説明

ポリアミド組成物およびそれから製造されるボビン

本発明は、電気絶縁プラスチック材料から製造されるプラスチックコアを含んでなる電気コイル用ボビンと、ボビン中で電気絶縁プラスチック材料として使用できるポリアミド組成物とに関し、ポリアミド組成物は、2〜5個のC原子を有する10〜70モル%の短鎖脂肪族ジアミンと少なくとも6個のC原子を有する30〜90モル%の長鎖脂肪族ジアミンとの混合物からなる脂肪族ジアミンから誘導される単位と、5〜65モル%の脂肪族ジカルボン酸と35〜95モル%のテレフタル酸を含んでなる芳香族ジカルボン酸との混合物からなるジカルボン酸から誘導される単位とを含んでなる半結晶質半芳香族ポリアミドを含んでなり、テレフタル酸と長鎖脂肪族ジアミンとを合わせたモル量は、ジカルボン酸とジアミンとの総モル量に対して少なくとも60モル%である。本発明はまた、ボビンと、ボビンのコア周囲の導電性巻線とを含んでなる電気コイルに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は電気絶縁プラスチック材料から製造されるプラスチックコアを含んでなる電気コイル用ボビン、およびボビン中で電気絶縁プラスチック材料として使用できるポリアミド組成物に関する。本発明はまた、ボビンを含んでなる電気コイル、およびボビンのコア周囲の導電性巻線に関する。
【0002】
このようなボビンは、欧州特許出願公開第1647999−A1号明細書により公知である。欧州特許出願公開第1647999−A1号明細書は、電気絶縁材料の誘導子本体(シースまたはボビンとも称される)を含んでなる誘導子取り付けアセンブリー、およびボビン周囲に巻かれた導線について述べている。誘導子本体またはボビンは、射出成形などの成形工程を通じてプラスチック材料から製造できる。誘導子のインダクタンス値を増大させるために、フェライト素子などのコア挿入物をボビン中に挿入してもよい。これらの構成要素は、大抵はその他の回路構成要素と共にプリント回路基板(PCB)上に取り付けられる。この目的のために、誘導子巻線端は金属ピンに接続(ハンダ付け)される。金属ピンは成形後に所望の位置で本体中に挿入でき、または欧州特許出願公開第164799A1号明細書に従ったより良い代案として、金属ピンは誘導子本体と共に一体的に成形されてもよい。巻線工程の終わりに線材は金属ピン端の周囲に数回巻き付けられる。次に線材は切断される。誘導子巻線端は金属ピンにハンダ付けされて、必要な電気的接続が提供される。ピンは誘導子本体から突出して、その上に誘導子が取り付けられるPCB中に提供される受容孔内への挿入を可能にし(ピン挿入孔ハンダ付け)、またはSMD(表面実装型デバイス)工程のためのハンダペースト上への配置を可能にする。絶縁上の理由から、誘導子巻線は、通常、エナメルなどの絶縁コーティングによって覆われた導電性(例えば銅)線材を含んでなる。ピンに良好な電気的接続を提供するために、エナメルは局所的に除去(例えば破損)されなくてはならず、これは典型的に加熱を通じて起きる。この目的で、ピンの周囲に巻かれた線材端は、絶縁エナメルを「破壊」し、ひいては絶縁コーティングを局所的に除去して導電性コアを線材端に暴露するために、典型的に300℃を超えて加熱される(例えば400℃で1/10秒間の加熱など)。欧州特許出願公開第1647999−A1号明細書で言及されるように、短時間の適用であるにもかかわらず、絶縁エナメルを破壊するために加えられる熱は、実際には、誘導子本体のプラスチック材料のより低い軟化温度のために、それをわずかに軟化させ得る。しかし誘導子本体のあらゆる望まれない変形、またはその金属ピンのずれは避けるべきである。
【0003】
欧州特許出願公開第1647999−A1号明細書中の誘導子本体(シースまたはボビン)は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニルスルフィド(PPS)などの電気絶縁プラスチック材料から製造される。
【0004】
既成コイルと称される、類似した材料から製造される電気コイル用ボビンもまた、国際公開第2006/120054号パンフレットにより公知である。国際公開第2006/120054号パンフレットのボビンは、例えばPPS(ポリフェニルスルフィド)、PPA(ポリフタルアミド)、またはスタニール(Stanyl)(登録商標)(ポリアミド−46)などの例えば高い誘電特性および機械的特性を有するプラスチック材料などの電気絶縁材料から製造される。国際公開第2006/120054号パンフレットの既成コイルは、電気モーター中で使用することが想定されている。
【0005】
既知のボビンは、様々な問題を提示する。ボビンのコア周囲に線材を巻いてコイルを形成することは、ボビンのコアとフランジに大きな力を及ぼす。線材を切断する際、金属ピンを含んでなるボビンのその部分に強い力が加わる。線材の金属ピンへのハンダ付けに先だって線材端上のコーティングを焼き取るためには、金属ピンは温度が少なくとも380℃のハンダ槽に浸される。例えば鋳造ステップにおいて既成コイルにさらなる熱処理が施される場合、特に鋳造材料が高温のオーブン内で硬化される場合、非常に低いクリープが必須である。既成コイルの製造後、コイルを例えばPCB上に取り付けなくてはならない場合もある。これらの取り付け工程は、最近では250〜270℃の高温工程をますます含むようになっている。このような工程中に、線材端を金属端に接触させ固定するために使用される第1のハンダ付け材料は無傷のままでなくてはならない。これがより一層高い融点のハンダ付け材料が使用される理由であり、第1のハンダ槽の温度は380℃程度に高く、または400℃以上でさえあり得る。ボビンのコア部分はこの高温槽に曝されないが、熱は金属ピンを通じて伝達し、そのために材料が局所的に軟化して金属ピンが動く場合もある。
【0006】
高温ハンダ付けへの傾向が進展するにつれて、現行のボビン取り扱い手順と組み合わせた現行のポリアミド組成物の使用は、膨れを防止するには不十分となる。
【0007】
ボビンの膨れの制御ひいては防止における主要な要因は、成形品の水分吸収の制御であった。膨れはボビン樹脂が水蒸気で過飽和した際に生じる。PCBのためのSMTアセンブリーの大半は、環太平洋地域で行われる。ボビンが曝されることがある高い温度および湿度レベルは、これらのボビンの水による飽和をもたらすことができる。
【0008】
膨れ開始温度は、部品の含水率、接点加熱速度、およびリフロー工程のピーク温度、結晶化度および成形条件(例えば金型温度、溶融温度)、保存条件(例えば温度、%RH、期間)および部品設計特性(すなわち厚さ、長さ)をはじめとする、いくつかの要因に左右される。成形品は、ハンダ付け中の膨れ傾向を低下させるために高湿度条件下に保存されることが多い。
【0009】
より高い温度への傾向の他に、小型化への傾向も進行中である。この小型化のために、金属ピンを通る熱伝達の侵入度は、より一層重大な意味を持つようになる。その結果、ボビンとボビンが製造されるもとになる材料の機械的特性と寸法安定性に、より高次の要求が課される。電気コイルを作成するための様々な加工ステップにおける、ボビンの寸法安定性および少なくとも全般的に見たプラスチック材料のクリープ不在は、ピン位置の正確さのために非常に重大な意味を持つ。
【0010】
欧州特許出願公開第1647999−A1号明細書および国際公開第2006/120054号パンフレットの各プラスチック材料は、それ自体の限界を有する。PBTなどのプラスチックは、一般に220〜240℃の範囲の低すぎる軟化温度を有する。高温ポリアミドは、ポリエステルおよびポリカーボネートよりも良好に機能する。これらのポリアミドの特定の問題としては、ポリアミド−46の水分取り込みおよび膨れ傾向が挙げられる一方、PPAは一般に脆過ぎる。どちらの材料もまた、高温工程段階およびこのような工程中の高い機械的負荷を伴う極めて重要な用途において、寸法安定性と部品完全性が不十分であるという欠点がある。ポリアミド−46は、PA66およびPPAよりもはるかに良好に機能することが知られているが、それでも十分でない。さらに高湿度条件下におけるポリアミド−46の絶縁耐力保持は十分でない。PPSが脆過ぎる一方で、LCPは主にこれらの高温用途で使用されているものの、これもまたかなり脆く非常に高価であることが知られている。
【0011】
したがって線材とピンを接続するための第1のハンダ付けステップ(浸漬ハンダ付け)中、ならびに引き続く取り付け工程(表面実装)に伴うハンダ付けステップ中の双方で、電気コイルの製造に伴う高温工程段階において、より良い性能を有するボビンに対する必要性がある。特にボビンは、ポリアミド−46から製造される対応するボビンよりも良好な機械的特性および低クリープ、および良好な絶縁耐力保持を有しながら、PPAおよびポリアミド−4,6と比較して、高い寸法安定性および改善された膨れ抵抗性を含んでなる特性において改善されたバランスを有するべきである。
【0012】
この目的は、脂肪族ジアミンとジカルボン酸とから誘導される単位を含んでなる半芳香族ポリアミドを含んでなるポリアミド組成物から製造されるボビンによって達成され、
a)ジカルボン酸(A)は5〜65モル%の脂肪族ジカルボン酸および任意にテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)と、35〜95モル%のテレフタル酸(A2)との混合物からなり、
b)脂肪族ジアミン(B)は2〜5個のC原子を有する10〜70モル%の短鎖脂肪族ジアミン(B1)と、少なくとも6個のC原子を有する30〜90モル%の長鎖脂肪族ジアミン(B2)との混合物からなり、
c)テレフタル酸(A2)と長鎖脂肪族ジアミンと(B2)を合わせたモル量は、ジカルボン酸およびジアミンの総モル量に対して少なくとも60モル%である。
【0013】
簡潔さと読みやすさのために、この半芳香族ポリアミド共重合体を本明細書では半芳香族ポリアミドX、またはさらに短くポリアミドXとも表示する。
【0014】
前記ポリアミド組成物から製造される本発明に従ったボビンの効果は、ポリアミド−46、およびいくつかのその他のポリアミドと比較して、SMDハンダ付け工程における膨れが低下しながら、高いピーク温度を有する浸漬ハンダ付け工程中の寸法安定性および部品完全性の保持が改善され、ボビンがポリアミド−46と比較して、高湿度条件下での非常に低い比誘電率、および改善された絶縁耐力の保持によって示される、高靭性、低クリープ、および高絶縁耐力を有することである。
【0015】
本発明のボビンは、PA46、PA6T/66、およびPA9Tなどのその他のポリアミド組成物と比較して改善された膨れ抵抗性を有することが分かった。これは、特に本発明のボビンの水吸収または取り込みが、PA9Tなどの「良好な膨れ抵抗性」を有すると見なされる従来のポリアミドボビンよりも実質的に高いことを考えれば、意外であった。
【0016】
無鉛ハンダ付け工程への傾向に加えて、ボビンをさらに小型化する傾向がある。この傾向は、反らずに、高温時剛性などの良好な機械的特性を有することができる薄壁設計に対する必要性に行き着いた。本発明のボビンは、ボビンで使用するのに適した従来のポリアミド組成物と比較して、改善された反り抵抗性および改善された高温時剛性の組み合わせを提供できる。剛性などの機械的特性における改善は、性能改善が材料の配向性増大に派生する異方性材料と典型的に関連付けられているので、等方性タイプの挙動、それに随伴するポリマー流に平行および垂直方向の類似した線熱膨張率と、高温における改善された剛性との組み合わせは驚くべきである。
【0017】
本発明に従った強化難燃性ポリアミド組成物中の半芳香族ポリアミドは、脂肪族ジアミンとジカルボン酸とから誘導される単位を含んでなる。ジカルボン酸から誘導される単位はA−A単位として示すことができ、ジアミンから誘導される単位はB−B単位として表すことができる。それに従ってポリアミドは、例えばNylon Plastic handbook,Ed.M.I.Kohan,Hanser Publishers,Munich,ISBN 1−56990−189−9(1995),page 5で適用される分類に対応するAABBポリマーとして表すことができる。
【0018】
短鎖脂肪族ジアミン(B1)は、C2〜C5脂肪族ジアミンまたはその混合物である。換言すればそれは2〜5個の炭素(C)原子を有する。短鎖脂肪族ジアミンは、例えば1,2−エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、および1,5−ペンタンジアミン、およびそれらの混合物であってもよい。好ましくは短鎖脂肪族ジアミンは、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは1,4−ブタンジアミンである。
【0019】
長鎖脂肪族ジアミン(B2)は少なくとも6個の炭素(C)原子を有する脂肪族ジアミンである。長鎖脂肪族ジアミンは、直鎖、分枝鎖および/または脂環式であってもよい。長鎖脂肪族ジアミンは、例えば2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(2−メチルペンタメチレンジアミンとしてもまた知られている)、1,5−ヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、m−キシリレンジアミン、およびp−キシリレンジアミン、およびそれらの任意の混合物であってもよい。好ましくは長鎖脂肪族ジアミンは6〜12個の炭素原子を有し、適切にはC8またはC10ジアミンである。好ましい実施態様では長鎖ジアミンは、6〜9個の炭素原子を有するジアミンの50〜100モル%、より好ましくは75〜100モル%を構成する。これはさらに良い高温特性を有する材料をもたらす。より好ましくは長鎖脂肪族ジアミンは、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは1,6−ヘキサンジアミンである。この好ましい選択、および特により好ましい1,6−ヘキサンジアミンの選択の利点は、本発明に従ったコポリアミドの高温特性がさらに良いことである。
【0020】
脂肪族ジカルボン酸は、直鎖、分枝鎖および/または脂環式であってもよく、炭素原子数は特に限定されない。しかし脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは4〜25個の炭素原子を有する、より好ましくは6〜18個、さらにより好ましくは6から12個の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖脂肪族ジカルボン酸、またはその混合物を含んでなる。適切な脂肪族ジカルボン酸は、例えばアジピン酸(C6)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(C8)、スベリン酸(C8)、セバシン酸(C10)、ドデカン酸(C12)またはその混合物である。好ましくは脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、セバシン酸またはその混合物をはじめとする、C6〜C10脂肪族ジカルボン酸であり、およびより脂肪族ジカルボン酸は、C6〜C8脂肪族ジカルボン酸である。最も好ましくは脂肪族ジカルボン酸はアジピン酸である。
【0021】
芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸に次いで、例えばイソフタル酸および/またはナフタランジカルボン酸などのその他の芳香族ジカルボン酸を含んでなってもよい。
【0022】
半芳香族ポリアミドは、テレフタル酸に次いで、脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸とを適切には含んでなってもよい。好ましくはテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸の量は、脂肪族ジカルボン酸と、テレフタル酸(A1)以外の芳香族ジカルボン酸との総モル量に対して50モル%未満、より好ましくは25モル%未満である。
【0023】
本発明に従った組成物中の半芳香族ポリアミド中では、短鎖脂肪族ジアミン(B1)が脂肪族ジアミン単位(B)の10〜70モル%を構成し、長鎖脂肪族ジアミン(B2)が残りの30〜90モル%を構成する。
【0024】
好ましくは短鎖脂肪族ジアミンのモル量は、短鎖および長鎖ジアミンのモル量に対して、最大60モル%、より好ましくは50モル%、40モル%、または35モル%でさえある。このようにより低いモル量の短鎖ジアミンを有するコポリアミドの利点は、所定のTmを有するコポリアミドで膨れ挙動が改善されることである。
【0025】
また好ましくは、半芳香族ポリアミド中の短鎖脂肪族ジアミンのモル量は、短鎖脂肪族ジアミンおよび長鎖脂肪族ジアミンの総モル量に対して、少なくとも15モル%、より好ましくは、少なくとも20モル%である。短鎖脂肪族ジアミンのモル量が多いほど、ポリアミドの熱安定性はより良くなる。
【0026】
脂肪族ジカルボン酸、そして存在する場合はテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)は、ジカルボン酸単位(A)の5〜65モル%を構成し、テレフタル酸(A2)が残りの35〜95モル%を構成する。
【0027】
好ましくは、ジカルボン酸は少なくとも40モル%、より好ましくは少なくとも45モル%、またはさらには少なくとも50モル%のテレフタル酸からなる。テレフタル酸量の増大の利点は、高温特性がさらに改善されることである。また好ましくは脂肪族ジカルボン酸、および任意にテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)の量は、少なくともジカルボン酸の10モル%、より好ましくは少なくとも15モル%である。このより高い量は、組成物がより良い加工性を有するという利点を有する。
【0028】
高度に好ましい実施態様では、ジカルボン酸(A)は、ジカルボン酸のモル量に対して、50〜85モル%のテレフタル酸(A2)および50〜15モル%の脂肪族ジカルボン酸、そして任意にテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)からなり、脂肪族ジアミン(B)は、脂肪族ジアミンの総モル量に対して、40〜80モル%の長鎖ジアミン(B2)および60〜20モル%の短鎖ジアミン(B1)からなる。より好ましくは、その中のテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸の量は、仮に存在する場合、脂肪族ジカルボン酸およびテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)の総モル量に対して25モル%未満である。この好ましい組成物により、膨れ特性、絶縁破壊強さ、加工挙動、および機械的特性に、より良い総合的バランスが得られる。
【0029】
長鎖脂肪族ジアミン(B2)の最小量が、脂肪族ジアミンの総モル量に対して30モル%であり、テレフタル酸(A2)の最小量がジカルボン酸のモル量に対して35モル%である一方、テレフタル酸(A2)と長鎖脂肪族ジアミン(B2)とを合わせたモル量は、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して少なくとも60モル%である。その結果、長鎖脂肪族ジアミンの相対量が最低30モル%である場合、テレフタル酸の相対量は少なくとも90モル%である。同様にテレフタル酸の相対量が最低35モル%である場合、長鎖脂肪族ジアミンの相対量は少なくとも85モル%である。
【0030】
別の高度に好ましい実施態様では、テレフタル酸(A2)と長鎖脂肪族ジアミン(B2)のモル量の和が、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して少なくとも65モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、さらにより好ましくは少なくとも75モル%である。テレフタル酸(A2)と長鎖脂肪族ジアミン(B2)のモル量の和がより高いポリアミドの利点は、ポリアミドがより高い絶縁破壊値と、より良い熱安定性および良好な溶融加工性とを兼ね備えることである。適切には前記の和は、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して70〜85モル%、または75〜80モル%の範囲でさえある。
【0031】
ジカルボン酸(AA)およびジアミン(BB)から誘導されるA−A−B−B単位に次いで、本発明に従ったポリアミドは、脂肪族アミノカルボン酸(AB単位)および対応する環式ラクタム、ならびに少量の分岐剤および/または連鎖停止剤などのその他の構成要素から誘導される単位を含んでなってもよい。
【0032】
好ましくは本発明に従ったポリアミドは、ポリアミド総質量に対して、最大で10質量%、より好ましくは最大8質量%、およびさらにより好ましくは最大5質量%のジカルボン酸およびジアミン以外の構成要素から誘導される単位を含んでなる。最も好ましくは本発明に従ったポリアミドは、このようなその他の構成要素を全く含まず、ジカルボン酸およびジアミンから誘導されるA−A−B−B単位のみからなる。その利点は、より良い誘電特性と、高温および高湿度における誘電特性および機械的特性のより良い保持である。
【0033】
好ましくは半芳香族ポリアミドは、100℃を超え、より好ましくは少なくとも110℃、またはさらには少なくとも120℃であるガラス転移温度(Tg)を有する。好ましくはTgは最大140℃、より好ましくは最大130℃である。また好ましくは半芳香族ポリアミドは、少なくとも295℃、好ましくは少なくとも300℃、より好ましくは少なくとも310℃の溶融温度(Tm)を有する。好ましくはTgは最大で340℃、より好ましくは最大で330℃である。より高いTgは、より良い誘電特性および特に高湿度条件下での絶縁耐力の保持をもたらす。高いTmはより良い膨れ抵抗性をもたらす。TgおよびTmがこれらの限度内にあることの利点は、膨れ抵抗性、寸法安定性、および加工挙動のより良いバランスを有することである。
【0034】
融点(温度)という用語は本明細書では、加熱速度10℃/分でDSCによりASTM D3417−97/D3418−97に従って測定され、融解範囲に入り最高溶融速度を示す温度であると理解される。ガラス転移点という用語は本明細書では、加熱速度10℃/分でDSCによりASTM E 1356−91に従って測定される温度であると理解され、親熱曲線(parent thermal curve)の変曲点に対応する親熱曲線(parent thermal curve)の一次導関数(時間に関する)のピーク温度として測定される。
【0035】
半芳香族ポリアミドは、広い範囲にわたって変動する粘度を有してもよい。強化難燃性組成物の良好な機械的特性をなおも保持しながら、相対粘度が1.6程度に低く、またはなおもさらに低くあってもよいことが観察されている。本明細書で相対粘度は、ISO307第4版の方法に従って96%硫酸中で測定される。好ましくは相対粘度は少なくとも1.7、より好ましくは1.8、または1.9でさえある。機械的特性の保持はこのような成形品にとって実に重要であり、これはこのように低い相対粘度でもなお当てはまる。また好ましくは相対粘度は4.0未満、より好ましくは3.5未満、さらにより好ましくは3.0未満である。この低い相対粘度は成形中の流れがより良く、より薄い要素を有する成形品を作ることができるという利点を有する。
【0036】
本発明に従った組成物は、広い範囲にわたって変動する量で半芳香族ポリアミドを含んでなってもよい。適切には量は25〜80重量%の範囲であり、より好ましくは組成物は半芳香族ポリアミドを25〜60重量%、または30〜50重量%含んでなる。
【0037】
前記ポリアミド組成物は、半芳香族ポリアミドに次いで1つ以上のその他の構成要素を含んでなってもよい。適切にはポリアミド組成物は、次の構成要素の少なくとも1つを含んでなる。無機賦形剤、補強材、難燃剤、その他のポリマー、および射出成形可能なポリアミド組成物と共に一般に用いられる添加剤である補助添加剤。
【0038】
その他のポリマーは本明細書では、前記半芳香族ポリアミド以外およびポリマー性難燃剤以外のポリマー材料と理解される。その他のポリマーは、前記半芳香族ポリアミド以外の熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリエステルおよびPPS、およびゴムなどの熱可塑性ポリマーでもよい。その他のポリマーは、オリゴマー性およびポリマー性流動促進剤、耐衝撃性改良剤、および強化剤を含むことができる。その他のポリマーは、仮に使用されるのならば、典型的に半芳香族ポリアミドの重量に対して30重量%未満の量で使用される。好ましくは量は半芳香族ポリアミドの重量に対して25重量%未満、より好ましくは20重量%未満、最も好ましくは10重量%未満である。適切には、少なくとも1重量%、または少なくとも2重量%の少量が使用される。
【0039】
ポリアミド組成物は好ましくは、任意に難燃剤共力剤と組み合わさった難燃剤を含んでなり、より好ましくは安全上の理由からからULまたはその他の監督官庁の引火性等級に適合する。
【0040】
難燃剤系は、ハロゲン化難燃剤および/またはハロゲンフリー難燃剤、および前記難燃剤またはその組み合わせに次いで、任意に難燃性共力剤も含んでなってもよい。ハロゲン化難燃剤は、例えば臭素化ポリスチレン、ポリブロモスチレン共重合体、臭素化エポキシ樹脂および/または臭素化ポリフェニレンオキシドなどの臭素化ポリマーであってもよい。適切には、ハロゲン化難燃剤は、例えば61〜70重量%の範囲である高臭素含量の臭素化ポリスチレンである。臭素量が多いほど、より低い難燃剤使用量とより良い流れ特性が可能になる。ハロゲンフリー難燃剤は、適切には窒素含有難燃剤、亜リン酸含有難燃剤および/または窒素および亜リン酸含有難燃剤であってもよい。適切なハロゲンフリー難燃剤は、例えばリン酸塩、特にメラミンポリリン酸塩などのポリリン酸塩、およびホスフィン酸塩、特にジエチルホスフィン酸カルシウムおよびジエチルホスフィン酸アルミニウムなどの有機ホスフィン酸の金属塩である。適切な共力剤の例は、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、および亜アンチモン酸ナトリウムのようなアンチモン化合物、およびその他の金属酸化物、およびホウ酸亜鉛およびその他の金属ホウ酸塩である。好ましくは共力剤は、改善された膨れ抵抗性を提供することからホウ酸亜鉛である。
【0041】
適切には難燃剤系は、組成物総重量に対して1〜40重量%、好ましくは5〜35重量%の総量で存在する。好ましくは難燃剤は5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%の量で存在し、共力剤は組成物総重量に対して好ましくは0〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%、およびさらにより好ましくは5〜10重量%の量で存在する。
【0042】
ポリアミド組成物は、好ましくは補強材を含んでなる。これはポリアミド組成物とそれから製造されるボビンの特性、特に浸漬ハンダ付けステップにおけるボビンの寸法安定性を大幅に改善する。
【0043】
補強材としては、低アルカリE−ガラスなどのガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、およびウィスカーのような繊維性材料(その内ガラス繊維が好ましい)と、典型的に雲母およびナノ粘土のような板状または線維形態の材料である無機補強材とが挙げられる。適切には補強材は、組成物総重量に対して5〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、より好ましくは25〜40重量%の量で存在する。前に述べたように、補強材はTgを超える温度で組成物の弾性率に対して強力な増大効果を有し、その増大はいくつかのその他のポリアミドよりも大きい。
【0044】
使用できる繊維強化材の典型的な例としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、およびウィスカーが挙げられ、その内ガラス繊維が好ましい。所望ならば、このような補強材または賦形剤と共にサイズ剤が使用できる。本発明の組成物を調製するのに使用できる適切なガラス繊維は市販される。適切には補強材は、組成物総重量に対して5〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、より好ましくは25〜40重量%の量で存在する。
【0045】
発明の組成物が含んでもよいその他の添加剤としては、無機賦形剤、CTI向上剤、および射出成形化合物で使用される補助添加剤が挙げられる。無機賦形剤は、例えばガラス球またはマイクロバルーンなどのガラスフレークおよび無機賦形剤、粘土、焼成カオリンのようなカオリン、珪灰石、および滑石、およびその他のミネラル、およびそれらの任意の組み合わせである。無機賦形剤の量は大きな範囲にわたって変動してもよいが、適切には組成物総重量に対して0〜50重量%、好ましくは1〜25重量%の範囲である。
【0046】
好ましくはポリアミド組成物は、少なくともCTI向上剤、より好ましくはCTI向上剤および無機賦形剤、繊維強化材、または難燃剤、またはそれらの任意の組み合わせを含んでなる。CTIを改善するための適切な添加剤としては、例えば(i)ポリエチレンおよび/またはエチレン共重合体などのポリオレフィンのような無極性ポリマー、およびアクリル耐衝撃性改良剤、および(ii)硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛などの金属ホウ酸塩、およびホウ酸カルシウムのようなアルカリ土類金属ホウ酸塩、アルカリ金属とホウ素との混合酸化物、亜鉛とホウ素との混合酸化物、硫化亜鉛、および圧搾微粉滑石のような不活性賦形剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。好ましくはCTI向上剤は、ホウ酸亜鉛;または無極性ポリマーとあらゆる前述の不活性賦形剤の1つ以上との混合物;より好ましくはオレフィンベースのポリマーとホウ酸亜鉛との混合物を含んでなる。CTI改善添加剤は、適切には例えば0.1〜12重量%の範囲であり、好ましくは0.2〜10重量%である、0〜15重量%の範囲の総量で使用される。不活性賦形剤の好ましい量は、1〜12重量%、より好ましくは3〜10であり、無極性ポリマーでは1〜10重量%、より好ましくは3〜8重量%である。本明細書で重量百分率は、ポリマー組成物総重量に対するものである。
【0047】
CTIは、湿潤条件下におけるその表面に沿ったアーク(トラック)伝播に対する材料の抵抗性の尺度である。CTIはIEC112−1979(第3版)手順に従って測定できる。
【0048】
ガラス充填ナイロン6、ナイロン6,6、およびナイロン4,6およびその他の高温ナイロンなどの熱可塑性ポリアミドは、電気的および電子用途を有する物品の製造のために興味深いと見なされる。これらの用途の多くでは、このような用途でこのようなポリマーを効果的に利用するために、電気的抵抗性が必要とされる。不運なことに、多数のポリアミド熱可塑性の短所は、水で濡れた際にそれらの表面を越えて電流を通過させる傾向である。この問題はガラス強化材または臭素含有難燃剤の存在によって悪化し、ガラス強化材と臭素含有難燃剤双方の存在は問題をさらに悪化させる。
【0049】
本発明に従ったボビンの利点は、これらのボビンが製造されるもとになる前記半芳香族ポリアミドXを含んでなるポリアミド組成物によって示される、高いCTI(比較トラッキング指数)、および同様に高い絶縁耐力である。そのCTI値は、例えばポリアミド46およびポリアミド9Tから製造される対応する製品よりもはるかに高い。
【0050】
本発明の別の実施態様では、脂肪族ジアミンとジカルボン酸とから誘導される単位を含んでなる半芳香族ポリアミドと、少なくともCTI改善添加剤とを含んでなるポリアミド組成物が提供され、
a.ジカルボン酸(A)は5〜65モル%の脂肪族ジカルボン酸および任意にテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)と、35〜95モル%のテレフタル酸(A2)との混合物からなり、
b.脂肪族ジアミン(B)は2〜5個のC原子を有する10〜70モル%の短鎖脂肪族ジアミン(B1)と、少なくとも6個のC原子を有する30〜90モル%の長鎖脂肪族ジアミン(B2)との混合物からなり、
c.テレフタル酸(A2)と長鎖脂肪族ジアミン(B2)とを合わせたモル量は、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して少なくとも60モル%である。
【0051】
前記半芳香族ポリアミドを含んでなるポリアミド組成物の高いCTI値は、ボビンを高電圧用途に高度に適したものにする。典型的に400Vを超えるCTI値が達成される。強化材としての通常ガラス繊維と、および例えばポリリン酸メラミン塩などのメラミンおよび/またはリン酸誘導体ベースのハロゲンフリー難燃剤、ホスフィン酸金属塩、ポリブロモスチレンのようなハロゲン含有ポリマーベースのハロゲン含有難燃剤系、およびホウ酸亜鉛のような難燃剤共力剤をはじめとする通常の難燃剤とを共に調合し、CTIを低下させる添加剤を除外または制限すれば、500V以上のCTI値を達成できる。CTI要件に従う射出成形品の当業者は、一般に一般知識および通例の実験に基づいて、CTIに関して中立的でありまたはCTIに好ましい効果を有する添加剤の選択、およびCTIに悪影響を与える添加剤の回避または量の制限を選択できる。良好な寸法安定性および部品完全性と組み合わさった高いCTI値は、有利には工業高電圧ボビンで使用できる。好ましくは、本明細書で使用される本発明に従った難燃性材料のCTIは、少なくとも500V、より好ましくは少なくとも600VのCTIを有する。
【0052】
ポリアミド組成物が含有できる補助添加剤としては、染料および顔料などの着色剤と、ドデカン二酸などの低分子量流動促進剤と、抗酸化剤、紫外線安定剤、および熱安定剤などの安定剤と、シラン化合物などの相溶化剤と、型剥離剤および成核剤などの加工助剤とが挙げられる。補助添加剤は、典型的に2.0重量%未満、好ましくは1.0重量%未満の個々の量、および好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満の総量で使用され、重量%はポリアミド組成物総重量に対するものである。
【0053】
好ましい本発明の実施態様では、組成物は、
25〜80重量%の半芳香族ポリアミド、および
0.1〜15重量%のCTI改善添加剤、ならびに
0〜50重量%の補強材、
0〜40重量%の難燃剤系、および
0〜25重量%の半芳香族ポリアミド以外のポリマーおよびポリマー性難燃剤、
0〜25重量%の無機賦形剤、および/または
0〜5重量%の補助添加剤からなり、
重量百分率(重量%)は組成物総重量に対するものである。
【0054】
別の好ましい本発明の実施態様では、ボビンは、
25〜80重量%の半芳香族ポリアミド、
5〜50重量%の補強材、および
5〜40重量%の難燃剤系、ならびに
0〜15重量%のCTI改善添加剤、
0〜25重量%半芳香族ポリアミド以外のポリマーおよびポリマー性難燃剤、
0〜25重量%の無機賦形剤、および/または
0〜5重量%の補助添加剤
からなる難燃剤組成物から製造され、重量百分率(重量%)は組成物総重量に対するものである。
【0055】
その他のポリマー、無機賦形剤、および補助添加剤は、これらの双方の実施態様において任意の構成要素であり、皆無またはそれらの1つのみまたは2つのみのまたは3つ全部の組み合わせのいずれかが存在してもよいことを意味する。適切には、少なくとも補助添加剤が存在する。
【0056】
より好ましくは、組成物は、
30〜50重量%の半芳香族ポリアミド、
0.2〜10重量%のCTI改善添加剤、
15〜45重量%の補強材、
5〜35重量%の難燃剤系、
0.1〜5重量%の補助添加剤、
0〜25重量%の無機賦形剤、および
0〜25重量%の上記の構成要素に含まれないポリマーからなる。
【0057】
本発明に従ったコポリアミドは、ポリアミドおよびその共重合体の調製についてそれ自体が知られている様々なやり方で調製できる。適切な工程の例は、例えばPolyamide,Kunststoff Handbuch 3/4,Hanser Verlag(Munchen),1998,ISBN 3−446−16486−3で述べられている。半芳香族ポリアミドXと、CTI改善添加剤、難燃剤系、補強材、または別の添加剤をはじめとする1つ以上の添加剤とを含んでなるポリマー組成物は、例えば二軸押し出し機中で、当業者に知られている標準調剤技術によって作ることができる。
【0058】
本発明の配合ポリマー組成物は、従来のやり方で処理できる。例えば化合物は、射出成形、圧縮成形、押出し、または同様の手順などの適切な加工技術によって最終物品に転換できる。
【0059】
本発明に従ったボビンは、射出成形工程によるポリアミド組成物から作ることができる。
【0060】
ボビンのコアは、例えば円形または長方形断面形状、または丸角長方形などの電気コイルを作るのに適したあらゆる形状を有してもよい。
【0061】
ボビンはコア部分を含んでなってもよく、コア部分は、2つの端面とそれぞれがコアの端面に配置された2つのフランジとを有する。適切にはコア部分および2つのフランジを含んでなるボビンはHに似た形状の断面形状を有する成形体であり、水平線がコア部分の略図を構成し、2つの垂直線が2つのフランジの略図を構成する。
【0062】
ボビンはまた、電気モーターの固定子ユニットの歯、または誘導子のためのフェライトコアなどの磁性材料の素子などの金属材料の素子を受け入れて収容するように設計された、キャビティまたは通し孔を有するコア部分を含んでなってもよい。
【0063】
本発明に従ったボビンは、適切には金属ピンおよび/または少なくとも1つの一体成形金属ピンを受け入れるための少なくとも1つのキャビティまたは受座を含んでなる。
【0064】
本発明はまた、本発明に従ったボビンと、ボビンのコア周囲の導電性巻線とを含んでなる電気コイルにも関する。
【0065】
本発明に従った電気コイル中のボビンは、半芳香族ポリアミドを含んでなるポリアミド組成物または任意のその好ましい実施態様を含んでなる、上述の任意のボビンであってもよい。
【0066】
電気コイル中の導電性巻線は、例えば円形、または長方形、または他のその他の形状であり得る断面を有してもよい電線、または平形ケーブルであってもよい。
【0067】
好ましい実施態様では、電気コイルは1つ以上の一体成形金属ピンを有するプラスチックコアを含んでなるボビンと、コア周囲に巻かれて導電性コイルを形成する線材とを含んでなり、線材は1つの一体成形金属ピンに取り付けられる少なくとも1つの線材端を有し、ハンダ付け材料は1つの一体成形金属ピンおよび1つの線材端の間に電気接点を提供する。
【0068】
別の好ましい実施態様では、導電性コイルは、上述のような半芳香族ポリアミドまたは任意のその好ましい実施態様を含んでなるポリアミド組成物からなる外層中に包埋され、それによって絶縁される。
【0069】
本発明はまた、被覆層を含んでなる導線をボビンのコア周囲に巻くステップと、線材端を金属ピンに取り付けるステップと、線材端から被覆層を焼き取るステップと、線材端を金属ピンにハンダ付けするステップとを含んでなる、本発明に従った電気コイルを作成する方法に関する。
【0070】
好ましくは本発明に従った方法は、次のステップの1つまたはその組み合わせを含んでなる。
線材を一体成形金属ピンの周囲に少なくとも1回巻いて切断し、一体成形金属ピン周囲に少なくとも1回巻かれた線材端を保持する、取り付けステップ、
線材端および一体成形金属ピンを少なくとも380℃の温度を有するハンダ付け材料溶融物に浸漬する、少なくとも1つの線材端を一体成形金属ピンにハンダ付けするための浸漬ハンダ付けステップ、
導電性コイルを上述のようなポリアミド組成物または任意のその好ましい実施態様の層で外側被覆する、射出成形ステップ。
【0071】
好ましくはハンダ付け材料は、無鉛合金ハンダ塊を含む。
【0072】
また好ましくはハンダ付け材料の溶融物は、380℃〜500℃の範囲の温度を有する。
【0073】
本発明に従った電気コイルは、有利には、部品と部品上に取り付けられた電気コイルとを含んでなる電気的および/または電子アセンブリーに組み込むことができる。
【0074】
想定される電気的および/または電子アセンブリーとしては、変圧器、誘導子、フィルター、リレー、電気モーター、PCBが挙げられる。変圧器、誘導子、またはリレーの場合、ボビンは線材のための恒久的な容器であり、コイルの形を形成して、磁性コア内へのまたはその上への巻線のアセンブリーを簡単にする働きをする。
【0075】
誘導子は、多種多様な電子/電気的回路中で構成要素として使用されることが多い。誘導子の例示的な用途は、例えばラジオやTV装置などへのRF干渉を防止するために、家庭電化製品のモーター中で、または蛍光灯の電子安定器中で、干渉抑止のために現在使用されているいわゆる「チョーク」である。
【0076】
[実施例]
ボビンの製造で使用されたポリアミド組成物は、ポリアミドポリマーの実施例1〜5(E−1〜E−5)および比較例(CE)A、B、C、およびFを最初に調製することで調製された。比較例DおよびEは市販製剤である。
【0077】
[ポリマー調製]
[E−1ポリマー:PA−6T/4T/46(モル比67.5/21.3/11.2)]
179.8gテトラメチレンジアミン、347.25gヘキサメチレンジアミン、537g水、0.36g次亜リン酸ナトリウム一水和物、72.36gアジピン酸、および653.38gテレフタル酸の混合物を2.5Lオートクレーブ内で加熱して水を蒸留により除去しながら撹拌した。ポリアミド調製中のテトラメチレンジアミンの損失を埋め合わせるために、計算されるポリアミド組成物の組成と比較して、約2〜4重量%のわずかに過剰なテトラメチレンジアミンを使用した。約27分後に91重量%塩水溶液が得られた。この過程で温度は169℃から223℃に上昇した。21分間にわたり温度を210℃から226℃に上昇させて重合を達成し、その間に圧力は1.3MPaに上昇し、その後オートクレーブの内容物をフラッシュして固体生成物を窒素下でさらに冷却した。このようにして得られたプレポリマーを引き続いて乾燥キルン内で、真空および0.02MPaの窒素気流下において、125℃で数時間加熱して乾燥させた。乾燥プレポリマーを金属管型反応器(d=85mm)内において、窒素気流下(2400g/h)200℃で数時間、次に窒素/水蒸気気流下(3/1重量比、2400g/h)225℃で2時間、および260℃で40時間加熱して固相に後濃縮した。次にポリマーを室温に冷却した。
【0078】
[E−2ポリマー:PA−6T/4T/46(モル比74.5/10/15.5)の調製]
E−1ポリマーと同様にして、127.09gテトラメチレンジアミン、350.05gヘキサメチレンジアミン、487g水、0.66g次亜リン酸ナトリウム一水和物、91.59gアジピン酸、および567.48gテレフタル酸の混合物を2.5Lオートクレーブ内で加熱しながら撹拌したところ、91重量%塩水溶液が22分後に得られた。この過程で温度は176℃から212℃に上昇した。22分間にわたり温度を220℃から226℃に上昇させて重合を達成し、その間に圧力は1.4MPaに上昇した。このようにして得られたプレポリマーを引き続いて乾燥キルン内で、真空および0.02MPaの窒素気流下において125℃および180℃で数時間加熱して乾燥させた。乾燥プレポリマーを金属管型反応器(d=85mm)内において、窒素気流下(2400g/h)190℃および230℃で数時間、次に窒素/水蒸気気流下(3/1重量比、2400g/h)251℃で96時間加熱して固相に後濃縮した。次にポリマーを室温に冷却した。
【0079】
[E−3ポリマー:PA−6T/5T/66(モル比70/15/15)同等物であるPA−6T/56(モル比85/15)の調製]
55.3gのペンタメチレンジアミン(98重量%)、529.7g水性ヘキサメチレンジアミン(59.6重量%)、360.4g水、0.5g次亜リン酸ナトリウム一水和物、67.2gアジピン酸、および433.04gテレフタル酸の混合物を2.5Lオートクレーブ内で加熱して水を蒸留により除去しながら撹拌した。35分後に90重量%の塩水溶液が得られ、温度は170℃から212℃に上昇した。次にオートクレーブを閉じた。25分間にわたり温度を212℃から250℃に上昇させて重合を達成した。混合物を250℃で15分間撹拌し、その間圧力は2.9MPaに上昇し、その後オートクレーブの内容物をフラッシュして、固体生成物を窒素下でさらに冷却した。プレポリマーを金属管型反応器(d=85mm)内において、窒素気流下(2400g/h)200℃で数時間、次に窒素/水蒸気気流下(3/1重量比、2400g/h)230℃で2時間、および260℃で24時間加熱して、固相に後濃縮した。次にポリマーを室温に冷却した。
【0080】
[E−4ポリマー:PA−6T/5T/56(モル比75.5/15/9.5)の調製]
78.4gのペンタメチレンジアミン(98重量%)、473.3g水性ヘキサメチレンジアミン(59.6重量%)、382.56g水、0.5g次亜リン酸ナトリウム一水和物、42.6gアジピン酸、および461.5gテレフタル酸の混合物を2.5Lオートクレーブ内で加熱して水を蒸留により除去しながら撹拌した。35分後に90重量%の塩水溶液が得られ、温度は170℃から212℃に上昇した。次にオートクレーブを閉じた。25分間にわたり温度を212℃から250℃に上昇させて重合を達成した。混合物を250℃で15分間撹拌し、その間圧力は2.8MPaに上昇し、その後オートクレーブの内容物をフラッシュして、固体生成物を窒素下でさらに冷却した。プレポリマーを引き続いて乾燥させ、E−1ポリマーと同様にして固相に後濃縮した。次にポリマーを室温に冷却した。
【0081】
[E−5ポリマー:PA−6T/66/56(モル比76.5/12/11.5)の調製]
36.9gのペンタメチレンジアミン(98重量%)、553.0g水性ヘキサメチレンジアミン(59.6重量%)、351.2g水、0.5g次亜リン酸ナトリウム一水和物、105.8gアジピン酸、および391.4gテレフタル酸の混合物を2.5Lオートクレーブ内で加熱して水を蒸留により除去しながら撹拌した。35分後に90重量%の塩水溶液が得られ、温度は170℃から212℃に上昇した。次にオートクレーブを閉じた。25分間にわたり温度を212℃から250℃に上昇させて重合を達成した。混合物を250℃で20分間撹拌し、その間圧力は2.8MPaに上昇し、その後オートクレーブの内容物をフラッシュして、固体生成物を窒素下でさらに冷却した。プレポリマーを引き続いて乾燥させ、E−1ポリマーと同様にして固相に後濃縮した。次にポリマーを室温に冷却した。
【0082】
[CE−Aポリマー:PA6T/66(モル比60/40)]
ポリマーIと同様にして、520gヘキサメチレンジアミン、537g水、0.36g次亜リン酸ナトリウム一水和物、330gアジピン酸、および420gテレフタル酸の混合物を2.5Lオートクレーブ内で加熱しながら撹拌し、27分後に91重量%の塩水溶液が得られた。この過程で温度は169℃から223℃に上昇した。21分間にわたり温度を210℃から226℃に上昇させて重合を達成し、その間圧力は1.3MPaに上昇した。プレポリマーを引き続いて乾燥させ、E−1ポリマーと同様にして固相に後濃縮した。次にポリマーを室温に冷却した。
【0083】
[CE−B,Cポリマー:PA46]
ポリマーIと同様にして、430.4gテトラメチレンジアミン、500g水、0.33g次亜リン酸ナトリウム一水和物、および686.8gアジピン酸の混合物を2.5Lオートクレーブ内で加熱しながら撹拌し、25分後に90重量%の塩水溶液が得られた。この過程で温度は110℃から162℃に上昇した。温度を162℃から204℃に上昇させて重合を達成し、その間圧力は1.3MPaに上昇した。プレポリマーを引き続いて乾燥させ、E−1ポリマーと同様にして固相に後濃縮した。次にポリマーを室温に冷却した。
【0084】
[比較例CE−F:PA−6T/5T(モル比56/44)の調製]
201.4gのペンタメチレンジアミン、300.8gヘキサメチレンジアミン、521.1g水、0.65g次亜リン酸ナトリウム一水和物、および722.18gテレフタル酸の混合物を2.5Lオートクレーブ内で加熱して水を蒸留により除去しながら撹拌した。27分後に90重量%の塩水溶液が得られ、温度は170℃から211℃に上昇した。次にオートクレーブを閉じた。15分にわたり温度を211℃から250℃に上昇させて重合を達成した。混合物を250℃で29分間撹拌し、その間圧力は2.9MPaに上昇し、その後オートクレーブの内容物をフラッシュして、固体生成物を窒素下でさらに冷却した。プレポリマーを引き続いて乾燥させ、E−3ポリマーと同様にして固相に後濃縮した。次にポリマーを室温に冷却した。
【0085】
[化合物調製]
E−1〜E−5、CE−A〜C、およびCE−Fはまた、次の構成要素も含んだ。
・ポリアミド用標準ガラス繊維等級、
・難燃剤:臭素化ポリスチレン(Albermarleから入手できるSaytex(登録商標)HP3010)、
・難燃剤共力剤:ホウ酸亜鉛(Luzenacから入手できるFirebrake(登録商標)500)、および
・剥離剤および安定化パッケージを含んでなる補助添加剤。
【0086】
比較実験DおよびEは、次の市販製品をベースとした。CE−Dはデュポン(DuPont)からのPA6T/66製品であるZytel HTNFR52G30BLであり、およびCE−Eはクラレ(Kururay)からのPA9T製品であるジェネスタ(Genestar)GN2332BKであった。従来の分析的技術を使用して、これらの市販品で使用される臭素化ポリスチレン、共力剤、および補助添加剤の比率を推定した。ジェネスタからのPA9T製品の分析からは、ポリアミド構成要素がモル比およそ20:80のPA8TとPA9Tから構成されることが明らかになった。
【0087】
325℃フラット温度に設定したWerner & Pfleiderer KSK 4042D押し出し機上で、化合物E−1〜E−5、CE−A〜C、およびCE−Fを調製した。側方供給ポートを通じて溶融物中に別途投入されたガラス繊維を除いて、全ての構成要素は押し出し機の供給ポートに投入された。ポリマー溶融物を脱気して押し出し機の終端でストランドにし、冷却して顆粒に細断した。
【0088】
[射出成形:]
次の条件を適用して、射出成形中での使用に先だって上述の材料を予備乾燥させた。コポリアミドを0.02Mpaの真空下で80℃に加熱して、窒素気流を通過させながらその温度と圧力を24時間保った。予備乾燥材料をArburg 5射出成型機上で、22mmスクリュー径およびCampus UL 0.8mm二体(2本体)射出成形金型により射出成形した。シリンダー壁の温度は345℃に設定され、金型の温度は140℃に設定された。このようにして得られたCampus ULバーをさらなる試験のために使用した。
【0089】
【表1】



【0090】
[試験方法]
[相対粘度(RV)]
1質量%ギ酸溶液中で測定した。
【0091】
[スパイラルフロー]
有効射出圧力80MPaにおける半芳香族ポリアミドXの溶融温度よりも10℃高い温度で、寸法280×15×1mmのスパイラルキャビティ上で測定した。
【0092】
[DSCによる温度特性決定]
ASTM D3417−97 E793−85/794−85に従って、示差走査熱量測定(DSC)(2回目の試行、10℃/分)を用いて融点(T)およびガラス転移温度(T)を測定した。
【0093】
[E−弾性率]
ISO 527に従って23℃および5mm/分における引張り試験で測定した。
【0094】
[衝撃試験(ノッチ付シャルピー)]
ISO 179/1Aに従って23℃で測定した。
【0095】
[水/湿度吸収試験]
予備乾燥サンプル(0.8mm ULバー)を規定温度および湿度レベルの蒸留水加湿キャビネットまたは容器内で順化させ、飽和レベルに達するまで重量増加を経時的にモニターした。飽和レベルにおける重量増加を予備乾燥サンプルの開始重量の百分率として計算した。
【0096】
[リフローハンダ付け条件下の膨れ性能]
リフローハンダ付け条件下の膨れ性能のためには、上述の水吸収試験と同様にして、多数の予備乾燥サンプルを所定温度および湿度レベルの加湿キャビネット内で順化した。異なる時間間隔で個々のサンプル(10個ずつのロット)をキャビネットから取り出して、直ちに周囲条件で室温に冷却し、リフローオーブンに入れてリフローハンダ付け工程で適用される温度条件を与えた。温度プロフィールは、次のとおりであった。サンプルは最初に平均1.5℃/秒の加熱傾斜で予熱されて80秒後に140℃の温度に達し、その後はサンプルはより徐々に加熱されて開始から210秒後に160℃の温度に達した。次にサンプルは最初の加熱傾斜約6℃/秒で260℃に加熱されて220秒後に220℃の温度に達し、2℃/秒のより漸進的加熱速度で開始から290秒後に260℃の温度に達した。その後、サンプルを140℃に20秒間冷却した。次に10個のサンプルをオーブンから取り出して室温に放冷し、膨れの存在について検査した。加湿キャビネット内での各条件期間について、膨れの発生を示したサンプルの百分率を評価した。膨れがあったサンプルの百分率を記録した。
【0097】
[線熱膨張率]
ISO 11359−1/−2に従って測定した。
【0098】
[サンプル(DAM)の比誘電率]
周波数3Ghzおよび23℃で、IEC 60250に従って測定した。
【0099】
[サンプル(DAM)の絶縁耐力]
IEC 60243−1に従って測定した。
【0100】
[比較トラッキング指数]
IEC 60112に従って測定した。
【0101】
[加熱撓み温度]
1.8MPaの負荷をかけてISO 75−1/−2に従って測定した。
【0102】
全ての化合物は、0.8mm試験バーのためのUL−94−V0に適合した。
【0103】
[結果]
実験結果を表2に示す。
【0104】
表2に示されるように、本発明の組成物は、必要とされる従来の組成物の加工、電気的、および難燃性特性を少なくとも保持しながら、改善された膨れ抵抗性、寸法安定性、および高温時機械的特性を有するポリアミド組成物を提供することで、従来のポリアミド組成物を用いたハンダ付けボビンに付随する問題を克服する。
【0105】
本発明の組成物は、ボビン用途に適したポリアミド組成物に、改善された膨れ性能を提供することが分かった。本発明の範囲内の組成物は、JEDEC 2/2a膨れ試験(IPC/JEDEC J−STD−020C 2004年7月)の要件に適合することが分かった。対照的に比較例は、いずれもこの業界基準に適合できなかった。
【0106】
JEDECレベル2は、85℃および85%相対湿度で168時間のサンプル馴化後、リフローハンダ付け条件後に膨れが観察されなければ達成される。
【0107】
JEDECレベル2は、30℃および60%相対湿度で696時間のサンプル馴化後、リフローハンダ付け条件後に膨れが観察されなければ達成される。
【0108】
比較例の内、ポリアミド9Tベースの組成物を含んだCE−Eは最良の膨れ性能を記録したが、本発明の範囲内の組成物よりもなおかなり低かった。この所見は、CE−Eのより低い水分吸収に基づいて予期される。実際、比較例中の膨れの結果から、膨れ性能と水分取り込みレベルの間の相関が明らかになった。
【0109】
より少ない水分を吸収するより疎水性の高いポリアミドを製造することを通じて、改善された膨れ性能が達成されるという教示はまた、テレフタル酸と10〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンとを含んでなるジカルボン酸モノマーから誘導される反復単位を含んでなるポリアミド組成物(例えばPA10T)中の改善された膨れ性能を開示する、米国特許公開第6,140,459号明細書および国際公開第2006/135841号パンフレットにも存在する。したがって本発明の範囲内の実施例が、それらの比較的高い水取り込みにもかかわらず、従来のポリアミドと比較して優れた膨れ性能を有することは驚くべきことである。
【0110】
比較の目的で述べると、引用した米国特許公開第6,140,459号明細書では、膨れは40℃、95%RHで96時間の馴化後に、250℃までのピーク温度を適用して試験された。これらの試験ではPA6T/66は240℃で既に不合格であり、PA6T/D6は210℃にすら合格しなかった。
【0111】
比較例とは対照的に、本発明の組成物は、ポリマー流と垂直および平行方向間の線熱膨張率(CLTE)のより低い変動によって例証されるように、等方性挙動を示す。この低い差違は反りを発生しにくい構成要素をもたらす。構成要素壁厚が削減される傾向にあるため、この特質はますます重要になっている。同様の改善はまた、金型収縮性能に関しても観察された。
【0112】
本発明のボビンはまた、表2中でPA46に対する比較試験で例証されるように、改善された絶縁耐力の保持も示す。
【0113】
同様に荷重たわみ温度(Tdef)によって測定される高温時剛性は、ハンダ付け工程中に遭遇する高温環境に薄壁構成要素が機械的に耐えられるようにするため、ますます重要な要因になっている。本発明の組成物は改善された高温時剛性を示し、PA66/6TおよびPA9Tベースの組成物のTとTdefの間の約20℃の差と比較して、構成要素部品はそれらの融点の11℃以内の負荷に耐える。
【0114】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジアミンとジカルボン酸とから誘導される単位を含んでなる半芳香族ポリアミドと、少なくともCTI改善添加剤とを含んでなり、
a.前記ジカルボン酸(A)が5〜65モル%の脂肪族ジカルボン酸および任意にテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)と、35〜95モル%のテレフタル酸(A2)との混合物からなり、
b.前記脂肪族ジアミン(B)が2〜5個のC原子を有する10〜70モル%の短鎖脂肪族ジアミン(B1)と、少なくとも6個のC原子を有する30〜90モル%の長鎖脂肪族ジアミン(B2)との混合物からなり、
c.前記テレフタル酸(A2)と前記長鎖脂肪族ジアミン(B2)とを合わせたモル量が、前記ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して少なくとも60モル%である、
ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド組成物が少なくとも500VのCTI値を有する、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
前記ジカルボン酸(A)が5〜65モル%の脂肪族ジカルボン酸と35〜95モル%のテレフタル酸との混合物からなる、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
電気絶縁プラスチック材料から製造される電気コイル用ボビンであって、前記電気絶縁プラスチック材料が脂肪族ジアミンとジカルボン酸とから誘導される単位を含んでなる半芳香族ポリアミドを含んでなるポリアミド組成物であることで特徴づけられ、
a.前記ジカルボン酸(A)が5〜65モル%の脂肪族ジカルボン酸および任意にテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(A1)と、35〜95モル%のテレフタル酸(A2)との混合物からなり、
b.前記脂肪族ジアミン(B)が2〜5個のC原子を有する10〜70モル%の短鎖脂肪族ジアミン(B1)と、少なくとも6個のC原子を有する30〜90モル%の長鎖脂肪族ジアミン(B2)との混合物からなり、
c.前記テレフタル酸(A2)と前記長鎖脂肪族ジアミン(B2)とを合わせたモル量が、前記ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して少なくとも60モル%である、
電気コイル用ボビン。
【請求項5】
前記ポリアミド組成物が請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物である、請求項4に記載のボビン。
【請求項6】
金属ピンを受け入れるための少なくとも1つの座部、
プラスチックコアと一体成形された少なくとも1つの金属ピン、
前記プラスチックコア端にそれぞれ配置された2つのフランジ、および/または
金属および/または磁性材料の素子を受け入れるための通し孔
またはそれらの任意の組み合わせ
の要素のうち1つを含んでなる、請求項4に記載のボビン。
【請求項7】
プラスチックコアと前記プラスチックコア周囲の導電性巻き線とを含んでなるボビンを含んでなり、前記ボビンが請求項4〜6のいずれか一項に記載のボビンである、電気コイル。
【請求項8】
前記ボビンが1つ以上の一体成形金属ピンを有するプラスチックコアを含んでなり、線材が前記コア周囲に巻かれて導電性コイルを形成し、前記線材が1つの一体成形金属ピンに取り付けられる少なくとも1つの線材端を有し、ハンダ付け材料が1つの前記一体成形金属ピンおよび1つの前記線材端の間に電気接点を提供し、前記ボビンが請求項2に記載のボビンである、請求項7に記載の電気コイル。
【請求項9】
前記導電性コイルが、請求項1または2のいずれか一項に記載のポリアミド組成物からなる外層中に包埋され、それによって絶縁される、請求項7〜8のいずれか一項に記載の電気コイル。
【請求項10】
被覆層を含んでなる導線を前記ボビンの前記コア周囲に巻くステップと、前記線材端を金属ピンに取り付けるステップと、前記線材端から前記被覆層を焼き取るステップと、前記線材端を前記金属ピンにハンダ付けするステップとを含んでなる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の電気コイルを製造する方法。
【請求項11】
第1の部品と、前記第1の部品に取り付けられた請求項7〜9のいずれか一項に記載の電気コイルとを含んでなる、電気的および/または電子アセンブリー。
【請求項12】
前記アセンブリーが、変圧器、誘導子、フィルター、リレー、電気モーター、またはプリント回路基板である、請求項10に記載のアセンブリー。

【公表番号】特表2010−534728(P2010−534728A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517303(P2010−517303)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005865
【国際公開番号】WO2009/012932
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】