説明

ポリアミド樹脂膜状体およびその製造方法

【課題】ナイロン6樹脂の水冷インフレーション製膜法にも適用可能な汎用性を有する、巻き上がりが抑制された膜状体とその製造方法を提供する。
【解決手段】成分(A)(B)を配合してなるポリアミド樹脂組成物により構成される膜状体であって、膜厚が5〜300μmである、ポリアミド樹脂膜状体。(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂A:100重量部、(B)以下の(イ)(ロ)を配合してなるマスターペレット:0.1〜4重量部、(イ)硫酸相対粘度が2.0以上かつポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度より小さい値であるポリアミド樹脂B:100重量部、(ロ)下記一般式で表されるビスアミド化合物:2〜20重量部、R−CONH(CHNHCO−R、(ただし、R、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド樹脂膜状体およびその製造方法に関する。更に詳しくは、膜状体切断時の切り口の巻き上がりが抑制されたポリアミド樹脂膜状体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、その優れた特性を活かして衣料用繊維,産業用繊維に使われ、さらに、自動車分野,電気・電子分野などにおいて射出成形品として、包装分野などにおいて膜状体として広く使われている。ポリアミド樹脂より得られる膜状体は、ガスバリア性や機械的特性に優れるため、食品などの包装用途、その他工業用途など広範な用途に使用されている。
【0003】
食品などの包装用途に用いられる膜状体は、インフレーション製膜法などの方法により製膜され、必要な大きさに切断して使用される。この切断加工の際、その発生機構はいまだ明確ではないが、切断端がいずれか一方の側に巻き上がる現象が起きる。そのため切り出した膜状体は自発的にロールとなってしまうため取り扱いづらくなる。例えば、膜状体を他の製品に貼り付ける際には四隅を確実に固定しないと貼り付け出来ない。また、膜状体の出荷・保管時には数百枚単位で積み重ねることがあるが、この巻き上がりにより切断端が嵩高くなり出荷の梱包がやりにくくなる上、梱包を解く際に勝手にロールを巻いてしまうため、その後のハンドリングに支障が出やすい。このようにポリアミド樹脂の膜状体の巻き上がりは、その取扱いに各種の支障を生じさせるため、巻き上がりの低減のために、従来より種々の方法が提案されて来た。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されるように、多層の膜状体において、最外層に使用する樹脂を最内層に使用する樹脂より0〜60℃高い結晶化温度を有するものに限定し、空冷多層インフレーション法を用いる方法が知られている。また、特許文献2のように、分岐脂肪族ジアミンを共重合したポリアミドを用いる方法が知られている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、最外層に使用できる樹脂の結晶化温度に制約があり、当該文献では低結晶性である共重合ポリアミドが例示されるのみである上に、製膜方法も空冷インフレーション法に限定される。また特許文献2に記載されている方法では、分岐脂肪族ジアミンを共重合したポリアミドに限定される。
【0006】
食品包装用途においてはナイロン6樹脂が広く用いられており、またポリアミド樹脂膜状体の製造には水冷インフレーション法が広く用いられているが、上記の方法では使用できるポリアミド・製法とも限定されてしまうため、より汎用性の高い方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−175543号公報
【特許文献2】特開2005−88344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、ナイロン6樹脂の水冷インフレーション製膜法にも適用可能な汎用性を有する、巻き上がりが抑制された膜状体とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)下記成分(A)および(B)を配合してなるポリアミド樹脂組成物を製膜してなる、膜厚が5〜300μmのポリアミド樹脂膜状体。
(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂A 100重量部
(B)以下の(イ)および(ロ)を配合してなるマスターペレット 0.1〜4重量部
(イ)硫酸相対粘度が2.0以上かつポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度より小さい値であるポリアミド樹脂B 100重量部
(ロ)下記一般式で表されるビスアミド化合物 2〜20重量部
−CONH(CHNHCO−R
(ただし、R、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。)
(2)ポリアミド樹脂Bの硫酸相対粘度が2.0以上かつポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度より0.5以上小さい値である(1)記載のポリアミド樹脂膜状体。
(3)下記成分(A)および(B)をドライブレンドしたポリアミド樹脂組成物を、膜状体に製膜する(1)または(2)記載のポリアミド樹脂膜状体の製造方法。
(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂A 100重量部
(B)以下の(イ)(ロ)を配合してなるマスターペレット 0.1〜4重量部
(イ)硫酸相対粘度が2.0以上かつポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度より小さい値であるポリアミド樹脂B 100重量部
(ロ)下記一般式で表されるビスアミド化合物 2〜20重量部
−CONH(CHNHCO−R
(ただし、R、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。)
(4)製膜方法が、水冷インフレーション製膜法である(3)記載のポリアミド樹脂膜状体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリアミド樹脂膜状体とその製造方法を用いることにより、巻き上がりが抑制されたポリアミド樹脂膜状体を提供することができる。本発明によりポリアミド樹脂膜状体は、食品包装用途やガスバリア性が必要な用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例でポリアミド樹脂膜状体を製膜したフローを示す図である。
【図2】実施例で巻き上がり評価を行った評価資料の切り出し形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いられるポリアミド樹脂Aおよびポリアミド樹脂Bとしては、3員環以上のラクタム、重合可能なアミノ酸、二塩基酸とジアミン、あるいはこれらの混合物の重縮合によって得られるポリアミド樹脂が挙げられる。
【0013】
具体的には、ε−カプロラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタムなどのラクタムから得られるポリアミド樹脂、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、10−アミノデカン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノ酸から得られるポリアミド樹脂、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ジミノペンタン、3−メチル−1,5−ジミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、o−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサンなどのジアミンとコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,7−ヘプタンジカルボン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸から得られるポリアミド樹脂、あるいはこれらのポリアミド樹脂の任意の共重合体が挙げられる。
【0014】
これらの中でも製膜性、コスト、得られるフィルムの特性の観点からナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂、ナイロン6/ナイロン66共重合体、ナイロン6・10樹脂、ナイロン11樹脂、ナイロン12樹脂、ナイロン6/ナイロン12共重合体、ナイロン6/6T共重合体(6T:ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸からなるポリアミド単位)、ナイロン6/6I共重合体(6I:ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸からなるポリアミド単位)、ナイロン6/6T/6I共重合体、ナイロン6/6I/66共重合体、ナイロンMXD・6(m−キシリレンジアミンとアジピン酸から得られるポリアミド樹脂)、ナイロンMXD・6/66共重合体が好ましく、ナイロン6樹脂、ナイロン6/ナイロン66共重合体、ナイロン6・10樹脂、ナイロン11樹脂、ナイロン12樹脂、ナイロン6/ナイロン12共重合体が特に好ましい。とりわけ好ましくはナイロン6、ナイロン6/ナイロン66共重合体であり、もっとも好ましくはナイロン6樹脂である。
【0015】
本発明の膜状体は、原料を溶融しその融液を膜状に押出して冷却することにより得る。膜状体の製膜方法は限定されないが、巻き上がりの抑制効果は、水冷インフレーション法においてより明確に発現するため、水冷インフレーション法がもっとも好ましい。
【0016】
本発明の膜状体の厚みは5〜300μmであり、7〜250μmの範囲が好ましく、8〜200μmの範囲がより好ましい。範囲外では本発明の巻き上がり抑制効果は発現されにくくなる。
【0017】
本発明で用いられるポリアミド樹脂の硫酸相対粘度は、試料1gを98%硫酸100mLに室温で溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定する。
【0018】
本発明で用いられるポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度は、3.0〜5.0の範囲であり、3.1〜4.5の範囲が好ましく、3.2〜3.9の範囲がより好ましく、3.3〜3.5の範囲がさらに好ましい。3.0未満では製膜時の溶融膜形成が不安定となり得られる膜状体の厚みが著しく不均一となるほか、溶融状態の膜の破れが頻発するなど生産性も著しく低下する。5.0超では溶融押出時のトルクが増大し製膜が困難となる。
【0019】
本発明で用いられるポリアミド樹脂Bの硫酸相対粘度は2.0以上であり、2.1以上が好ましく、2.2以上がより好ましい。2.0未満ではマスターペレット化の際にペレタイズが困難となる上、得られる膜状体の溶融粘度を下げるために製膜の生産性低下を招く恐れがある。また、ポリアミド樹脂Bの硫酸相対粘度は、ポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度より小さい値である。ポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度より、0.5以上小さい値が好ましく、0.7以上小さい値がより好ましく、0.9以上小さい値がさらに好ましい。ポリアミド樹脂Aよりも大きい硫酸相対粘度では、巻き上がり抑制効果が発現しない。
【0020】
本発明で使用されるビスアミド化合物は下記一般式で表される化合物である。
−CONH(CHNHCO−R
ただし、ここでR、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。
【0021】
具体的には、エチレンジアミンとラウリル酸、n−トリデカン酸、ミリスチン酸、n−ペンタデカン酸、パルミチン酸、n−ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、n−ノナデカン酸、アラキドン酸、メリシン酸などとの縮合物があげられるが、巻き上がり抑制効果の面からエチレンビスステアロアミド、エチレンビスオレイルアミドが好ましく、エチレンビスステアロアミドが特に好ましい。
【0022】
本発明のマスターペレットは、ポリアミド樹脂Bとビスアミド化合物を溶融混練することにより得る。溶融混練の方法に特に制限はないが、短軸もしくは二軸押出機により溶融混練することが好ましい。
【0023】
本発明のマスターペレット中のポリアミド樹脂Bとビスアミド化合物の比率は、ポリアミド樹脂B100重量部に対し、2〜20重量部の範囲であり、4〜15重量部の範囲が好ましく、8〜12重量部の範囲がより好ましい。2重量部未満では巻き上がり低減の効果を奏さず、また20重量部を超えると、マスターペレットの溶融混練後の粒状化が困難となる。
【0024】
本発明のマスターペレットの添加量は、ポリアミド樹脂A100重量部に対して0.1〜4重量部の範囲であり、0.2〜3.5重量部の範囲が好ましく、0.3〜3重量部の範囲がより好ましい。0.1重量部未満では巻き上がりの抑制効果が不十分となる。4重量部を超えるとマスターペレットの分散が安定せず、膜状体の厚みや外観にムラやバラつきが生じやすい。
【0025】
また、ビスアミド化合物はマスターペレットとして添加することにより巻き上がり抑制効果を明確に発現する。ビスアミド化合物を粉体として添加した場合には、巻き上がり抑制効果はほとんど発現しない。
【0026】
さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、要求される特性に応じて他のポリマー類、添加剤、結晶核剤、耐熱剤や紫外線吸収剤などの安定剤、難燃剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、アンチブロッキング材、およびカップリング剤などを添加することも可能である。
【0027】
本発明のポリアミド樹脂膜状体の製造方法では、ポリアミド樹脂Aとマスターペレットをドライブレンドした後に製膜する。それ以外の成分については、それぞれの成分を溶融混錬しても良く、それぞれの成分をドライブレンドしてもよい。ビスアミド化合物以外の成分についてもマスターペレットとして添加しても良く、ポリアミド樹脂を重合する際に重合成分中に上記添加剤を配合しておく方法も採用可能である。
【0028】
本発明のポリアミド樹脂膜状体を製膜する方法としては従来公知の方法を採用することができる。例えばT−ダイ法、インフレーション法、射出成形法、プレス成形法などを使用することができる。中でも水冷インフレーション法がもっとも好ましく使用できる。
本発明のポリアミド樹脂膜状体は、フィルムやシートは用途に応じて単層、他の樹脂との多層、同一樹脂との多層にすることが出来る。
【0029】
また紙や金属などの他の素材との積層などにすることができる。更にガスバリヤー性および水分バリア性をさらに向上させるために、膜状体の片面に金属および/または金属化合物の蒸着を行っても良い。蒸着層を施す方法としては特に制限はないが、真空蒸着、EB蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング、プラズマCVD等の公知の方法を用いることができる。膜状体と蒸着金属および/または金属酸化物等の蒸着皮膜との密着性を向上させるためには、膜状体の表面をあらかじめコロナ放電処理やアンカーコート剤を塗布するなどの方法により前処理しておくことが好ましい方法である。膜状体に蒸着させる金属および/または金属酸化物としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられ、アルミニウムが最も好ましい。得られる蒸着層の膜厚には特に制限はない。
【実施例】
【0030】
以下本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0031】
(1)マスターペレットの製造
表1、表2に記載した処方でマスターペレット原料をを2軸押出機に供給して樹脂温255℃で溶融混練した。得られた溶融混練物をストランドで押出し、ペレタイザーでカットしてマスターペレットとした。
【0032】
(2)膜状体の製膜
表1、表2に記載した処方で原料をドライブレンドした後、以下の条件で未延伸チューブ状膜状体を溶融押出し、製膜した。
押出機:30mm単軸押出機、L/D=22、
スクリュー:フルフライトコンスタントピッチ(3ゾーン型)、圧縮比3.1
ダイズ:70mmφリングダイス
シリンダー温度:230〜245℃
冷却水温度:20℃
巻取り速度:12m/min
【0033】
図1に製膜フローを示す。30mm短軸押出機で溶融されたポリアミド樹脂を、70mmリングダイス下面の円形の口金よりチューブ状に押し出し冷却バスに流下した。さらにチューブ状の膜状体を連続的に水冷し、冷却バス中央の直径64mmの円筒部より、オーバーフローされる冷却水と一緒に流下し、最終的に巻取機により巻き取った。水冷後に得られる膜状体は円周200mmのチューブ状であり、巻取り後は2枚の膜が重なった幅100mmテープ状の膜状体となった。巻取り速度は上記の通り12m/minに固定し、所定の膜厚となるようスクリュー回転数を変えることで押出量を調整した。
【0034】
(3)フィルム特性の評価方法
(A)巻き上がり評価
まず(2)で得られた膜状体を50cm程度の長さに切り分け、23℃/相対湿度50%の環境下で24h放置、調湿した。次に、(2)で得られた膜状体はチューブ状の膜状体が押しつぶされ2枚重なった状態であるので、膜状体をはがし1枚の単層膜状体を得た。その後、図2に示すとおり幅40mm・長さ80mmの短冊状の切片を、膜状体の巻取り方向及び巻取りと垂直方向にそれぞれ2枚ずつ切り出し、各水準合計4枚の評価試料を作成した。
【0035】
得られた評価試料は長さ方向に巻き取られる形でロールする。片方の端を板の上にセロハンテープで固定した後、ロールした膜状体の曲率(ロールの直径)をノギスにより測定し、4つの試料の曲率の平均値を評価結果とした。
【0036】
(B)表面外観
前記のフィルム製造法で得られた膜状体を用い、膜状体表面の透明性、平滑性に着目して目視で観察した。
【0037】
実施例および比較例で使用した原料は以下のとおりである。
【0038】
[ポリアミド樹脂]
ナイロン6樹脂CM1001 (東レ(株)製,相対粘度2.35)
ナイロン6樹脂CM1010 (東レ(株)製,相対粘度2.7)
ナイロン6樹脂CM1021 (東レ(株)製,相対粘度3.4)
ナイロン6樹脂CM1041 (東レ(株)製,相対粘度4.4)。
【0039】
[エチレンビスステアロアミド]:日油(株)製を使用した。
【0040】
実施例1
エチレンビスステアロアミド10重量部およびナイロン6樹脂CM1001ペレット90重量部を2軸押出機を用いて溶融混練しマスターペレットを得た。ナイロン6樹脂CM1021ペレット100重量部に、得られたマスターペレット2重量部をヘンシェルミキサー内に添加して混合し、製膜原料とした。得られた製膜原料を上記の製膜条件で製膜し、厚み45μm程度の未延伸フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0041】
巻き上がり曲率が大きいほどロールは小さく、巻き上がり性は抑制されていることを意味する。得られた膜状体の巻き上がり曲率は大きく、巻き上がり性が抑制されることがわかった。また、膜状体の外観も良好であった。
【0042】
実施例2〜9
マスターペレットの原料に用いるナイロン樹脂を種々変更して、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示すが、得られた膜状体の巻き上がり曲率は大きく、巻き上がり性が抑制されることがわかった。また、膜状体の外観も良好であった。
【0043】
比較例1〜3
表2に示すとおりマスターペレットを用いず、ナイロン6樹脂ペレットに粉末のエチレンビスステアロアミドをブレンドして製膜した。得られた膜状体の巻き上がり曲率は小さく、強い巻き上がりが見られた。また、比較例2は実施例5と同等のエチレンビスステアロアミド組成となるが、巻き上がり曲率は実施例5に及ばなかった。比較例3は表面に微細な気泡らしき組織が見られ表面平滑性が劣る結果となったうえ、巻き上がり曲率も、同等のエチレンビスステアロアミド組成を有する実施例1〜3に及ばなかった。
【0044】
比較例4
マスターペレットの添加量を0.05重量部まで低減して評価したところ、巻き上がり曲率が小さく、強い巻き上がりが見られた。
【0045】
比較例5
マスターペレットを10重量部まで増量したが、押出後の溶融膜の形状が安定せず製膜出来なかった。
【0046】
比較例5
マスターペレットに高粘度のポリアミド樹脂を使用したところ、得られた膜状体の巻き上がり曲率は小さく、強い巻き上がりが見られた。
【0047】
比較例6
マスターペレット中のエチレンビスステアロアミドを1重量部まで減らしたところ、得られた膜状体の巻き上がり曲率は小さく、強い巻き上がりが見られた。
【0048】
実施例10、比較例7
両事例とも膜厚100μm程度となるよう製膜した。膜厚を変えても、マスターペレットを添加した実施例10は巻き上がりが抑制される結果となった。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【符号の説明】
【0051】
1 30mm短軸押出機
2 70mmφリングダイス
3 冷却バス(水冷)
4 巻取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)および(B)を配合してなるポリアミド樹脂組成物を製膜してなる、膜厚が5〜300μmのポリアミド樹脂膜状体。
(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂A 100重量部
(B)以下の(イ)(ロ)を配合してなるマスターペレット 0.1〜4重量部
(イ)硫酸相対粘度が2.0以上かつポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度より小さい値であるポリアミド樹脂B 100重量部
(ロ)下記一般式で表されるビスアミド化合物 2〜20重量部
−CONH(CHNHCO−R
(ただし、R、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。)
【請求項2】
ポリアミド樹脂Bの硫酸相対粘度が2.0以上かつポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度より0.5以上小さい値である請求項1記載のポリアミド樹脂膜状体
【請求項3】
下記成分(A)および(B)をドライブレンドしたポリアミド樹脂組成物を、膜状体に製膜する請求項1または2記載のポリアミド樹脂膜状体の製造方法。
(A)硫酸相対粘度が3.0〜5.0であるポリアミド樹脂A 100重量部
(B)以下の(イ)および(ロ)を配合してなるマスターペレット 0.1〜4重量部
(イ)硫酸相対粘度が2.0以上かつポリアミド樹脂Aの硫酸相対粘度より小さい値であるポリアミド樹脂B 100重量部
(ロ)下記一般式で表されるビスアミド化合物 2〜20重量部
−CONH(CHNHCO−R
(ただし、R、Rは炭素数12〜32の炭化水素基を表し、RとRは同一であっても異なっていても良い。)
【請求項4】
製膜方法が、水冷インフレーション製膜法である請求項3記載のポリアミド樹脂膜状体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−126937(P2011−126937A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284094(P2009−284094)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】