説明

ポリアミド系積層2軸延伸フィルム

【課題】接着強度、特に耐水接着強度に優れたポリアミド系積層2軸延伸フイルムを提供し、水物用途製袋品の輸送時、又は落下時における破袋防止にも効果のあるポリアミド系積層2軸延伸フイルムを提供することを目的とする。
【解決手段】混合キシリレンジアミンを主たるジアミン成分とし、炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸成分を主たるジカルボン酸成分とするメタキシリレン基含有ポリアミド重合体29.9〜71.49重量%と、メタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体20〜50重量%と、ポリアミド系ブロック共重合体8.5〜20重量%との混合ポリアミド系重合体に、フェノール系酸化防止剤0.01〜0.1重量%添加してなるA層の少なくとも一方の面に、脂肪族ポリアミド重合体50〜90重量%と、ナイロン6とナイロン12あるいはナイロン66とのポリアミド共重合体10〜50重量%との混合ポリアミド系重合体からなるB層が積層され、A層及びB層が2軸延伸されてなることを特徴とする、ポリアミド系積層2軸延伸フイルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素ガスバリアー性、耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、低温環境下における耐屈曲疲労性に優れ、特に食品包装等の包装材料として使用したときに、内容物の変質防止や商品の輸送時における破袋防止等に効果があり、高い透明性を保持し商品へ優れた印刷性を与え、各種の包装用途に適したポリアミド系積層2軸延伸フイルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からキシリレンジアミンを構成成分とするポリアミド重合体からなるフイルムは、他の重合体成分からなるフイルムに比べ、酸素ガスバリアー性や耐熱性に優れ、フイルム強度も強いという特性を持っている。
【0003】
一方、ナイロン6やナイロン66に代表される脂肪族ポリアミドからなる未延伸フイルムや延伸フイルムは、耐衝撃性や耐屈曲疲労性に優れており各種の包装材料として広く使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のフイルムにおいて、前者のキシリレンジアミンを構成成分とするポリアミド重合体からなるフイルムは耐屈曲疲労性を必要とする包装材料に使用する場合において、真空包装等を行う加工工程や、商品の輸送時における屈曲疲労によるピンホールの発生起こり易いという問題があった。商品の包装材料にピンホールが発生すると、内容物の漏れによる汚染、内容物の腐敗やカビの発生等の原因となり、商品価値の低下につながる。
【0005】
一方、後者の脂肪族ポリアミドからなるフイルムは、耐衝撃性や耐屈曲疲労性等に優れているが、酸素ガスバリアー性が劣るという問題点があった。
【0006】
更に、これらの問題点を解決する為に、キシリレンジアミンを構成成分とするポリアミド重合体と脂肪族ポリアミド等を別々の押出機で溶融押出して積層し2軸延伸する方法等が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平4−270655号公報
【0007】
しかしながら、これらの方法においても、良好な酸素ガスバリアー性を有し、さらに、耐衝撃性や耐屈曲疲労性等の包装用フイルムとして必要なフイルム特性を兼備するという点においては、満足できるレベルに至っていない。
【0008】
上記問題点を解決する為に、キシリレンジアミン構成成分とするポリアミド重合体にナイロン12をハードセグメント成分とするポリアミド系ブロック共重合体を8.5〜20重量%添加した混合ポリアミド重合体と脂肪族ポリアミド等を別々の押出機から溶融押出して積層し2軸延伸する方法を提案した(特許文献2)。
【特許文献2】特開2003−11307号公報
【0009】
ナイロン12ポリアミド系ブロック共重合体を多量に添加するため、フイルム内で白化し透明性が悪くなり、製袋後の商品に白濁した外観を与え、結果、製袋品の中身の状況を購買者が確認しにくくなり、又、白濁した外観の為に商品イメージを悪化させるといった問題点が生じる。そのため、キシリレンジアミン構成成分とするポリアミド重合体にナイロン6をハードセグメント成分とするポリアミド系ブロック共重合体を8.5〜20重量%添加した混合ポリアミド重合体と脂肪族ポリアミド等を別々の押出機から溶融押出して積層し2軸延伸する方法を提案した。これらにより酸素ガスバリアー性と耐衝撃性、低温下での耐屈曲疲労性、透明性に優れるフイルムを提供しえるようになった。
【0010】
そして、このポリアミド2軸延伸フイルムは通常ポリエチレン、ポリプロピレン等にラミネートした後、包装材料として使用される。多くの包装用途に対してこれらの組み合わせは有効であり、特にポリアミド2軸延伸フイルムと低密度ポリエチレンフイルムとのラミネート構成は、代表的な食品包装材料として使用される。
【0011】
しかしナイロン6をラミネート面の層に用いる場合は、液体スープ袋等、水物用途袋に使用した場合はラミネート強度が弱くラミが剥れてしまうという問題点があった。そしてラミ強度を改良する方法としてはフイルム表面をコーティングし接着強度を上げる方法があるが、この方法だと製膜工程が増えコストが高くなる上、コーティングによって筋、キズが入りやすいなどの問題点があった。
【0012】
本発明は、上記ポリアミド系積層2軸延伸フイルムの有する問題点を解決し、接着強度、特に耐水接着強度に優れたポリアミド系積層2軸延伸フイルムを提供し、水物用途製袋品の輸送時、又は落下時における破袋防止にも効果のあるポリアミド系積層2軸延伸フイルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する為、本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムは、メタキシリレンジアミン、若しくはメタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる混合キシリレンジアミンを主たるジアミン成分とし、炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸成分を主たるジカルボン酸成分とするメタキシリレン基含有ポリアミド重合体29.9〜71.49重量%と、メタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体20〜50重量%と、ポリアミド系ブロック共重合体8.5〜20重量%との混合ポリアミド系重合体に、フェノール系酸化防止剤0.01〜0.1重量%添加してなるA層の少なくとも一方の面に、脂肪族ポリアミド重合体50〜90重量%と、ナイロン6とナイロン12あるいはナイロン66とのポリアミド共重合体10〜50重量%との混合ポリアミド系重合体からなるB層が積層され、A層及びB層が2軸延伸されてなることを特徴とする、ポリアミド系積層2軸延伸フイルムである。
【0014】
またこの場合において、ポリアミド系ブロック共重合体を
(a)(1)ラクタム
(2)ω−アミノ脂肪族カルボン酸(3)脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸
(4)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸
の群から選択されたポリアミド成分によって構成されたハードセグメントと、(b)ポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されたソフトセグメントとからなるポリアミド系ブロック共重合体とすることができる。
【0015】
またこの場合において、A層及び/又はB層を構成するポリアミド系混合重合体100重量部中に、脂肪族アマイド及び/又は脂肪族ビスアマイドを0.01〜0.40重量部含有することができる。
【0016】
さらにまた、この場合において、A層の厚みを、A層及びB層の合計厚みの20〜87%の範囲内とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
かかる本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムは、優れた酸素ガスバリアー性を有すると共に耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性が良好であり、食品包装等において内容物の変質や変色の防止に効果がある。さらに、接着強度、特に耐水接着強度に優れ、スープ包装袋、水物包装袋等の輸送中の衝撃、及び振動による破袋、輸送時、保管時における落下による破袋防止に大いに有効である。さらに、低温輸送時における衝撃や振動による屈曲疲労からも内容物を保護することができる。さらに、製袋加工時および製袋加工品への商品充填時のブロッキング、滑り性不良を防ぎ、安定した作業性を与え、各種の包装材料として有効に使用することができる。また、製袋品の輸送時、保管時における落下においても破袋防止に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムの実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
本発明において用いる、メタキシリレンジアミン、若しくは、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる混合キシリレンジアミンを主たるジアミン成分とし、炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸を主たるジカルボン酸成分とするメタキシリレン基含有ポリアミド重合体において、パラキシリレンジアミン単位の含有量は全キシリレンジアミン中30%以下であるのが好ましく、また、キシリレンジアミンと脂肪族ジカルボン酸とから構成された構成単位は分子鎖中において少なくとも70モル%以上であるのが好ましい。
【0020】
本発明において用いる、メタキシリレン基含有ポリアミド重合体の例としては、例えばポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンピメラミド、ポリメタキシリレンスベラミド、ポリメタキシリレンアゼラミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンドデカンジアミド等のような単独重合体、及びメタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピメラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンスベラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンセバカミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンドデカンジアミド共重合体等のような共重合体、並びにこれらの単独重合体又は共重合体の成分に一部ヘキサメチレンジアミンの如き脂環式ジアミン、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンの如き芳香族ジアミン、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸、ε−カプロラクタムの如きラクタム、アミノヘプタン酸の如きω−アミノカルボン酸、パラ−アミノメチル安息香酸の如き芳香族アミノカルボン酸等を共重合した共重合体が挙げられる。
【0021】
また、本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムのA層を構成するのに用いることができるメタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体の例としては、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン6・10などの脂肪族ポリアミドや、ナイロン6/6・6共重合体、ナイロン6/6・10共重合体、ナイロン6・6/6・10共重合体等のような脂肪族ポリアミド共重合体や、これらの混合重合体などを挙げることができる。
【0022】
さらにA層を構成する混合重合体には、ポリアミド系ブロック共重合体は、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントからなるポリアミド系ブロック共重合体であり、ハードセグメントのポリアミド成分は、(1)ラクタム、(2)ω−アミノ脂肪酸カルボン酸、(3)脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸、又は(4)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸よりなる群から選択され、具体的には、ε−カプロラクタムの如きラクタム、アミノヘプタン酸の如き脂肪族ジアミン、アジピン酸の如き脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸を例示することができる。また、上記ポリアミド系ブロック共重合体のソフトセグメントを構成するポリオキシアルキレングリコールは、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシ−1,2−プロピレングリコール等が挙げられる。
【0023】
ポリアミド系ブロック共重合体の融点はポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントの種類と比率によって決められるが、通常は、120℃から180℃の範囲のものが使用される。
【0024】
ポリアミド系ブロック共重合体をポリアミド系積層2軸延伸フイルムの構成成分にすることにより、ポリアミド系積層2軸延伸フイルムの耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性の改善に効果がある。
【0025】
前記のA層を構成する混合ポリアミド系重合体は、上記メタキシリレン基含有ポリアミド重合体とメタキシリレン基を含有しないポリアミド、ポリアミド系ブロック共重合体との均質な混合物である。この混合重合体は、バージン原料の上記、メタキシリレン基含有ポリアミド重合体とメタキシリレン基を含有しないポリアミド、ポリアミド系ブロック共重合体を混合したものであってよいし、また、本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムを製造する際に生成する規格外フイルムや切断端材(耳トリム)として発生する屑材、およびその再生レジンとバージン原料を加えて調整したものであってもよい。
【0026】
本発明においてA層の混合重合体に添加される酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0027】
本発明においてA層の混合重合体に添加されるフェノール系酸化防止剤は、完全ヒンダードフェノール系化合物、若しくは、部分ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。例としては、テトラキス−〔メチレン‐3‐(3´,5´‐ジ‐t‐ブチル‐4´‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、等が挙げられる。
【0028】
上記フェノール系酸化防止剤をポリアミド系積層2軸延伸フイルムのA層の混合重合体に添加することにより、ポリアミド系積層2軸延伸フイルムの製膜操業性を向上する。特に、フイルム屑材、再生レジン等を用いた回収再生原料添加系では、ポリアミド系ブロック共重合体の回収再生による熱劣化が起き易く、これを起因とする製膜操業不良が発生する為、操業効率低下による生産コスト上昇、及び、回収再生原料の使用量の低下による操業性維持の為の原料費上昇による生産コスト上昇を招く。これに対して、上記フェノール系酸化防止剤を、回収再生原料類を含むポリアミド系2軸延伸フイルムのA層の混合重合体に添加することで、ポリアミド系ブロック共重合体をはじめとする各種重合体の熱劣化を抑制し、安定した製膜操業性を実現する。このことから、操業性向上、及び、回収再生原料の使用量増加による原料費低減により、生産コストの低減が可能となる。
【0029】
上記の接着強度、特に耐水接着強度が弱いという問題点の克服にはポリアミド積層フイルムの表面層の結晶化度を低くすることが効果的であり、脂肪族ポリアミド共重合体をポリアミド系フイルム表面に含有することが挙げられる。
【0030】
本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムのB層を構成する脂肪族ポリアミド重合体としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12、ナイロン6・10などの脂肪族ポリアミド単独重合体を使用することができる。
【0031】
また、B層を構成するポリアミド共重合体樹脂は、ナイロン6/6・6共重合体、ナイロン6/12、ナイロン6/6・10共重合体、ナイロン6・6/6・10共重合体などのような脂肪族ポリアミド共重合体で代表される脂肪族ポリアミド又はε−カプロラクタムを主成分としこれとヘキサメチレンジミンとイソフタル酸とのナイロン塩やメタキシリレンジアミンとアジピン酸とのナイロン塩などとを共重合させた少量の芳香族をを含むポリアミド共重合体等を使用することができる。
【0032】
特にナイロン6などの脂肪族ポリアミドに混合する脂肪族ポリアミド共重合体としては、ナイロン6とナイロン12の共重合体、あるいはナイロン6とナイロン6・6の共重合体が挙げられるが、ナイロン6とナイロン12の共重合体が好ましい。
【0033】
重合物単体に構造の異なるものを混合する場合、元の重合体と比較して構造的に違いが小さいときは結晶化度があまり低下せず、従って接着強度もあまり上がらないが、逆に構造が違いすぎると、もとの重合体との相溶性が悪くなり、フイルムの外観、及び、製品落下時の衝撃による凝集破壊が発生しやすくなるという悪影響がでる。
ポリアミド共重合体中のナイロン12とナイロン6との割合については特に制限はないが,コストや合成しやすさから、ナイロン12:ナイロン6=10〜30:90〜70(重量比)が好ましい。脂肪族ポリアミド共重合体を含む層については、該共重合体の含有量について特に制限はないが、10重量%以上の場合から接着性改善効果は大きくなる。ただ50重量%を超えると中心層と表面層間あるいは表面層内で層間剥離が発生する場合があり、またコスト面でも不利になるので、該共重合体の含有量は10〜50重量%が好ましい。
ただ共重合体の含有量が同じでも、延伸温度、延伸倍率、熱固定温度など製膜条件が異なれば結晶化度の低下度にも違いが出てくる。
【0034】
B層を構成するポリアミド系重合体からゴム成分として使用される各種エラストマーを排除し、前記混合ポリアミド系重合体を使用することにより、製袋品落下時の衝撃によるフイルム内部での凝集破壊を防止し、内容物を充填した後の製袋品の落下時における破袋防止効果をもたらす。
【0035】
本発明のA層を構成する混合重合体は、メタキシリレン基含有ポリアミド重合体29.9〜71.49重量%とメタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体20〜50重量%からなり、メタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体の一部又は全部がポリアミド系ブロック共重合体であり、A層の混合重合体中に含まれるポリアミドブロック共重合体の割合は8.5〜20重量%である。即ち、ポリアミド系積層2軸延伸フイルムに酸素バリアー性を付与する為には、A層を構成する重合体中にメタキシリレン基含有ポリアミド重合体が29.9〜71.49重量%必要であり、また、耐衝撃性と耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性を特性的にバランスさせるためには、メタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体が20〜50重量%の範囲で含まれる必要があり、さらに、メタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体として、ポリアミド系ブロック共重合体が、A層を構成する混合ポリアミド系重合体中で8.5〜20重量%の割合を占める必要が有る。
【0036】
メタキシリレン基含有ポリアミド重合体とメタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体とを混合する割合、及び、メタキシリレン基を含有しないポリアミド系ブロック共重合体を混合する割合が上記の範囲の上限を越えると、酸素バリアー性が不良となり、また、その混合する割合が上記の範囲の下限を下回ると、耐衝撃性や低温環境下での耐屈曲疲労性の不良が発生し、フイルム品質の改良効果が不充分であり、包装材料としての適性に欠ける。A層を構成する重合体中のメタキシリレン基含有ポリアミド重合体の混合量の下限は35重量%が好ましく、上限は71重量%が好ましい。メタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体の混合量の下限は22%が好ましく、上限は47重量%が好ましい。ポリアミド系ブロック共重合体の混合量の下限は25%が好ましく、上限は45重量%が好ましい。
【0037】
本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムのA層を構成する混合ポリアミド系重合体に、フェノール系酸化防止剤が0.01〜0.1重量%の範囲で含有される必要がある。A層の混合ポリアミド系重合体として、屑材、及び再生レジン等の回収再生原料を使用する場合での、回収再生原料の熱劣化等による製膜操業性不良を低減し安定した製膜操業性を実現するには、酸化防止剤が混合ポリアミド系重合体中に、0.01〜0.1重量%必要である。
【0038】
酸化防止剤のA層の混合重合体に混合する割合が上記の範囲の上限を超えると、ポリアミド系積層2軸延伸フイルム表面への析出等による白化、ポリエチレン、ポリプロピレンシーラントとのラミネート加工時の接着性不良となり、上記の範囲の下限を下回ると、A層の混合重合体として、屑材、及び再生レジン等の回収再生原料を使用する場合での、回収再生原料の熱劣化等による製膜操業性不良を低減し得ず、安定した製膜操業性を付与し得ない。酸化防止剤の混合量の下限は0.02重量%が好ましい。
【0039】
本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムのA層及び/又はB層を構成する混合ポリアミド系重合体中に含有させる脂肪族アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドとしては、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドなどが挙げられる。
【0040】
この場合の、A層及び/又はB層を構成するポリアミド重合体中に含有させる脂肪酸アマイド、及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量は、混合ポリアミド系重合体100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.40重量部であり、更に好ましくは0.05〜0.2重量部である。脂肪酸アマイド及び/又は脂肪酸ビスアマイドの含有量が混合ポリアミド系重合体100重量部に対して、0.01重量部未満となると滑り性が悪く、印刷やラミネート等における加工適性が不良となり、0.40重量部を越えると経時的にフイルム表面へのブリードにより表面に斑を生ずることがあり、品質上好ましくない。
【0041】
また、本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムにおける、メタキシリレン基含有ポリアミド重合体とメタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体とから構成されるA層の厚み比率はA層及びB層(A層の両表面にB層が積層されている場合はその合計厚み)の合計厚みの20〜87%であるのが好ましい。A層の厚み比率が87%を越えると耐衝撃性や耐屈曲疲労性が充分でなく、また、製袋品落下時の凝集破壊が発生しやすくなる。20%未満であると酸素バリアー性が不充分となる。A層の厚み比率の下限は22%がより好ましく、上限は85%がより好ましい。
【0042】
本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムは、常温や低温環境下における弾性回復力が優れ、耐衝撃性や耐屈曲疲労性が優れた特性を示すと共に、印刷やラミネート、製袋加工等の加工適性も良好であり、各種の包装材料として好適な積層2軸延伸フイルムである。
【0043】
本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムの厚みは特に制限されるものではないが、包装材料として使用する場合、通常100μm以下であり、一般には12~50μmの厚みのものが使用される。
【0044】
A層を構成するメタキシリレン基含有ポリアミド重合体とメタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体とを混合する方法には特に制限はないが、通常はチップ状の重合体をV型ブレンダーなどを用いて混合した後、溶融し成形する方法が用いられる。
【0045】
本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムのA層とB層を構成するポリアミド重合体には必要に応じて他の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル系重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系重合体等のその特性を害さない範囲で含有させてもよい。
【0046】
また、帯電防止剤や防曇剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の各種の添加剤を必要に応じて、ポリアミド重合体からなるA層及び/又はB層の一方又は両方の層に含有させることができる。
【0047】
本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムは以下の製造方法により製造することができる。例えば、各層を構成する重合体を別々の押出機を用いて溶融し、1つのダイスから共押出しにより製造する方法、各層を構成する重合体を別々にフイルム状に溶融押出ししてからラミネート法により積層する方法、及びこれらを組み合せた方法など任意の公知の方法をとることができ、延伸方法としては、フラット式逐次2軸延伸方法、フラット式同時軸延伸方法、チューブラー法等の方法を用いて縦方向に75〜90℃の延伸温度で2〜5倍、横方向に120〜140℃の延伸温度で3〜6倍延伸し、必要により180〜230℃で熱固定する。加えて熱固定時の緩和処理を2〜10%で行うことが好ましい。かくして、積層フイルムの透明性、酸素ガスバリアー性や加工適性を向上させることができる。
【実施例】
【0048】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、フイルムの評価は次の測定法によって行った。
【0049】
・ 酸素透過率(mL/m・d・Mpa)
モダンコントロール社製のOX−TRAN2/20を使用し、温度23℃、相対湿度65%の条件で測定した。
【0050】
(2)衝撃強度
東洋精機製作所社製のフイルムインパクトテスターを使用し、温度23℃、相対湿度65%の環境下で測定した。
【0051】
(3)耐屈曲疲労性(ピンホール数)
理学工業社製のゲルボフレックステスターを使用し、下記の方法により耐屈曲疲労性を測定した。
【0052】
実施例で作製したフイルムにポリエステル系接着剤を塗布後、線状低密度ポリエチレンフイルム(L−LDPEフイルム:東洋紡績社製、L6102)40μmをドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフイルムとした。得られたラミネートフイルムを12インチ×8インチに裁断し、直径3.5インチの円筒状にし、円筒状フイルムの一端をゲルボフレックステスターの固定ヘッド側に、他の端を可動ヘッド側に固定し、初期の把持間隔を7インチとした。
【0053】
ストロークの最初の3.5インチで440度のひねりを与え、その後2.5インチは直線水平運動で全ストロークを終えるような屈曲疲労を、40回/minの速さで500回行い、ラミネートフイルムに発生したピンホール数を数えた。なお、測定は5℃の環境下で行った。
【0054】
(4)ラミネート強度
実施例で製造したフイルムにポリエステル系接着剤を塗布後、線状低密度ポリエチレンフイルム(L−LDPE:東洋紡績社製、L6102:厚み40μm)をドライラミネートし、40℃の環境下で3日間エージングを行いラミネートフイルムとした。ラミネート強度測定用にラミネートフイルムの縦方向に15mm×150mm長に短冊状に切断し、一端をポリアミド系積層2軸延伸フイルムと線状低密度ポリエチレンフイルムとに界面で剥離し、テンシロン(東洋ボールドウィン社製STM-T-50BP)を用いて引張り方向に対して垂直に保ち、且つポリアミド系積層2軸延伸フイルムと線状低密度ポリエチレンフイルムとの界面に水を付着させながらラミネート強度を測定した。
【0055】
(5)結晶化度パラメーター
偏光方向を反射面に垂直にし、偏光方向をMD方向に平行になるようにフイルムカットサンプル(20mm×90mm)をセットして偏光ATRスペクトル(Ge45°)をパーキンエルマー社製FT-IRスペクトロメーターPARAGON1000で測定した。得られたスペクトルより、1199cm-1と1172cm-1との吸光度比(1199cm-1の吸収/1172cm-1の吸収)を求めた。
【0056】
(実施例1)2種3層の共押出しTダイ設備を使用し、次のような構成の未延伸シートを得た。B層/A層/B層の構成で、未延伸シートのトータル厚みは190μmであり、トータル厚みに対するA層の厚み比率は67%である。A層を構成する組成物:ポリメタキシリレンアジパミド(三菱瓦斯化学株式会社:S6007)が70重量%とナイロン6(東洋紡績株式会社:T814)が17.9重量%とナイロン6をハードセグメントとしポリエチレングリコールをソフトセグメントとするポリアミド系ブロック共重合体(アルケマ社:PebaxMH1657)が12重量%からなり、さらにフェノール系酸化防止剤を0.1重量%を添加してなる混合重合体組成物。B層を構成する組成物:ナイロン6(東洋紡績株式会社:T814)が89.85重量%とナイロン6/ナイロン12ポリアミド共重合体(宇部興産株式会社:7024B)が10.0重量%、およびエチレンビスステアリン酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0057】
得られた未延伸シートをロール延伸にて縦方向に延伸温度80℃、3.5倍延伸し、続いてテンターにて延伸温度130℃にて横方向に3.6倍延伸し、次いで210℃で熱固定し、5.0%の横弛緩処理を施した後に冷却することにより15μmの2軸延伸フイルムを作製し、さらに、線状低密度ポリエチレンフイルム(L−LDPEフイルム:東洋紡績社製、L4102)40μmとドライラミネートする側のB層表面にコロナ放電処理を実施した。得られた2軸延伸フイルムの酸素透過率、衝撃強度、ピンホール数、耐水ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2)実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フイルムを得た。
B層を構成する組成物:ナイロン6が79.85重量%とナイロン6/ナイロン12ポリアミド共重合体(宇部興産株式会社:7024B)が20.0重量%、およびエチレンビスステアリン酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0059】
得られた2軸延伸フイルムの酸素透過率、衝撃強度、ピンホール数、耐水ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3)実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フイルムを得た。
B層を構成する組成物:ナイロン6が59.85重量%とナイロン6/ナイロン12ポリアミド共重合体(宇部興産株式会社:7024B)が40.0重量%、およびエチレンビスステアリン酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0061】
得られた2軸延伸フイルムの酸素透過率、衝撃強度、ピンホール数、耐水ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0062】
(比較例1)実施例1の記載において以下のように代えた他は、実施例1と同様の方法で2軸延伸フイルムを得た。
B層を構成する組成物:ナイロン6が99.85重量%とエチレンビスステアリン酸アマイドが0.15重量%からなる重合体組成物。
【0063】
得られた2軸延伸フイルムの酸素透過率、衝撃強度、ピンホール数、耐水ラミネート強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のポリアミド系積層2軸延伸フイルムは、優れた酸素ガスバリアー性を有すると共に耐衝撃性及び耐屈曲疲労性、低温環境下における耐屈曲疲労性が良好であり、食品包装等において内容物の変質や変色の防止に効果があり、さらに、輸送中、特に、低温輸送時における衝撃や振動による屈曲疲労から内容物を保護することができ、各種の包装材料として有効に使用することができる。また、生産時の操業性でも安定した操業性を与えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタキシリレンジアミン、若しくはメタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる混合キシリレンジアミンを主たるジアミン成分とし、炭素数6〜12のα、ω−脂肪族ジカルボン酸成分を主たるジカルボン酸成分とするメタキシリレン基含有ポリアミド重合体29.9〜71.49重量%と、メタキシリレン基を含有しないポリアミド重合体20〜50重量%、ポリアミド系ブロック共重合体8.5〜20重量%との混合ポリアミド系重合体に、酸化防止剤0.01〜0.1重量%添加してなるA層の少なくとも一方の面に、脂肪族ポリアミド重合体50〜90重量%と、ナイロン6とナイロン12あるいはナイロン6とナイロン66とのポリアミド共重合体10〜50重量%からなる混合ポリアミド系重合体からなるB層が積層され、A層及びB層が2軸延伸されてなることを特徴とするポリアミド系積層2軸延伸フイルム。
【請求項2】
請求項1記載のフィルムにおけるA層中に含有されるポリアミド系ブロック共重合体が、
(a)ε‐カプロラクタムによってなるポリアミド成分によって構成されたハードセグメントと、(b)ポリオキシアルキレングリコール成分、ポリプロピレングリコール成分またはポリエチレングリコール成分によって構成されたソフトセグメントとからなるポリアミド系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド系積層2軸延伸フイルム。
【請求項3】
A層及び/又はB層を構成する混合ポリアミド系重合体100重量部に対して、さらに脂肪族アマイド及び/又は脂肪族ビスアマイドを0.01〜0.40重量部含有してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアミド系積層2軸延伸フイルム。
【請求項4】
A層の厚みが、A層及びB層の合計厚みの20〜87%の範囲内であることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載のポリアミド系積層2軸延伸フイルム。

【公開番号】特開2009−154294(P2009−154294A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331384(P2007−331384)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】