説明

ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物及びそれよりなる複合体

【課題】 ポリアリーレンスルフィド、極性基含有ポリエチレン系共重合体及びトリアジンチオール類からなる接着性、密着性、機械的特性に優れるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物、及び金属部材と該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物からなる界面の接着性、密着性に優れる複合体を提供する。
【解決手段】 ポリアリーレンスルフィド(A)67〜98.9重量%、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)1〜30重量%、及びトリアジンチオール類(C)0.1〜5重量%からなるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物及びそれよりなる複合体に関するものであり、更に詳しくは、ポリアリーレンスルフィド、極性基含有ポリエチレン系共重合体及びトリアジンチオール類からなる接着性、密着性に優れるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物、及び金属部材と該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物からなる界面の接着性、密着性に優れる複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアリーレンスルフィドは、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性などに優れた特性を示す樹脂であり、その優れた特性を生かし、電気・電子機器部材、自動車機器部材およびOA機器部材等に幅広く使用されている。そして、これら用途においては、例えば金属製品、セラミック製品、エポキシ樹脂製品との複合化製品が増える傾向にあり接着性・密着性が重要視される傾向にある。
【0003】
しかしながら、ポリアリーレンスルフィドは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール等の他のエンジニアリングプラスチックと比較して、エポキシ樹脂等との接着性、接着強度の熱老化性、靭性、耐衝撃性等が大きく劣ることから、多くの用途で使用が制限されていた。
【0004】
ポリアリーレンスルフィドの接着性を改良する試みについては、これまでにもいくつかの検討がなされ、例えば(a)ポリアリーレンスルフィド、(b)共重合ポリエステル、(c)オレフィン系共重合体を配合する樹脂組成物(例えば特許文献1参照。)、(a)ポリアリーレンスルフィド、(b)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、(c)オキサゾリン基含有非晶性ポリマーからなる樹脂組成物(例えば特許文献2参照。)等が提案されている。
【0005】
また、ポリアリーレンスルフィドの靭性、耐衝撃性等を改良する試みについても、例えば(a)ポリアリーレンスルフィド、(b)エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル系共重合体からなる樹脂組成物(例えば特許文献3参照。)、(a)ポリフェニレンスルフィドと非ブロック型多官能イソシアネート化合物とを溶融混練してなる組成物と、(b)エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル系共重合体とを配合する樹脂組成物(例えば特許文献4参照。)、さらに、(a)ポリアリーレンスルフィド、(b)エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル系共重合体、及び(c)特定の種類のアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物(例えば特許文献5参照。)等が提案されている。
【0006】
また、金属と樹脂を一体化し複合体として用いることは各種産業において行われており、該複合体化に適した接着剤の研究・開発が行われてきた。
【0007】
その一方で、複合体とする際の工程・部品点数の簡略化を促進するために接着剤を用いずに金属と樹脂との一体成形を行う方法についても検討が行われてきている。
【0008】
そして、そのような樹脂の中でもポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略記することもある。)は、優れた機械的性質、熱的性質、電気的性質を有し、コンデンサの誘電体、電気絶縁材料、電子部品、音響振動板などに幅広く使用されている。しかし、PPSには金属との接着性に劣り、金属との一体成形には適さない、という課題があった。
【0009】
そこで、金属の表面を処理することにより樹脂との接着性を向上させる試みが提案されており、金属部材の陽極酸化被膜に孔を形成し、樹脂と複合する方法が提案されている(例えば特許文献6参照。)。また、熱可塑性樹脂と金属部品との密着性を向上させる方法としてケミカルエッチングを施した金属部品をインサートして熱可塑性樹脂の成形を行う方法が提案されている(例えば特許文献7参照。)。
【0010】
さらに、トリアジンチオール類による電気化学的表面処理を施した金属と高分子材料からる複合体が提案されている(例えば特許文献8,9参照。)
【特許文献1】特開平11−228828号公報
【特許文献2】特開2000−103964号公報
【特許文献3】特開昭62−151460号公報
【特許文献4】特開平02−255862号公報
【特許文献5】特開平05−202245号公報
【特許文献6】特開2000−119879号公報
【特許文献7】WO2004−055248号公報
【特許文献8】特開2001−225352号公報
【特許文献9】特開平02−298284号公報
【特許文献10】特開2000−160392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1、2に提案された樹脂組成物においては、接着性及び接着強度の熱老化性は共に不十分であり、また、特許文献3〜5に提案された樹脂組成物においては、靭性、耐衝撃性等がまだ十分に満足できないという課題があった。これらの提案はおしなべて、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、金属部材等との接着性、密着性や接着強度の熱老化性を改良するという課題と、機械的特性、耐ヒートサイクル性等を改良するという課題を同時に満足することはできないものであった。また、特許文献6,7に提案された方法においては、金属部品と熱可塑性樹脂の接着性に課題を残すものである。さらに、特許文献8,9に提案された方法は、金属表面を電気化学的処理することが必要であり煩雑な工程を必要とした。
【0012】
そこで、本発明は、ポリアリーレンスルフィドが本来有する耐熱性、耐薬品性、寸法安定性などを損なうことなく、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、金属部材等との接着強度、密着強度が高く、かつそれらの熱老化性に優れると同時に、耐ヒートサイクル性、機械的強度にも優れるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物を提供することを目的とし、さらに詳しくは、電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途に特に有用なポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物及びそれよりなる複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアリーレンスルフィド、特定のポリエチレン系共重合体、トリアジンチオール類よりなるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物とすることで、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、金属部材等との接着強度、密着強度が高く、かつそれらの熱老化性に優れると同時に、耐ヒートサイクル性、機械的強度にも優れる組成物となりうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、本発明は、ポリアリーレンスルフィド(A)67〜98.9重量%、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)1〜30重量%、及びトリアジンチオール類(C)0.1〜5重量%からなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物に関するものである。
【0015】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0016】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド(A)67〜98.9重量%、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)1〜30重量%、及びトリアジンチオール類(C)0.1〜5重量%からなるものである。
【0017】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物を構成するポリアリーレンスルフィド(A)としては、ポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、その中でも、得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物が機械的強度、靭性、耐衝撃性、ウェルド強度、耐ヒートサイクル性、成型加工性に優れたものとなることから測定温度315℃、荷重10kgの条件下、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターで測定した溶融粘度が100〜30000ポイズであるポリアリーレンスルフィドが好ましく、特に200〜20000ポイズであるものが好ましい。
【0018】
該ポリアリーレンスルフィド(A)としては、その構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を70モル%以上、特に90モル%以上含有しているものが好ましい。
【0019】
そして、他の構成成分としては、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルホン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ジフェニレンスルフィド単位、置換基含有フェニレンスルフィド単位、分岐構造含有フェニレンスルフィド単位等を挙げることができ、その中でも接着性、機械的特性、耐ヒートサイクル性、機械的強度のバランスに優れたポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物となることからポリ(p−フェニレンスルフィド)が好ましい。
【0020】
該ポリアリーレンスルフィド(A)の製造方法としては、特に限定はなく、一般的にポリアリーレンスルフィドの製造方法として知られている方法により製造すればよく、例えば重合溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応する方法により製造することが可能である。アルカリ金属硫化物としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及びそれらの混合物が挙げられ、これらは水和物の形で使用しても差し支えない。また、これらアルカリ金属硫化物は、水硫化アルカリ金属とアルカリ金属塩基とを反応させることによって得られるが、ジハロ芳香族化合物の重合系内への添加に先立ってその場で調整されても、また系外で調整されたものを用いても差し支えない。また、ジハロ芳香族化合物としては、例えばp−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、1−クロロ−4−ブロモベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニル等が挙げられる。また、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物との仕込み比は、アルカリ金属硫化物/ジハロ芳香族化合物=1/0.9〜1.1(モル比)の範囲とすることが好ましい。
【0021】
重合溶媒としては、極性溶媒が好ましく、特に非プロトン性で高温でのアルカリに対して安定な有機アミドが好ましい溶媒である。該有機アミドとしては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素及びその混合物、等が挙げられる。また、該重合溶媒は、重合によって生成するポリマーに対し150〜3500重量%で用いることが好ましく、特に250〜1500重量%となる範囲で使用することが好ましい。重合は200〜300℃、特に220〜280℃にて0.5〜30時間、特に1〜15時間攪拌下にて行うことが好ましい。
【0022】
さらに、ポリアリーレンスルフィド(A)は、直鎖状のものであっても、酸素存在下高温で処理し、架橋したものであっても、トリハロ以上のポリハロ化合物を少量添加して若干の架橋または分岐構造を導入したものであっても、窒素等の非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものであってもかまわないし、さらにこれらの構造の混合物であってもかまわない。中でも該ポリアリーレンスルフィド(A)として、得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物が、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、金属部材等との接着性、密着性、それらの熱老化性、耐ヒートサイクル性のバランスに優れたものとなることから、アリーレンスルフィド単位あたり0.05〜5モル%に相当する官能基を有する官能基含有ポリアリーレンスルフィド(a1)及び/又は直鎖状ポリアリーレンスルフィド(a2)であることが好ましい。
【0023】
該官能基含有ポリアリーレンスルフィド(a1)としては、例えばアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド、カルボキシル基含有ポリアリーレンスルフィド、チオール基含有ポリアリーレンスルフィド、水酸基含有ポリアリーレンスルフィド等を挙げることができ、その中でも入手の容易さよりアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド、カルボキシル基含有ポリアリーレンスルフィドであることが好ましい。
【0024】
該官能基含有ポリアリーレンスルフィド(a1)は、例えばアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを反応させる際に、官能基含有芳香族ハロゲン化合物を共存させ重合を行う方法により製造することが可能である。
【0025】
該官能基含有芳香族ハロゲン化合物としては、アミノ基含有ポリアリーレンスルフィドとする際には、例えば2,5−ジクロロアニリン、2,6−ジクロロアニリン、3,5−ジクロロアニリン、3,5−ジアミノクロロベンゼン、2−アミノ−4−クロロトルエン、2−アミノ−6−クロロトルエン、4−アミノ−2−クロロトルエン、3−クロロ−m−フェニレンジアミン、2,5−ジブロモアニリン、2,6−ジブロモアニリン、3,5−ジブロモアニリン、及びそれらの混合物等が挙げられ、特に3,5−ジクロロアニリン、3,5−ジアミノクロロベンゼンが好ましい。カルボキシル基含有ポリアリーレンスルフィドとする際には、例えば2,5−ジクロロ安息香酸、2,6−ジクロロ安息香酸、3,5−ジクロロ安息香酸、2,5−ジブロモ安息香酸、2,6−ジブロモ安息香酸、3,5−ジブロモ安息香酸、及びそれらの混合物等が挙げられ、特に3,5−ジクロロ安息香酸が好ましい。チオール基含有ポリアリーレンスルフィドとする際には、例えば2,5−ジクロロチオフェノール、2,6−ジクロロチオフェノール、3,5−ジクロロチオフェノール、2,5−ジブロモチオフェノール、2,6−ジブロモチオフェノール、3,5−ジブロモチオフェノール、及びそれらの混合物等が挙げられ、特に3,5−ジクロロチオフェノールが好ましい。水酸基含有ポリアリーレンスルフィドとする際には、例えば2,5−ジクロロフェノール、2,6−ジクロロフェノール、3,5−ジクロロフェノール、2,5−ジブロモフェノール、2,6−ジブロモフェノール、3,5−ジブロモフェノール、及びそれらの混合物等が挙げられ、特に3,5−ジクロロフェノールが好ましい。
【0026】
一方、該直鎖状ポリアリーレンスルフィド(a2)としては、直鎖状ポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、例えば特公昭52−12240号公報に記載の方法により製造することが可能である。
【0027】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、ポリアリーレンスルフィド(A)67〜98.9重量%からなるものである。ここで、ポリアリーレンスルフィド(A)が67重量%未満である場合、得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は機械的強度が著しく低下するものとなる。一方、98.9重量%を越える場合、得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、接着性、機械的特性、耐ヒートサイクル性が劣るものとなる。
【0028】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物を構成する極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)は、トリアジンチオール類(C)と組み合わせることより、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物の接着性、密着性、それらの熱老化性を向上させると共に、耐ヒートサイクル性を改良するものであり、該極性基含有ポリエチレン系共重合体としては、極性基含有ポリエチレン系共重合体の範疇に属するものであれば如何なるものも用いることが可能であり、例えばカルボン酸基含有ポリエチレン系共重合体、カルボン酸エステル基含有ポリエチレン系共重合体、酸無水物基含有ポリエチレン系共重合体、水酸基含有ポリエチレン系共重合体、アミノ基含有ポリエチレン系共重合体、アセトキシ基含有ポリエチレン系共重合体、エポキシ基含有ポリエチレン系共重合体、オキサゾリン基含有ポリエチレン系共重合体等を挙げることができ、より具体的には、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(b1)、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(b2)、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(b3)、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(b4)及びエチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(b5)等を挙げることができ、その中でも、特に接着性、密着性、耐ヒートサイクル性に優れるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物となることから、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(b1)、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(b2)、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(b3)、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(b4)、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(b5)であることが好ましい。
【0029】
該無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(b1)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物が接着性、密着性、それらの熱老化性等に優れることから、エチレン残基単位:α−オレフィン残基単位:無水マレイン酸残基単位(重量比)=50〜98:45〜1:5〜1の範囲からなるものであることが好ましく、具体的には無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。該無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(b1)は、例えばエチレン−α−オレフィン共重合体、過酸化物、無水マレイン酸を共存し、グラフト化反応を進行することにより入手することが可能である。
【0030】
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(b2)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物が接着性、密着性、それらの熱老化性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル残基単位:無水マレイン酸残基単位(重量比)=50〜98:40〜1:10〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(b2)の具体的例示としては、(商品名)ボンダインLX4110(アルケマ社製)、(商品名)ボンダインTX8030(アルケマ社製)、(商品名)ボンダインAX8390(アルケマ社製)等が挙げられる。
【0031】
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(b3)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物が接着性、密着性、それらの熱老化性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位(重量比)=85〜99:15〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(b3)の具体的例示としては、(商品名)ボンドファスト2C(住友化学(株)製)、(商品名)ボンドファストE(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0032】
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(b4)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物が接着性、密着性、それらの熱老化性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位:酢酸ビニル残基単位(重量比)=50〜98:15〜1:35〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(b4)の具体的例示としては、(商品名)ボンドファスト2B(住友化学(株)製)、(商品名)ボンドファスト7B(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0033】
該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(b5)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物が接着性、密着性、それらの熱老化性等に優れることから、エチレン残基単位:α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位:α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル残基単位(重量比)=50〜98:10〜1:40〜1の範囲であることが好ましい。該エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(b5)の具体的例示としては、(商品名)ボンドファスト7L(住友化学(株)製)、(商品名)ボンドファスト7M(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0034】
ここで、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)を構成するα−オレフィンとは、炭素数が3以上のα−オレフィンを言い、例えばプロピレン、ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。また、α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエステルが挙げられ、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル等が挙げられる。α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステルとしては、例えばアクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステルが挙げられる。
【0035】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)1〜30重量%からなるものであり、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)の配合量が1重量%未満である場合、得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は接着性、密着性、それらの熱老化性、耐ヒートサイクル性に劣るものとなる。一方、30重量%を越える場合、得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は機械的強度が著しく低下するものとなる。
【0036】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物を構成するトリアジンチオール類(C)は、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)と組み合わせて配合することで、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物のエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、金属部材等との接着強度、密着強度、それらの熱老化性を向上させると共に、耐ヒートサイクル性を改良するために配合されるものであり、トリアジンチオール類と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・テトラブチルアンモニウム塩、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム、6−ジオクチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジオクチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム、6−ジラウイルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ジラウリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム、6−ステアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−ステアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム、6−オレイルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール、6−オレイルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノカリウム等のトリアジンジチオール類(c1);1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・モノナトリウム、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・トリエタノールアミン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール・ジ(テトラブチルアンモニウム塩)、等を挙げることができ、その中でも特に金属、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等との接着性、密着性に優れるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物となることからトリアジンジチオール(c1)であることが好ましい。
【0037】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、トリアジンチオール類(C)0.1〜5重量%からなるものであり、該トリアジンチオール類の配合量が0.1重量%未満である場合、得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は接着性、密着性、それらの熱老化性、耐ヒートサイクル性に劣るものとなる。一方、5重量%を越える場合、得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は成形加工性、機械的強度が著しく低下するものとなる。
【0038】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、成形品とする際の金型離型性や外観を改良するために滑剤(D)を配合してなることが好ましい。該滑剤(D)としては、例えばカルナバワックス(d1)、カルボン酸アマイド系ワックス(d2)が挙げられる。該カルナバワックス(d1)としては、一般的な市販品を用いることができ、例えば(商品名)精製カルナバ1号粉(日興ファインプロダクツ製)等を挙げることができる。また、該カルボン酸アマイド系ワックス(d2)とは、高級脂肪族モノカルボン酸、多塩基酸及びジアミンからなる重縮合物でありこの範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばステアリン酸、セバシン酸、エチレンジアミンからなる重縮合物である、(商品名)ライトアマイドWH−255(共栄社化学(株)製)等を挙げることができる。
【0039】
該滑剤(D)の配合量は、特に成形加工時に金型汚染等の問題を引き起こす可能性が低く、金型離型性、成形品の外観に優れるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(A)、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)、トリアジンチオール類(C)の合計100重量部に対し0.05〜5重量部であることが好ましい。
【0040】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、金属部材等との接着強度、密着性、それらの熱老化性を更に高める目的で、エポキシ樹脂(E)を配合することができる。該エポキシ樹脂(E)としては、エポキシ樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良い。具体例としては、2,2−ビス(4'−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAと称することもある。)、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールFと称することもある。)、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールSと称することもある。)、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシン、サリゲニン、トリヒドロキシジフェニルジメチルメタン、テトラフェニロールエタン、これらのハロゲン置換体およびアルキル基置換体、ブタンジオール、エチレングリコール、エリスリット、ノボラック、グリセリン、ポリオキシアルキレン等のヒドロキシル基を分子内に2個以上含有する化合物とエピクロルヒドリン等から合成されるグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;該ヒドロキシル基を分子内に2個以上含有する化合物とフタル酸グリシジルエステル等から合成されるグリシジルエステル系エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、メタキシレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の第一または第二アミンとエピクロロヒドリン等から合成されるグリシジルアミン系エポキシ樹脂等々のグリシジル基を含むエポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリオレフィン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等々のグリシジル基を含まないエポキシ樹脂が挙げられる。中でも得られるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、金属部材との接着性に特に優れたものとなることから、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。更に好ましいものとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0041】
該エポキシ樹脂(E)の配合量は、特にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、金属部材との接着性、密着性に優れたポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(A)、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)、トリアジンチオール類(C)の合計100重量部に対し0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0042】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、一般的な樹脂組成物に配合されている充填材(F)を配合してなるものであってもよく、該充填材(F)としては、繊維状充填材として、例えばガラス繊維(f1)、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維等が例示でき、その中でも、特に機械的強度に優れるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物となることから、ガラス繊維(f1)が好ましい。また、非繊維状充填材としては、例えばワラストナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、タルク、アルミナシリケート等の珪酸塩;酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;窒化珪素、窒化硼素、窒化アルミニウム等の窒化物;ガラスフレーク、ガラスビーズ等を例示でき、その中でも、特に寸法安定性に優れるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物となることから、マイカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、ガラスビーズが好ましい。また、該充填材(F)は、該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物の機械的強度が高いものとなることから、イソシアネート系化合物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、エポキシ化合物等で表面処理したものであっても良い。
【0043】
該充填材(F)の配合量は、特に機械的強度、寸法安定性に優れたポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド(A)、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)、トリアジンチオール類(C)の合計100重量部に対し10〜150重量部であることが好ましい。
【0044】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物の製造方法としては、従来使用されている加熱溶融混練方法を用いることができる。例えば単軸または二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダー等による加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではなく、通常280〜400℃の中から任意に選ぶことが出来る。また、本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、射出成形機、押出成形機、トランスファー成形機、圧縮成形機等を用いて任意の形状に成形することができる。
【0045】
さらに、本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、従来公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、発泡剤、金型腐食防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料等の着色剤、帯電防止剤等の添加剤を1種以上併用しても良い。
【0046】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、金属、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等と優れた接着性、密着性を有することからこれの部材との複合体として用いることに適している。その際の金属部材を構成する金属としては、金属の範疇に属するものであれば如何なるものを用いることもでき、その中でもアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、ステンレスであることが好ましい。また、特に該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物との界面における密着性、接着性に優れる複合体となることから該金属部材は、例えばケミカルエッチング法、物理的表面粗化法、陽極酸化法等により表面処理を施したものであることが好ましい。
【0047】
該ケミカルエッチング法とは、化学薬品等の化学的処理により表面粗化を行うものであり、プリント基板の製造時において、銅箔と熱硬化性エポキシ樹脂との接着性を高めるために行われる銅箔のエッチング処理や、装飾・防錆等を目的とした金属部品の装飾工程において金属素材に対する塗料の密着性を高めるために、装飾前処理として予め金属表面を微細粗化させる目的で行われるエッチング処理等が挙げられ、例えば特開平10−096088号公報、特開平10−056263号公報、特開平04−032585号公報、特開平04−032583号公報に記載されている方法を挙げることができる。
【0048】
該物理的表面粗化法とは、金属表面に微小固体粒子を接触或いは衝突させたり、高エネルギー電磁線を照射するなどの物理的な手段により表面粗化を行うものであり、例えばサンドブラスト処理、液体ホーニング処理等として知られているものである。また、サンドブラスト処理、液体ホーニング処理の際の研磨剤としては、例えばサンド、スチールグリッド、スチールショット、カットワイヤー、アルミナ、炭化ケイ素、金属スラグ、ガラスビーズ、プラスチックビーズ等を挙げることができる。
【0049】
該陽極酸化法とは、金属部材を陽極として電解液中で電化反応を行いその表面に酸化被膜を形成するものであり、メッキ等の分野において陽極酸化法として一般的に知られている方法を用いることができ、例えば1)一定の直流電圧をかけて電解を行う直流電解法、2)直流成分に交流成分を重畳した電圧をかけることにより電解を行うバイポーラ電解法、等を挙げることができる。
【0050】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物よりなる複合体の製造方法としては、該複合体を製造することが可能であれば如何なる方法をも用いることが可能であり、その中でも特に効率的に、エポキシ樹脂製部材、シリコーン樹脂製部材、金属部材等の部材を、射出成形機に装着されている金型内に装着し、該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物を溶融状態で射出を行い複合体とする、インサート形成により製造することが好ましい。また、その際、金属部材である場合、上記した方法等により表面粗化を施した部材であることが好ましい。
【0051】
該複合体は、部材とポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物の界面が良好な接着性、密着性を有することからこれら特性を必要とする各種用途に用いることが可能であり、例えば電子機器筐体、電気機器筐体、電子機器部品、電気機器部品等を挙げることができる。さらにセンサー、コイルボビン等に代表される電気接続端子部品等にも適したものである。
【発明の効果】
【0052】
本発明のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物は、金属、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂と優れた接着性、密着性を有し、その機械的特性に優れることからその工業的価値は高いものとなる。
【実施例】
【0053】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0054】
なお、実施例に用いたポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィド組成物、複合体は、以下の方法により評価・測定した。
【0055】
〜ポリフェニレンスルフィドの溶融粘度測定〜
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター(島津製作所製、(商品名)CFT−500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
【0056】
〜アミノ基含有量の測定〜
赤外線吸収スペクトル測定装置により、1900cm−1の吸収(ベンゼン環のC−H面外偏角振動)と、3387cm−1の吸収(アミノ基のN−H伸縮振動)を測定し、該吸収比よりアミノ基含有量を得た。なお、その際の検量線はベンゼンとアニリンの混合物より作成した。
【0057】
〜耐ヒートサイクル性の評価〜
得られた複合体を−25℃に1時間放置した後、150℃まで昇温し150℃で放置した後、さらに−25℃まで降温する工程を1サイクルとする耐低高温試験を100サイクル行い界面での破壊の有無により接着性の評価を行った。
【0058】
〜接着強度の測定〜
複合体試験片を引張試験機((株)島津製作所製、(商品名)オートグラフAG−5000B)で5mm/分で引張り、破断強度を測定した。破断強度を接着面積で除して、接着強度とした。
【0059】
<合成例1(ポリフェニレンスルフィド(a1−2)の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7278g、3,5−ジクロロアニリン11.7g、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が400ポイズのアミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(a1−1)と記す。)を得た。このPPS(a1−1)を、さらに酸素雰囲気下250℃で2時間硬化を行いアミノ基含有ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(a1−2)と記す。)を得た。
【0060】
得られたPPS(a1−2)の溶融粘度は1600ポイズであり、フェニレンスルフィド単位あたりのアミノ基含有量は0.1モル%であった。
【0061】
<合成例2(ポリフェニレンスルフィド(a2−1))の合成)>
攪拌機を装備する50リットルチタン製オートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン10773g、47%硫化水素ナトリウム水溶液5607g及び48%水酸化ナトリウム水溶液3807gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、4533gの水を溜出させた。この系を170℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン7060gとN−メチル−2−ピロリドン5943gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を225℃に昇温し、225℃にて1時間重合し、続けて250℃まで昇温し、250℃にて2時間重合した。更に、250℃で水1503gを圧入し、再度255℃まで昇温し、255℃にて2時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、重合スラリーを固液分離した。ポリマーをN−メチル−2−ピロリドン、アセトン及び水で順次洗浄し、100℃で一昼夜乾燥し、ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(a2−1)と記す。)を得た。
【0062】
得られたPPS(a2−1)は直鎖状のものであり、その溶融粘度は350ポイズであった。
【0063】
<合成例3(ポリフェニレンスルフィド(a−2))の合成)>
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)6214g及びN−メチル−2−ピロリドン17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン7160g、N−メチル−2−ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却しポリマーを遠心分離機により単離した。該固形分を温水でポリマーを繰り返し洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、溶融粘度が280ポイズのポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(a−1)と記す。)を得た。このPPS(a−1)を、さらに酸素雰囲気下250℃で4時間硬化を行いPPS(a−2)を得た。
【0064】
得られたPPS(a−2)の溶融粘度は、3000ポイズであった。
【0065】
<合成例4(無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレンの合成)>
直鎖状低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、(商品名)ニポロンZ 1P53A)10kgに対し無水マレイン酸(和光純薬工業(株)製)250g、ジアルキルパーオキサイド(日本油脂(株)製、(商品名)パーヘキサ25B)10gをヘキシェルミキサーにて均一に混合した。その後、二軸押出機(東芝機械(株)、(商品名)TEM−35−102B)にて、シリンダー温度220℃で押出し、無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレンを得た。赤外線吸収スペクトルによりカルボニル基による吸収を測定し、別途作成した検量線から求めた無水マレイン酸含有量は1.4wt%であった。また、メルトフローレート(MFR)は0.7g/10分(測定温度190℃、荷重21.18N)であった。
【0066】
実施例1
合成例1より得られたPPS(a1−2)84重量%、合成例4より得られた無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン15重量%、及び6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール1重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が25重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを作製した。
【0067】
該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入し、ASTM D−638 1号ダンベル試験片を成形し、該試験片をダンベル平行部中心で2つに切断し、二液性エポキシ接着剤(ナガセケムテックス(株)製、(商品名)XNR5002及びXNH5002)にて、接着面積1.27cm(試験片幅1.27cm、接着代1.0cm)、厚さ0.1mmで接着し、100℃×1hr続いて150×3hrでエポキシ接着剤を硬化させ、エポキシ接着評価用試験片を作成した。
【0068】
エポキシ接着評価用試験片より得られたエポキシ接着強度は16.1MPaと高く、その破壊形態は凝集破壊であった。
【0069】
アルミニウム合金(A1050)製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))を#200のサンドペーパーにより表面粗化を施し、その後エタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行うことにより、表面粗化アルミニウム合金(A1050)製試験片を得た。
【0070】
該アルミニウム合金(A1050)製試験片を射出成形機金型内に装着し、該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを、310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入しインサート成形を行い複合体を得た。
【0071】
得られた複合体の耐ヒートサイクル性を評価したところ耐低高温試験100サイクルにて複合体の破壊は見られなかった。また、接着強度は5.8MPaであった。
【0072】
実施例2
合成例2より得られたPPS(a2−1)87重量%、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(アルケマ社製、(商品名)ボンダインTX8030)12重量%、及び6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール1重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が20重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを作製した。
【0073】
該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は16.7MPaと高く、その破壊形態は凝集破壊であった。
【0074】
アルミニウム製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))をエタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を水酸化マグネシウム水溶液に浸漬し、ケミカルエッチングを施すことより表面粗化アルミニウム製試験片を得た。
【0075】
該アルミニウム製試験片を射出成形機金型内に装着し、実施例1と同様の方法により複合体を得、該複合体により評価を行ったところ、耐低高温試験100サイクルにて複合体の破壊は見られなかった。また、接着強度は6.1MPaであった。
【0076】
実施例3
合成例3より得られたPPS(a−2)85重量%、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(アルケマ社製、(商品名)ボンダインAX8390)14重量%、及び6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム1重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が20重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを作製した。
【0077】
該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は16.2MPaと高く、その破壊形態は凝集破壊であった。
【0078】
アルミニウム合金(A5052)製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))に、液体ホーミング装置を用い、粒度が#220のアルミナ研磨剤を濃度15重量%、ゲージ圧0.6MPaの条件で吹き付け、その後アセトンに浸漬することにより表面の洗浄を行い、表面粗化アルミニウム合金(A5052)製試験片を得た。
【0079】
該アルミニウム合金(A5052)製試験片を射出成形機金型内に装着し、実施例1と同様の方法により複合体を得、該複合体により評価を行ったところ、耐低高温試験100サイクルにて複合体の破壊は見られなかった。また、接着強度は5.4MPaであった。
【0080】
実施例4
合成例1より得られたPPS(a1−2)84重量%、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(住友化学(株)製、(商品名)ボンドファストE)14重量%、及び6−ジオクチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール2重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が25重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを作製した。
【0081】
該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は16.1MPaと高く、その破壊形態は凝集破壊であった。
【0082】
アルミニウム合金(A1100)製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))をメタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行った後、該試験片を陽極として20℃の塩酸濃度0.2モル/リットルの電解液に浸漬し、基底電圧40Vで30分間直流電解法により陽極酸化を行うことにより、表面粗化アルミニウム合金(A1100)製試験片を得た。
【0083】
該アルミニウム合金(A1100)製試験片を射出成形金型内に装着し、実施例1と同様の方法により複合体を得、該複合体により評価を行ったところ、耐低高温試験100サイクルにて複合体の破壊は見られなかった。また、接着強度は6.5MPaであった。
【0084】
実施例5
合成例1より得られたPPS(a1−2)84重量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、(商品名)ウルトラセン 630)15重量%、及び1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアジントリチオール1重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が25重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを作製した。
【0085】
該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は15.3MPaと高く、その破壊形態は凝集破壊であった。
【0086】
アルミニウム合金(A1100)製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))を#200のサンドペーパーにより表面粗化を施し、その後エタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行うことにより、表面粗化アルミニウム合金(A1100)製試験片を得た。
【0087】
該アルミニウム合金(A1100)製試験片を射出成形金型内に装着し、実施例1と同様の方法により複合体を得、該複合体により評価を行ったところ、耐低高温試験100サイクルにて複合体の破壊は見られなかった。また、接着強度は5.6MPaであった。
【0088】
実施例6
合成例3より得られたPPS(a−2)85重量%、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(アルケマ社製、(商品名)ボンダインAX8390)14重量%、及び6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム1重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が20重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを作製した。
【0089】
該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は16.3MPaと高く、その破壊形態は凝集破壊であった。
【0090】
銅製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))を#200のサンドペーパーにより表面粗化を施し、その後エタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行うことにより、表面粗化銅製試験片を得た。
【0091】
該銅製試験片を射出成形金型内に装着し、実施例1と同様の方法により複合体を得、該複合体により評価を行ったところ、耐低高温試験100サイクルにて複合体の破壊は見られなかった。また、接着強度は5.3MPaであった。
【0092】
実施例7
合成例1より得られたPPS(a1−2)85重量%、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(アルケマ社製、(商品名)ボンダインAX8390)14重量%、及び6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム1重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が20重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを作製した。
【0093】
該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は16.1MPaと高く、その破壊形態は凝集破壊であった。
【0094】
銅合金(C1020)製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))を#200のサンドペーパーにより表面粗化を施し、その後エタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行うことにより、表面粗化銅合金(C1020)製試験片を得た。
【0095】
該銅合金(C1020)製試験片を射出成形金型内に装着し、実施例1と同様の方法により複合体を得、該複合体により評価を行ったところ、耐低高温試験100サイクルにて複合体の破壊は見られなかった。また、接着強度は5.6MPaであった。
【0096】
実施例8
合成例3より得られたPPS(a−2)85重量%、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(アルケマ社製、(商品名)ボンダインAX8390)14重量%、及び6−ジオクチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール・モノナトリウム1重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が20重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを作製した。
【0097】
該ポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は16.1MPaと高く、その破壊形態は凝集破壊であった。
【0098】
ステンレス鋼(SUS304)製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))を#200のサンドペーパーにより表面粗化を施し、その後エタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行うことにより、表面粗化ステンレス鋼(SUS304)製試験片を得た。
【0099】
ステンレス鋼(SUS304)製試験片を射出成形金型内に装着し、実施例1と同様の方法により複合体を得、該複合体により評価を行ったところ、耐低高温試験100サイクルにて複合体の破壊は見られなかった。また、接着強度は4.8MPaであった。
【0100】
比較例1
合成例1より得られたPPS(a1−2)85重量%及び合成例4より得られた無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン15重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が25重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド組成物ペレットを作製した。
【0101】
該ポリアリーレンスルフィド組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は4.9MPaと低く、その破壊形態は界面剥離であった。
【0102】
アルミニウム合金(A1050)製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))を#200のサンドペーパーにより表面粗化を施し、その後エタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行うことにより、表面粗化アルミニウム合金(A1050)製試験片を得た。
【0103】
該アルミニウム合金(A1050)製試験片を射出成形機金型内に装着し、該ポリアリーレンスルフィド組成物ペレットを、310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入しインサート成形を行い複合体を得た。
【0104】
得られた複合体の耐ヒートサイクル性を評価したところ耐低高温試験10サイクルにて複合体は破壊したため接着強度は得られなかった。
【0105】
比較例2
合成例1より得られたPPS(a1−2)99重量%及び6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール1重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が25重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド組成物ペレットを作製した。
【0106】
該ポリアリーレンスルフィド組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は6.5MPaと低く、その破壊形態は界面剥離であった。
【0107】
アルミニウム製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))を#200のサンドペーパーにより表面粗化を施し、その後エタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行うことにより、表面粗化アルミニウム製試験片を得た。
【0108】
該アルミニウム製試験片を射出成形機金型内に装着し、該ポリアリーレンスルフィド組成物ペレットを、310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入しインサート成形を行い複合体を得た。
【0109】
得られた複合体の耐ヒートサイクル性を評価したところ耐低高温試験15サイクルにて複合体は破壊したため接着強度は得られなかった。
【0110】
比較例3
合成例3より得られたPPS(a−2)85重量%、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(アルケマ社製、(商品名)ボンダインAX8390)14重量%、及びN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、(商品名)KBM−603)1重量%からなる合計量100重量部に対し、カルナバワックス(日興ファインプロダクツ製、(商品名)精製カルナバ1号粉末)0.5重量部の割合で配合し、310℃に加熱した二軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(エヌエスジー・ヴェトロテックス(株)製、(商品名)RES03−TP91)が25重量部となるように該二軸押出機のサイドフィーダーから供給し、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ポリアリーレンスルフィド組成物ペレットを作製した。
【0111】
該ポリアリーレンスルフィド組成物ペレットを実施例1と同様の方法にて、ASTM D−638 1号ダンベル試験片、エポキシ接着評価用試験片を作成し、エポキシ接着評価を行ったところエポキシ接着強度は7.5MPaと低く、その破壊形態は界面剥離であった。
【0112】
アルミニウム製試験片(35mm(長辺)×13mm(短辺)×2mm(厚さ))を#200のサンドペーパーにより表面粗化を施し、その後エタノールに浸漬することにより表面の洗浄を行うことにより、表面粗化アルミニウム製試験片を得た。
【0113】
該アルミニウム製試験片を射出成形機金型内に装着し、該ポリアリーレンスルフィド組成物ペレットを、310℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業製、(商品名)SE75)のホッパーに投入しインサート成形を行い複合体を得た。
【0114】
得られた複合体の耐ヒートサイクル性を評価したところ耐低高温試験20サイクルにて複合体は破壊したため接着強度は得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンスルフィド(A)67〜98.9重量%、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)1〜30重量%、及びトリアジンチオール類(C)0.1〜5重量%からなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物。
【請求項2】
トリアジンチオール類(C)がトリアジンジチオール類(c1)であることを特徴する請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物。
【請求項3】
極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)が、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体(b1),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(b2),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(b3),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体(b4),エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(b5)からなる群より選択される少なくとも1種以上の極性基含有ポリエチレン系共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物。
【請求項4】
アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金及びステンレスからなる群より選択される金属部材及びポリアリーレンスルフィド(A)67〜98.9重量%、極性基含有ポリエチレン系共重合体(B)1〜30重量%、トリアジンチオール類(C)0.1〜5重量%からなるポリアリーレンスルフィド系樹脂組成物よりなることを特徴とする複合体。
【請求項5】
インサート成形法により形成されたものであることを特徴する請求項4に記載の複合体。

【公開番号】特開2010−70712(P2010−70712A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242257(P2008−242257)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】