説明

ポリアミド樹脂組成物

【課題】 本発明の課題は、柔軟性や収縮性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 2種以上の原料からできる共重合ポリアミドを含むポリアミド樹脂組成物であって、共重合ポリアミド(A)が、ポリアミド12原料(a)並びに、ポリアミド6原料(b)及び/又は、ナイロン塩(c)の2種以上を含む原料からできる共重合体であり、ポリアミド12原料(a)が12−アミノドデカン酸及び/又はラウロラクタムであり、ポリアミド6原料(b)がカプロラクタムおよび/またはアミノカプロン酸であり、ナイロン塩(c)が炭素数6〜32のジカルボン酸(c1)と炭素数6〜32のジアミン(c2)からなるナイロン塩であるポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成形品、モノフィラメント、繊維およびフィルムに使用できるポリアミド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは機械的強度、熱的性質、化学的性質や成形加工性が優れているため、自動車分野あるいは電子・電気分野での各種部品、さらには、モノフィラメント、繊維およびフィルムなどに幅広く使用されている。これら用途の中で柔軟性や透明性などの特性を要求される分野では各種の共重合ポリアミドが使用されている。これら用途でもモノフィラメント、繊維、フィルムの分野で使用されるポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/ナイロン66共重合体,ナイロン6/ナイロン12共重合体,ナイロン6/ナイロン66/ナイロン12共重合体などが挙げられる。
これら共重合ポリアミドから得られるモノフィラメント、繊維、フィルムでも、機械的特性、熱的特性はもちろんのこと、耐摩耗性、耐衝撃性に優れることから、これらの分野に広く用いられており、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−194215号公報
【特許文献1】特開平8−225644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記共重合ポリアミドからできたモノフィラメント、繊維、フィルムのより優れた柔軟性や収縮性の向上がさらに求められている。したがって、本発明の課題は、柔軟性や収縮性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、以下に示す本発明によって解決される。
2種以上の原料からできる共重合ポリアミドを含むポリアミド樹脂組成物であって、共重合ポリアミド(A)が、ポリアミド12原料(a)並びに、ポリアミド6原料(b)及び/又は、ナイロン塩(c)の2種以上を含む原料からできる共重合体であり、ポリアミド12原料(a)が12−アミノドデカン酸及び/又はラウロラクタムであり、ポリアミド6原料(b)がカプロラクタムおよび/またはアミノカプロン酸であり、ナイロン塩(c)が炭素数6〜32のジカルボン酸(c1)と炭素数6〜32のジアミン(c2)からなるナイロン塩であるポリアミド樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、柔軟性に優れ、成形後の収縮性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の共重合ポリアミド(A)は、ポリアミド12原料(a)並びに、ポリアミド6原料(b)及び/又は、ナイロン塩(c)を、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で共重合することにより得られる。
【0008】
共重合ポリアミド(A)の原料としては、ポリアミド12原料(a)が、12−アミノドデカン酸及び/又はラウロラクタムであり、ポリアミド6原料(b)が、カプロラクタム またはアミノカプロン酸であり、ナイロン塩(c)が、炭素数6〜32のジカルボン酸(c1)と炭素数6〜32のジアミン(c2)からなるナイロン塩である。
【0009】
共重合ポリアミド(A)は、その全原料に対し、ポリアミド12原料(a)を50重量%〜99重量%含むことが好ましく、50重量%〜90重量%含むことがより好ましく、50重量%〜80重量%含むことがさらに好ましく、55重量%〜70重量%含むことが特に好ましい。
【0010】
ナイロン塩(c)を構成する炭素数6〜32のジカルボン酸(C1)としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、トリデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ペンタデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、エイコサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられ、経済性、入手の容易さから、アジピン酸、が好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0011】
一方、ナイロン塩(c)構成する炭素数6〜32のジアミン(C2)としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2−/3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン、m−/p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられ、経済性、入手の容易さから、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、m−/p−キシリレンジアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミンがより好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
炭素数6〜32のジカルボン酸(C1)および炭素数6〜32のジアミン(C2)からなるナイロン塩(c)は、中でも、ヘキサメチレンアジパミド、デカメチレンデカミド、デカメチレンドデカミド及びノナメチレンセバカミドからなる群より選ばれる1種以上のナイロン塩であることが好ましい。
【0013】
本発明の共重合ポリアミド(A)は、ポリアミド12原料(a)であるラウロラクタム、カプロラクタム以外のラクタムとして、例えば、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドンも1種以上含むことができる。
【0014】
共重合ポリアミド(A)の具体例としては、ポリアミド12/66共重合体(ポリアミド12とポリアミド66の共重合体、以下、共重合体は同様に記載)、ポリアミド6/12/69共重合体、ポリアミド12/69共重合体、ポリアミド12/610共重合体、ポリアミド6/12/610共重合体、ポリアミド12/611共重合体、ポリアミド6/12/611共重合体、ポリアミド12/612共重合体、ポリアミド6/12/612共重合体、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体、ポリアミド12/910共重合体、ポリアミド6/12/910共重合体、ポリアミド12/912共重合体、ポリアミド6/12/912共重合体、ポリアミド12/6T共重合体、ポリアミド6/12/6T共重合体、ポリアミド12/6I共重合体、ポリアミド6/12/6I共重合体、ポリアミド12/IPD6共重合体、ポリアミド6/12/IPD6共重合体、ポリアミド12/IPDT共重合体、ポリアミド6/12/IPDT共重合体、ポリアミド12/66/6T共重合体、ポリアミド6/12/66/6T共重合体、ポリアミド12/66/6I共重合体、ポリアミド6/12/66/6I共重合体、ポリアミド12/6T/6I共重合体、ポリアミド6/12/6T/6I共重合体、ポリアミド12/66/6T/6I共重合体、ポリアミド6/12/66/6T/6I共重合体、ポリアミド12/MXD6等が挙げられ、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66/12共重合体、ポリアミド12/610共重合体、ポリアミド6/12/610共重合体、ポリアミド12/611共重合体、ポリアミド6/12/611共重合体、ポリアミド12/612共重合体、ポリアミド6/12/612共重合体が好ましい。
【0015】
共重合ポリアミド(A)の融点は、柔軟性、収縮性の観点から、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。
【0016】
共重合ポリアミド(A)は、JIS K−6920に準じて、96質量%の硫酸中、ポリアミド濃度1質量%、温度25℃の条件下にて測定した相対粘度は、2.0以上、5.0以下であることが好ましく、2.2以上、4.5以下であることがより好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度が前記の値未満であると、得られるポリアミドフィルムの機械的性質が低くなることがある。一方、前記の値を超えると、溶融時の粘度が高くなり、フィルムの成形が困難となることがある。
【0017】
なお、共重合ポリアミド(A)の末端基の種類及びその濃度や分子量分布に特別の制約は無い。分子量調節や成形加工時の溶融安定化のため、分子量調整剤として、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、m−/p−フェニレンジアミン、m−/p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンや酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−/β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら分子量調節剤の使用量は分子量調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとする共重合ポリアミド(A)の相対粘度が前記の範囲になるように適宜決められる。
【0018】
共重合ポリアミド(A)については、さらに、JIS K−6920に規定する低分子量物の含有量の測定方法に準じて測定した水抽出量は1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。水抽出量が前記の値を超えると、ダイ付近へのオリゴマー成分の付着が著しく、これら付着物によるダイラインやフィッシュアイの発生により外観不良が生じ易い。さらに、ポリアミド樹脂は、オレフィン樹脂と比較して吸湿性が大きく、吸湿したものを使用すると、原料を溶融押出しする際、加水分解が起こるためオリゴマーが発生し、フィルム製造が困難となるので事前に乾燥し、水分含有率が0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0019】
本発明の共重合ポリアミド(A)には、柔軟性や収縮性の特性を損なわない範囲内で、通常配合される各種の添加剤及び改質剤、例えば、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、フィラー、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、結晶核剤、離型剤、可塑剤、架橋剤、発泡剤、着色剤(顔料、染料等)、耐屈曲疲労性改良材等を添加してポリアミド樹脂組成物とすることができる。
【0020】
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いたモノフィラメントへの製造は特に制限はなく、通常の方法で行うことができる。例えば、上記樹脂組成物の混練ペレットまたはドライブレンドされたペレットを押出機等によって溶融して紡糸ノズルから押し出し、水、トリクレンなどの冷媒浴中で冷却することにより未延伸糸を製造する。この場合紡糸ノズルのフィラメント出口から冷媒液面までの距離は10〜3000mm程度保つのが好ましい。
【0021】
上記のようにして得た未延伸糸を2段延伸し、熱処理を行う。延伸条件についても、特に制限はないが、得られるモノフィラメントの透明性の観点から、第1段目の延伸は、水蒸気中または熱水中で3〜5.0倍延伸するのが好ましく、水蒸気中で延伸する場合95〜120℃の温度が好ましい。また、得られるモノフィラメントの透明性の観点から、熱水中で延伸する場合も、50〜95℃が好ましい。好ましい第1段目の延伸温度は水蒸気で行う場合100〜110℃であり、熱水で行う場合60〜90℃である。第2段目の延伸は180〜300℃の気体雰囲気中で1.1〜3.0倍延伸する。気体としては空気、窒素などの不活性ガスなどが挙げられるが、通常空気で充分である。好ましい温度は180〜300℃程度、好ましい延伸倍率は1.2〜2.5倍程度である。
延伸されたモノフィラメントの熱処理についても、特に制限はないが、透明性の観点から、160〜350℃の気体雰囲気中で1.1から0.9倍の捲取比で熱処理するのが好ましい。さらに好ましくは160〜320℃である。捲取比があまり小さくすると、モノフィラメントのたるみ運転が困難となる。好ましい捲取比は0.94〜0.98程度である。上記延伸および熱処理において、総合した延伸倍率が4.0〜8.0、好ましくは4.5〜7.0程度となることが好ましい。
【0022】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物においては、公知のフィルム製造方法を適用し、製膜することによりポリアミドフィルムが得られる。例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物を押出機で溶融混練し、T−ダイあるいはコートハンガーダイによりフラットフィルム状に押出し、キャスティングロール面上にキャスティング、冷却してフィルムを製造するキャスティング法、リング状ダイにより筒状に溶融押出したチューブ状物を空冷あるいは水冷してフィルムを製造するチューブラー法等がある。製造されたフィルムは実質的に無配向の未延伸フィルムとして使用できるが、得られるフィルムの強度及びガスバリア性の観点から二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0023】
得られた未延伸フィルムを延伸するには、従来から知られている工業的方法により行うことができる。例えば、キャスティング法によって製造するフィルムは、未延伸シートをテンター式同時二軸延伸機で縦横同時に延伸する同時二軸延伸法、Tダイより溶融押出しした未延伸シートをロール式延伸機で縦方向に延伸した後、テンター式延伸機で横方向に延伸する逐次二軸延伸法、環状ダイより成形したチューブ状シートを気体の圧力でインフレーション式に縦横同時に延伸するチューブラー延伸法が挙げられる。延伸工程はポリアミドフィルムの製造に引続き、連続して実施しても良いし、ポリアミドフィルムを一旦巻き取り、別工程として延伸を実施しても良い。
【0024】
本発明のポリアミドフィルムは、印刷性、ラミネート、粘着剤付与性を高めるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等の表面処理を行うことができる。また、必要に応じて、このような処理がなされた後、印刷、ラミネート、粘着剤塗布、ヒートシール等の二次加工工程を経てそれぞれの目的とする用途に使用することができる。
【0025】
また、本発明のポリアミドフィルムは、透明性、滑り性、印刷性、柔軟性に優れ、単独での利用価値が高いが、これに他の熱可塑性樹脂を積層することにより、さらに多くの特性を付加させることが可能である。具体的には本発明のポリアミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を積層して、積層フィルムとして使用することもできる。
【0026】
該積層フィルムの積層方法としては、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。共押出法は、本発明のポリアミド樹脂組成物と他の熱可塑性樹脂を共押出する方法であり、共押出シート成形、共押出キャスティングフィルム成形、共押出インフレーションフィルム成形等が挙げられる。押出ラミネート法は、本発明のポリアミドフィルムと熱可塑性樹脂等の基材に、それぞれアンカーコート剤を塗布し、乾燥後、その間に熱可塑性樹脂等を溶融押出しながらロール間で冷却し圧力をかけて圧着することによりラミネートフィルムを得る方法である。ドライラミネート法は、有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を本発明のポリアミドフィルムに塗布し、乾燥後、熱可塑性樹脂等の基材と張り合わせることによりラミネートフィルムを得る方法である。ラミネート後のフィルムは、エージングすることで、接着強度を上げることができる。ラミネートする際には、ポリアミドフィルムの片面又は両面をコロナ処理して使用することが好ましい。
【0027】
積層される熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された化合物により変性された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルスルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられる。また、本発明において規定した前記ポリアミド樹脂を積層することも可能であり、フィルム強度のバランス、ガスバリア性の観点からポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)やエチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)を積層することが好ましい。
【0028】
また、本発明のポリアミドフィルムには、ヒートシール性を付与する観点から、シーラント層を設けることが望ましい。シーラント層として使用される材料は、熱融着できる樹脂であればよく、一般にポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。具体的には、ポリプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、アイオノマー樹脂、アモルファスポリエステル(A−PET)等が好ましいものとして挙げられる。
【0029】
さらに、無延伸、一軸又は二軸延伸熱可塑性樹脂フィルム又はシートや熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。特に、ガスバリアや水蒸気バリア性を向上させるために、金属及び/又は金属化合物を蒸着することも可能である。蒸着する材料としては、Siや、Al、Ti、Zn、Zr、Mg、Sn、Cu、Fe等の金属や、これらの酸化物、窒化物、フッ素物、硫化物等が挙げられる。具体的には、SiOx(x=1.0〜2.0)、アルミナ、マグネシア、硫化亜鉛、チタニア、ジルコニア、酸化セリウム等の無機酸化物や、HMDSO(ヘキサメチルジシロキサン)等の有機化合物、シランガスのような無機ガスをキャリアガス及び酸化させるための酸素と混合後、反応により得られる酸化珪素等が挙げられる。蒸着簿膜の作製方法としては、公知の方法、物理的堆積法(PVD法)として真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学的堆積法(CVD)法としてプラズマCVD法や化学反応法等を用いることができる。
【0030】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、モノフィラメントやフィルム以外に、繊維や各種成形品の原料として利用できる。繊維や各種成形品の製造は、特に制限がなく、それぞれ公知の成形法により製造できる。例えば、成形品は射出成形法、ブロー成形法、真空成形法などの方法で製造でき、繊維は溶融紡糸法などの方法で製造できる。溶融成形法を用いる場合、成形温度は、通常、200〜300℃に設定される。
【実施例】
【0031】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を説明するが、以下の例に限定されるものではない。
【0032】
1)相対粘度
JIS K6810に準じ、96重量%の濃硫酸を溶媒として、ポリアミド濃度1質量%25℃の条件で測定した。
2)水抽出量
JIS K−6920に規定する低分子量物の含有量の測定方法に準じて測定した。
3)水分含有率
ISO15512に準じ、カールフィッシャー法にて測定した。
4)融点
ISO11357−3に準じ、セイコーインスツルメンツ社製 DSC6220を用いて測定した。
3)モノフィラメントの特性評価
ユニプラス社製CS−40−26N型の押出機を用い、押出機の温度を280℃、冷却水の温度を15℃、第1段延伸温度を95℃、第1段延伸倍率を3.8倍、第2段延伸温度を融点+20℃、第2延伸倍率を1.45倍、熱固定温度を融点+20℃、熱風熱処理捲取比を0.95、総合延伸倍率を5.5に調整して、モノフィラメントを作成した。作成したモノフィラメントの引張弾性率を、JIS L1070に準じて測定した。
作成したモノフィラメントの熱水収縮率は、モノフィラメントを1m程度に切り、その長さ(l1)を測定した後、100℃の熱水に1時間浸漬させ、23℃、相対湿度50%RHの条件下で24時間放置後のモノフィラメントの長さ(l2)を測定し、下記の式(1)により求めた。
熱水収縮率=(l1−l2)/l1×100 (1)
【0033】
実施例1
内容積70リットルの攪拌機付き耐圧力反応容器に12−アミノドデカン酸13.5kg、カプロラクタム7.5kgを均一な状態になるように攪拌しながら、240℃まで昇温し、同温度で10時間重合させ、反応容器の下部ノズルからストランド状に取り出した反応物を水槽に導入して冷却し、カッティングして、共重合ポリアミド(A−1)のペレットを得た。次いで、このペレットを熱水中に浸漬し、未反応モノマーを抽出して除去した後、減圧乾燥した。得られた共重合ポリアミド(A−1)の相対粘度、水分含有率、水抽出量は、それぞれ2.6、0.03質量%、0.5質量%であった。円筒型混合機を用いて、得られた共重合ポリアミド(A−1)100重量部に対し、脂肪酸金属塩0.05重量部を配合し、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物を用いて、モノフィラメントを作成し、特性評価を行った。その結果と特性評価を行った際のモノフィラメントの径および延伸倍率を表1に示す。
【0034】
実施例2
実施例1において、12−アミノドデカン酸およびカプロラクタムの配合量をそれぞれ16.4kg、3.6kgに変更した以外は、同様におこない、相対粘度、水分含有率、水抽出量が2.6、0.04質量%、0.5質量%である共重合ポリアミド(A−2)を得た。円筒型混合機を用いて、得られた共重合ポリアミド(A−1)100重量部に対し、脂肪酸金属0.05重量部を配合し、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物を用いて、モノフィラメントを作成し、特性評価を行った。その結果と特性評価を行った際のモノフィラメントの径および延伸倍率を表1に示す。
【0035】
比較例1
内容積70リットルの攪拌機付き耐圧力反応容器にカプロラクタム20kgと水2kgを均一な状態になるように攪拌しながら、260℃まで昇温し、2.0MPaの圧力下で1時間攪拌した。その後、放圧して水分を反応容器から揮散させながら常圧下、260℃で2時間重合反応を行い、さらに260℃、53kPaの減圧下で2時間重合反応させた。反応容器の下部ノズルからストランド状に取り出した反応物を水槽に導入して冷却し、カッティングして、ポリアミド(A−3)のペレットを得た。次いで、このペレットを熱水中に浸漬し、未反応モノマーを抽出して除去した後、減圧乾燥した。得られた共重合ポリアミドの相対粘度、水分含有率、水抽出量は、それぞれ2.8、0.04質量%、0.3質量%であった。円筒型混合機を用いて、得られたポリアミド(A−3)100重量部に対し、脂肪酸金属0.05重量部を配合し、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物を用いて、モノフィラメントを作成し、特性評価を行った。その結果と特性評価を行った際のモノフィラメントの径および延伸倍率を表1に示す。
【0036】
比較例2
実施例1において、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸のナイロン塩の50%水溶液およびカプロラクタムの配合量をそれぞれ6.0Kg、17.0Kgに変更した以外は、同様におこない、相対粘度、水中飽和吸水率、水抽出量が2.8、0.05質量%、0.5質量%である共重合ポリアミド(A−4)を得た。円筒型混合機を用いて、得られた共重合ポリアミド(A−4)100重量部に対し、脂肪酸金属0.05重量部を配合し、ポリアミド樹脂組成物を得た。このポリアミド樹脂組成物を用いて、モノフィラメントを作成し、特性評価を行った。その結果と特性評価を行った際のモノフィラメントの径および延伸倍率を表1に示す。
【0037】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の原料からできる共重合ポリアミド(A)を含むポリアミド樹脂組成物であって、共重合ポリアミド(A)が、ポリアミド12原料(a)並びに、ポリアミド6原料(b)及び/又は、ナイロン塩(c)の2種以上を含む原料からできる共重合体であり、ポリアミド12原料(a)が12−アミノドデカン酸および/またはラウロラクタムであり、ポリアミド6原料(b)がカプロラクタムおよび/またはアミノカプロン酸であり、ナイロン塩(c)が炭素数6〜32のジカルボン酸(c1)と炭素数6〜32のジアミン(c2)からなるナイロン塩(c)であるポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
ナイロン塩(c)が、ヘキサメチレンアジパミド、デカメチレンデカミド、デカメチレンドデカミド及びノナメチレンセバカミドからなる群より選ばれる1種以上のナイロン塩であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
共重合ポリアミド(A)の融点が170℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
共重合ポリアミド(A)が、その全原料に対し、ポリアミド12原料(a)を50重量%〜99重量%含む原料からできる共重合ポリアミド(A)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してできるモノフィラメント、繊維またはフィルム。

【公開番号】特開2012−31268(P2012−31268A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171255(P2010−171255)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】