説明

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物

【課題】 優れた耐冷熱性、高エポキシ接着性、低ガス発生量、低金型汚染性をあわせもつポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 アリーレン基に対しアミノ基を0.05〜5モル%含有するポリアリーレンスルフィド(a)と示差走査熱量計により加熱速度10℃/minで測定した融点が115〜170℃であり、カルボン酸基、酸無水物基及び水酸基からなる群より選ばれるいずれか一種以上の官能基を有する変性ポリオレフィン(b)、更に場合によっては多官能性イソシアネート、エポキシ樹脂、カルナバワックス、無機充填剤とからなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレンスルフィドと変性ポリオレフィンからなり、優れた耐冷熱性、高エポキシ接着性、低ガス発生量、低金型汚染性をあわせもつポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPSと略記することもある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略記することもある。)は、優れた機械的性質、熱的性質、電気的性質を有し、電気・電子機器部材、自動車機器部材及びOA機器部材等に幅広く使用されている。
【0003】
PASは、ガラス繊維等の繊維状無機充填材、炭酸カルシウム、タルク等の粒状無機充填材を配合することにより、機械的強度、耐熱性、剛性等を大きく向上させることができる。しかしながら、他のエンジニアリングプラスチックに比較して、靭性に劣る。また、金属をインサートして使用される用途などにおいて、低温と高温の繰り返しによる冷熱サイクル、あるいはサーマルショックに対して脆く、冷熱性に劣るという課題を有し、多くの用途への展開が制限されている。
【0004】
また、PASはポリブチレンテレフタレート、ナイロン等に比較してエポキシ系接着剤などとの接着強度が低いという課題も有し、この点でも展開が制限されている現状がある。
【0005】
そして、PASの耐冷熱性を改良する方法として、例えばPPSにガラスフレーク及びガラスフレーク以外の無機充填材及びオレフィン系樹脂を配合したPPS組成物とすることが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
また、PASの耐冷熱性及びエポキシ系接着剤に対する接着強度を改良する方法として、例えばPPS、共重合ポリエステル、オレフィン系共重合体を配合したPPS組成物とすること(例えば特許文献2参照。)、PAS、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びオキサゾリン基含有非晶性ポリマーを配合したPAS樹脂組成物とすること(例えば特許文献3参照。)、等が提案されている。
【0007】
さらに、PASの耐衝撃性を改良する方法としては、PASにエチレン系共重合体をブレンドすることが知られており、例えばPASおよびα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、無水マレイン酸からなるエチレン系共重合体からなる樹脂組成物とすること(例えば特許文献4参照。)、PPSと相溶化剤として非ブロック型多官能イソシアネート化合物とを溶融混練してなるPPSに、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル、無水マレイン酸からなるエチレン系共重合体を含有せしめる樹脂組成物とすること(例えば特許文献5参照。)、PPS、多官能性イソシアネート、無水マレイン酸含有エチレン系共重合体からなるPPS組成物とすること(例えば特許文献6参照)、等が提案されている。
【0008】
PPSと特定の分子量分布をもった高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)に官能基を有するビニル系モノマーをグラフト化したポリエチレンとを配合した樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献7参照。)。
【0009】
【特許文献1】特開2002−129014号公報
【特許文献2】特開平11−228828号公報
【特許文献3】特開2000−103964号公報
【特許文献4】特開昭62−151460号公報
【特許文献5】特開平2−255862号公報
【特許文献6】特開平11−181283号公報
【特許文献7】特許3187372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に提案された組成物は、各種機器部材での使用において重要な材料特性となるウェルド強度に課題を残すものであり、特許文献2、3に提案された組成物は、成形時に発生するガスや金型汚染性について課題を残すものであった。また、特許文献4に開示された組成物は、耐衝撃性に改良効果はみられるが、冷熱性や各種機器部材での使用において重要な材料特性となるウェルド強度については課題が残った。特許文献6に提案された組成物では、耐衝撃性、ウェルド強度の改良効果はみられるが、成形時にガスが発生するという課題があった。さらに特許文献7に提案された組成物では、冷熱性や各種機器部材での使用において重要な材料特性となるウェルド強度に課題が残った。
【0011】
そこで、本発明は、優れた耐冷熱性、高エポキシ接着性、低ガス発生量、低金型汚染性をあわせもつポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題に関し鋭意検討した結果、特定のポリアリーレンスルフィドと特定のポリオレフィンからなる樹脂組成物が、優れた耐冷熱性、高エポキシ接着性、低ガス発生量、低金型汚染、優れたウェルド強度、高耐衝撃性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、アリーレン基に対しアミノ基を0.05〜5モル%含有するポリアリーレンスルフィド(a)と示差走査熱量計(以下、DSCと記す。)により加熱速度10℃/minで測定した融点が115〜170℃であり、カルボン酸基、酸無水物基及び水酸基からなる群より選ばれるいずれか一種以上の官能基を有する変性ポリオレフィン(b)からなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成するポリアリーレンスルフィド(a)は、アリーレン基に対しアミノ基を0.05〜5モル%含有するポリアリーレンスルフィドである。該ポリアリーレンスルフィド(a)としては、一般にポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属し、更にアミノ基を0.05〜5モル%含有するもの(以下、アミノ基置換PASと記すことがある。)であればよく、その中でも特に成形加工性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が100〜30000ポイズであるアミノ基置換PASであることが好ましい。該アミノ基置換PASとしては、例えば下記一般式(1)〜(7)に示されるp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルフォン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ビフェニレンスルフィド単位からなる単独重合体又は共重合体の末端単位又は鎖中単位にアミノ基を有する単位を含有したものを挙げることができ、該アミノ基置換PASの具体的例示としては、アミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)、アミノ基置換ポリフェニレンスルフィドスルフォン、アミノ基置換ポリフェニレンスルフィドケトン、アミノ基置換ポリフェニレンスルフィドエーテル等が挙げられ、その中でも、特に耐熱性、強度特性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、アミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)であることが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

(ただし、式中Rはアルキル基、フェニル基、ニトロ基、カルボキシル基、ニトリル基、アミノ基、アルコキシル基、ヒドロキシル基又はスルホン酸基を示し、nは1又は2を示す。)
本発明を構成するポリアリーレンスルフィド(a)は、アリーレン基に対しアミノ基0.05〜5モル%を含有するポリアリーレンスルフィドであり、特に靭性及び機械的強度に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから0.1〜3モル%のアミノ基を含有するものであることが好ましい。ここで、アミノ基含有量が0.05モル%未満である場合、樹脂組成物とする際の変性ポリオレフィンとの相溶性に劣り本願発明の目的を達成することが困難となる。一方、5モル%を越える場合、ポリアリーレンスルフィドの機械的強度の低下が見られ、樹脂組成物も機械的強度に劣るものとなる。なお、アミノ基の測定方法としては、例えば赤外線吸収スペクトル測定装置により、1900cm−1の吸収(ベンゼン環のC−H面外変角振動)と3387cm−1の吸収(アミノ基のN−H伸縮振動)を測定し、別途作成した検量線を用いこれらの吸収比より得る方法を挙げることができる。なお、該検量線は、例えばベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族環を有する化合物とアニリン、ジアミノベンゼン等のアミノ芳香族化合物の混合物より作成することが可能である。
【0023】
本発明を構成するポリアリーレンスルフィド(a)の製造方法として、アミノ基置換PASの製造方法として知られている方法により製造することが可能であり、例えば極性有機溶媒中で硫化アルカリ金属塩、ポリハロ芳香族化合物、アミノ基含有ポリハロ芳香族化合物を重合することにより得ることが可能である。その際の極性有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げることができ、硫化アルカリ金属塩としては、例えば硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化リチウムの無水物又は水和物等を挙げることができる。また、硫化アルカリ金属塩としては、水硫化アルカリ金属塩とアルカリ金属水酸化物を反応させたものであってもよい。ポリハロ芳香族化合物としては、例えばp−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、o−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、o−ジヨードベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロビフェニル等を挙げることができ、アミノ基含有ポリハロ芳香族化合物としては、例えばジクロロアニリン、クロロアニリン、ジクロロジアミノベンゼン等を挙げることができる。
【0024】
また、ポリアリーレンスルフィド(a)としては、直鎖状のものであっても、重合時にトリハロゲン以上のポリハロゲン化合物を少量添加して若干の架橋又は分岐構造を導入したものであっても、窒素などの非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。また、加熱硬化前又は後に脱イオン処理(酸洗浄や熱水洗浄など)、あるいはアセトン、メチルアルコールなどの有機溶媒による洗浄処理を行うことによってイオン、オリゴマーなどの不純物を低減させたものであってもよい。さらに、重合反応終了後に酸化性ガス中で加熱処理を行い硬化を行ったものであってもよい。
【0025】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成する変性ポリオレフィン(b)は、DSCにより加熱速度10℃/minで測定した融点が115〜170℃であり、カルボン酸基、酸無水物基及び水酸基からなる群より選ばれるいずれか一種以上の官能基を有する変性ポリオレフィンであり、該変性ポリオレフィン(b)としては、DSCにより加熱速度10℃/minで測定した融点が115〜170℃であり、カルボン酸基、酸無水物基及び水酸基からなる群より選ばれるいずれか一種以上の官能基を有する変性ポリオレフィンであれば如何なるものであってもよく、その中でも特に耐冷熱性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、融点が115〜170℃であるカルボン酸基変性ポリエチレン、酸無水物基変性ポリエチレン、水酸基変性ポリエチレン、カルボン酸基変性ポリプロピレン、酸無水物基変性ポリプロピレン、水酸基変性ポリプロピレンが好ましく、特に融点が115〜170℃であるカルボン酸基変性直鎖状低密度ポリエチレン、酸無水物基変性直鎖状低密度ポリエチレン、水酸基変性直鎖状低密度ポリエチレン、カルボン酸基変性高密度ポリエチレン、酸無水物基変性高密度ポリエチレン、水酸基変性高密度ポリエチレンが好ましい。ここで、変性ポリオレフィンの融点が115℃より低い場合、得られる樹脂組成物を成形加工に供した際に変性ポリオレフィンの分解に伴いガスが発生し、低ガス発生性を達成することが困難となる。一方、融点が170℃より高い場合、得られる樹脂組成物は、耐冷熱性、耐衝撃性、ウェルド強度に劣るものとなる。また、官能基を有さないポリオレフィンを用いた場合、樹脂組成物とする際にポリアリーレンスルフィドとの相溶性に劣り、得られる樹脂組成物は、耐冷熱性、エポキシ接着強度、耐衝撃性、ウェルド強度に劣るものとなる。
【0026】
該変性ポリオレフィン(b)としては、例えば市販品、又はカルボン酸基含有化合物,酸無水物含有化合物,水酸基含有化合物によるグラフト変性体として入手することが可能であり、グラフト変性体としては、例えばパーオキサイドによりポリオレフィンのグラフト変性を行うことにより製造することが可能である。
【0027】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、特に低ガス性を有することから成形加工性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることからポリアリーレンスルフィド(a)99〜70重量%、変性ポリオレフィン(b)1〜30重量%からなるものであることが好ましく、さらにポリアリーレンスルフィド97〜80重量%、変性ポリオレフィン(b)3〜20重量%からなるものであることが好ましい。
【0028】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、特に耐冷熱性、接着性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(a)と変性ポリオレフィン(b)の合計量100重量部に対し、さらに多官能性イソシアネート0.1〜6重量部を配合してなるものであることが好ましい。
【0029】
該多官能性イソシアネートとしては、市販の非ブロック型、ブロック型のものを用いることが可能であり、非ブロック型の多官能性イソシアネートとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネートフェニル)スルホン等を挙げることができ、ブロック型の多官能性イソシアネートとしては、例えば分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物と活性水素を有する化合物とを反応し、常温では不活性としたブロック型の多官能性イソシアネートを挙げることができ、該イソシアネート基を有する化合物としては、上記の非ブロック型の多官能性イソシアネートを挙げることができ、活性水素を有する化合物としては、例えばアルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類等を挙げることができる。該ブロック型の多官能性イソシアネートとしては、例えば(商品名)タケネート(三井竹田ケミカル(株)製)を挙げることができる。
【0030】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、特にエポキシ接着性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(a)と変性ポリオレフィン(b)の合計量100重量部に対し、さらにエポキシ樹脂1〜25重量部を配合してなるものであることが好ましい。
【0031】
該エポキシ樹脂としては、例えば市販のビスフェノールA型、クレゾールノボラック型等のものでよく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば(商品名)エピコート(ジャパンエポキシレジン(株)製)を挙げることができ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば(商品名)エピクロン(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。
【0032】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、特に成形加工時の金型離型性に優れ、成形加工性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(a)と変性ポリオレフィン(b)の合計量100重量部に対し、さらにカルナバワックス0.01〜3重量部を配合してなるものが好ましい。
【0033】
該カルナバワックスとしては、市販のものが使用できる。
【0034】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、特に機械的強度に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(a)と変性ポリオレフィン(b)の合計量100重量部に対し、更に無機充填材5〜200重量部、より好ましくは5〜100重量部を配合してなることが好ましい。
【0035】
該無機充填剤としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、グラファイト化繊維、ウイスカー、金属繊維、無機系繊維、鉱物系繊維等の繊維状無機充填剤;板状無機充填剤;粒状無機充填剤等が挙げられる。
【0036】
そして、ガラス繊維としては、例えば平均繊維径が6〜14μmのチョップドストランド、ミルドファイバー、ロービング等のガラス繊維;ニッケル、銅等を金属コートしたガラス繊維;シラン繊維;アルミノ珪酸塩ガラス繊維;中空ガラス繊維;ノンホーローガラス繊維等が挙げられ、炭素繊維としては、例えばPAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられ、無機系繊維としては、例えばロックウール、ジルコニア繊維、アルミナシリカ繊維、チタン酸バリウム繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、高炉スラグ等が挙げられ、鉱物系繊維としては、例えばワラステナイト繊維、マグネシウムオキシサルフェート繊維等が挙げられ、ウイスカーとしては、例えば窒化珪素ウイスカー、塩基性硫酸マグネシウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、炭化珪素ウイスカー、ボロンウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等が挙げられる。
【0037】
また、板状無機物、粒状無機物としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、マイカ、シリカ、タルク、クレイ、硫酸カルシウム、カオリン、ワラステナイト、ゼオライト、ガラスパウダー、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化スズ、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、黒鉛、カーボンブラック、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスフレーク、ハイドロタルサイト等の板状物、粒状物が挙げられる。
【0038】
該無機充填材は2種以上を併用することも可能であり、必要によりエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物又はポリマーで、予め表面処理したものを用いてもよい。
【0039】
さらに、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の全芳香族ポリアミド繊維、フェノール樹脂繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の有機繊維;タルク、カオリン、シリカなどの結晶核剤;ポリアルキレンオキサイドオリゴマー系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤;酸化防止剤;熱安定剤;滑剤;紫外線防止剤;着色剤;発泡剤などの通常の添加剤を1種以上添加するものからなるものであってもよい。
【0040】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する際の製造方法としては特に制限はなく、一般的な混合・混練方法として知られている方法を用いることが可能であり、例えば全ての原材料を配合し溶融混練する方法;原材料の一部を配合した後で溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法;原材料の一部を配合後単軸又は二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法、など、いずれの方法を用いてもよい。また、小量の添加成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することで使用してもよい。そして、溶融混練を行う方法としては、従来から使用されている加熱溶融混練方法を用いることができ、例えば単軸又は二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダーなどによる加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではなく、通常280〜370℃の中から任意に選ぶことができる。
【0041】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、優れた耐冷熱性、高エポキシ接着性、低ガス発生量、低金型汚染、優れたウェルド強度、高耐衝撃性をあわせもつことから各種成形品用の樹脂組成物原材料として用いることができ、例えば電気・電子機器部材、自動車部材及びOA機器部材などに幅広く使用できる。具体的用途としては、例えばセンサ、LEDランプ、コネクタ、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサ、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカ、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダ、パラボラアンテナ、携帯電話、携帯情報端末筐体、コンピュータ関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤ、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・コンパクトディスク・ミニディスク・MP3プレーヤーなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサ部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピュータ関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサ、水量センサ、水道メータハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネータターミナル、オルタネータコネクタ,ICレギュレータ、ライトディヤー用ポテンシオメータベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディ、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサ、冷却水センサ、油温センサ、スロットルポジションセンサ、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメータ、ブレーキパッド摩耗センサ、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラ、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルタ、点火装置ケース、車速センサ、ケーブルライナー、コンデンサケース、ECUケース、パワーモジュールケース、イグニションコイルなどの自動車・車両関連部品に用いられる。
【発明の効果】
【0042】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、優れた耐冷熱性、高エポキシ接着性、低ガス発生量、低金型汚染、優れたウェルド強度、高耐衝撃性をあわせもつことを特徴とする。さらに、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形機、押出成形機、圧縮成形機などを用いて任意の形状に成形することができ、特に射出成形には好適な樹脂組成物である。
【実施例】
【0043】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0044】
なお、実施例に用いたポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は以下の方法により評価・測定した。
【0045】
〜アミノ基含有量の測定〜
赤外線吸収スペクトル測定装置により、1900cm−1の吸収(ベンゼン環のC−H面外変角振動)と3387cm−1の吸収(アミノ基のN−H伸縮振動)を測定し、該吸収比よりアミノ基含有量を得た。なお、その際の検量線はベンゼンとアニリンの混合物より作成した。
【0046】
〜溶融粘度測定〜
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所製、商品名CFT−500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
【0047】
〜耐冷熱性の評価〜
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物をシリンダー温度310℃、金型温度150℃に調整した射出成形機(住友重機械工業(株)製、商品名SE−75S)を用い30mm×20mm×10mmの直方体の鋼材(炭素鋼)をインサートするインサート成形により、肉厚1mmのポリアリーレンスルフィド樹脂組成物で被覆する冷熱性評価用テストピースとした。
【0048】
得られたテストピースを150℃で30min保持した後、−40℃で30min保持を行うことを1サイクルとする冷熱サイクルに供し、目視によりクラックが発生するまで該サイクルを継続し、クラックの発生が認められた冷熱サイクル処理数を耐冷熱性として評価した。該冷熱サイクル処理数の高いものほど冷熱性に優れるものとした。
【0049】
〜接着強度の測定〜
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物をシリンダー温度310℃、金型温度150℃に調整した射出成形機(住友重機械工業(株)製、商品名SE−75S)により、ASTM D638 1号ダンベル試験片に成形した。
【0050】
該試験片をダンベル平行部中心で2つに切断し、二液性エポキシ接着剤(ナガセケムテックス(株)製、商品名XNR5002及びXNH5002)にて、接着面積1.27cm(試験片幅1.27cm、接着代1.0cm)、厚さ0.1mmで接着、100℃×1hr続いて150℃×3hrで硬化した。硬化後の試験片を引張り試験機((株)島津製作所製、商品名オートグラフ AG−5000B)を用い10mm/minで引張り、破断強度を測定し、破断強度を接着面積で除して、接着強度の測定を行った。
【0051】
〜発生ガス量の測定〜
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のペレットを試験管に入れ、真空密封した後、該試験管を340℃で1時間放置し、発生したガスの容積をマノメータで測定し、該容積を比重で除することにより発生ガス量を測定した。
【0052】
〜金型汚染性の測定〜
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を試験片とした後の金型表面を目視にて観察した。評価基準を以下に示す。
○:金型表面に付着物は認められない。
△:金型表面にわずかに付着物が認められる。
×:金型表面に大いに付着物が認められる、又は成形不可である。
【0053】
〜ウェルド強度の測定〜
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物をシリンダー温度310℃、金型温度150℃に調整した射出成形機(住友重機械工業(株)製、商品名SE−75S)を用いウェルド強度測定用試験片とし、引張り試験機((株)島津製作所製、商品名オートグラフ AG−500B)を用いて、ASTM D638に準拠し測定を行った。
【0054】
〜シャルピー衝撃強度の測定〜
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物をシリンダー温度310℃、金型温度150℃に調整した射出成形機(住友重機械工業(株)製、商品名SE−75S)を用いシャルピー衝撃強度測定用試験片とし、ノッチングマシーン((株)東洋精機製作所製、商品名A−3型)によりノッチを入れ、シャルピー衝撃試験機((株)東洋精機製作所製、商品名DG−CB型)を用いて、ISO179に準拠し測定を行った。
【0055】
合成例1
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7278g、3,5−ジクロロアニリン11.7g、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が400ポイズのアミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(1)と記す。)を得た。このPPS(1)を、さらに空気雰囲気下250℃で2時間硬化を行いアミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(2)と記す。)を得た。
【0056】
得られたPPS(2)の溶融粘度は、1600ポイズであり、フェニル基に対するアミノ基の含有量は0.1モル%であった。
【0057】
合成例2
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7160g、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が280ポイズのポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(3)と記す。)を得た。このPPS(3)を、さらに空気雰囲気下250℃で4時間硬化を行いポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(4)と記す。)を得た。
【0058】
得られたPPS(4)の溶融粘度は、3000ポイズであった。
【0059】
合成例3
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン6260g、3,5−ジアミノクロロベンゼン1067g(p−ジクロロベンゼンと3,5−ジアミノクロロベンゼンの総量に対して約15モル%)を添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて250℃に昇温し、250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥した。得られたアミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(5)と記す。)の溶融粘度は低すぎるため測定できなかった。このPPS(5)を、さらに空気雰囲気下250℃で6時間硬化を行いアミノ基置換ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(6)と記す。)を得た。
【0060】
得られたPPS(6)の溶融粘度は、5000ポイズであり、フェニル基に対するアミノ基の含有量は6モル%であった。
【0061】
合成例4
直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ニポロンL F13)10kgに対し無水マレイン酸(和光純薬工業(株)製)250g、ジアルキルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサ25B)10gをヘキシェルミキサーにて均一に混合した。その後、二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、シリンダー温度220℃で押し出し、無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(以下、変性L−LDPEと記す。)を得た。
【0062】
赤外線吸収スペクトルによりカルボニル基の吸収を測定し得られた変性L−LDPEの無水マレイン酸付加量を確認したところ1.4重量%であった。また、密度は929kg/m、メルトマスフローレートは1.7g/10min(測定温度190℃、荷重21.18N)、融点は116℃であった(DSC 加熱温度10℃/min)。
【0063】
合成例5
ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(三井化学(株)製、商品名TPX DX820)10kgに対し無水マレイン酸(和光純薬工業(株)製)250g、ジアルキルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサ25B)10gをヘキシェルミキサーにて均一に混合した。その後、二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、シリンダー温度250℃で押し出し、無水マレイン酸変性ポリ(4−メチル−1−ペンテン)(以下、変性P4M1Pと記す。)を得た。
【0064】
得られた変性P4M1Pの無水マレイン酸の付加量をナトリウムメチラートによる滴定により測定したところ1.4重量%であった。また、メルトマスフローレートは150g/10min(測定温度260℃、荷重0.49N)、融点は230℃であった(DSC 加熱温度10℃/min)。
【0065】
合成例6
直鎖状高密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ニポロンハード 8300A)10kgに対し無水マレイン酸(和光純薬工業(株)製)150g、ジアルキルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名パーヘキサ25B)10gをヘキシェルミキサーにて均一に混合した。その後、二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、シリンダー温度220℃で押し出し、無水マレイン酸変性直鎖状高密度ポリエチレン(以下、変性HDPEと記す。)を得た。
【0066】
得られた変性HDPEの無水マレイン酸の付加量を赤外線吸収スペクトルによるカルボニル基吸収により測定したところ0.8重量%であった。また、密度は958kg/m、メルトマスフローレートは1.7g/10min(測定温度190℃、荷重21.18N)、融点は131℃であった(DSC 加熱温度10℃/min)。
【0067】
実施例1
合成例1で得られたPPS(2)8.8kgと合成例4で得られた変性L−LDPE1.2kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維(日本板硝子(株)、商品名RES03−TP91)をサイドフィーダーから添加量がPPS(2)と変性L−LDPEの合計量100重量部に対し43重量部となるように供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0068】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐冷熱性、ウェルド強度、接着強度、シャルピー衝撃強度、発生ガス量、金型汚染性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0069】
実施例2
合成例1で得られたPPS(2)8.8kg、合成例6で得られた変性HDPE1.2kg、多官能性イソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名ミリオネートMR−100)0.1kg、カルナバワックス(日興リカ(株)製、商品名カルナバワックス1号粉末)0.01kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維(日本板硝子(株)、商品名RES03−TP91)をサイドフィーダーから添加量がPPS(2)と変性HDPEの合計量100重量部に対し43重量部となるように供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0070】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐冷熱性、ウェルド強度、接着強度、シャルピー衝撃強度、発生ガス量、金型汚染性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0071】
実施例3
合成例1で得られたPPS(2)8.8kgと合成例6で得られた変性HDPE1.2kg、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名エピコート1004)0.1kg、カルナバワックス(日興リカ(株)製、商品名カルナバワックス1号粉末)0.01kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維(日本板硝子(株)、商品名RES03−TP91)をサイドフィーダーから添加量がPPS(2)と変性HDPEの合計量100重量部に対し43重量部となるように供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0072】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐冷熱性、ウェルド強度、接着強度、シャルピー衝撃強度、発生ガス量、金型汚染性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0073】
実施例4
合成例1で得られたPPS(2)8.7kgと合成例6で得られた変性HDPE1.3kg、カルナバワックス(日興リカ(株)製、商品名カルナバワックス1号粉末)0.01kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維(日本板硝子(株)、商品名RES03−TP91)をサイドフィーダーから添加量がPPS(2)と変性HDPEの合計量100重量部に対し25重量部となるように供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0074】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐冷熱性、ウェルド強度、接着強度、シャルピー衝撃強度、発生ガス量、金型汚染性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0075】
実施例5
合成例1で得られたPPS(2)9.6kgと合成例4で得られた変性L−LDPE0.4kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維(日本板硝子(株)、商品名RES03−TP91)をサイドフィーダーから添加量がPPS(2)と変性L−LDPEの合計量100重量部に対し43重量部となるように供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0076】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐冷熱性、ウェルド強度、接着強度、シャルピー衝撃強度、発生ガス量、金型汚染性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0077】
実施例6
合成例1で得られたPPS(2)8.7kgと無水マレイン酸変性ポリプロピレン(日本ポリエチレン(株)製、商品名アドテックスER320P、融点159℃(DSC 加熱温度10℃/min))1.3kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維(日本板硝子(株)、商品名RES03−TP91)をサイドフィーダーから添加量がPPS(2)と無水マレイン酸変性ポリプロピレンの合計量100重量部に対し25重量部となるように供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0078】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐冷熱性、ウェルド強度、接着強度、シャルピー衝撃強度、発生ガス量、金型汚染性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0079】
実施例7
合成例1で得られたPPS(2)7.0kgと合成例4で得られた変性L−LDPE3.0kgをあらかじめタンブラーにて均一に混合した。その後、シリンダー温度300℃に設定した二軸押出機(東芝機械(株)、商品名TEM−35B)にて、平均繊維径9μm、繊維長3mmのガラス繊維(日本板硝子(株)、商品名RES03−TP91)をサイドフィーダーから添加量がPPS(2)と変性L−LDPEの合計量100重量部に対し25重量部となるように供給しながら溶融混練を行いペレット化した。その後、175℃で5時間乾燥しポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。
【0080】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の耐冷熱性、ウェルド強度、接着強度、シャルピー衝撃強度、発生ガス量、金型汚染性の評価を行った。その結果を表1に記す。
【0081】
比較例1
変性L−LDPEの代わりに高密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ニポロンハード8300A、融点134℃(DSC 加熱温度10℃/min))を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。
【0082】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、耐冷熱性、接着強度、ウェルド強度、シャルピー衝撃強度に劣るものであった。
【0083】
比較例2
変性L−LDPEの代わりにポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製、商品名ノバテックPP MA4C、融点163℃(DSC 加熱温度10℃/min))を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。
【0084】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、耐冷熱性、接着強度、金型汚染性に劣るものであった。
【0085】
比較例3
変性L−LDPEの代わりに合成例5で得られた変性P4M1Pを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。
【0086】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、耐冷熱性、ウェルド強度、シャルピー衝撃強度に劣るものであった。
【0087】
比較例4
変性L−LDPEの代わりにエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体(アルケマ(株)、商品名ボンダインTX8030、融点95℃(DSC 加熱温度10℃/min))を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。
【0088】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、発生ガス量、金型汚染性に劣るものであった。
【0089】
比較例5
変性L−LDPEを用いない以外は、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。
【0090】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、耐冷熱性、接着強度、シャルピー衝撃強度に劣るものであった。
【0091】
比較例6
PPS(2)の代わりに合成例2により得られたPPS(4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。
【0092】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、耐冷熱性、接着強度、ウェルド強度、シャルピー衝撃強度に劣るものであった。
【0093】
比較例7
PPS(2)の代わりに合成例3により得られたPPS(6)を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を得た。その評価結果を表2に示す。
【0094】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、耐冷熱性、ウェルド強度、シャルピー衝撃強度、発生ガス量、金型汚染性に劣るものであった。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリーレン基に対しアミノ基を0.05〜5モル%含有するポリアリーレンスルフィド(a)と示差走査熱量計により加熱速度10℃/minで測定した融点が115〜170℃であり、カルボン酸基、酸無水物基及び水酸基からなる群より選ばれるいずれか一種以上の官能基を有する変性ポリオレフィン(b)とからなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項2】
アリーレン基に対しアミノ基を0.05〜5モル%含有するポリアリーレンスルフィド(a)99〜70重量%と示差走査熱量計により加熱速度10℃/minで測定した融点が115〜170℃であり、カルボン酸基、酸無水物基及び水酸基からなる群より選ばれるいずれか一種以上の官能基を有する変性ポリオレフィン(b)1〜30重量%とからなることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項3】
変性ポリオレフィン(b)が、カルボン酸基、酸無水物基及び水酸基からなる群より選ばれるいずれか一種以上の官能基を有する変性ポリエチレン又は変性ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項4】
変性ポリエチレンが、カルボン酸基、酸無水物基及び水酸基からなる群より選ばれるいずれか一種以上の官能基を有する変性直鎖状低密度ポリエチレン又は変性高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜3に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項5】
ポリアリーレンスルフィド(a)と変性ポリオレフィン(b)の合計量100重量部に対し、さらに多官能性イソシアネート0.1〜6重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜4に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項6】
ポリアリーレンスルフィド(a)と変性ポリオレフィン(b)の合計量100重量部に対し、さらにエポキシ樹脂1〜25重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜5に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項7】
ポリアリーレンスルフィド(a)と変性ポリオレフィン(b)の合計量100重量部に対し、さらにカルナバワックス0.01〜3重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜6に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項8】
ポリアリーレンスルフィド(a)と変性ポリオレフィン(b)の合計量100重量部に対し、さらに無機充填材5〜200重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜7に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−106834(P2007−106834A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297783(P2005−297783)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】