説明

ポリアリーレンエーテルとポリアリーレンスルフィドとからの改善されたブレンド

本発明は、以下の成分:(A)ポリマー鎖1個当たり平均して最大でも0.1個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A1)及びポリマー鎖1個当たり平均して少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A2)、(B)少なくとも1種のポリアリーレンスルフィド、(C)カルボキシル基を包含する少なくとも1種の官能化ポリアリーレンエーテル、(D)少なくとも1種の繊維状若しくは粒子状の充填剤並びに(E)任意に更なる添加剤及び/又は加工助剤を含有する熱可塑性成形材料に関する。そのうえまた、本発明は、本発明による熱可塑性成形材料の製造方法、成形部材、繊維、発泡体又はフィルムを製造するための前記熱可塑性成形材料の使用、並びにそのようにして得られた成形部材、繊維、発泡体及びフィルムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の成分:
(A)ポリマー鎖1個当たり平均して最大でも0.1個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A1)及びポリマー鎖1個当たり平均して少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A2)、
(B)少なくとも1種のポリアリーレンスルフィド、
(C)カルボキシル基を包含する少なくとも1種の官能化ポリアリーレンエーテル、
(D)少なくとも1種の繊維状若しくは粒子状の充填剤並びに
(E)任意に更なる添加剤及び/又は加工助剤
を含有する熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
そのうえまた、本発明は、本発明による熱可塑性成形材料の製造方法、成形部材、繊維、発泡体又はフィルムを製造するための該熱可塑性成形材料の使用、並びにそのようにして得られた成形部材、繊維、発泡体及びフィルムに関する。
【0003】
ポリアリーレンエーテルは高性能熱可塑性樹脂の群に属し、かつ、その高い耐熱変形性及び耐化学薬品性に基づき、高い要求が課せられた用途に使用される。ポリアリーレンエーテルは非晶質であり、それゆえ腐食性媒体に対して示す耐久性がしばしば不十分である。さらに、ポリアリーレンエーテルは高い溶融粘度も有し、これは大きな成形部材へと射出成形によって加工することの特に妨げとなる。高い溶融粘度は、高負荷量の充填剤又は繊維を有する成形材料の製造に際して殊に不都合である。
【0004】
耐高温性のポリアリーレンエーテルとポリアリーレンスルフィドとからの混合物は自体公知であり、かつ個々の成分と比べて、例えば改善された機械特性及びより高い耐化学薬品性を有する。
【0005】
EP−A673973からは、少なくとも0.03質量%のOH末端基を有するポリアリーレンエーテル、0.03質量%未満のOH末端基を有するポリアリーレンエーテル及びポリフェニレンスルフィドを含有するガラス繊維充填ポリマー混合物が公知である。EP−A673973の熱可塑性成形材料は、官能化ポリアリーレンエーテルを含有せず、かつ全ての適用において十分な機械特性、殊に十分な破断伸び、引張強さ及び衝撃強さを示さない。殊に燃料に対する耐久性には改善の余地がある。
【0006】
EP−A855428からは、カルボキシル基含有官能化ポリアリーレンエーテルを含有するゴム含有ポリアリーレンエーテルが公知である。EP−A855428の熱可塑性成形材料は、OH末端化ポリアリーレンエーテルを含有せず、かつ全ての適用において十分な機械特性、殊に十分な引張強さ及び衝撃強さを示さない。殊に燃料に対する耐久性には改善の余地がある。
【0007】
EP−A903376の対象は、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド及びゴムを含有し、同様に付加的に官能化ポリアリーレンエーテルも含有する熱可塑性成形材料である。EP−A903376のポリアリーレンエーテルは、せいぜい僅かな量のOH末端基を有するだけである。EP−A903376の中で使用された官能化ポリアリーレンエーテルは、その適性の点について、強化成形材料にはしばしば不十分である。係る生成物の使用は、充填された、殊に繊維強化された成形材料において、しばしば不十分な機械特性、殊に不十分な靭性及び引張強さ、並びに燃料、殊にFAM Bに対する不十分な耐久性をもたらす。
【0008】
したがって、ポリアリーレンエーテルとポリアリーレンスルフィドとからのブレンドの耐燃料性を改善するための方策は、従来技術から公知ではない。
【0009】
それに従って、本発明の課題は、前述の欠点を有さないか又はより僅かな程度でしか有さない、ポリアリーレンエーテルを基礎とする熱可塑性成形材料を提供することであった。殊に、熱可塑性成形材料は、燃料、殊にFAM Bに対する高い耐久性を有するべきである。同時に、熱可塑性成形材料は、良好な機械特性、殊に高い衝撃強さ、高い破断伸び及び高い引張強さを有するべきである。
【0010】
前述の課題は、本発明による熱可塑性成形材料によって解決される。有利な実施形態は、特許請求の範囲及び後続の説明から読み取れる。有利な実施形態の組合せは、本発明の範囲から逸脱しない。
【0011】
本発明による熱可塑性成形材料は、以下の成分:
(A)ポリマー鎖1個当たり平均して最大でも0.1個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A1)及びポリマー鎖1個当たり平均して少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A2)、
(B)少なくとも1種のポリアリーレンスルフィド、
(C)カルボキシル基を包含する少なくとも1種の官能化ポリアリーレンエーテル、
(D)少なくとも1種の繊維状若しくは粒子状の充填剤並びに
(E)任意に更なる添加剤及び/又は加工助剤
を含有する。
【0012】
本発明による熱可塑性成形材料は、その際、有利には、成分(A1)20〜88.5質量%、成分(A2)0.5〜10質量%、成分(B)5〜65質量%、成分(C)1〜15質量%、成分(D)5〜70質量%及び成分(E)0〜40質量%を含有し、その際、成分(A)〜(E)の全量に関する成分(A)〜(E)の質量%の合計は100質量%である。
【0013】
本発明による熱可塑性成形材料は、特に有利には、成分(A1)20〜73質量%、成分(A2)1〜10質量%、成分(B)10〜30質量%、成分(C)1〜15質量%、成分(D)15〜60質量%及び成分(E)0〜30質量%を含有し、その際、成分(A)〜(E)の全量に関する成分(A)〜(E)の質量%の合計は100質量%である。
【0014】
個々の成分を、続けて詳細に説明する。
【0015】
成分A
本発明により、熱可塑性成形材料は、ポリマー鎖1個当たり平均して最大でも0.1個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A1)及びポリマー鎖1個当たり平均して少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A2)を含有する。その際、"平均して"との表記は、数平均を意味する。
【0016】
フェノール性末端基が反応性であり、かつ熱可塑性成形材料中で少なくとも部分的に反応した形で存在する可能性があることは当業者にとって周知である。熱可塑性成形材料は、好ましくは、配合によって、すなわち、流動状態で成分を混合することによって製造される。相応して"以下の成分を含有する熱可塑性成形材料"との言い回しは、好ましくは、"以下の成分の配合によって得られる熱可塑性成形材料"と同等に扱う。
【0017】
フェノール末端基とは、本発明の範囲において、芳香族核に結合しており、かつ場合により脱プロトン化して存在していてもよいヒドロキシ基と解される。フェノール性末端基が、塩基の影響によるプロトンの脱離によって、いわゆるフェノラート末端基としても存在し得ることは当業者に公知である。したがって、フェノール性末端基との用語は、明示的に芳香族OH基だけでなくフェノラート基も包含する。
【0018】
フェノール性末端基の割合の測定は、好ましくは電位差滴定によって行う。このためにポリマーをジメチルホルムアミドに溶解させ、かつトルエン/メタノール中の水酸化テトラブチルアンモニウムの溶液で滴定する。終点検出は、電位差滴定により行う。ハロゲン末端基の割合の測定は、好ましくは原子分光法によって行う。
【0019】
ポリマーの全質量を基準としたフェノール性末端基(mOH)と数平均分子量(Mnp)とから、当業者は公知の方法に従って、ポリマー鎖1個当たりのフェノール性末端基の平均数を、厳密に直鎖状のポリマー鎖を想定した上で、次式:nOH=mOH[質量%]/100*np[g/モル]*1/17に則って突き止めることができる。
【0020】
代替的に、ポリマー鎖1個当たりのフェノール性末端基の平均数(nOH)は、厳密に直鎖状のポリマー鎖を前提とした上で、Cl末端基の質量割合(mCl)が同時に知られている場合、もっぱらOH末端基とCl末端基のみが存在すると想定した上で、次のように計算することができる:nOH=2/(1+(17/35.45*Cl/mOH))。当業者は、Clとは異なる末端基の場合にどのように計算法を合わせるべきかを知っている。
【0021】
制限する意図を含まず、成分(A2)はフェノール性反応末端基のその高い含有量のために成分(A)〜(D)の相容性促進剤として用いられることが見込まれる。そのうえまた、成分(A1)は不活性末端基のその高い含有量により本発明による熱可塑性成形材料の特性プロファイルをさらに改善することから、その結果、一方ではフェノール性末端基を有するポリアリーレンエーテルと、他方では不活性末端基を有するポリアリーレンエーテルとの存在が、熱可塑性成形材料の最終性質に関して相乗効果をもたらす。
【0022】
同時に末端基を制御しながらのポリアリーレンエーテルの製造は、当業者に公知であり、下記にて詳述する。公知のポリアリーレンエーテルは、通常、ハロゲン末端基、殊に−F若しくは−Cl、又はフェノール性OH末端基若しくはフェノラート末端基を有し、その際、フェノラート末端基は、それ自体で若しくは反応した形で、殊に−OCH3末端基の形で存在してよい。
【0023】
好ましくは、ポリアリーレンエーテル(A1)は、成分(A1)の質量を基準として、最大でも0.01質量%、特に有利には最大でも0.005質量%のフェノール性末端基を有する。好ましくは、ポリアリーレンエーテル(A2)は、成分(A2)の質量を基準として、そのつどOHの質量として計算して、少なくとも0.15質量%、殊に少なくとも0.18質量%、特に有利には少なくとも0.2質量%のフェノール性末端基を有する。
【0024】
成分(A1)若しくは(A2)におけるフェノール性末端基の含有量のそれぞれの上限値は、分子1個当たりにつき使用可能な末端基の数(直鎖状ポリアリーレンエーテルの場合は2個)と数平均鎖長とから得られる。相応する計算が当業者に公知である。
【0025】
好ましくは、ポリマー鎖1個当たりの成分(A1)のフェノール性末端基の平均数は、0〜0.1、殊に0〜0.08、特に有利には0〜0.05、極めて有利には0〜0.02、殊に有利には最大でも0.01である。
【0026】
好ましくは、ポリマー鎖1個当たりの成分(A2)のフェノール性末端基の平均数は、1.6〜2、殊に1.7〜2、特に有利には1.8〜2、極めて有利には1.9〜2である。
【0027】
特に有利な実施形態において、成分(A)は、そのつど成分(A)の質量を基準として、ポリアリーレンエーテル(A1)60〜99質量%とポリアリーレンエーテル(A2)1〜40質量%とからの混合物である。
【0028】
この有利な実施形態において、成分(A)は、そのつど成分(A)の質量を基準として、特に有利には70〜98質量%、殊に80〜97質量%の上述の構成成分(A1)と、2〜30質量%、殊に3〜20質量%の上述の構成成分(A2)とから成る。
【0029】
本発明によるポリアリーレンエーテル(A1)と(A2)とは−末端基を除いて−同じであってよいか又は異なる構成要素から構成されていてよく及び/又は異なる分子量を有してよい(ただし、それらが、その時になお互いに完全に混和性である限りにおいてである)。
【0030】
しかしながら、有利なのは、構成成分(A1)と(A2)とが実質的な一致を構造的に示し、殊に同一の構成要素から構成されており、かつ類似の分子量を有し、殊に該成分の一方の数平均分子量が、他方の成分の数平均分子量よりせいぜい30%を上回る場合である。
【0031】
ポリアリーレンエーテルは、当業者にポリマー種として公知である。原則的に、当業者に公知の全てのポリアリーレンエーテル及び/又は公知の方法に従って製造可能なポリアリーレンエーテルが、成分(A)の構成成分として考慮に入れられる。相応する方法を、これより下で説明する。
【0032】
成分(A)の範囲において有利なポリアリーレンエーテル(A1)及び(A2)は、互いに無関係に、一般式Iの構成要素から構成されている:
【化1】

[式中、符号t、q、Q、T、Y、Ar及びAr1は、以下の意味を有する:
t、q:互いに無関係に、0、1、2又は3、
Q、T、Y:互いに無関係に、それぞれ化学結合又は−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−及び−CRab−から選択された基、その際、Ra及びRbは、互いに無関係に、それぞれ水素原子又はC1〜C12−アルキル基、C1〜C12−アルコキシ基又はC6〜C18−アリール基を表し、その際、Q、T及びYからの少なくとも1つは−SO2−を表す、並びに
Ar、Ar1:互いに無関係に、炭素原子6〜18個を有するアリーレン基]。
【0033】
Q、T又はYが上で挙げた前提のもとに化学結合である場合、これは、左側に隣接した基と右側に隣接した基とが化学結合を介して互いに直接結ばれて存在することと解される。
【0034】
しかし、好ましくは、式I中のQ、T及びYは、互いに無関係に、−O−及び−SO2−から選択され、ただし、Q、T及びYから成る群からの少なくとも1つは−SO2−を表す。
【0035】
Q、T又はYが−CRabである限りにおいて、Ra及びRbは、互いに無関係に、それぞれ水素原子又はC1〜C12−アルキル基、C1〜C12−アルコキシ基又はC6〜C18−アリール基を表す。
【0036】
有利なC1〜C12アルキル基は、炭素原子1〜12個を有する直鎖状及び分枝状の飽和アルキル基を包含する。殊に、以下の基が挙げられる:C1〜C6−アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、2−又は3−メチルペンチル基、並びに長鎖基、例えば非分枝状のヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ラウリル基及びこれらの1回又は何回も枝分かれした類似体。
【0037】
前述の使用可能なC1〜C12−アルコキシ基中のアルキル基として、これより上で定義していた炭素原子1〜12個を有するアルキル基が考慮に入れられる。好ましくは使用可能なシクロアルキル基は、殊にC3〜C12−シクロアルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロプロピルプロピル基、シクロブチルメチル基、シクロブチルエチル基、シクロペンチルエチル基、−プロピル基、−ブチル基、−ペンチル基、−ヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、−ジメチル基、及び−トリメチル基を包含する。
【0038】
Ar及びAr1は、互いに無関係に、C6〜C18−アリーレン基である。これより下に記載した出発生成物から出発して、Arは、好ましくは、電子豊富な、容易に求電子的に攻撃可能な、有利にはヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシナフタリン、殊に2,7−ジヒドロキシナフタリン、及び4,4−ビスフェノールから成る群から選択される芳香族物質から誘導されている。好ましくは、Ar1は、置換されていないC6−又はC12−アリーレン基である。
【0039】
6〜C18−アリーレン基Ar及びAr1として、殊にフェニレン基、例えば1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン基、ナフチレン基、例えば1,6−、1,7−、2,6−及び2,7−ナフチレン基、並びにアントラセン、フェナントレン及びナフタセンから誘導されたアリーレン基が考慮に入れられる。
【0040】
好ましくは、式Iによる有利な実施形態におけるAr及びAr1は、互いに無関係に、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ナフチレン、殊に2,7−ジヒドロキシナフチレン、及び4,4'−ビスフェニレンから成る群から選択する。
【0041】
成分Aの範囲において有利なポリアリーレンエーテル(A1)及び(A2)は、以下の繰り返し構造単位Ia〜Ioの少なくとも1つを含有するものである:
【化2】

【0042】
【化3】

【0043】
有利には存在する構成要素Ia〜Ioに加えて、ヒドロキノンに由来する1つ以上の1,4−フェニレン単位が、レゾルシン単位に由来する1,3−フェニレン単位又はジヒドロキシナフタリン単位に由来するナフチレン単位と置き換えられている構成要素も有利である。
【0044】
一般式Iの構成要素として特に有利なのは、構成要素Ia、Ig及びIkである。そのうえ、成分(A)のポリアリーレンエーテルが、本質的に一般式Iの1種類の構成要素から、殊にIa、Ig及びIkから選択された構成要素から構成されている場合に特に有利である。
【0045】
特に有利な実施形態において、Arが1,4−フェニレン、tが1、qが0であり、Tは化学結合であり、かつYがSO2である。前述の繰り返し単位から成った特に有利なポリアリーレンエーテルスルホンは、ポリフェニレンスルホン(PPSU)と呼ばれる。
【0046】
特に有利な更なる実施形態において、Arが1,4−フェニレン、tが1、qが0、TがC(CH32、かつYがSO2である。前述の繰り返し単位から成った特に有利なポリアリーレンエーテルスルホンは、ポリスルホン(PSU)と呼ばれる。
【0047】
特に有利な更なる実施形態において、Arが1,4−フェニレン、tが1、qが0、T及びYがSO2である。前述の繰り返し単位から成った特に有利なポリアリーレンエーテルスルホンは、ポリエーテルスルホン(PESU)と呼ばれる。この実施形態は、極めて有利である。
【0048】
PPSU、PESU及びPSUといった略称は、本発明の範囲において、DIN EN ISO 1043−1:2001に相当する。
【0049】
一般的に、有利なポリアリーレンエーテル(A1)及び(A2)は、5,000〜60,000g/モルの範囲における平均分子量M(数平均)と0.20〜0.95dl/gの相対粘度を有する。ポリアリーレンエーテルの相対粘度は、DIN EN ISO 1628−1に従って25℃にて1質量%のN−メチルピロリドン溶液中で測定する。
【0050】
本発明のポリアリーレンエーテル(A1)及び(A2)は、好ましくは、標準として狭い分布のポリメチルメタクリレートに対して溶媒ジメチルアセトアミド中でゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して、10,000〜150,000g/モル、殊に15,000〜120,000g/モル、特に有利には18,000〜100,000g/モルの質量平均分子量Mwを有する。
【0051】
前述のポリアリーレンエーテルをもたらす製造方法は当業者に公知であり、例えば、Herman F.Mark,"Encyclopedia of Polymer Science and Technology",third edition,Volume 4,2003の第2頁〜第8頁並びにHans R.Krichelsdorf,Handbook of Polymer Synthesis,second edition,2005における"Aromatic Polyethers"の第427頁〜第443頁に記載されている。
【0052】
特に有利なのは、無水のアルカリ金属炭酸塩、殊に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム又はそれらの混合物の存在下での、非プロトン性極性溶媒中での、2つのハロゲン置換基を有する少なくとも1種の芳香族化合物と、前述のハロゲン置換基に対して反応性である2つの官能基を有する少なくとも1種の芳香族化合物との反応であり、その際、炭酸カリウムが極めて有利である。特に適した組合せは、溶媒としてのN−メチルピロリドンと塩基としての炭酸カリウムとである。
【0053】
好ましくは、ポリアリーレンエーテル(A1)は、ハロゲン末端基、殊に塩素末端基、又はエーテル化末端基、殊にアルキルエーテル末端基のいずれかを有し、該末端基は、OH末端基若しくはフェノラート末端基を適したエーテル化剤と反応させることによって得られる。
【0054】
適したエーテル化剤は、例えば、単官能性のアルキルハロゲン化物又はアリールハロゲン化物、例えばC1〜C6−アルキルクロリド、C1〜C6−アルキルブロミド又はC1〜C6−アルキルヨージド、有利には塩化メチル、又は塩化ベンジル、臭化ベンジル又はヨウ化ベンジル又はそれらの混合物である。成分(A1)のポリアリーレンエーテルの範囲における有利な末端基はハロゲン、殊に塩素、アルコキシ、殊にメトキシ、アリールオキシ、殊にフェノキシ、又はベンジルオキシである。
【0055】
以下では、ポリアリーレンエーテル(A2)の製造を議論する。成分(A2)のポリアリーレンエーテルの有利な製造法は後に記載し、かつ該製造法は以下の工程をa−b−cの順番で包含する:
(a)所望の成分(A2)に相当するフェノール性末端基の含有量を有する溶媒(L)の存在下で少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A2*)を準備する工程、その際、そのフェノール性末端基はフェノラート末端基として存在し、かつ該ポリアリーレンエーテルは、好ましくは、上で定義したような一般式Iの構成要素からな、
(b)少なくとも1種の酸、好ましくは少なくとも1種の多官能性カルボン酸を添加する工程、及び
(c)成分(A2)のポリアリーレンエーテルを固体として取得する工程。
【0056】
ここで、ポリアリーレンエーテル(A2*)の準備は、有利には、溶媒(L)中で溶液の形で行う。
【0057】
上記のポリアリーレンエーテル(A2*)の準備は、原則的に様々な方法で行うことができる。例えば、相応するポリアリーレンエーテル(A2*)を適した溶媒と直に接触させ、そして直に、すなわち、更なる反応なしで、本発明による方法において使用することができる。代替的に、ポリアリーレンエーテルのプレポリマーを使用してもよく、かつ溶媒の存在下での反応のために導入することができ、その際、上記のポリアリーレンエーテル(A2*)は溶媒の存在下で生じる。
【0058】
工程(a)におけるポリアリーレンエーテル(A2*)の準備は、しかしながら、好ましくは、構造X−Ar−Y(s1)の少なくとも1種の出発化合物とHO−Ar1−OH(s2)の少なくとも1種の出発化合物とを溶媒(L)及び塩基(B)の存在下で反応させることによって行い、その際、
− Yは、ハロゲン原子であり、
− Xは、ハロゲン原子及びOHから選択し、かつ
− Ar及びAr1は、互いに無関係に、炭素原子6〜18個を有するアリーレン基である。
【0059】
その際、(s1)と(s2)の比は、フェノール性末端基の所望の含有量が生じるように選択する。適した出発化合物は当業者に公知であるか又は公知の方法に従って製造することができる。ヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシナフタリン、殊に2,7−ジヒドロキシナフタリン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビスフェノールA及び4,4'−ジヒドロキシビフェニルが出発化合物(s2)として特に有利である。
【0060】
しかしながら、三官能性化合物を使用することも可能である。この場合、分枝状構造が生じる。三官能性出発化合物(s2)を用いる限りにおいて、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンが有利である。
【0061】
使用されるべき量比は、原則的に、塩化水素の理論上の脱離下で進行する重縮合反応の化学量論比から得られ、かつ当業者により公知の方法で調整される。しかしながら、フェノール性OH末端基の数を増やすために、過剰量の(s2)が有利である。
【0062】
特に有利には、この実施形態における(s2)/(s1)のモル比は、1.005〜1.2、殊に1.01〜1.15、特に有利には1.02〜1.1である。
【0063】
代替的に、Xがハロゲン、YがOHの出発化合物(s1)も使用することができる。この場合、ヒドロキシ基の過剰量の調整は、出発化合物(s2)の添加によって行う。この場合、使用されたフェノール性末端基対ハロゲンの比は、好ましくは1.01〜1.2、殊に1.03〜1.15、極めて有利には1.05〜1.1である。
【0064】
好ましくは、重縮合に際しての転換値は少なくとも0.9であり、それによって十分に高い分子量が保証される。ポリアリーレンエーテルの前駆体としてプレポリマーを用いる限りにおいて、重合度は実際のモノマーの数に関連している。
【0065】
有利な溶媒(L)は、非プロトン性極性溶媒である。そのうえ、適した溶媒は、80〜320℃、殊に100〜280℃、有利には150〜250℃の範囲における沸点を有する。適した非プロトン性極性溶媒は、例えば、高沸点エーテル、エステル、ケトン、不斉ハロゲン化炭化水素、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン及びN−メチル−2−ピロリドンである。
【0066】
好ましくは、出発化合物(s1)と(a2)との反応は、上述の非プロトン性極性溶媒(L)、殊にN−メチル−2−ピロリドン中で行う。
【0067】
出発化合物(s1)のハロゲン置換基に対する反応性を高めるために、フェノール性OH基の反応を、好ましくは塩基(B)の存在下で行うことは当業者に自体公知である。
【0068】
好ましくは、塩基(B)は無水である。適した塩基は、殊に無水のアルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム又はそれらの混合物であり、その際、炭酸カリウムが極めて有利である。
【0069】
特に有利な組合せは、溶媒(L)としてのN−メチル−2−ピロリドンと塩基(B)としての炭酸カリウムとである。
【0070】
適した出発化合物(s1)と(s2)との反応は、80〜250℃、有利には100〜220℃の温度で実施し、その際、温度の上限値は、溶媒の沸点によって制限される。該反応は、好ましくは2〜12時間、殊に3〜8時間の時間間隔で行う。
【0071】
工程(a)に続けて、かつ工程(b)を行う前にポリマー溶液の濾過を実施することが好ましいと判明した。これによって、重縮合に際して形成された塩分、並びに場合によっては形成されたゲル体が除去される。
【0072】
加えて、工程(a)の範囲において、ポリアリーレンエーテル(A2*)の量を、ポリアリーレンエーテル(A2*)と溶媒(L)とからの混合物の全質量を基準として、10〜70質量%、好ましくは15〜50質量%に調整することが好ましいとわかった。
【0073】
工程(b)の範囲において、少なくとも1種の酸、好ましくは少なくとも1種の多官能性カルボン酸を、工程(a)からのポリアリーレンエーテル(A2*)に、好ましくは溶媒(L)中のポリアリーレンエーテル(A2*)の溶液に添加する。
【0074】
"多官能性"とは、少なくとも2の官能性と解される。官能性は、1分子当たりのCOOH基の(場合により平均)数である。多官能性とは、2又はそれより高い官能性と解される。本発明の範囲において有利なカルボン酸は、二官能性及び三官能性のカルボン酸である。
【0075】
多官能性カルボン酸の添加は、様々な方法で行うことができ、殊に固体若しくは液体の形で、又は溶液の形で、好ましくは溶媒(L)と混和性である溶媒に溶かして行うことができる。
【0076】
好ましくは、多官能性カルボン酸は、最大でも1500g/モル、殊に最大でも1200g/モルの数平均分子量を有する。同時に、多官能性カルボン酸は、好ましくは、少なくとも90g/モルの数平均分子量を有する。
【0077】
適した多官能性カルボン酸は、殊に、一般構造II:
HOOC−R−COOH (II)
[式中、Rは、炭素原子2〜20個を有し、かつ任意に、好ましくはOH及びCOOHから選択された更なる官能基を含有する炭化水素基を表す]に従ったものである。
【0078】
有利な多官能性カルボン酸は、C4〜C10−ジカルボン酸、殊にコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、並びにトリカルボン酸、殊にクエン酸である。特に有利な多官能性カルボン酸は、コハク酸及びクエン酸である。
【0079】
フェノラート末端基がフェノール性末端基に変わることを十分保証するために、使用された多官能性カルボン酸の量を、フェノラート末端基の量を基準として調整することが好ましいと判明した。
【0080】
工程(b)の範囲において、多官能性カルボン酸を、フェノール性末端基の物質量を基準として、カルボキシル基25〜200モル%、好ましくはカルボキシル基50〜150モル%、特に有利にはカルボキシル基75〜125モル%の量で添加することが有利である。
【0081】
計量供給する酸があまりに少な過ぎると、ポリマー溶液の沈殿挙動は不十分であり、その一方で、計量供給量が明らかに過剰な場合、更なる加工に際して生成物の変色が現れる可能性がある。
【0082】
工程(c)の範囲において、ポリアリーレンエーテル(A2)を固体として取得する。基本的に、固体として取得するために様々な方法が考慮に入れられる。しかしながら、沈殿析出によるポリマー組成物の取得が有利である。
【0083】
有利な沈殿析出は、溶媒(L)と貧溶媒(L')との混合によって行うことができる。貧溶媒は、ポリマー組成物が溶解することのない溶媒である。係る貧溶媒は、好ましくは、非溶媒と溶媒とからの混合物である。有利な非溶媒は水である。溶媒と非溶媒とからの有利な混合物(L')は、好ましくは、溶媒(L)、殊にN−メチル−4−ピロリドンと、水とからの混合物である。工程(b)からのポリマー溶液を貧溶媒(L')に添加することが有利であり、これにより、ポリマー組成物の沈殿析出がもたらされる。その際、好ましくは、貧溶媒の過剰量が用いられる。特に有利には、工程(a)からのポリマー溶液は、微細に分散された形で、殊に液滴の形で添加する。
【0084】
貧溶媒(L')として、溶媒(L)、殊にN−メチル−2−ピロリドンと、非溶媒、殊に水とからの混合物を使用する限りにおいて、溶媒:非溶媒の有利な混合比は、1:2〜1:100、殊に1:3〜1:50である。
【0085】
貧溶媒(L')として、溶媒(L)としてのN−メチル−2−ピロリドンと組み合わせた水とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)とからの混合物が有利である。貧溶媒(L')として特に有利なのは、1:3〜1:50、殊に1:30のNMP/水の混合物である。
【0086】
溶媒(L)中のポリマー組成物の含有率が、ポリマー組成物と溶媒(L)とからの混合物の全質量を基準として、10〜50質量%、好ましくは15〜35質量%である場合、沈殿析出は、特に効率的に行われる。
【0087】
成分(A2)は、好ましくは、最大でも600ppmのカリウム含有量を有する。カリウム含有量は、原子分光法によって測定する。
【0088】
成分B
本発明による成形材料は、成分(B)として少なくとも1種のポリアリーレンスルフィドを含有する。成分(B)として、原則的には、全てのポリアリーレンスルフィドが考慮に入れられる。
【0089】
成分(B)は、本発明による熱可塑性成形材料中で、そのつど成分(A)〜(E)の全量を基準として、5〜65質量%、特に有利には5〜45質量%、殊に5〜30質量%、極めて有利には10〜20質量%の量で存在する。
【0090】
好ましくは、成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、30〜100質量%が一般式−Ar−S−による繰り返し単位から成り、その際、−Ar−は、炭素原子6〜18個を有するアリーレン基である。
【0091】
有利なのは、全ての繰り返し単位の全質量を基準として、少なくとも30質量%、殊に少なくとも70質量%の繰り返し単位III
【化4】

を含有するポリアリーレンスルフィドである。適した更なる繰り返し単位は、殊に
【化5】

[式中、Rは、C1〜C10−アルキル、有利にはメチルを意味する]である。ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであってよく、その際、ホモポリマー(同一の繰り返し単位)が有利である。極めて有利なポリアリーレンスルフィドは、100質量%で、一般式IIIによる繰り返し単位から成る。したがって、特に有利なのはポリアリーレンスルフィド、殊にポリ(1,4−フェニレンスルフィド)である。
【0092】
本発明により使用されたポリアリーレンスルフィドの末端基として、殊にハロゲン、チオール又はヒドロキシ、有利にはハロゲンが考慮に入れられる。
【0093】
成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、分枝状又は非分枝状であってよい。好ましくは、成分(B)のポリアリーレンスルフィドは直鎖状であり、すなわち、分枝状ではない。
【0094】
成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、好ましくは5,000〜100,000g/モルの質量平均分子量を有する。
【0095】
このようなポリアリーレンスルフィドは自体公知であるか、又は公知の方法に従って製造することができる。相応する製造法が、例えば、Hans R.Krichelsdorf,Handbook of Polymer Synthesis,second edition,2005における"Aromatic Polyethers"の第486頁〜第492頁に記載されている。
【0096】
殊に、それらは、US2,513,188に記載されるように、ハロゲン芳香族化合物を硫黄又は金属スルフィドと反応させることによって製造することができる。ハロゲンで置換されたチオフェノールの金属塩を加熱することも同様に可能である(GB−B962941を参照されたい)。ポリアリーレンスルフィドの有利な構成には、例えばUS3,354,129から読み取れるように、アルカリ金属スルフィドをハロゲン芳香族化合物と溶解状態で反応させることが含まれる。更なる方法は、US3,699,087の中で及びUS4,645,826の中で記載されている。
【0097】
成分C
本発明により、熱可塑性成形材料は、カルボキシル基を包含する少なくとも1種の官能化ポリアリーレンエーテル、好ましくは、25℃にてN−メチル−2−ピロリドン中での1質量%溶液において測定した45〜65ml/gのDIN EN ISO 1628−1による粘度数を有するものを含有する。25℃にてN−メチル−2−ピロリドン中での1質量%溶液において測定した成分(C)の官能化ポリアリーレンエーテルのDIN EN ISO 1628−1による粘度数は、好ましくは、少なくとも46ml/g、特に有利には少なくとも47ml/g、殊に少なくとも48ml/gである。
【0098】
他方で、25℃にてN−メチル−2−ピロリドン中での1質量%溶液において測定して65ml/gを上回るDIN EN ISO 1628−1による粘度数を有する、カルボキシル基を包含するポリアリーレンエーテルの使用は、機械特性の更なる改善が得られることなく流動性の不都合な低下をもたらす。それに応じて、成分(C)のポリアリーレンエーテルのDIN EN ISO 1628−1による粘度数は、上に向かって制限されており、かつ、そのつど25℃にてN−メチル−2−ピロリドン中での1質量%溶液において測定して、特に有利には最大でも65ml/g、特に有利には最大でも61ml/g、殊に最大でも57ml/gである。
【0099】
規定された範囲の粘度数は、粒子状若しくは繊維状の充填剤を含有するポリアリーレンエーテルとポリアリーレンスルフィドとを基礎とする熱可塑性成形材料において、本発明により改善された機械特性と、同時に良好な加工性をもたらす。制限する意図を含まず、成分(C)の官能化ポリアリーレンエーテルは、その化学構造と定義された粘度数とに基づき、充填剤、殊にガラス繊維と相乗的に相互作用することが見込まれる。
【0100】
好ましくは、本発明による熱可塑性成形材料は、成分(C)として、上で定義したような一般式Iの構成要素並びに一般式IV:
【化6】

[式中、
nは、0、1、2、3、4、5又は6であり;
1は、水素、C1〜C6−アルキル基、又は−(CH2n−COOHを意味し;
Ar2及びAr3は、同じであってよいか又は異なっていてよく、かつ互いに無関係に、C6〜C18−アリーレン基であり、かつ、
Yは、化学結合又は−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−及び−CRab−から選択されている基であり、その際、Ra及びRbは、同じであってよいか又は異なっていてよく、かつ互いに無関係に、それぞれ水素原子又はC1〜C12−アルキル基、C1〜C12−アルコキシ基又はC6〜C18−アリール基を表す]の構成要素を含有する少なくとも1種の官能化ポリアリーレンエーテルを含有する。
【0101】
好ましくは、式I及び式IVによる構成要素の合計を基準とした、一般式IVによる構成要素の割合は、0.5〜3モル%、好ましくは0.6〜2モル%、特に有利には0.7〜1.5モル%である。
【0102】
式I及び式IVによる構成要素の合計を基準とした、一般式IVによる構成要素の割合は、本発明の範囲において、基本的には、内標準として定義された量の1,3,5−トリメトキシベンゼンを用いた1H−NMR分光法によって測定する。質量%からモル%への換算は、当業者に公知である。
【0103】
一般式IVの範囲において、好ましくはn=2及びR1=メチルが当てはめられる。
【0104】
一般式IVの範囲において、加えて、好ましくはAr2=Ar3=1,4−フェニレン及びY=−SO2−が当てはめられる。
【0105】
本発明による成形材料中で使用された官能化ポリアリーレンエーテル(成分C)は、自体公知の化合物であるか又は公知の方法に従って製造可能である。
【0106】
例えば、成分(C)の官能化ポリアリーレンエーテルは、EP−A−0185237に依拠して、並びにI.W.Parsons他からPolymer,34,2836(1993)及びT.Koch、H.RitterからMacromol.Phys.195,1709(1994)の中で記載された方法に従って入手される。
【0107】
それに従って、ポリアリーレンエーテルは、一般式V:
【化7】

[式中、R1及びnは、上で示した意味を有する]の化合物と、一般式Vの化合物に対して反応性の少なくとも1種の更なる芳香族化合物、例えば殊に4,4'−ジクロロジフェニルスルホン、及び場合によっては更なるヒドロキシ官能化化合物、例えばビスフェノールA及び/又はビスフェノールS及び/又は4,4'−ジヒドロキシビフェニルの重縮合によって得られる。適した反応相手は、当業者に一般に公知である。
【0108】
成分(C)の官能化ポリアリーレンエーテルの製造のために、原則的には、成分(A)のポリアリーレンエーテルのために使用された方法も用いることができ、その際、同様に、塩基作用下での双極性非プロトン性溶媒中での溶液重合も有利である。
【0109】
一般式Iの有利な構造要素に関する成分(A)について述べたことが、相応して、成分(C)の官能化ポリアリーレンエーテルに当てはめられる。
【0110】
殊に、成分(A)及び(C)のポリアリーレンエーテルが構造的に類似し、殊に同じモノマー構成要素を基礎とし、かつ成分(C)の範囲における一般式IVの構成要素に関してのみ単に異なる場合に有利である。成分(A)も成分(C)も上で定義したようなPESU形の構成要素を基礎とする場合に、又は成分(A)も成分(C)も上で定義したようなPPSU形の構成要素を基礎とする場合に、又は成分(A)も成分(C)も上で定義したようなPSU形の構成要素を基礎とする場合に特に有利である。"基礎とする"とは、この文脈においては、成分(A)も成分(C)も同じ構成要素から構成されており、かつ、それらは、成分(C)が付加的に官能化されており、かつ好ましくは上で定義したような一般式IVのモノマー構成要素を含有するということによってのみ単に異なることと解される。特に有利には、成分(A)のポリアリーレンエーテル及び成分(C)の官能化ポリアリーレンエーテルは、それぞれ一般式Iの同じ構成要素を含有する。
【0111】
一般式IVの範囲における適した構成要素は、殊に:
【化8】

[式中、nは、そのつど0〜4の整数を表す]である。構成要素VIが極めて有利である。
【0112】
成分D
本発明の熱可塑性成形材料は、成分(D)として少なく1種の繊維状若しくは粒子状の充填剤を、成分(A)〜(E)の計100質量%を基準として、好ましくは、5〜70質量%、特に有利には15〜70質量%、殊に15〜65質量%の量で含有する。
【0113】
本発明による成形材料は、殊に粒子状若しくは繊維状の充填剤を含有してよく、その際、繊維状の充填剤が特に有利である。
【0114】
有利な繊維状充填剤は、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、アラミド繊維、特に有利にはガラス繊維である。ガラス繊維が使用される場合、これらはマトリックス材料とのより良好な相容性のために、サイズ剤、有利にはポリウレタンサイズ剤及び接着促進剤で最終仕上げされていてよい。一般的に、使用された炭素繊維及びガラス繊維は、6〜20μmの範囲の直径を有する。したがって、成分(D)は、特に有利にはガラス繊維から成る。
【0115】
ガラス繊維の混入は、ガラス短繊維の形でも、連続繊維(ロービング)の形でも行うことができる。完成した射出成形部材において、ガラス繊維の平均長さは、好ましくは0.08〜0.5mmの範囲にある。
【0116】
炭素繊維又はガラス繊維は、織布、マット又はガラスウールロービングの形でも用いることができる。
【0117】
粒子状充填剤として適しているのは、非晶質ケイ酸、炭酸塩、例えば炭酸マグネシウム及び白亜、粉末石英、雲母、多種多様なケイ酸塩、例えば粘土、白雲母、黒雲母、スゾライト(Suzoite)、スズマレタイト(Zinnmaletit)、滑石、緑泥石、金雲母、長石、ケイ酸カルシウム、例えばケイ灰石又はケイ酸アルミニウム、例えばカオリン、特にか焼カオリンである。
【0118】
有利な粒子状充填剤は、粒子の少なくとも95質量%、有利には少なくとも98質量%が、完成品で測定して45μm未満、有利には40μm未満の直径(幾何学中心を通る最大直径)を有し、かつ、それのいわゆるアスペクト比が、完成品で測定して1〜25の範囲に、有利には2〜20の範囲にあるものである。アスペクト比は、厚さに対する粒径(それぞれ幾何学中心を通る、最小寸法に対する最大寸法)の比である。
【0119】
その際、粒径は、例えば、ポリマー混合物の細片の電子顕微鏡写真を撮影し、かつ少なくとも25個、有利には少なくとも50個の充填剤粒子を評価基準とすることによって測定することができる。同様に、粒径の測定は、Transactions of ASAE、第491頁(1983)に記載の沈降分析により行うことができる。その直径が40μm未満である充填剤の質量割合は、篩分析によっても測定することができる。
【0120】
特に有利なのは、粒子状充填剤として、滑石、カオリン、例えばか焼カオリン又はケイ灰石又はこれらの充填剤の2つ又は全てからの混合物である。それらのなかでも、そのつど完成品で測定して40μmより小さい直径及び1.5〜25のアスペクト比を有する粒子の少なくとも95質量%の割合を有する滑石が特に有利である。カオリンは、そのつど完成品で測定して20μmより小さい直径及び1.2〜20のアスペクト比を有する粒子の少なくとも95質量%の割合を有する。
【0121】
そのうえ、熱可塑性成形材料は、更なる添加剤及び/又は加工助剤を成分Eとして含有してよい。
【0122】
成分E
本発明による成形材料は、成分(E)の構成成分として、助剤、殊に加工助剤、顔料、安定化剤、難燃剤又は種々の添加物の混合物を含有してよい。慣例の添加剤は、例えば、酸化抑制剤、熱分解及び紫外光による分解に対する試剤、潤滑剤及び離型剤、染料及び可塑剤でもある。
【0123】
本発明による成形材料中の成分(E)の割合は、殊に、成分(A)〜(E)の全質量を基準として、0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、殊に0〜15質量%である。成分Eが安定化剤を含む場合、この安定化剤の割合は、通常、成分(A)〜(E)の質量%の合計を基準として、2質量%まで、好ましくは0.01〜1質量%、殊に0.01〜0.5質量%である。
【0124】
顔料及び染料は、一般に、成分(A)〜(E)の質量%の合計を基準として、0〜6質量%、有利には0.05〜5質量%、殊に0.1〜3質量%の量で含有されている。
【0125】
熱可塑性樹脂を着色するための顔料は、一般に公知であり、例えば、R.Gaechter及びH.Mueller,Taschenbuch der Kunststoffadditive,Carl Hanser Verlag(1983)、第494頁〜第510頁を参照されたい。顔料の第一の有利な群として、白色顔料、例えば酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白[2PbCO3・Pb(OH)2]、リトポン、アンチモン白及び二酸化チタンが挙げられる。最も一般に用いられる2つの二酸化チタンの結晶変態(ルチル形及びアナターゼ形)のうち、殊にルチル形を、本発明による成形材料の白色化のために使用する。本発明により使用することができる黒色着色顔料は、酸化鉄黒(Fe3SO4)、スピネル黒[Cu(Cr,Fe)24]、マンガン黒(二酸化マンガン、二酸化ケイ素及び酸化鉄からの混合物)、コバルト黒及びアンチモン黒、並びに特に有利にはカーボンブラックであり、これは、たいていファーネスブラック又はガスブラックの形態で使用する(G.Benzing,Pigmente fuer Anstrichmittel,Expert−Verlag(1988)、第78頁以降を参照されたい)。
【0126】
特定の色調の調整のために、無機有色顔料、例えば酸化クロム緑、又は有機有色顔料、例えばアゾ顔料、又はフタロシアニンを使用することができる。このような顔料は、当業者に公知である。
【0127】
本発明による熱可塑性成形材料に添加することができる酸化抑制剤及び熱安定化剤は、例えば、元素周期表第I族の金属のハロゲン化物、例えばナトリウム、カリウム、リチウムのハロゲン化物、例えば塩化物、臭化物又はヨウ化物である。さらに、フッ化亜鉛及び塩化亜鉛を使用することができる。さらになお、立体障害フェノール、ヒドロキノン、これらの群の置換された代表物質、第二級芳香族アミンが、場合によりリン含有酸若しくはそれらの塩と結合した状態で、及びこれらの化合物の混合物が、好ましくは、成分(A)〜(E)の質量%の合計を基準として、1質量%までの濃度で使用可能である。
【0128】
UV安定化剤の例は、種々の置換されたレゾルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノンであり、それらは一般的に2質量%までの量で使用する。
【0129】
通例、成分(A)〜(E)の質量%の合計を基準として、1質量%までの量で添加される滑剤及び離型剤は、ステアリルアルコール、ステアリン酸アルキルエステル及びステアラミド並びにペンタエリトリトールと長鎖脂肪酸とのエステルである。ジアルキルケトン、例えばジステアリルケトンも使用可能である。
【0130】
有利な構成成分として、本発明による成形材料は、(成分(A)〜(E)の質量%の合計を基準として)0.1〜2質量%、有利には0.1〜1.75質量%、特に有利には0.1〜1.5質量%及び殊に0.1〜0.9質量%のステアリン酸及び/又はステアレートを含有する。原則的に、他のステアリン酸誘導体、例えばステアリン酸のエステルも使用することができる。
【0131】
ステアリン酸は、有利には脂肪の加水分解によって製造される。その際に得られる生成物は、通常、ステアリン酸とパルミチン酸とからの混合物である。それゆえ、係る生成物は、該生成物の組成に応じて、例えば50〜70℃の幅広い軟化範囲を有する。有利には、20質量%を上回る、特に有利には25質量%を上回るステアリン酸の割合を有する生成物を使用する。純粋なステアリン酸(>98%)も使用することができる。
【0132】
さらに、成分(E)はステアレートも含んでよい。ステアレートは、相応するナトリウム塩と金属塩溶液(例えばCaCl2、MgCl2、アルミニウム塩)との反応によってか、又は脂肪酸と金属水酸化物との直接の反応によってのいずれかにおいて製造されることができる(例えばBaerlocher Additives(2005)を参照されたい)。有利には、トリステアリン酸アルミニウムを使用する。
【0133】
更なる添加剤として、いわゆる核形成剤、例えばタルクも考慮に入れられる。
【0134】
成分(A)〜(E)を混合する順番は任意である。
【0135】
本発明による成形材料は、自体公知の方法に従って、例えば押出により製造することができる。本発明による成形材料は、例えば、出発成分を、通常の混合装置、例えばスクリュー型押出機、好ましくは二軸押出機、ブラベンダーミキサー又はバンバリーミキサー又はニーダー中で混合し、引き続き押出することによって製造することができる。押出後に、押出物を冷却及び微粉砕する。成分の混合の順番は変えてもよい。相応して、2つ又はそれより多い成分を予混合してよく、しかし、全ての成分を一緒に混合してもよい。
【0136】
可能な限り均質な混合物を得るために、強力な混合が好ましい。そのために、一般的に、290〜380℃、有利には300〜370℃の温度で0.2〜30分の平均混合時間が必要である。押出後に、押出物を、通例、冷却及び微粉砕する。
【0137】
本発明による熱可塑性成形材料は、好ましくは、成形部材、発泡体又はフィルムの製造のために使用することができる。本発明による成形材料は、殊に、家庭用品、電気部品又は電子部品用の成形部材の製造に、並びに乗り物分野、殊に自動車のための成形部材の製造に適している。
【0138】
以下の実施例は本発明をより詳しく説明するものであるが、本発明を制限するものではない。
【0139】
実施例
試験体の弾性率、引裂強度及び破断伸びを、ISO 527に従ったダンベル形試験棒による引張試験において突き止めた。
【0140】
製品の衝撃強さは、ISO 179 1eUに従ってISO試験棒を用いて測定した。
【0141】
流動性は、溶融粘度を手がかりにして判断を下した。溶融安定性は、細管レオメーターによって測定した。その際、350℃での見掛け粘度を、せん断速度の関数として、長さ30mmの円形毛管、0.5mmの半径、180°のノズルの流入角、溶融体貯蔵容器の12mmの直径を有する毛管粘度計(Goettfert capillary viscometer Rheograph 2003)を用いて、かつ5分間の予熱時間により測定した。1000Hzで測定した値を規定している。
【0142】
FAM Bに対する耐久性は、80×40×4mmサイズのISO試験棒を60℃で7日間、FAM B中に貯蔵することによって測定した。引き続き、試験棒を空気にさらすためにそのままにし、次いで真空及び室温にて1日間貯蔵し、引き続き2日間、真空中で100℃にて貯蔵した。引き続き、ISO 179 1eUにより衝撃強さを測定した。
【0143】
ポリアリーレンエーテルの粘度数は、DIN EN ISO 1628−1により、25℃にてN−メチルピロリドンの1%溶液中で測定した。
【0144】
成分A1
成分A1−1として、49.0ml/gの粘度数を有するPESU形のポリエーテルスルホン(BASF SEのUltrason(R)E 1010)を使用した。使用した生成物は、Cl末端基0.16質量%及びOCH3末端基0.21質量%を有していた。
【0145】
成分A2
成分A2−1として、55.6ml/gの粘度数を有するポリエーテルスルホンを使用し、これはOH末端基0.20質量%及びCl末端基0.02質量%を有していた。
【0146】
成分B
成分B−1として、330℃及び1000Hzのせん断速度で145Pa*sの溶融粘度を有するポリフェニレンスルフィドを使用した。
【0147】
成分C
成分C−1として、官能化ポリエーテルスルホンを使用し、これは以下のように製造した:
窒素雰囲気下で、ジクロロジフェニルスルホン577.03g、ジヒドロキシジフェニルスルホン495.34g及び4,4'−ビス−ヒドロキシフェニル吉草酸("DPA")5.73gを、NMP1053ml中に溶解し、かつ無水炭酸カリウム297.15gを混ぜた。反応混合物を190℃に加熱し、かつ、この温度で6時間保持した。引き続き、バッチをNMP1947mlで希釈した。T<80℃に冷却後、懸濁液を排出した。次いで、濾過によって、不溶性の構成成分を分離した。得られた溶液を、次いで水に沈殿させた。得られた白色粉末を、次いで高温水で数回抽出し、引き続き真空中で140℃にて乾燥させた。DPA単位の割合は、内標準として1,3,5−トリメトキシベンゼンを用いた1H−NMR分光法によって0.9モル%で測定し、生成物の粘度数は46.9mg/gであった。
【0148】
成分D
成分D−1として、4.5mmのステープル長さ及び10μmの繊維直径を有し、ポリウレタンサイズ剤が塗布されていたガラス繊維片を用いた。
【0149】
表1:ポリアリーレンエーテルとポリアリーレンスルフィドとからのブレンドの特性。熱可塑性成形材料の組成は、質量部で示している。
【0150】
【表1】

【0151】
本発明による成形材料は、FAM Bに対する改善された耐久性と、同時に良好な機械特性によって優れている。本発明による成形材料は、殊に高い破断伸び及び衝撃強さ並びに改善された引張強さを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(A)ポリマー鎖1個当たり平均して最大でも0.1個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A1)及びポリマー鎖1個当たり平均して少なくとも1.5個のフェノール性末端基を有する少なくとも1種のポリアリーレンエーテル(A2)、
(B)少なくとも1種のポリアリーレンスルフィド、
(C)カルボキシル基を包含する少なくとも1種の官能化ポリアリーレンエーテル、
(D)少なくとも1種の繊維状若しくは粒子状の充填剤並びに
(E)任意に更なる添加剤及び/又は加工助剤
を含有する熱可塑性成形材料。
【請求項2】
ポリアリーレンエーテル(A1)が、ポリマー鎖1個当たり平均して最大でも0.05個のフェノール性末端基を有する、請求項1記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
ポリアリーレンエーテル(A2)が、ポリマー鎖1個当たり平均して少なくとも1.8個のフェノール性末端基を有する、請求項1又は2記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
成分(A1)20〜88.5質量%、成分(A2)0.5〜10質量%、成分(B)5〜65質量%、成分(C)1〜15質量%、成分(D)5〜70質量%及び成分(E)0〜40質量%を含有し、その際、成分(A)〜(E)の全量に関する成分(A)〜(E)の質量%の合計は100質量%である、請求項1から3までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
成分(A1)及び(A2)のポリアリーレンエーテルが、互いに無関係に、一般式Iの構成要素:
【化1】

[式中、以下の意味を有する:
t、q;互いに無関係に、0、1、2又は3、
Q、T、Y;互いに無関係に、それぞれ化学結合又は−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−及び−CRab−から選択された基、その際、Ra及びRbは、互いに無関係に、それぞれ水素原子又はC1〜C12−アルキル基、C1〜C12−アルコキシ基又はC6〜C18−アリール基を表し、その際、Q、T及びYからの少なくとも1つは−O−と異なり、かつQ、T及びYからの少なくとも1つは−SO2−を表す、並びに
Ar、Ar1;互いに無関係に、炭素原子6〜18個を有するアリーレン基]から構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
ポリアリーレンエーテル(A1)及び(A2)が、一般式Iによる同じ構成要素から構成されている、請求項5記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
式(I)中のQ、T及びYが、互いに無関係に、−O−及び−SO2−から選択されており、かつQ、T及びYからの少なくとも1つが−SO2−を表す、請求項5又は6記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
式(I)中のAr及びAr1が、互いに無関係に、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ナフチレン及び4,4'−ビスフェニレンから成る群から選択されている、請求項5から7までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
カルボキシル基を包含する官能化ポリアリーレンエーテルが、請求項5から8までのいずれか1項に記載される一般式Iの構成要素並びに一般式IV
【化2】

[式中、
nは、0〜6の整数であり、かつ
1は、H、C1〜C6−アルキル、又は−(CH2n−COOHであり、
Ar2及びAr3は、互いに無関係に、C6〜C18−アリーレン基であり、かつ、
Yは、化学結合又は−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−、−CRab−から選択された基であり、その際、Ra及びRbは、互いに無関係に、そのつど水素原子又はC1〜C12−アルキル基、C1〜C12−アルコキシ基又はC6〜C18−アリール基である]の構成要素を含有する、請求項1から8までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項10】
式(I)及び式(IV)による構成要素の合計を基準とした、一般式(I)による構成要素の割合が、0.5〜2モル%、好ましくは0.7〜1.5モル%である、請求項9記載の熱可塑性成形材料。
【請求項11】
nが2、かつR1がメチルである、請求項9又は10記載の熱可塑性成形材料。
【請求項12】
Ar2及びAr3が1,4−フェニレンであり、かつYがSO2である、請求項9から11までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項13】
成分(B)のポリアリーレンスルフィドは、30〜100質量%が一般式−Ar−S−による繰り返し単位から構成されており、その際、−Ar−が、炭素原子6〜18個を有するアリーレン基である、請求項1から12までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項14】
成分(B)が、ポリフェニレンスルフィド、好ましくはポリ(1,4−フェニレンスルフィド)である、請求項1から13までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項15】
成分(D)がガラス繊維から成る、請求項1から14までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項16】
混合装置中で成分(A)〜(E)を混合することを包含する、請求項1から15までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料の製造法。
【請求項17】
成形部材、繊維、発泡体又はフィルムを製造するための、請求項1から15までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項18】
請求項1から15までのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料を含有する成形部材、繊維、発泡体又はフィルム。

【公表番号】特表2013−521386(P2013−521386A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556435(P2012−556435)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052721
【国際公開番号】WO2011/107389
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】