説明

ポリアミド重合体及びその製造方法、樹脂組成物、成形体、繊維、フィルム並びに多孔フィルム

【課題】天然由来の新規な素材であって、耐熱性が良好なポリアミド重合体を提供する。
【解決手段】下記式(C)で表される部分構造が、主鎖の一部を構成するポリアミド重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド重合体及びその製造方法、樹脂組成物、成形体、繊維、フィルム並びに多孔フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境保護の観点から、資源の脱石油化が検討され、様々な天然資源が注目されている。ポリアミド類の中で天然物由来の原料から得られるものとして、ポリアミド11が知られている。ポリアミド11はトウゴマから得られる「ひまし油」の主成分であるリシノレイン酸から数工程を経て合成されるアミノウンデシレン酸を原料として製造されている。
【0003】
さらに天然物由来の成分として、松脂から採取できるロジンがある。このロジンは種々のテルペン系カルボン酸の混合物からなるが、それらのカルボン酸のうちアビエチン酸を高分子材料に利用することが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。特許文献1及び2は、アビエチン酸をフェノール樹脂又はエポキシ樹脂の末端部に修飾することにより、ロジン変性フェノール樹脂及びロジン変性エポキシ酸樹脂として塗料等の結合剤とすることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−274150号公報
【特許文献2】特開平6−87946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリアミド11は耐熱性に改良の余地がある。また、特許文献1及び2には、ロジン誘導体を含むポリアミド重合体は開示されておらず、また該ロジン変性エポキシ樹脂は、フェノール樹脂又はエポキシ樹脂を主骨格としているため実質的に石油依存の原料であり、地球環境保護の観点に至っていない。したがって、天然物を原料とした、耐熱性が良好な重合体が求められている。
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、天然由来の新規な素材であって、耐熱性が良好なポリアミド重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。さらには、該ポリアミド重合体を含む耐熱性が良好な樹脂組成物、成形体、繊維、フィルム、及び多孔フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記式(C)で表される部分構造が、主鎖の一部を構成するポリアミド重合体。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。n、mはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。Cyはヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環又は7員環を表す。*、**は結合手を表す。*はRから延びる結合手であってもよい。)
【0009】
<2> 前記式(C)で表される部分構造を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位を含む前記<1>に記載のポリアミド重合体。
【0010】
<3> さらに、ジアミン化合物由来の繰り返し単位を含む前記<1>又は<2>に記載のポリアミド重合体。
【0011】
<4> 前記ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、下記一般式(A10)で表される繰り返し単位、下記一般式(A20)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(A30)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種である、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のポリアミド重合体。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。L及びLはそれぞれ独立して、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R11は、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種を含む2価の連結基を表す。R、R、n、m、およびCyは、式(C)におけるR、R、n、m、およびCyとそれぞれ同義である。)
【0014】
<5> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリアミド重合体と、難燃剤、吸湿抑制剤、及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含む樹脂組成物。
【0015】
<6> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリアミド重合体を含む成形体。
【0016】
<7> 難燃剤、吸湿抑制剤、及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含む前記<6>に記載の成形体。
【0017】
<8> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリアミド重合体を含む繊維。
【0018】
<9> 難燃剤、吸湿抑制剤、及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含む前記<8>に記載の繊維。
【0019】
<10> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリアミド重合体を含むフィルム。
【0020】
<11> 難燃剤、吸湿抑制剤、及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含む前記<10>に記載のフィルム。
【0021】
<12> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリアミド重合体を含んでなり、空孔を内部に有する多孔フィルム。
【0022】
<13> 難燃剤、吸湿抑制剤、及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含む前記<12>に記載の多孔フィルム。
【0023】
<14> 前記空孔が、平均孔径が0.5μm以上50μm以下の独立孔である前記<12>又は<13>に記載の多孔フィルム。
【0024】
<15> 溶液キャスト法で製造された前記<12>〜<14>のいずれか1項に記載の多孔フィルム。
【0025】
<16> 下記一般式(A12)で表される化合物、一般式(A22)で表される化合物、及び一般式(A32)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、ジアミン化合物とを重縮合させる工程を含む、ポリアミド重合体の製造方法。
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。L及びLはそれぞれ独立して、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R11は、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種を含む2価の連結基を表す。Y11、Z11、Y21、Z21、Y31、及びZ31はそれぞれ独立して脱離基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。n、mはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。Cyはヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環又は7員環を表す。)
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、天然由来の新規な素材であって、耐熱性が良好なポリアミド重合体及びその製造方法を提供することができる。さらには、該ポリアミド重合体を含む耐熱性が良好な樹脂組成物、成形体、繊維、フィルム、及び多孔フィルムを提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】合成例1で合成したジカルボン酸化合物(1e)のH−NMRスペクトルの一例を示す図である。
【図2】実施例1で得られたポリアミド重合体(PA−1)のH−NMRスペクトルの一例を示す図である。
【図3】実施例2で得られたポリアミド重合体(PA−2)のH−NMRスペクトルの一例を示す図である。
【図4】実施例3で得られたポリアミド重合体(PA−3)のH−NMRスペクトルの一例を示す図である。
【図5】実施例4で得られたポリアミド重合体(PA−4)のH−NMRスペクトルである。
【図6】本発明にかかるポリアミド重合体からなるフィルムの断面写真の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0031】
<ポリアミド重合体>
本発明のポリアミド重合体(以下、「デヒドロアビエチン酸系重合体」ともいう)は、下記式(C)で表される部分構造が主鎖の一部を構成することを特徴とする。
また、前記ポリアミド重合体は、下記式(C)で表される部分構造を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含み、下記式(C)で表される部分構造が主鎖の一部を構成することが好ましい。前記ポリアミド重合体は、ジアミン化合物由来の繰り返し単位少なくとも1種を含むことが好ましい。また、前記ポリアミド重合体は必要に応じて、下記式(C)で表される部分構造を含まないジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
下記式(C)で表される部分構造を主鎖の一部として含むことで、耐熱性に優れるポリアミド重合体を構成することができる。前記ポリアミド重合体は、通常のポリアミド重合体に比べて低密度に構成することができる。これは例えば、下記式(C)で表される部分構造が比較的嵩高いために、ポリアミド重合体としての密度が低下すると考えることができる。さら前記ポリアミド重合体は透明性が高い。これは例えば、下記式(C)で表される部分構造を主鎖の一部に含むことで、ポリアミド重合体の非晶性が高くなり、透明性が向上すると考えることができる。
【0032】
前記ポリアミド重合体は、高い耐熱性を示す。また、前記ポリアミド重合体が有する式(C)で表される部分構造は、バイオマス資源として入手可能な松脂由来のロジン等から得ることができるデヒドロアビエチン酸(下記式(A))から誘導できる。
従って前記ポリアミド重合体は、ポリアミド11等の従来のバイオマスポリマーよりも耐熱性の点で優位な、新規なバイオマスポリマーとして提供することができる。さらに、前記デヒドロアビエチン酸系重合体は、高耐熱性を有する特性を生かした用途に利用でき、例えば、シート、フィルム、繊維、成形材料、等の様々な形態で種々の用途に利用できる。
【0033】
【化4】

【0034】
以下、本発明のポリアミド重合体について詳細に説明する。前記ポリアミド重合体は、
下記式(C)で表される部分構造を有するジカルボン酸化合物と、ジアミン化合物とを原料モノマーとして使用し、これを重合させて得られる共重合体であり、その分子構造中に下記式(C)で表される部分構造(以下、「デヒドロアビエチン酸系骨格」と称する。)を含む繰り返し単位を、デヒドロアビエチン酸系骨格が主鎖の一部を構成するように有してなる。
【0035】
【化5】

【0036】
(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。n、及びmは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表す。Cyはヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環又は7員環を表す。*、**は結合手を表す。*はRから延びる結合手であってもよい。)
【0037】
及びRが表す炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基などが挙げられ、炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましい。特に好ましいアルキル基としては、メチル基、(イソ)プロピル基である。
【0038】
Cyが表すヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環の例としてはシクロヘキセン、シクロヘキセノンであり、不飽和の7員環の例としては、シクロヘプテン、シクロヘプテノン、などが挙げられる。
また、Cyの環が含むヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、リン原子が好ましい。これらのうちで好ましいものは、窒素原子である。
【0039】
また、式(C)で表される骨格としては、下記式(D)で表される骨格が好ましい態様である。
式(D)において、*、**は結合手を表す。
【0040】
【化6】

【0041】
前記デヒドロアビエチン酸系骨格として、下記構造が好ましい構造として挙げられる。
【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
上記した骨格のうち、好ましくは(D−1)、(D−3)であり、最も好ましくは(D−1)である。
【0046】
「デヒドロアビエチン酸系骨格」はさらに置換基を有していてもよい。有していてもよい置換基の例としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基などが挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、塩素原子、ヨウ素原子である。
【0047】
前記ポリアミド重合体は、前記デヒドロアビエチン酸系骨格である上記式(C)で表される部分構造を主鎖の一部を構成するように含んでいれば、デヒドロアビエチン酸系骨格を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の構成及び結合態様は特に限定されるものではない。
【0048】
前記ポリアミド重合体は、デヒドロアビエチン酸系骨格である上記式(C)で表される部分構造を主鎖の一部を構成するように含んでいれば、デヒドロアビエチン酸系骨格を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の構成及び結合態様は特に限定されるものではない。
【0049】
前記ポリアミド重合体の重量平均分子量は限定的でないが、好ましくは5000〜700000、より好ましくは10000〜500000である。重量平均分子量がこの範囲であることにより、ポリアミド重合体は、耐熱性、成形性等に優れ、工業的利用の点で良好となる。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフェィー(GPC)による分子量測定(ポリスチレン換算)で得られた値である。
【0050】
前記ポリアミド重合体のガラス転移温度(Tg)は限定的でないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは150〜400℃、更に好ましくは150〜350℃である。ガラス転移温度がこの範囲であることにより、ポリアミド重合体は、耐熱性、成形性等に優れ、工業的利用の点で良好となる。
なお、前記ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、30〜400℃の温度範囲について、窒素気流下に昇温速度10℃/min.の条件で観察される吸熱ピークとして測定される。
【0051】
前記ポリアミド重合体の密度は限定的でないが、好ましくは1.30g/cm以下、より好ましくは0.90g/cm〜1.25g/cm、更に好ましくは1.00g/cm〜1.20g/cmである。密度がこの範囲であることにより、ポリアミド重合体は、耐熱性、成形性等に優れ、工業的利用の点で良好となる。
なお、ポリアミド重合体の密度は、精密比重計を用いて通常の条件により測定される。
【0052】
本発明のポリアミド重合体は、耐熱性に優れている。これは、デヒドロアビエチン酸系骨格が有する化学構造的に安定した3環状部分(式(C)における3環状部分)が、主骨格として二次元的に連結していくためであること、及び、該3環状部分にイソプロピル基とメチル基が置換していることによるためと推察される。
【0053】
既述のごとく、バイオマス資源を用いて得られる従来のバイオマスポリマーは、通常、耐熱性に劣るという問題があるが、本発明のポリアミド重合体は、バイオマス資源に由来する原料を用いることができるにも拘らず、上記のごとく優れた耐熱性を示す。
【0054】
本発明のポリアミド重合体には、デヒドロアビエチン酸系骨格を含む繰返し単位を有するものに対して、更に化学処理等を施したポリアミド重合体の誘導体も含む。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子(F、Cl、Br等)、アルキル基(メチル基、イソプロピル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)等が挙げられる。
【0055】
[ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位]
本発明のポリアミド重合体を構成するジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、デヒドロアビエチン酸系骨格を、ポリアミド重合体の主鎖の一部を構成するように含んでいれば、その構造は特に限定されない。中でもジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、耐熱性の観点から、下記一般式(A10)で表される繰り返し単位、下記一般式(A20)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(A30)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0056】
【化10】

【0057】
(一般式(A10)中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。一般式(A20)中、Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。一般式(A30)中、L及びLはそれぞれ独立して、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R11は、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種を含む2価の連結基を表す。一般式(A10)、(A20)及び(A30)中、R、R、n、m、およびCyは、式(C)におけるR、R、n、m、およびCyとそれぞれ同義である。)
【0058】
一般式(A10)中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状であっても、環状であってもよい。
は、耐熱性の観点から、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合であることが好ましく、炭素数2〜4の鎖状のアルキレン基、炭素数5〜6の環状のアルキレン基、炭素数2〜4の鎖状のアルケニレン基、炭素数5〜6の環状のアルケニレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は単結合であることがより好ましい。
【0059】
連結基Lを構成するアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は可能な場合には置換基を有していてもよい。アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基における置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を挙げることができる。
【0060】
で表される連結基の具体例として、以下の連結基を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。以下の具体例中、*はデヒドロアビエチン酸系骨格への結合位置を示し、**はカルボニル基への結合位置を示す。
【0061】
【化11】

【0062】
一般式(A10)におけるLとしては、耐熱性の観点から、単結合、(L1−ex−4)、(L1−ex−10)又は(L1−ex−12)であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0063】
のデヒドロアビエチン酸系骨格への結合位置は、イソプロピル基を13位とした場合に、11位、12位、及び14位のいずれであってもよいが、12位又は14位であることが好ましく、12位であることがより好ましい。
【0064】
前記ポリアミド重合体の好適な態様の一つは、2つのデヒドロアビエチン酸系骨格が直接又は連結基を介して結合してなる二量体構造を、主鎖の一部として繰り返し単位中に含むものである。この二量体構造を含む繰り返し単位は、例えば、上記一般式(A20)で表される。
【0065】
一般式(A20)中、Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状であっても、環状であってもよい。
【0066】
で表される連結基は、耐熱性の観点から、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基、及び炭素数6〜18のアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種から構成されることが好ましく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、炭素数2〜4の鎖状のアルキレン基、炭素数5〜6の環状のアルキレン基、炭素数2〜4の鎖状のアルケニレン基、炭素数5〜6の環状のアルケニレン基、及び炭素数6〜8のアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は単結合であることがより好ましい。
【0067】
で表される連結基を構成するアルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は可能な場合には置換基を有していてもよい。アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基における置換基としては、前記Lにおける置換基と同様のものを挙げることができる。
で表される連結基の具体例として、以下の連結基を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0068】
【化12】

【0069】
としては、耐熱性の観点から、(L2−ex−2)、(L2−ex−5)、(L2−ex−9)又は(L2−ex−11)であることが好ましく、(L2−ex−2)であることがより好ましい。
【0070】
の2つのデヒドロアビエチン酸系骨格への結合位置はそれぞれ独立に、イソプロピル基を13位とした場合に、11位、12位、及び14位のいずれであってもよいが、12位又は14位であることが好ましく、12位であることがより好ましい。
【0071】
一般式(A30)中、L及びLはそれぞれ独立して、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。
及びLはそれぞれ、一般式(A10)におけるLと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0072】
及びLにおけるデヒドロアビエチン酸系骨格への結合位置はそれぞれ独立に、イソプロピル基を13位とした場合に、11位、12位、及び14位のいずれであってもよいが、12位又は14位であることが好ましく、12位であることがより好ましい。
【0073】
11は、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種を含む2価の連結基を表す。
11は、アルキレン基、アリーレン基以外の基を含んでいてもよく、アルキレン基、アリーレン基以外の基としては、酸素原子、カルボニル基、エステル基、エーテル基等を挙げることができる。
また、R11は、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいればよく、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される2種を含んでもよく、アルキレン基とアリーレン基とをそれぞれ1種以上含んでもいてもよく、さらに、酸素原子、カルボニル基、エステル基、及びエーテル基からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0074】
11におけるアルキレン基は、直鎖又は分岐鎖の鎖状であっても、環状であってもよく、また鎖状アルキレン基と環状アルキレン基との組み合わせであってもよい。またアルキレン基の炭素数は特に限定されないが、耐熱性と成形性の観点から、炭素数1〜30であることが好ましく、炭素数2〜18であることがより好ましい。
【0075】
さらにR11におけるアルキレン基は置換基を有していてもよい。R11のアルキレン基における置換基は、一般式(A10)のLにおける置換基と同義である。またR11におけるアルキレン基が2以上の置換基を有する場合、それらの置換基は互いに連結して環を形成してもよい。
【0076】
11におけるアルキレン基の具体例としては、例えば、−C2n−(nは1〜30、好ましくは2〜18の整数)、−C2m−(cyclo−C10)−C2n−(m及びnは独立に0〜4の整数、好ましくは1〜2の整数を示す。)等を挙げることができる。
より具体的には、−CH−、−C−、−C−、−C−、−C16−、−C1020−、−CH−CH(CH)−、−CH(cyclo−C10)CH−、1,4−trans−シクロヘキシレン基、−C1836−等を挙げることができる。
【0077】
11におけるアリーレン基の炭素数は特に制限されないが、耐熱性と成形性の観点から、炭素数が6〜18であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
さらにR11におけるアリーレン基は置換基を有していてもよい。R11のアリーレン基における置換基は、一般式(A10)のLにおける置換基と同義である。またR11におけるアリーレン基が2以上の置換基を有する場合、それらの置換基は互いに連結して環を形成してもよい。
【0078】
11におけるアリーレン基の具体例としては例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等を挙げることができる。より具体的には、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、2,6−ナフチレン基等を挙げることができる。
【0079】
11が2以上のアリーレン基から構成される2価の連結基の場合、その具体例としては例えば、4,4’−ビフェニレン基、ターフェニレン基等を挙げることができる。
【0080】
また、R11が少なくとも1種のアルキレン基と少なくとも1種のアリーレン基とから構成される2価の連結基の場合、その具体例としては例えば、−C(C2i)C−(iは1〜8の整数、好ましくは1〜4の整数を表わす)、
−C2j2k−(j及びkはそれぞれ独立して0〜4の整数、好ましくは1〜2の整数を表す。ただし、jとkが同時に0となることはない。)等を挙げることができる。
より具体的には、−CC(CH−、−CHCH−、−CHCHCHCH−等を挙げることができる。
【0081】
一般式(A30)におけるR11としては、耐熱性と成形性の観点から、以下に示す2価の連結基を好ましく挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0082】
【化13】

【0083】
11で表される2価の連結基としては、これらの中でもより好ましくは、(R11−ex−2)、(R11−ex−3)、(R11−ex−5)、(R11−ex−8)、(R11−ex−9)、(R11−ex−13)、(R11−ex−22)、(R11−ex−24)を挙げることができる。
【0084】
以下に一般式(A30)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0085】
【化14】

【0086】
【化15】

【0087】
上記したジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位としては、下記一般式(A1)で表される繰り返し単位、下記一般式(A2)で表される繰り返し単位、及び、下記一般式(A3)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種であることが、更に耐熱性を向上させる観点から、好ましい。
【0088】
【化16】

【0089】
一般式(A1)、一般式(A2)、及び、一般式(A3)中、L、L、L、L、およびR11は、一般式(A10)、一般式(A20)、及び、一般式(A30)における)L、L、L、L、およびR11とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0090】
前記ポリアミド重合体を構成するジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位中における、一般式(A10)で表される繰り返し単位、一般式(A20)で表される繰り返し単位及び一般式(A30)で表される繰り返し単位の総含有率は特に制限されないが、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の総量を50モル%とした場合、耐熱性と密度の観点から、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることが更に好ましい。
前記ポリアミド重合体は、一般式(A10)で表される繰り返し単位、一般式(A20)で表される繰り返し単位及び一般式(A30)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる2種以上のジカルボン酸化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。ポリアミド重合体がジカルボン酸化合物に由来する繰り返し単位2種以上を含む場合、それらの含有比率は目的に応じて適宜選択される。
またポリアミド重合体が、ジカルボン酸化合物に由来する繰り返し単位を2種以上を含む場合、それらは同一の一般式で表される繰り返し単位であっても、それぞれ異なる一般式で表される繰り返し単位であってもよい。
【0091】
前記ポリアミド重合体は、デヒドロアビエチン酸系骨格を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含むものであるが、必要に応じて、デヒドロアビエチン酸系骨格を含まないその他のジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含んでいてもよい。
その他のジカルボン酸化合物としては、ポリアミド重合体を構成するのに通常用いられるジカルボン酸化合物を特に制限なく用いることができ、例えば、合成高分子V(朝倉書店)P.63−91等に記載のジカルボン酸化合物を用いることができる。
【0092】
その他のジカルボン酸化合物としては例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類や、シクロへキサンジカルボン酸、ジシクロへキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ブラシル酸、マレイン酸、及びフマル酸等の脂肪族ジカルボン酸類が挙げられる。
前記ポリアミド重合体におけるその他のジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の含有率は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されない。例えば、その他のジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位の含有率は、前記ポリアミド重合体を構成するジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位中に、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましい。
【0093】
[ジアミン化合物由来の繰り返し単位]
本発明のポリアミド重合体は、ジアミン化合物由来の繰り返し単位の少なくとも1種を含む。前記ポリアミド重合体に適用することができるジアミン化合物としては、ポリアミド重合体の構成に通常用いられるジアミン化合物を特に制限なく用いることができ、例えば、高分子データハンドブック基礎編(高分子学会編)(培風館)P.241〜257に記載のジアミン化合物等が挙げられる。
【0094】
前記ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン化合物であっても、芳香族ジアミン化合物であってもよい。また脂肪族ジアミン化合物は鎖状であっても、環状であってもよい。
脂肪族ジアミン化合物としては、鎖状のジアミノアルキレン誘導体であっても、環状のジアミノアルキレン誘導体であってもよく、さらに不飽和結合を含んでいてもよい。ジアミノアルキレン誘導体の炭素数は特に制限されないが、耐熱性と成形性の観点から、2〜20であることが好ましく、2〜14であることがより好ましく、2〜10であることが更に好ましい。
【0095】
また芳香族ジアミン化合物としては、ジアミノアリーレン誘導体を挙げることができる。中でも耐熱性と成形性の観点から、炭素数6〜24のジアミノアリーレン誘導体であることが好ましく、炭素数6〜18のジアミノアリーレン誘導体であることがより好ましい。
【0096】
更に前記ジアミン化合物は、脂肪族モノアミノ化合物に由来する基及び芳香族モノアミノ化合物に由来する基から選ばれる2種が、2価の連結基を介して結合してなるジアミン化合物であってもよい。2価の連結基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基を挙げることができる。
【0097】
2価の連結基を構成するアルキレン基及びアルケニレン基は鎖状であっても、環状であってもよい。アルキレン基及びアルケニレン基が鎖状である場合、その炭素数は2〜6であることが好ましい。またアルキレン基及びアルケニレン基が環状である場合、その炭素数は5〜8であることが好ましい。
【0098】
前記ジアミン化合物が、脂肪族モノアミノ化合物に由来する基及び芳香族モノアミノ化合物に由来する基から選ばれる2種が2価の連結基を介して結合してなる場合、ジアミン化合物を構成する2つの脂肪族モノアミノ化合物に由来する基又は芳香族モノアミノ化合物に由来する基は互いに連結して環を形成してもよい。
更に前記ジアミン化合物は置換基を有していてもよく、該置換基としては前記一般式(A1)における置換基を挙げることができる。
【0099】
以下に本発明に好ましく用いられるジアミン化合物の具体例を示すが、発明はこれらに限定されない。
【0100】
【化17】

【0101】
本発明におけるジアミン化合物は、耐熱性と成形性の観点から、炭素数2〜14のジアミノアルキレン誘導体、炭素数6〜24のジアミノアリーレン誘導体、並びに、脂肪族モノアミノ化合物に由来する基及び芳香族モノアミノ化合物に由来する基から選ばれる2種が2価の連結基を介して結合してなるジアミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
尚、前記2価の連結基は、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成されることが好ましい。
【0102】
前記ポリアミド重合体における前記ジアミン化合物由来の繰り返し単位は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。ポリアミド重合体が2種以上のジアミン化合物由来の繰り返し単位を有する場合、それらの含有比率は目的に応じて適宜選択される。
【0103】
本発明のポリアミド重合体は、耐熱性と整形性の観点から、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位として、一般式(A1)で表され、Lが単結合、化学式(L1−ex−4)、(L1−ex−10)又は(L1−ex−12)であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位、一般式(A2)で表され、Lが化学式(L2−ex−2)、(L2−ex−5)、(L2−ex−9)又は(L2−ex−11)であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位、並びに、一般式(A3)で表され、L及びLがそれぞれ独立して、単結合、化学式(L1−ex−4)、(L1−ex−10)又は(L1−ex−11)であり、R11が化学式(R11−ex−2)、(R11−ex−3)、(R11−ex−5)、(R11−ex−8)、(R11−ex−9)、(R11−ex−13)、(R11−ex−22)又は(R11−ex−24)であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種と、炭素数2〜20のジアミノアルキレン誘導体、炭素数6〜24のジアミノアリーレン誘導体、並びに、脂肪族モノアミノ化合物に由来する基及び芳香族モノアミノ化合物に由来する基から選ばれる2種が2価の連結基を介して結合してなるジアミン化合物からなる群から選ばれるジアミン化合物に由来する繰り返し単位の少なくとも1種とを含んで構成されることが好ましい。
【0104】
より好ましくは、ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位として、一般式(A1)で表され、Lが単結合であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位、一般式(A2)で表され、Lが(L2−ex−2)であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位、並びに、一般式(A3)で表され、L及びLが単結合であり、R11が(R11−ex−2)、(R11−ex−3)、(R11−ex−5)、(R11−ex−8)、(R11−ex−9)、(R11−ex−13)、(R11−ex−22)又は(R11−ex−24)であるジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種と、化学式(DA−1)、(DA−8)、(DA−9)、(DA−13)及び(DA−22)からなる群から選ばれるジアミン化合物に由来する繰り返し単位の少なくとも1種を含んで構成されることである。
【0105】
本発明のポリアミド重合体を構成するジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位とジアミン化合物由来の繰り返し単位の含有比率(ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位:ジアミン化合物由来の繰り返し単位)は、特に制限されないが、通常1:1である。
【0106】
<ポリアミド重合体の製造方法>
本発明のポリアミド重合体は、式(C)で表される部分構造を含むジカルボン酸化合物又はその誘導体と、ジアミン化合物とを公知の方法で重縮合させることを製造することができる。例えば、合成高分子V(朝倉書店)P.63−175等に記載の方法を本発明においても適用することができる。
【0107】
具体的には例えば、デヒドロアビエチン酸系骨格を含むジカルボン酸化合物又はそのエステル誘導体とジアミン化合物とを、減圧下に250〜280℃で数時間加熱する方法、及び、さらに酸触媒を加えて減圧下に200〜230℃で数時間加熱する方法、並びに、デヒドロアビエチン酸系骨格を含むジカルボン酸化合物の酸ハロゲン化誘導体とジアミン化合物とを、塩基存在下に0〜80℃で脱ハロゲン化水素させる方法などが挙げられ、本発明ではいずれの方法も好ましく用いられる。
【0108】
デヒドロアビエチン酸系骨格を含むジカルボン酸化合物は、ロジンから調製することができる。
ロジンは松脂から採取される樹脂成分であり、採取の方法により、代表的なものとして「ガムロジン」、「トールロジン」及び「ウッドロジン」の3種がある。ロジンに含まれる構成成分は、これら採取の方法、松の産地等により異なるが、一般的には、以下にその構造を示す、アビエチン酸(1)、ネオアビエチン酸(2)、パラストリン酸(3)、レボピマール酸(4)、デヒドロアビエチン酸(5)、ピマール酸(6)、イソピマール酸(7)等のジテルペン系樹脂酸の混合物である。
【0109】
【化18】

【0110】
これらのジテルペン系樹脂酸のうち、(1)から(4)で表される各化合物は、例えばアパタイト系等の触媒存在下、加熱処理することにより不均化を起こし、デヒドロアビエチン酸(5)と下記構造のジヒドロアビエチン酸(8)に変性することができる。変性は例えば、特開2002−284732号公報等を参考に行うことができる。
【0111】
【化19】

【0112】
さらに、デヒドロアビエチン酸の12位は電子密度が高く、種々の芳香族親電子置換反応を容易に受ける。すなわち、アシル化、ハロゲン化等が容易に起こるので、公知の反応により官能基変換を行うことにより、12位にカルボキシル基を有する官能基を導入することができる。またデヒドロアビエチン酸の14位は12位同様に電子密度が高いが、13位のイソプロピル基及び15位の置換基による立体障害により、芳香族親電子置換反応は12位に比べて起こりにくくなっている。そのため、親電子置換反応によって官能基導入をおこなったデヒドロアビエチン酸誘導体は、12位及び14位の位置異性体を含む。本願はこれらを区別することはないが、好ましくは12位に置換基が導入されたデヒドロアビエチン酸誘導体を用いる。
【0113】
すなわち、デヒドロアビエチン酸系骨格を含むジカルボン酸化合物は、種々の樹脂酸の混合物であるロジンに適切な化学処理を施すことにより容易に、工業的規模で安価に製造することができる。
【0114】
本発明のポリアミド重合体の製造方法は、下記一般式(A12)で表される化合物、下記一般式(A22)で表される化合物、及び下記一般式(A32)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸化合物又はその誘導体と、ジアミン化合物の少なくとも1種とを重縮合させる工程を含み、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
本発明のポリアミド重合体の製造方法において、2種以上のジカルボン酸化合物又はその誘導体を用いる場合、それぞれのジカルボン酸化合物又はその誘導体は、同一の前記一般式で表されるものであっても、異なる前記一般式で表されるものであってもよい。
【0115】
【化20】

【0116】
(式中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。L及びLはそれぞれ独立して、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R11は、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種を含む2価の連結基を表す。Y11、Z11、Y21、Z21、Y31、及びZ31はそれぞれ独立して脱離基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。n、mはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。Cyはヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環又は7員環を表す。)
【0117】
上記した一般式(A12)、一般式(A22)、及び一般式(A32)で表される化合物は、下記の一般式(A11)、一般式(A21)、及び一般式(A31)で表される化合物であることが好ましい。
【0118】
【化21】

【0119】
一般式(A11)中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Y11及びZ11はそれぞれ独立して、脱離基を表す。
【0120】
一般式(A11)におけるLは、一般式(A1)におけるLと同義であり、好ましい態様も同様である。
11及びZ11は脱離基を表す。前記脱離基は、一般式(A11)で表される化合物とジアミン化合物との重縮合反応において、アミド結合を生成可能であれば特に制限されず、通常用いられる脱離基から目的に応じて適宜選択することができる。
またY11及びZ11は同一の脱離基であっても、互いに異なる脱離基であってもよい。
【0121】
前記脱離基として、具体的には、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、アルキル及びアリールスルホニルオキシ基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、並びにハロゲン原子等を挙げることができる。
前記アルコキシ基、ヒドロキシアルコキシ基、アルキルスルホニルオキシ基におけるアルキル基の炭素数は特に制限されないが、炭素数が1〜4であることが好ましい。またアリールオキシ基におけるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基等を挙げることができる。
これらの中でも、生産性と反応性の観点から、ハロゲン原子、アルコキシ基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0122】
前記一般式(A11)で表される化合物として、具体的に以下のものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0123】
【化22】

【0124】
【化23】

【0125】
前記一般式(A11)で表される化合物は、既述のようにして得られるカルボキシデヒドロアビエチン酸を用いて、常法により製造することができる。
【0126】
【化24】

【0127】
一般式(A21)中、Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基を表す。Y21及びZ21は脱離基を表す。
一般式(A21)におけるLは、一般式(A2)におけるLと同義であり、好ましい態様も同様である。またY21及びZ21は、一般式(A11)におけるY11及びZ11と同義である。
【0128】
一般式(A21)で表される化合物は、一般式(A11)と同様にロジンから調製することができる。また、一般式(A21)で表される化合物は、種々の樹脂酸の混合物であるロジンに適切な化学処理を施すことにより容易に、工業的規模で安価に製造することができる。
前記一般式(A21)で表される化合物として、具体的に以下のものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0129】
【化25】

【0130】
【化26】

【0131】
一般式(A31)中、L及びLは、それぞれ独立して、酸素原子、カルボニル基ア、ルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R11は、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種を含む2価の連結基を表す。Y31及びZ31はそれぞれ独立して、脱離基を表す。
一般式(A31)におけるL及びLは、一般式(A3)におけるL及びLと同義であり、好ましい態様も同様である。R11は一般式(A3)におけるR11と同義であり、好ましい態様も同様である。さらにY31及びZ31は、一般式(A11)におけるY11及びZ11と同義である。
【0132】
前記一般式(A31)で表される化合物は、前記デヒドロアビエチン酸(5)又はそのエステル誘導体とHO−R11−OHで表されるジオール化合物とを、酸などの触媒存在下で混合して加熱し脱水縮合させた後、既述の方法によりデヒドロアビエチン酸の12位に所望の官能基を導入することで得られる。
【0133】
前記一般式(A31)で表される化合物として、具体的に以下のものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0134】
【化27】

【0135】
【化28】

【0136】
【化29】

【0137】
【化30】

【0138】
【化31】

【0139】
<ポリアミド重合体の用途>
本発明のポリアミド重合体の用途は限定的でなく種々の用途に使用することができる。例えば、(ホットメルト型等の)接着剤、粘着剤、シーリング材、コーティング材、プラスチック相溶化剤、プラスチック改質材、各種フィルム・シート等が挙げられる。その他、耐熱性に優れることを利用して、各種のホース・チューブ、電線被覆材、光ファイバー被覆材、各種フィルム・シート等に利用できる。また、複写機(例えば、ゼログラフィー等)用トナーバインダーにも利用できる。熱可塑性エラストマーとして、防振材料、防音材料、各種パッキング、自動車部品等、様々な形態で種々の用途に利用できる。
【0140】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、前記ポリアミド重合体の少なくとも1種と、難燃剤、吸湿抑制剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含んで構成される。
【0141】
(難燃剤)
前記樹脂組成物は、難燃剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。これによって、その燃焼速度の低下または抑制といった難燃効果を向上させることができる。
難燃剤は、特に限定されず、常用のものを用いることができる。例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド重合体との複合時や成形加工時に熱分解してハロゲン化水素が発生して加工機械や金型を腐食させたり、作業環境を悪化させたりすることがなく、また、焼却廃棄時にハロゲンが揮散したり、分解してダイオキシン類等の有害物質の発生等によって環境に悪影響を与える可能性が少ないことから、リン含有難燃剤およびケイ素含有難燃剤が好ましい。
【0142】
リン含有難燃剤としては、特に限定されることはなく、常用のものを用いることができる。例えば、リン酸エステル、リン酸縮合エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物が挙げられる。
【0143】
リン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどを挙げることができる。
【0144】
リン酸縮合エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物などの芳香族リン酸縮合エステル等を挙げることができる。
【0145】
また、リン酸、ポリリン酸と周期律表1族〜14族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンとの塩からなるポリリン酸塩を挙げることもできる。ポリリン酸塩の代表的な塩として、金属塩としてリチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄(II)塩、鉄(III)塩、アルミニウム塩など、脂肪族アミン塩としてメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ピペラジン塩などがあり、芳香族アミン塩としてはピリジン塩、トリアジン塩等が挙げられる。
【0146】
また、前記以外にも、トリスクロロエチルホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル、また、リン原子と窒素原子が二重結合で結ばれた構造を有するホスファゼン化合物、リン酸エステルアミドを挙げることができる。
これらのリン含有難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
ケイ素含有難燃剤としては、式:RSi(4−m)/2(mは1以上3以下の整数、Rは、水素原子、置換もしくは非置換の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基である)で表される構造単位を主構成単位とする二次元または三次元構造の有機ケイ素化合物、ポリジメチルシロキサン、またはポリジメチルシロキサンの側鎖または末端のメチル基が、水素原子、置換または非置換の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基で置換または修飾されたもの、いわゆるシリコーンオイル、または変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0148】
前記置換もしくは非置換の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基等が挙げられる。
これらのケイ素含有難燃剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
また、前記リン含有難燃剤またはケイ素含有難燃剤以外の難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、フッ素系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛等の無機系難燃剤を用いることができる。これらの他の難燃剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0150】
樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、その含有量は限定的でない。例えば樹脂組成物100質量部に対して、通常50質量部程度以下、好ましくは2〜30質量部程度とすればよい。この範囲とすることにより、透明性や弾性率等の力学物性を良好に維持したまま所望の難燃性が得られる。
【0151】
(吸湿抑制剤)
前記樹脂組成物は、吸湿抑制剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
吸湿抑制剤は、前記樹脂組成物に含まれ、樹脂組成物と空気界面に疎水性の層を形成できる物質(化合物を含む)であれば特に制限されない。この疎水性の層によって、空気中の水分を吸収(吸湿)することが抑制される。このように吸湿が抑制されるので、樹脂が空気に触れる状態で長時間放置されたり、樹脂組成物の周囲の湿度が上昇したりしても、樹脂が劣化したり、寸法が変化したりすることが効果的に抑制される。なお、樹脂組成物は、その樹脂組成物と空気界面に常に疎水性の「層」が形成されていることを要しない。例えば、樹脂組成物の混合によって、層を形成する疎水相が樹脂組成物内に分散する場合も含まれる。
【0152】
吸湿抑制剤は、疎水性の層によって上述のような吸湿抑制効果を発揮でき、かつ、この吸湿抑制剤を含む樹脂組成物が、その機能、例えば前述の寸法変化等が抑えられるという機能を発揮できるものであればよく、具体的な組成、樹脂組成物における含有量、及び他の添加剤との量比等は、特に限定されるものではない。
【0153】
吸湿抑制剤として、具体的には、疎水性物質及び両親媒性物質が挙げられる。疎水性物質は、それ自体が全体として疎水性層を形成し得る。また、両親媒性物質は、その疎水基が疎水性層として機能し得る。両親媒性物質の疎水基及び疎水性物質の疎水性の程度は、樹脂組成物の吸湿を防止できる程度であればよい。
【0154】
疎水性物質としては、例えば、水に不溶な物質が好適に用いられる。より具体的には、パラフィン系化合物、オレフィン系化合物、環式飽和炭化水素系化合物、環式不飽和炭化水素化合物等の炭化水素、または、アルコール系化合物、エーテル系化合物、エステル系化合物、シリコン系化合物、フッ素系化合物、リン酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0155】
両親媒性物質は、疎水基と親水基とを含む分子からなる物質である。両親媒性物質は、界面活性剤と言い換えてもよい。界面活性剤としては、具体的には、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。イオン性界面活性剤には、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩型界面活性剤及び第4級アンモニウム塩型界面活性剤等のカチオン性界面活性剤;及びカルボン酸塩型界面活性剤等の両性界面活性剤が含まれる。非イオン性界面活性剤としては、具体的には、エステル型、エーテル型、エステル‐エーテル型等が挙げられる。その他、天然に存在する両親媒性物質の具体例としては、リン脂質、糖脂質等が挙げられる。
【0156】
前記吸湿抑制剤として具体的には、エステル系化合物及びポリエステルオリゴマーの少なくとも1種が好ましい。
ポリエステルオリゴマーの具体例としては、エステル結合を有する繰り返し構造単位を有し、数平均分子量が500〜5000であれば特に限定されるものではなく、2価のカルボン酸、2価のアルコール、ヒドロキシ基含有カルボン酸を構成成分として含むものが好ましい。
【0157】
2価のカルボン酸の例としては、アジピン酸、コハク酸、デカンジカルボン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などが挙げられる。ポリアミド誘導体に対して相溶性が高いことがより好ましく、具体的にはアジピン酸、コハク酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく挙げられる。
【0158】
また2価のアルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。上記2価のカルボン酸と同様にポリアミド誘導体に対して相溶性が高いことがより好ましく、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが好ましく挙げられる。
【0159】
またヒドロキシ基含有カルボン酸の例としては、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸などが好ましく挙げられる。
【0160】
更に、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などのヒドロキシカルボン酸あるいは環状ラクトンを原料とするポリエステルオリゴマーなども好ましい例として挙げることができる。
【0161】
ポリエステルオリゴマーの数平均分子量が500〜5000であり、600〜3500が好ましく、700〜2000がより好ましい。数平均分子量の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができる。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めることができる。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用することができる。
【0162】
これらのポリエステルオリゴマーの末端は、封止されることなくCOOH残基又はOH残基を有するままでもよいが、樹脂組成物の安定性や吸湿性の観点から、OH残基を有するか、末端が封止されていることが好ましく、末端が封止され、水酸基及びカルボキシル基を含有していないことがより好ましい。
封止は任意の方法で行うことができるが、カルボキシル基の場合はエステル封止、水酸基の場合はエステル封止、エーテル封止等が好ましい例として挙げられる。封止の方法は、一旦水酸基及び/又はカルボキシル基を有する化合物を合成した後に封止剤と反応させてもよいし、重合反応に封止剤を共存させてもよい。エステル封止の場合、封止に用いるモノカルボン酸類としては酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、トルイル酸、p−tert−ブチル安息香酸、ナフトエ酸等を挙げることができる。封止に用いるモノアルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノールを挙げることができる。
【0163】
上記ポリエステルオリゴマーは、例えば特開昭61−276836号公報、特開2006−64803号公報、特開2007−269850号公報に記載の公知の方法で製造することができる。
これらのポリエステルオリゴマーは1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0164】
またエステル系化合物の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールと、酢酸、安息香酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸及びアビエチン酸等のモノカルボン酸のエステル系化合物や、テレフタル酸、1,3,5−トリメリット酸、クエン酸、アジピン酸等の多価カルボン酸と、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエステル、フェノール等のモノアルコールのエステル系化合物を挙げることができる。
これらのエステル系化合物は1種のみを使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0165】
前記樹脂組成物全体における吸湿抑制剤の含有量は、吸湿抑制剤の種類、樹脂組成物と大気との界面の面積等に応じて適宜設定されるが、例えば疎水性物質の場合は、0.01〜50質量%であり、好ましくは1〜30質量%であり、また両親媒性物質の場合は、0.01〜20質量%であり、好ましくは0.1〜1.0質量%である。
【0166】
(光安定剤)
前記樹脂組成物は、光安定剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。光安定剤としては、HALS、紫外線吸収剤、及び一重項酸素クエンチャー等を挙げることができる。
HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)としては、高分子量ヒンダードアミン系光安定剤であっても、低分子量ヒンダードアミン系光安定剤であってもよい。また両者を併用してもよい。
【0167】
−高分子量ヒンダードアミン系光安定剤−
高分子量ヒンダードアミン系光安定剤としては、分子量が1000を超えるものが用いられる。このようなものとしては、例えば、オリゴマー型のHALSであるポリ[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]や、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物などが挙げられる。より具体的には、キマソーブ944LD、チヌビン622LD(BASFジャパン社製)などの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0168】
これらの高分子量ヒンダードアミン系光安定剤は、前記樹脂組成物100質量部に対し、0.2質量部以上10質量部以下配合することが好ましい。高分子量ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が0.2質量部以上であると、目的とする充分な耐候性を得ることができる。また10質量部以下であると、増量による耐候性向上効果が期待でき、機械的強度の低下やブルーミングの発生を抑制できる。
【0169】
−低分子量ヒンダードアミン系光安定剤−
低分子量ヒンダードアミン系光安定剤としては、分子量が1000以下、好ましくは900以下、更に好ましくは600以上900以下程度のものが用いられる。
このようなものとしては、例えば、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−アセトキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリアジン−2,4,6−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3−トリカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロパン−1,1,2,3−テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などが挙げられる。より具体的には、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−52(以上、アデカ社製)、チヌビン144(BASFジャパン社製)などの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0170】
これらの低分子量ヒンダードアミン系光安定剤は、前記樹脂組成物100質量部に対し、0.2質量部以上10質量部以下配合することが好ましい。低分子量ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が0.2質量部以上であると、目的とする充分な耐候性を得ることができる。また10質量部以下であると、増量による耐候性向上効果が期待でき、機械的強度の低下やブルーミングの発生を抑制することができる。
【0171】
−紫外線吸収剤−
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロ−フタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノールなどのベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル安息酸n−ヘクサデシルエステル、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ブタン、1,6−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)ヘキサンなどのベンゾフェノン系、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートに代表されるシアノアクリレート系などが挙げられる。より具体的には、チヌビン320、チヌビン328、チヌビン234、チヌビン1577、チヌビン622イルガノックス(以上、BASFジャパン社製)、アデカスタブLA31(アデカ社製)、SEESORB102、SEESORB103、SEESORB501(シプロ化成(株)製)などの商品名で市販されているものを使用することができる。
【0172】
これらの紫外線吸収剤は、前記樹脂組成物100質量部に対し、0.2質量部以上10質量部以下配合することが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.2質量部以上であると、目的とする充分な耐候性を得ることができる。又10質量部以下であると、増量による耐候性向上効果が期待でき、機械的強度の低下やブルーミングの発生を抑制することができる。
【0173】
一重項酸素クエンチャーとしては、ベンゼンスルホン酸ニッケル塩、p−トルエンスルホン酸ニッケル塩、ジメチルジチオカルバミン酸ニッケル塩、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ニッケル塩、テトラブチルホスホニウムビス(1,2−ベンゼンジチオレート)ニコレート(III)、テトラブチルホスホニウムビス(4−メチル−1,2−ベンゼンジチオレート)ニコレート(III)などが挙げられる
【0174】
これらの一重項酸素クエンチャーは、前記樹脂組成物100質量部に対し、0.2質量部以上10質量部以下配合することが好ましい。一重項酸素クエンチャーの含有量が0.2質量部以上であると、目的とする充分な耐候性を得ることができる。又10質量部以下であると、増量による耐候性向上効果が期待でき、機械的強度の低下やブルーミングの発生を抑制することができる。
これらの光安定剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0175】
また前記樹脂組成物は必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、通常使用される添加剤から目的に応じて適宜選択することができる。その他の添加剤としては例えば、可塑剤、安定剤、衝撃性向上剤、結晶核剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、顔料、染料、充填剤、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物等)、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーン)、加工助剤、防曇剤、ドリップ防止剤、防菌剤、防黴剤等を挙げることができる。これらは1種単独又は2種以上添加してもよい。
【0176】
[複合材料]
本発明のポリアミド重合体は、その物性を所望の範囲とすること等を目的として、種々の材料と混合して、複合材料として用いることができる。
【0177】
ポリアミド重合体を複合材料とする場合に、特に重要なのは、ポリマーアロイ化(異種ポリマーの混合)とフィラーの混合であり、これにより、耐衝撃性、耐熱性、耐久性、成形性等を改良することができる。
【0178】
ポリマーアロイ化に使用されるポリマーとしては、異なるポリマー特性を有するポリアミド重合体を2種以上使用してもよいし、ポリアミド重合体とそれ以外のポリマーとを併用してもよい。
【0179】
ポリマーアロイ化に使用される本発明のポリアミド重合体以外のポリマーとしては、以下の1)〜4)が挙げられる。
1)オレフィン系樹脂(エチレン又はプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン、又はシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン等のシクロオレフィンの単独重合体、上記α−オレフィン同士の共重合体、及びα−オレフィンと共重合可能な他の単量体、酢酸ビニル、マレイン酸、ビニルアルコール、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等との共重合体等)。
【0180】
2)ポリエステル系樹脂(テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等のジカルボン酸単量体とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ビスフェノール化合物又はその誘導体のアルキレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等のジオール又は多価アルコール単量体との共重合体、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸や、2,6−ヒドロキシナフトエ酸、等のヒドロキシカルボン酸等の重縮合体等)。
【0181】
3)ポリアミド系樹脂(3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノ酸、二塩基酸とジアミンなどの重縮合によって得られる鎖中に酸アミド結合を有する重合体で、具体的には、ε−カプロラクタム、アミノカプロン酸、エナントラクタム、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、9−アミノノナン酸、α−ピロリドン、α−ピペリドンなどの重合体、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどのジアミンと、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二塩基酸、グルタール酸などのジカルボン酸と重縮合せしめて得られる重合体又はこれらの共重合体であり、たとえば、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−7、ナイロン−8、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,11、ナイロン−6,12、ナイロン−6T、ナイロン−6/ナイロン−6,6共重合体、ナイロン−6/ナイロン−12共重合体、ナイロン−6/ナイロン−6T共重合体、ナイロン−6I/ナイロン−6T共重合体等)。
【0182】
4)ゴムやエラストマー(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、二トリルゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等)。
【0183】
その他、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリアセタール、ポリスルホン、ABS、ポリエーテルエーテルケトン等の樹脂を挙げることもできる。
【0184】
上記したポリマーアロイ化に使用されるポリマーのうち、植物度を下げない観点で、ポリ乳酸やポリβ−ヒドロキシ酪酸、ポリブチレンサクシナート等が好ましく用いられる。
【0185】
ポリマーアロイ化は、通常、溶融混練により行われるが、単純な混練では相分離してしまう場合は、相溶化剤を用いたり、二次的にブロック重合やグラフト重合させたり、一方のポリマーをクラスター状に分散させたりして均一相を形成させることもできる。
【0186】
また、本発明のポリアミド重合体が示す特性を損なうことなく、ポリマーアロイ化をする観点からは、ポリマーアロイ中における本発明のポリアミド重合体の含有比率(質量基準)は、20〜100%が好ましく、50〜100%がより好ましい。
【0187】
また、本発明のポリアミド重合体は、種々のフィラーを混合して所望のポリマー物性を達成することができる。特に、耐熱性、耐久性、及び耐衝撃性改良には、フィラーの混合は有効である。
【0188】
フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラーのいずれを用いてもよい。
無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等の繊維状の無機フィラー;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等の板状や粒状の無機フィラーが有用である。
【0189】
また、有機フィラーとしては、セルロースナノファイバーやポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、アラミド繊維等の合成繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、マニラ麻、亜麻、リネン、絹、ウール等の天然繊維、微結晶セルロース、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙等から得られる繊維状の有機フィラーや、有機顔料等の粒状の有機フィラーが有用である。
【0190】
本発明のポリアミド重合体は、実際の製品として適用される多くの場合、難燃剤が混合された複合材料として使用されることが好ましい。難燃剤はポリマー材料を燃え難くし、或いは炎が広がらないようにする素材である。難燃剤としては、主に、ハロゲン系(臭素及び塩素化合物)化合物やリン系化合物(芳香族のリン酸エステル等)が利用される。
しかし、これらの難燃剤は、火災の際に人体に有害な物質を発生したり、環境有害物質を生成したりするので改良が求められている。かかる観点からは、難燃効果と環境安全性の観点で優れているとして最近着目される、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムについても、本発明のポリアミド重合体に併用される難燃剤として好ましく用いられる。
【0191】
難燃剤と併用して難燃性を高めたり、樹脂表面に炭化皮膜を形成したりして火災の広がりを抑える素材(難燃助剤)も、本発明のポリアミド重合体を含む複合材料としてに有用である。具体的には、無機系ではアンチモン化合物、有機系芳香族化合物(フェノール誘導体等)が好ましく用いられる。
【0192】
前記複合材料は、さらに、吸湿抑制剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含むことが好ましい。また必要に応じてその他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
吸湿抑制剤、光安定剤及びその他の添加剤については既述の通りであり、好ましい態様も同様である。
【0193】
上記記載の素材を混合して得られる本発明の複合材料は、種々の方法で賦形(成形)することができる。成形方法しては、例えば、押出成形、射出成形等が用いられる。そのようにして得られた成形体の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、自動車、家電、電気・電子機器(OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)の構成部品、機械部品、住宅・建築用材料、コンテナ・ボトルなどの各種容器、等が挙げられる。
【0194】
<成形体>
本発明の成形体は、前記ポリアミド重合体の少なくとも1種を含み、必要に応じてその他の添加剤を含んで構成される。その他の添加剤としては例えば、上述の複合材料で添加する添加剤を用途に応じて適宜配合すればよい。中でも、難燃剤、吸湿抑制剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含むことが好ましい。
前記成形体は前記ポリアミド重合体を含むことで耐熱性に優れ、更に密度が低いため軽量化が可能である。
成形体の形状は特に制限されず、目的に応じて適宜選択される。例えば、シート、フィルム、繊維、電子筐体、センサーレンズ、LEDランプ、ヒューズカバー、ICカード等を挙げることができる。
また前記成形体は既述の複合材料を含んで構成されてもよい。
【0195】
<フィルム>
本発明のフィルムは前記ポリアミド重合体の少なくとも1種を含み、必要に応じてその他の添加剤を含んで構成される。その他の添加剤としては例えば、上述の複合材料で添加する添加剤を用途に応じて適宜配合すればよい。中でも、難燃剤、吸湿抑制剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含むことが好ましい。
前記ポリアミド重合体を含むことで、耐熱性に優れ、透明性が高く、軽量なフィルムを構成することができる。
【0196】
フィルムの厚さは用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば4μm〜1000μm、好ましくは25μm〜500μm程度とすればよい。
フィルムの製造方法は特に制限されず、通常用いられるフィルム形成方法から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリアミド重合体を有機溶媒に溶解させて塗布するキャスト成膜等を挙げることができる。
【0197】
<繊維>
本発明の繊維は、前記ポリアミド重合体の少なくとも1種を含み、必要に応じてその他の添加剤を含んで構成される。その他の添加剤としては例えば、上述の複合材料で添加する添加剤を用途に応じて適宜配合すればよい。中でも、難燃剤、吸湿抑制剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含むことが好ましい。
前記ポリアミド重合体を含むことで、耐熱性に優れ、軽量な繊維を構成することができる。
繊維を構成する単繊維の太さは特に制限されず目的に応じて適宜選択できる。また繊維の製造方法も特に制限されず、通常用いられる繊維の製造方法から目的に応じて適宜選択することができる。
【0198】
<多孔フィルム>
本発明の多孔フィルムは、前記ポリアミド重合体の少なくとも1種を含んでなり、少なくとも1つの空孔を内部に有している。内部に空孔を含むことで、断熱性、遮音性、耐震性、低誘電特性、分離性、耐衝撃性、拡散性などを向上させることができる。
また多孔フィルムが内部に有する空孔は、連続孔であっても独立孔であってもよいが、独立孔であることが好ましい。ここで独立孔とは多孔フィルムの内部に存在する複数の空孔がお互いに連通しておらず、それぞれの空孔がポリアミド重合体を含む孔壁により区画化されている状態を意味する。また連続孔とは多孔フィルムの内部に存在する複数の空孔のうち少なくとも2つが連通しており、それぞれの空孔を形成するポリアミド重合体を含む孔壁の少なくとも一部に貫通孔が存在している状態を意味する。
【0199】
前記多孔フィルムは、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては例えば、上述の複合材料で添加する添加剤を用途に応じて適宜配合すればよい。中でも、難燃剤、吸湿抑制剤及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含むことが好ましい。
【0200】
また前記多孔フィルムは、必要に応じてフィルム内に無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては例えば、アルミナ、硫化カドミウム、アパタイト等の無機物粒子や、機粒子・酸化チタン複合体等の複合粒子などが挙げられる。
【0201】
前記多孔フィルムがその内部に有する空孔の形状は特に制限されない。断面形状を観察した場合に、円形から楕円形またはそれらに近似した形状となるものが好ましく、円形またはそれに近似した形状となるものがより好ましい。
【0202】
前記多孔フィルムがその内部に有する空孔の大きさは特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、空孔は平均孔径が0.5μm以上50μm以下であることが好ましく、平均孔径が0.5μm以上30μm以下であることがより好ましく、平均孔径が0.5μm以上15μm以下であることがさらに好ましい。
【0203】
例えば多孔フィルムを拡散板に適用した場合に、空孔の平均孔径が50μm以下であると、入射光が多孔フィルムの内部にまで浸透することを抑制でき、また空孔界面での乱反射の回数が減少することを抑制でき、拡散反射率が向上する傾向がある。なお、平均孔径が可視光の波長よりも小さくなると入射光が透過するので、平均孔径は少なくとも可視光の波長以上であることが好ましい。
ここで、空孔の平均孔径はASTM−F−316−70に規定されているバブルポイント法により測定される。
【0204】
前記多孔フィルムの平均厚さは特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば多孔フィルムを拡散板に適用した場合には、拡散反射率と形状保持性の観点から、平均厚さは50μm以上であることが好ましく、50μm以上500μm以下であることがより好ましく、100μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
尚、多孔フィルムの平均厚さは、多孔フィルムの厚さをデジタルリニアゲージDG−525H(小野測器製)を用いて3点測定し、その算術平均として算出される。
【0205】
前記多孔フィルムの比重は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば多孔フィルムを拡散板に適用した場合に、拡散反射率の観点から、0.7以下であることが好ましく、0.01以上0.7以下であることがより好ましく、0.1以上0.4以下であることがさらに好ましい。
多孔フィルムの比重が0.7以下、すなわち空隙率が大きくなると拡散反射率がより向上する。これは例えば、空隙率が大きくなると、空孔が存在しない樹脂部分における光吸収や多孔フィルムの透明化による光透過などによる光損失が抑制されるためと考えることができる。
尚、多孔フィルムの比重は、精密比重計AUW120D(SHIMADZU製)を用いて通常の条件で測定される。
【0206】
また多孔フィルムにおける空孔率は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば空孔率は60〜90%であることが好ましく、65〜83%であることがより好ましい。
ここで空孔率は、多孔フィルムの見かけの体積と、水銀圧入法(ASTM−D−2873−70)により圧入された水銀の体積との比から算出される。
【0207】
前記多孔フィルムの反射率は特に制限されない。中でも、波長300nm〜800nmにおける平均反射率が95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。平均反射率が前記範囲内であると、多孔フィルムを用いて光反射板を構成した場合に十分な光量を得ることができる。
尚、反射率は分光光度計(UV−3101C:島津製作所製)を用いて300nm〜800nmの波長域で測定した。なお、標準白色版には硫酸バリウムの微粉末を固めた白板を用いた。
【0208】
前記多孔フィルムの光沢度は特に制限されない。中でも、入射角60度以下で、波長400nm〜800nmの光を入射して測定したときに、50以上が好ましく、60以上がより好ましく、70以上が更に好ましく、80以上が特に好ましい。
尚、光沢度とはJIS規格のZ8741に記載される定義に準ずる。また光沢度は変角光沢計VG−1001DP(商品名、日本電色工業(株)製)を用いて、波長400nm〜800nmを含む光を60度(°)入射、60度受光の条件で測定して求められる。
【0209】
前記多孔フィルムは、200℃における熱収縮率が、直交する2方向ともに、好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.2%以下、最も好ましくは0.1%以下である。この範囲の熱収縮率であることで、例えば高い耐熱性を備える光反射板用白色フィルムを構成することができる。
尚、熱収縮率は以下のようにして算出される。すなわちフィルムサンプル(0.5cm×2.0cm片)を作製し、引張荷重100mNの条件下、TMA(リガク(株)製、TMA8310)の引張荷重法にて、200℃で1時間加熱した場合の寸法変化量を測定し、測定前のサンプル長で除した値であるフィルムの寸法変化率として算出される。
【0210】
前記多孔フィルムは、溶液キャスト法により製造されることが好ましい。多孔フィルムは通常、ポリアミド重合体を溶液中から相分離させる方法によって形成されるが、本発明においてもかかる方法が好ましく使用される。かかる方法の詳細については、例えば特公昭55−38366号公報等に記載されている。前記多孔フィルムは例えば、相分離(スピノーダル分解)、コアセルベーションを経て形成される。このようなプロセスは単一の親溶剤の揮発過程で形成される場合もあれば、親溶剤/貧溶剤の混合溶剤の揮発過程で形成される場合もある。また親溶剤のポリマー溶液に対して非溶剤の誘起によって相分離を促進させることも可能である。非溶剤による誘起は、非溶剤蒸気による暴露および非溶剤浴への浸漬、もしくはその両方の組み合わせが用いられる。
ここで、親溶剤はポリアミド重合体を十分溶解しうる溶剤を意味し、貧溶剤はポリアミド重合体を実質的に溶解しないが膨潤させる溶剤を意味し、非溶剤はポリマーを実質的に溶解、膨潤させない溶剤を意味する。
【0211】
本発明において、親溶剤、貧溶剤および非溶剤は、主としてポリアミド重合体に対する溶解作用、膨潤作用によって決定される相対的な定義である。従ってかかる定義と溶剤の具体例とを一義的に対応させることは一般には困難である。すなわち用いるポリアミド重合体の構造によって親溶剤、貧溶剤、非溶剤の種類が異なったり、あるいは入れ替わったりすることがある。しかし、これらの関係はポリアミド重合体の化学的、物理的性質に基づくものであり、当業者であれば誰もが通常の知識に基づいてポリアミド重合体と3種類の溶剤を容易に選択できるので、本発明においてこれらの関係を特に問題にする必要はない。
【0212】
ポリアミド重合体、親溶剤、貧溶剤及び非溶剤の溶解混合方法は特に制限されない。例えば、ポリアミド重合体を親溶剤に溶解した後、貧溶剤と非溶剤とを加える方法、ポリアミド重合体を親溶剤と貧溶剤の一部の混合物に加えて溶解し、この溶液に残りの貧溶剤を加え、更に非溶剤を加える方法などのいずれの方法を用いてもよい。
また各溶剤の混合比率、混合時の温度(溶剤の沸点以下が好ましいという条件はある)などの条件には何ら制限はない。更にある場合においては貧溶剤と非溶剤の一方が使用されないこともある。すなわち無機塩などを使用することによって親溶剤と、貧溶剤又は非溶剤とを組み合わせればよいこともある。しかしながら、調製されたポリアミド重合体溶液が安定であれば、以後の操作が簡単になるので、安定な溶液となるように溶解、混合を行なうことが望ましい。ここで安定な溶液とはポリアミド重合体が溶液中でゲル化や相分離することのない溶液である。安定な溶液を構成するためには、溶液中の親溶剤の量を他の溶剤のそれぞれの量よりも多くしたり、あるいはポリアミド重合体を親溶剤の全部と品溶剤の一部との混合物に加えて溶解させたりするなどの手法を採用することもできる。
【0213】
ポリアミド重合体溶液に用いる有機溶剤としては、キシレン、ナフタレン及びトルエン等の芳香族炭化水素;ジオクチルフタレート、ジメトキシオキシエチルフタレート及びジメチルフタレート等のフタル酸エステル;トリフェニルホスフェート及びトリクレジルホスフェート等のリン酸エステル類;グリセロールトリアセテート、エチルフタリルエチルグリコレート及びメチルフタリルエチルグリコレート等の多価アルコールエステル類;灯油やケロシン等の鉱油;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類;メチレンクロライド、クロロホルム及び1,1−ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル及び酢酸エチル等のエステル類;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の窒素化合物などが挙げられる。
【0214】
これらの溶剤を1種単独あるいは2種以上の溶剤による混合溶剤として用いることができる。また本発明においては使用するポリアミド重合体の連結基や重合度によって、適切な溶剤を選択することが好ましい。
ポリアミド重合体溶液におけるポリアミド重合体濃度としては、ポリアミド重合体の種類や溶剤の種類によって適宜選択することでできる。連続した多孔フィルムを形成する関係からある程度濃度が高い方が好ましい。例えば15質量%前後が好ましい。
【0215】
調製したポリアミド重合体溶液は、アプリケーターを用いてガラス板、プラスチックフィルムあるいは金属板等の支持体上に50μmから500μmの厚さに流延(引き延)される。親溶剤、もしくは親溶剤/貧溶剤の混合溶剤の揮発過程で相分離が起こる場合は、溶剤揮発後、フィルムを支持体から剥離・乾燥すれば多孔フィルムが得られる。
非(貧)溶剤の誘起により相分離を促進する場合は、塗布後、直ちにあるいは溶剤の一部を揮発させた後、もしくは一定時間非(貧)溶剤の蒸気に暴露した後、非(貧)溶剤中に支持体ごと浸漬して相分離を誘起し、多孔膜を形成する。
【0216】
非(貧)溶剤としては親溶剤と相互に溶解性が高く、且つポリアミド重合体に対して貧溶剤あるいは非溶剤である溶剤が使用される。具体的には、取扱い性のよさ、安価であることや安全性などから、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール類や水が好ましい。
【0217】
流延する時のポリアミド重合体溶液の温度は室温であることが一般的だが、使用する溶剤系によっては100℃前後の高温で流延し、空気中で冷却したり、室温若しくは室温以下の低温に冷却した凝固液中に浸漬して急冷したりしてもよい。
上記では多孔フィルムの製造方法として、親溶剤と非(貧)溶剤を用いる方法について主に説明したが、親溶剤の揮発過程で相分離が起こる場合には、親溶剤のみで多孔フィルムを形成することも可能である。
【0218】
<反射板>
本実施形態にかかる反射板は、平均孔径が0.5μm以上50μm以下である独立孔を有する前記多孔フィルムを少なくとも備え、必要に応じてその他の構成要素を備えて構成される。特定の平均孔径を有する独立孔を有する多孔フィルムを反射層として備えることで、優れた拡散反射率を達成することができる。
前記反射板は、例えば液晶表示装置の反射板として好適に用いられる。
【実施例】
【0219】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0220】
<合成例1>
(ジカルボン酸化合物(1e)の合成)
【0221】
【化32】

【0222】
92%デヒドロアビエチン酸((1a)、荒川化学工業製)30.0gと塩化メチレン60mlの混合物に、塩化オキサリル13.4gを室温で滴下した。3時間撹拌した後、溶媒を減圧留去し、そこにメタノール16.0gを滴下した。室温で3時間撹拌後、過剰のメタノールを減圧留去し、化合物(1b)の白色結晶31.4gを得た。
【0223】
(1b)、31.4g、塩化アセチル9.4gおよび塩化メチレン80mlの混合物に無水塩化アルミニウム29.3gを少量ずつ3〜5℃で加えた。5〜8℃で2時間撹拌した後、反応液を500gの氷水に注いだ。酢酸エチル200mlを加えて有機層を抽出した。食塩水で洗浄、無水塩化マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、残渣に冷メタノール50mlを加えて析出した化合物(1c)の白色結晶をろ取した。収量は32.8gであった。
【0224】
水酸化ナトリウム32.0gを水100mlに溶かし、そこに臭素25.6gを8〜10℃で滴下した。さらに、(1c)、17.8gをジメトキシエタン100mlに溶かした液を10〜12℃で滴下した。室温で2時間攪拌した後、反応液を6N冷希塩酸に注いで酸性とし、析出した白色結晶を濾取した。結晶をメタノールから再結晶して化合物(1d)の結晶14.9gを得た。
化合物(1d)のH−NMRデータを以下に示す。
【0225】
1H-NMR(300 MHz, CDCl3) δ1.20〜1.88(m, 19H), 2.17〜2.40(dd,2H), 2.91(t, 2H),3.66(s,3H),3.87(m,1H), 7.07(s, 1H), 7.86(s, 1H)
【0226】
水酸化ナトリウム8.0gを水30mlに溶かし、そこにエチレングリコール20mlおよび(1d)、7.16gを加えて3時間加熱還流した。冷却後、6N塩酸で中和し、生成した1eの白色結晶を濾過、水洗、乾燥し、(1e)を6.91g得た。
得られた化合物(1e)のH−NMRチャート(溶媒:CDCl)を図1に示す。
【0227】
<合成例2>
(ジカルボン酸化合物(2a)の合成)
【0228】
【化33】

【0229】
92%デヒドロアビエチン酸((1a)、荒川化学工業製)75g、無水コハク酸37.5gおよび塩化メチレン500mlの混合物を室温で攪拌し、完全に溶解させた。次いで、氷冷下、塩化アルミニウム150gを20〜25℃で少量ずつ加えた。20〜23℃で3時間攪拌した後、反応液を2lの氷水に注ぎ、1lの酢酸エチルで抽出した。抽出液を食塩水で十分に洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを減圧留去した。残渣にメタノール300mlを加え、析出した結晶を濾取してジカルボン酸化合物(2a)の白色結晶69gを得た。
【0230】
<合成例3>
(ジカルボン酸化合物(3a)の合成)
【0231】
【化34】

【0232】
ジカルボン酸化合物(2a)、81.3g、90%抱水ヒドラジン34.8ml、水酸化カリウム36.3gおよびテトラエチレングリコール270mlの混合物を100℃で2時間、180℃で2時間さらに230℃で6時間加熱攪拌した。放冷後、反応液を冷希塩酸1.5lに注いで中和し、酢酸エチルで抽出した。抽出液を十分水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し酢酸エチルを減圧留去した。残渣の無色液体にn−ヘキサンを加えて結晶化させ、ジカルボン酸化合物(3a)の無色結晶を濾取した。収量は58.9gであった。
【0233】
<合成例4>
(ジカルボン酸化合物(4a)の合成)
【0234】
【化35】

【0235】
92%デヒドロアビエチン酸((1a)、荒川化学工業製)120g、36%ホルマリン20mlおよび塩化メチレン200mlの混合物に10〜15℃でトリフルオロ酢酸200mlを滴下した。15〜20℃で8時間攪拌した後、塩化メチレンとトリフルオロ酢酸を減圧留去した。残渣に水2lを加え、灰白色結晶を濾過、十分に水洗した。乾燥後、1lの熱n−ヘキサンを加えて1時間攪拌し、放冷後、(4a)の白色結晶を濾取した。収量は118gであった。
【0236】
<合成例5>
(ジカルボン酸化合物(5d)の合成)
【0237】
【化36】

【0238】
92%デヒドロアビエチン酸((1a)、荒川化学工業製)60gと塩化メチレン120mlの混合物に、塩化オキサリル26.8gを室温で滴下した。3時間撹拌した後、溶媒と過剰の塩化オキサリルを減圧留去し、そこに塩化メチレン40mlと1,3−プロパンジオール7.6gを加えた。30〜35℃で5時間撹拌後、塩化メチレンを減圧留去し、残渣に冷メタノール50mlを加えて化合物(5b)の白色結晶55.8gを得た。
【0239】
化合物(5b)、32.1gと塩化メチレン100mlの混合物に無水酢酸12.2gを室温で加え、さらに5〜10℃で無水塩化アルミニウム44gを加えた。8〜10℃で3時間攪拌した後、反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。抽出液を食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを減圧留去した。残渣をメタノールから再結晶して化合物(5c)の白色結晶32.9gを得た。
【0240】
水酸化ナトリウム25.6gを冷水100mlに溶かし、そこに臭素20.5gを8〜10℃で滴下した。次いで、化合物(5c)、14.5gをジメトキシエタン100mlに溶かした液を8〜10℃で滴下し、8〜10℃で1時間攪拌した後、水100mlを加えて30〜35℃で2時間攪拌した。氷冷下、反応液に塩酸を加えて酸性にし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、酢酸エチルを減圧留去した。残渣に酢酸エチル/n−ヘキサン(1:1混合液)30mlを加え、析出したジカルボン酸化合物(5d)の白色結晶を濾取した。収量は9.5gであった。
【0241】
<実施例1>
(ポリアミド重合体(PA−1)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−1)を製造した。
【0242】
【化37】

【0243】
ジカルボン酸化合物(1e)の結晶6.88gを塩化メチレン80mlに分散し、塩化オキサリル5.59gおよびジメチルホルムアミド0.3mlを加えて5時間加熱還流した。この間に結晶は完全に溶解した。放冷後、溶媒を減圧留去し、残渣に酢酸エチル10mlとn−ヘキサン30mlを加え、ジカルボン酸化合物(1e)の酸クロリドの白色沈殿を濾取、減圧乾燥した。収量は6.5gであった。
【0244】
ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン(DA−8)1.08gをピリジン30mlに加え、窒素雰囲気下、45℃に加熱して溶解させた。この液を15℃まで冷却し、そこに上記ジカルボン酸化合物(1e)の酸クロリド3.81gを少量ずつ加えた。反応液は徐々に粘稠となった。室温で2時間撹拌した後、反応液にメタノール100mlを加え、生成したPA−1を濾別、メタノールで洗浄した。このものを乾燥後、ジメチルホルムアミド50mlに加熱溶解し、メタノール500mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。乾燥後、PA−1の白色固体4.24gを得た。
ポリアミド重合体PA−1の分子量を、GPC(溶媒:NMP)にて測定すると、Mw=111,000であった。また、ポリアミド重合体の熱物性としてDSCにより昇温速度10℃/分で測定したガラス転移温度Tgは、>300℃であった。なおTgは示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー社製、DSC6200)を用いて、30〜400℃の温度範囲について、窒素気流下に昇温速度10℃/min.の条件で測定した。
またPA−1のH−NMRスペクトルを測定した。PA−1のH−NMRチャート(溶媒:DMSO−d)を図2に示す。
図2から、PA−1は下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認できた。
【0245】
【化38】

【0246】
<実施例2>
(ポリアミド重合体(PA−2)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−2)を製造した。
【0247】
【化39】

【0248】
ジアミン化合物4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DA−14)1.98gをピリジン40mlに加え、室温で攪拌して溶解させた。次いで、窒素雰囲気下、ジカルボン酸化合物(1e)の酸クロリド3.81gを室温で少量ずつ加えた。室温で2時間撹拌した後、反応液にメタノール100mlを加え、生成したPA−2を濾別、メタノールで洗浄した。このものを乾燥後、ジメチルホルムアミド50mlに加熱溶解し、メタノール500mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。メタノールで洗浄、乾燥してPA−2の白色固体4.9gを得た。実施例1と同様の方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=85,000、Tg=287℃
PA−2のH−NMRスペクトルを測定した。PA−2のH−NMRチャート(溶媒:DMSO−d)を図3に示す。図3からPA−2が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認できた。
【0249】
【化40】

【0250】
<実施例3>
(ポリアミド重合体(PA−3)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−3)を製造した。
【0251】
【化41】

【0252】
ジアミン化合物4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DA−13)2.0gをピリジン40mlに加え、室温で攪拌して溶解させた。次いで、窒素雰囲気下、ジカルボン酸化合物(1e)の酸クロリド3.81gを室温で少量ずつ加えた。室温で2時間撹拌した後、反応液にメタノール100mlを加え、生成したPA−3を濾別、メタノールで洗浄した。このものを乾燥後、ジメチルホルムアミド50mlに加熱溶解し、メタノール500mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。メタノールで洗浄、乾燥してPA−3の白色固体5.0gを得た。実施例1と同様の方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=78,000、Tg=280℃
PA−3のH−NMRを測定した。PA−3のH−NMRチャート(溶媒:DMSO−d)を図4に示す。図4から、PA−3が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認できた。
【0253】
【化42】

【0254】
<実施例4>
(ポリアミド重合体(PA−4)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−4)を製造した。
【0255】
【化43】

【0256】
ジカルボン酸化合物(4a)の結晶12.3gを塩化メチレン100mlに分散し、塩化オキサリル5.59gおよびジメチルホルムアミド0.3mlを加えて5時間加熱還流した。この間に結晶は完全に溶解した。放冷後、溶媒を減圧留去し、残渣に酢酸エチル10mlとn−ヘキサン30mlを加え、ジカルボン酸化合物(4a)の酸クロリドを濾取、減圧乾燥した。収量は10.9gであった。
【0257】
ジアミン化合物ビス−3−アミノプロピルエーテル(DA−7)1.32gおよび4−ジメチルアミノピリジン4.4gをピリジン30mlに溶かし、窒素雰囲気下、上記ジカルボン酸化合物(4a)の酸クロリド6.50gを少量ずつ加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液を冷希塩酸に注ぎ、生成した沈殿を濾別、十分に水洗した。このものを乾燥後、N−メチルピロリドン80mlに加熱溶解し、メタノール500mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。沈殿を濾取、メタノールで洗浄、乾燥してPA−4の白色固体5.9gを得た。実施例1と同様の方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=33,000、Tg=148℃
PA−4のH−NMRを測定した。PA−4のH−NMRチャート(溶媒:DMSO−d)を図5に示す。図5からPA−4が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認できた。
【0258】
【化44】

【0259】
<実施例5>
(ポリアミド重合体(PA−5)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−5)を製造した。
【0260】
【化45】

【0261】
ジアミン化合物ヘキサメチレンジアミン(DA−1)1.16gおよび4−ジメチルアミノピリジン4.4gをピリジン30mlに溶かし、窒素雰囲気下、上記ジカルボン酸化号物(4a)の酸クロリド6.50gを少量ずつ加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液を冷希塩酸に注ぎ、生成した沈殿を濾別、十分に水洗した。このものを乾燥後、N−メチルピロリドン80mlに加熱溶解し、メタノール500mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。沈殿を濾取、メタノールで洗浄、乾燥してPA−5の白色固体5.8gを得た。実施例1と同様の方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=36,200、Tg=177℃
PA−5のH−NMRを測定し、PA−5が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認した。
【0262】
【化46】

【0263】
<実施例6>
(ポリアミド重合体(PA−6)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−6)を製造した。
【0264】
【化47】

【0265】
ジアミン化合物デカメチレンジアミン(DA−3)1.72gおよび4−ジメチルアミノピリジン4.4gをピリジン30mlに溶かし、窒素雰囲気下、上記ジカルボン酸化合物(4a)の酸クロリド6.50gを少量ずつ加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液を冷希塩酸に注ぎ、生成した沈殿を濾別、十分に水洗した。このものを乾燥後、N−メチルピロリドン60mlに加熱溶解し、メタノール500mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。沈殿を濾取、メタノールで洗浄、乾燥してPA−6の白色固体6.5gを得た。実施例1と同様の方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=38,300、Tg=130℃
PA−6のH−NMRを測定し、PA−6が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認した。
【0266】
【化48】

【0267】
<実施例7>
(ポリアミド重合体(PA−7)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−7)を製造した。
【0268】
【化49】

【0269】
ジカルボン酸化合物(2a)4.0gをピリジン40mlに溶かし、クロロ炭酸イソブチル3.0gを10〜15℃で滴下した。15℃で1時間攪拌した後、この液をジアミン化合物p−フェニレンジアミン(DA−8)1.08gをピリジン30mlに加熱溶解させた液に室温で少量ずつ加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液を冷希塩酸に注ぎ、生成した沈殿を濾別、水洗した。このものを乾燥後、ジメチルアセタミド40mlに加熱溶解し、メタノール400mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。沈殿を濾取、メタノールで洗浄、乾燥してPA−7の白色固体5.9gを得た。
実施例1と同様の方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=31,400、Tg=238℃
PA−7のH−NMRを測定し、PA−7が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認した。
【0270】
【化50】

【0271】
<実施例8>
(ポリアミド重合体(PA−8)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−8)を製造した。
【0272】
【化51】

【0273】
ジカルボン酸化合物(3a)、3.86gを塩化メチレン20mlに溶かし、ここに塩化オキサリル2.68gを加えて室温で3時間攪拌した。溶媒と過剰の塩化オキサリルを減圧留去し塩化メチレン5mlを酸クロリドの溶液とした。
【0274】
ジアミン化合物4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DA−14)1.98gをピリジン40mlに加え、室温で攪拌して溶解させた。次いで、窒素雰囲気下、上記の酸クロリド溶液を室温で滴下した。室温で2時間撹拌した後、反応液にメタノール100mlを加え、生成したPA−8の沈殿を濾別、メタノールで洗浄した。このものを乾燥後、ジメチルホルムアミド30mlに加熱溶解し、メタノール300mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。メタノールで洗浄、乾燥してPA−8の白色固体3.2gを得た。実施例1と同様な方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=36,000、Tg=216℃
PA−8のH−NMRを測定し、PA−8が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認した。
【0275】
【化52】

【0276】
<実施例9>
(ポリアミド重合体(PA−9)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−9)を製造した。
【0277】
【化53】

【0278】
ジカルボン酸化合物(5d)7.29gを塩化メチレン50mlに溶かし、ここに塩化オキサリル2.68gを加えて室温で3時間攪拌した。溶媒と過剰の塩化オキサリルを減圧留去し、塩化メチレン10mlを酸クロリドの溶液とした。
【0279】
ジアミン化合物4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DA−14)1.98gをピリジン40mlに加え、室温で攪拌して溶解させた。次いで、窒素雰囲気下、上記ジカルボン酸化合物(5d)の酸クロリド溶液を室温で滴下した。室温で3時間撹拌した後、反応液にメタノール100mlを加え、生成したPA−9の白色沈殿を濾別、メタノールで洗浄した。このものを乾燥後、N−メチルピロリドン40mlに加熱溶解し、メタノール400mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。メタノールで洗浄、乾燥してPA−9の白色固体7.9gを得た。実施例1と同様な方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=72,000、Tg=241℃
PA−9のH−NMRを測定し、PA−9が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認した。
【0280】
【化54】

【0281】
<実施例10>
(ポリアミド重合体(PA−10)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−10)を製造した。
【0282】
【化55】

【0283】
ジアミン化合物p−フェニレンジアミン(DA−8)0.54gおよびジアミン化合物m−フェニレンジアミン(DA−9)0.54gをピリジン30mlに加え、窒素雰囲気下、45℃に加熱して溶解させた。この液を15℃まで冷却し、そこにジカルボン酸化合物(1e)の酸クロリド3.81gを少量ずつ加えた。室温で2時間撹拌した後、反応液にメタノール100mlを加え、生成したPA−10を濾別、メタノールで洗浄した。このものを乾燥後、ジメチルホルムアミド40mlに加熱溶解し、メタノール400mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。沈殿を濾過、メタノールで洗浄、乾燥してPA−10の白色固体4.18gを得た。実施例1と同様な方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=202,000、Tg=>300℃
PA−10のH−NMRを測定し、PA−10が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造と2種のジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認した。
【0284】
【化56】

【0285】
<実施例11>
(ポリアミド重合体(PA−11)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−11)を製造した。
【0286】
【化57】

【0287】
ジアミン化合物1,4−シクロヘキサンジアミン(DA−11)1.14gおよび4−ジメチルアミノピリジン4.4gをピリジン30mlに溶かし、窒素雰囲気下、上記ジカルボン酸化合物(4a)の酸クロリド6.50gを少量ずつ加えた。室温で3時間撹拌した後、反応液を冷希塩酸に注ぎ、生成した沈殿を濾別、十分に水洗した。このものを乾燥後、N−メチルピロリドン60mlに加熱溶解し、メタノール600mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。沈殿を濾取、メタノールで洗浄、乾燥してPA−6の白色固体6.1gを得た。実施例1と同様な方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=29,300、Tg=215℃
PA−11のH−NMRを測定し、PA−11が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認した。
【0288】
【化58】

【0289】
<実施例12>
(ポリアミド重合体(PA−12)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−12)を製造した。
【0290】
【化59】

【0291】
ジアミン化合物m−フェニレンジアミン(DA−9)1.08gをピリジン30mlに加え、窒素雰囲気下、45℃に加熱して溶解させた。この液を15℃まで冷却し、そこにジカルボン酸化合物(1e)の酸クロリド1.91gとテレフタル酸クロリド1.02gの混合物を少量ずつ加えた。
室温で2時間撹拌した後、反応液にメタノール100mlを加え、生成したPA−12を濾別、メタノールで洗浄した。このものを乾燥後、ジメチルホルムアミド40mlに加熱溶解し、メタノール400mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。沈殿を濾過、メタノールで洗浄、乾燥してPA−12の白色固体3.12gを得た。実施例1と同様な方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。Mw=119,000、Tg=286℃
PA−12のH−NMRを測定し、PA−12がデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認した。
【0292】
【化60】

【0293】
<実施例13>
(ポリアミド重合体(PA−13)の合成)
以下のようにしてポリアミド重合体(PA−13)を製造した。
【0294】
【化61】

【0295】
ジアミン化合物4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジアニリン(DA−22)2.92gをピリジン30mlに加え、窒素雰囲気下、45℃に加熱して溶解させた。この液を15℃まで冷却し、そこにジカルボン酸化合物(1e)の酸クロリド3.81gを少量ずつ加えた。室温で2時間撹拌した後、反応液にメタノール100mlを加え、生成したPA−13を濾別、メタノールで洗浄した。このものを乾燥後、ジメチルホルムアミド40mlに加熱溶解し、メタノール400mlに少量ずつ注いで再沈殿させた。沈殿を濾過、メタノールで洗浄、乾燥してPA−13の白色固体4.56gを得た。
実施例1と同様な方法で分子量とガラス転移点を測定し、以下の結果を得た。
Mw=80,000、Tg=254℃
PA−13のH−NMRを測定し、PA−13が下記のデヒドロアビエチン酸に由来する構造とジアミン化合物由来の構造を含んでいることを確認した。
【0296】
【化62】

【0297】
<比較例1>〜<比較例4>
比較例で使用した重合体の製品名とガラス転移温度Tgを以下に示す。Tgは実施例と同様の測定方法により求めた。
【0298】
(ポリアミド−6)
宇部興産製UBEナイロン1013B(Tg=48℃)
【0299】
(ポリアミド−66)
宇部興産製UBEナイロン2015B(Tg=50℃)
【0300】
(ポリアミド−11)
アルケマ社製Rilsan B BMF O(Tg=39℃)
【0301】
(ポリアミド−12)
ダイセルエボニック社製VESTAMID L2140(Tg=47℃)
【0302】
【表1】

【0303】
表1からわかるように、本発明のポリアミド重合体は、ガラス転移点温度が高いことが分かる。尚、Tgが100℃以上であれば耐熱性に優れていると言える。
このことは本発明のポリアミド重合体から得られる材料は耐熱性が高いことを示している。
【0304】
<実施例14>
<フィルムの製造>
ポリアミド重合体PA−1をN−メチルピロリドン(NMP)に10質量%の濃度で溶解させ、これを対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で加圧ろ過しドープを作製した。作製したドープを、ドクターブレードを用いてガラス基板上に流延した。流延後、110℃2時間加熱乾燥させ、その後200℃、1Torrで5時間真空乾燥させフィルムF−1を作製した。
【0305】
<実施例15〜19>
実施例14において、ポリアミド重合体PA−1の代わりに、ポリアミド重合体PA−2、3、10、12、13をそれぞれ用いたこと以外は実施例14と同様にしてフィルムF−2〜6をそれぞれ作製した。
【0306】
<フィルム評価>
上記で得られたフィルムについて、以下の評価方法でガラス転移温度、密度、全光線透過率、膜厚を評価した。評価結果を表2に示す。
また参考例として市販の耐熱性の芳香族ポリアミドフィルムであるアラミドフィルム(東レ製ミクトロン、以下、「RF−1」)について、上記と同様にして評価した。
【0307】
(ガラス転移点温度(Tg))
得られたフィルムから5mm×22mmの短冊状試験片を切り出し、これを動的粘弾性測定装置Rheogel−E4000(UBM製)にて、引っ張りモードで温度範囲25℃〜350℃の正接損失(tanδ)を測定した。正接損失(tanδ)が極大値を示す温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0308】
(密度測定)
得られたフィルムについて、精密比重計AUW120D(SHIMADZU製)を用いて密度を測定した。
【0309】
(全光線透過率測定)
得られたフィルムの全光線透過率を、ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)社製)を用いて測定した。測定は3箇所行い、その算術平均値を求めた。
【0310】
(膜厚測定)
得られたフィルムの膜厚を、デジタルリニアゲージDG−525H(小野測器製)にて測定した。測定は3箇所行い、その算術平均値を求めた。
【0311】
(植物由来度)
植物由来度を、以下の式に従って算出した。
(式) 植物由来度(%)=
重合体の構成成分中の植物由来質量/重合体の構成成分総質量
【0312】
【表2】

【0313】
表2からわかるように、本発明のポリアミド重合体を含むフィルムは、耐熱性に優れることが分かる。また密度が非常に低く、さらに全光線透過率が高いことがわかる。
すなわち本発明のポリアミド重合体を用いることで、耐熱性が高く、軽量かつ透明性が高いフィルムを提供できることが分かる。
【0314】
<実施例20>
(添加剤含有フィルムF−7の製造)
ポリアミド重合体PA−1(89.5質量部)、PX-200(10質量部)、Irganox1010(0.4質量部)、アデカスタブPEP36(0.1質量部)をN―メチルピロリドン(NMP)に10質量%の濃度となるように溶解させ、これを対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で加圧ろ過しドープを作製した。
作製したドープをドクターブレードを用いてガラス基板上に流延した。流延後、110℃2時間加熱乾燥させ、その後200℃、1Torrで5時間真空乾燥させて、添加剤を含むフィルムF−7を作製した。
【0315】
<実施例21〜26>
(添加剤含有フィルムF−8〜F−13の製造)
実施例2において、ポリアミド重合体及び添加剤の種類及び含有量を、表3に示すように変更したこと以外は実施例20と同様にして、添加剤を含むフィルムF−8〜F−13をそれぞれ作製した。
【0316】
<添加剤含有フィルムの評価>
上記で得られたフィルムに対して、以下の評価方法にて吸水率、難燃性、光安定性及び膜厚をそれぞれ評価した。評価結果を表3に示す。
【0317】
(吸水率試験)
吸水率は、以下のようにして測定した。実施例20〜26で得られたフィルムF−7〜13、実施例14及び15で得られたフィルムF−1及びF−2を23℃の水に24時間浸し、その後、表面の水滴をよく拭き取り、その質量を素早く測定した。吸水率を下記式から算出した。
吸水率(%)=(浸水後のフィルムの質量−浸水前のフィルムの質量)/浸水前のフィルムの質量
【0318】
(難燃性試験)
難燃性の指標として、薄手材料垂直燃焼試験 (ASTM D4804)を行った。フィルム試験片(200±5×50±1×tmm)を円筒状に巻き、クランプに垂直に取付け、20mm炎による3秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動によりVTM−0、VTM−1、VTM−2及びNotの判定を行った。
【0319】
(光安定性試験)
光安定性の指標として、室温下キセノンランプ1000h照射前後での破断強度保持率を算出した。破断強度は25℃60%RHで2時間以上調湿した後、テンシロン万能試験機(オリエンテック製)を用いてチャック間距離30mm、温度25℃、延伸速度3mm/分の条件で引っ張り試験を行い、破断強度を求めた。測定は3サンプルについて行い、その算術平均値を求めた。保持率を下式から算出した。
保持率(%)=キセノンランプ照射後の破断強度/キセノンランプ照射前の破断強度
また、そのときの着色度合いを目視にて評価した。
【0320】
(膜厚測定)
得られたフィルムの膜厚を、デジタルリニアゲージDG−525H(小野測器製)にて測定した。測定は3箇所行い、その算術平均値を求めた。
【0321】
【表3】

【0322】
尚、表3中の略号は以下の通りである。TPP、PX−200及びPX−202は難燃剤であり、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート及びポリエステルオリゴマーAは吸湿抑制剤であり、Tinuvin328、Tinuvin1577、CHIMASSORB944、及びTinuvin622は光安定剤であり、Irganox1010及びアデカスタブPEP36は酸化防止剤であり、それぞれ以下の構造を有する。
【0323】
【化63】

【0324】
【化64】

【0325】
【化65】

【0326】
【化66】

【0327】
【化67】

【0328】
【化68】

【0329】
表3から分かるように、本発明のポリアミド重合体を含む樹脂組成物は、難燃剤を添加することで難燃性が向上する。また、光安定剤を添加することで、光照射での破断強度低減が抑えられる。さらには吸湿抑制剤としてポリエステルオリゴマーを添加することで、吸水率を低減できる。これらにより、本発明のポリアミド重合体を含む樹脂組成物は添加剤を添加することで所望の物性に調整が可能であることが分かる。
【0330】
<実施例27>
(多孔フィルムの作製)
PA−1をN,N’−ジメチルホルムアミドに10質量%の濃度で溶解させ、これを対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で加圧ろ過しドープを作製した。作製したドープをドクターブレードを用いてガラス基板上に流延した。室温にて乾燥後、170℃にて1Torrで5時間真空乾燥させることで、多孔フィルムFA−11を作製した。
【0331】
<多孔フィルムの評価>
上記同様な方法にてガラス転移点温度(Tg)及び密度測定をおこなった。ガラス転移温度は325℃であった。また密度は0.2g/cmであった。
また、断面を切削して空孔径を測定したところ、平均して約10μmであった。
得られたFA−11の走査型電子顕微鏡による断面写真を図6に示す。図6から多孔フィルムは断面が円形それに近似した形状の独立孔を多数有していることが分かる。
以上から、本発明のポリアミド重合体を用いることで、簡便な方法にて、耐熱性が高い多孔フィルムを作製できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(C)で表される部分構造が、主鎖の一部を構成するポリアミド重合体。
【化1】


(式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。n及びmは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表す。Cyはヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環又は7員環を表す。*、**は結合手を表す。*はRから延びる結合手であってもよい。)
【請求項2】
前記式(C)で表される部分構造を含むジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位を含む請求項1に記載のポリアミド重合体。
【請求項3】
さらに、ジアミン化合物由来の繰り返し単位を含む請求項1又は請求項2に記載のポリアミド重合体。
【請求項4】
前記ジカルボン酸化合物由来の繰り返し単位は、下記一般式(A10)で表される繰り返し単位、下記一般式(A20)で表される繰り返し単位、及び下記一般式(A30)で表される繰り返し単位からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリアミド重合体。
【化2】


(式中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。L及びLはそれぞれ独立して、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R11は、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種を含む2価の連結基を表す。R、R、n、m、およびCyは、式(C)におけるR、R、n、m、およびCyとそれぞれ同義である。)
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリアミド重合体と、難燃剤、吸湿抑制剤、及び光安定剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含む樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリアミド重合体を含む成形体。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリアミド重合体を含む繊維。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリアミド重合体を含むフィルム。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリアミド重合体を含んでなり、空孔を内部に有する多孔フィルム。
【請求項10】
前記空孔が、平均孔径が0.5μm以上50μm以下の独立孔である請求項9に記載の多孔フィルム。
【請求項11】
溶液キャスト法で製造された請求項9又は請求項10に記載の多孔フィルム。
【請求項12】
下記一般式(A12)で表される化合物、一般式(A22)で表される化合物、及び一般式(A32)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、ジアミン化合物とを重縮合させる工程を含む、ポリアミド重合体の製造方法。
【化3】


(式中、Lは、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。Lは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。L及びLはそれぞれ独立して、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、酸素原子、及びカルボニル基からなる群から選択される少なくとも1種から構成される2価の連結基、又は、単結合を表す。R11は、アルキレン基及びアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種を含む2価の連結基を表す。Y11、Z11、Y21、Z21、Y31、及びZ31はそれぞれ独立して脱離基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。n、mはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。Cyはヘテロ原子を含んでもよい不飽和の6員環又は7員環を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−7019(P2013−7019A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166019(P2011−166019)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】