説明

ポリアミド樹脂組成物

【課題】ポリアミド樹脂、繊維状強化材、および無機充填材からなり、流動性および剛性に優れるポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂組成物100重量%に対してポリアミド樹脂(a)35〜60重量%、
繊維状強化材(b)35〜60重量%、
(b)以外の無機充填材(c)1〜20重量%
を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(a)のサンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2.3以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド樹脂、繊維状強化材、および無機充填材からなり、相反する特性である流動性と剛性を兼備し、成形用途、特に中空体をオーバーモールドすることに好適に用いることができるポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車分野において環境意識の高まりから車体の軽量化の要望が大きく、樹脂への期待が高まっている。また、電気電子分野においても軽薄短小化が益々進んでいる。このような理由のため材料には軽量化および高剛性化が望まれている。
【0003】
上記のような軽量化の要望のためには薄肉化することが重要である。薄肉化のためには、薄肉でも部品として成立するための剛性と、成形の際に薄肉部を充填可能な流動性が要求される。
【0004】
さらに、自動車分野では部品のモジュール化が進められており、多くの部品を組み付けても変形してはならないという理由からも高剛性材の要求がある。
【0005】
剛性向上のためには繊維状強化材や無機充填材を添加する方法が一般的に用いられるが、流動性が低下する問題があった。このように剛性と流動性は相反する特性であるため両立が極めて困難であった。
【0006】
このような問題に対し、無機充填材の平均粒径や粒度分布を調整することにより流動性を改良する技術が公開されている(例えば特許文献1)。ただし、この公知例は同種フィラーの粒度分布を規定したものであり、異種/異形状の強化材や無機充填材の組み合わせについて改良を行ったものではない。さらに本公知例には剛性向上に関することは一切記載されていなければ、その示唆もない。
【0007】
また、繊維状強化材と無機充填材を併用し、かつ無機充填材のアスペクト比が特定値以下であると規定した公知例が出願されているが、ウェルド特性や外観を改良するための技術であり、剛性と流動性の両立に関する記載や示唆は一切ない(例えば特許文献2)。
【0008】
また、他の公知例にはアスペクト比の大きい充填材を用いることにより機械特性の向上や変形抑制を特徴とした技術があるが、アスペクト比の小さい充填材を用いる本出願とは全く異なるものである(例えば特許文献3〜5)。
【0009】
さらには、以上の公知例にはポリアミド樹脂がヘキサメチレンアジパミド単位と、ヘキサメチレンイソフタルアミド単位および/またはカプロアミド単位とからなる共重合体である公知例は見あたらない。
【0010】
一方、ブロー成形によって得られた中空体をオーバーモールドする技術は特許文献6〜8に記載されているが、これら公知例は中空体をオーバーモールドする工法に関する技術、およびその成形品に関するものであり、オーバーモールドする樹脂材料に関するものではない。
【特許文献1】特開2003−3074号公報([0008]〜[0016]段落)
【特許文献2】特開2003−213011号公報([0028]〜[0029]段落)
【特許文献3】特開2001−151900号公報([0030]〜[0034]段落)
【特許文献4】特開平6−279615号公報([0038]〜[0040]段落)
【特許文献5】特開平6−145499号公報([0011]段落)
【特許文献6】特開平5−215025号公報([0012]段落)
【特許文献7】特開平5−338015号公報([0004]〜[0010]段落)
【特許文献8】特開平7−100856号公報([0007]〜[0011]段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ポリアミド樹脂、繊維状強化材、および無機充填材からなり、相反する特性である流動性と剛性を兼備したポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は主として、
(1)ポリアミド樹脂組成物100重量%に対してポリアミド樹脂(a)35〜60重量%、繊維状強化材(b)35〜60重量%、(b)以外の無機充填材(c)1〜20重量%からなるポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂(a)のサンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2.3以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物、
(2)ポリアミド樹脂(a)の一部または全部が、
ヘキサメチレンアジパミド単位(A1)65〜95重量%とヘキサメチレンイソフタルアミド単位(A2)35〜5重量%とからなる共重合体、または
ヘキサメチレンアジパミド単位(A1)65〜95重量%およびヘキサメチレンイソフタルアミド単位(A2)とカプロアミド単位(A3)との合計35〜5重量%とからなる共重合体であり、
かつ下式(1)を満足することを特徴とする上記(1)記載のポリアミド樹脂組成物、
【0013】
【数1】

(3)無機充填材(c)のアスペクト比が10以下であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のポリアミド樹脂組成物、
(4)繊維状強化材(b)が炭素繊維であることを特徴とする上記(1)〜(3)いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
(5)中空体のオーバーモールド用樹脂であることを特徴とする上記(1)〜(4)いずれかに記載のポリアミド樹脂組成物、
により達成される。
【発明の効果】
【0014】
ポリアミド樹脂、繊維状強化材、無機充填材からなり流動性と剛性を兼備したポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
本発明で用いるポリアミド樹脂(a)は、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0017】
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂の具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、およびこれらの混合物、ないし共重合体などが挙げられる。
【0018】
中でもナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン66/6Iコポリマー、ナイロン66/6I/6コポリマーが好ましく、特にナイロン66/6Iコポリマー、ナイロン66/6I/6コポリマー、およびこれらとの混合物が機械特性と流動性の点で好ましい。
【0019】
また、ナイロン66/6Iコポリマー、ナイロン66/6I/6コポリマーにおいては、それぞれを100重量%としてヘキサメチレンアジパミド単位(A1)65〜95重量%とヘキサメチレンイソフタルアミド単位(A2)35〜5重量%とからなる共重合体、
またはヘキサメチレンアジパミド単位(A1)65〜95重量%、およびヘキサメチレンイソフタルアミド単位とカプロアミド単位(A3)の合計35〜5重量%とからなる共重合体であることが特に好ましい。
【0020】
加えて、カプロアミド単位の重量分率(重量%)をヘキサメチレンイソフタルアミドの重量分率(重量%)で除した値(式(1))は、0以上10以下であることが好ましく、更に好ましくは0.1以上5以下、特に好ましくは0.3以上1以下である。この値が10を超える場合は成形性および外観は不十分になる。なお、上述の通りカプラミド単位を共重合することは必ずしも必要でないが、外観に優れる点では用いることが好ましい。
【0021】
【数2】

また、これらポリアミド樹脂の重合度は、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度としては、機械特性や流動性の点で2.3以下のものである。好ましくは1.8〜2.2の範囲のポリアミド樹脂である。
【0022】
上記ポリアミド樹脂(a)の含有量は、流動性や機械特性の点でポリアミド樹脂組成物に対して35〜60重量%である。
【0023】
また、ポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物が好ましく用いられる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの銅化合物などが挙げられる。なかでも1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、通常ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0024】
また、本発明の効果を損なわない範囲で他のポリアミド樹脂を添加してもよい。他のポリアミド樹脂としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、およびこれらの混合物、ないし共重合体などが挙げられる。
【0025】
本発明に用いる繊維状強化材(b)は流動性と剛性の点で、本発明のポリアミド樹脂組成物中にポリアミド樹脂組成物に対して35〜60重量%含有され、好ましくは40〜55重量%含有される。
【0026】
本発明に用いる繊維状強化材(b)としては、特に限定されるものではないが、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどが挙げられる。中でも剛性、流動性、比重の点で、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維が好ましく、特にPAN系の炭素繊維が好ましい。
【0027】
本発明に用いる無機充填材(c)は繊維状強化材(b)とは異なるものであり、その添加量は1〜20重量%であり、機械特性、流動性などの点でポリアミド樹脂組成物に対して3〜15重量%がより好ましい。
【0028】
また、繊維状強化材(b)と無機充填材(c)は合計でポリアミド樹脂組成物に対して40〜65重量%であることが流動性と剛性の点で好ましい。加えて、繊維状強化材(b)と無機充填材(c)の重量比(b/c)は1〜20の範囲内であることが剛性と流動性の両立の点で好ましい。
【0029】
さらに、無機充填材(c)のアスペクト比は、流動性と剛性の両立の点で10以下であることが好ましく、3以下がより好ましい。また、無機充填材(c)の平均粒径は繊維状強化材(b)の直径の1/2以下であることが流動性の点で好ましい。
【0030】
一例を挙げて説明すると、ポリアミド樹脂/繊維状強化材からなる樹脂組成物に対して、無機充填材の上記添加量範囲内でポリアミド樹脂の一部を無機充填材に置換した場合、流動性が向上することを見出したのである。すなわち、流動可能なポリアミド樹脂を固体である無機充填材に置換したにも関わらず、ポリアミド樹脂組成物として流動性が向上することを見出したものである。さらに、無機充填材と繊維状強化材の添加量比率や無機充填材の粒径を上記のようにすることで、より良好な効果が得られることを見出したものである。
【0031】
本発明に用いる無機充填材(c)の形状は特に限定されるものではなく、板状、針状、球状などの無機充填材を使用することができる。
ここで、無機充填材の平均粒径とはレーザ回折法によって測定される数値である。また、アスペクト比とは、無作為に抽出した充填材100個の最長長さを最短長さで除した値の平均値である。なお、無機充填材の最長長さと最短長さはSEMなど顕微鏡を用いて無機充填材自身を観察することで測定できる。測定方法としては、顕微鏡の観察写真と定規を用いて測定する方法や、測長機能が付属している顕微鏡であれば観察画像と測長機能を用いて測定する方法を採用できる。観察倍率については無機充填材の粒径によって適宜選択することができる。
【0032】
具体的には、ウィスカー状充填材、ワラステナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、モンモリロナイト、合成雲母などの膨潤性の層状珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラス・ビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウム、シリカ、グラファイトなどの非繊維状充填材が挙げられる。
【0033】
また、上記の充填材は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填材はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤および膨潤性の層状珪酸塩では有機化オニウムイオンで予備処理してあってもよい。
【0034】
本発明のポリアミド樹脂組成物中には (a)〜(c)の他に本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有せしめることができ、この場合には(a)〜(c)と他の成分との合計が100重量%のポリアミド樹脂組成物とすることが必要である。他の成分とは、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、他の重合体であり、これらを添加することができる。
【0035】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、押出機にポリアミド樹脂(a)、繊維状強化材(b)、無機充填材(c)を一括して供給し溶融混練する方法や、繊維状強化材(b)、無機充填材(c)をサイドフィードして溶融混練する方法などを採用することができる。
【0036】
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて中空体をオーバーモールドする方法としては、中空体を金型内にインサートした後、本発明のポリアミド樹脂組成物を射出成形、または射出圧縮成形する方法を採用することができる。
【0037】
なお、中空体を成形する方法に限定はなく、ブロー成形、ロストコア法、振動溶着、超音波溶着、スピン溶着、レーザー溶着、DSI成形、DRI成形など公知の方法を採用できる。
【0038】
本発明のポリアミド樹脂は、良流動、高剛性の特長を活かし、自動車分野、電気・電子分野など各分野の成形品に用いることが可能である。例えば、自動車分野では、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、バランスシャフトギア、オイル制動バルブ、オイルレベルゲージ、オイルクリーナーケース、ラジエータータンク、ウォーターポンプインペラー、サーモスタットハウジング、クーリングファン、インタークーラータンク、エアーダクト、エアコントロールバルブ、エアレギュレーター、エアフローメーターハウジング、エアーダクトインテーク、サイレンサー、レゾネーター、排ガスポンプサイドシール、排ガスバルブ、キャブレター、ガソリン噴射ノズル、ピストンバルブ、キャブレターバルブ、サージタンク、フューエルフィルターハウジング、フューエルストレーナー、フューエルセジメンタルケース、キャニスター、EGIチューブ、ソレノイドバルブ、ガソリンフロート、ガソリンチャンバー、フューエルチェックバルブ、フューエルインジェクター、フューエルインジェクターコネクター、フューエルインジェクターノズルカバー、フューエルフィラーキャップ、マスターシリンダーピストン、クラッチオイルリザーバー、スラストワッシャー、シフトアームコーティング、シフトレバーノブ、トランスミッションケース、トルコンスラストワッシャー、トランスミッションブッシュ、パワーステアリングタンク、ステアリングコラムカバー、ステアリングホーンパッド、ステアリングボールジョイント、ホイールフルキャップ、ホイールキャップセンター、ホイールセンターハブキャップ、ブレーキオイルリザーバー、ブレーキオイルフロート、ブレーキリザーバーキャップ、サイドブレーキワイヤープロテクター、ラジエーターグリル、フロントエンドバンパー、リアエンドバンパー、バンパーモール、フロントフェンダー、サイドミラーステイ、サイドミラーハウジング、エンブレム、リトラクタブルヘッドランプカバー、電動ミラーベース、フューエルリッド、ボンネットフードルーパー、エクストラクトグリル、ドア、サイドルーバー、ドアラッチカバー、ドアサイドモール、アウタードアハンドル、ピラールーバー、トランクロアーバックフィニシャー、トランクリアエプロン、ハッチバックスライドブラケット、ライセンスプレート、ライセンスプレートポケット、フューエルリッド、サンルーフフレーム、サイドモール、ウィンドウピボット、ウィンドウガラススライダー、ウィンドウモール、エアースポイラー、インストゥルメントパネルコア、リッドアウター、センタークラスター、スイッチ、アッパーガーニッシュ、リッドクラスター、メーターフード、メーターパネル、グローブボックス、チェンジレバーカバー、グローブボックスリッド、グローブボックスノブ、グローブドアアウター、アッシュトレイランプハウジング、アッシュトレイパネル、サンバイザーブラケット、サンバイザーシャフト、サンバイザーホルダー、ピラーガーニッシュ、ルームミラーステイ、レギュレーターハンドル、ドアトリム、インサイドドアロックノブ、インナーロックノブ、ウィンドウレギュレーターハンドル、ウィンドウレギュレーターハンドルノブ、ルーフサイドレールガーニッシュ、アームレストインサート、アームレストベース、アームレストガイド、リアシェルフサイド、ヘッドレストガイド、シートベルトタングプレート、シートベルトリトラクターギア、シートベルトバックル、シートベルトスルーアンカー、リッドクラスター、安全ベルト機構部品、クーラーシロッコファン、クーラーバキュームポンプ、エアコンマグネットクラッチボビン、エアコンアクチュエーター、コンプレッサーバルブ、エアーベンチレーションフィン、エアコン調節ツマミ、ヒーターコアタンク、ヒーターバルブ、ジェネレーターコイルボビン、ジェネレーターカバー、ジェネレーターブッシュ、サーキットボード、ブラシホルダー、コンデンサーケース、レギュレーターケース、スターターレバー、スターターコイルボビン、スターターインターバルギア、ディストリビューターポイントブッシュ、イグニッションコイルケース、イグニッションコイルボビン、ディストリビューター絶縁端子、ディストリビューターキャップ、スリーブベアリング、ヘリカルギアー、バキュームコントローラー、ジャンクションボックス、ワイヤーハーネスコネクター、リレーターミナルベースケース、コイルボビン、ヒューズボックス、スイッチベース、リレーケース、各種スイッチ基板、ランプソケット、ランプリフレクター、バックホーンハウジング、サイレントギア、パワーウィンドウスイッチ基板ケース、ワイパーレバー、ウォッシャーモーターハウジング、ワイパーモーターインシュレーター、ワイパーアームヘッドカバー、ウォッシャーノズル、ワイパーアームヘッド、スピードメータードリブンギア、スピードメーターコントロール、メーターコネクター、回転センサー、スピードセンサー、パワーシートギアハウジング、ブラシホルダー、コンミュテーター、モーターギア、ボンネットクリップ、モールクリップ、内装クリップ、バンパークリップ、電気配線用バンドクリップ、アンテナインナーチューブ、フェンダー、スポイラー、ルーフレール、テールゲート、バンパー、およびこれら複数部品を組み付けたモジュール部品の基材などが挙げられる。中でも中空部を有する部品に好適に用いることができる。
【0039】
また、その他の用途として、パソコン、液晶プロジェクター、モバイル機器、携帯電話などの筐体、内燃機関用途、電動工具ハウジング類などの機械部品を始め、各種電気・電子部品、医療機器、食品容器、家庭・事務用品、建材関係部品および家具用部品などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0041】
[原材料]
実施例および比較例で使用した原材料は以下に示すとおりである。特に断らない限りはいずれも常法に従い重合を行い、調整した。
【0042】
<ポリアミド樹脂>
ポリアミド樹脂1:ポリアミド66樹脂(相対粘度2.2)
ポリアミド樹脂2:ポリアミド66樹脂(相対粘度2.5)
ポリアミド樹脂3:ポリアミド66/ポリアミド6I=80重量%/20重量%共重合体(相対粘度2.0)
ポリアミド樹脂4:ポリアミド66/ポリアミド6I/ポリアミド6=80重量%/15重量%/5重量%共重合体(相対粘度2.1)。
【0043】
<繊維状強化材>
炭素繊維 :TS12(繊維径7μm、繊維長6mmチョップドストランド)(東レ社製)。
【0044】
<無機充填材>
炭酸カルシウム:Vigot HT(白石カルシウム社製)平均粒径0.2μm、アスペクト比1.1。
粒子状ホウ酸アルミニウム:アルボライトFA03(四国化成社製)平均粒径3μm、アスペクト比1.2。
タルク:LMS100(富士タルク工業社製)平均粒径6μm、アスペクト比30。
【0045】
[測定方法]
(1)曲げ特性
ASTM D790に従って測定した。
【0046】
(2)溶融粘度
300℃に昇温した東洋精機製キャピログラフを用い、該装置にペレットを投入し5分間滞留させた後、剪断速度1000sec−1の時の溶融粘度を測定した。
【0047】
(3)アスペクト比
走査型電子顕微鏡を用いて無機充填材自身を観察し、無作為に抽出した無機充填材(c)100個の最長長さを最短長さで除した値の平均値を求めた。
最長長さと最短長さは顕微鏡の観察写真と定規を用いて測定した。なお、炭酸カルシウムおよびタルクは10000倍、粒子状ホウ酸アルミニウムは2000倍の倍率で観察した。
【0048】
(4)中空体のオーバーモールド成形
ガラス繊維30重量%強化ナイロン66を用いてブロー成形法により内径10cm、肉厚約1.7mmの中空体を成形した。得られた中空体を金型にインサートし、本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形し、中空体の変形、潰れ状態を観察した。
○:問題なし。
×:変形、潰れ、樹脂漏れなどあり。
【0049】
実施例1〜6、比較例1〜4
表1に示す割合でポリアミド樹脂を2軸押出機のメインフィーダーから供給し、シリンダー途中のサイドフィーダーから繊維状強化材および無機充填材を供給する方法で混練温度300℃、スクリュー回転数200rpmで溶融混練を行った。得られたペレットを乾燥後、シリンダー温度300℃、金型温度80℃の条件で試験片の射出成形、および中空体のオーバーモールド成形を実施した。評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

実施例1〜6および比較例1〜4の結果より、本発明の樹脂は良好な剛性と流動性を備えたものであった。
【0052】
ポリアミド樹脂、繊維状強化材、および無機充填材からなり、相反する特性である流動性と剛性を兼備したポリアミド樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂組成物100重量%に対してポリアミド樹脂(a)35〜60重量%、
繊維状強化材(b)35〜60重量%、
(b)以外の無機充填材(c)1〜20重量%
を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(a)のサンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が2.3以下であることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアミド樹脂(a)の一部または全部が、
ヘキサメチレンアジパミド単位(A1)65〜95重量%とヘキサメチレンイソフタルアミド単位(A2)35〜5重量%とからなる共重合体、または
ヘキサメチレンアジパミド単位(A1)65〜95重量%およびヘキサメチレンイソフタルアミド単位(A2)とカプロアミド単位(A3)との合計35〜5重量%とからなる共重合体であり、
かつ下式(1)を満足することを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【数1】

【請求項3】
無機充填材(c)のアスペクト比が10以下であることを特徴とする請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
繊維状強化材(b)が炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
中空体のオーバーモールド用樹脂であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−56938(P2006−56938A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−238020(P2004−238020)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】