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ポリアリーレンスルフィド酸化物紙及びその製造方法
説明

ポリアリーレンスルフィド酸化物紙及びその製造方法

【課題】 従来技術の問題点であった工程の煩雑さ、抄紙収率を大幅に改善し生産性に優れるPPSO紙の製造方法およびPPSO紙を提供する。
【解決手段】 ポリフェニレンスルフィドからなる微粉末(A)およびポリフェニレンスルフィドからなる短繊維(B)を水に分散させて抄紙原液とし、該抄紙原液を抄紙した後に酸化剤を含む液体存在下で酸化反応処理した後に平滑化処理するポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性、耐薬品性に優れるポリアリーレンスルフィド酸化物(PPSO)からなる紙およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)を酸化して得られるPPSOはPPSと比較して耐熱性、耐薬品性、特に耐酸性に優れ、さらには熱溶融しないという優れた特性を有しており、このPPSOの特徴を活かして、各種用途へのPPSO紙の応用が期待されている。
【0003】
このPPSO紙の製造方法に関しては、一般的な合成紙において短繊維間の結着の目的で使用される低融点のバインダー繊維は、PPSO独自の優れた特性を損ねるため使用できない。このため、通常の合成繊維からなる合成紙と同様の製法が適用できず、特殊な製法が必要であり、PPSO独自の特性を損なうことのないPPSO紙の製造方法が種々検討されてきた。
【0004】
例えば、特許文献1ではPPS短繊維間の結着材としてPPS未延伸糸を用いて作成したPPS紙を酸化させてPPSO紙を得る方法が提案されている。しかしながらこの製法においては紙の結着材であるPPS未延伸糸を得るためにPPS樹脂の段階からペレット化、溶融紡糸、捲縮付与、カットなどの工程が必要であり、工程が非常に煩雑であった。
【0005】
また、特許文献2ではPPSナノファイバーを結着材として用いたPPS紙を酸化させてPPSO紙を得る方法が提案されているが、このPPSナノファイバーを得るためにはPPSと異種ポリマーを混練するアロイ化、溶融紡糸によるアロイ繊維化、延伸による細繊度化、アロイ繊維から異種ポリマーの除去を行なうナノファイバー化、ナノファイバーの束をほぐすための叩解といった一連の特殊な加工が必要であり、その工程は上記のPPS未延伸糸を使ったものよりもはるかに煩雑なものであった。
【0006】
また、上記のPPS未延伸糸、PPSナノファイバーともにその形態が繊維状であるために、抄紙原液の調製工程において紙の骨材となる通常のPPS短繊維と共に水に分散させると繊維同士の絡まりを促進するため分散が困難であった。このため、繊維の絡まりを防いで地合いの良い紙を得るため抄紙原液の濃度を低くせざるを得ず、抄紙時の排水量が多く生産性が悪かった。
【0007】
このように、PPSO紙の製造方法に関する従来技術においてはPPSO独自の特性を保ったPPSO紙が得られるものの、その製造工程は非常に煩雑であるためコストアップが避けられず、また紙の地合いを保つ目的で原液濃度を低くする必要があるため生産性が悪いといった問題があった。
【特許文献1】特開2006−16585号公報(第20〜26頁)
【特許文献2】特開2006−257618号公報(第9〜15頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点であった工程の煩雑さ、抄紙収率を大幅に改善し生産性に優れるPPSO紙の製造方法およびPPSO紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した本発明の課題は以下の手段により達成される。
1.ポリフェニレンスルフィドからなる微粉末(A)およびポリフェニレンスルフィドからなる短繊維(B)を水に分散させて抄紙原液とし、該抄紙原液を抄紙した後に酸化剤を含む液体存在下で酸化反応処理した後に平滑化処理するポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
2.抄紙と酸化反応処理の間に熱プレスを施して、微粉末(A)により短繊維(B)間を結着させる請求項1記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
3.熱プレス温度が150℃以上285℃以下である請求項2記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
4.平滑化処理の温度が100℃以上400℃未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
5.粒径100μm以下の微粉末(A)を使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
6.(A)と(B)の総重量に対する(A)の割合が10重量%以上95重量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
7.ポリフェニレンスルフィド重合溶液からのフラッシュ法により得られる微粉末(A)を使用する請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
8.請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で製造されたポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙。
【発明の効果】
【0010】
本発明のPPSO紙はPPSO樹脂独自の耐熱性、耐薬品性、難燃性、不融性、機械的強度、電気的特性を有することから、耐熱性ワイパー、プリント回路基板、電気絶縁紙、各種フィルター材、防音断熱材、ルーフィング材、バッテリーセパレーターなどとして利用することができる。また、本発明のPPSO紙の製造方法は従来のPPSO紙の製造方法と比べて製造工程の簡略化、抄紙原液濃度の向上が可能であり、経済的に優れた方法でPPSO紙を提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のPPSO紙の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
本発明におけるPPSとは、下記構造式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0013】
【化1】

【0014】
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。
【0015】
また、本発明のPPSは、その溶融粘度が5〜5000Pa・s(320℃、せん断速度1000/秒)の範囲が好ましい。
【0016】
また、本発明のPPSはプレス工程における分解ガスの発生を抑制する目的で、例えば特開2006−336140号公報に記載される熱酸化処理を施してオリゴマー量を低減したものを用いることができる。
【0017】
本発明においては、PPSからなる微粉末(A)を用いることを特徴とする。微粉末(A)を用いることで熱プレス工程において微粉末(A)により短繊維(B)間を結着することが可能となる。
【0018】
本発明における微粉末(A)とは、実施例C.項記載の方法で求められる目開き500μmのふるいでのふるい残分が1%未満のものを指す。このような微粉末(A)を結着材として用いることで、従来のように繊維状の未延伸糸やナノファイバーを結着材として使用した際に発生する抄紙原液中での繊維同士の絡み合いが低減するため、紙の地合いを良好に保ったまま原液濃度の向上が可能となり抄紙収率が向上する。また、従来法と比較して溶融紡糸や叩解といった煩雑な工程が不要となるため工程が簡易となる。なお、ふるい残分の原因となる粒径500μm以上の粗大粒子を含む粉末を使用した場合、粗大粒子は短繊維間に捕捉され難いため、抄紙工程において粉の脱落や機器類への付着が容易に発生するため好ましくない。
【0019】
微粉末(A)の粒径としては、紙からの微粉末の脱落を抑制して保持性を向上する目的で、分級により200μmより大きな粉末をカットした粒径200μm以下の微粉末が好ましく、100μmより大きな粉末をカットした粒径100μm以下に分級したものが最も好ましい。分級の方法としては、電磁式、音波式、超音波式、気流式、水流式のふるいが挙げられる。
【0020】
なお、このような微粉末の製造方法としてはフラッシュ法、PPS樹脂の粉砕、PPS樹脂の希薄溶液を攪拌下に急冷させて微粉末状に析出する方法などが挙げられる。このうちフラッシュ法は、重合溶液からの微粉末の直接回収が可能であり、製造方法が最も簡便であり、安価に製造可能であるため最も好ましい。なお、フラッシュ法とは、例えば特開2004−099684号公報に記載されるように重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、0.8MPa以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へノズルから噴出させることにより、溶媒回収と同時に重合体を粉状にして回収する方法である。
【0021】
本発明においては、微粉末(A)と組み合わせてPPSからなる短繊維(B)を用いることを特徴とする。短繊維(B)を用いることで短繊維(B)間の絡み合いによる紙力の向上が可能となる。
【0022】
本発明でいう短繊維(B)とはステープル状にカットしたものを指す。短繊維(B)の長さは紙の強度向上の目的で1mm以上が好ましく、抄紙原液中での繊維同士の絡まりを抑制する目的で5cm以下が好ましい。より好ましくは5mm以上2cm以下である。
【0023】
短繊維(B)の直径は抄紙原液中での繊維の分散性を向上し、地合いの良い紙を得る目的で25μm以下が好ましい。より好ましくは15μm以下、最も好ましくは10μm以下である。なお、現行の直接紡糸法によって得られる繊維直径の下限としては5μm程度である。
【0024】
短繊維(B)は紙の強度向上の目的で捲縮を有していてもよい。紙の強度向上と抄紙原液中での繊維同士の絡まりを抑制する目的で捲縮数としては4山/25mm以上、18山/25mm以下が好ましい。
【0025】
本発明における微粉末(A)と短繊維(B)の総重量に対する(A)の割合は用途に応じて任意に選択可能であるが、10重量%以上95重量%以下であることが好ましい。微粉末(A)を10重量%以上とすることで短繊維(B)間の結着点が増加するため紙力が向上する。また、微粉末(A)を95重量%以下とすることで紙中での短繊維(B)同士の絡み合いにより紙力が向上する。同様の理由から、微粉末(A)と短繊維(B)の総重量に対する(A)の割合はより好ましくは30重量%以上90重量%以下、最も好ましくは50重量%以上80重量%以下である。
【0026】
本発明においては、微粉末(A)と短繊維(B)を水に分散させた抄紙原液を抄紙する。このような方法は一般に湿式抄紙法と呼ぶが、本発明においては湿式抄紙法とすることで微粉末(A)の凝集を防ぎ、短繊維(B)との均一な混合が可能となる。一方で、水への分散を行なわない乾式抄紙法においては微粉末(A)が凝集した状態で短繊維(B)に付着してしまうため、均一な紙を得ることが困難である。
【0027】
抄紙原液の調製手順としては、微粉末(A)、短繊維(B)をそれぞれ水に分散させた液を混合しても、予め微粉末(A)と短繊維(B)を混ぜた状態で水に分散しても良い。分散時に起こる、微粉末(A)と短繊維(B)の擦れ、フィブリル化、潰れなどのダメージを最小限にする目的で微粉末(A)、短繊維(B)を予めそれぞれ水に分散させた液を混合して抄紙原液を得ることが好ましい。水分散させる方法としては例えばナイアガラビーター、リファイナー、パルパーなど、各種ブレンダー、ラボ用粉砕器やバイオミキサー、PFI叩解機、撹拌子、撹拌翼など各種撹拌機、叩解機を好ましく用いることができる。分散時に起こる微粉末(A)と短繊維(B)のダメージを最小限にし、得られる紙の品質を保つ目的で、これら手法のうち比較的剪断力が小さい状態で分散させることが可能なパルパーやブレンダーの使用がより好ましい。
【0028】
抄紙原液の濃度としてはろ水時間の面から0.01重量%以上、分散性の面から10重量%以下が好ましい。また、抄紙原液には微粉末(A)と短繊維(B)の分散性向上の目的で各種分散剤を添加することが好ましい。
【0029】
分散剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤が挙げられ、紙の用途に合わせて適宜選択可能である。たとえば電気絶縁紙用途においては、含有イオンによる絶縁劣化を防ぐ目的でノニオン系の界面活性剤の使用が好ましい。ノニオン系の界面活性剤としては、PPSとの相性からポリグリコールやポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルなどが好ましい。分散剤は水への溶解を速やかに行なう目的で予め希釈して0.1重量%以上10重量%以下の水溶液として用いることが好ましい。分散剤の添加時期は微粉末(A)、短繊維(B)の水分散前でも、水分散と同時でも、あるいは水分散後でも良い。このうち、水分散前に添加することで分散剤の成分が微粉末(A)および短繊維(B)の表面に多量付着し、水への均一な分散が容易となるため最も好ましい。
【0030】
抄造工程としては連続工程では丸網抄紙機や長網抄紙機、バッチ工程ではシートマシンなどを使った公知の湿式抄造技術が好ましく用いられる。
【0031】
本発明において得られるPPSO紙の強度向上の観点から、抄紙と酸化反応処理の間に紙に熱プレスを施して、微粉末(A)により短繊維(B)間を結着することが好ましい。酸化反応処理の後に熱プレスを行なうと、微粉末(A)、短繊維(B)共にPPSOとなっており熱溶融しないため、熱プレス時には微粉末(A)と短繊維(B)は変形のみ起こるが、抄紙と酸化反応処理の間に熱プレスを行なうことで、微粉末(A)と短繊維(B)を溶融させることができるため、強固な結着が可能となり得られるPPSO紙の強度がより向上する。
【0032】
該熱プレス工程においては、PPS微粉末(A)と短繊維(B)を構成するPPSの分子鎖の配向状態の違いを利用して結着を行なう。PPS微粉末(A)は分子鎖の配向が低く、一方、短繊維(B)は分子鎖の配向が高い。熱プレス工程では短繊維(B)の分子鎖の運動が拘束されるため、短繊維(B)の流動開始温度および融点は微粉末(A)よりも高くなる。このため、熱プレスにより微粉末(A)は流動または溶融して短繊維(B)間を結着するが、短繊維(B)は配向が進んでいるためにその形状を保つことができる。この効果を高める目的で、短繊維(B)の配向度合いを示す複屈折率の値としては好ましくは0.100以上、より好ましくは0.150以上である。なお、複屈折率の値は実施例D.項の方法で求められる値である。
【0033】
該熱プレスの方法としては平板プレス、カレンダープレスを用いることができ、連続で処理可能なカレンダープレスがより好ましく用いられる。
【0034】
熱プレス温度としては150℃以上285℃未満が好ましい。150℃以上でのプレスにより微粉末(A)を変形させ短繊維(B)間の接着強度向上が可能である。また、PPSの融点は一般的に285℃程度であるが、285℃未満でプレスを行なうことでPPSの熱分解による紙の強度劣化が抑制される。なお、温度を上げることで微粉末(A)の流動性を高め、短繊維(B)間の接着を促進して紙の強度を向上することが可能であるが、温度を融点近傍まで上げることで短繊維(B)の部分的な溶融が始まるため融点近傍では紙の強度劣化が起きる。このため紙の強度向上の目的でプレス温度のより好ましい範囲としては175℃以上270℃以下、最も好ましくは200℃以上250℃以下である。
【0035】
平板プレスの際のプレス時間としては紙面全体に熱を伝え変形を可能とし、紙の熱劣化を避けるため平板プレスの場合は1分以上30分未満、より好ましくは3分以上10分未満が好ましい。また、カレンダープレスの際のプレス回数としては1回でも良いが、同様の理由から2回以上10回未満が好ましい。なお、平板プレスにおけるプレス圧力は変形を可能とし、かつ過大な装置となることを避ける目的で0.1MPa以上100MPa以下の範囲が好ましい。特に電気絶縁紙用途、プリント回路基板用途など高密度の紙が要求される際には1MPa以上でのプレスが好ましい。
【0036】
カレンダープレスの際のプレス速度としては生産性の面から1m/分以上、ロール上での紙の加熱時間を十分とる目的で100m/分以下の範囲が好ましい。なお、カレンダープレスにおけるプレス圧力は変形を可能とし、かつ過大な装置となることを避ける目的で0.01kN/cm以上10kN/cm以下が好ましい。特に電気絶縁紙用途、プリント回路基板用途など高密度の紙が要求される際には0.1kN/cm以上でのプレスが好ましい。
【0037】
本発明において、酸化反応処理に使用される液体は、PPS紙の形態を保持するものであれば任意に用いることができ、酸化反応処理に用いる酸化剤を均一に溶解するものであることが好ましい。中でも、反応効率を高める目的で有機酸、有機酸無水物または鉱酸を含む液体であることが好ましい。有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、マレイン酸などが挙げられる。有機酸無水物としては、下記一般式(2)
【0038】
【化2】

【0039】
(R、Rは、それぞれ炭素数1〜5の脂肪族置換基、芳香族置換基、芳香族置換基で置換された脂肪族置換基のいずれかを表し、RおよびRは互いに連結して環状構造を形成していてもよい。)で示される酸無水物が挙げられ、具体例としては無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水安息香酸、無水−クロロ安息香酸などが挙げられる。鉱酸の具体例としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸などが挙げられる。酸化剤の活性を高める目的で、液体として好ましいのは、水、酢酸、トリフルオロ酢酸、無水酢酸、無水トリフルオロ酢酸、硫酸、塩酸であり、さらに好ましいのは、水、酢酸、トリフルオロ酢酸、硫酸である。中でも特に好ましいのは、水、酢酸および硫酸が混合された液体である。その混合組成比としてより好ましいのは、水:5重量%以上20重量%以下、酢酸:60重量%以上90重量%以下、硫酸:5重量%以上20重量%以下であり、この範囲の濃度において特に紙の諸物性を損なうことなく、かつ安全性、処理効率、コストに優れる酸化反応処理が可能である。
【0040】
本反応に使用される酸化剤としては液体に均一に溶解する目的で無機塩過酸化物および過酸化水素水から選ばれる少なくとも1つが好ましく、無機塩過酸化物および過酸化水素水から選択される一種以上と、有機酸および有機酸無水物から選択される一種以上との混合物から形成される過酸化物(過酸を含む)であっても構わない。酸化剤として用いる無機塩過酸化物としては、過硫酸塩類、過ホウ酸塩類、過炭酸塩類が好ましく挙げられる。ここで塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩などが挙げられるが、なかでも溶解性の面からナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましい。その具体例としては、過硫酸塩としては過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過ホウ酸塩としては過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過ホウ酸アンモニウム、過炭酸塩としては過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウムなどが挙げられる。過酸化水素水と、有機酸または有機酸無水物との混合物から形成される過酸の具体例としては、過ギ酸、過酢酸、トリフルオロ過酢酸、過プロピオン酸、過酪酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸などが挙げられる。
【0041】
酸化剤の濃度としては、処理効率の面から0.1重量%以上、安全性の面から20重量%以下が好ましい。この範囲の濃度において良好な反応結果を与え、かつ安全性の高いプロセスが構築できる。より好ましくは1〜15重量%であり、さらに好ましくは5〜10重量%である。
【0042】
酸化反応処理の温度としては、処理効率の面からは処理温度は高いことが好ましいが、酸化剤の分解促進による暴走反応による爆発を避けるなど安全性の面からは、使用される液体の沸点以下の温度でできるだけ低温で行うことが好ましい。具体的には、用いる液体の沸点により異なるが、処理効率と安全性を両立する目的で液体の沸点が許容する範囲内において、0℃〜100℃の間、中でも30℃〜80℃の間が好ましく、特に40℃〜70℃が好ましい。例えば、液体が酢酸の場合には50℃〜70℃の酸化反応処理温度が好ましい。
【0043】
酸化反応処理時間は、反応温度と酸化剤の濃度により左右されるため一概にはいえないが、安全性の面から処理時間は1時間以上、またコスト面から8時間以下に制御することが好ましい。
【0044】
なお、酸化反応処理後の紙は直ちに水洗し酸化反応処理に使用した薬液を除くことが安全性の面また酸化反応処理に続く工程における装置保護の面から好ましい。
【0045】
本酸化反応処理を行うための処理方式に特に制限はないが、バッチ式または連続式、あるいはそれらを組み合わせたものも採用できる。
【0046】
ここで、バッチ式とは、任意の反応容器内にPPS紙および酸化剤の含まれる液体を投入し、任意の濃度、温度、時間で酸化反応処理した後、PPSO紙または液体を取り出す処理方式を意味する。連続式とは、任意の形態で固定化したPPS紙に対して、酸化剤の含まれる液体を流通または循環させて酸化反応処理する方法、あるいは、酸化剤の含まれる液体を任意の反応容器内に投入し、そこへPPS紙を連続的に流通または循環させて酸化反応処理する方法を意味する。
【0047】
本発明の酸化反応処理においてPPSがPPSOとなることで不融化するため、酸化反応処理の進行に伴い、紙の示差走査熱量計(DSC)の測定における融解熱量が減少する。本発明で得られるPPSO紙において、PPSO特有の耐熱性、耐薬品性、不融性を発現させる目的で紙の融解熱量は25.0J/g以下とすることが好ましく、より好ましくは融解熱量は10.0J/g以下、最も好ましくは5.0J/g以下である。ここで、融解熱量とは実施例E.項に記載する方法により求められる値である。
【0048】
このような融解熱量が25.0J/g以下のPPSO紙は酸化反応処理条件を前記した好ましい条件とすることにより製造することができる。
【0049】
次に、本反応により得られるPPSOについて説明する。
【0050】
上述の酸化反応処理により、PPS中のチオエーテル部分が酸化されてPPSOが得られる。なお、PPSのチオール部分が酸化されるのみでなく、ポリマーの分子鎖間での架橋も生ずる。
【0051】
すなわち本発明でいうPPSOとは、一般式(3)
【0052】
【化3】

【0053】
(R’’は、水素、ハロゲン、原子価の許容される範囲で任意の官能基により置換された脂肪族置換基、芳香族置換基で置換された脂肪族置換基のいずれかを表し、分子間のR’’同士が互いに連結して架橋構造を形成していてもよい。またR’’はPPSOからなるポリマー鎖でもよい。R’’’はPPSOからなるポリマー鎖を示し、mは0〜3のいずれかの整数を表す。また、Xは0、1、2のいずれかを表す。)で示される繰り返し単位からなるポリマー、または、主要構造単位としての上記繰り返し単位と、上記繰り返し単位1モル当たり1.0モル以下、好ましくは0.3モル以下の一般式(4)〜(10)
【0054】
【化4】

【0055】
(R’’は、水素、ハロゲン、原子価の許容される範囲で任意の官能基により置換された脂肪族置換基、芳香族置換基で置換された脂肪族置換基のいずれかを表し、R’’’’は、原子価の許容される範囲で任意の官能基により置換された脂肪族置換基を表し、分子間のRまたはR’同士が互いに連結して架橋構造を形成していてもよい。また、R’’、R’’’’はPPSOからなるポリマー鎖でもよい。R’’’はPPSOからなるポリマー鎖を示し、mは0〜3のいずれかの整数を表し、nは0〜2のいずれかの整数を表す。また、Xは0、1、2のいずれかを表す。)で示される繰り返し単位とからなる共重合体である。また、一般式(3)で示される繰り返し単位のうち、Xが0、1、2である構造単位中に占める、Xが1または2である構造単位の比率は、0.5以上が好ましく、さらに好ましくは0.7以上である。
【0056】
本発明においては酸化反応処理をした後に平滑化処理することを特徴とする。本発明でいう平滑化処理とは、平板間またはロール間に紙面を挟み圧力を加える工程をいう。酸化反応処理においては紙が収縮するのに伴い繊維間に微細な空隙が発生するが、平滑化処理を行なうことで、空隙が潰れて紙の強度が向上する。また、平滑化処理によって酸化反応処理に伴い発生する紙の毛羽立ちや凹凸が低減でき、表面の平滑性が向上し紙の品位が向上する。
【0057】
本発明における平滑化処理には平板プレス、ニップロール、カレンダープレスを用いることができ、連続で処理可能なニップロール、カレンダープレスがより好ましく、加熱可能なカレンダープレスが最も好ましく用いられる。なお、平滑化処理は酸化反応処理後に紙が濡れた状態で行なっても、乾燥した後に行なっても良い。また平滑化処理は酸化反応処理と連続した装置構成で行なっても良いし、酸化反応処理の後に一度巻き取った状態にし、これを再度引き出して別途平滑化処理を行なっても良い。
【0058】
該平滑化処理における好ましい温度範囲としては紙の変形を容易とし、またPPSOの熱劣化や熱分解による紙の強度劣化を避ける目的で100℃以上400℃未満の温度が好ましい。同様の理由からより好ましくは150℃以上350℃以下、最も好ましくは200℃以上300℃以下である。
【0059】
該平滑化処理における平板プレスの際のプレス時間としては紙面全体に圧力、熱を伝え変形を可能とし、かつ紙の熱劣化を避けるため平板プレスの場合は1分以上30分未満、より好ましくは3分以上10分未満が好ましい。また、ニップロール、カレンダープレスの際のプレス回数としては1回でも良いが、同様の理由から2回以上10回未満が好ましい。なお、平板プレスにおけるプレス圧力は変形を可能とし、かつ過大な装置となることを避ける目的で0.1MPa以上100MPa以下の範囲が好ましい。特に電気絶縁紙用途、プリント回路基板用途など高密度の紙が要求される際には1MPa以上でのプレスが好ましい。
【0060】
カレンダープレスの際のプレス速度としては生産性の面から1m/分以上、ロール上での紙の加熱時間を十分とる目的で100m/分以下の範囲が好ましい。なお、カレンダープレスにおけるプレス圧力は変形を可能とし、かつ過大な装置となることを避ける目的で0.01kN/cm以上10kN/cm以下が好ましい。特に電気絶縁紙用途、プリント回路基板用途など高密度の紙が要求される際には0.1kN/cm以上でのプレスが好ましい。
【0061】
次に、本発明のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙について説明する。
【0062】
本発明の紙の厚みとしては紙の十分な強度を得る目的で、1μm以上1mm以下が好ましい。なお、本発明でいう紙の厚みとは実施例F.項に記載する方法により求められる値である。
【0063】
本発明の紙の坪量としては10g/m以上、400g/m以下が好ましい。なお、本発明でいう坪量とは実施例G.項に記載する方法により求められる値である。
【0064】
本発明の紙の密度としては紙の強度を保つ目的で0.3g/cm以上1.3g/cm以下が好ましい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
A.融点
サンプル約10mgを精秤し、示差走査熱量計(TA Instruments社製DSC2920)で窒素下、昇温速度10℃/分で昇温し、観察される主吸熱ピークがあらわれる温度を測定することにより行った。
B.粘度
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、ズリ速度1000/秒での見かけ粘度を測定した。
C.ふるい残分
JIS−K−0069(1992年改正)に準じて、JIS−Z−8801−1(2006年改正)に記載された規格を満たす目開き500μm、枠寸法が直径200mm、高さ45mmの平織り試験ふるいを受け皿の上に重ね、試料25gをふるいに投入して蓋をし、電磁振動式篩分器MS−200((株)伊藤製作所製)に装着し、振幅2mmで毎分3000回の振動を連続で10分間加えてふるい分けを実施した。ふるい分け後のふるい上およびふるい下の試料重量の合計重量と、始めにふるいに投入した試料重量の差(試料損失量)が始めに投入した試料重量の2%以内であることを確認し、ふるい残分を次の式によって算出し、少数点第2位を四捨五入した値を得た。
【0066】
【数1】

【0067】
ここに、A:ふるい残分(%)、B:ふるい上の試料重量(g)、S:ふるい上及びふるい下の試料重量の合計重量(g)である。なお、試料損失量が2%を超えた場合は試料を改めてふるい分けを実施し、ふるい残分を算出した。
D.複屈折率
オリンパス社製BH−2偏光顕微鏡により、Na光源で波長589nmにてコンペンセーター法により単糸のレターデーションと糸径を測定することにより求めた。
E.融解熱量
サンプル約10mgを精秤し、示差走査熱量計(TA Instruments社製DSC2920)で窒素下、温度プログラムを50〜340℃(50℃で1分間保持、50℃から20℃/分で340℃まで昇温、340℃で1分間保持、続いて20℃/分で100℃まで降温、100℃で1分間保持、続いて20℃/分で340℃まで再昇温)と設定し、測定した時の再昇温時の融解熱量を求めた。
F.厚み
JIS−L−1906(2000年改正)の試験法に準じて荷重10kPaで、23℃、相対湿度50%下で紙面の角4点と中央部1点の計5箇所の厚みを0.001(mm)のオーダーまで測定した。5箇所で測定した結果の平均の値を求め、0.1μmのオーダーを四捨五入した値を厚みL(μm)とした。
G.坪量、密度
紙の重量(g)を23℃、相対湿度50%で測定し、紙の面積(m)で除して、有効数字2桁で坪量(g/m)を算出した。また、それぞれcmの単位に換算した坪量の値を上記F.項で測定した厚みLで除して有効数字2桁で密度(g/cm)を算出した。
H.引張強度
23℃、相対湿度50%の雰囲気下でオリエンテック社製テンシロンUCT−100を用いて、試料幅15mm、初期長20mm、引張速度20mm/分で最大点荷重の値を測定し、5回の測定の平均値を有効数字2桁で求め、引張強度(N/15mm)とした。
I.地合い
紙を幅1cm、長さ20cmの短冊状に切り、この紙片から直径6mmの円形の紙片を20枚サンプリングした。得られた紙片の重量を0.01mgの桁まで測定して平均値、標準偏差を求めた。質量分布の値として標準偏差を平均値で除した値を求め、以下のように評価した。
【0068】
○(良好):質量分布の値が0.060以下
×(不良):質量分布の値が0.060より大きい
J.粉末の保持性
抄紙直後の未乾燥紙を15度、30度の2段階で傾斜し、紙からの粉末の粉落ちの有無を確認した。粉末の粉落ちが無い場合は、乾燥後の紙についても30度傾斜して粉落ちの有無を確認し、粉末の保持性を以下のように評価した。
【0069】
◎(極めて良好):未乾燥紙、乾燥紙共に粉落ちなし
○(良好):未乾燥紙では粉落ちなし、乾燥紙で粉落ちあり
△(可):未乾燥紙で15度傾斜で粉落ちなし、30度傾斜で粉落ちあり
×(不良):未乾燥紙で15度傾斜で粉落ちあり
[参考例1]
(フラッシュ法による粉末状PPSの作成)
攪拌機及び底にバルブの付いた容量1Lのオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム118g、96%水酸化ナトリウム41.6g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)164g、イオン交換水150gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水211gおよびNMP4.00gを留出した後、オートクレーブを200℃に冷却した。次に、p−ジクロロベンゼン150g、NMP134gを加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで攪拌しながら200℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、270℃で100分保持した。次に、オートクレーブ底部のバルブを開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく攪拌して大半のNMPを除去した。
【0070】
得られた固形物にイオン交換水を1kg添加して70℃で30分間洗浄した後にガラスフィルターで吸引ろ過した。次いで70℃に加熱した1kgのイオン交換水をガラスフィルター上に注ぎ込み、吸引ろ過した。
【0071】
ろ過後の固形分とイオン交換水1.3kgをオートクレーブに入れ、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30℃保持した。その後オートクレーブを冷却し、内容物をガラスフィルターで吸引ろ過した後、これに70℃のイオン交換水1kgを注ぎ込み吸引濾過した。
【0072】
ろ過後の固形分を窒素気流下、120℃で乾燥し、粉末状のPPS樹脂98gを得た。この粉末状PPSの融点は282℃、温度320℃での粘度は8Pa・sであった。
【0073】
なお、この粉末状PPSのふるい残分は2.4%であり、粒径500μm以上の粉末を微量含んでいた。
【0074】
[参考例2]
(微粉末−1の調製)
JIS−Z−8801−1(2006年改正)に記載された規格を満たす目開き100μm、枠寸法が直径200mm、高さ45mmの平織り試験ふるいを受け皿の上に重ね、参考例1のフラッシュ法で得た粉末状のPPS樹脂50gをふるいに投入して蓋をし、電磁振動式篩分器MS−200((株)伊藤製作所製)に装着し、振幅2mmで毎分3000回の振動を連続で30分間加えてふるい分けを実施した。このふるい下のサンプルは粒径100μmを超える粉末を含まない粒径100μm以下の微粉末であり、これを微粉末−1とした。微粉末−1のふるい残分を上記C.項で求めたところ1%未満であった。
【0075】
[参考例3]
(微粉末−2の調製)
目開き200μmの試験ふるいを使用した以外は参考例2と同様にしてふるい分けを実施した。このふるい下のサンプルは粒径200μmを超える粉末を含まない粒径200μm以下の微粉末であり、これを微粉末−2とした。微粉末−2のふるい残分を上記C.項で求めたところ1%未満であった。
【0076】
[参考例4]
(微粉末−3の調製)
目開き500μmの試験ふるいを使用した以外は参考例2と同様にしてふるい分けを実施した。ふるい下のサンプルは粒径500μmを超える粉末を含まない粒径500μm以下の微粉末であり、これを微粉末−3とした。微粉末−3のふるい残分を上記C.項で求めたところ1%未満であった。
【0077】
[参考例5]
(PPS未延伸糸の作成)
融点282℃、温度320℃での粘度200Pa・sのPPS樹脂からなるペレットを使用し、公知の紡糸機を用い、320℃の温度で紡糸を行なった。このとき、吐出量15g/分、冷却チムニーは温度25℃、風速25m/分、収束剤として一般的な油剤を塗布し、紡糸速度1000m/分で引き取り、150dtex48フィラメントの糸を作成した。この糸の直径は17μm、複屈折率は0.012であった。この糸をECカッターにて6mm長にカットしてPPS未延伸糸を得た。このPPS未延伸糸のふるい残分は99.9%であった。
【0078】
[参考例6]
(PPSナノファイバーの作成)
融点282℃、温度320℃での粘度200Pa・sのPPS樹脂を使用し、融点が252℃、温度320℃での溶融粘度100Pa・sのポリエチレンテレフタレートを40:60(重量比)の割合で300℃の2軸混練機で混練しアロイポリマーのペレットを得た。このアロイポリマーのペレットを単成分紡糸機を用い320℃の温度で紡糸を行った。このとき、吐出量35g/分、冷却チムニーは温度25℃、風速25m/分、収束剤として一般的な油剤を塗布し、紡糸速度1000m/分で引き取り、350.7dtex36フィラメントのPPSアロイ未延伸糸を得た。さらにこの未延伸糸を第1ホットローラー温度が90℃、第2ホットローラー温度が150℃のローラー間で3.5倍で延伸して100dtex36フィラメントのPPSアロイ延伸糸を得た。
【0079】
この延伸糸をカセ状で、温度98℃、濃度10%の水酸化ナトリウム水溶液に3時間浸してポリエチレンテレフタレートを溶出除去しPPSの極細繊維集合体を得た。
【0080】
この極細繊維集合体を2mmの長さにカットしたもの30gを、熊谷理機工業製の試験用ナイアガラビーター(No.2505)を使用して、水20L中で5分間叩解した後、熊谷理機工業製の自動式PFIミル(No.2511−B)を使用して叩解荷重9kg、叩解間隙0.2mm、ロール回転回数9000回の条件で叩解を行った。得られた叩解繊維は水を多量含んでおり、乾燥重量の測定から繊維濃度は10wt%であった。
【0081】
得られた叩解繊維の形態を走査型電子顕微鏡で確認したところ、直径が数10〜数100nmでアスペクト比が1:10以上のPPSナノファイバーが単独または束状となって存在していた。
【0082】
[参考例7]
(PPS短繊維の作成)
参考例5で得たカットする前のPPS未延伸糸を95℃の熱水浴で3.0倍に延伸し、48dtex48フィラメントの延伸糸を得た。延伸糸をさらにクリンパーに通し、13山/25mmの捲縮糸を得た後、これをECカッターにて6mmの長さに切断し、PPS短繊維を得た。得られたPPS短繊維の直径は10μm、複屈折率は0.202であった。
【0083】
実施例1
微粉末(A)として参考例2で作成した微粉末−1を3.5g計量し、分散剤としてノイゲンEA−87(第一工業製薬社製)の1.0重量%水分散液を20滴を加え、さらに水200mLを添加して微粉末分散液を得た。
【0084】
PPS短繊維(B)として参考例7で得たPPS短繊維1.5gをそれぞれ1g、0.5gに分け、それぞれに1リットルの水と分散剤としてノイゲンEA−87(第一工業製薬社製)の1.0重量%水分散液2滴を加え、ブレンダー(オスター社製「オスターブレンダーOB−1」)に投入し、撹拌速度10300rpmで10秒間撹拌して得た液を全て合わせたものを短繊維分散液として得た。
【0085】
微粉末(A)の分散液と短繊維(B)の分散液を混合し、分散液の全量が3300gとなるように水を追加し、表1の重量比、原液濃度の抄紙原液を得た。抄紙原液は短繊維(B)間の絡まりがなく分散性は良好であった。
【0086】
熊谷理機工業製の実験用抄紙機(25cm角のシート形成可能な角形シートマシン)の120メッシュの金属製の網上に濾布として坪量40g/mの東レ社製「トルコン(登録商標)」ペーパーを重ね、この上に抄紙を行ない未乾燥紙を得た。得られた紙の状態は均一で良好であった。得られた未乾燥紙を120℃で2時間乾燥させたて乾燥紙を得た。
【0087】
乾燥紙を濾布から剥がし、鉄ロールとペーパーロールからなるロールカレンダー加工機(由利ロール社製)に通し熱プレスした。熱プレス条件は、温度240℃、荷重は25cm幅の紙に対して30kNで圧力1.2kN/cm、ロール周速度2m/分で、2回処理を行なった。
【0088】
熱プレス後の紙をあらかじめ混合し60℃に保った99.0%酢酸418g(キシダ化学製)、35%過酸化水素水139g(キシダ化学製)、95%硫酸35g (和光純薬工業製)の酸化剤濃度(過酸化水素濃度)8.2重量%の混合溶液に浸漬させて60℃、2時間酸化反応処理した後、直ちに流水で10分間濯いで薬液を除き、50℃の熱風乾燥機で60分間乾燥し、PPSの酸化物であるPPSOの紙を得た。
【0089】
酸化反応処理後の紙を鉄ロールとペーパーロールからなるロールカレンダー加工機(由利ロール社製)に通し平滑化処理を実施した。熱プレス条件は、温度250℃、荷重は25cm幅の紙に対して120kNで圧力4.8kN/cm、ロール周速度2m/分で、2回処理を行なった。
【0090】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度は表1に示す通りであった。また、紙の質量分布の値は0.041であり地合い良好であった。なお、紙の融解熱量は5.0J/gであり酸化反応処理が十分進んでいることを確認した。
【0091】
比較例1
実施例1と同様にして抄紙、熱プレス、酸化反応処理、水洗、乾燥を施しPPSOの紙を得た。平滑化処理は実施しなかった。
【0092】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度は表1に示す通りであり、実施例1に比べて引張強度が劣った。また、実施例1で得た平滑化処理後の紙と比べて紙表面の毛羽立ちが多く紙の凹凸がみられた。なお、紙の質量分布の値は0.040であり地合い良好であった。なお、紙の融解熱量は4.9J/gであり酸化反応処理が十分進んでいることを確認した。
【0093】
実施例2
実施例1と同様にして乾燥紙を得、これを濾布から剥がし、熱プレスすることなく実施例1と同様にして酸化反応処理、乾燥、平滑化処理を実施した。なお、酸化反応処理の直後に水洗を行なったが、実施例1と同様に行なったところ粉の流出がみられたので、水を換えて2分間浸漬することを5回繰り返した。
【0094】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度は表1に示す通りであった。また、紙の質量分布の値は0.042であり地合い良好であった。なお、紙の融解熱量を測定したところ融解ピークが認められず、酸化反応処理により紙中に含まれるPPSが全量PPSOに変わっていることがわかった。
【0095】
比較例2
実施例1と同様にして乾燥紙を得、これを濾布から剥がし、熱プレスすることなく実施例2と同様にして酸化反応処理、水洗、乾燥を実施した。平滑化処理は実施しなかった。
【0096】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度は表1に示す通りであり、実施例2で得た平滑化処理後の紙と比べて紙表面の毛羽立ちが多く紙の凹凸がみられた。なお、紙の質量分布の値は0.041であり地合い良好であった。また、紙の融解熱量を測定したところ融解ピークが認められず、酸化反応処理により紙中に含まれるPPSが全量PPSOに変わっていることがわかった。
【0097】
比較例3
微粉末(A)の代わりに参考例5で得たPPS未延伸糸3.5gを使用し、実施例2と同様の手順で表1の重量比、原液濃度の抄紙原液を得た。抄紙原液には繊維同士が絡まった塊が浮遊しており、分散性は悪かった。この原因としては、PPS未延伸糸が繊維状であるためにPPS短繊維と絡まり易いため抄紙原液中で均一に分散可能な濃度上限値を超えたものと推測する。この抄紙原液を使用して実施例2と同様にして抄紙を行なったところ得られた紙には目付斑が生じ、厚みの薄い部分と厚い部分が存在していた。この紙を実施例2と同様に乾燥し、熱プレスを実施せずに酸化反応処理、水洗、乾燥、平滑化処理を行なった。
【0098】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度は表1に示す通りであった。また、紙の質量分布の値は0.071であり地合い不良であった。
【0099】
比較例4
微粉末(A)の代わりに参考例6で得た叩解繊維35g(PPSナノファイバーの純分で3.5g)を使用し、実施例2と同様の手順で表1の重量比、原液濃度の抄紙原液を得た。抄紙原液には繊維同士が絡まった塊が浮遊しており、分散性は悪かった。この原因としては、PPSナノファイバーが繊維状であるためにPPS短繊維と絡まり易いため抄紙原液中で均一に分散可能な濃度上限値を超えたものと推測する。
【0100】
この抄紙原液を使用して実施例2と同様にして抄紙を行なったところ得られた紙は薄い部分と厚い部分が存在していた。この紙を実施例2と同様に乾燥し、熱プレスを実施せずに酸化反応処理、水洗、乾燥、平滑化処理を行なった。
【0101】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度は表1に示す通りであった。また、紙の質量分布の値は0.080であり地合い不良であった。
【0102】
実施例3
微粉末(A)として微粉末−2を使用して実施例1と同様にして分散液を得た。抄紙原液の分散性は良好あった。実施例1と同様にして抄紙、乾燥、熱プレス、酸化反応処理、水洗、乾燥、平滑化処理を行なった。この紙の粉末の保持性は良好であった。
【0103】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度は表1に示す通りであった。また、紙の質量分布の値は0.043であり地合い良好であった。なお、紙の融解熱量は4.6J/gであり酸化反応処理が十分進んでいることを確認した。
【0104】
実施例4
微粉末(A)として微粉末−3を使用して実施例1と同様にして分散液を得た。抄紙原液の分散性は良好であった。実施例1と同様にして抄紙、乾燥、熱プレス、酸化反応処理、水洗、乾燥、平滑化処理を行なった。この紙の粉末の保持性は実施例1〜3に比べて劣り、未乾燥紙の15度傾斜では粉落ちはなく、30度傾斜で粉落ちが発生した。
【0105】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度は表1に示す通りであった。また、紙の質量分布の値は0.045であり地合い良好であった。なお、紙の融解熱量は4.0J/gであり酸化反応処理が十分進んでいることを確認した。
【0106】
比較例5
参考例1で作成した粉末状PPSを使用して実施例1と同様にして分散液を得た。抄紙原液の分散性は良好であった。実施例1と同様にして抄紙、乾燥、熱プレス、酸化反応処理、水洗、乾燥、平滑化処理を行なった。この紙の粉末の保持性は実施例1〜4に比べて劣り、未乾燥紙の15度傾斜により粉落ちが発生した。
【0107】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度は表1に示す通りであった。また、紙の質量分布の値は0.051であり地合い良好であった。なお、紙の融解熱量は3.5J/gであり酸化反応処理が十分進んでいることを確認した。
【0108】
実施例5〜12、比較例6、7
微粉末(A)として微粉末−1を表1の記載量使用して、実施例1と同様の手順で微粉末分散液を得た。
【0109】
PPS短繊維(B)として参考例7で得たPPS短繊維を表1記載の添加量とり、これを実施例1のように0.5g〜1gずつに分割して、それぞれに1リットルの水と分散剤としてノイゲンEA−87(第一工業製薬社製)の1.0重量%水分散液2滴を加え、ブレンダー(オスター社製「オスターブレンダーOB−1」)に投入し、撹拌速度10300rpmで10秒間撹拌して得た液を全て合わせたものを短繊維分散液とした。
【0110】
微粉末(A)の分散液と短繊維(B)の分散液を混合し、分散液の全量が13300gとなるように水を追加し抄紙原液を得た。この抄紙原液の微粉末(A)と短繊維(B)の重量比率、原液濃度は表1に示すとおりである。抄紙原液の分散性はいずれも良好であった。
【0111】
実施例1と同様にして抄紙、乾燥、熱プレス、酸化反応処理、水洗、乾燥、平滑化処理を行なった。得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度、地合い、粉の保持性は表1に示す通りであった。また、紙の融解熱量はいずれも10.0J/g以下であり酸化反応処理が十分進んでいることを確認した。
【0112】
なお、本発明の範囲外の比較6、7において乾燥紙を濾布から剥がそうとしたところ紙が崩れ形態を保たなかったため、熱プレスが実施できなかった。
【0113】
実施例13〜18
実施例1と同様にして表1記載の添加量、分散液の全量が20000gとなるようにして抄紙原液を得、さらに抄紙、乾燥を行なった。
【0114】
得られた乾燥紙を実施例1で使用したものと同じロールカレンダー加工機でペーパーロールを鉄ロールに変更し、熱プレスを実施した。プレス条件として温度は表1記載の温度、荷重は25cm幅の紙に対して120kNで圧力4.8kN/cm、ロール周速度2m/分で2回処理を行なった。
【0115】
熱プレス後の紙に実施例1と同様にして酸化反応処理、水洗、乾燥、平滑化処理を施した。得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度、地合い、粉の保持性は表1に示す通りであった。なお、紙の融解熱量はいずれも25.0J/g以下であり酸化反応処理が十分進んでいることを確認した。
【0116】
実施例19〜24
実施例1と同様にして表1記載の添加量、分散液の全量が20000gとなるようにして抄紙原液を得、さらに抄紙、乾燥を行なった。
【0117】
得られた乾燥紙を実施例1で使用したものと同じロールカレンダー加工機に通し熱プレスを実施した。プレス条件として温度は250℃、荷重は25cm幅の紙に対して120kNで圧力4.8kN/cm、ロール周速度2m/分で2回処理を行なった。
【0118】
熱プレス後の紙に実施例1と同様にして酸化反応処理、水洗、乾燥を施した。酸化反応処理後の紙について実施例1で使用したものと同じロールカレンダー加工機でペーパーロールを鉄ロールに変更し、平滑化処理を実施した。平滑化処理の条件としては表1記載の温度、荷重は25cm幅の紙に対して120kNで圧力4.8kN/cm、ロール周速度2m/分で2回処理を行なった。
【0119】
得られた紙の厚み、坪量、密度、引張強度、地合い、粉の保持性は表1に示す通りであった。なお、紙の融解熱量はいずれも25.0J/g以下であり酸化反応処理が十分進んでいることを確認した。
【0120】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のPPSO紙はPPSO樹脂独自の耐熱性、耐薬品性、難燃性、機械的強度、電気的特性を有することから、耐熱性ワイパー、プリント回路基板、電気絶縁紙、各種フィルター材、防音断熱材、ルーフィング材、バッテリーセパレーターなどとして利用することができる。また、本発明のPPSO紙の製造方法により、製造工程の簡略化、抄紙収率の改善が可能であり、経済的に優れた方法でPPSO紙を提供可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンスルフィドからなる微粉末(A)およびポリフェニレンスルフィドからなる短繊維(B)を水に分散させて抄紙原液とし、該抄紙原液を抄紙した後に酸化剤を含む液体存在下で酸化反応処理した後に平滑化処理するポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
【請求項2】
抄紙と酸化反応処理の間に熱プレスを施して、微粉末(A)により短繊維(B)間を結着させる請求項1記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
【請求項3】
熱プレス温度が150℃以上285℃以下である請求項2記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
【請求項4】
平滑化処理の温度が100℃以上400℃未満である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
【請求項5】
粒径100μm以下の微粉末(A)を使用する請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
【請求項6】
(A)と(B)の総重量に対する(A)の割合が10重量%以上95重量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
【請求項7】
ポリフェニレンスルフィド重合溶液からのフラッシュ法により得られる微粉末(A)を使用する請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で製造されたポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙。

【公開番号】特開2009−114601(P2009−114601A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291976(P2007−291976)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】