説明

ポリアリーレン系共重合体及びその用途

【課題】高分子電解質膜として用いたとき、優れた耐久性を有する膜を得ることができる、ポリアリーレン系共重合体を提供する。
【解決手段】 イオン交換基を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとをそれぞれ複数個有するポリアリーレン系共重合体であって、
イオン交換基を有するセグメントの少なくとも一個がポリアリーレン構造を含むこと、 イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜250,000であること、及び
ポリアリーレン系共重合体のイオン交換容量が3.0meq/g以上であること、
を特徴とするポリアリーレン系共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレン系共重合体及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次電池、二次電池あるいは燃料電池等の電気化学デバイスの隔膜として、高分子電解質膜が用いられている。例えば、ナフィオン(デュポン社の登録商標)をはじめとするフッ素系高分子電解質膜が、燃料電池用の隔膜として用いた場合に、発電特性が優れることから従来、主に使用されている。しかしながら、フッ素系高分子電解質膜については、非常に高価であること、耐熱性が低いこと、廃棄コストが高いこと、膜強度が低く何らかの補強をしないと実用的でないこと等の問題が指摘されている。
【0003】
こうした状況において、前記フッ素系高分子電解質膜に替わり得る安価で特性の優れた炭化水素系高分子電解質膜の開発が近年活発化している。
炭化水素系高分子電解質膜としては、例えば、ポリアリーレン構造からなるイオン交換基を有するブロックと、イオン交換基を有さないブロックとを含むイオン交換容量2.3meq/gのポリアリーレン系共重合体を用いてなる高分子電解質膜が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−247857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記の高分子電解質膜は、耐久性において、十分に満足できるものではなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、高分子電解質膜として用いたとき、優れた耐久性を発揮する膜を得ることができる、ポリアリーレン系共重合体を提供することにある。さらには、該ポリアリーレン系共重合体を含む高分子電解質、該高分子電解質を含む燃料電池用部材(特に、高分子電解質膜)、該部材を含む高分子電解質形燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記事情に鑑み、ポリアリーレン系共重合体について鋭意検討を重ねた結果、イオン交換基を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとをそれぞれ複数個含む共重合体であり、イオン交換基を有するセグメントの少なくとも一個が特定のシーケンスを含むことを特定し、イオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量分子量を特定し、且つ、イオン交換基を有さないセグメントの少なくとも一個の部分構造を特定することにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は[1]を提供するものである。
【0008】
[1]イオン交換基を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとをそれぞれ複数個有するポリアリーレン系共重合体であって、
イオン交換基を有するセグメントの少なくとも一個がポリアリーレン構造を含むこと、 イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜250,000であること、及び
ポリアリーレン系共重合体のイオン交換容量が3.0meq/g以上であること、
を特徴とするポリアリーレン系共重合体。
【0009】
さらに本発明は、前記ポリアリーレン系共重合体に係る好適な実施形態として、以下の[2]〜[15]を提供する。
[2] 前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの少なくとも一個が、電子吸引性基を有し、且つ、主鎖にエーテル結合及びチオエーテル結合からなる群より選ばれる1種以上を有することを特徴とする[1]に記載のポリアリーレン系共重合体。
[3]前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの主鎖に含まれる、エーテル結合及びチオエーテル結合を分解した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜250,000であることを特徴とする[2]に記載のポリアリーレン系共重合体。
[4][1]〜[3]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体であって、2200重量部のジメチルスルホキシドと、2〜13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の、前記ポリアリーレン系共重合体とを混合して、混合したポリアリーレン系共重合体の全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜250,000であることを特徴とするポリアリーレン系共重合体。
[5]前記イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜160,000であることを特徴とする[1]〜[4]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。
[6]前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの主鎖に含まれる、エーテル結合及びチオエーテル結合を分解した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜160,000であることを特徴とする[2]、[4]および[5]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。
[7][1]〜[3]、[5]および[6]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体であって、2200重量部のジメチルスルホキシドと、2〜13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の、前記ポリアリーレン系共重合体とを混合して、混合したポリアリーレン系共重合体の全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜160,000であることを特徴とするポリアリーレン系共重合体。
[8]前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの少なくとも一個が、下記式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とする[1]〜[7]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、Ar1は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アリーレン基は−(W2−A)で表される基及びW3で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基以外の基を置換基として有していてもよい。W1及びW2は、それぞれ独立に2価の電子吸引性の基を表す。W3は、1価の電子吸引性の基を表す。Aは、水素原子、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。X1は−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。aは0又は1の整数を表し、b及びcはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。a+b+cは1以上である。なお、bが2以上である場合、複数存在するW2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、複数存在するAは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。cが2以上である場合、複数存在するW3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
[9]前記式(1)で表される構造単位が、下記式(2)で示される構造単位であることを特徴とする請求項[8]に記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、W1、W2、W3、X1及びAは前記式(1)中のものと同じである。R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。dは0又は1の整数を表し、e、f及びgはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。d+e+fは1〜5の整数であり、e+f+gは0〜4の整数である。なお、eが2以上である場合、複数存在するW2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、複数存在するAは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。fが2以上である場合、複数存在するW3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。gが2以上である場合、複数存在するR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
[10]イオン交換容量が、3.5〜5.5meq/gであることを特徴とする[1]〜[9]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。
[11]前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの少なくとも一個が、下記式(3)で表される構造単位を含むことを特徴とする[1]〜[10]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、Ar2は2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。Xは−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。)
[12]前記イオン交換基を有するセグメントの少なくとも一個が、下記式(4)で表される構造を含むことを特徴とする[1]〜[11]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、Ar3はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。pは1以上の整数を表す。pが2以上である場合、複数存在するAr3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
[13]前記Ar3で表される芳香族基の、主鎖を構成する芳香族環は、これに直接結合している少なくとも一つのイオン交換基を有することを特徴とする[12]に記載のポリアリーレン系共重合体。
[14]前記イオン交換基を有するセグメントが有するイオン交換基がスルホ基、ホスホン基、カルボキシル基、スルホンイミド基からなる群から選ばれる1種以上の酸基であることを特徴とする[1]〜[13]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。
[15]前記式(4)で表される構造が、下記式(5)で表される構造であることを特徴とする請求項12〜14いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基又はシアノ基を表す。kは0〜3の整数を表し、qは1又は2の整数を表し、k+qは1〜4の整数である。なお、kが2または3である場合、複数あるRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。pは前記と同じ意味を表す。)
【0010】
前記[1]〜[15]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体はいずれも、特に燃料電池用部材に使用される高分子電解質として極めて優れている。したがって、本発明は以下の[16]〜[21]を提供する。
[16][1]〜[15]いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体を含むことを特徴とする高分子電解質。
[17][16]に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする高分子電解質膜。
[18][16]に記載の高分子電解質と、多孔質基材とを含むことを特徴とする高分子電解質複合膜。
[19][16]に記載の高分子電解質と、触媒成分とを含むことを特徴とする触媒組成物。
[20][17]に記載の高分子電解質膜、[18]に記載の高分子電解質複合膜及び[19]に記載の触媒組成物から選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とする膜電極接合体。
[21][20]に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする高分子電解質形燃料電池。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアリーレン系重合体は、高分子電解質形燃料電池用部材、中でも高分子電解質膜として用いると、高い耐久性及び実用的なプロトン伝導性を示す。本発明のポリアリーレン系重合体は、高分子電解質形燃料電池の触媒層として用いても好適である。特に、本発明のポリアリーレン系共重合体を高分子電解質膜として燃料電池に用いた場合、分子鎖の切断などの化学的な劣化や分解を受けにくく、プロトン伝導を担うイオン交換基を系外へ流出し難いため、長期に渡り安定して高い発電効率を示す燃料電池が得られる。このように、本発明のポリアリーレン系共重合体は、特に燃料電池の用途において、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリアリーレン系共重合体は、イオン交換基を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとをそれぞれ複数個有するポリアリーレン系共重合体であって、イオン交換基を有するセグメントの少なくとも一個が、ポリアリーレン構造を含むこと、イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜250,000であること、及びポリアリーレン系共重合体のイオン交換容量が3.0meq/g以上であることを特徴とする。本発明において、ポリアリーレン系共重合体とは、ポリアリーレン構造を含む共重合体を意味する。
【0013】
まず、本発明のポリアリーレン系共重合体におけるイオン交換基を有するセグメントについて説明する。イオン交換基を有するセグメントは、該セグメントのイオン交換容量が3.5meq/g以上であると好ましく、該セグメントのイオン交換容量が4.5meq/g以上であるとより好ましく、6.0meq/g以上であるとさらに好ましい。
イオン交換基を有するセグメントの少なくとも一個は、ポリアリーレン構造を含む。イオン交換基を有するセグメントの全てが、ポリアリーレン構造を含むことが好ましい。さらに、イオン交換基を有するセグメントの全てが、ポリアリーレン構造からなることが好ましい。ここで、ポリアリーレン構造について説明する。本発明のポリアリーレン系共重合体におけるイオン交換基を有するセグメントは、主鎖を構成している芳香族環同士が直接結合で結合されている形態を含み、ポリマー主鎖を構成している芳香族環同士の結合の総数に対する直接結合の割合が多いほど、耐水性及びプロトン伝導性の向上が優れる傾向があるため好ましく、具体的には、前記ポリアリーレン構造が、該芳香族環同士の結合の総数を100%としたとき、直接結合の割合が80%以上の構造であると好ましく、90%以上の構造であるとより好ましく、95%以上の構造であるとさらに好ましい。なお、直接結合以外の結合とは、芳香族環同士が2価の原子又は2価の原子団で結合している形態である。2価の原子としては、例えば、−O−、−S−で示される基などが挙げられ、2価の原子団としては、例えば、−C(CH32−、−C(CF32−、−CH=CH−、−SO2−、−CO−で示される基などが挙げられる。
【0014】
前記イオン交換基を有するセグメントの少なくとも一個は、下記式(4)で表される構造を含むことが好ましい。好ましくは、イオン交換基を有するセグメントの全てが、下記式(4)で表される構造を含む。さらに好ましくは、イオン交換基を有するセグメントの全てが、下記式(4)で表される構造のみからなる。

(式中、Ar3はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。pは1以上の整数を表す。pが2以上である場合、複数存在するAr3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0015】
pは1以上の整数を表し、3以上であることが好ましい。さらに、5〜200の範囲がより好ましく、さらに好ましくは10〜100である。pの値が3以上であると、燃料電池用の高分子電解質として、プロトン伝導度が十分であるので好ましい。pの値が200以下であれば、ポリアリーレン系共重合体としての高い長期安定性が得られ、また、ポリアリーレン系共重合体の製造がより容易であるので好ましい。
【0016】
前記「イオン交換基」とは、イオン伝導、特にここではプロトン伝導に係る基を表す。イオン交換基としては通常酸基が使用される。該酸基としては、弱酸、強酸、超強酸等の酸基が挙げられるが、強酸、超強酸の酸基が好ましい。酸基の例としては、例えば、ホスホン基、カルボキシル基等の弱酸の酸基;スルホ基、スルホンイミド基(−SO2−NH−SO2−R。ここでRはアルキル基、アリール基等の一価の置換基を表す。)等の強酸の酸基が挙げられ、中でも、強酸の酸基であるスルホ基、スルホンイミド基が好ましく使用される。また、電子吸引性基で該芳香族環及び/又はスルホンイミド基の置換基(−R)上の水素原子を置換することにより、電子吸引性基の効果で前記の強酸の酸基を超強酸の酸基として機能させることも好ましい。共重合体中に存在するイオン交換基は、部分的にあるいは全てが、金属イオンや4級アンモニウムイオンなどで交換されて塩を形成していてもよいが、本発明のポリアリーレン系共重合体を燃料電池用高分子電解質膜などとして使用する際には、実質的に全てのイオン交換基が遊離酸の状態であることが好ましい。
【0017】
前記式(4)におけるArは、2価の芳香族基を表す。ここで、2価の芳香族基とは、芳香族化合物から、該芳香族化合物が有する芳香族環に直接結合した水素原子を2個取り去った残基を表す。該2価の芳香族基としては、例えば、下記式(4−1)〜(4−14)等が挙げられる。好ましくは(4−1)である。


【0018】
また、前記のように2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。
【0019】
ここで、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の炭素数1〜20のアルキル基、及びこれらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有する、その総炭素数が20以下であるアルキル基等が挙げられる。
【0020】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基等のアリール基、及びこれらのアリール基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有するその総炭素数が20以下であるアリール基等が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜14のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が14以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等
【0021】
置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基としては、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基等の炭素数2〜20のアシル基、及びこれらの基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、その総炭素数が20以下であるアシル基が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜18のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が18以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等
【0022】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、1−ナフタレンスルホニル基、2−ナフタレンスルホニル基等の炭素数6〜20のアリールスルホニル基、及びこれらの基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、その総炭素数が20以下であるアリールスルホニル基が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜14のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が14以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等
【0023】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基としては、メシル基及びこれらの基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、その総炭素数が20以下であるアルキルスルホニル基が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜19のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が19以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等
【0024】
また、Arで表される芳香族基の、主鎖を構成する芳香族環は、これに直接結合している少なくとも一つのイオン交換基を有することが好ましい。ここで、「主鎖」とは、ポリマーを形成する最も長い鎖のことをいう。この鎖は共有結合により相互に結合した炭素原子から構成されていて、この鎖は、窒素原子、硫黄原子等により中断されていてもよい。
【0025】
また、前記式(4)で示される構造の好ましい例としては、下記式(5)で表される構造が挙げられる。このような構造を有するセグメントは、後述する本発明のポリアリーレン系共重合体の製造において、工業的に容易に入手できる原料を用いることができる、又は、製造が容易である原料を用いることができるため好ましい。

(式中、Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基又はシアノ基を表す。kは0〜3の整数を表し、qは1又は2の整数を表し、k+qは1〜4の整数である。なお、kが2または3である場合、複数あるRは同一であっても、異なっていてもよい。pは1以上の整数を表す。)
ここで、Rは前記2価の芳香族基の置換基として例示した、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基又はシアノ基であり、後述の重合反応において、その反応を阻害しない基である。その置換基の数kは、0又は1であると好ましく、特に好ましくはkが0である。
【0026】
本発明のポリアリーレン系共重合体における、イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量としては、10,000〜250,000であり、10,000〜160,000が好ましく、15,000〜120,000がより好ましく、20,000〜80,000がさらに好ましい。ポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000以上であると、燃料電池用の高分子電解質として、プロトン伝導度が十分であるので好ましい。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量が250,000以下であれば、ポリアリーレン系共重合体としての高い長期安定性が得られ、また、製造がより容易であるので好ましい。さらに、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、250,000以下であれば、仮に分解した場合でも、高分子電解質膜から、分解物が流出しにくいため触媒の被毒が抑えられ、これによって発電特性の長期安定性が得られるので好ましい。
【0027】
イオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量は、後述する好適な製造方法である、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体とを共重合する方法において、共重合前に測定してもよいし、共重合後に測定してもよい。
前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体が単量体型である場合、前記重量平均分子量は、共重合の後に測定される。イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体が重合体型である場合、前記重量平均分子量の測定は、共重合の前であっても後であってもよい。該前駆体のポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000未満の場合、該前駆体同士のカップリングを生じ易く、共重合後にイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量が変化する可能性があるため、前記重量平均分子量は共重合後に測定されることが好ましい。
共重合前のイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量の測定は、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体を、イオン交換基を有するセグメントの構造へ変換した後に行われる。すなわち、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体がイオン交換基を有していない場合には、イオン交換基を導入した後の測定値が、イオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量であり、また、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体のイオン交換基がイオン交換前駆基である場合には、イオン交換基へ誘導した後の値が、イオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量である。
共重合後のイオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量の測定は、ポリアリーレン系共重合体が含むイオン交換基を実質的に有しないセグメントを分解した後に行われる。
前記分解の方法としては、酸、塩基、ラジカル、酸化剤、還元剤、熱、光等を用いる方法が挙げられる。イオン交換基を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントの構造の違いから、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを選択的に分解する分解方法が選択される。例えば、ポリアリーレン構造から成るイオン交換基を有するセグメントと、主鎖にエーテル結合を有するイオン交換基を実質的に有しないセグメントとから成る、芳香族ブロック共重合体の、イオン交換基を実質的に有しないセグメントの分解には塩基が好適に用いられる。具体的には、特開2008−031452号公報、又は特開2009−173902号公報に記載の公知の方法を用いる事ができる。具体的には、2200重量部のジメチルスルホキシドと、2〜13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の基質ポリマーとを混合して、混合した基質ポリマーの全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱する方法を用いることができる。例えば、基質ポリマーのイオン交換容量が3.5meq/g未満の場合には、2200重量部のジメチルスルホキシドと、2重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の基質ポリマーとを混合して、混合した基質ポリマーの全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱する方法が、エーテル結合の好適な分解方法として用いることができ、また、基質ポリマーのイオン交換容量が3.5meq/g以上の場合には、2200重量部のジメチルスルホキシドと、13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の基質ポリマーとを混合して、混合した基質ポリマーの全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱する方法が、エーテル結合の好適な分解方法として用いることができる。ここで、「混合した基質ポリマーの実質的に全てが溶解した」とは、混合した基質ポリマーの95重量%以上が溶解したことを意味する。
【0028】
前記イオン交換前駆基とは、ポリアリーレン系共重合体前駆体のイオン交換前駆基以外の構造の変化を伴うことなくイオン交換基となる基のことである。イオン交換前駆基は、好ましくは3段階以内、より好ましくは2段階以内、さらに好ましくは1段階の反応を経てイオン交換基となる。
【0029】
次に、本発明のポリアリーレン系共重合体におけるイオン交換基を実質的に有しないセグメントについて説明する。イオン交換基を実質的に有しないセグメントは、該セグメントのイオン交換容量が0.5meq/g以下であるものであり、該セグメントのイオン交換容量が0.2meq/g以下であるとより好ましく、該セグメントのイオン交換容量が0.0meq/gであるとさらに好ましい。
【0030】
前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントは、電子吸引性基を有し、且つ、該セグメントの主鎖にエーテル結合又はチオエーテル結合を有することが好ましい。さらに、前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントは、芳香族環を有する化合物から芳香族環水素原子を2個取り去って得られる2価の芳香族残基を構造単位として有することが好ましく、該2価の芳香族残基に直接結合した電子吸引性基が存在することが好ましい。また、該2価の芳香族残基が、主鎖の一部を構成していることが好ましい。
【0031】
前記電子吸引性の基としては、2価の電子吸引性の基と、1価の電子吸引性の基とが挙げられ、2価の電子吸引性の基としては、スルホニル基、カルボニル基、及びフッ素置換アルキレン基等が挙げられる。好ましくは、スルホニル基である。また、1価の電子吸引性の基としては、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。好ましくは、シアノ基である。
【0032】
前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの少なくとも一個は、下記式(1)で表される構造単位を含むことが好ましい。前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの全てが、下記式(1)で表される構造単位を含むことがより好ましい。

(式中、Ar1は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アリーレン基は−(W2−A)で表される基及びW3で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基以外の基を置換基として有していてもよい。W1及びW2は、それぞれ独立に2価の電子吸引性の基を表す。W3は、1価の電子吸引性の基を表す。Aは、水素原子、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。X1は−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。aは0又は1の整数を表し、b及びcはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。a+b+cは1以上である。なお、bが2以上である場合、複数存在するW2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、複数存在するAは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。cが2以上である場合、複数存在するW3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0033】
前記式(1)で表される構造単位は、少なくとも1個の電子吸引性基を有し、且つエーテル結合又はチオエーテル結合を有する。前記式(1)で表される構造単位は、イオン交換基を実質的に有しないセグメントの主鎖に含まれることが好ましい。
【0034】
前記式(1)で表される構造単位は、前記イオン交換基を実質的に有しないセグメント全量を100重量%としたとき、その10重量%以上を占めることが好ましく、20重量%以上を占めることがより好ましく、30重量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0035】
前記式(1)におけるArはアリーレン基を表し、該アリーレン基としては、例えば、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル基、1,4−ナフタレンジイル基、1,5−ナフタレンジイル基、1,6−ナフタレンジイル基、1,7−ナフタレンジイル基、2,6−ナフタレンジイル基、2,7−ナフタレンジイル基等の2価の縮環系芳香族基、ピリジンジイル基、キノキサリンジイル基、チオフェンジイル基等の2価の芳香族複素環基等が挙げられる。好ましくは2価の単環性芳香族基である。
【0036】
また、該アリーレン基は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基から選ばれる基を置換基として有していてもよい。炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、上述のものが挙げられる。
【0037】
また、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、イコシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基、及びこれらのアルコキシ基にヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、フェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が置換され、その総炭素数が20以下であるアルコキシ基等が挙げられる。
【0038】
置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、アントラセニルオキシ基等のアリールオキシ基、及びこれらのアリールオキシ基が以下の置換基群から選ばれる1種以上の置換基を有する、の総炭素数が20以下であるアリールオキシ基等が挙げられる。
[置換基群]メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−メチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、ドデシル基等の炭素数1〜14のアルキル基、これらのアルキル基がヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等を置換基として有するその総炭素数が14以下であるアルキル基、及びヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、フェニル基、ナフチル基等
【0039】
前記式(1)における、W1及びW2でそれぞれ示される2価の電子吸引性の基の例としては、スルホニル基、カルボニル基、又はフッ素置換アルキレン基等が挙げられる。好ましくは、スルホニル基である。前記式(1)における、W3で示される1価の電子吸引性の基としては、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。好ましくは、シアノ基である。
【0040】
前記式(1)における、Aは、水素原子、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基及び置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基の具体例としては、上述のものが挙げられる。
【0041】
前記式(1)における、aは0又は1の整数を表し、b及びcはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。a+b+cは1以上である。aは1が好ましく、bは0又は1が好ましく、cは0〜4の整数が好ましい。
【0042】
前記一般式(1)で表される構造単位としては、例えば(1−1)〜(1−12)の構造単位が挙げられる。このような構造単位を有するセグメントは、本発明のポリアリーレン系共重合体を含む高分子電解質の高い溶剤溶解性を確保しやすく、得られた高分子電解質に、耐熱性及び、機械的耐久性を付与しやすいため、好ましい。中でも、一般式(1)としては置換基を有してもよい下記(1−1)、(1−3)、又は(1−9)で表される基が好ましく、(1−1)で表される基が特に好ましい。
このような構造単位を有するセグメントは、その製造に工業的に容易に入手できる原料を用いることができるため、好ましい。

【0043】
前記式(1)で表される構造単位は、下記式(2)で示される構造単位であることが好ましい。

(式中、W1、W2、W3、X1及びAは前記式(1)中のものと同じである。R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。dは0又は1の整数を表し、e、f及びgはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。d+e+fは1〜5の整数であり、e+f+gは0〜4の整数である。なお、eが2以上である場合、複数存在するW2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、複数存在するAは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。fが2以上である場合、複数存在するW3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。gが2以上である場合、複数存在するR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0044】
上記式(2)で表される構造単位としては、例えば上記(1−1)〜(1−12)の構造単位が挙げられる。
【0045】
また、前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントが、下記式(3)で表される構造単位を含むことが好ましい。下記式(3)で表される構造単位が、上記式(1)で表される構造単位を有していてもよいし、下記式(1)で表される構造単位が、上記式(3)で表される構造単位を有していてもよい。このような構造単位を有するセグメントは、本発明のポリアリーレン系共重合体を含む高分子電解質に、耐熱性及び、機械的耐久性を付与しやすいため好ましく、また、当該セグメントの製造に工業的に容易に入手できる原料を用いることができる、又は、製造が容易である原料を用いることができるため好ましい。

(式中、Ar2は2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。Xは−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。)
【0046】
上記式(3)における、Arは、2価の芳香族基を表す。ここで、2価の芳香族基とは、芳香族化合物から、該芳香族化合物が有する芳香族環に直接結合した水素原子を2個取り去った残基を表す。該2価の芳香族基としては、例えば下記式(3−1)〜(3−27)の芳香族基が挙げられる。


【0047】
また、Arは、Arが置換基として有し得る基で置換されていてもよく、中でも、Arとしては置換基を有してもよい前記(3−3)、(3−7)、(3−12)、(3−15)、(3−16)、(3−19)、(3−20)、(3−23)、(3−25)、又は(3−26)で表される基が好ましい。より好ましくは、置換基を有しても良い前記(3−12)、(3−15)、(3−16)、(3−19)、(3−20)、(3−23)、(3−25) 、又は(3−26)で表される基が挙げられる。さらに好ましくは、置換基を有しても良い前記(3−12)、(3−16)、(3−19)、(3−20)、又は(3−25)で表される基が挙げられる。
このような構造単位を有するセグメントは、本発明のポリアリーレン系共重合体を含む高分子電解質に、耐熱性及び、機械的耐久性を付与しやすいため好ましく、また、当該セグメントの製造に工業的に容易に入手できる原料を用いることができる、又は、製造が容易である原料を用いることができるため好ましい。
【0048】
イオン交換基を実質的に有しないセグメントとしては、下記式で表される構造が挙げられる。中でも、(ba)、(be)、(bf)、(bi)、(bk)、(bn)、(bo)、(bp)、(bq)、(br)、及び(bs)が好ましい。より好ましいセグメントとしては、(ba)、(be)、(bf)、(bk)、(bp)、(br)、及び(bs)が挙げられる。このような構造単位を有するセグメントは、本発明のポリアリーレン系共重合体を含む高分子電解質の溶剤溶解性を確保しやすく、得られた高分子電解質に、耐熱性及び、機械的耐久性を付与しやすいため、好ましい。また、このような構造単位を有するセグメントは製造が容易であり、また、工業的に容易に入手できる原料を用いて製造できるため好ましい。
下記式においてhはモル組成比を表し、hは0.51〜0.90が好ましく、0.55〜0.90がより好ましく、0.60〜0.85がさらに好ましい。

【0049】
本発明のポリアリーレン系共重合体の好適な製造方法としては、例えば、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体とイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体とを共重合させる方法が挙げられる。
イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体、及びイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体は、単量体型であっても、重合体型であっても良い。
すなわち、前記製造方法としては、
イオン交換基を有するセグメントを誘導する単量体型の前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する重合体型の前駆体とを共重合させる方法、
イオン交換基を有するセグメントを誘導する重合体型の前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する単量体型の前駆体とを共重合させる方法、
イオン交換基を有するセグメントを誘導する重合体型の前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する重合体型の前駆体とを共重合させる方法、
が挙げられる。
イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体が、単量体型、又はポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000未満の重合体型である場合、イオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量は、前記共重合に供するイオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体との組成比、及び、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体の分子量によって制御される。前記共重合に供するイオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体の組成比が高いと、イオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量は高くなる傾向がある。また、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体の分子量が高いほど、イオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量は高くなる傾向がある。
つまり、共重合に供するイオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体と、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体との組成比と、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体の分子量と、を適当に調整することにより、イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が前記範囲内にあるポリアリーレン系共重合体を得ることができる。
イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が前記範囲よりも高い場合には、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体の分子量と低くすることで、前記範囲へ抑えることができる。また、イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が前記範囲をよりも低い場合には、イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体の分子量を高くすることで、前記範囲へ高めることができる。
イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体が重合体型である場合、イオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量は、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体の分子量によって制御される。
つまり、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体の重量平均分子量を、前記イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量の範囲とすることで、イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が前記範囲内にあるポリアリーレン系共重合体を得ることができる。
ただし、前記共重合の後にイオン交換基を導入する場合、又は、前記共重合の後にイオン交換前駆基をイオン交換基へ誘導する場合はこの限りではない。この場合には、共重合前の、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体へ、イオン交換基を導入した後、又は、共重合前の、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体のイオン交換前駆基を、イオン交換基へ誘導した後、のポリスチレン換算の重量平均分子量を前記範囲内とすることで、イオン交換基を有するセグメントの重量平均分子量が前記範囲内にあるポリアリーレン系共重合体を得ることができる。
イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体は、共重合に先立ってイオン交換基を有していても、有していなくてもよい。イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体が、イオン交換基を有していない場合は、イオン交換基を有するセグメントを誘導する前駆体とイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体とを共重合した後にイオン交換基を導入すればよい。
【0050】
例えば、イオン交換基を有するセグメントに、前記式(4)で表される構造を含める場合、Arにおける主鎖を構成する芳香族環に結合するイオン交換基の導入方法は、予めイオン交換基を有する前駆体を用いて重合する方法であっても、予めイオン交換基を有さない前駆体からポリアリーレン系共重合体前駆体を製造した後に、該前駆体にイオン交換基を導入する方法であってもよい。
中でも、前者の方法であると、イオン交換基の導入量や、置換位置を的確に制御することができるので、より好ましい。
【0051】
本発明のポリアリーレン系共重合体は、イオン交換基を有するモノマーを用いて、例えば、遷移金属錯体の共存下、下記式(4−h)で示されるモノマーと、後述する、前記式(1)で表される構造単位を含む前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの前駆体とを、縮合反応により重合することにより製造し得る。
Q−Ar10−Q (4−h)
ここでAr10はイオン交換基及び/又はイオン交換前駆基を有し、また、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基から選ばれる基を有してもよい2価の芳香族基である。2つのQはそれぞれ、脱離基を表し、2つのQは同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
式(4−h)におけるAr10の例としては、Arの具体例と同一の基を挙げることができる。また、Ar10はArの置換基の具体例と同一の基を置換基として有していてもよい。前記脱離基は、縮合反応時に脱離する基を意味するが、その具体例としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などのスルホニルオキシ基などが挙げられる。
【0053】
前記式(4−h)で示されるモノマーとしては、イオン交換基が好ましいイオン交換基であるスルホ基の場合で例示すると、2,4−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、2,4−ジブロモベンゼンスルホン酸、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸、2,4−ジヨードベンゼンスルホン酸、2,5−ジヨードベンゼンスルホン酸、3,5−ジヨードベンゼンスルホン酸、2,4−ジクロロ−5−メチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロ−4−メチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジブロモ−5−メチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジブロモ−4−メチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジヨード−5−メチルベンゼンスルホン酸、2,5−ジヨード−4−メチルベンゼンスルホン酸、2,4−ジクロロ−5−メトキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジクロロ−4−メトキシベンゼンスルホン酸、2,4−ジブロモ−5−メトキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジブロモ−4−メトキシベンゼンスルホン酸、2,4−ジヨード−5−メトキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヨード−4−メトキシベンゼンスルホン酸、3,3’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、3,3’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、3,3’−ジヨードビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジヨードビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジクロロビフェニル−3,3’−ジスルホン酸、4,4’−ジブロモビフェニル−3,3’−ジスルホン酸、4,4’−ジヨードビフェニル−3,3’−ジスルホン酸、5,5’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、5,5’−ジブロモビフェニル−2,2’−ジスルホン酸、5,5’−ジヨードビフェニル−2,2’−ジスルホン酸等が挙げられる。
また、他のイオン交換基の場合は、前記に例示したモノマーのスルホ基を、カルボキシル基、ホスホン基等のイオン交換基に置き換えて選択することができ、これら他のイオン交換基を有するモノマーも工業的に容易に入手できるか、公知の製造方法を用いて製造することが可能である。
さらに前記に例示するモノマーのイオン交換基は塩の形でもよく、特に、イオン交換基が塩の形であるモノマーを用いることが、重合反応性の観点から好ましい。塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、特に、Li塩、Na塩、K塩が好ましい。
【0054】
イオン交換前駆基としては、スルホン酸前駆基、ホスホン酸前駆基、カルボン酸前駆基などが挙げられる。
【0055】
イオン交換前駆基は、エステル又はアミドを形成してイオン交換基が保護されているような形態であることが好ましい。好ましいイオン交換前駆基であるスルホン酸前駆基で例示すると、スルホン酸エステル基(−SO3c;ここでRcは炭素数1〜20のアルキル基を表す。)又はスルホンアミド基(−SO2N(Rd)(Re);ここでRd及びReはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数3〜20の芳香族基を表す。)等が挙げられる。中でも、より好ましいスルホン酸前駆基としては、スルホン酸エステル基が挙げられる。
【0056】
スルホン酸エステル基としては、例えばスルホン酸メチルエステル基、スルホン酸エチルエステル基、スルホン酸n−プロピルルエステル基、スルホン酸イソプロピルエステル基、スルホン酸n−ブチルエステル基、スルホン酸sec−ブチルエステル基基、スルホン酸tert−ブチルエステル基、スルホン酸n−ペンチルエステル基、スルホン酸ネオペンチルエステル基、スルホン酸n−ヘキシルエステル基、スルホン酸シクロヘキシルエステル基、スルホン酸n−ヘプチルエステル基、スルホン酸n−オクチルエステル基、スルホン酸n−ノニルエステル基、スルホン酸n−デシルエステル基、スルホン酸n−ドデシルエステル基、スルホン酸n−ウンデシルエステル基、スルホン酸n−トリデシルエステル基、スルホン酸n−テトラデシルエステル基、スルホン酸n−ペンタデシルエステル基、スルホン酸n−ヘキサデシルエステル基、スルホン酸n−ヘプタデシルエステル基、スルホン酸n−オクタデシルエステル基、スルホン酸n−ノナデシルエステル基、スルホン酸n−エイコシルエステル基などのスルホン酸エステル基が例示され、好ましくはスルホン酸sec−ブチルエステル基、スルホン酸ネオペンチルエステル基又はスルホン酸シクロヘキシルエステル基である。これらのスルホン酸エステル基は、重合反応に関与しない基を置換基として有していてもよい。
【0057】
また、スルホンアミド基としては、例えばスルホンアミド基、N−メチルスルホンアミド基、N,N−ジメチルスルホンアミド基、N−エチルスルホンアミド基、N,N−ジエチルスルホンアミド基、N−n−プロピルスルホンアミド基、ジ−n−プロピルスルホンアミド基、N−イソプロピルスルホンアミド基、N,N−ジイソプロピルスルホンアミド基、N−n−ブチルスルホンアミド基、N,N−ジ−n−ブチルスルホンアミド基、N−sec−ブチルスルホンアミド基、N,N−ジ−sec−ブチルスルホンアミド基、N−tertブチルスルホンアミド基、N,N−ジ−tert−ブチルスルホンアミド基、N−n−ペンチルスルホンアミド基、N−ネオペンチルスルホンアミド基、N−n−ヘキシルスルホンアミド基、N−シクロヘキシルスルホンアミド基、N−n−ヘプチルスルホンアミド基、N−n−オクチルスルホンアミド基、N−n−ノニルスルホンアミド基、N−n−デシルスルホンアミド基、N−n−ドデシルスルホンアミド基、N−n−ウンデシルスルホンアミド基、N−n−トリデシルスルホンアミド基、N−n−テトラデシルスルホンアミド基、N−n−ペンタデシルスルホンアミド基、N−n−ヘキサデシルスルホンアミド基、N−n−ヘプタデシルスルホンアミド基、N−n−オクタデシルスルホンアミド基、N−n−ノナデシルスルホンアミド基、N−n−エイコシルスルホンアミド基、N,N−ジフェニルスルホンアミド基、N,N−ビストリメチルシリルスルホンアミド基、N,N−ビス−tert−ブチルジメチルシリルスルホンアミド基、ピロリルスルホンアミド基、ピロリジニルスルホンアミド基、ピペリジニルスルホンアミド基、カルバゾリルスルホンアミド基、ジヒドロインドリルスルホンアミド基、ジヒドロイソインドリルスルホンアミド基などが例示され、好ましくはN,N−ジエチルスルホンアミド基、N−n−ドデシルスルホンアミド基、ピロリジニルスルホンアミド基、ピペリジニルスルホンアミド基が例示される。これらのスルホンアミド基は、いずれも重合反応に関与しない基を置換基として有していてもよい。
【0058】
また、スルホン酸前駆基としてはメルカプト基も使用可能である。メルカプト基は適当な酸化剤を使用して酸化させることによりスルホ基に転換可能である。
【0059】
次に、予めイオン交換基を有さないモノマーからポリアリーレン系共重合体前駆体を製造した後に、イオン交換基を導入する方法に関し説明する。この場合、例えば、遷移金属錯体の共存下、下記一般式(4−i)で示されるモノマーと、前記式(1)で表される構造単位を含むイオン交換基を実質的に有しないセグメントの前駆体とを、縮合反応により重合することにより製造し得る。
Q−Ar11−Q (4−i)
(式中、Ar11は、イオン交換基を導入することにより、前記式(4−h)のAr10となり得る2価の芳香族基を表し、それぞれのQは前記と同義であり、2つのQは同一でも異なっていてもよい。)
【0060】
式(4−i)で表されるモノマーと、例えば、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとして好ましい、式(1)で表される構造単位を含む前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの前駆体とを縮合反応により共重合せしめ、下記式(4−j)で表される構造単位と、前記式(1)で表される構造単位とをともに有するポリアリーレン系共重合体前駆体を得、当該ポリアリーレン系共重合体前駆体の式(4−j)で表される構造単位における主鎖を構成する芳香族環にイオン交換基を導入するといった一連の操作によって、本発明のポリマーを製造することができる。

(式中、Ar12はイオン交換基を導入することで、前記式(4)のArとなり得る2価の芳香族基を表す。)
【0061】
Ar11及びAr12はそれぞれ、少なくとも一つのイオン交換基を導入可能な構造を有する。Ar11及びAr12それぞれにおけるイオン交換基を導入可能な構造としては、芳香族環に直接結合している水素原子等、イオン交換基を導入可能な官能基を有していることを示す。求電子置換反応によってスルホ基を芳香族環に導入する場合は、芳香族環に結合している水素原子はスルホ基を導入可能な官能基と見なすことができる。なお、式(4−i)で表されるモノマーの具体例としては、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロ−4−メトキシベンゼン、1,4−ジクロロ−3−メトキシベンゼン、4,4’−ジクロロビフェニル、4,4’−ジクロロ−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジクロロ−3,3’−ジメトキシビフェニル、1,4−ジクロロナフタレン、1,5−ジクロロナフタレン、2,6−ジクロロナフタレン、2,7−ジクロロナフタレンが挙げられ、これらのモノマー中の塩素原子の代わりに臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などのスルホニルオキシ基などが置換されたモノマーも使用することができる。
【0062】
式(4−j)で表される構造単位に好ましいイオン交換基であるスルホ基を導入する方法としては、得られたポリアリーレン系共重合体前駆体を濃硫酸に溶解あるいは分散することにより、あるいは有機溶媒に少なくとも部分的に溶解させた後、濃硫酸、クロロ硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄などを作用させることにより、水素原子をスルホ基に変換する方法を挙げることができる。
【0063】
前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの前駆体としては、下記式(3−h)で表される化合物が好ましく用いられる。下記式(3−h)で表される化合物は、前記式(1)で表される構造単位及び/又は、前記式(3)で表される構造単位を含むことが好ましい。また、イオン交換容量が0.5meq/g以下であることが好ましい。


(Ar20及びAr21は、それぞれ独立に2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。qは1以上の整数を表す。qが2以上である場合、複数存在するAr20は、それぞれ同一でも異なってもよい。Q及びXは、前記と同じである。)
ここでAr20及びAr21の例としてはAr2の具体例と同一の基を挙げることができる。また、Ar20及びAr21が有していてもよい置換基の例としては、Ar2が有していてもよい置換基の具体例と同一のものが挙げられる。
【0064】
前記式(3−h)で表される化合物としては例えば下記式(da)〜(dp)の化合物が挙げられる。中でも、(da)、(de)、(df)、(di)、(dk)、(dn)、(do)、(dp)、(dq)、(dr)、及び(ds)が好ましい。より好ましい前駆体としては、(da)、(de)、(df)、(dk)、(dp)、(dr)、及び(ds)が挙げられる。このような前駆体は、本発明のポリアリーレン系共重合体を含む高分子電解質の高い溶剤溶解性を確保しやすく、得られた高分子電解質に、耐熱性及び、機械的耐久性を付与しやすいため、好ましい。また、このような前駆体は、工業的に容易に入手できる原料を用いて合成できるため、好ましい。
下記式においてiはモル組成比を表し、iは0.5以上が好ましい。また、iは0.90以下が好ましく、0.85以下がより好ましく、0.70以下がさらに好ましく、0.5が最も好ましい。また、qとしては、0以上の整数である。qは、高分子電解質膜とした際の形状安定性を向上させるために、好ましくは、2以上であり、より好ましくは3以上である。また、プロトン伝導性を高めるために、45以下が好ましく、30以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましい。


【0065】
本発明における、イオン交換基を実質的に有しないセグメントの前駆体のポリスチレン換算の重量平均分子量としては、1,000〜35,000が好ましく、1,500〜25,000がより好ましく、2,000〜20,000がより好ましく、2,500〜10,000がさらに好ましく、3,000〜6,000が特に好ましい。ポリスチレン換算の重量平均分子量が35,000より高いとプロトン伝導性が低下する傾向がある。該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0066】
また、本発明における、イオン交換基を実質的に有しないセグメントの前駆体の絶対分子量としては、250〜10,000が好ましく、400〜6,000がより好ましく、600〜3,000がさらに好ましく、1000〜2000が特に好ましい。絶対分子量が10,000より高いとプロトン伝導性が低下する傾向がある。
【0067】
次に、本発明のポリアリーレン系共重合体を製造するための重合反応(縮合反応)について説明する。なお、以下の製造方法の説明において、本発明のポリアリーレン系共重合体及び本発明のポリアリーレン系共重合体を製造可能なポリアリーレン系共重合体前駆体をあわせて「ポリマー等」ということがある。
縮合反応による重合は、ゼロ価遷移金属錯体の共存下に実施される。
前記ゼロ価遷移金属錯体は遷移金属にハロゲンや後述の配位子が配位したものであり、後述の配位子を少なくとも一種類有するものが好ましい。ゼロ価遷移金属錯体は市販品でも合成したものでもいずれも使用できる。
ゼロ価遷移金属錯体の合成方法は、例えば、遷移金属塩や遷移金属酸化物と配位子とを反応させる方法や、遷移金属化合物を亜鉛やマグネシウムなどの還元剤でゼロ価とする方法等の公知の方法が挙げられる。合成したゼロ価遷移金属錯体は、合成系から取り出して使用してもよいし、合成系から取り出すことなく、in situで使用してもよい。
配位子としては、例えばアセテート、アセチルアセトナート、2,2’−ビピリジル、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェノキシホスフィン、1,2−ビスジフェニルホスフィノエタン、1,3−ビスジフェニルホスフィノプロパンなどが挙げられる。
【0068】
ゼロ価遷移金属錯体としては、例えばゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体、ゼロ価白金錯体、ゼロ価銅錯体などが挙げられる。これら遷移金属錯体の中でもゼロ価ニッケル錯体、ゼロ価パラジウム錯体が好ましく用いられ、ゼロ価ニッケル錯体がより好ましく用いられる。
ゼロ価ニッケル錯体としては、例えばビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)、(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケルなどが挙げられ、中でも、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)が、反応性、得られるポリマー等の収率、得られるポリマー等の高分子量化という観点から好ましく使用される。
ゼロ価パラジウム錯体としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。
これらゼロ価遷移金属錯体としては、前記のように合成したものを用いてもよいし、入手した市販品を用いてもよい。
【0069】
還元剤により、遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を発生させる場合、使用される遷移金属化合物としては、ゼロ価の遷移金属化合物を用いることもできるが、通常2価のものを用いることが好ましい。なかでも2価ニッケル化合物及び2価パラジウム化合物が好ましい。2価ニッケル化合物としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセテート、ニッケルアセチルアセトナート、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)などが挙げられ、2価パラジウム化合物としては塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、パラジウムアセテートなどが挙げられる。
還元剤としては、亜鉛、マグネシウム、水素化ナトリウム、ヒドラジン及びその誘導体、リチウムアルミニウムヒドリドなどが挙げられる。必要に応じて、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化トリメチルアンモニウム、ヨウ化トリエチルアンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのヨウ素化合物を併用することもできる。
【0070】
ゼロ価遷移金属の錯体を用いる縮合反応の際、得られるポリマー等の収率向上の観点から、配位子として該ゼロ価遷移金属と共に錯体を形成し得る化合物を反応系に添加することが好ましい。添加する化合物は、使用するゼロ価遷移金属錯体の配位子と同じであっても異なっていてもよい。
該配位子となりうる化合物の例としては、前述の配位子の例として先に示した化合物が挙げられ、汎用性、経済性、反応性、得られるポリマー等の収率、得られるポリマー等の高分子量化の点でトリフェニルホスフィン及び2,2’−ビピリジルが好ましい。特に、2,2’−ビピリジルを用いると、ポリマー等の収率向上や高分子量化の点で特に有利である。
配位子の添加量は、ゼロ価遷移金属錯体にある遷移金属原子基準で、通常0.2〜10モル倍程度、好ましくは1〜5モル倍程度である。
【0071】
ゼロ価遷移金属錯体の使用量は、縮合反応に関わるモノマー及び前駆体の総モル量に対して、0.1モル倍以上である。使用量が過少であると、生成するポリマー等の分子量が小さくなる傾向があるので、ゼロ価遷移金属錯体は、好ましくは1.5モル倍以上、より好ましくは1.8モル倍以上、より一層好ましくは2.1モル倍以上用いる。一方、使用量の上限は特に制限はないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になることがあるので、5.0モル倍以下であることが好ましい。
なお、還元剤を用いて遷移金属化合物からゼロ価遷移金属錯体を合成する場合、生成するゼロ価遷移金属錯体の物質量が前記範囲となるように、遷移金属化合物及び還元剤の使用量等を設定すればよく、例えば、遷移金属化合物の量を、縮合反応に関わるモノマー及び前駆体の総モル量に対して、0.01モル倍以上、好ましくは0.03モル倍以上とすればよい。ゼロ価遷移金属錯体の使用量の上限は限定的ではないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、5.0モル倍以下であることが好ましい。また、還元剤の使用量は、縮合反応に関わるモノマー及び前駆体の総モル量に対して、例えば、0.5モル倍以上、好ましくは1.0モル倍以上とすればよい。還元剤の使用量の上限は限定されないが、使用量が多すぎると後処理が煩雑になる傾向があるために、10モル倍以下であることが好ましい。
【0072】
また、縮合反応の反応温度は、通常0℃〜200℃程度であり、好ましくは10℃〜100℃程度である。反応時間は、通常0.5〜48時間程度である。
ゼロ価遷移金属錯体と、ポリマー等の製造に使用する式(4−h)で示されるモノマー及び/又は式(4−i)で示されるモノマーと、式(1)で表される構造単位を含む前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの前駆体とを混合する方法は、ゼロ価遷移金属錯体を基質に加える方法であっても、ゼロ価遷移金属錯体と基質とを反応容器に同時に加える方法であってもよい。加えるに当っては、一挙に加えてもよいが、発熱を考慮して少量ずつ加えることが好ましいし、溶媒の共存下に加えることも好ましく、この場合の好適な溶媒は後述する。
【0073】
縮合反応は、通常、溶媒存在下に実施される。かかる溶媒としては、例えばN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン、n−ブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチルなどのエステル系溶媒、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化アルキル系溶媒などが例示される。なお、括弧内の表記は溶媒の略号を示すものであり、以下の説明において、この略号を用いることもある。
【0074】
生成するポリマー等の分子量をより高くするためには、ポリマー等が十分に溶解する溶媒を用いることが望ましいので、生成するポリマー等に対する良溶媒であるテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、DMF、DMAc、NMP、DMSO、トルエンが好ましい。これらは2種以上を混合して用いることもできる。なかでもDMF、DMAc、NMP及びDMSOから選ばれる溶媒、又はこれらから選ばれる2種以上の溶媒の混合物が好ましく用いられる。
溶媒量は、特に限定されないが、あまりにも反応系が低濃度では、生成したポリマー等を回収しにくくなることもあり、また、反応系があまりにも高濃度では、攪拌が困難になることがあることから、ポリマー等の製造に使用するモノマー及び式(1)で表される構造単位を含む前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの前駆体の総重量に対して1重量倍〜999重量倍、より好ましくは、3重量倍〜199重量倍となるようにして、溶媒の使用量を決定する。
【0075】
かくしてポリマー等が得られるが、生成したポリマー等は、常法により反応混合物から取り出すことができる。例えば、貧溶媒を加えることでポリマー等を析出させ、濾過などにより目的物を取り出すことができる。
また必要に応じて、更に水洗や、良溶媒と貧溶媒を用いての再沈殿など、通常の精製方法により精製することもできる。
【0076】
生成したポリマーのイオン交換基が塩の形態である場合、燃料電池に係る部材として使用するために、イオン交換基を遊離酸の形態にすることが好ましく、遊離酸への変換は、通常酸性溶液での洗浄により実施することができる。使用される酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられ、好ましくは希塩酸、希硫酸である。
【0077】
また、イオン交換前駆基を有するプレポリマーを得た場合も、燃料電池に係る部材として使用するために、イオン交換前駆基を、遊離酸の形態のイオン交換基にすることが必要である。
エステル、又はアミドを形成してイオン交換基が保護されているような形態の、イオン交換前駆基の、遊離酸の形態のイオン交換基への変換は、酸又は塩基による加水分解や、ハロゲン化物による脱保護反応により可能である。なお、塩基を使用した場合は、上述したような酸性溶液の洗浄を行えば、遊離酸の形態のイオン交換基にすることが可能である。使用される酸又は塩基としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられ、使用されるハロゲン化物としては、例えば、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムなどが挙げられ、好ましくは臭化リチウムと臭化テトラブチルアンモニウムである。イオン交換基への変換率は、例えば、スルホ基の場合、赤外線吸収スペクトルや核磁気共鳴スペクトルによって求められる、スルホン酸エステル又はスルホンアミドに特徴的なピークから定量することができる。
【0078】
ポリアリーレン系共重合体全体のイオン交換基の導入量は、イオン交換容量で表して、3.0meq/g以上であり、3.5meq/g以上が好ましく、4.0meq/g以上がより好ましく、4.5meq/g以上がさらに好ましい。また、7.0meq/g以下が好ましく、5.5meq/g以下がより好ましく、5.0meq/g以下がさらに好ましい。
該イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が3.0meq/g以上であると、プロトン伝導性がより高くなり、燃料電池用の高分子電解質としての機能がより優れるので好ましい。一方、イオン交換基導入量を示すイオン交換容量が7.0meq/g以下であると、耐水性がより良好となるので好ましい。該イオン交換容量は、酸塩基滴定により測定される。
【0079】
また、本発明のポリアリーレン系共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が200,000〜2,000,000であることが好ましく、250,000〜1,500,000であることがより好ましく、300,000〜1,000,000であることが特に好ましい。該重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0080】
なお、本発明のポリアリーレン系共重合体は、性質の異なる2種類以上のモノマー(マクロモノマーを含む)からなるランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。中でも、本発明のポリアリーレン系共重合体としては、後述する膜形態への転化の際、性質の異なる共重合体主鎖が会合することによりミクロ相分離構造を形成しうるブロック共重合体様の構造であることが好ましい。ミクロ相分離構造を有する高分子電解質膜は、プロトン伝導性及び耐水性に優れるため好ましい。
【0081】
本発明のポリアリーレン系共重合体は、燃料電池用の部材として好適に用いることができる。
本発明のポリアリーレン系共重合体は、燃料電池等の電気化学デバイスの高分子電解質として好ましく使用され、高分子電解質膜として、特に好ましく使用される。なお、以下の説明においては、前記高分子電解質膜の場合を主として説明する。
この場合は、本発明の高分子電解質を膜の形態へ転化する。製膜法には特に制限はないが、溶液より製膜する方法(溶液キャスト法)を用いて製膜することが好ましい。溶液キャスト法は、高分子電解質膜製造として当業分野で、これまで広範に使用されている方法であり、工業的に特に有用である。
具体的には、本発明の高分子電解質を適当な溶媒に溶かして高分子電解質溶液を調製し、該高分子電解質溶液を支持基材上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜される。かかる支持基材としては、例えば、ガラス板や、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
溶液キャスト法に使用する溶媒(キャスト溶媒)は、本発明の高分子電解質を十分溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、NMP、DMAc、DMF、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、DMSO等の非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、NMP、DMAc、DMF、DMIは、本発明の高分子電解質の溶解性が高く、また、耐水性の高い高分子電解質膜が得られるため好ましく、NMPを用いることがより好ましい。
【0082】
このようにして得られる高分子電解質膜の厚みは、特に制限はないが、燃料電池用高分子電解質膜(隔膜)としての実用的な範囲である5〜300μmが好ましい。膜厚が5μm以上の膜では実用的な強度が優れるため好ましく、300μm以下の膜では膜抵抗自体が小さくなる傾向があるので好ましい。膜厚は、前記溶液の重量濃度及び支持基材上の塗膜の塗布厚により制御できる。
【0083】
また、膜の各種物性改良を目的として、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤等の添加剤を本発明のポリアリーレン系共重合体に添加して、高分子電解質を調製してもよい。また、同一溶剤に混合共キャストする等の方法により、他のポリマーを本発明のポリアリーレン系共重合体とアロイ化して高分子電解質を調製することも可能である。このように、本発明のポリアリーレン系共重合体と、添加剤及び/又は他のポリマーとを組み合わせて高分子電解質を調製する場合には、該高分子電解質を燃料電池用部材に適用したときに、所望の特性が得られるようにして、添加剤及び/又は他のポリマーの種類や使用量を決定する。
さらに燃料電池用途においては水管理を容易にするために、無機あるいは有機の微粒子を保水剤として添加することも知られている。これらの公知の方法はいずれも本発明の目的に反しない限り使用できる。また、このようにして得られた高分子電解質膜に関し、その機械的強度向上等を目的として、電子線・放射線等を照射するといった処理を施してもよい。
【0084】
また、本発明の高分子電解質を含有する高分子電解質膜の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために、本発明のポリアリーレン系共重合体を含む高分子電解質を多孔質基材に含浸させ複合化することにより、高分子電解質複合膜(以下、「複合膜」という。)とすることも可能である。複合化方法は公知の方法を使用し得る。
多孔質基材としては、上述の使用目的を満たすものであれば特に制限は無く、例えば多孔質膜、織布、不織布等が挙げられ、上述の使用目的にかなうものであれば、その形状や材質によらず用いることができる。多孔質基材の材質としては、耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を考慮すると、脂肪族系高分子、芳香族系高分子が好ましい。
【0085】
本発明の高分子電解質と多孔質基材とからなる複合膜を、高分子電解質膜として使用する場合、多孔質基材の膜厚は、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmであり、多孔質基材の細孔の孔径は、好ましくは0.01〜100μm、さらに好ましくは0.02〜10μmであり、多孔質基材の空隙率は、好ましくは20〜98%、さらに好ましくは40〜95%である。
多孔質基材の膜厚が1μm以上であると、複合化後の強度補強の効果あるいは、柔軟性や耐久性を付与するといった補強効果がより優れ、ガス漏れ(クロスリーク)が発生しにくくなる。また、該膜厚が100μm以下であると、電気抵抗がより低くなり、得られた複合膜が燃料電池用高分子電解質膜として、より優れたものとなる。該孔径が0.01μm以上であると、本発明のポリマーの充填がより容易となり、100μm以下であると、補強効果がより大きくなる。空隙率が20%以上であると、高分子電解質膜としての抵抗がより小さくなり、98%以下であると、多孔質基材自体の強度がより大きくなり補強効果がより向上するので好ましい。
また、本発明の高分子電解質と多孔質基材とからなる複合膜と、本発明の高分子電解質含有する高分子電解質膜とを積層した積層膜をプロトン伝導膜として用いることもできる。
【0086】
次に本発明の燃料電池について説明する。
燃料電池の基本的な単位となる、本発明の膜電極接合体(以下、「MEA」ということがある。)は、本発明の高分子電解質膜、本発明の高分子電解質複合膜、及び、本発明の高分子電解質と、触媒成分とを含む触媒組成物から選ばれる少なくとも1種を用いて製造することができる。
ここで触媒成分としては、水素又は酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金又は白金系合金の微粒子を触媒成分として用いることが好ましい。白金又は白金系合金の微粒子はしばしば活性炭や黒鉛などの粒子状又は繊維状のカーボンに担持されて用いられることもある。
カーボンに担持された白金又は白金系合金(カーボン担持触媒)を、本発明の高分子電解質の溶液及び/又は高分子電解質としてのパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂のアルコール溶液と共に混合してペースト化した触媒組成物を、ガス拡散層及び/又は高分子電解質膜及び/又は高分子電解質複合膜に塗布・乾燥することにより触媒層が得られる。具体的な方法としては例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。このようにして、高分子電解質膜の両面に触媒層を形成することで、MEAが得られる。なお、該MEAの製造において、ガス拡散層となる基材上に触媒層を形成した場合は、得られるMEAは、高分子電解質膜の両面にガス拡散層と触媒層とをともに備えた膜−電極−ガス拡散層接合体の形態で得られる。また、ペースト化した触媒組成物を高分子電解質膜に塗布して高分子電解質膜上に触媒層を形成させた場合は、得られた触媒層上にさらにガス拡散層を形成させることで、膜−電極−ガス拡散層接合体が得られる。
ガス拡散層には公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン織布、カーボン不織布又はカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
このようにして製造されたMEAを備えた燃料電池は、燃料として水素ガス又は改質水素ガスを使用する形式はもとより、メタノールを用いる各種の形式で使用可能である。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0088】
分子量の測定:
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記条件でポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を測定した。なお、GPCの分析条件としては、下記の条件を用い、分子量測定値に使用した条件を付記した。
条件
GPC測定装置 島津製作所社製 Prominence GPCシステム
カラム 東ソー社製 TSKgel GMHHR−M
カラム温度 40℃
移動相溶媒 DMF(LiBrを10mmol/dm3になるように添加)
溶媒流量 0.5mL/min
検出 示差屈折率
【0089】
イオン交換容量(IEC)の測定:
測定に供するポリマーを溶液キャスト法により成膜した製膜してポリマー膜を得、得られたポリマー膜を適当な重量になるように裁断した。裁断したポリマー膜の乾燥重量を加熱温度110℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて測定した。次いで、このようにして乾燥させたポリマー膜を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、ポリマー膜が浸漬された溶液に、0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定を行い、中和点を求めた。そして、裁断したポリマー膜の乾燥重量と中和に要した塩酸の量から、ポリマーのイオン交換容量(単位:meq/g)を算出した。
【0090】
プロトン伝導度の測定:
プロトン伝導度は交流法で測定した。1cm2の開口部を有するシリコンゴム(厚さ200μm)の片面にカーボン電極を貼った測定用セルを2つ準備し、これらをカーボン電極同士が対向するように配置し、前記2つのセルに直接インピーダンス測定装置の端子を接続した。
次いで、この2つの測定用セルの間に、上記方法で得られたイオン交換基をプロトン型に変換した高分子電解質膜をセットして、測定温度23℃で、2つの測定用セル間の抵抗値を測定した。
その後、高分子電解質膜を除いて再度抵抗値を測定した。そして、高分子電解質膜を有する状態と有しない状態とで得られた2つの抵抗値の差に基づいて、高分子電解質膜の膜厚方向の膜抵抗を算出した。得られた膜抵抗の値と膜厚から、高分子電解質膜の膜厚方向のプロトン伝導度を算出した。なお、高分子電解質膜の両側に接触させる溶液としては、1mol/Lの希硫酸を用いた。
【0091】
フェントン試験:
(工程1)測定に供する高分子電解質膜4mgを、塩化鉄(II)を用いた鉄イオンを含む水溶液2mLに1時間浸漬させたのち、該高分子電解質膜を1hPa以下の圧力で約1時間静置し、水分量が高分子電解質膜に対して10重量に至るまで乾燥させ、該高分子電解質膜における鉄イオンの存在量が、スルホ基の個数100に対して鉄イオンの個数がおよそ20となるように調整した。該高分子電解質膜中の鉄イオン濃度を調整するにあたっては、鉄イオンを含む水溶液の濃度を調整することで行った。
(工程2)前記工程1を経た該高分子電解質膜を0.3重量%過酸化水素水に浸漬させ、該高分子電解質膜を50℃大気圧下にて約30分静置し、水分量が10重量に至るまで乾燥させた。
(工程2)の操作を3度繰り返し実施したのち、イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量を測定した。
【0092】
[高分子電解質膜中の鉄の量の測定]
高分子電解質膜に吸着した鉄量について、下記条件で誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP発光)による塩化鉄(II)溶液の測定を行い、浸漬前後での塩化鉄(II)溶液のFe量から、高分子電解質膜に吸着したFe量を算出した。
(ICP発光測定条件)
測定装置: エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、SPS 3000
測定波長: 238.28nm
【0093】
[イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量の測定]
イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量(イオン交換基を有するセグメントMw)は、以下の方法により求めた。
(条件1)
高分子電解質膜を4mgに対して、DMSOを8mLと、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイドを含むメタノール溶液10μLとを混合し、生じた混合物を100℃にて2時間加熱し、得られた高分子電解質溶液をGPCで測定して求めた。なお、GPCの分析条件は上記分子量の測定と同一である。
(条件2)
高分子電解質膜を1mgに対して、DMSOを2mLと、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロオキサイドを含むメタノール溶液15μLとを混合し、生じた混合物を100℃にて2時間加熱し、得られた高分子電解質溶液をGPCで測定して求めた。なお、GPCの分析条件は上記分子量の測定と同一である。
[フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率]
フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率は下式より求められる。
フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率=(フェントン試験後イオン交換基を有するセグメントMw/イオン交換基を有するセグメントMw)×100
【0094】
<合成例1>
下記構造式(A)で示される4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)を、特開2007−270118実施例1記載の方法により合成した。

【0095】
<実施例1>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン14.3g(57.0mmol)、炭酸カリウム11.8g(85.5mmol)、N−メチルピロリドン103g、トルエン51gを加えた。バス温160℃で2.5時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、得られた混合物を室温まで放冷し、これに4,4’−ジクロロジフェニルスルホン20.0g(69.7mmol)を加えて混合物を得た。バス温を180℃に上げ、7時間保温下に前記混合物を撹拌した。放冷後、反応液を、メタノール1030gと35重量%塩酸202gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をN−メチルピロリドン100gに溶解し、得られた溶液をメタノール1000gと35重量%塩酸200gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥して下記式(B)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体28.4gを得た。
GPC分子量: Mn=4800、Mw=8500

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0096】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル1.69g(7.74mmol)、N−メチルピロリドン200gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に冷却し、2,2’−ビピリジル1.45g(9.28mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(B)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体3.35g、N−メチルピロリドン240gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末3.04g(46.4mmol)、メタンスルホン酸1重量部とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.855g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)20.0g(45.9mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間撹拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で7.5時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を13重量%塩酸2800gに投入し、室温で30分間撹拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを13重量%塩酸2800gに加え、室温で30分間撹拌し、その後、濾過した。捕集された固体をイオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水600gと、メタノール700gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(C)20.4gを得た。
【0097】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(C)19.7g、イオン交換水44.2g、無水臭化リチウム13.3g(153mmol)及びN−メチルピロリドン295gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を13重量%塩酸2750gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、これをメタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液983gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を2回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるセグメントとを含むポリマー(D)12.2gを得た。
得られたポリマー(D)1.0gをN―メチルピロリドン13gに溶解し、ポリマー溶液を調製した。得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、13重量%塩酸、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約20μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するセグメントMw(条件1): 113000
イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体Mw:8500
共重合体Mw: 400000
IEC(meq/g): 4.5
プロトン伝導度(S/cm): 0.17
鉄イオンを含む水溶液の濃度: 1.5mmol/L
フェントン試験後イオン交換基を有するセグメントMw(条件1): 82000
フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率: 73%
【0098】
<実施例2>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル10.2g(54.7mmol)、炭酸カリウム8.32g(60.2mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド96g、トルエン50gを加えた。バス温155℃で2.5時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、得られた混合物を室温まで放冷し、これに4,4’−ジクロロジフェニルスルホン22.0g(76.6mmol)を加えて混合物を得た。バス温を160℃に上げ、14時間保温下に前記混合物を撹拌した。放冷後、反応液を、メタノール1000gと35重量%塩酸200gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物27.2gをN,N−ジメチルアセトアミド97gに溶解し、不溶物を濾過により除去した後、濾液をメタノール1100gと35重量%塩酸100gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥し、下記式(E)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導するための前駆体25.9gを得た。
GPC分子量: Mn=1700、Mw=3200

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0099】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル2.12g(9.71mmol)、N−メチルピロリドン96gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.82g(11.7mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(E)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体4.02g、N−メチルピロリドン384gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末3.81g(58.2mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液1.05g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)24.0g(45.9mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間撹拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、13重量%塩酸3360gに投入し、室温で30分間撹拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを13重量%塩酸3360gに加え、室温で30分間撹拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水840gと、メタノール790gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(F)23.9gを得た。
【0100】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(F)23.9g、イオン交換水47.8g、無水臭化リチウム15.9g(183mmol)及びN−メチルピロリドン478gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を13重量%塩酸3340gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液2390gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し、濾過する洗浄操作を、5回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるセグメントとを含むポリマー(G)17.3gを得た。
得られたポリマー(G)1.0gをN―メチルピロリドン16gに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約20μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するセグメントMw(条件1): 71000
イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体Mw:3200
共重合体Mw: 680000
IEC(meq/g): 4.6
プロトン伝導度(S/cm): 0.16
鉄イオンを含む水溶液の濃度: 1.5mmol/L
フェントン試験後イオン交換基を有するセグメントMw(条件1): 59000
フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率: 83%
【0101】
<実施例3>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン18.5g(80.9mmol)、炭酸カリウム12.3g(89.0mmol)、N−メチルピロリドン102g、トルエン51gを加えた。バス温160℃で2時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、2,6−ジクロロベンゾニトリル15.0g(87.2mmol)を加えて混合物を得た。バス温を170℃に上げ、15時間保温下に前記混合物を撹拌した。放冷後、反応液を、メタノール1000gと35重量%塩酸200gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をテトラヒドロフラン101gに溶解し、メタノール1000gと35重量%塩酸50gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、メタノール1000gで洗浄し、乾燥し、下記式(H)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導するための前駆体25.4gを得た。
GPC分子量: Mn=7800、Mw=15900

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0102】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル1.28g(5.86mmol)、N−メチルピロリドン105gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.10g(7.03mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(H)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体2.51g、N−メチルピロリドン195gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末2.30g(35.1mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.636g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)15.0g(28.7mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間撹拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、13重量%塩酸2100gに投入し、室温で30分間撹拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを13重量%塩酸2100gに加え、室温で30分間撹拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水525gと、メタノール495gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(I)15.4gを得た。
【0103】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(I)15.4g、イオン交換水38.4g、無水臭化リチウム9.95g(115mmol)及びN−メチルピロリドン384gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を13重量%塩酸2150gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液1540gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を、3回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるセグメントとを含むポリマー(J)9.89gを得た。
得られたポリマー(J)1.0gをN―メチルピロリドン16gに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約20μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するセグメントMw(条件1): 213000
イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体Mw:15900
共重合体Mw: 765000
IEC(meq/g): 4.6
プロトン伝導度(S/cm): 0.18
鉄イオンを含む水溶液の濃度: 1.5mmol/L
フェントン試験後イオン交換基を有するセグメントMw(条件1): 136000
フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率: 64%
【0104】
<実施例4>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン16.3g(48.4mmol)、炭酸カリウム7.35g(53.2mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド100g、トルエン50gを加えた。バス温160℃で3時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、4,4’−ジクロロベンゾフェノン17.0g(67.7mmol)を加えて混合物を得た。バス温を175℃に上げ、14時間保温下に前記混合物を撹拌した。放冷後、反応液を、メタノール1100gと35重量%塩酸100gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をN,N−ジメチルホルムアミド100gに溶解し、メタノール1100gと35重量%塩酸100gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、メタノール1000gで洗浄し、乾燥し下記式(K)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導するための前駆体25.7gを得た。
GPC分子量: Mn=1700、Mw=3100

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0105】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル2.12g(9.71mmol)、N−メチルピロリドン96gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.82g(11.7mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(K)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体4.02g、N−メチルピロリドン384gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末3.81g(58.2mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液1.05g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)24.0g(45.9mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間撹拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、13重量%塩酸3360gに投入し、室温で30分間撹拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを13重量%塩酸3360gに加え、室温で30分間撹拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水840gと、メタノール790gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(L)24.3gを得た。
【0106】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(L)24.3g、イオン交換水48.7g、無水臭化リチウム15.9g(183mmol)及びN−メチルピロリドン487gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。 得られたポリマー溶液を13重量%塩酸3400gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液2430gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を、4回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるセグメントとを含むポリマー(M)17.0gを得た。
得られたポリマー(M)1.0gをジメチルスルホキシド19gに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、100℃で乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約10μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するセグメントMw(条件2): 71000
イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体Mw:3100
共重合体Mw: 819000
IEC(meq/g): 4.8
プロトン伝導度(S/cm): 0.16
鉄イオンを含む水溶液の濃度: 1.5mmmol/L
フェントン試験後イオン交換基を有するセグメントMw(条件2): 60000
フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率: 85%
【0107】
<実施例5>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン14.8g(42.3mmol)、炭酸カリウム6.43g(46.5mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド95g、トルエン48gを加えた。バス温155℃で3時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン17.0g(59.2mmol)を加えて混合物を得た。バス温を160℃に上げ、14時間保温下に前記混合物を撹拌した。放冷後、反応液を、メタノール1000gと35重量%塩酸200gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をN,N−ジメチルホルムアミド95gに溶解し、メタノール1100gと35重量%塩酸100gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、メタノール1000gで洗浄し、乾燥し、下記式(N)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導するための前駆体25.4gを得た。
GPC分子量: Mn=2000、Mw=3500

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0108】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル3.41g(15.6mmol)、N−メチルピロリドン200gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル2.93g(18.7mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(N)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体3.35g、N−メチルピロリドン240gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末3.06g(46.9mmol)、メタンスルホン酸1重量部とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.863g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)20.0g(38.2mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間撹拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で5時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、13重量%塩酸2800gに投入し、室温で30分間撹拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを13重量%塩酸2800gに加え、室温で30分間撹拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水600gと、メタノール700gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(O)20.5gを得た。
【0109】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(O)19.7g、イオン交換水44.2g、無水臭化リチウム13.3g(153mmol)及びN−メチルピロリドン295gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を13重量%塩酸2751gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液983gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を、4回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるセグメントとを含むポリマー(P)15.1gを得た。
得られたポリマー(P)1.0gをN―メチルピロリドン16gに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約20μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するセグメントMw(条件2): 75000
イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体Mw:3500
共重合体Mw: 683000
IEC(meq/g): 4.7
プロトン伝導度(S/cm): 0.19
鉄イオンを含む水溶液の濃度: 1.5mmol/L
フェントン試験後イオン交換基を有するセグメントMw(条件2): 68000
フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率: 90%
【0110】
<比較例1>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、2,6−ジクロロベンゾニトリル23.0g(134mmol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン42.0g(125mmol)、炭酸カリウム22.5g(163mmol)、スルホラン202g、トルエン69gを加えた。140℃で5時間トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、得られた混合物を200℃に昇温し、これを5時間保温下に撹拌した。放冷後、4,4’−ジクロロベンゾフェノン4.29g(25.0mmol)を加えて混合物を得た後、200℃に昇温し、これを5時間保温下に撹拌した。放冷後、反応液を、大過剰の、メタノール10重量部と35重量%塩酸10重量部との混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物49gをテトラヒドロフラン441gに溶解し、不溶物を濾過により除去した後、濾液を大過剰のメタノールに加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、6重量%塩酸、イオン交換水で洗浄し、乾燥し、下記式(Q)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導するための前駆体46.2gを得た。
GPC分子量: Mn=15200、Mw=34300

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0111】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル1.73g(7.91mmol)、N−メチルピロリドン130gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.30g(8.30mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(Q)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体1.67g、N−メチルピロリドン150gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末1.94g(29.7mmol)、メタンスルホン酸1重量部とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.228g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)10.0g(19.1mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間撹拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、13重量%塩酸1400gに投入し、室温で30分間撹拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを13重量%塩酸1400gに加え、室温で30分間撹拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水350gと、メタノール330gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(R)9.95gを得た。
【0112】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(R)9.95g、イオン交換水22.4g、無水臭化リチウム6.64g(76.4mmol)及びN−メチルピロリドン249gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を13重量%塩酸1390gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液995gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を、3回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるセグメントとを含むポリマー(S)5.44gを得た。
得られたポリマー(S)1.0gをジメチルスルホキシド24gに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約20μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するセグメントMw(条件1): 282000
イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体Mw:34300
共重合体Mw: 930000
IEC(meq/g): 4.2
プロトン伝導度(S/cm): 0.17
鉄イオンを含む水溶液の濃度: 1.5mmol/L
フェントン試験後イオン交換基を有するセグメントMw(条件1): 146000
フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率: 52%
【0113】
<比較例2>
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、アルゴン雰囲気下、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン67.3g(200mmol)、4,4’−ジクロロベンゾフェノン60.3g(240mmol)、炭酸カリウム71.9g(520mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド300mL、トルエン150mLを加え、140℃で8時間、生成した水とトルエンを留去しながら撹拌して混合物を得た。バス温を158℃に上げ、10時間保温下に前記混合物を撹拌した。放冷後、4,4’−ジクロロベンゾフェノン10.0g(40mmol)を加え、バス温158℃でさらに10時間保温撹拌した。放冷後、N,N−ジメチルホルムアミド300mLを加え、濾過により不溶物を濾別した後、反応液をメタノール4000mLに加え、析出した沈殿を濾過により捕集した。得られた沈殿物にテトラヒドロフラン300mLを加え、溶解させた後、メタノール4000mLに加え、析出した沈殿を濾過し、イオン交換水で洗浄し、乾燥し、下記式(T)で表されるポリマー109gを得た。
GPC分子量: Mn=3900、Mw=6600

(nは繰り返し単位数を表す。)
【0114】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル1.91g(8.72mmol)、N−メチルピロリドン150gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.43g(9.16mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに比較例2に記載の上記式(T)で表されるポリマー6.77g、N−メチルピロリドン150gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末2.14g(32.7mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.25g、及び、4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)10.0g(19.1mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間撹拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で5時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、6mol/L塩酸1400gに投入し、室温で30分間撹拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを6mol/L塩酸1400gに加え、室温で30分間撹拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水350gと、メタノール330gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー(U)15.0gを得た。
【0115】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー(U)15.0g、イオン交換水16.9g、無水臭化リチウム6.64g(76.4mmol)及びN−メチルピロリドン376gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。 得られたポリマー溶液を6mol/L塩酸2103gに投入し、1時間撹拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、メタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液1502gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し濾過する洗浄操作を、4回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式


で示される繰り返し単位と、下記式

(nは繰り返し単位数を表す。)

で示されるセグメントとを含むポリマー(V)12.7gを得た。
得られたポリマー(V)1.0gをジメチルスルホキシドに溶解し、ポリマー溶液を調製した。その後、得られたポリマー溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、6重量%塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、膜厚約20μmの高分子電解質膜を作製した。

イオン交換基を有するセグメントMw(条件2): 32000
イオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体Mw:6600
共重合体Mw: 662000
IEC(meq/g): 2.9
プロトン伝導度(S/cm): 0.12
鉄イオンを含む水溶液の濃度: 1.5mmol/L
フェントン試験後イオン交換基を有するセグメントMw(条件2): 32000
フェントン試験イオン交換基を有するセグメントMw維持率: 100%
【0116】
実施例1〜5及び比較例1、2の結果を表1にまとめた。
【0117】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換基を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとをそれぞれ複数個有するポリアリーレン系共重合体であって、
イオン交換基を有するセグメントの少なくとも一個がポリアリーレン構造を含むこと、 イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜250,000であること、及び
ポリアリーレン系共重合体のイオン交換容量が3.0meq/g以上であること、
を特徴とするポリアリーレン系共重合体。
【請求項2】
前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの少なくとも一個が、電子吸引性基を有し、且つ、主鎖にエーテル結合及びチオエーテル結合からなる群より選ばれる1種以上を有することを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレン系共重合体。
【請求項3】
前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの主鎖に含まれる、エーテル結合及びチオエーテル結合を分解した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜250,000であることを特徴とする請求項2に記載のポリアリーレン系共重合体。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体であって、2200重量部のジメチルスルホキシドと、2〜13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の、前記ポリアリーレン系共重合体とを混合して、混合したポリアリーレン系共重合体の全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜250,000であることを特徴とするポリアリーレン系共重合体。
【請求項5】
前記イオン交換基を有するセグメントのポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜160,000であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。
【請求項6】
前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの主鎖に含まれる、エーテル結合及びチオエーテル結合を分解した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜160,000であることを特徴とする請求項2、4および5いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。
【請求項7】
請求項1〜3、5および6いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体であって、2200重量部のジメチルスルホキシドと、2〜13重量部の、25重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを含むメタノール溶液と、1重量部の、前記ポリアリーレン系共重合体とを混合して、混合したポリアリーレン系共重合体の全てまたは実質的に全てが溶解した溶液を得、その溶液を100℃にて2時間加熱した後に測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜160,000であることを特徴とするポリアリーレン系共重合体。
【請求項8】
前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの少なくとも一個が、下記式(1)で表される構造単位を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、Ar1は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。該アリーレン基は−(W2−A)で表される基及びW3で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基以外の基を置換基として有していてもよい。W1及びW2は、それぞれ独立に2価の電子吸引性の基を表す。W3は、1価の電子吸引性の基を表す。Aは、水素原子、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。X1は−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。aは0又は1の整数を表し、b及びcはそれぞれ独立に0以上の整数を表す。a+b+cは1以上である。なお、bが2以上である場合、複数存在するW2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、複数存在するAは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。cが2以上である場合、複数存在するW3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記式(1)で表される構造単位が、下記式(2)で示される構造単位であることを特徴とする請求項8に記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、W1、W2、W3、X1及びAは前記式(1)中のものと同じである。R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。dは0又は1の整数を表し、e、f及びgはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。d+e+fは1〜5の整数であり、e+f+gは0〜4の整数である。なお、eが2以上である場合、複数存在するW2は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、複数存在するAは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。fが2以上である場合、複数存在するW3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。gが2以上である場合、複数存在するR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項10】
イオン交換容量が、3.5〜5.5meq/gであることを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。
【請求項11】
前記イオン交換基を実質的に有しないセグメントの少なくとも一個が、下記式(3)で表される構造単位を含むことを特徴とする請求項1〜10いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、Ar2は2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。Xは−O−で示される基又は−S−で示される基を表す。)
【請求項12】
前記イオン交換基を有するセグメントの少なくとも一個が、下記式(4)で表される構造を含むことを特徴とする請求項1〜11いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、Ar3はイオン交換基を有する2価の芳香族基を表し、該2価の芳香族基は、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基及びシアノ基からなる群より選ばれる1種以上の基を置換基として有していてもよい。pは1以上の整数を表す。pが2以上である場合、複数存在するAr3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項13】
前記Ar3で表される芳香族基の、主鎖を構成する芳香族環は、これに直接結合している少なくとも一つのイオン交換基を有することを特徴とする請求項12に記載のポリアリーレン系共重合体。
【請求項14】
前記イオン交換基を有するセグメントが有するイオン交換基がスルホ基、ホスホン基、カルボキシル基、スルホンイミド基からなる群から選ばれる1種以上の酸基であることを特徴とする請求項1〜13いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。
【請求項15】
前記式(4)で表される構造が、下記式(5)で表される構造であることを特徴とする請求項12〜14いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体。

(式中、Rは、フッ素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキルスルホニル基又はシアノ基を表す。kは0〜3の整数を表し、qは1又は2の整数を表し、k+qは1〜4の整数である。なお、kが2または3である場合、複数あるRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。pは前記と同じ意味を表す。)
【請求項16】
請求項1〜15いずれかに記載のポリアリーレン系共重合体を含むことを特徴とする高分子電解質。
【請求項17】
請求項16に記載の高分子電解質を含むことを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項18】
請求項16に記載の高分子電解質と、多孔質基材とを含むことを特徴とする高分子電解質複合膜。
【請求項19】
請求項16に記載の高分子電解質と、触媒成分とを含むことを特徴とする触媒組成物。
【請求項20】
請求項17に記載の高分子電解質膜、請求項18に記載の高分子電解質複合膜及び請求項19に記載の触媒組成物から選ばれる少なくとも1種を有することを特徴とする膜電極接合体。
【請求項21】
請求項20に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする高分子電解質形燃料電池。

【公開番号】特開2011−102388(P2011−102388A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232303(P2010−232303)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】