説明

ポリアミド組成物及び成形品

【課題】靭性及び色調に優れ、さらに耐変色性に優れる、ポリアミド組成物を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドであって、環状アミノ末端量が30〜60μ当量/gである、(A)ポリアミドと、
(B)酸化チタンと、
を、含有するポリアミド組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド6及びポリアミド66(以下、それぞれ、「PA6」及び「PA66」と略称する場合がある。)等に代表されるポリアミドは、成形加工性、機械物性及び耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、並びに日用及び家庭品用等の各種部品材料として広く用いられている。
【0003】
自動車産業において、環境に対する取り組みとして、排出ガス低減のために金属代替による車体軽量化の要求がある。この要求に応えるために、外装材料や内装材料等にポリアミド材料が一段と用いられるようになり、ポリアミド材料に対する耐熱性、強度、及び外観等の要求特性のレベルは一層向上している。特にエンジンルーム内の温度が上昇傾向にあるため、ポリアミド材料に対する高耐熱化の要求が強まっている。
また、家電等の電気及び電子産業において、表面実装(SMT)ハンダの鉛フリー化に対応すべく、ハンダの融点上昇に耐えることができる、ポリアミド材料に対する高耐熱化が要求されている。
【0004】
PA6及びPA66等のポリアミドでは、融点が低く、耐熱性の点でこれらの要求を満たすことができない。
PA6及びPA66等の従来のポリアミドの前記耐熱性に関する問題点を解決するために、高融点ポリアミドが提案されている。具体的には、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド(以下、「PA6T」と略称する場合がある。)等が提案されている。
しかしながら、PA6Tは、融点が370℃程度という高融点ポリアミドであるため、溶融成形により成形品を得ようとしても、ポリアミドの熱分解が激しく起こり、十分な特性を有する成形品を得ることが難しい。
【0005】
PA6Tの前記熱分解に関する問題点を解決するために、PA6TにPA6及びPA66等の脂肪族ポリアミドや、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる非晶性芳香族ポリアミド(以下、「PA6I」と略称する場合がある。)等を共重合させ、融点を220〜340℃程度にまで低融点化したテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとを主成分とする高融点半芳香族ポリアミド(以下、「6T系共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)等が提案されている。
6T系共重合体ポリアミドとして、特許文献1には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなり、脂肪族ジアミンがヘキサメチレンジアミン及び2−メチルペンタメチレンジアミンの混合物である芳香族ポリアミド(以下、「PA6T/2MPDT」と略称する場合がある。)が開示されている。
【0006】
また、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる芳香族ポリアミドに対して、アジピン酸とテトラメチレンジアミンからなる高融点脂肪族ポリアミド(以下、「PA46」と略称する場合がある。)や、脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる脂環族ポリアミド等が提案されている。
例えば、特許文献2及び3には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなる脂環族ポリアミド(以下、「PA6C」と略称する場合がある。)と他のポリアミドとの半脂環族ポリアミド(以下、「PA6C共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)が開示されている。
特許文献2には、ジカルボン酸単位として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を1〜40%配合した半脂環族ポリアミドの電気及び電子部材は、ハンダ耐熱性が向上することが開示され、特許文献3には、半脂環族ポリアミドの自動車部品は、流動性及び靭性等に優れていることが開示されている。
【0007】
特許文献4には、脂環族ジカルボン酸と分岐した置換基を持つジアミンとからなる脂環族ポリアミドが、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性に優れると共に、高い融点を有するポリアミドであることが開示されている。
特許文献5には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含むジアミン単位とからなるポリアミドが耐光性、靭性、成形性、軽量性、及び耐熱性等に優れることが開示されている。また、該ポリアミドの製造方法として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,9−ノナンジアミンを230℃以下で反応してプレポリマーを作り、そのプレポリマーを230℃で固相重合し融点311℃のポリアミドを製造することが開示されている。
また、特許文献6には、トランス/シス比が50/50から97/3である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を原料として用いたポリアミドが、耐熱性、低吸水性、及び耐光性などに優れることが開示されている。
【0008】
特許文献7には、テレフタル酸を含む芳香族二酸と2−メチルペンタンジアミンとを含むジアミン成分からなるポリアミドの製造において、蟻酸の添加により2−メチルペンタメチレンジアミンの環化(環状アミノ基となる)が有意に低くなることが開示されている。
また、特許文献8及び9には、ポリペンタメチレンアジパミド樹脂において、ペンタメチレンジアミン由来の環状アミノ基がポリマー末端に結合することを重合温度の制御等によって低減することにより、ポリアミドの滞留安定性と耐熱性とを向上できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表平6−503590号公報
【特許文献2】特表平11−512476号公報
【特許文献3】特表2001−514695号公報
【特許文献4】国際公開第2009/113590号パンフレット
【特許文献5】特開平9−12868号公報
【特許文献6】国際公開第2002/048239号パンフレット
【特許文献7】特表平8−503018号公報
【特許文献8】特開2003−292612号公報
【特許文献9】特開2004−75932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
6T系共重合ポリアミドは、確かに低吸水性、高耐熱性、及び高耐薬品性という特性を有してはいるものの、流動性が低く成形性や成形品表面外観が不十分であり、靭性及び耐光性に劣る。そのため、外装部品のような成形品として優れた外観が要求されたり、日光等に曝されたりする用途に用いられる場合には、それらの特性の改善が要求される。
また、6T系共重合ポリアミドは、比重も大きく、軽量性の面でも改善が望まれている。
【0011】
特許文献1に開示されているPA6T/2MPDTは、従来のPA6T共重合ポリアミドの問題点を一部改善することができるが、流動性、成形性、靭性、成形品表面外観、及び耐光性の面でその改善水準は不十分である。
また、PA46は、良好な耐熱性及び成形性を有するものの、吸水率が高く、また、吸水による寸法変化や機械物性の低下が著しく大きいという問題点を持っており、自動車用途等で要求される寸法変化の面で要求を満たせない場合がある。
【0012】
特許文献2及び3に開示されているPA6C共重合ポリアミドも、吸水率が高く、また、流動性が十分でない等の問題がある。
さらに、特許文献5及び6に開示されているポリアミドも、靭性、剛性、及び流動性の面で改善が不十分である。
【0013】
また、特許文献7に開示されているポリアミドに関しては、ポリマー末端に結合する環状アミノ基の量を低下させることによって高分子量体が得られることが記載されているが、ポリマー末端に結合する環状アミノ基の量をある一定以上を有することによる利点についての記載はない。
また、特許文献8及び9に開示されているポリアミドに関しては、ポリマー末端に結合する環状アミノ基の量をある一定以上有することによる利点についての記載はなく、また重縮合温度を低下させることによりポリマー末端に結合する環状アミノ基の量が低減するため300℃以上の高融点のポリアミドを製造することは想定していない。
【0014】
また、これら従来提案されているポリアミドでは、特に靭性や耐変色性という観点においても、電気及び電子産業における要求を満足することができない。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、靭性及び色調に優れ、さらに耐変色性に優れる、ポリアミド組成物及び成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミドであって、環状アミノ末端量を特定量有するポリアミドと、酸化チタンとを含有するポリアミド組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0017】
〔1〕
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドであって、環状アミノ末端量が30〜60μ当量/gである、(A)ポリアミドと、
(B)酸化チタンと、
を、含有するポリアミド組成物。
〔2〕
前記(A)ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrが2.3以上である、前記〔1〕に記載のポリアミド組成物。
〔3〕
前記(A)ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を、さらに共重合させたポリアミドである前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアミド組成物。
〔4〕
前記(A)ポリアミドの環状アミノ末端が、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの環化反応により形成されたものである、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔5〕
前記(A)ポリアミドが、重合工程の少なくとも一部において固相重合工程を経て得られるポリアミドである、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔6〕
前記(A)ポリアミドの融点が270〜350℃である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔7〕
前記(B)酸化チタンが、数平均粒子径が0.1〜0.8μmの酸化チタンである、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔8〕
前記(B)酸化チタンが、無機コーティング及び/又は有機コーティングされている、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔9〕
前記無機コーティングが金属酸化物コーティングである、前記〔8〕に記載のポリアミド組成物。
〔10〕
(C)無機充填材をさらに含有する、前記〔1〕乃至〔9〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔11〕
前記(C)無機充填材が、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、タルク、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群から選ばれる1種以上である、前記〔10〕に記載のポリアミド組成物。
〔12〕
(D)フェノール系熱安定剤をさらに含有する、前記〔1〕乃至〔11〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔13〕
(E)アミン系光安定剤をさらに含有する、前記〔1〕乃至〔12〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物。
〔14〕
前記(E)アミン系光安定剤の分子量が1,000未満である、前記〔13〕に記載のポリアミド組成物。
〔15〕
(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドであって、環状アミノ末端量が30〜60μ当量/gである、ポリアミドを30〜95質量%、
(B)酸化チタンを5〜45質量%、
(C)無機充填材を0〜50質量%、
(D)フェノール系熱安定剤を0〜1質量%、
(E)アミン系光安定剤を0〜1質量%、
含有するポリアミド組成物。
〔16〕
前記〔1〕乃至〔15〕のいずれか一に記載のポリアミド組成物からなる成形品。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、靭性及び色調に優れ、さらに耐変色性に優れる、ポリアミド組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
〔ポリアミド組成物〕
本実施形態のポリアミド組成物は、
(A):(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドであって、環状アミノ末端量が30〜60μ当量/gである、ポリアミドと、
(B):酸化チタンと、
を、含有するポリアミド組成物である。
【0021】
((A)ポリアミド)
(A)ポリアミドは、下記(a)及び(b)を重合させたポリアミドである。
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸。
(b)少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミン。
なお、本明細書中、ポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する重合体を意味する。
【0022】
<(a)ジカルボン酸>
(A)ポリアミドを構成する(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含む(ジカルボン酸全モル数基準)。
(a)ジカルボン酸として、脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むものを使用することにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性等を同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
【0023】
前記脂環族ジカルボン酸(以下、(a−1)脂環族ジカルボン酸、と記載することがあり、また、単に脂環式ジカルボン酸と記載することもある。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸等の、脂環構造の炭素数が3〜10、好ましくは5〜10の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
この置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、耐熱性、低吸水性、及び剛性等の観点で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であることが好ましい。
脂環族ジカルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
脂環族ジカルボン酸には、トランス体とシス体の幾何異性体が存在する。
原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス体とシス体のどちらか一方を用いてもよく、トランス体とシス体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることや、シス体の方がトランス体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとしては、トランス体/シス体比がモル比として、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス体/シス体比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。
【0025】
(a)ジカルボン酸のうちの、脂環族カルボン酸以外のジカルボン酸(以下、(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸、と記載することがある。)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0026】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸等の炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0027】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸における種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びその塩(ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0028】
(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を共重合する場合、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性等の観点で、脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましく、より好ましくは、炭素数が6以上である脂肪族ジカルボン酸を用いる。
中でも、耐熱性及び低吸水性等の観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸等が挙げられる。中でも、耐熱性等の観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(a)ジカルボン酸として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。
多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合は、50〜100モル%であり、好ましくは60〜100モル%であり、より好ましくは70〜100モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。
脂環族ジカルボン酸の割合が、少なくとも50モル%であることにより、耐熱性、低吸水性、及び剛性等に優れるポリアミドとすることができる。
(a)ジカルボン酸中の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合(モル%)は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
【0031】
(a)ジカルボン酸中の、(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸として、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、(a−1)脂環族ジカルボン酸が50〜99.9モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が0.1〜50モル%であることが好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が60〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が5〜40モル%であることがより好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が80〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸が5〜20モル%であることがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態において、(a)ジカルボン酸としては、上記ジカルボン酸として記載の化合物に限定されるものではなく、上記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。
ジカルボン酸と等価な化合物としては、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物等が挙げられる。
【0033】
<(b)ジアミン>
(A)ポリアミドを構成する(b)ジアミンは、少なくとも50モル%の、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン(以下、(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン、と記載することがある。)を含む。
(b)ジアミンとして、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを少なくとも50モル%含むものを使用することにより、強度、熱時強度、耐久性等に優れるポリアミドを得ることができる。また、成形性にも優れるポリアミドとして得ることができる。
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンとは、1,5−ジアミノペンタン骨格を有するジアミンと表すこともできる。
【0034】
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンとしては、例えば、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルペンタメチレンジアミン、3−n−ブチルペンタメチレンジアミン、2,4−ジメチルペンタメチレンジアミン、2−メチル−3−エチルペンタメチレンジアミン、及び2,2,4−トリメチルペンタメチレンジアミン等の炭素数5〜20の飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
上記ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンは、それぞれ、1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−エチル−1,5−ジアミノペンタン、3−n−ブチル−1,5−ジアミノペンタン、2,4−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−3−エチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2,4−トリメチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。
ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンとしては、耐熱性及び強度等の観点で、好ましくはペンタメチレンジアミン及び2−メチルペンタメチレンジアミンであり、より好ましくは2−メチルペンタメチレンジアミンである。
ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(b)ジアミンのうちの、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミン(以下、(b−2)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミン、と記載することがある。)としては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0036】
前記脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルヘキサメチレンジアミン、2,4−ジメチルヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミン等の炭素数2〜20の飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンには、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンは含まれない。
【0037】
前記脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミン等が挙げられる。
【0038】
前記芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン等の芳香族構造を有するジアミン等が挙げられる。
【0039】
(b−2)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミンとしては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び強度等の観点で、好ましくは脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは炭素数4〜13の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらに好ましくは炭素数6〜10の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらにより好ましくはヘキサメチレンジアミンである。
(b−2)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(b)ジアミンとして、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミン等の3価以上の多価脂肪族アミンを含んでもよい。
多価脂肪族アミンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
(b)ジアミン中の(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの割合(モル%)は少なくとも50モル%である。(b)ジアミン中の(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの割合は50〜100モル%であり、好ましくは60〜100モル%であり、より好ましくは80〜100モル%であり、さらに好ましくは85〜100モル%であり、よりさらに好ましくは90〜100モル%であり、特に好ましくは100モル%である。
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの割合が、少なくとも50モル%であること、すなわち50モル%以上であることにより、靭性及び強度に優れるポリアミドとすることができる。
(b)ジアミン中の(b−2)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミン以外のジアミンの割合(モル%)は0〜50モル%であり、好ましくは0〜40モル%であり、より好ましくは0〜20モル%であり、さらに好ましくは0〜15モル%であり、よりさらに好ましくは0〜10モル%であり、特に好ましくは0モル%である。
【0042】
(a)ジカルボン酸の添加量と(b)ジアミンの添加量とは、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、好ましくは0.9〜1.2であり、より好ましくは0.95〜1.1であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
【0043】
<(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸>
本実施形態のポリアミド組成物を構成する(A)ポリアミドは、靭性の観点で、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドであってもよい。
なお、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重(縮)合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
(A)ポリアミドが、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、並びに(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を共重合させたポリアミドである場合には、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、炭素数が4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸を用いることがより好ましい。
【0044】
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)等が挙げられる。中でも、靭性の観点で、ε−カプロラクタム、ラウロラクタム等が好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
アミノカルボン酸としては、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸等が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸等が挙げられ、アミノカルボン酸としては、パラアミノメチル安息香酸等も挙げられる。
ラクタム及び/又はアミノカルボン酸としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の添加量(モル%)は、(a)、(b)及び(c)の各モノマー全体のモル量に対して、0〜20モル%であることが好ましい。
【0046】
<末端封止剤>
(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンとからポリアミドを重合する際に、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。
末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等が挙げられ、熱安定性の観点で、モノカルボン酸、及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
モノカルボン酸としては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環族モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン等が挙げられる。
モノアミンとしては、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンの組み合わせは、特に限定されるものではなく、例えば、(a−1)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸及び(b−1)少なくとも50モル%の2−メチルペンタメチレンジアミンの組み合わせが好ましく、(a−1)少なくとも50モル%の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び(b−1)少なくとも50モル%の2−メチルペンタメチレンジアミンがより好ましい。
これらの組み合わせの(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンをポリアミドの成分として重合させることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性、及び剛性に優れ、高い融点を有するポリアミドとすることができる。
【0050】
<モノマーとポリアミドのトランス異性体比率>
本実施形態のポリアミド組成物を構成する(A)ポリアミドにおいて、脂環族ジカルボン酸構造は、トランス異性体及びシス異性体の幾何異性体として存在する。
(A)ポリアミド中における脂環族ジカルボン酸構造のトランス異性体比率は、(A)ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸全体中のトランス異性体の比率を表し、トランス異性体比率は、好ましくは50〜85モル%であり、より好ましくは50〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
(A)ポリアミドを重合するときのモノマーである(a−1)脂環族ジカルボン酸としては、トランス体/シス体比(モル比)が50/50〜0/100である脂環族ジカルボン酸を用いることが好ましいが、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンの重合により得られるポリアミドとしては、トランス異性体比率が50〜85モル%であることが好ましい。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、靭性及び剛性に優れるという特徴に加えて、高いガラス転移温度(Tg)による熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性を同時に満足するという性質を持つ。
ポリアミドのこれらの特徴は、(a)少なくとも50モル%以上の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、(b)少なくとも50モル%以上の2−メチルペンタメチレンジアミンの組み合わせからなり、かつトランス異性体比率が50〜85モル%であるポリアミドで特に顕著である。
本実施形態において、ポリアミドのトランス異性体比率は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0051】
((A)ポリアミドの製造方法)
本実施形態のポリアミド組成物を構成する(A)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミンと、を重合させる工程を含む、ポリアミドの製造方法により製造することができる。
(A)ポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
(A)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下に例示するように種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)、
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)、
3)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある。)、
4)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある。)、
5)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物を固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と略称する場合がある。)、
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いたて重合させる方法(以下、「溶液法」と略称する場合がある。)。
【0052】
(A)ポリアミドの製造方法としては、好ましくは1)熱溶融重合法、2)熱溶融重合・固相重合法、4)プレポリマー・固相重合法、及び5)一段固相重合法であり、より好ましくは、2)熱溶融重合・固相重合法及び4)プレポリマー・固相重合法である。
(A)ポリアミドの製造方法において、ポリアミドの分子量を向上させる点で、固相重合を行うことが好ましく、また、固相重合を行いポリアミドの分子量を向上させる方法は、熱溶融重合法で分子量を向上させるよりも、ポリアミドの環状アミノ末端量を所定の量に制御することができる点で好適である。
【0053】
(A)ポリアミドの製造方法において、熱溶融重合を行う際には、重合時に添加物を加えておくことが好適である。
重合時の添加物としては、ポリアミドの原料である(b)ジアミンが挙げられる。
重合時の添加物としての(b)ジアミンの添加量は、等モル量のジカルボン酸・ジアミン塩の製造に用いた(b)ジアミンに対して、さらに加えるジアミンの量を意味し、好ましくは0.1〜10モル%であり、より好ましくは0.5〜5モル%であり、さらに好ましくは1.5〜4.5モル%であり、よりさらに好ましくは2.6〜4モル%である。
(b)ジアミンの添加量が上記範囲内であることにより、環状アミノ末端量を、また、アミノ末端量を目的の値に制御することができる。
【0054】
重合時の添加物としては、蟻酸及び酢酸等の有機酸等を添加することもできる。蟻酸等を加えることでポリマー末端の環状アミノ末端量の制御をより容易にすることができる場合がある。
【0055】
(A)ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。
熱溶融重合法においては、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及び、ニーダー等の押出機型反応器等を用いて重合反応を行うことができる。
【0056】
(A)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
バッチ式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒として、ポリアミド成分((a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び、必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧を開始する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。反応終了時の反応温度が、最高温度になるように温度制御することが好ましく、最高温度は280〜400℃であることが好ましい。窒素等の不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
【0057】
(A)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、連続式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
連続式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒として、ポリアミド成分((a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び、必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で、約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液を約200〜400℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、その後、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。反応終了時の反応温度が、最高温度になるように温度制御することが好ましく、最高温度は280〜400℃であることが好ましい。ポリアミド溶融物は押し出されてストランドとなり、冷却、カッティングされペレットとなる。
【0058】
熱溶融重合における反応温度の最高温度は、好ましくは280〜400℃であり、より好ましくは300℃を超える温度である。また、該最高温度が360℃以下であることがより好ましい。熱溶融重合において反応温度を上記範囲内の最高温度にすることでポリアミドの熱分解を抑制しながら、環状アミノ末端の量を容易に制御できる。
【0059】
(A)ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載する固相重合法によりポリアミドを製造することができる。
固相重合法としては、例えば、タンブラー型の反応器、振動乾燥機型の反応器、ナウターミキサー型の反応器、及び攪拌型の反応器等を用いて行うことができる。
ポリアミドのペレット、フレーク、又は粉体を上記反応器に入れ、窒素、アルゴン、及びヘリウム等の不活性ガスの気流下又は減圧下で、また、反応器上部で減圧に内部気体を引きながら反応器下部から不活性ガスを供給してもよく、ポリアミドの融点以下の温度で加熱することによって、ポリアミドの分子量は向上する。固相重合の反応温度は、好ましくは100〜350℃であり、より好ましくは120〜300℃であり、さらに好ましくは150〜270℃である。
不活性ガスの気流下又は減圧下で、また、反応器上部で減圧に内部気体を引きながら反応器下部から不活性ガスを供給してもよく、加熱を停止し、好ましくは0〜100℃、より好ましくは室温から60℃に反応温度が低下してから、反応機よりポリアミドを取り出して得ることができる。
【0060】
(A)ポリアミドの製造方法としては、好ましくは反応温度の最高温度が300℃を超える温度で熱溶融重合を行い、ジカルボン酸とジアミン(必要に応じて、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を含む)とを重合させることが好ましく、また、熱溶融重合法又はプレポリマー法で得られたポリアミドを、ポリアミドの融点以下の反応温度で固相重合により重合させて得られるポリアミドの製造方法であることが好ましい。これらの製造方法により、環状アミノ末端の量を容易に制御しながら、高分子量化でき、強度、熱時強度、耐久性等に優れるポリアミドとすることができる。
【0061】
(A)ポリアミドのポリマー末端は、1)アミノ末端、2)カルボキシル末端、3)環状アミノ末端、4)末端封止剤による末端、及び5)その他の末端のいずれかである。
ポリアミドのポリマー末端とは、ジカルボン酸とジアミン(必要に応じて、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を含む)とが、アミド結合により重合した重合体のポリマー鎖の末端部分を意味する。
【0062】
1)アミノ末端は、ポリマー末端がアミノ基(−NH2基)であることを意味し、ポリマー鎖の末端が原料のジアミンに由来する。
2)カルボキシル末端は、ポリマー末端がカルボキシル基(−COOH基)であることを意味し、ポリマー鎖の末端が原料のジカルボン酸に由来する。
3)環状アミノ末端は、ポリマー末端が環状アミノ基であることを意味する。
環状アミノ基は、下記式(1)で表される基である。
【0063】
【化1】

【0064】
上記式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基、エチル基、あるいはt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基を示す。
環状アミノ末端は、原料のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの脱アンモニア反応により環化して形成されるピペリジン構造であってもよく、その場合、Rは、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンのペンタメチレン骨格以外の側鎖部分のアルキル基を示す。上記式においては、Rは一置換として例示しているが、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの側鎖部分に合致するように、二置換であってもよく、三置換以上の多置換であってもよい。
【0065】
4)末端封止剤による末端は、重合時に添加した末端封止剤で、ポリマー末端が封止されていることを意味し、モノカルボン酸及びモノアミン等の末端封止剤に由来する構造を有する。
5)その他の末端は、上述した1)〜4)に分類されないポリマー末端であり、例えば、アミノ末端が脱アンモニア反応して生成した末端及びカルボキシル末端が脱炭酸反応して生成した末端等が挙げられる。
【0066】
(A)ポリアミドの環状アミノ末端量は30〜60μ当量/gであり、好ましくは35〜55μ当量/gである。
環状アミノ末端量が上記範囲内であることにより、本実施形態のポリアミド組成物の靭性、色調及び耐変色性の向上を図ることができる。
【0067】
環状アミノ末端量は、ポリアミド1g中に存在する環状アミノ末端のモル数で表す。
環状アミノ末端量は、下記実施例に記載するように、1H−NMRを用いて測定することができる。
例えば、ピペリジン環の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素とポリアミド主鎖のアミド結合の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素の積分比を基に算出することができる。
【0068】
環状アミノ末端は、(1)ピペリジン環を有する環状アミン化合物とカルボキシル末端とが脱水反応することによって生成するか、(2)ポリマー末端のアミノ末端がポリマー分子内で脱アンモニア反応することによって生成する。
(1)ピペリジン環を有する環状アミン化合物とカルボキシル末端とが脱水反応することによって生成する環状アミノ末端は、(1a)ピペリジン環を有する環状アミン化合物を末端封止剤として、重合反応系中に添加することでも生成可能であり、(1b)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンがモノマー分子内で脱アンモニア反応することにより重合反応系中で生成する環状アミン化合物からも生成可能である。
【0069】
(A)ポリアミドの環状アミノ末端は、ペンタメチレンジアミン骨格を有する原料のジアミンの環化反応に由来する末端であることが好ましい。すなわち、前記(1b)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンがモノマー分子内で脱アンモニア反応することにより重合反応系中で生成する環状アミン化合物とカルボキシル基とが脱水反応することによって得られるか、前記(2)ポリマー末端のアミノ末端がポリマー分子内で脱アンモニア反応することによって得られることが好ましい。
末端封止剤としてピペリジン環を有する環状アミン化合物を重合初期に添加することは低分子量のカルボキシル末端を重合初期の段階で封止することになるため、ポリアミドの重合反応速度を低くし、結果として高分子量体が得られにくい原因になるのに対して、反応の途中で生成するピペリジン環を有する環状アミンであれば、ある程度高分子量化した重合後期に封止することになるためポリアミドの高分子量体を得ることはより容易になる。
高分子量化した重合後期に、末端封止剤としてピペリジン環を有する環状アミン化合物を添加することも可能であるが、高圧状態にある重合系内に添加する設備が必要になることから、上記(1b)や(2)の製法が簡便であることから好ましい。
【0070】
重合系内でペンタメチレンジアミン骨格を有する原料のジアミンから環状アミノ末端を生成させ、環状アミノ末端量を本発明の範囲に調整するためには、重合温度、反応時間や、環状アミンを生成するジアミンの添加量等を適宜調整することで制御する方法が有効である。
(A)ポリアミドの環状アミノ末端量を本発明の範囲にするためには、ピペリジン環を有する環状アミンの生成を促す必要があり、ポリアミドの重合の反応温度は、好ましくは280〜400℃であり、300℃を超えることがより好ましく、320℃以上がさらに好ましい。ポリアミドの重合の反応温度は、360℃以下であることが好ましい。
環状アミノ末端の生成を促進させる観点から反応温度は280℃以上が好ましく、一方で過剰な環状アミノ末端の生成を抑制させる観点から400℃以下が好ましい。
また、反応時間の調整も有効な方法であり、特に300℃を超える反応温度の時間を適宜調整することが特に有効である。
【0071】
(A)ポリアミドのアミノ末端量は、好ましくは20μ当量/g以上であり、より好ましくは20〜100μ当量/gであり、さらに好ましくは25〜70μ当量/gである。
アミノ末端量が上記範囲内であることにより、(A)ポリアミドの耐加水分解性及び熱滞留安定性を向上させることができる。
【0072】
アミノ末端量は、ポリアミド1g中に存在するアミノ末端のモル数で表す。
アミノ末端量は、下記実施例に記載する方法を用いて測定することができる。
【0073】
(A)ポリアミドの分子量としては、25℃の硫酸相対粘度ηrを指標とし、25℃の硫酸相対粘度ηrが2.3以上であることが好ましい。より好ましくは2.3〜7.0であり、さらに好ましくは2.5〜5.5であり、さらにより好ましくは2.8〜4.0である。
25℃の硫酸相対粘度ηrが2.3以上であることで、本実施形態のポリアミド組成物は、強度、耐久性等に優れたものとなる。(A)ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrが7.0以下であると、流動性に優れるポリアミド組成物とすることができる。
【0074】
25℃の硫酸相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6920に準じて98%硫酸中、25℃で測定することができる。
【0075】
(A)ポリアミドの融点は、耐熱性の観点から、Tm2が270〜350℃であることが好ましい。融点Tm2は、好ましくは270℃以上であり、より好ましくは275℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。また、融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。
ポリアミドの融点Tm2が270℃以上であることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。また、ポリアミドの融点Tm2が350℃以下であることにより、押出、成形等の溶融加工でのポリアミドの熱分解等を抑制することができる。
【0076】
(A)ポリアミドの融点(Tm1又はTm2)の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
【0077】
ポリアミド組成物中の(A)ポリアミドの配合量は、ポリアミド組成物100質量%に対して、好ましくは30〜95質量%であり、より好ましくは35〜80質量%であり、さらに好ましくは35〜70質量%である。上記の範囲内の場合、強度、靭性、色調、耐変色性等をバランス良く保つことができる。
【0078】
((B)酸化チタン)
本実施形態におけるポリアミド組成物に含有されている(B)酸化チタンについて説明する。
(B)酸化チタンとしては、例えば、酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti23)、及び二酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。中でも、二酸化チタンが好ましい。
これら酸化チタンの結晶構造に特に制限はないが、耐光性の観点から好ましくはルチル型である。
(B)酸化チタンの数平均粒子径は、靭性、押出加工性の観点から、0.1〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15〜0.4μmであり、さらに好ましくは0.15〜0.3μmである。
(B)酸化チタンの数平均粒子径は、電子顕微鏡写真法により測定することができる。例えば、ポリアミド組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上の酸化チタンを任意に選択し、電子顕微鏡で観察して、これらの粒子径を測定し、数平均粒子径を算出することにより求められる。
【0079】
(B)酸化チタンは、例えば、硫酸チタン溶液を加水分解するいわゆる硫酸法や、あるいはハロゲン化チタンを気相酸化するいわゆる塩素法によって得ることができ、特に制限は無い。
【0080】
(B)酸化チタン粒子は、表面を無機コーティング及び/又は有機コーティングすることが好ましい。具体的には、最初に無機コーティングを行い、次に無機コーティング上に有機コーティングを行うことが好ましい。
なお、(B)酸化チタン粒子の表面コーティングは前記例に限定されず、当該分野で公知のいかなる方法を使用してコーティングされてもよい。
【0081】
前記無機コーティングは、金属酸化物を含むことが好ましい。
前記有機コーティングは、カルボン酸類、ポリオール類、アルカノールアミン類及び/又は有機ケイ素化合物の1つ又は複数を含むことが好ましい。特に耐光性、フィルム加工性の観点から、ポリオール類、有機ケイ素化合物がより好ましく、加工時の発生ガスの低減の観点から、有機ケイ素化合物がさらに好ましい。
【0082】
前記有機コーティング材料のカルボン酸類としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、サリチル酸、リンゴ酸及びマレイン酸が挙げられる。これらは、カルボン酸類のエステルや金属塩であってもよい。金属塩としては、アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。
【0083】
前記有機コーティング材料のアルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が挙げられ、これらの誘導体であってもよい。誘導体としては、酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0084】
前記有機コーティング材料のポリオール類としては、例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、ペンタエリスリトール等が挙げられ、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンが好ましい。
【0085】
前記有機コーティング材料の有機ケイ素化合物としては、例えば、オルガノシラン類、オルガノポリシロキサン類、オルガノシラザン類が挙げられる。
【0086】
オルガノシラン類としては、例えば、(a)アミノシラン(アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等)、(b)エポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等)、(c)メタクリルシラン(γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等)、(d)ビニルシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、(e)メルカプトシラン(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)、(f)クロロアルキルシラン(3−クロロプロピルトリエトキシシラン等)、(g)アルキルシラン(n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等)、(h)フェニルシラン(フェニルトリエトキシシラン等)、(i)フルオロアルキルシラン(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等)等、及びそれらの加水分解生成物が挙げられる。
【0087】
また、オルガノポリシロキサン類としては、例えば、(a)ストレート型ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等)、(b)変性型ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン、側鎖又は両末端アミノ変性ポリシロキサン、側鎖又は両末端又は片末端エポキシ変性ポリシロキサン、両末端又は片末端メタクリル変性ポリシロキサン、側鎖又は両末端カルボキシル変性ポリシロキサン、側鎖又は両末端又は片末端カルビノール変性ポリシロキサン、両末端フェノール変性ポリシロキサン、側鎖又は両末端メルカプト変性ポリシロキサン、両末端又は側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル変性ポリシロキサン、側鎖メチルスチリル変性ポリシロキサン、側鎖高級カルボン酸エステル変性ポリシロキサン、側鎖フルオロアルキル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル・カルビノール変性ポリシロキサン、側鎖アミノ・両末端カルビノール変性ポリシロキサン等)等、又はそれらの共重合体が挙げられる。
【0088】
さらに、オルガノシラザン類としては、例えば、ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等が挙げられる。
【0089】
前記有機ケイ素化合物の中でも、疎水性の官能基、例えば、メタクリル基(−OCOC(CH3)=CH2)、ビニル基(−CH=CH2)、アルキル基(−R)、アリール基(−Ph、−Ar等)、カルボン酸エステル基(−OCOR)、アシル基(−COR)、ポリエーテル基(−(R1O)n(R2O)m3)、フッ素含有基(−(CH2nCF3、−(CF2nCF3等)等を有する有機ケイ素化合物がより好ましく、疎水性官能基を有するオルガノシラン類又はオルガノポリシロキサン類であればさらに好ましい。
なお、R1、R2、R3は、いずれもアルキル基を示す。
また、上述した有機コーティング材料として使用可能な有機ケイ素化合物の中でも、炭素数が4〜10のアルキルシラン、その加水分解生成物、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサンから選ばれる少なくとも一種であればいっそう好ましい。アルキルシランとして、アルキル基の中で炭素数が最大のものが6(ヘキシル基)であるアルキルシランを用いると、より一層分散性と耐熱性とに優れる。
なお、前記オルガノシラン類の加水分解生成物とは、オルガノシラン類が有する加水分解性基が加水分解されてシラノールになったもの、シラノール同士が縮重合してダイマー、オリゴマー、ポリマーになったものを言う。
【0090】
前記無機コーティング材料としては、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、リン、亜鉛、希土類元素等の酸化物及び水和酸化物を含む金属酸化物及び水和酸化物が挙げられる。中でも好ましい金属酸化物は、耐光性の観点からシリカ、アルミナ、ジルコニアであり、より好ましくはシリカ、アルミナである。これら無機コーティングは1種類の金属酸化物であってもよいし、2種類以上の金属酸化物の組み合わせであってもよい。
【0091】
前記無機コーティングの塗布量は、(B)酸化チタン全量100質量%に対し、0.25〜50質量%であることが好ましく、0.25〜10質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。
(B)酸化チタンは、強熱減量に特に制限はないが、酸化チタン全量100質量%に対し、0.7〜2.5質量%の範囲であることが、押出加工性の観点から好ましい。より好ましくは0.7〜2.0質量%であり、さらに好ましくは0.8〜1.5質量%である。ここで、強熱減量とは、酸化チタンを120℃で4時間乾燥させて、表面の付着水分を除去した後、650℃にて2時間加熱処理した際の重量減少率により算出することができる。
【0092】
(B)酸化チタンの有機及び/又は無機コーティングの材料は、上述した各種材料を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
本実施形態のポリアミド組成物中の(B)酸化チタンの配合量は、ポリアミド組成物100質量%に対して、好ましくは5〜45質量%であり、より好ましくは10〜45質量%であり、さらに好ましくは20〜45質量%である。上記の範囲内の場合、靭性、色調、耐変色性等をバランス良く保つことができる。
【0094】
((C)無機充填材)
本実施形態のポリアミド組成物においては、強度、剛性等の機械物性の観点から、(C)無機充填材をさらに含有していてもよい。
(C)無機充填材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維や炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、及びアパタイト等が挙げられる。
これらの中でも、ガラス繊維やチタン酸カリウム繊維、タルク、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群から選ばれる1種以上であることが、機械的強度、外観、白色度等の観点から好ましい。
前記ガラス繊維や炭素繊維は、断面が真円状でも扁平状でもよい。扁平状の断面としては、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、長手方向の中央部がくびれた繭型等が挙げられる。また、扁平率は、繊維断面の長径をD2、繊維の断面の短径をD1とするとき、D2/D1で表される。(真円状は扁平率約1となる)
【0095】
前記ガラス繊維や炭素繊維の中でも、優れた機械的強度特性をポリアミド組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであり、かつポリアミド樹脂組成物中において、重量平均繊維長が100〜750μmであり、重量平均繊維長と数平均繊維径とのアスペクト比(L/D)が10〜100であるものが、さらに好ましく用いられる。
ここで、数平均繊維径及び重量平均繊維長の測定方法としては、例えば、ポリアミド組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から、例えば100本以上のガラス繊維や炭素繊維を任意に選択し、SEMで観察して、これらのガラス繊維や炭素繊維の繊維径を測定することにより数平均繊維径を算出するとともに、倍率1000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求める方法がある。
【0096】
また、ポリアミド組成物を板状に成形した成形品の反りの低減、耐熱性、靭性、低吸水性、耐熱エージング性の観点から、(C)無機充填材、特にガラス繊維や炭素繊維の断面形状の扁平率は、1.5以上であることが好ましい。より好ましくは1.5〜10.0、さらに好ましくは2.5〜10.0であり、さらにより好ましくは3.1〜6.0である。扁平率が極端に大きい場合、他の成分との混合の他、混練、成形等の処理の際、破砕されてしまう場合があり、所望する効果が小さくなる場合がある。
前記扁平率が1.5以上のガラス繊維や炭素繊維の太さは、任意であるが、繊維の断面の短径D1が0.5〜25μm、繊維の断面の長径D2が1.25〜250μmであることが好ましい。細すぎる場合は繊維の紡糸が困難な場合があり、太すぎる場合は樹脂との接触面積の減少等により成形品の強度が低下する場合がある。短径D1は3μm以上が好ましい。さらには、短径D1が3μm以上でかつ扁平率が3より大きい値であることが好ましい。
前記扁平率が1.5以上のガラス繊維や炭素繊維は、例えば、特公平3−59019号公報、特公平4−13300号公報、特公平4−32775号公報等に記載の方法で製造することができる。特に、底面に多数のオリフィスを有するオリフィスプレートにおいて、複数のオリフィス出口を囲み、当該オリフィスプレート底面より下方に延びる凸状縁を設けたオリフィスプレート、又は、単数もしくは複数のオリフィス孔を有するノズルチップの外周部先端から下方に延びる複数の凸状縁を設けた異形断面ガラス繊維紡糸用ノズルチップを使用して製造された扁平率が1.5以上のガラス繊維及び炭素繊維が好ましい。これらの(C)無機充填材は、繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
【0097】
上記の(C)無機充填材には、シランカップリング剤等により表面処理を施してもよい。
前記シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。特に上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0098】
また、上記のガラス繊維や炭素繊維については、さらに集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩、並びにカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体を含む共重合体等を含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ポリアミド組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせがより好ましい。
【0099】
ガラス繊維や炭素繊維は、上記の集束剤を、公知のガラス繊維や炭素繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維や炭素繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することによって連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。
かかる集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。ガラス繊維や炭素繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、ポリアミド組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、又はストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0100】
ガラス繊維や炭素繊維以外の(C)無機充填材としては、強度及び剛性、表面外観の観点から、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、クレーが好ましく使用できる。より好ましくは、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルクであり、さらに好ましくは、ウォラストナイト、マイカであり、さらにより好ましくはウォラストナイトである。これら無機充填材は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
ガラス繊維や炭素繊維以外の(C)無機充填材の粒径は、靭性、表面外観の観点で、0.01〜38μmが好ましく、0.03〜30μmがより好ましく、0.05〜25μmがさらに好ましく、0.1〜20μmがさらにより好ましく、0.15〜15μmがよりさらに好ましい。
(C)無機充填材の平均粒径を38μm以下にすることにより、靭性、表面外観に優れるポリアミド組成物にすることができる。また、0.1μm以上にすることにより、コスト面、粉体のハンドリング面と物性のバランスに優れる。
また、(C)無機充填材の中でも、ウォラストナイトのような針状の形状を持つものに関しては、平均繊維径を平均粒径とする。さらに、断面が円でない場合はその長さの最大値を繊維径とみなし、当該繊維径から平均繊維径を算出し、これを平均粒径とみなす。
【0102】
針状の形状を持つものの重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)に関しては、成形品外観、射出成形機等の金属性パーツの磨耗の観点から、1.5〜10が好ましく、2.0〜5がさらに好ましく、2.5〜4がよりさらに好ましい。
【0103】
また、ガラス繊維や炭素繊維以外の(C)無機充填材は通常の表面処理剤、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤等で表面処理を施したものを使用しても差し支えない。シラン系カップリング剤としてはエポキシシランカップリング剤を好ましく挙げることができる。また、ポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との混合物及び/又はポリアルコキシシロキサンとエポキシシランカップリング剤との反応物も好ましく使用することができる。このような表面処理剤は、予め無機充填材表面に処理することもできるし、(A)ポリアミドと(C)無機充填材を混合する際に添加してもかまわない。また、好ましい表面処理剤の量は、(C)無機充填材に対して0.05質量%〜1.5質量%の範囲である。
【0104】
本実施形態のポリアミド組成物中の(C)無機充填材の配合量は、ポリアミド組成物100質量%に対して、好ましくは0〜50質量%であり、より好ましくは1〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜40質量%である。上記の範囲内の場合、強度、剛性と靭性をバランス良く保つことができる。
【0105】
((D)フェノール系安定剤)
本実施形態のポリアミド組成物においては、熱安定性の観点から、(D)フェノール系熱安定剤をさらに含有していてもよい。
(D)フェノール系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、ヒンダートフェノール化合物が挙げられる。ヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂や繊維に耐熱性や耐光性を付与する性質を有する。
ヒンダードフェノール化合物としては、以下に制限されないが、例えば、N,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、耐熱エージング性向上の観点から、N,N'−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]が好ましい。
【0106】
本実施形態のポリアミド組成物中の(D)フェノール系熱安定剤の配合量は、ポリアミド組成物100質量%に対して、好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0107】
本実施形態のポリアミド組成物においては、光安定性の観点から、(E)アミン系光安定剤をさらに含有していてもよい。
((E)アミン系光安定剤)
(E)アミン系光安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、α,α'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β',β'−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
これらアミン系光安定剤の中でも、分子量が2,000未満の低分子型の材料が、光安定性のより一層の向上の観点から好ましい。より好ましくは、分子量は1,000未満である。
【0109】
また、アミン系光安定剤は、N−H型(アミノ基に水素が結合していることを示す)、N−R型(アミノ基にアルキル基が結合していることを示す)、NOR型(アミノ基にアルコキシ基が結合していることを示す)等のタイプがあるが、中でもN−H型であることが光安定性のより一層の向上の観点から好ましい。
【0110】
これらアミン系光安定剤の中でも、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートが好ましく、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラートがより好ましく、N,N’−ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−1,3−ベンゼンジカルボキシアミドがさらに好ましい。
【0111】
本実施形態のポリアミド組成物中の(E)アミン系光安定剤の配合量は、ポリアミド組成物100質量%に対して好ましくは0〜1質量%であり、より好ましくは0.01〜1質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。上記の範囲内の場合、光安定性、耐熱エージング性を一層向上させることができ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0112】
(リン系熱安定剤)
本実施形態のポリアミド組成物においては、本実施形態の目的を損なわない範囲で、リン系熱安定剤を配合することができる。
リン系熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4'−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))・1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4'−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンジホスファイトが挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
上記の列挙したものの中でも、耐熱エージング性の一層の向上及び発生ガスの低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
前記ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、以下に制限されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−フェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−メチル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−エチルヘキシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−イソデシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ラウリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−イソトリデシル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−シクロヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ベンジル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−エチルセロソルブ−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ブチルカルビトール−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−オクチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2,6−ジ−t−ブチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2,4−ジ−t−ブチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2,4−ジ−t−オクチルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル−2−シクロヘキシルフェニル−ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル−フェニル−ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
上記で列挙したペンタエリスリトール型ホスファイト化合物の中でも、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2、6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
【0115】
リン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のリン系熱安定剤の配合量は、ポリアミド組成物100質量%に対して、好ましくは0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.1〜1質量%である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらに発生ガス量を低減させることができる。
【0116】
(リン化合物)
本実施形態のポリアミド組成物においては、本実施形態の目的を損なわない範囲で、リン化合物を配合することができる。
リン化合物としては、以下に制限されないが、例えば、1)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びそれらの分子内及び/又は分子間縮合物、2)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びそれらの分子内及び/又は分子間縮合物の金属塩類等、からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
前記1)のリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びそれらの分子内及び/又は分子間縮合物とは、例えば、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸等が挙げられる。
前記2)リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、及びそれらの分子内及び/又は分子間縮合物の金属塩類とは、前記1)のリン化合物と周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウムとの塩が挙げられる。
【0117】
好ましいリン化合物としては、リン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類あるいは次亜リン酸金属塩類、及びそれらの分子内及び/又は分子間縮合物から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸から選ばれるリン化合物と、周期律表第1族及び第2族、マンガン、亜鉛、アルミニウムから選ばれる金属との塩、及びそれらの分子内及び/又は分子間縮合物である。さらに好ましくは、リン酸、亜リン酸及び次亜リン酸から選ばれるリン化合物と周期律表第1族及び第2族から選ばれる金属とからなる金属塩であり、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カルシウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム等が挙げられ、これらの無水塩、水和物が挙げられる。これらの中でも次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウムがさらにより好ましい。
リン化合物を用いる場合、本実施形態のポリアミド組成物中のリン化合物の配合量は、ポリアミド組成物100質量%に対して好ましくは0.01〜1質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。上記の範囲内の場合、耐熱変色性を一層向上させることができる。
【0118】
(その他の成分)
上述した成分の他に、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の
他の成分を添加してもよい。
例えば、顔料及び染料等の着色剤(着色マスターバッチ含む)、離型剤、難燃剤、フィブリル化剤、潤滑剤、蛍光増白剤、可塑化剤、銅化合物、ハロゲン化アルカリ金属化合物、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填剤、補強剤、展着剤、結晶核剤、ゴム、強化剤並びに他のポリマー等を混合してもよい。
ここで、上記他の成分は、それぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本実施形態の効果をほとんど損なわない好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0119】
〔ポリアミド組成物の製造方法〕
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法は、前記(A)ポリアミドと(B)酸化チタンとを混合する工程を有する方法であれば、特に限定されるものではない。
(A)ポリアミドと(B)酸化チタンの混合方法として、例えば、(A)ポリアミドと(B)酸化チタンとを、タンブラー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、溶融混練機に供給し、混練する方法や、単軸又は二軸押出機で溶融状態にしたポリアミドに、サイドフィダーから酸化チタンを配合する方法等が挙げられる。
(C)無機充填材を配合する場合も同様の方法が用いることができ、(A)ポリアミド等と混合して溶融混練機に供給して供給する方法や、単軸又は二軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミドと(B)酸化チタンに、サイドフィダーから(C)無機充填材を配合する方法等が挙げられる。
ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃程度であることが好ましく、溶融混練時間は、0.25〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は二軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロール等の溶融混練機を用いることができる。
【0120】
〔ポリアミド組成物の物性〕
本実施形態のポリアミド組成物の25℃の硫酸相対粘度ηr、融点Tm2は、前記(A)ポリアミドにおける測定方法と同様の方法により測定することができる。
すなわち、25℃の硫酸相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6920に準じて98%硫酸中、25℃で測定することができる。
融点(Tm1又はTm2)の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。融点の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSC等が挙げられる。
また、ポリアミド組成物における測定値が、前記ポリアミドの測定値として好ましい範囲と同様の範囲にあることにより、色調、耐変色性、及び成形性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
【0121】
〔ポリアミド組成物の成形体〕
本実施形態のポリアミド組成物の成形品は、公知の成形方法、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸等、一般に知られているプラスチック成形方法を用いて得ることができる。
本実施形態のポリアミド組成物から得られる成形品は、靭性、色調、耐変色性に優れる。したがって、本実施形態のポリアミド組成物は、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、及び日用及び家庭品用等の各種部品材料として、また、押出用途等に好適に用いることができる。
自動車用としては、特に限定されるものではなく、例えば、吸気系部品、冷却系部品、燃料系部品、内装部品、外装部品、及び電装部品等に用いられる。中でも内装、外装部品に好適である。
内装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、及びトリム等が挙げられる。
外装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパー、及びドアミラーステイ、ルーフレール等が挙げられる。
電気及び電子用としては、特に限定されるものではなく、例えば、コネクター、スイッチ、リレー、プリント配線板、電子部品のハウジング、コンセント、ノイズフィルター、コイルボビン、及びモーターエンドキャップ等に用いられる。
産業機器用としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギヤ、カム、絶縁ブロック、バルブ、電動工具部品、農機具部品、エンジンカバー等に用いられる。
日用及び家庭品用としては、特に限定されるものではなく、例えば、ボタン、食品容器、及びオフィス家具等に用いられる。
押し出し用途としては、特に限定されるものではなく、例えば、フィルム、シート、フィラメント、チューブ、棒、及び中空成形品等に用いられる。
【実施例】
【0122】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。なお、本実施例において、1kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
【0123】
[原材料]
本実施例において下記化合物を用いた。
〔(A)ポリアミド原料〕
<(a)ジカルボン酸>
(a−1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)(商品名:1,4−CHDA HPグレード(トランス体/シス体=25/75)(イーストマンケミカル社製))
(a−2)テレフタル酸(TPA)(和光純薬工業社製)
(a−3)アジピン酸(ADA)(和光純薬工業社製)
(a−4)ドデカン二酸(C12DA)(和光純薬工業社製)
<(b)ジアミン>
(b−1)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MPD)(東京化成工業製)
(b−2)ペンタメチレンジアミン(PMD)(和光純薬工業社製)
(b−3)ヘキサメチレンジアミン(HMD)(和光純薬工業社製)
<(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸>
(c−1)ε−カプロラクタム(CPL)(和光純薬工業社製)
【0124】
〔(B)酸化チタン:ルチル型酸化チタン〕
数平均粒子径:0.21μm
コーティング:アルミナ、シリカ、シロキサン化合物
強熱減量:1.21質量%
【0125】
〔(C)無機充填材:ガラス繊維〕
商品名:ECS 03T−275H(日本電気硝子社製)
平均繊維径10μmφ、カット長3mm
【0126】
〔(D)フェノール系熱安定剤〕
商品名:IRGANOX(登録商標)1098(BASF社製)
【0127】
〔(E)アミン系光安定剤〕
商品名:Nylostab(登録商標)S−EED(クラリアント社製)
分子量:443
【0128】
〔(F)リン化合物〕
商品名:次亜リン酸ナトリウム一水和物(和光純薬工業社製)
【0129】
〔(G)結晶核剤:窒化ホウ素〕
商品名:デンカボロンナイトライドSP−2(電気化学工業社製)
【0130】
[ポリアミド成分量の計算]
(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全ての(a)ジカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンのモル%は、(原料モノマーとして加えた(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンのモル数/原料モノマーとして加えた全ての(b)ジアミンのモル数)×100として、計算により求めた。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた、全ての(a)ジカルボン酸のモル数+(b)全てのジアミンのモル数+(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
なお、上記式により計算する際に、分母及び分子には、溶融重合時の添加物として加えた(b−1)ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンのモル数は含まれない。
【0131】
[物性の測定方法]
<(1)融点Tm1、Tm2(℃)>
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とし、昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最大ピーク温度を融点Tm2(℃)とした。
【0132】
<(2)25℃の硫酸相対粘度ηr>
JIS−K6920に準じて実施した。具体的には、98%硫酸を用いて、ポリマー溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作成し、25℃の温度条件下で測定した。
【0133】
<(3)環状アミノ末端量(μ当量/g)>
環状アミノ末端量は、1H−NMRを用いて測定した。
窒素の複素環の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素のシグナル(化学シフト値3.5〜4.0ppm)とポリアミド主鎖のアミド結合の窒素原子に隣接する炭素に結合する水素のシグナル(化学シフト値3.0〜3.5ppm)の積分比を用いて環状アミノ末端量を算出した。その際に使用する、ポリマー末端の総末端数はGPC(東ソー株式会社製、HLC−8020、ヘキサフルオロプロパノール溶媒、PMMA標準サンプル(ポリマーラボラトリー社製)換算)で測定したMnを用いて、2/Mn×1,000,000として計算した。
【0134】
<(4)酸化チタンの強熱減量>
酸化チタンを120℃で4時間乾燥させて、表面の付着水分を除去した後、デシケーター中で30分間静置し冷却した。続いて、磁性るつぼに約10g精秤し、650℃の電気炉にて2時間加熱した。加熱後、デシケーター中で30分間静置し冷却した後、重量を測定した。加熱前後の重量減少率を算出し、強熱減量とした。
【0135】
<(5)曲げたわみ量(mm)>
実施例又は比較例で得られたポリアミド組成物ペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度を120℃、溶融樹脂温度を(A)ポリアミドのTm2+20℃に設定し、長さ128mm×巾12.8mm×厚さ0.7mmの短冊状成形片(試験片)を成形した。
得られた試験片を用いて、スパン間距離28mm、圧縮速度5mm/minにて曲げ試験を行い、最大荷重時のたわみ量を測定した。
【0136】
<(6)白色度、色調(b値)>
実施例又は比較例で得られたポリアミド組成物ペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度を120℃、溶融樹脂温度を(A)ポリアミドのTm2+20℃に設定し、長さ60mm×巾60mm×厚さ1.0mmの成形片を成形した。
得られた成形片を、分光色差計[SE6000:日本電色工業株式会社製]を用いて、JIS Z8730に準拠し、ハンターの色差式による明度(L値)、赤色度(a値)、黄色度(b値)を求め、白色度(W値)を算出した。
W=100−[(100−L)+a+b1/2
なお、後述する実施例13〜15、比較例11については、押出成形により得られたシートをそのまま用いて色調を測定し、白色度を算出した。
【0137】
<(7)初期の白色度、色調(b値)>
上記(6)のようにして得られた成形片を23℃で24時間静置した後、色差計により色調を測定し、白色度を算出した。
なお、後述する実施例13〜15、比較例11については、押出成形により得られたシートをそのまま用いて色調を測定し、白色度を算出した。
【0138】
<(8)熱処理後の白色度>
上記(6)のようにして得られた成形片を、150℃の熱風乾燥機中で48時間加熱処理した。処理後の成形片を上記と同様にして色差計により色調を測定し、白色度を算出した。
なお、初期と比較して熱処理後の白色度に変化が少ないことは、高温雰囲気下にさらされる用途に好適であることを示しており、産業上有用であると判断した。
【0139】
<(9)再溶融処理後の白色度>
上記(6)のようにして得られた成形片を、粉砕機を用いて粉砕した後、シリンダー、ダイスの温度を(A)ポリアミドのTm2+20℃に設定したスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、溶融混練してペレットを作製した。
得られたペレットを用いて、上記(6)のようにして成形片を得て、23℃で24時間静置した後、色差計により色調を測定し、白色度を算出した。
なお、初期と比較して再溶融処理後の白色度に変化が少ないことは、リサイクル等に好適であることを示しており、産業上有用であると判断した。
また、後述する実施例13〜15、比較例11についても同様にして、押出成形により得られたシートを粉砕した後に、単軸押出機を用いてペレットを作製し、そのペレットを用いて押出成形により得られたシートの色調を測定し、白色度を算出した。
【0140】
<(10)調湿処理後の色調(b値)>
上記(6)のようにして得られた成形片を、85℃、湿度85%の恒温恒湿機中で100時間調湿処理した。処理後の成形片を上記と同様にして色差計により色調を測定した。
なお、初期と比較して調湿処理後の色調に変化が少ないことは、高湿雰囲気下にさらされる用途に好適であることを示しており、産業上有用であると判断した。
【0141】
<(11)リフロー耐熱性>
実施例又は比較例で得られたポリアミド組成物ペレットを、射出成形機[PS−40E:日精樹脂株式会社製]を用いて、射出+保圧時間10秒、冷却時間15秒、金型温度を120℃、溶融樹脂温度を(A)ポリアミドのTm2+20℃に設定し、長さ60mm×巾60mm×厚さ1.0mmの成形片を成形した。
得られた成形片を、熱風リフロー炉で加熱して、成形片の形状変化を確認し、以下の基準で判定した。
○:成形片の変形なし。
△:成形片にわずかな変形が認められる。
×:成形片に明らかな変形がある。
なお、このときに使用した熱風リフロー炉は、鉛フリーハンダ対応リフロー炉(UNI−6116H、日本アントム社製)であり、温度設定について、プレヒートゾーンの温度を180℃、ソルダリングゾーンの温度を280℃に設定した。また、リフロー炉内のコンベア−ベルト速度は0.3m/分に設定した。この条件下において、炉内の温度プロファイルを確認したところ、140℃〜200℃の熱暴露時間が90秒、220℃以上の熱暴露時間が48秒、260℃以上の熱暴露時間が11秒であり、最高到達温度は265℃であった。
【0142】
<(12)耐折曲げ性>
実施例又は比較例で得られたポリアミド組成物ペレットを、シリンダーの温度、Tダイス(幅:40cm)の温度を(A)ポリアミドのTm2+20℃に設定したスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、スクリュー回転数30rpm、吐出量6kg/hで押出成形を行った。このときシートが150μmの厚さになるようにTダイスのクリアランス、シートの引き取り速度を調整した。
得られたシートを長さ128mm×巾12.8mmに打ち抜いた。得られた打ち抜きシートを、長手方向に半分(長さ64mm×巾12.8mm)になるように180度折曲げ、以下の基準で判定した。
○:成形片に折目はつくが、亀裂は発生しなかった。
×:成形片が2つに割れた。
【0143】
[ポリアミド]
〔製造例1〕
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を実施した。
(a)CHDA896g(5.20モル)、及び(b)2MPD604g(5.20モル)を蒸留水1500gに溶解させ、等モルの原料モノマーを含む50質量%水溶液を作った。
得られた水溶液と、溶融重合時の添加物である、2MPD21g(0.18モル)を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。液温約50℃から、オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm2になるまで、加熱を続けた。槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約85%になるまで濃縮した。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm2になるまで加熱を続けた。槽内の圧力を30kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、液温の最終温度−50℃になるまで加熱を続けた。さらに加熱は続けながら、槽内の圧力を60分間かけて30kg/cm2から大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで降圧した。液温の最終温度が345℃になるようにヒーター温度を調整した。液温はその状態のまま、槽内を真空装置で100torrの減圧下に10分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドを窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%未満になるように調整してから、上記(1)〜(3)の測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0144】
〔製造例2〕
溶融重合時の添加物の量として、下記表1に記載の量にしたこと以外は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。
さらに「固相重合」を実施した。
溶融重合で得られたポリアミドペレット10kgを円錐型リボン真空乾燥機(株式会社大川原製作所製、商品名リボコーンRM−10V)に入れ、充分に窒素置換を行った。1L/分で窒素を流したまま、攪拌を行いながら260℃で6時間の加熱を行った。その後、窒素を流通したまま温度を下げていき約50℃になったところでペレットのまま装置から取り出し、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を下記表1に示す。
【0145】
〔製造例3〕
槽内の圧力を30kg/cm2から大気圧に下げるのにかけた時間を90分としたこと以外は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を下記表1に示す。
【0146】
〔製造例4〜9〕
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸、及び溶融重合時の添加物として、下記表1に記載の化合物と量を用いた。
また、溶融重合の最終温度を下記表1に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。
製造例4、5、7〜9については、さらに、固相重合の温度と時間として、下記表1に記載の温度と時間をかけたこと以外は、製造例2に記載した固相重合を行った。得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を表1に示す。
【0147】
〔比較製造例1〕
槽内の圧力を30kg/cm2から大気圧に下げるのにかけた時間を120分としたことと、溶融重合の最終温度を350℃としたこと以外は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。
得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を下記表2に示す。
【0148】
〔比較製造例2〕
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び溶融重合時の添加物として、下記表2に記載の化合物と量を用いた。
また、溶融重合の最終温度を下記表2に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。さらに、固相重合の温度と時間として、下記表2に記載の温度と時間をかけたこと以外は、製造例2に記載した固相重合を行った。
得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を下記表2に示す。
【0149】
〔比較製造例3〜9〕
(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び溶融重合時の添加物として、下記表2に記載の化合物と量を用いた。
また、溶融重合の最終温度を下記表2に記載の温度にしたこと以外は、製造例1に記載した熱溶融重合法でポリアミドの重合を行った。
得られたポリアミドの上記測定方法に基づいて行った測定結果を下記表2に示す。
【0150】
【表1】

【0151】
【表2】

【0152】
[ポリアミド組成物]
〔実施例1〜9〕
上述した製造例1〜9のポリアミドを、窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%に調整して用いた。
押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流第1供給口、9番目のバレルに下流第2供給口を有した、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いて、上流側供給口からダイまでを製造例にて製造した(A)ポリアミドのTm2+20℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hで、表3記載の割合となるように、上流側供給口よりポリアミド、フェノール系熱安定剤、アミン系光安定剤、リン化合物、結晶核剤をドライブレンドした後に供給し、下流側第1供給口より酸化チタン、下流側第2供給口より無機充填材を供給して溶融混練しポリアミド組成物ペレットを作製した。
得られたポリアミド組成物を窒素気流中で乾燥し、水分を500ppm以下にした後、成形し、各種評価を実施した。物性値を組成と共に下記表3に示す。
【0153】
【表3】

【0154】
〔比較例1〜9〕
上述した比較製造例1〜9のポリアミドを用いて、下記表4記載の割合になるようにした以外は、実施例1と同様にして溶融混練しポリアミド組成物ペレットを作製した。
得られたポリアミド組成物を窒素気流中で乾燥し、水分を500ppm以下にした後、成形し、各種評価を実施した。物性値を組成と共に下記表4に示す。
【0155】
【表4】

【0156】
表3と表4の結果の対比から、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸と少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含み、環状アミノ末端量が30〜60μ当量/gであるポリアミドと酸化チタンとを含有するポリアミド組成物は、曲げたわみ量が大きく靭性に優れ、初期の白色度が高く、b値が低いことから、色調に優れることを確認した。
また、熱処理後の白色度や再溶融処理後の白色度が高く、調湿処理後のb値が低いことから、耐変色性にも優れることを確認した。
さらに、リフロー耐熱性試験において変形もなく、耐熱性が高いことも併せて確認した。
【0157】
〔実施例10〜12、比較例10〕
製造例2、4、5又は比較製造例6のポリアミドを用いて、下記表5記載の割合になるようにした以外は、実施例1と同様にして溶融混練しポリアミド組成物ペレットを作製した。
得られたポリアミド組成物を窒素気流中で乾燥し、水分を500ppm以下にした後、成形し、各種評価を実施した。物性値を組成と共に下記表5に示す。
【0158】
【表5】

【0159】
表5の結果から、ポリアミド組成物中の各成分の配合比が変わった場合も同様に、色調や耐変色性、耐熱性が高いことを確認した。
【0160】
〔実施例13〜15、比較例11〕
製造例2、4、5又は比較製造例6のポリアミドを用いて、下記表6記載の割合になるようにした以外は、実施例1と同様にして溶融混練しポリアミド組成物ペレットを作製した。
得られたポリアミド組成物を窒素気流中で乾燥し、水分を500ppm以下にした後、シリンダーの温度、Tダイス(幅:40cm)の温度を(A)ポリアミドのTm2+20℃に設定したスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、スクリュー回転数30rpm、吐出量6kg/hで押出成形を行った。このときシートが150μmの厚さになるようにTダイスのクリアランス、シートの引き取り速度を調整した。
得られたシートを用いて各種評価を実施した。物性値を組成と共に下記表6に示す。
【0161】
【表6】

【0162】
表6の結果から、得られたシート成形品についても、耐折曲げ試験において良好であることから靭性に優れ、初期の白色度が高く、再溶融処理後の白色度が高いことから、色調や耐変色性に優れることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明のポリアミド組成物は、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用等各種部品の成形材料として、産業上の利用性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドであって、環状アミノ末端量が30〜60μ当量/gである、(A)ポリアミドと、
(B)酸化チタンと、
を、含有するポリアミド組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリアミドの25℃の硫酸相対粘度ηrが2.3以上である、請求項1に記載のポリアミド組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を、さらに共重合させたポリアミドである請求項1又は2に記載のポリアミド組成物。
【請求項4】
前記(A)ポリアミドの環状アミノ末端が、ペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンの環化反応により形成されたものである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項5】
前記(A)ポリアミドが、重合工程の少なくとも一部において固相重合工程を経て得られるポリアミドである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項6】
前記(A)ポリアミドの融点が270〜350℃である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項7】
前記(B)酸化チタンが、数平均粒子径が0.1〜0.8μmの酸化チタンである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項8】
前記(B)酸化チタンが、無機コーティング及び/又は有機コーティングされている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項9】
前記無機コーティングが金属酸化物コーティングである、請求項8に記載のポリアミド組成物。
【請求項10】
(C)無機充填材をさらに含有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項11】
前記(C)無機充填材が、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、タルク、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム及びクレーからなる群から選ばれる1種以上である、請求項10に記載のポリアミド組成物。
【請求項12】
(D)フェノール系熱安定剤をさらに含有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項13】
(E)アミン系光安定剤をさらに含有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
【請求項14】
前記(E)アミン系光安定剤の分子量が1,000未満である、請求項13に記載のポリアミド組成物。
【請求項15】
(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%のペンタメチレンジアミン骨格を有するジアミンを含むジアミンと、を重合させたポリアミドであって、環状アミノ末端量が30〜60μ当量/gである、ポリアミドを30〜95質量%、
(B)酸化チタンを5〜45質量%、
(C)無機充填材を0〜50質量%、
(D)フェノール系熱安定剤を0〜1質量%、
(E)アミン系光安定剤を0〜1質量%、
含有するポリアミド組成物。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のポリアミド組成物からなる成形品。

【公開番号】特開2012−184293(P2012−184293A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46978(P2011−46978)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】