説明

ポリアミド用光硬化型塗料

【課題】本発明の目的は、ポリアミドへの優れた密着性を発現する光硬化性塗料、及びそれによって得られる金属蒸着されたポリアミド成型体、さらにはそれを使用した発光ダイオード素子用反射板を提供することにある。
【解決手段】水酸基価1〜200mgKOH/gの水酸基を含有し、分子量が1,000〜100,000であるアクリル系重合体(P)10〜90重量部と、ラジカル重合性化合物(M)10〜90重量部、及び(P)と(M)との総合計100重量部に対して、光開始剤(C)0.1〜15重量部を含むことを特徴とするポリアミド用光硬化型塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線、電子線、放射線等で硬化可能な光硬化性塗料に関するものである。更に詳しくは、ポリアミドへの優れた密着性を発現する光硬化性塗料、及びそれによって得られる金属蒸着されたポリアミド成型体、さらにはそれを使用した発光ダイオード素子用反射板である。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ポリアミドであるナイロンや、芳香族ポリアミドのプラッスチック材料に金属蒸着を行う場合、表面が平滑でない為、きれいな金属蒸着面が得られないという問題があった。通常、プラスチック材料に金属蒸着を行う場合には、表面を平滑にするため、塗料が塗られ、その上に金属蒸着が行われる。例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、繊維強化複合材料(FRP)等の種々のプラスチックの成型体表面に、アルミニウム等の金属を真空蒸着する場合、下塗り塗料にはウレタン樹脂やアクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を使用した熱硬化型あるいは2液混合硬化型の塗料が使用されていた。一方、紫外線硬化塗料は光で硬化するため加熱が不要で、硬化が数秒で完了するという特徴から、非常に生産性、省エネルギー性に優れる塗料として知られている。しかし従来の紫外線硬化塗料をポリアミドに適用した場合、密着性が不良であり使用できないという問題を抱えていた。
【0003】
また、ポリアミドが使用される用途の例として発光ダイオードのパッケージがある。この用途では光を反射させる機能がパッケージに要求されるため、現在は白顔料等を混練してポリアミドを白色にしその機能を付与している。しかし、ポリアミドに金属蒸着を行うことができれば反射機能は格段に向上するものである。プラスチック基材、特にポリプロピレン基材へ金属蒸着する場合の紫外線硬化型塗料の下塗り剤が、特許文献1、2に開示されている。この開示では、少なくともジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレートから選ばれたモノマーを構成成分とするアクリル樹脂と、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び光開始剤からなる塗料が開示されている。また、PC、PET、PBT、ABS、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、PPO(ポリフェニレンオキシド)に対しても密着性が発現することが記されているが、この紫外線硬化型塗料をポリアミド面上に適用した場合、密着性が不十分であった。
【特許文献1】特開2002−347175号公報
【特許文献2】特開2002−348498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の現状に鑑み、ポリアミドへの優れた密着性を発現する光硬化性塗料、及びそれによって得られる金属蒸着されたポリアミド成型体、さらにはそれを使用した発光ダイオード素子用反射板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、水酸基価1〜200mgKOH/gの水酸基を含有し、分子量が1,000〜100,000であるアクリル系重合体(P)10〜90重量部と、ラジカル重合性化合物(M)10〜90重量部、及び(P)と(M)との総合計100重量部に対して、光開始剤(C)0.1〜15重量部を含むことを特徴とするポリアミド用光硬化型塗料、及び本発明のポリアミド用光硬化型塗料をポリアミド基材上に塗布し、これに紫外線を照射して塗料を硬化させた後、金属蒸着を行うことによって得られることを特徴とするポリアミド成型体、さらには、本発明の金属蒸着されたポリアミド成型体を使用することを特徴とする発光ダイオード素子用反射板である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリアミドに優れた密着性を発現する塗膜を、生産性が高く省エネルギーである紫外線硬化で得ることができる。さらに本発明の光硬化型塗料を塗工した後、金属蒸着を行うことが可能で、さらにこれは発光ダイオード素子用反射板等の用途に好適に使用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について以下、詳細に説明する。
【0008】
《アクリル系重合体(P)》
本発明におけるアクリル系重合体(P)は、優れた密着性を発現するために、少なくともアクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルから選択される1種の単量体を、アクリル系重合体(P)中に、50重量%以上含んで重合されたアクリル系重合体である。本発明のアクリル系重合体(P)は水酸基を含有する単量体(a)とその他の単量体(b)を共重合することによって得ることができる。水酸基を含有する単量体(a)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル類が挙げられる。ここで、メチル(メタ)アクリレートのような記載は、メチルアクリレート及び/又はメチルメタアクリレートを示し、以下(メタ)とは同様の意味である。
【0009】
また、その他の単量体(b)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、等のアルキル(メタ)アクリレート類;;スチレン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの無水物等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジエチルアミノエチル(メタアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N−ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類;モノ(2−メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等の不飽和リン酸類;2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリルグリシジルエーテル、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、クロロプレン、ビニルピロリドン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0010】
その他の単量体(b)として、これ等の中で、良好な密着性を得るため、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキルの炭素数が4以下のアルキル(メタ)アクリレート類を使用することが好ましい。
本発明におけるアクリル系重合体(P)は密着性を発現するために、通常水酸基価1〜200mgKOH/gの水酸基を含有するものであり、好ましくは10〜180mgKOH/g、更に好ましくは20〜160mgKOH/gの水酸基を含有するものである。
また、本発明におけるアクリル系重合体(P)の分子量は、良好な塗膜の密着性を発現するため、また、塗料組成物の粘度を塗装可能な範囲にするために、通常1,000〜100,000、好ましくは3,000〜60,000、更に好ましくは5,000〜30,000である。
【0011】
《ラジカル重合性化合物(M)》
本発明におけるラジカル重合性化合物(M)としてはアクリル基を有する化合物である。例えば、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ビスフェノールA、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート、その他活性二重結合を持つアクリロイルモルホリン、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルジビニルエーテル、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0012】
さらには、フタル酸、アジピン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ブタジオール等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるポリエステルポリ(メタ)アクリレート;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸化合物との反応で得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート;ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸化合物との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート;ポリアミドと(メタ)アクリル酸化合物との反応によって得られるポリアミドポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
本発明においては、所望とする塗膜の硬度に合わせて上記ラジカル重合性化合物(M)を1種以上適用するが、ウレタンアクリレート(U)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジトリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
これらの中で、特に硬度に優れた塗膜を得るために、ラジカル重合性化合物(M)として、ウレタン樹脂にアクリル基を有するウレタンアクリレート(U)を含有することが好ましく、(U)の含有量は、ラジカル重合性化合物(M)100重量部に対して通常1〜100重量部、好ましくは50〜100重量部、更に好ましくは70〜100重量部である。
【0014】
ウレタンアクリレート(U)は、ジイソシアネート化合物とグリコール種の付加反応により重合を行い、残存するイソシアネート基にさらに水酸基等の活性水素基を有する(メタ)アクリレートを付加することで合成される。ジイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(H6 XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)である。これらの中で、HDI、H6XDI、IPDIが好ましい。
【0015】
また、グリコール種は、例えば、ピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートグリコール等のポリカーボネートポリオール;エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジメチロールヘプタン、炭素数が7〜22のアルカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、炭素数が17〜20のアルカン−1,2−ジオール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールA、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノール、その他の炭素数が8〜24の脂肪族トリオール、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニット等である。これらの中で、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオールが好ましい。
【0016】
さらに、水酸基等の活性水素基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル類が挙げられる。
【0017】
本発明のアクリル系重合体(P)とラジカル重合性化合物(M)との割合は、ポリアミドに優れた密着性を発現させる為、通常アクリル系重合体(P)10〜90重量部、ラジカル重合性化合物(M)10〜90重量部、好ましくは、(P)15〜90重量部、(M)10〜85重量部、更に好ましくは、(P)20〜90重量部、(M)10〜80重量部である。
【0018】
《光開始剤(C)》
本発明の光開始剤(C)とは、紫外線、電子線、放射線等でラジカルを発生することが可能な化合物であり、具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4−ビス(ジメチルアミノベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物;2−エチルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾイルパーオキシド、ジターシャリーブチルパーオキシド等のパーオキシド化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物を挙げることができる。
【0019】
好ましい開始剤の例としては、ベンゾフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドであり、これらを単独で使用、または、2種以上併用してもよい。
【0020】
光開始剤(C)の割合は、(P)と(M)との総合計100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは1〜10重量部であり、更に好ましくは1〜8重量部である。本発明の光硬化性樹脂組成物に、有機溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、黄変防止剤、染料、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、防曇剤、はじき防止剤、湿潤剤、分散剤、だれ防止剤、カップリング剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0021】
《塗工方法》
このような光硬化型塗料組成物を基材に塗布する方法に限定はなく、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコートなどの常法によって行われる。十分な硬度と被膜にクラックを発生させず良好な密着性を発現させるためには、塗布量として、硬化被膜の膜厚が3〜30μmであることが好ましい。
【0022】
《硬化方法》
基材に塗布された塗膜を硬化させる手段としては、紫外線、電子線、放射線等の活性エネルギー線を照射する公知の方法を用いることができ、紫外線発生源としては実用的、経済性の面から紫外線ランプが一般に用いられている。具体的には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光等の紫外線などが挙げられる。照射雰囲気は空気でもよいし、窒素、アルゴン等の不活性ガスでもよい。
【0023】
《蒸着》
金属蒸着は、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、メッキなどの方法を用いて行われるが、真空蒸着が生産性の点からより好ましい。蒸着される金属としては、Al、Zn、Cu、Ag、Au、Sn、Ni、あるいはこれらの合金などである。特にAlは耐久性が良好であり、Agは反射率が高いために好ましい金属である。
【0024】
《ポリアミド》
基材となるポリアミドとしては、多価アミン類と多塩基酸類から合成される樹脂であり、一般にナイロンと呼ばれる脂肪族系ポリアミドも含む。多価アミンとしては、例えば、1,9−ジアミノノナン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,7−ジアミノヘプタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、2−メチル−1,9−ジアミノノナン、2−メチル−1,10−ジアミノデカン、2−メチル−1,11−ジアミノウンデカン等が挙げられる。
【0025】
多塩基酸としては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、テトラフタル酸、フタル酸、マレイン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、スベリン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。またポリアミドには無機充填剤を含有していてもよい。無機充填剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、チタン酸バリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、タルク、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、グラスファイバー等の無機フィラー等が挙げられる。これらを使用する場合には樹脂100重量部に対して、無機フィラー等が10〜80重量部、好ましくは40〜80重量部添加されていることが適当である。さらに、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤等の添加剤が適宜添加されていてもよい。またポリアミドは、シート状成型品、フィルム状成型品、各種形状の成型品であってよく、射出成形、溶融成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形等の加熱成形で得られた各種射出成型品であってもよい。
【0026】
《発光ダイオード素子用反射板》
本出願明細書において使用する『発光ダイオード素子用反射板』なる語には、『板』なる漢字を使用してはいるが、この語の概念は、『板』状の形状を有するもののみに限定されず、少なくとも光を放射する方向の面が解放された、又は、解放されていないケーシングやハウジング一般を包含し、より具体的には、箱状又は函状の形状を有するもの、漏斗状の形状を有するもの、お椀状の形状を有するもの、パラボラ状の形状を有するもの、円柱状の形状を有するもの、円錐状の形状を有するもの、ハニカム状の形状を有するもの等、板(平面、球面、曲面等の面)を光を反射する面として有する三次元形状一般をも包含する。本発明において発光ダイオード素子用反射板は、通常、ポリアミド樹脂、又は、ポリアミド樹脂と無機充填材とを含んでなる樹脂組成物を、射出成形、溶融成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形等の加熱成形により、所望の形状に賦形される。
本発明の光硬化性樹脂組成物よって、ポリアミドに優れた密着性を発現する、生産性が高く省エネルギーである紫外線硬化塗料を得ることができる。さらに本発明の光硬化型塗料組成物を塗工した後、金属蒸着を行うことが可能で、さらにこれは発光ダイオード素子用反射板等の用途に好適に使用できるものである。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
メチルメタクリレート(MMA)85g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)14g、メタクリル酸(MAA)1g、アゾビスイソブチロニトリル1gの混合溶液を、トルエン85g、n−ブタノール37gを仕込んだ反応容器に、空気気流下で100℃で4時間かけて滴下した。さらに100℃を維持し、重合を完結させるためにアゾビスイソブチロニトリル0.2gを1時間ごとに2回添加した。滴下終了から3時間後に冷却し、不揮発分45%、重量平均分子量25000のアクリル系重合体(P)溶液を得た。さらに、この重合体溶液222g(重合体100g)にオレスターRA1574(三井化学社製:ウレタンアクリレート)100g、イルガキュア184(チバスペシャリティ社製の光開始剤)6gを混合し、光硬化型塗料組成物を得た。
【0029】
[実施例2〜9]
アクリル系重合体(P)を構成する単量体種、及びラジカル重合性化合物(M)の種類と混合比率を表1に示すように変更し、実施例1と同様な操作により光硬化型塗料組成物を得た。また実施例7と実施例8については分子量を変えるため、アゾビスイソブチロニトリルの量を実施例7は5g、実施例8は0.2gにした。
【0030】
[比較例1〜5]
重合体(P)を構成する単量体種、及びラジカル重合性化合物(M)の種類と混合比率を表2に示すように変更し、実施例1と同様な操作により比較例1〜5の光硬化型塗料組成物を得た。
【0031】
[評価方法]
上記で得られた光硬化型塗料組成物を、以下に示す方法で試験を行った。その結果を表2に示す。
<分子量の測定>
アクリル系重合体(P)の分子量をGPC(Shodex GPC SYSTEM−11:昭和電工製)でRI検出器により、重量平均分子量を測定した。
<水酸基価の測定>
水酸基価をJIS K0070 によって評価した。
<紫外線硬化条件>
ポリアミド(アーレンA335:三井化学株式会社製)の成型板上に、光硬化型塗料組成物をアプリケーターで10μm塗装し、60℃x1minで乾燥した後、100w/cmの高圧水銀灯を3灯有する紫外線照射装置で照射距離10cm、ライン速度10m/minで紫外線を照射した。これで得られた同試験片を、以降の試験に供した。
<密着性>
密着性を碁盤目試験(JIS K5600−5−6)によって評価した。
<耐水後密着性>
紫外線硬化させた試験片を60℃の温水に24Hr浸漬したのち、密着性を碁盤目試験(JIS K5600−5−6)によって評価した。
<金属蒸着>
紫外線硬化させた試験片に1000Å厚でアルミ蒸着を行い、表面の外観を目視で評価した。金属様に鏡面状態であるものを○、蒸着面が僅かに白く濁っているが実用に耐えるものを△、蒸着面が白く濁っており鏡面状態が損なわれているものを×とした。
【0032】
[評価結果]
評価結果を表1,2に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
MMA:メチルメタアクリレート
ST:スチレン
HEAM:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
MAc:メタクリル酸
IBX:イソボロニルメタクリレート
RA1574:(オレスターRA1574(ウレタンアクリレート)三井化学株式会社製)
PE−3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート
NPG−A:ネオペンチルグリコールジアクリレート
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、生産性が高く省エネルギーである紫外線硬化型の塗料であり、かつポリアミド成型体上に良好な密着性を有する為、ポリアミドが使用されている自動車部品、電気・電子部品、機械部品に好適に使用できるものであり、また金属蒸着を行う場合の下塗り塗料としても好適であり、さらには、金属蒸着されたポリアミド成型体を反射板として好適に使用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基価1〜200mgKOH/gの水酸基を含有し、分子量が1,000〜100,000であるアクリル系重合体(P)10〜90重量部と、ラジカル重合性化合物(M)10〜90重量部、及び(P)と(M)との総合計100重量部に対して、光開始剤(C)0.1〜15重量部を含むことを特徴とするポリアミド用光硬化型塗料。
【請求項2】
ポリアミド基材上に請求項1記載のポリアミド用光硬化型塗料を塗布し、これに紫外線を照射して塗料を硬化させた後、金属蒸着を行うことによって得られることを特徴とするポリアミド成型体。
【請求項3】
請求項2に記載の金属蒸着されたポリアミド成型体を使用することを特徴とする、発光ダイオード素子用反射板。

【公開番号】特開2007−161863(P2007−161863A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359444(P2005−359444)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】