説明

ポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法およびその方法により製造されたポリアミド樹脂組成物の水性分散液

【課題】 比較的簡単な操作で、ポリアミド樹脂の黄変を効果的に防止することができるポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリアミド樹脂とアンモニウム化合物とを含有するポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法は、
(1)ポリアミド樹脂水性分散液とアンモニウム化合物の水溶液を混合するか、または、
(2)ポリアミド樹脂とアンモニウム化合物とを溶融混合して得られたポリアミド樹脂組成物を水性分散媒中に分散させる、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法およびその方法により製造されたポリアミド樹脂組成物の水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、強度、耐熱性、耐衝撃性、耐溶剤性、接着性、ガスバリヤー性および耐摩耗性等に優れた材料として衣料、包装、成型品等、多くの産業分野で広く利用されている。具体的には、ペレット、フィルム、繊維、粉体および水性分散液等の形態で、水性インキ、繊維処理剤、繊維目止め剤、紙処理剤、鋼板表面処理剤、表面改質剤および芯地接着剤等として用いられている。
【0003】
一般にポリアミド樹脂は、末端アミノ基に起因した黄変が発生し易いという問題点を有しており、従来から、ポリアミド樹脂の黄変防止方法として種々の提案がなされている。例えば、ポリアミド繊維の末端アミノ基にアルキル基を結合させる方法(例えば下記の特許文献1に記載されている)、ポリアミド系繊維の末端アミノ基を酸無水物で処理する方法(例えば下記の特許文献2に記載されている)、ポリアミド繊維の末端アミノ基をアルデヒド類で処理する方法(例えば下記の特許文献3に記載されている)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭55−47150号公報
【特許文献2】特開平8−60541号公報
【特許文献3】特開平11−50379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記先行技術に開示された方法を実施しても、その黄変防止効果は、必ずしも満足すべきものとはいえず、また、染色前のポリアミド繊維の黄変を防止することを主たる目的としているため、粉体、水性分散液等、他の形態で使用されるポリアミド樹脂に適用することは困難である。そこで、本発明は、比較的簡単な操作で、ポリアミド樹脂の黄変を効果的に防止することができるポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
すなわち、本発明によれば、ポリアミド樹脂とアンモニウム化合物とを含有するポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法が提供される。本発明の方法に用いられるポリアミド樹脂組成物においては、ポリアミド樹脂99.99〜50重量部およびアンモニウム化合物0.01〜50重量部からなる混合物を含むことが好ましい。さらに好ましくは、ポリアミド樹脂99.9〜70重量部およびアンモニウム化合物0.1〜30重量部からなる混合物を用いる。前記ポリアミド樹脂組成物において、アンモニウム化合物の混合割合が0.01重量部未満では、用いたポリアミド樹脂の耐黄変性に十分な効果が見られない。また、50重量部より多いとポリアミド樹脂本来の性能を阻害するおそれがあり好ましくない。
【0008】
前記ポリアミド樹脂組成物を用いた場合、従来、公知の黄変防止剤により処理した場合に比べて、ポリアミド樹脂の耐黄変性は、後記実施例に示すように優れたものとなる。また、その黄変防止処理も、ポリアミド樹脂とアンモニウム化合物を単に混合する、あるいは、加熱下に混合するという比較的、簡単な操作により行なうことができる(この点も後述の実施例にて説明)。その後に、種々の形態として用いればよいため、経済的に有利に各種の使用分野に、耐黄変性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法に用いられるポリアミド樹脂は、公知の方法により製造したものである。例えば、ジアミンとジカルボン酸またはω−アミノ−ω’カルボン酸との重縮合、環状ラクタムの開環重合等の方法により製造したポリアミド樹脂が、挙げられる。ここで重縮合または開環重合の際に重合調節剤として、ジカルボン酸またはモノカルボン酸を用いることができる。
【0010】
前記ポリアミド樹脂の製造に用いられるジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、フェニレンジアミンおよびメタキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0011】
前記ポリアミド樹脂の製造に用いられるジカルボン酸の具体例としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸およびダイマー酸(リノール酸やオレイン酸を主成分とする不飽和脂肪酸より合成される炭素数36の不飽和ジカルボン酸)等が挙げられる。
【0012】
前記ポリアミド樹脂の製造に用いられるω−アミノ−ω′カルボン酸の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸および12−アミノドデカン酸等が挙げられる。
【0013】
前記ポリアミド樹脂の製造に用いられる環状ラクタムの具体例としては、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタムおよびω−ラウリルラクタム等が挙げられる。
【0014】
前記重合調節剤として用いられるジカルボン酸の具体例としては、前記、ポリアミド樹脂の製造に用いられるジカルボン酸と同様に、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、フマル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸およびダイマー酸等が挙げられる。また、モノカルボン酸の具体例としては、カプロン酸、ヘプタン酸、ノナン酸、ウンデカン酸およびドデカン酸等が挙げられる。
【0015】
本発明においては、前記の方法により得られるポリアミド樹脂の中、特に−[NH(CH2)5CO]−、−[NH(CH2)6NHCO(CH2)4CO]−、−[NH(CH2)6NHCO(CH2)8CO]−、−[NH(CH2)10CO]−、−[NH(CH2)11CO]−および−[NH(CH2)2NHCO−D−CO]−(式中Dは炭素数34の不飽和炭化水素を示す)からなる群より選ばれた少なくとも1種を構造単位とするポリアミド樹脂が好ましく用いられる。
【0016】
それらの具体例としては6−ナイロン、66−ナイロン、610−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン、6/66共重合ナイロン、6/610共重合ナイロン、6/11共重合ナイロン、6/12共重合ナイロン、6/66/11共重合ナイロン、6/66/12共重合ナイロン、6/66/11/12共重合ナイロン、6/66/610/11/12共重合ナイロンおよびダイマー酸系ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの重合体または共重合体は、単独であっても2種以上の混合物であってもよい。
【0017】
前記ポリアミド樹脂組成物に用いられるアンモニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、硫酸エステルのアンモニウム塩、カルボン酸のアンモニウム塩、スルホン酸のアンモニウム塩、リン酸エステルのアンモニウム塩および無機アンモニウム塩等が挙げられる。
【0018】
前記硫酸エステルのアンモニウム塩の具体例としては、ラウリル硫酸アンモニウム、オレイル硫酸アンモニウム、2−エチルへキシル硫酸アンモニウム、イソステアリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸アンモニウム塩;ロート油アンモニウム塩、トルコ赤油アンモニウム塩等の硫酸化油アンモニウム塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩;モノラウリン酸グリセリル硫酸アンモニウム等のモノ脂肪酸グリセリル硫酸アンモニウム塩;およびラウリルエタノールアマイド硫酸アンモニウム等の脂肪酸アルキロールアマイド硫酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0019】
前記カルボン酸のアンモニウム塩の具体例としては、ラウリン酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム等の脂肪酸アンモニウム塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸アンモニウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸アンモニウム塩;N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンアンモニウム、N−ラウロイル−N−メチルグリシンアンモニウム等のN−アシルアミノ酸アンモニウム塩;エチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩、エチレン−メタクリル酸共重合体アンモニウム塩等のエチレン−α、β−不飽和カルボン酸共重合体アンモニウム塩;その他、スチレン−無水マレイン酸共重合体アンモニウム塩、イソブチレン−無水マレイン酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸−アクリルエステル共重合体アンモニウム塩、カルボキシメチルセルロースアンモニウム塩、アルギン酸アンモニウム塩およびメチルビニルエーテル無水マレイン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
前記スルホン酸のアンモニウム塩の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩;ジイソプロピルナフタレンスルホン酸アンモニウム等のアルキルナフタレンスルホン酸アンモニウム塩;ナフタレンスルホン酸アンモニウムのホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸アンモニウムのホルマリン縮合物等のスルホン酸アンモニウムのホルマリン縮合物;ジ−2−エチルへキシルスルホコハク酸アンモニウム、ジラウリルスルホコハク酸アンモニウム等のジアルキルスルホコハク酸エステルアンモニウム塩;ラウリルスルホ酢酸アンモニウム等のアルキルスルホ酢酸アンモニウム塩;テトラデセンスルホン酸アンモニウム等のα−オレフィンスルホン酸アンモニウム塩;およびN−ラウリルメチルタウリンアンモニウム等のN−アシルメチルタウリンアンモニウム塩等が挙げられる。
【0021】
前記リン酸エステルのアンモニウム塩の具体例としては、ラウリルエーテルリン酸エステルアンモニウム等のアルキルエーテルリン酸エステルアンモニウム塩;およびラウリルリン酸エステルアンモニウム等のアルキルリン酸エステルのアンモニウム塩等が挙げられる。
【0022】
前記無機アンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、尿素、塩化アンモニウム、リン酸一水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびアンモニア等が挙げられる。
【0023】
前記アンモニウム化合物の中、硫酸エステルのアンモニウム塩が好ましく用いられる。硫酸エステルのアンモニウム塩としては、アルキル硫酸アンモニウム塩、例えば、ラウリル硫酸アンモニウムが好適に用いられ、また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0024】
さらに、前記アンモニウム化合物の中、カルボン酸のアンモニウム塩が好ましく用いられる。カルボン酸のアンモニウム塩としては、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸共重合体アンモニウム塩、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体アンモニウム塩が好適に用いられる。なお、前記したアンモニウム化合物は、単独あるいは2種以上混合して用いてもよい。
【0025】
本発明のポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法としては、(1)ポリアミド樹脂水性分散液とアンモニウム化合物の水溶液を混合する方法、(2)ポリアミド樹脂とアンモニウム化合物とを溶融混合して得られたポリアミド樹脂組成物を水性分散媒中に分散させる方法が挙げられる。
【0026】
前記(1)の方法において用いられるポリアミド樹脂水性分散液は公知の方法により製造することができる。例えば、(a)ポリアミド樹脂を加熱下、界面活性剤、分散剤等を溶解した水性分散媒中に、撹拌等の手段により強制分散させて製造する方法、(b)水不溶性の有機溶剤に溶解したポリアミド樹脂溶液を、水性分散媒中で界面活性剤とともに、高剪断力で攪拌乳化した後、有機溶剤を除去する、いわゆる後乳化法により製造する方法、(c)ポリアミド樹脂の末端カルボン酸を塩基を用いて自己乳化させて製造する方法、(d)既述した方法により得られたポリアミド樹脂粉体を水性分散媒中に分散させて製造する方法等が挙げられる。上記の方法により得られたポリアミド樹脂水性分散液と、アンモニウム化合物の水溶液と、を混合し、本発明のポリアミド樹脂組成物を水性分散液として得ることができる。
【0027】
前記ポリアミド樹脂組成物水性分散液の安定性は、分散されたポリアミド樹脂粒子の粒子径に依存しており、粒子の重量平均粒子径は0.1〜1000μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜500μmである。また、前記水性分散液中の樹脂濃度は、1〜70重量%とされることが好ましい。樹脂濃度が1重量%未満の場合は、水分が多すぎて使用上不都合である。逆に70重量%を越えると、水性分散液の粘度が高くなり取り扱いが困難となる。
【0028】
前記(2)の方法において、ポリアミド樹脂とアンモニウム化合物とを溶融混合して得られた本発明のポリアミド樹脂組成物を水性分散媒中に分散させる方法としては、水不溶性の有機溶剤に溶解した前記ポリアミド樹脂組成物を、水性分散媒中で界面活性剤とともに、高剪断力で攪拌乳化した後、有機溶剤を除去する方法、前記ポリアミド樹脂組成物を粉体とし、この粉体を水性分散媒中に分散する方法等、前記(1)で用いられた方法を援用することができる。このようにして得られたポリアミド樹脂組成物水性分散液中の粒子の重量平均粒子径は0.1〜1000μmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜500μmである。また、前記水性分散液中の樹脂濃度は、1〜70重量%とされることが好ましい。
【0029】
本発明のポリアミド樹脂組成物水性分散液の製造方法において、ポリアミド樹脂を分散させる水性分散媒は、一般に通常の水道水や脱イオン水であるが、例えば水性分散液の安定性をより高めることを目的として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース等の水溶性樹脂を添加して粘度を調整した水が用いられてもよい。前記水性分散媒は、本発明の目的を阻害しない範囲において前記成分の他に、消泡剤、粘度調整剤、防かび剤等を含んでもよい。また必要に応じて、酸化防止剤、脂肪酸アミド、ワックス、シリコーンオイル等のスリッピング性改良剤、界面活性剤等が配合されていてもよい。
【0030】
本発明により製造されるポリアミド樹脂組成物の水性分散液は、優れた耐黄変性を有するため、水性インキ、繊維処理剤、繊維目止め剤、紙処理剤、鋼板表面処理剤、表面改質剤および芯地接着用等の多くの分野に使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例で得られたポリアミド樹脂組成物の耐黄変性の評価については下記の方法で行った。
【0032】
(耐黄変性の評価方法)
白色の木綿布(約3×5cm)に、ポリアミド樹脂組成物を粉体としてそのまま散布、または水性分散液としたものを塗布し、ついで、100℃で2時間加熱乾燥を行い、ポリアミド樹脂組成物で処理された木綿布を得た。得られた木綿布とIMPREGNATED TEST PAPER(Yellowing Test Kit:James H.Heal & C0.Ltd)を重ねて、2枚のスライドグラスの間に挟み込んだ。スライドグラスの周囲をアルミホイルで包み、乾燥機中で、60℃、3時間保持して加熱処理を行なった。加熱処理後、木綿布の色差(L*、a*、b*)を測色色差計(日本電色工業製、Z−1001DP型)を用いて反射法で求め、下記式より白色度を求めた。
【0033】
【数1】

【0034】
〔実施例1〕
ポリアミド樹脂95.24重量部とアンモニウム化合物4.76重量部からなる混合物を含むポリアミド樹脂組成物水性分散液の耐黄変性の評価を行なった。すなわち、マグネティックスターラを備えた500cm3容のビーカーに、ポリアミド樹脂の粉体(6/66/12共重合ナイロン、中位粒子径200μm)60g、界面活性剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル1gおよび水59gを仕込み、攪拌下に分散を行いポリアミド樹脂水性分散液を得た。得られたポリアミド樹脂水性分散液の樹脂濃度は50重量%であった。このポリアミド樹脂水性分散液40g(ポリアミド樹脂として95.24重量部)と、別途、調製した25重量%のラウリル硫酸アンモニウム水溶液4.0g(ラウリル硫酸アンモニウムとして4.76重量部)とを混合し、ポリアミド樹脂組成物の水性分散液を得た。得られたポリアミド樹脂組成物の水性分散液の耐黄変性を、前記の評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。
【0035】
〔実施例2〕
ポリアミド樹脂93.02重量部とアンモニウム化合物6.98重量部からなる混合物を含むポリアミド樹脂組成物水性分散液の耐黄変性の評価を行なった。すなわち、実施例1において、25重量%のラウリル硫酸アンモニウム水溶液4.0gの代わりに、25重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム水溶液6.0g(6.98重量部)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物の水性分散液を得た。このポリアミド樹脂組成物の水性分散液の耐黄変性を、前記の評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。
【0036】
〔実施例3〕
ポリアミド樹脂86.96重量部とアンモニウム化合物13.04重量部からなる混合物を含むポリアミド樹脂組成物水性分散液を用いて、耐黄変性の評価を行なった。すなわち、実施例1において、25重量%のラウリル硫酸アンモニウム水溶液4.0gの代わりに、25重量%のエチレン−アクリル酸共重合体のアンモニウム塩水溶液12.0g(13.04重量部)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物の水性分散液を得た。このポリアミド樹脂組成物の水性分散液の耐黄変性を、前記の評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。
【0037】
〔実施例4〕
ポリアミド樹脂97.56重量部とアンモニウム化合物2.44重量部からなる混合物を含むポリアミド樹脂組成物水性分散液を用いて、耐黄変性の評価を行なった。すなわち、直径50mmのタービン型撹拌羽根を備えた内径110mm、高さ250mm、内容積1.5dm3の耐圧オートクレーブ(加熱用ジャケット付)に、ポリアミド樹脂(6/66/12共重合ナイロン)120g、水179.6gおよび水酸化ナトリウム0.4gを仕込み密閉した。撹拌機を始動し、回転数500rpmで攪拌しながら、ジャケット部に加熱油を循環することにより、オートクレーブ内部を150℃まで昇温した。内部温度を150℃に保ちながら、30分間撹拌し、その後、50℃まで冷却して、オートクレーブよりポリアミド樹脂水性分散液を取り出した。得られたポリアミド樹脂水性分散液の樹脂濃度は40重量%であり、重量平均粒子径はレーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所株式会社製SALD2000)で測定したところ0.6μmであった。得られたポリアミド樹脂水性分散液75g(97.56重量部)と、別途、調製した25重量%のラウリル硫酸アンモニウム水溶液3.0g(2.44重量部)とを混合し、ポリアミド樹脂組成物の水性分散液を得た。このポリアミド樹脂組成物の水性分散液の耐黄変性を前記した評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。
【0038】
〔実施例5〕
ポリアミド樹脂96.77重量部とアンモニウム化合物3.23重量部からなる混合物を含むポリアミド樹脂組成物水性分散液を用いて、耐黄変性の評価を行なった。すなわち、実施例4において25重量%のラウリル硫酸アンモニウム水溶液3.0gの代わりに、25重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウムの水溶液4.0g(3.23重量部)を用いた以外は実施例4と同様にしてポリアミド樹脂組成物の水性分散液を得た。このポリアミド樹脂組成物の水性分散液の耐黄変性を前記した評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。
【0039】
〔参考例〕
ポリアミド樹脂99.01重量部とアンモニウム化合物0.99重量部からなる混合物を含むポリアミド樹脂組成物の粉体を用いて、耐黄変性の評価を行なった。すなわち、20dm3のヘンシェルミキサにポリアミド樹脂の粉体(6/66/12共重合ナイロン、中位粒子径200μm)2.0kg(99.01重量部)および25重量%ラウリル硫酸アンモニウム水溶液80g(0.99重量部)を仕込み、回転数1000rpmで5分間、攪拌混合した。得られた混合物を80℃で5時間乾燥してポリアミド樹脂組成物の粉体を得た。このポリアミド樹脂組成物の粉体の耐黄変性を前記した評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。上記の方法によって得られた、ポリアミド樹脂組成物の粉体を押出成形、溶融紡糸等の適当な手段により、耐黄変性に優れたペレット、フィルム、繊維等の形状とすることができる。
【0040】
〔比較例1〕
実施例1において25重量%のラウリル硫酸アンモニウム水溶液4.0gを用いない以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂水性分散液を得た。このポリアミド樹脂水性分散液の耐黄変性を前記した評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。
【0041】
〔比較例2〕
実施例4において25重量%のラウリル硫酸アンモニウム水溶液3.0gを用いない以外は実施例4と同様にしてポリアミド樹脂水性分散液を得た。このポリアミド樹脂水性分散液の耐黄変性を前記した評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。
【0042】
〔比較例3〕
実施例1において25重量%のラウリル硫酸アンモニウム水溶液4.0gの代わりに、公知の黄変防止剤であるラウリル硫酸エステルナトリウム1.0gを用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物の水性分散液を得た。このポリアミド樹脂組成物の水性分散液の耐黄変性を前記した評価方法に従い評価した。得られた結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から、本発明のポリアミド樹脂組成物において用いられる、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム等、硫酸エステルのアンモニウム塩;エチレン−アクリル酸共重合体のアンモニウム塩等、カルボン酸のアンモニウム塩の黄変防止効果が優れていることが明らかである。
【0045】
〔評価〕
前記、実施例で示したように、本発明のポリアミド樹脂組成物は、表1における実施例1と比較例3の白色度の比較から、公知の黄変防止剤を用いた場合と比べて、明らかに耐黄変性に優れていることがわかる。また、実施例1〜5に示すように、本発明のポリアミド樹脂組成物の水性分散液は、各成分物質を単に混合、撹拌、加熱等の簡単な操作のみ調製できるので、コスト的にも有利である。さらに本発明のポリアミド樹脂組成物は、実施例1〜5に示すように水性分散液としてばかりでなく、参考例に示すように粉体の形態でも使用可能であるため、この粉体に基づいてペレットやフィルム等が調製できる。従って、本発明のポリアミド樹脂組成物は、耐黄変性に優れるとともに、種々の形態で使用可能であるため、成型品、衣料、包装材料等の種々の産業分野に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂とアンモニウム化合物とを含有するポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法であって、
(1)ポリアミド樹脂水性分散液とアンモニウム化合物の水溶液を混合するか、または、
(2)ポリアミド樹脂とアンモニウム化合物とを溶融混合して得られたポリアミド樹脂組成物を水性分散媒中に分散させる、ポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂99.99〜50重量部およびアンモニウム化合物0.01〜50重量部からなる混合物を含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂は、−[NH(CH2)5CO]−、−[NH(CH2)6NHCO(CH2)4CO]−、−[NH(CH2)6NHCO(CH2)8CO]−、−[NH(CH2)10CO]−、−[NH(CH2)11CO]−および−[NH(CH2)2NHCO−D−CO]−(式中Dは炭素数34の不飽和炭化水素を示す)からなる群より選ばれた少なくとも1種を構造単位としている請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法。
【請求項4】
前記アンモニウム化合物は、硫酸エステルのアンモニウム塩、カルボン酸のアンモニウム塩、スルホン酸のアンモニウム塩、リン酸エステルのアンモニウム塩、および無機アンモニウム塩からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1から3のいずれか一つに記載のポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法。
【請求項5】
前記硫酸エステルのアンモニウム塩は、アルキル硫酸アンモニウムまたはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウムである、請求項4に記載のポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法。
【請求項6】
前記カルボン酸のアンモニウム塩は、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体アンモニウム塩である、請求項4に記載のポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法。
【請求項7】
前記(1)のポリアミド樹脂水性分散液とアンモニウム化合物の水溶液を混合する方法は、
(a)ポリアミド樹脂を加熱下、界面活性剤、分散剤等を溶解した水性分散媒中に、撹拌等の手段により強制分散させる方法、
(b)水不溶性の有機溶剤に溶解したポリアミド樹脂溶液を、水性分散媒中で界面活性剤とともに、高剪断力で攪拌乳化した後、有機溶剤を除去する後乳化法、
(c)ポリアミド樹脂の末端カルボン酸を塩基を用いて自己乳化させる方法、および、
(d)ポリアミド樹脂粉体を水性分散媒中に分散させる方法、
から選択される、請求項1から3のいずれか一つに記載のポリアミド樹脂組成物の水性分 散液の製造方法。
【請求項8】
前記(2)のポリアミド樹脂とアンモニウム化合物とを溶融混合して得られたポリアミド樹脂組成物を水性分散媒中に分散させる方法は、
(a)水不溶性の有機溶剤に溶解した前記ポリアミド樹脂組成物を、水性分散媒中で界面活性剤とともに、高剪断力で攪拌乳化した後、有機溶剤を除去する方法、および、
(b)前記ポリアミド樹脂組成物を粉体とし、この粉体を水性分散媒中に分散する方法、
から選択される、請求項1から6のいずれか一つに記載のポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物の水性分散液の製造方法により得られるポリアミド樹脂組成物の水性分散液。

【公開番号】特開2012−25969(P2012−25969A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245083(P2011−245083)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【分割の表示】特願2009−293452(P2009−293452)の分割
【原出願日】平成12年1月17日(2000.1.17)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】