説明

ポリアミド組成物を含む自動車部品

【課題】流動性、靭性、低吸水性及び強度剛性に優れ、さらに耐熱性、耐振動疲労性及び耐LLC性にも優れた自動車部品を提供する。
【解決手段】(A)(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)1,9−ノナンジアミンを50モル%超えて含むジアミンと、を重合させたポリアミド、
(B)無機充填材、並びに
(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物、
を含有するポリアミド組成物、を含む自動車部品であって、
前記(A)ポリアミド100質量部に対して、(B)無機充填材0.1〜200質量部、並びに(C)銅化合物0.01〜0.6質量部及び金属ハロゲン化合物0.05〜20質量部を含有するポリアミド組成物を含む、自動車部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車部品に関する。さらに詳しくいえば、本発明は、流動性、強度剛性、靭性、低吸水性に優れ、且つ耐熱性、耐振動疲労性、耐ロングライフクーラント性に優れるポリアミド組成物を含む自動車部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド6及びポリアミド66(以下、それぞれ、「PA6」及び「PA66」と略称する場合がある。)などに代表されるポリアミドは、成形加工性、機械物性又は耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用などの各種部品材料として広く用いられている。
【0003】
自動車産業においては、環境に対する取り組みとして、排出ガス低減のために、金属代替による車体軽量化の要求がある。該要求に応えるために、外装材料や内装材料などにポリアミドが一段と用いられる様になり、ポリアミド材料に対する耐熱性、剛性、及び外観などの要求特性のレベルは一層向上している。
自動車用部品として、ポリアミドは、例えば、エンジンカバー類、これに直結されるコネクター類、及びエアインテークマニホールド類などのエンジン本体関連部品、リレーボックス類、ギア類、並びにクリップ類などに広く使用されている。
【0004】
例えば、PA66は、耐熱性、成形性及び靭性に優れていることから、自動車用部品に適した材料と考えられている。しかしながら、自動車用部品材料にPA66を用いた場合、PA66は、吸湿性を有するために、吸湿に伴う寸法変化や物性変化が生じ得る。そのため、その変化を予め予測して、部品の設計に反映させる必要がある。自動車部品として精密部品などの用途にPA66を用いる場合には、その使用が限られたものとなる。
【0005】
また、近年、エンジンルームの小型化及びエンジンの高出力化の要求も強くなっている。このため、エンジンルーム内で使用される樹脂製品に対する耐熱性要求は、益々高くなっており、PA66よりも耐熱性に優れるポリアミドへの要求が高まっている。
さらに、エンジンカバー類及びエアインテークマニホールド類などの比較的大型の部品である場合には、成形時に、例えばPA66が有する程度の流動性も要求される。
自動車エンジンルーム内において、常に振動を受け、他の金属部品との密着性、気密性を要求される部品(例えば、エンジンヘッドカバー、オイルパン、チェーンガイド等)に用いる場合には、十分な性能を発現できない場合などがあり、耐振動疲労性に対する要求も強くなっている。
【0006】
PA6やPA66は潤滑油や作動油等のオイルに対して十分に物性を保持し、広く用いられている。その一方で、例えばロングライフクーラント(以下、「LLC」という。)の用いられる用途(ラジエータータンク、リザーバータンク又はヒータコアのような冷却系部品用途)としては、その使用環境によりさらに耐LLC性を向上させることが望まれている。
また、耐薬品性を改善するために、PA612、PA610、PA11、PA12等の長鎖脂肪族ポリアミドをそのまま、又はPA66と混合したものが用いられているが、これらの長鎖脂肪族ポリアミドは、耐熱性の点でPA66より劣るという欠点を有している。
【0007】
PA6及びPA66などの従来のポリアミドの前記問題点を解決するために、高融点ポリアミドが提案されている。具体的には、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド(以下、「PA6T」と略称する場合がある。)などが提案されている。
しかしながら、PA6Tは、融点が370℃程度という高融点ポリアミドであるため、溶融成形により成形品を得ようとしても、ポリアミドの熱分解が激しく起こり、十分な特性を有する成形品を得ることが難しい。
【0008】
PA6Tの前記問題点を解決するために、PA6TにPA6及びPA66などの脂肪族ポリアミドや、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなる非晶性芳香族ポリアミド(以下、「PA6I」と略称する場合がある。)などを共重合させ、融点を220〜340℃程度にまで低融点化したテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンを主成分とする高融点半芳香族ポリアミド(以下、「6T系共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)などが提案されている。
【0009】
6T系共重合体ポリアミドとして、特許文献1には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなり、脂肪族ジアミンがヘキサメチレンジアミン及び2−メチルペンタメチレンジアミンの混合物である芳香族ポリアミド(以下、「PA6T/2MPDT」と略称する場合がある。)が開示されている。
【0010】
また、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる芳香族ポリアミドに対して、アジピン酸とテトラメチレンジアミンからなる高融点脂肪族ポリアミド(以下、「PA46」と略称する場合がある。)や、脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる脂環族ポリアミドなどが提案されている。
【0011】
特許文献2及び3には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなる脂環族ポリアミド(以下、「PA6C」と略称する場合がある。)と他のポリアミドとの半脂環族ポリアミド(以下、「PA6C共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)が開示されている。
さらに、特許文献2には、ジカルボン酸単位として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を1〜40%配合した半脂環族ポリアミドの電気及び電子部材はハンダ耐熱性が向上することが開示され、特許文献3には、自動車部品では、流動性及び靭性などに優れることが開示されている。
【0012】
さらに、特許文献4には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含むジアミン単位からなるポリアミドが耐光性、靭性、成形性、軽量性、及び耐熱性などに優れることが開示されている。また、該ポリアミドの製造方法として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,9−ノナンジアミンを230℃以下で反応してプレポリマーを作り、そのプレポリマーを230℃で固相重合し融点311℃のポリアミドを製造することが開示されている。
また、特許文献5には、トランス/シス比が50/50〜97/3である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を原料として用いたポリアミドが、耐熱性、低吸水性、及び耐光性などに優れることが開示されている。
特許文献6には、ジカルボン酸成分の60〜100モル%がテレフタル酸であるジカルボン酸成分(a)と、ジアミン成分の60〜100モル%が1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンからなり、且つ1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が60:40〜99:1であるジアミン成分(b)とからなるポリアミドが、成形加工性、耐熱水性、表面美麗性、耐熱性、力学特性、耐薬品性及び低吸水性などに優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表平6−503590号公報
【特許文献2】特表平11−512476号公報
【特許文献3】特表2001−514695号公報
【特許文献4】特許第3481730号明細書
【特許文献5】国際公開第2002/048239号パンフレット
【特許文献6】特許第3242781号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
6T系共重合ポリアミドは、低吸水性、高耐熱性、及び高耐薬品性という特性を持ってはいるが、流動性が低く成形性や成形品表面外観が不十分であり、靭性及び耐光性に劣る。そのため、外装部品のような成形品の外観が要求されたり、日光などに曝されたりする用途では改善が望まれている。また比重も大きく、軽量性の面でも改善が望まれている。
【0015】
特許文献1に開示されているPA6T/2MPDTは、従来のPA6T共重合ポリアミドの問題点を一部改善することができるが、流動性、成形性、靭性、成形品表面外観、及び耐光性の面でその改善水準は不十分である。
【0016】
PA46は、良好な耐熱性及び成形性を有するものの、吸水率が高く、また、吸水による寸法変化や機械物性の低下が著しく大きいという問題点を持っており、自動車用途などで要求される寸法変化の面で要求を満たせない場合がある。
【0017】
特許文献2及び3に開示されているPA6C共重合ポリアミドも、吸水率が高く、また、流動性が十分でないなどの問題がある。
特許文献4、5及び6に開示されているポリアミドも、靭性、剛性、及び流動性の面で改善が不十分である。
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、流動性、靭性、低吸水性及び強度剛性に優れ、さらに耐熱性、耐振動疲労性及び耐LLC性にも優れた自動車部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、1,9−ノナンジアミンとを構成成分として重合させたポリアミド、無機充填材、並びに銅化合物及び金属ハロゲン化合物を含有するポリアミド組成物を含む自動車部品により、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明は、以下の自動車部品を提供する。
〔1〕
(A)(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)1,9−ノナンジアミンを50モル%超えて含むジアミンと、を重合させたポリアミド、
(B)無機充填材、並びに
(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物、
を含有するポリアミド組成物、を含む自動車部品であって、
前記(A)ポリアミド100質量部に対して、(B)無機充填材0.1〜200質量部、並びに(C)銅化合物0.01〜0.6質量部及び金属ハロゲン化合物0.05〜20質量部を含有するポリアミド組成物を含む、自動車部品。
〔2〕
前記(b)ジアミンが、50モル%未満の2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含む、前記〔1〕に記載の自動車部品。
〔3〕
前記(C)において、前記銅化合物が酢酸銅及び/又はヨウ化銅であり、前記金属ハロゲン化合物がヨウ化カリウムである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の自動車部品。
〔4〕
ハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)が、2/1〜50/1である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔5〕
前記(A)ポリアミド106質量部に対して、銅として50〜2,000質量部となるように前記(C)の銅化合物を含有する前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔6〕
前記(A)ポリアミドの分子鎖の末端封止率が10%未満である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔7〕
前記(A)ポリアミド中、前記1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び当該1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外の脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が51〜85モル%である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の自動車部品。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、流動性、靭性、低吸水性及び強度剛性に優れ、さらに耐熱性、耐振動疲労性及び耐LLC性にも優れた自動車部品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
(自動車部品)
本実施形態の自動車部品は、ポリアミド組成物を含み、本実施形態において用いられるポリアミド組成物は、
(A)ポリアミドと、
(B)無機充填材と、
(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物と、を含有する。
【0024】
(自動車部品に用いられるポリアミド組成物)
また、本実施形態に用いられるポリアミド組成物は、(A)ポリアミド100質量部に対して、(B)無機充填材0.1〜200質量部、並びに(C)銅化合物0.01〜0.6質量部及び金属ハロゲン化合物0.05〜20質量部を含有する。
【0025】
[(A)ポリアミド]
(A)ポリアミドは、(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)1,9−ノナンジアミンを50モル%超えて含むジアミンとを重合させたポリアミドである。
本実施形態において、ポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
【0026】
<(a)ジカルボン酸>
本実施形態において用いられる(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む。
(a)ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を50モル%以上含むことにより、得られる自動車部品の耐熱性、低吸水性、靭性、及び剛性などを同時に満足することのできるポリアミドとすることができる。
【0027】
原料モノマーとしての1,4−シクロヘキサンジカルボン酸は、シス異性体の方がトランス異性体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、トランス異性体/シス異性体比が、モル比として、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノマーのトランス異性体/シス異性体のモル比は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。ここで、本明細書におけるトランス異性体/シス異性体の比(モル比)は、1H−NMRにより求めることとする。
【0028】
本実施形態において用いられる(a)ジカルボン酸の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、靭性及び流動性の観点で、脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸を用いてもよい。なお、本明細書における「脂環族ジカルボン酸」は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含まない。
【0029】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖状又は分岐鎖状飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0030】
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数6以上の脂肪族ジカルボン酸であってもよく、炭素数が10以上の脂肪族カルボン酸では、低吸水性の特徴を付与することができるという観点で好適である。
炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられ、入手のしやすさという点で、セバシン酸及びドデカン二酸を好ましく用いることができる。
【0031】
脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される。)としては、例えば、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの、脂環構造の炭素数が3〜10、又は炭素数が5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
【0032】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、及びジグリコール酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩などのその塩などが挙げられる。
【0033】
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、1種で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(a)ジカルボン酸成分として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸成分を含んでもよい。
多価カルボン酸としては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(a)ジカルボン酸中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の割合(モル%)は50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の割合が、少なくとも50モル%であることにより、流動性、靭性、低吸水性に優れるポリアミドとすることができる。
(a)ジカルボン酸中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合(モル%)は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
【0036】
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が50〜99.9モル%であり、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸が0.1〜50モル%であってもよく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が60〜90モル%であり、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸が10〜40モル%であってもよい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が70〜85モル%であり、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外のジカルボン酸が15〜30モル%であってもよい。
【0037】
(a)ジカルボン酸成分として、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が50〜99.9モル%であり、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が0.1〜50モル%であってもよく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が60〜90モル%であり、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が10〜40モル%であってもよく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が70〜85モル%であり、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が15〜30モル%であってもよい。
【0038】
(a)ジカルボン酸中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の割合は、少なくとも50モル%であることにより、耐熱性、流動性、靭性、剛性、及び低吸水性などに優れるポリアミドとすることができる。
【0039】
<(b)ジアミン>
本実施形態において用いられる(b)ジアミンは、(b−1)1,9−ノナンジアミンを50モル%を超えて含む。
(b)ジアミンが(b−1)1,9−ノナンジアミンを50モル%を超えて含むことにより、得られる自動車部品の耐熱性、低吸水性、及び耐薬品性などを同時に満足することのできるポリアミドとすることができる。
【0040】
また、(b)ジアミンは、耐熱性、流動性、靭性及び耐薬品性の観点から、50モル%未満の(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含有することが好ましい。
【0041】
(b)ジアミン中における(b−1)1,9−ノナンジアミンと(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比(1,9−ノナンジアミン/2−メチル−1,8−オクタンジアミンとして)は、好ましくは100/0〜20/80であり、より好ましくは100/0〜60/40であり、さらに好ましくは100/0〜70/30である。
これら(b−1)1,9−ノナンジアミンと(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンは、特開平5−17413号公報及び特開昭58−118535号公報などの従来公知の方法により製造することができるが、例えば、特開昭58−118535号公報に記載された方法を例示すると、7−オクテナールのヒドロホルミル反応で生じるノナンジアールと2−メチルオクタンジアールとの混合物を、従来公知の方法に従い還元アミノ化し、1,9−ノナンジアミンと2−メチルオクタンジアミンの混合物を生成した後、精製することにより得られる。
【0042】
(b)ジアミンは、(b−1)1,9−ノナンジアミン及び(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンの残部として、(b−1)1,9−ノナンジアミン及び(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外の他のジアミンを含んでもよい。
かかる他のジアミンとして、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、及び1,12−ドデカンジアミンなどの直鎖状脂肪族ジアミン;1,2−プロパンジアミン、1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、3−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、及び5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの分岐鎖状脂肪族ジアミン; シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジメチルアミン、及びトリシクロデカンジメチルアミンなどの脂環族ジアミン(脂環式ジアミン);p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミンなどを含んでいてもよい。
中でも、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミンが好ましい。
1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外のジアミンとしては、1種で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(b)ジアミン中の(b−1)1,9−ノナンジアミンと(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミンの割合(モル%)は、50モル%を超えて100モル%以下であり、好ましくは75〜100モル%であり、より好ましくは90〜100モル%である。1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンの割合が、50モル%を超えることにより、耐熱性、低吸水性、耐薬品性に優れるポリアミドとすることができる。
(b)ジアミン中の(b−1)1,9−ノナンジアミン及び(b−2)2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外のジアミンの割合(モル%)は、50モル%未満であり、好ましくは0〜25モル%であり、より好ましくは0〜10モル%である。
【0044】
(b)ジアミン成分として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミンなどの3価以上の多価アミンを含んでもよい。
多価アミンとしては、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(a)ジカルボン酸の添加量は、(b)ジアミンの添加量と同モル量付近であることが好ましい。重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンのモル比は、具体的には、(a)ジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、0.90〜1.20であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.10であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
【0046】
<末端封止剤>
(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンからポリアミドを重合する際には、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。
本実施形態に用いられる(A)ポリアミドは、その分子鎖の末端基の0〜90%が末端封止剤により封止されていてもよい。分子鎖の末端基が末端封止剤により封止されている割合(末端封止率)としては、好ましくは0〜50%であり、より好ましくは10%未満である。末端封止率が0〜90%のポリアミドを用いることがポリアミドの分子量を大きくすることに有利である。また、末端封止率が好ましくは0〜50%、より好ましくは10%未満のポリアミドを用いると、強化材との密着性が高くなり、靭性及び剛性がより優れたものとなる。
本実施形態において、末端封止率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0047】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族モノカルボン酸、並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸などが挙げられる。
モノカルボン酸としては、1種で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミン、並びにアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミンなどの芳香族モノアミンなどが挙げられる。
モノアミンとしては、1種で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本実施形態の自動車部品を構成するポリアミド組成物に含有されているポリアミドの成分である、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミンの組み合わせは、(a)50モル%〜100モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)1,9−ノナンジアミンを50モル%超えて含むジアミンと、の組み合わせである。なお、(b)ジアミンは、1,9−ノナンジアミンを50モル%を超えて100モル%以下含むものであり、1,9−ノナンジアミンのみであってもよく、これにさらに2−メチル−1,8−オクタンジアミンが含まれているものであってもよい。
これらの組み合わせのポリアミドは特に、耐熱性、流動性、靭性、及び剛性に優れる高融点ポリアミドである。
【0050】
本実施形態に用いられる(A)ポリアミドにおいて、ポリアミド中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸構造は、トランス異性体及びシス異性体の幾何異性体として存在する。
(A)ポリアミド中、脂環族ジカルボン酸として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むものである場合、当該1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸全体中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸がトランス異性体である比率を表し、該トランス異性体比率が、51〜85モル%であり、好ましくは51〜80モル%であり、より好ましくは60〜80モル%である。
また、(A)ポリアミドが1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外の脂環族ジカルボン酸を含む場合、(A)ポリアミド中、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸全体に占める、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸に由来する部分がトランス異性体である比率で表される。該トランス異性体比率は、51〜85モル%であることが好ましく、より好ましくは51〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、剛性、及び靭性に優れるという特徴に加えて、高いTgによる熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性を同時に満足するという性質を持つ。これらの特徴は、(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と(b)50モル%を超える1,9−ノナンジアミンを含むジアミン、又は前記(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)50モル%を超えて1,9−ノナンジアミンを含み、かつ2−メチル−1,8−オクタンジアミンをさらに含むジアミンの組み合わせからなる、本実施形態に用いられるポリアミドで特に顕著である。
本実施形態において、トランス異性体比率は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0051】
<(A)ポリアミドの製造方法>
(A)ポリアミドを製造する方法としては、例えば、酸クロライドとジアミンを原料とする溶液重合法又は界面重合法、あるいは熱重縮合などのポリアミドの製造方法として公知の方法を挙げることができる。
例えば、ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物を形成成分とする熱溶融重合法やポリアミド形成成分の固体塩又はポリアミドの融点以下の温度で行う固相重合法、ジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いた溶液法なども用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせて用いることもできる。中でも熱溶融重合法がより効率的である。
また、重合形態としては、バッチ式でも連続式でも重合を行うことができる。また、重合装置も特に制限されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
【0052】
上述した(A)ポリアミドは、特に制限されるものではないが、以下に記載する熱溶融重合法のバッチ式の方法により製造することができる。
例えば、水を溶媒として(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンのポリアミド形成成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
【0053】
また、(A)ポリアミドは、以下に記載する熱溶融重合法(連続式の方法の1種)によって製造することもできる。
例えば、水を溶媒としてポリアミド形成成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出して、冷却、カッティングしてペレットを得る。
【0054】
(A)ポリアミドを製造するに際して、前記の末端封止剤の他に、例えば、触媒として、リン酸、亜リン酸、及び次亜リン酸、並びにそれらの塩及びエステルを添加することができる。上記塩及びエステルとしては、リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸とカリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、及びアンチモンなどの金属との塩;リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸のアンモニウム塩;リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、及びフェニルエステルなどが挙げられる。
【0055】
本実施形態の自動車部品を構成するためのポリアミド組成物に含有されているポリアミドの分子量は、25℃の相対粘度ηrを指標として好適な範囲を規定することができる。
ポリアミドの分子量は、靭性及び剛性などの機械物性並びに成形性の観点で、JIS−K6810に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度ηrにおいて、好ましくは1.5〜7.0であり、より好ましくは1.7〜6.0であり、さらに好ましくは1.9〜5.5である。
25℃の相対粘度ηrが上記範囲内にあるポリアミドを使用することにより、力学的特性、耐熱性、及び成形性などに優れた自動車部品を得ることができる。
【0056】
本実施形態の自動車部品を構成するためのポリアミド組成物に含有されているポリアミドの融点Tm2は、耐熱性の観点から、280〜350℃であることが好ましい。より好ましくは285〜335℃であり、さらに好ましくは290〜330℃である。
融点の測定は、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点が280℃以上であることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。また、融点が330℃以下であることにより、押出、成形などの溶融加工でのポリアミドの熱分解などを抑制することができる。
【0057】
[(B)無機充填材]
本実施形態に係る自動車部品はポリアミド組成物を含み、前記ポリアミド組成物は(B)無機充填材を含有する。
上記の(B)無機充填材としては、以下に制限されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが挙げられる。
(B)無機充填材としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本実施形態に係る自動車部品に含まれるポリアミド組成物が、(B)無機充填材を含有することにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び剛性などに優れるポリアミドの性質を損なうことなく、さらに、ポリアミド組成物としても、耐熱性、流動性、強度剛性、靭性及び低吸水性などに優れたものとなる。
かかるポリアミド組成物を含む自動車部品とすることにより、流動性、靭性、低吸水性及び強度剛性に優れ、さらに耐熱性、耐振動疲労性及び耐LLC性にも優れた自動車部品を提供することができる。
【0059】
上記した(B)無機充填材の中でも、強度剛性などを向上させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが好ましい。中でも、より好ましくはガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、カオリン、マイカ及びタルクであり、さらに好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト及びマイカであり、さらにより好ましくはガラス繊維、炭素繊維及びウォラストナイトである。
【0060】
ガラス繊維や炭素繊維の中でも、前記自動車部品に一層高い特性を発現させる観点から、さらに好ましくは、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、且つ重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)が10〜100であるものである。
【0061】
まず、ガラス繊維や炭素繊維としては、その断面が真円状でも扁平状でもよい。かかる扁平状の断面としては、以下に制限されないが、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、及び長手方向の中央部がくびれた繭型が挙げられる。ここで、本明細書における「扁平率」は、当該繊維断面の長径をD2及び該繊維断面の短径をD1とするとき、D2/D1で表される値をいう(真円状は、扁平率が約1となる。)。扁平状のガラス繊維を使用するときは、扁平率は1.5〜10が好ましい。
【0062】
上記のガラス繊維や炭素繊維を、シランカップリング剤などにより表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、以下に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙した成分からなる群より選択される一以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0063】
また、上記のガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩、並びにカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを含む共重合体などを含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、得られるポリアミド組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましい。より好ましくは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせである。
【0064】
上記したカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体のうち、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。一方、前記のカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。前記のカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びエチルメタクリレートが挙げられる。中でもスチレン及びブタジエンが好ましい。
【0065】
上記したこれらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される一以上であることがより好ましい。
【0066】
また、上記したカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、得られるポリアミド組成物の流動性を向上させる観点から、より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは2,000〜500,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0067】
エポキシ化合物としては、以下に制限されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド及びエイコセンオキサイド等の脂肪族エポキシ化合物;グリシド−ル、エポキシペンタノ−ル、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド及びエポキシ化シクロヘキセンメチルアルコール等の脂環族エポキシ化合物;ピネンオキサイド等のテルペン系エポキシ化合物;スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド及びm−クロロスチレンオキサイド等の芳香族エポキシ化合物;エポキシ化大豆油;並びに、エポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
【0068】
上記のポリウレタン樹脂は、集束剤として一般的に用いられるものであれば特に制限されない。この具体例として、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)及びイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
【0069】
上記のアクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)の重量平均分子量は1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
【0070】
ポリアクリル酸は塩形態であってもよい。前記塩形態として、以下に制限されないが、例えば第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。かかるポリアクリル酸の塩として、以下に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性を向上させる観点や、アミン臭を低減させる観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
【0071】
塩を形成するポリアクリル酸の重量平均分子量は、特に制限されることはない。好ましくは3,000〜50,000の範囲である。すなわち、ガラス繊維や炭素繊維の集束性を向上させる観点から3,000以上であり、得られるポリアミド組成物とした際の機械的物性を向上させる観点から50,000以下である。
【0072】
上記のアクリル酸のポリマーは、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマーであってもよい。前記アクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、以下に制限されないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸からなる群より選択される一以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く。)。好ましくは、上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有する。
【0073】
上記のアクリル酸のポリマー(コポリマー)は塩形態であってもよい。前記塩形態として、以下に制限されないが、例えば第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。前記のアクリル酸のポリマーの塩として、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性を向上させ、且つアミン臭を低減させる観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
【0074】
上記の塩を形成するアクリル酸のコポリマーの重量平均分子量は、以下に制限されないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。すなわち、ガラス繊維や炭素繊維の集束性を向上させる観点から3,000以上が好ましく、ポリアミド組成物において機械的物性を向上させる観点から50,000以下が好ましい。
【0075】
ガラス繊維や炭素繊維は、公知の当該繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、上記の集束剤を、当該繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することにより、連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。かかる集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として、好ましくは0.2〜3質量%相当を付与(添加)し、より好ましくは0.3〜2質量%相当を付与(添加)する。すなわち、当該繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、得られるポリアミド組成物の熱安定性を向上させる観点から、3質量%以下であることが好ましい。ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよいし、ストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0076】
ここで、本明細書における数平均繊維径及び重量平均繊維長は、以下の方法により求められた値である。ポリアミド組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理する。当該処理後の残渣分から、100本以上のガラス繊維(又は炭素繊維)を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらのガラス繊維(又は炭素繊維)の繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定する。加えて、倍率1,000倍で撮影した、上記100本以上のガラス繊維(又は炭素繊維)についてのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより、重量平均繊維長を求める。
【0077】
ガラス繊維や炭素繊維以外の無機充填材の平均粒径は、靭性及び表面外観を向上させる観点から、0.01〜38μmが好ましい。0.03〜30μmがより好ましく、0.05〜25μmがさらに好ましく、0.10〜20μmがさらにより好ましく、0.15〜15μmが最も好ましい。
上記の平均粒径を38μm以下とすることにより、靭性、表面外観に優れたポリアミド組成物とすることができる。一方、0.01μm以上にすることにより、コスト面及び粉体のハンドリング面と機械的物性(流動性など)とのバランスに優れたポリアミド組成物が得られる。
【0078】
ここで、無機充填材の中でも、ウォラストナイトのような針状の形状を持つものに関しては、数平均繊維径(以下、単に「平均繊維径」ともいう。)を平均粒径とする。また、断面が円でない場合はその長さの最大値を(数平均)繊維径とする。
【0079】
上記した針状の形状を持つものの重量平均繊維長(以下、単に「平均繊維長」ともいう。)については、上述の数平均繊維径の好ましい範囲、及び下記の重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)の好ましい範囲から算出される数値範囲が好ましい。
針状の形状を持つものの重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)に関しては、自動車部品(成形品)の表面外観を向上させ、且つ射出成形機などの金属性パーツの磨耗を防止する観点から、1.5〜10が好ましく、2.0〜5がより好ましく、2.5〜4がさらに好ましい。
【0080】
また、ガラス繊維や炭素繊維以外の無機充填材を、通常の表面処理剤(例えば、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤など)を用いて表面処理してもよい。前記シラン系カップリング剤としては、以下に制限されないが、エポキシシランカップリング剤が好ましい。また、ポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との混合物及び/又はポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との反応物も好ましい。このような表面処理剤は、予め(B)無機充填材の表面に処理してもよいし、(A)ポリアミドと(B)無機充填材とを混合する際に添加してもよい。また、表面処理剤の添加量は、(B)無機充填材100質量%に対して、好ましくは0.05〜1.5質量%である。
【0081】
(B)無機充填材の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、0.1〜200質量部であり、好ましくは1〜180質量部であり、より好ましくは5〜150質量部であり、さらにより好ましくは10〜100質量部である。
(B)無機充填材の含有量を0.1質量部以上とすることにより、(B)無機充填材を含有するポリアミド組成物の靭性及び強度剛性などの機械的物性が向上する。一方、(B)無機充填材の含有量を200質量部以下とすることにより、押出性、成形性に優れる(B)無機充填材を含有するポリアミド組成物を得ることができる。
【0082】
[(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物]
本実施形態に係る自動車部品はポリアミド組成物を含み、前記ポリアミド組成物は(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を含有する。
【0083】
上記のうち、銅化合物としては、以下に制限されないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅及びステアリン酸銅、並びにエチレンジアミン及びエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に配位した銅錯塩が挙げられる。
銅化合物としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
上記のうち、金属ハロゲン化合物は、銅ハロゲン化物を除く。
前記金属ハロゲン化合物としては、周期律表の1族又は2族の金属元素とハロゲンとの塩であり、以下に制限されないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。中でも、好ましくはヨウ化カリウム及び臭化カリウム、並びにこれらの混合物であり、より好ましくはヨウ化カリウムである。ヨウ化カリウムを用いた場合、本実施形態に係る自動車部品は、耐振動疲労性及び耐LLC性に優れ、金属腐食を抑制することができる。
かかる金属ハロゲン化合物としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
本実施形態における自動車部品を構成するポリアミド組成物が(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を含有することにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び剛性などに優れるポリアミドの性質を損なうことなく、ポリアミド組成物としても、流動性、靭性、低吸水性及び強度剛性に優れ、さらに耐熱性、耐振動疲労性及び耐LLC性に優れたものとなる。
かかるポリアミド組成物を含む自動車部品は、流動性、靭性、低吸水性及び強度剛性に優れ、さらに耐熱性、耐振動疲労性及び耐LLC性にも優れる。
【0086】
上記の銅化合物としては、耐振動疲労性及び耐LLC性に優れ、且つ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、「金属腐食」と略称する場合がある。)を抑制することができる観点から、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅からなる群より選択される一以上であることが好ましく、ヨウ化銅及び/又は酢酸銅であることがより好ましい。
【0087】
ポリアミド組成物中の銅化合物の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、0.01〜0.6質量部であり、好ましくは0.02〜0.4質量部であり、より好ましくは0.03〜0.2質量部である。
銅化合物の含有量を、上記の範囲内とすることにより、耐振動疲労性及び耐LLC性が十分向上し、銅の析出、及び金属腐食を抑制することができる。
【0088】
ポリアミド106質量部に対し、銅として、好ましくは50〜2,000質量部、より好ましくは100〜1,500質量部、さらに好ましくは150〜1,000質量部となるように銅化合物を含有する。
上記した範囲内の場合、耐振動疲労性及び耐LLC性に優れたポリアミド組成物を得ることができる。
【0089】
ポリアミド組成物中の金属ハロゲン化合物の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.05〜20質量部であり、より好ましくは0.10〜15質量部であり、さらに好ましくは0.20〜10質量部である。
金属ハロゲン化合物の含有量を、上記の範囲内とすることにより、耐振動疲労性及び耐LLC性が十分向上し、銅の析出、及び金属腐食を抑制することができる。
【0090】
ハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)が2/1〜50/1となるように、ポリアミド組成物は(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を含有することが好ましい。ハロゲン/銅は、より好ましくは2/1〜40/1であり、さらに好ましくは5/1〜30/1である。
ハロゲン/銅が2/1以上の場合には銅の析出及び金属腐食を抑制することができる。一方、ハロゲン/銅が50/1以下の場合には靭性及び強度剛性などの機械的物性を損なうことなく、さらに成形機のスクリュー等の腐食を防止することができる。
【0091】
銅化合物及び金属ハロゲン化合物は、それぞれ単独で配合しても一定の効果を得ることができる。しかしながら、得られるポリアミド組成物の性能を顕著に向上させる観点から、本実施形態は銅化合物及び金属ハロゲン化合物の双方を含有する。
【0092】
[熱安定剤]
ポリアミド組成物は、本実施形態の目的を損なわない程度で、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤及びアミン系熱安定剤からなる群より選択される一以上の熱安定剤を含有することができる。
【0093】
<フェノール系熱安定剤>
フェノール系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、ヒンダートフェノール化合物が挙げられる。前記ヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂や繊維に優れた耐熱性及び耐光性を付与する性質を有する。
ヒンダードフェノール化合物としては、以下に制限されないが、例えば、N,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、耐熱エージング性向上の観点から、好ましくはN,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]である。
【0094】
フェノール系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のフェノール系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.10〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらにガス発生量を低減させることができる。
【0095】
<リン系熱安定剤>
リン系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4'−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))・1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイトが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
上記で列挙したものの中でも、耐熱エージング性の一層の向上及びガス発生量の低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物及び/又はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。前記ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、以下に制限されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・メチル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−エチルヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ラウリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソトリデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・シクロヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ベンジル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・エチルセロソルブ・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ブチルカルビトール・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,6−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−シクロヘキシルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
上記で列挙したペンタエリスリトール型ホスファイト化合物の中でも、ガス発生量を低減させる観点から、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2、6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる群より選択される1種以上が好ましく、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
【0098】
リン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のリン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.10〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらにガス発生量を低減させることができる。
【0099】
<アミン系熱安定剤>
アミン系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β',β'−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
アミン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のアミン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができ、さらにガス発生量を低減させることができる。
【0101】
[ポリアミド組成物に含まれ得る、その他の成分]
前記ポリアミド組成物は、成形加工性を向上させる目的で、金属石鹸及び高級脂肪族エステル類並びにそれらの部分けん化物、低分子量ポリオレフィン化合物、シリコーンオイル、並びにフッ素系オイルなどの離型剤を含有することができる。特に、金型離型効果が高く、金属腐食性の小さい低分子量ポリエチレンが好適に使用され得る。
【0102】
前記ポリアミド組成物は、自動車部品の色相安定化、コスト削減に対応した増量剤の使用、及び放熱特性の向上などの観点から、各種の金属化合物(例えば、アルカリ土類金属類及び金属酸化物など)を含有することができる。前記各種の金属化合物として、以下に制限されないが、例えば、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウムが挙げられる。
さらに、前記ポリアミド組成物は、必要に応じて、難燃剤;難燃助剤;着色剤;帯電防止剤;可塑剤;結晶核剤;ハロゲンキャッチャー等の添加剤;上記(B)無機充填材や(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物に含まれない充填剤;PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPE(ポリフェニレンエーテル)やLCP(液晶ポリマー)等の各種ポリマー等を含有することもできる。
【0103】
(自動車部品に含まれるポリアミド組成物の製造方法)
前記ポリアミド組成物は、上記した各構成成分を、公知の方法に従って配合することにより、調製することができる。
例えば、(A)ポリアミドの重縮合反応時に各成分を添加する方法、(A)ポリアミドとその他の成分とをドライブレンドする方法、押出機を用いて各構成成分を溶融混練する方法などが挙げられる。これらの中でも、操作が容易であり、均一な組成物が得られる等の観点から、押出機を用いて各構成成分を溶融混練する方法が有利である。この際に用いられる押出機は2軸スクリュー型のものが好ましく、溶融混練温度としては[(A)ポリアミドの融点+5℃]以上であって350℃以下であることが好ましい。
【0104】
また、(A)ポリアミドと(B)無機充填材と(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物との混合方法として、例えば、(A)ポリアミドと(B)無機充填材と(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物とを、ヘンシェルミキサーなどを用いて混合し、溶融混練機に供給して混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミド並びに(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物に、サイドフィーダーから(B)無機充填材を配合する方法などが挙げられる。
なお、上述した熱安定剤や、各種添加剤等のその他の成分は、溶融混練や成形加工時に必要に応じて混合することができる。また、溶融混練の工程前に予め混合しておき、その後、溶融混練機に供給して混練してもよい。
【0105】
ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
溶融混練温度は、樹脂温度として、250〜375℃程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.5〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に制限されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロールなどの溶融混練機を用いることができる。
【0106】
ポリアミド組成物の製造方法は、(A)ポリアミド並びに(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を以下の方法で混合した後に、(B)無機充填材を混合する方法であってもよい。
かかる混合方法としては、(A)ポリアミドの重合工程中に(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物をそれぞれ単独で又は混合物として添加する方法(以下、「製法1」と略称する場合がある。)や、溶融混練を用いて(A)ポリアミドと(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物とをそれぞれ単独で又は混合物として添加する方法(以下、「製法2」と略称する場合がある。)等が挙げられる。
【0107】
(A)ポリアミドに、(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を添加する場合、固体のまま添加してもよく、水溶液の状態で添加してもよい。
製法1における「ポリアミドの重合工程中」とは、原料モノマーからポリアミドの重合完了までのいずれかの工程であって、その間であるならばどの時点でもよい。
製法2の溶融混練を行う装置としては、特に制限されないが、公知の装置(例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロールなどの溶融混練機)を用いることができる。中でも2軸押出機が好ましく用いられる。
溶融混練の温度は、(A)ポリアミドの融点よりも、好ましくは1〜100℃程度高い温度、より好ましくは10〜50℃程度高い温度である。
混練機での剪断速度は100sec-1以上程度であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は0.5〜5分程度であることが好ましい。
【0108】
本実施形態の目的を損なわない程度で、(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物をポリアミド中に分散させる目的で(分散剤として)、他の成分を添加してもよい。
前記他の成分としては、例えば、滑剤としてラウリル酸などの高級脂肪酸、高級脂肪酸とアルミニウム等の金属との高級脂肪酸金属塩、エチレンビスステアリルアミド等の高級脂肪酸アミド、及びポリエチレンワックス等のワックス類などが挙げられる。
また、一以上のアミド基を有する有機化合物も挙げられる。
【0109】
(自動車部品)
前記ポリアミド組成物は、周知の成形方法(例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸など)を用いて、各種の成形品に加工できる。
前記成形品は、靭性、成形性及び低吸水性に優れ、さらに耐熱性、耐振動疲労性及び耐LLC性にも優れる。したがって、前記成形品は、本実施形態に係る自動車部品として用いることができる。すなわち、前記ポリアミド組成物は、本実施形態に係る自動車部品に含まれる。
【0110】
上記の自動車部品としては、以下に制限されないが、例えば、自動車アンダーフード構造部品、自動車機構部品、自動車内装部品、自動車外装部品及び自動車電装部品が挙げられる。
自動車アンダーフード構造部品としては、以下に制限されないが、例えば、フロントエンドモジュール、ロッカーアームカバー、オーナメントカバー、チェーンカバー、オイルパン、インテークマニホールド、サージタンク、パワステオイルタンク、ラジエータータンク、冷却パイプ、ターボインタークーラータンク、ターボインタークーラーダクト、EGR配管、オイルクーラータンク、オイルパイプ、オイルポンプ、ウォーターポンプ、ウォーターパイプ、クーリングファン、シリンダーヘッドカバー、ギヤ、バルブ、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、レゾネータ、吸気ダクト、スロットルボディ、エンジンカバー、エアークリーナー、インバーターケース、コンバーターケース、高電圧コネクター、駆動モーターケース、ガソリンタンクケース、ウォーターポンプ、インタークーラーインレット、ベアリングリテーナー、チェーンカバー、サーモスタットハウス、オイルネーター、デリバリーパイプ及びATF冷却ユニットが挙げられる。
自動車機構部品としては、以下に制限されないが、例えば、エンジンマウント、トルクロッド、吸気バルブボディ、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット及びキーシリンダーが挙げられる。
自動車内装部品としては、以下に制限されないが、例えば、シフトレバーブラケット、ステアリングホイール、ステアリングブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インパネリインフォース、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス及びトリムが挙げられる。
自動車外装部品としては、以下に制限されないが、例えば、サンルーフデフレクター、ルーフレール、ドアミラーステイ、ミラーブラケット、フード、フロントフェンダー、リアクオーターパネル、バックドアパネル、バックドアインナー、アウタードアハンドル、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、及びサイドバンパーが挙げられる。
自動車電装部品としては、以下に制限されないが、例えば、コネクターやワイヤーハーネスコネクター、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、及びコンビネーションスイッチが挙げられる。
【実施例】
【0111】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた材料及び測定方法を以下に示す。なお、本実施例において、1kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
【0112】
[材料]
〔(A)ポリアミド〕
<(a)ジカルボン酸>
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA−1) イーストマンケミカル製 商品名 1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体=25/75)
(2)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA−2) 岩谷瓦斯製 商品名 1,4−CHDA (トランス体/シス体=100/0)
(3)テレフタル酸(TPA) 和光純薬工業製 商品名 テレフタル酸
(4)アジピン酸(ADA) 和光純薬工業製 商品名 アジピン酸
<(b)ジアミン>
(5)1,9−ノナンジアミン(NMD) アルドリッチ製 商品名 1,9−ノナンジアミン
(6)2−メチル−1,8−オクタンジアミン(2MODA) 特開平05−17413号公報を参照して作製したものを用いた。
(7)ヘキサメチレンジアミン(HMD) 和光純薬工業製 商品名 ヘキサメチレンジアミン
(8)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MPMD) 東京化成工業製 商品名 2−メチル−1,5−ジアミノペンタン
【0113】
〔(B)無機充填材〕
(9)ガラス繊維(GF) 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 平均繊維径(平均粒径)10μmφ(真円状)、カット長3mm
【0114】
〔(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物〕
(10)ヨウ化銅(CuI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化銅(I)
(11)ヨウ化カリウム(KI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化カリウム
〔分散剤〕
(12)エチレンビスステアリルアミド ライオン製 商品名 アーモワックス EBS
【0115】
[測定方法]
(1)末端封止率(%)
(A)ポリアミドの数平均分子量(Mn)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、下記関係式
分子鎖末端基総数(eq/g)=2/Mn
を用いて分子鎖末端基総数を算出した。
滴定により、ポリアミドのカルボキシル基末端の数(eq/g)[ポリアミドのベンジルアルコール溶液を0.1N水酸化ナトリウムで滴定]及びアミノ基末端の数(eq/g)[ポリアミドのフェノール溶液を0.1N塩酸で滴定]を測定し、下記の式(1)を用いて末端封止率を求めた。
末端封止率(%)={(A−B)/A}×100 ・・・(1)
前記式(1)中、Aは分子鎖末端基総数(これは通常、ポリアミド分子の数の2倍に等しい。)を表し、Bはカルボキシル基末端及びアミノ基末端の合計数を表す。
ここで、ポリアミドの数平均分子量(Mn)は、GPCにより求めた。ポリアミドをサンプルとした。装置は東ソー(株)製HLC−8020を用いた。検出器は示差屈折計(RI)を用い、溶媒はトリフルオロ酢酸ナトリウムを0.1モル%溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、カラムは、東ソー(株)製TSKgel−GM HHR−Hを2本、及びG1000 HHRを1本用いた。前記溶媒の流量は0.6mL/minとし、前記サンプルの濃度は、1〜3(mgサンプル)/1(mL溶媒)とした。溶媒を添加したサンプルをフィルターでろ過し、不溶分を除去して、ろ液を測定試料とした。得られた溶出曲線をもとに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算により、数平均分子量(Mn)と、さらに重量平均分子量(Mw)とを算出した。
【0116】
(2)トランス異性体比率
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMRで測定した。ポリアミドを構成する脂環族ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積とシス異性体に由来する1.77ppm及び1.86ppmのピーク面積との比率からポリアミド中における脂環族ジカルボン酸構造のトランス異性体比率を求めた。
【0117】
(3)融点Tm2(℃)、融解熱量ΔH(J/g)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料(ポリアミド)約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とした。昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最大ピーク温度を融点Tm2(℃)とした。その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。なお、ピークが複数ある場合には、融解熱量ΔHが1J/g以上のものをピークとみなした上で、Tm2及びΔHを求めた。例えば、融点295℃、前記融点での融解熱量=20J/gと融点325℃、前記融点での融解熱量=5J/gという2つのピークが存在する場合、融点Tm2を325℃(複数のピークの中での最高温度)とし、融解熱量ΔHを20+5=25J/gとした。
【0118】
(4)25℃の相対粘度ηr
JIS−K6810に準じて測定した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液[(ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合]を作成し、25℃の温度条件下で測定した。
【0119】
(5)溶融せん断粘度ηs(Pa・s)
前記測定方法(1)で求めた融点+20℃の温度条件下で、せん断速度1000sec-1における溶融せん断粘度ηsで流動性を評価した。具体的な測定方法は、英国ROSAND社製ツインキャピラリーレオメーターRH7−2型を使用し、オリフィスは、ダイ径1.0mm、ダイ入口角180度のもので、L/Dが16及び0.25、の2つのオリフィスを使用した。
【0120】
(6)引張強度(MPa)及び引張伸度(%)
JIS−7113引張試験用の射出成形1号形試験片(4mm厚)を用いて、JIS−7113に準じて測定した。射出成形1号形試験片は、射出成形機(日精樹脂製PS40E)に引張試験(1号形試験片)用の試験片(4mm厚)の金型(金型温度140℃)を取り付けて、シリンダー温度=(下記表1中のポリアミドのTm2+10)℃〜(下記表1中のポリアミドのTm2+30)℃で成形を行った。
【0121】
(7)吸水率(%)
前記測定方法(6)と同様にして成形した射出成形1号形試験片(4mm厚)を成形後の絶乾状態(dry as mold)で、試験前質量(吸水前質量)を測定した。80℃の純水中に24時間浸漬させた。その後、水中から試験片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。吸水前質量に対しての吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、試行数n=3で求め、その平均値を吸水率(%)とした。
【0122】
(8)銅濃度、ハロゲン濃度、並びにハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)
銅濃度は、試料(ポリアミド組成物)に硫酸を加え、加熱しながら硝酸を滴下して有機成分を分解し、得られた分解液を純水中で定容し、ICP発光分析(高周波プラズマ発光分析)法により定量した。ICP発光分析装置は、SEIKO電子工業社製Vista−Proを用いた。
ハロゲン濃度は、ヨウ素を例にとると、試料を高純度の酸素で置換したフラスコ中で燃焼し、発生したガスを吸収液に捕集し、得られた捕集液中のヨウ素を1/100N 硝酸銀溶液による電位差滴定法を用いて定量した。
ハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)は、上記したそれぞれの定量値を用いて、分子量からモルに換算し算出した。
【0123】
(9)強度半減期(日)
上記測定方法(6)におけるJIS−7113引張試験用の射出成形1号形試験片(3mm厚)を熱風オーブン中で200℃、所定時間処理した後、ASTM−D638に準じて引張強度を測定した。熱処理前の引張強度に対する熱処理後の引張強度を引張強度保持率として算出し、かかる引張強度保持率が50%となる熱処理時間を強度半減期とした。
【0124】
(10)破壊応力(MPa)
上記測定方法(6)におけるJIS−7113引張試験用の射出成形1号形試験片(3mm厚)を、株式会社鷺宮製作所製油圧サーボ疲労試験機EHF−50−10−3を用い、120℃の空気雰囲気下、周波数20Hzの正弦波にて引張り荷重を負荷し、1,000,000回で破壊する応力(MPa)を求めた。
【0125】
(11)浸漬後の引張強度保持率(%)
上記測定方法(6)におけるJIS−7113引張試験用の射出成形1号形試験片(3mm厚)を、120℃のエチレングリコール50%水溶液に24時間、720時間浸漬し、室温に放置した。その後、上記(6)の方法により引張試験を行い、引張強度を測定した。24時間浸漬後の引張強度に対する、720時間浸漬後の引張強度の割合を、浸漬後の引張強度保持率として求めた。
【0126】
(12)モールドデポジット(MD)
前記測定方法(6)における引張試験用の射出成形1号形試験片を50本採取した後の金型表面の付着物を比較した。
○:金型に付着物無し
△:金型に付着物有り
×:金型及び成形品にも付着物有り
【0127】
[製造例1]
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を実施した。
(a)CHDA−1(トランス異性体/シス異性体=25/75) 777.04g(4.51モル)、(b−1)NMD 578.70g(3.66モル)、(b−2)2MODA 144.68g(0.91モル)、及び次亜リン酸ナトリウム一水和物1.50g(原料モノマーの総和を100質量部として0.1質量部)を、蒸留水1,500gに溶解させ、原料モノマーの均一水溶液を作った(表1参照)。
得られた水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧(株)製)に仕込み、液温(内温)50℃に保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm2になるまで、液温約50℃から加熱を続けた(この系での液温は約145℃であった。)。槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約75質量%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃であった。)。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃であった。)。槽内の圧力を約30kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度(後述の350℃)−50℃(ここでは300℃)になるまで加熱を続けた。液温が最終温度(後述の350℃)−50℃(ここでは300℃)まで上昇した後に、加熱は続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで120分ほどかけて降圧した。
その後、樹脂温度(液温)の最終温度が約350℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度は約350℃のまま、槽内を真空装置で約53.3kPa(400torr)の減圧下に30分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミド(以下、「PA9C−1」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0128】
[製造例2]
製造例1と同様の原料モノマーの均一水溶液に、末端封止剤として酢酸6.86g(0.11モル)をさらに加えた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−2」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0129】
[製造例3]
製造例1と同様の原料モノマーの均一水溶液に、末端封止剤として安息香酸13.94g(0.11モル)をさらに加えた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−3」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0130】
[製造例4]
製造例1と同様の原料モノマーの均一水溶液に、末端封止剤として安息香酸1.24g(0.010モル)をさらに加えた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−4」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0131】
[製造例5]
製造例1と同様の原料モノマーの均一水溶液に、末端封止剤として酢酸0.61g(0.010モル)をさらに加えた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−5」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0132】
[製造例6]
(a)CHDA−1 777.04g(4.51モル)、(b−1)NMD 434.03g(2.74モル)(b−2)2MODA 289.35g(1.83モル)、及び次亜リン酸ナトリウム一水和物1.50g(原料モノマーの総和を100質量部として0.1質量部)を、蒸留水1,500gに溶解させて、均一水溶液を作った点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−6」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0133】
[製造例7]
製造例6と同様の原料モノマーの均一水溶液に、末端封止剤として酢酸0.61g(0.010モル)をさらに加えた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−7」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0134】
[製造例8]
(a)CHDA−1、(b−1)NMD及び(b−2)2MODAを、モル比として100/85/15となるように用い、特許第3481730号明細書(上記特許文献4)に開示されている参考例3に準じて、ポリアミド(以下、「PA9C−8」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0135】
[製造例9]
「界面重合法」によりポリアミドの重合反応を実施した。
(a)CHDA−1からなる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド0.25モル/Lを含むクロロホルム溶液と、0.70モル/Lの1,9−ノナンジアミン及び2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含む水溶液とを用意した。それぞれを36.5L/h、13.8L/hの速度で大平洋機工(株)製ファインフローミルFM−15型に供給し、通流させ、周速20m/secで攪拌し、せん断を行った。
微小粒子状及びパルプ形状の白色生成物を得た。得られた白色生成物に対し、クロロホルム、水、アセトン、及び水の順でデカンテーションを繰り返して洗浄した。その後、120℃で12時間乾燥して、ポリアミド(以下、「PA9C−9」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0136】
[製造例10]
(a)CHDA−1とCHDA−2とを混合して、トランス異性体/シス異性体の比が60/40であるCHDAを調製した。
(a)トランス異性体/シス異性体が60/40であるCHDAからなる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドを用いた点以外は、製造例1と同様にして、ポリアミド(以下、「PA9C−10」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0137】
[製造例11]
KI 85.1質量部、及びエチレンビスステアリルアミド10質量部を混合し、KIとエチレンビスステアリルアミドとの混合物を得た。得られた混合物にCuI 4.9質量部を十分混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製、F5−11−175)を用いて顆粒化し、熱安定剤顆粒を得た。
【0138】
[比較製造例1]
(a)TPA、(b−1)NMD及び(b−2)2MODAを、モル比として100/85/15となるように、特許第3242781号明細書(上記特許文献6)に開示されている実施例に準じて、ポリアミド(以下、「PA9T」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0139】
[比較製造例2]
(a)TPA、並びに(b)2MPMD及びHMDを、モル比として100/60/40となるように、特表平6−503590号公報(上記特許文献1)に開示されている実施例に準じて、ポリアミド(以下、「PA6T」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0140】
[比較製造例3]
(a)CHDA−1 286.8g(1.67モル)及びADA 568.0g(3.89モル)、並びに(b)HMD 645.2g(5.55モル)を、蒸留水1,500gに溶解させ、原料モノマーの50質量%均一水溶液を調製した。
上記のようにモノマーの添加比率を変更した原料モノマーの均一水溶液を用いた点以外は、製造例1と同様にしてポリアミドの重合を行った。しかし、重合後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から排出されたストランドが非常に発泡していたため、ペレット化が不可能であった。そのため、冷却後、粉砕機で粉砕して、ペレットくらいの大きさにした。このようにして、ポリアミド(以下、「PA66/6C」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0141】
[比較製造例4]
(a)ADA 835.6g(5.72モル)、及び(b)HMD 664.4g(5.72モル)を蒸留水1,500gに溶解させ、原料モノマーの50質量%均一水溶液を作った。さらに、等モルの前記均一水溶液中に、末端封止剤として、3.43g(0.06モル)の酢酸を追添した。
この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧(株)製)に仕込み、モノマーが析出しないように液温(内温)50℃で保温しつつ、オートクレーブ内を窒素置換した。次に、液温を約50℃から、槽内の圧力がゲージ圧(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧を表記)として約2.5kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約145℃だった。)。それから、槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため、水を系外に除去しながら加熱を続け、約75%まで濃縮した(この系での液温は約160℃だった。)。その後、水の除去を止め、槽内の圧力が約18kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約225℃だった。)。それから、槽内の圧力を約18kg/cm2に保つため、水を系外に除去しながら加熱を続けた。その後、液温が245℃まで上昇した時点から、加熱は継続しつつ、最後に120分程度かけながら、圧力を大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)までゆっくり降圧させた。液温(溶融樹脂温度)は最終的に約280℃になるように、ヒーター温度を調整した。液温(樹脂温度)は約280℃のまま、槽内を大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)下で30分維持した。その後、窒素で加圧し、下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行い、ペレット状で排出して、ポリアミド(以下、「PA66」という。)を得た。
得られたポリアミドについての上記測定方法(1)〜(4)の評価結果を表1に示す。
【0142】
[実施例1]
製造例1のポリアミドを減圧下、120℃で24時間乾燥した。その後、ポリアミド100質量部に対して、6.1質量部の製造例11で製造した熱安定剤顆粒、及び(B)無機充填材として55質量部のGFを配合し、二軸押出機[東芝機械(株)製、TEM35φ L/D=47.6、設定温度={ポリアミドの融点(Tm2)+20}℃(具体的には、製造例1のポリアミドを用いる場合、315+20=335℃)、スクリュー回転数300rpm]を用いて溶融混練し、ポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の評価結果を表1に示す。
【0143】
[実施例2〜5]
製造例1のポリアミドに替えて、それぞれ製造例2〜5のポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の評価結果を表1に示す。
【0144】
[実施例6]
(B)無機充填材であるGFを100質量部に変更し、及び製造例1のポリアミドに替えて製造例5のポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の評価結果を表1に示す。
【0145】
[実施例7]
銅化合物を0.03質量部、金属ハロゲン化合物を0.5質量部、及び銅を100質量部に変更し、製造例1のポリアミドに替えて製造例5のポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の評価結果を表1に示す。
【0146】
[実施例8]
銅化合物を0.30質量部、金属ハロゲン化合物を5.2質量部、及び銅を1000質量部に変更し、製造例1のポリアミドに替えて製造例5のポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の評価結果を表1に示す。
【0147】
[実施例9〜13]
製造例1のポリアミドに替えて、それぞれ製造例6〜10の各ポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の評価結果を表1に示す。
なお、実施例9においては、押出加工温度を高くする必要があったため、得られたポリアミド組成物に着色が観察された。
【0148】
[比較例1〜4]
製造例1のポリアミドに替えて、それぞれ比較製造例1〜4の各ポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。
得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の評価結果を表1に示す。
【0149】
[比較例5]
製造例12の熱安定剤顆粒を配合しなかった点以外は、実施例1と同様にして、ペレット状のポリアミド組成物を得た。なお、得られたポリアミド組成物は、強度半減期の点で、実施例のものに比して格段に劣ったため、上記測定項目(10)破壊応力及び(11)浸漬後の引張強度保持率の測定は行わなかった。
【0150】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の自動車部品は、自動車アンダーフード構造部品、自動車機構部品、自動車内装部品、自動車外装部品及び自動車電装部品等として、産業上の利用可能性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)1,9−ノナンジアミンを50モル%超えて含むジアミンと、を重合させたポリアミド、
(B)無機充填材、並びに
(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物、
を含有するポリアミド組成物、を含む自動車部品であって、
前記(A)ポリアミド100質量部に対して、(B)無機充填材0.1〜200質量部、並びに(C)銅化合物0.01〜0.6質量部及び金属ハロゲン化合物0.05〜20質量部を含有するポリアミド組成物を含む、自動車部品。
【請求項2】
前記(b)ジアミンが、50モル%未満の2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含む、請求項1に記載の自動車部品。
【請求項3】
前記(C)において、前記銅化合物が酢酸銅及び/又はヨウ化銅であり、前記金属ハロゲン化合物がヨウ化カリウムである、請求項1又は2に記載の自動車部品。
【請求項4】
ハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)が、2/1〜50/1である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動車部品。
【請求項5】
前記(A)ポリアミド106質量部に対して、銅として50〜2,000質量部となるように前記(C)の銅化合物を含有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の自動車部品。
【請求項6】
前記(A)ポリアミドの分子鎖の末端封止率が10%未満である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動車部品。
【請求項7】
前記(A)ポリアミド中、前記1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び当該1,4−シクロヘキサンジカルボン酸以外の脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が51〜85モル%である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動車部品。

【公開番号】特開2011−68874(P2011−68874A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187537(P2010−187537)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】