より好ましくは、1.5重量部未満であり、最も好ましくは1重量部未満である。2重量部未満とすることにより、モールドデポジット等による成形不良をより効果的に抑制できる。
【0023】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、公知のポリアミド樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。ポリアミド樹脂組成物の製造法の具体例を挙げると、本発明に係る各成分、並びに必要に応じて配合されるその他の成分を、例えば、所定の割合で秤量し、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸または二軸スクリュー押出機、コニーダー等を使用して溶融混練する方法等が挙げられる。なかでも、樹脂組成物各構成成分の分散性の点から、短軸または二軸スクリュー押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。
なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240〜320℃の範囲である。溶融混練において溶融樹脂をペレットにする場合には、溶融樹脂はストランド状に押し出され、吐出ダイスを経て、通常は冷却水槽が設けられて、冷却処理後、ペレタイザー等の切断手段により切断されて、平均粒径1〜5mm程度のペレットとされる。
【0024】
<射出成形>
本発明においては、上記のような方法で得られたポリアミド樹脂組成物を用い、射出成形法を用いて成形品を製造することができる。
射出成形法としては、具体的には例えば、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空射出成形法、インサート射出成形法による金属部品、その他の部品との一体成形法、二色射出成形法、コアバック射出成形法、サンドイッチ射出成形法等が挙げられる。またこの様な射出成形法に用いる金型としても、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には例えば、断熱金型や、急速加熱金型等が挙げられる。
【0025】
<成形品>
射出成形により得られた成形品は、優れた耐衝撃性、寸法安定性、優れた表面外観を兼備しているので、車両・航空機等の内装部品、外装部品、電気・電子・OA機器部品、携帯電話、機械部品、建築部材、レジャ−用品・雑貨類等の幅広い用途に適している。
【0026】
具体的には例えば、自動車外装部品としては、アウターハンドル、ドアミラースティ、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ルーフレール、ワイパーアームなどがあり、自動車内装部品としては、インナーハンドル、センターコンソール、インパネ、アシストグリップ、シートベルトストッパーなどが挙げられる。
また鉄道車両部品としては、テーブルアーム、吊り手、アシストグリップなどがあり、電気部品としては、シェーバー枠、ドライヤー、冷蔵庫用ハンドルおよび引き手、電子レンジ用扉、ポータブルMDシステムのハンドル、ヘッドホーンアーム、電動ドライバー用ハウジングなどが挙げられる。そして建材部品として、ドアハンドル、クレセント、フランス落としなどを例示できる。
特に、その優れた外観、生産性等から、特に車両・航空機用アウターまたはインナーハンドル用途に、好ましく用いられる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0028】
実施例および比較例において用いた原料成分は次のとおりである。
(A)ポリアミド樹脂
・ポリメタキシリレンジアミンアジパミド樹脂 (以下、「MXD6−1」と称す)
三菱瓦斯化学株式会社製、商品名「ポリアミドMXD6#6000」
融点243℃、相対粘度2.14
・ポリメタキシリレンジアミンアジパミド樹脂 (以下、「MXD6−2」と称す)
三菱瓦斯化学株式会社製、商品名「ポリアミドMXD6#6121」
融点243℃、相対粘度3.5
・ポリアミド6樹脂 (以下、「PA6」と称す)
宇部興産株式会社製、商品名「1010X1」
融点225℃、相対粘度2.00
・ポリアミド66 (以下、「PA66」と称す)
東レ株式会社製、商品名「CM3001−N」
融点265℃、相対粘度2.95
【0029】
(B)無機充填材
・ガラス繊維(以下「GF−1」と称す)
日本電気硝子株式会社製、商品名「ECS03T−289」
平均繊維径13μm、繊維長3mm
・ガラス繊維(以下「GF−2」と称す)
日本電気硝子株式会社製、商品名「ECS03T−296GH」
平均繊維径9.5μm、繊維長3mm
・ガラス繊維(以下「GF−3」と称す)
旭ファイバーグラス株式会社製、商品名「CS03TA416」
平均繊維径23μm、繊維長3mm
【0030】
・マイカ
クラレトレーディング株式会社製、商品名「スゾライトマイカ325HK」
平均粒径24μm
・タルク
富士タルク工業株式会社製、商品名「TM−2」
平均粒径14μm
【0031】
(3)その他の成分
・ステアリン酸バリウム(堺化学株式会社製)
・カーボンブラックマスターバッチ (以下、「カーボンブラックMB」という。)
日弘ビックス株式会社製、商品名「PA−0896A」
カーボンブラック含有量 50重量%
【0032】
(実施例1〜9および比較例1〜8)
上記原料成分を使用し、下記表に示す割合で各成分を含有するポリアミド樹脂組成物を以下のように調製した。
すなわち、表に示す無機充填材以外の各成分を同表に示す割合にて、タンブラーミキサーで均一に混合した後、二軸押出機(東芝機械株式会社製「TEM−26SS」)のホッパに投入し、無機充填材はサイドからフィードし、溶融混練した。溶融樹脂組成物のストランドを、水槽にて冷却し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0033】
(1)曲げ強度、曲げ弾性率
上記で得られた樹脂組成物のペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、ファナック株式会社製射出成形機「α100iA型」を使用して、シリンダー温度275℃、金型温度130℃、成形サイクル45秒の条件で、ISO引張試験片を射出成形した。ISO178に準拠して、曲げ試験片を試験片とし、23℃の温度で曲げ強度(単位:MPa)および、曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
【0034】
(2)シャルピー衝撃強度
上記(1)と同様の方法でISO試験片を射出成形し、ISO179に準拠して、この試験片からノッチ付試験片を作製し、23℃の環境下において、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m2)を測定した。
【0035】
(3)射出成形による成形品外観の評価
上記で得られた樹脂組成物のペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、日精樹脂工業株式会社製射出成形機「AZ−7000型」を使用して、片側に自動車本体ドアへの取り付け部分を有するピラー/ドア取り付け部成形用金型を取り付け、シリンダー温度285℃、金型温度100℃または110℃、射出時間2秒、保圧時間8秒、成形サイクル55秒の条件で連続成形した。
目視観察により、成形品外観を評価した。ヒケ、フィラー浮き、バリ、樹脂焼け、転写ムラなどが認められず外観の良好なものを「○」とし、これらの不良が大きく発生したものを「×」、その中間を「△」と判定した。
以上の評価結果を下記表に示す。
【0036】
(4)色差変化(ΔE)の測定
ファナック株式会社製射出成形機「α100iA型」を使用し、樹脂温度275℃、金型温度130℃、射出速度50mm/sec、保圧時間10秒、冷却時間15秒の条件で、60mm×60mm、厚さ2mmのシボ付(GR503)角板を成形した。成形したシボ付角板につき、以下に記載の試験条件で促進耐候性試験を行ない、試験前後の色差変化(ΔE)を以下に記載の方法で測定した。
【0037】
<促進耐候性試験の試験条件>
スガ試験機株式会社製「サンシャインウエザオ試験機」を使用して、ブラックパネル温度63℃、120分間に18分間継続して雨を降らせることを1サイクルとし、250サイクル(500時間)繰り返した。
【0038】
<色差変化(ΔE)の測定>
多光源分光測色計(日本電色工業株式会社製、型式:SE−2000)を使用し、JIS Z8722の準拠した反射法により測定した。光学系はC光源2度視野、光束はφ30mmとした。色差変化は、促進劣化試験前と後にそれぞれ色差を測定し、促進劣化試験後の色差から試験前の色差を減じた値を示した。測定値が小さいほど、色差が小さく変色が少ないことを意味する。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
上記表から以下のことが明らかである。
(1)本発明にかかるポリアミド樹脂組成物から得られる成形品は剛性、強度、耐衝撃性、良外観を兼ね備え、促進劣化試験での色差変化が少ない。
(2)混合ポリアミド樹脂の配合量が特定の範囲を外れている比較例1〜3の樹脂組成物は成形品外観が劣る。
(3)無機充填材の配合量が特定の範囲を外れている比較例4、5の樹脂組成物は成形品外観及び耐衝撃強度が劣る。
(4)ガラス繊維の平均繊維径が特定の範囲を外れている比較例6、7の樹脂組成物は成形品外観もしくは強度、耐衝撃性が劣る。
(5)カーボンブラックの配合量が特定の範囲を外れている比較例8の樹脂組成物は促進劣化試験前後の色差変化が大きい。
【0042】
本発明に係るポリアミド樹脂組成物から得られる成形品は、耐候性などに優れているので、自動車外装部品、建材・住設部品に利用でき、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ポリメタキシリレンアジパミド樹脂50〜75重量%と、ポリアミド6樹脂25〜50重量%とからなり、かつ、他のポリアミド樹脂の配合量が6重量%以下である、混合ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、
無機充填材(B)100〜160重量部と、
カーボンブラック(C)4〜20重量部を
配合してなり、かつ、前記無機充填材(B)の少なくとも1種が、平均繊維径10μmを越え20μm以下のガラス繊維であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
無機充填材(B)が、少なくとも、前記ガラス繊維と、マイカおよびタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種とからなる、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
無機充填材(B)が、少なくとも、前記ガラス繊維40〜80重量%と、マイカ15〜60重量%とからなる、請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
ポリメタキシリレンアジパミド樹脂の相対粘度が1.8〜2.8であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
無機充填材(B)が、少なくとも、前記ガラス繊維40〜80重量%と、マイカ15〜60重量%とからなり、かつ、他の無機充填材が10重量%以下である、請求項3または4に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を射出成形によって成形することを特徴とする、成形品の製造方法。

【公開番号】特開2013−100412(P2013−100412A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245129(P2011−245129)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】