説明

ポリアルキレングリコールの製造方法

【課題】 ポリウレタン原料として用いた際に影響を及ぼす可能性のあるポリアルキレングリコール製造用活性種及び/又は該活性種の原材料を効率よく除去・回収し、それらの残存量の低いポリアルキレングリコールを効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも下記の(A)〜(D)工程を経てなるポリアルキレングリコールの製造方法。
(A)工程;イミノ基含有ホスファゼニウム塩と活性水素化合物によりポリアルキレングリコール製造用活性種を調製した後、アルキレンオキシドの重合反応を行う工程。
(B)工程;(A)工程により得られたポリアルキレングリコール100重量部に対して、0.5〜12重量部の水性媒体と、(A)工程で用いたイミノ含有ホスファゼニウム塩1モルに対して0.5モル以上3.5モル未満の2価以上の無機酸とを混合する工程。
(C)工程;(B)工程で得られた混合物から水性媒体を除去し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を析出し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を分離する工程。
(D)工程;(C)工程で得られたポリアルキレングリコールに固体酸を接触させた後、固体酸を分離する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミノ基含有ホスファゼニウム塩と活性水素化合物よりなる活性種を用いるポリアルキレングリコールの製造方法に関するものであり、さらに詳細には、イミノ基含有ホスファゼニウム塩よりなるポリアルキレングリコール製造用活性種を用いアルキレンオキシドの重合反応の後、2価以上の無機酸、さらに固体酸で処理を行うことにより、ポリアルキレングリコール重合活性種及び/又はその原材料であるイミノ基含有ホスファゼニウム塩を効率よく分離・回収することにより、重合活性種及び/又はその原材料の残存量の低いポリアルキレングリコールを効率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコールは、ポリウレタンや界面活性剤の原料として有用であり、工業的規模で製造されている。その一般的な製造方法としては、水酸化カリウム(以下、KOHと記すこともある。)を触媒として用い多官能の活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加重合する方法が知られており、該製造方法は、付加重合により粗製ポリアルキレングリコールを製造する重合工程と、粗製ポリアルキレングリコールに酸を添加しKOHを中和した後、脱水乾燥して析出する塩をろ過により除去する精製工程からなるものである。
【0003】
しかし、KOH触媒を用いポリアルキレングリコールを製造した場合、ポリアルキレングリコールの分子量の増加とともに末端に不飽和基を持つモノオールが副生することが知られており、該モノオールを多量に含有するポリアルキレングリコールをポリウレタン原料として用いた場合、得られるポリウレタンは、硬度や耐久性が低いものとなり、その使用は制限されたものとなる。
【0004】
そこで、高分子量かつモノオール量の少ないポリアルキレングリコールを製造する方法が種々検討され、特定のホスファゼン化合物を触媒に用いる方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。そして、このホスファゼン化合物を触媒として用い、ポリアルキレングリコールを生産した場合、その生産性は大幅に向上する反面、このホスファゼン化合物は高価であることに加え、ウレタン化反応に影響を与えることから、得られたポリアルキレングリコールをポリウレタン原料として用いるためには、触媒の除去が必要であった。
【0005】
その際の触媒除去の方法としては、1)粗ポリアルキレングリコールに酸化合物を添加して触媒を中和後、吸着剤で処理する方法、2)粗ポリアルキレングリコールを水洗後、水相を分離する方法、3)粗ポリアルキレングリコールに水を加えた後、イオン交換樹脂と接触させる方法、等(例えば特許文献2参照。)が提案され、なかでも、大型分子であるホスファゼン化合物の除去には、特定の細孔径と比表面積を持つ固体酸を吸着剤として使用すること(例えば特許文献3参照。)、が提案されている。触媒の回収方法としては、粗ポリアルキレングリコールを酸化合物と接触させ、脱水乾燥後析出するホスファゼニウム化合物を分離回収する方法(例えば特許文献4参照。)等が提案されている。
【0006】
一方、前記ホスファゼン化合物よりコンパクトで合成が容易なイミノ基含有ホスファゼニウム塩をポリアルキレングリコール製造触媒として使用する方法(例えば特許文献5参照。)、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−77289号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献2】特開平11−106500号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献3】特開2001−106780号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献4】特開平10−330475号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献5】特開2010−150514号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献5には、触媒の分離、回収方法については言及されていない。また、イミノ基含有ホスファゼニウム塩は塩基性のため、ポリアルキレングリコール中に残存すると、ポリウレタンとした際の成形性や物性に悪影響を及ぼす恐れがある。また、イミノ基含有ホスファゼニウム塩は高価である。これらのことから、アルキレンオキシドの重合反応により得た粗製ポリアルキレングリコールからイミノ基含有ホスファゼニウム塩を効率よく分離・回収する、ポリアルキレングリコールの製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、イミノ基含有ホスファゼニウム塩よりなる活性種を用いてポリアルキレングリコールを製造するに際し、重合後のポリアルキレングリコールを特定条件で特定の無機酸と混合し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を分離・回収した後に、さらに固体酸で処理することにより、イミノ基含有ホスファゼニウム塩を効率よく分離・回収できるとともに、重合活性種及び/又は該重合活性種の原材料の残存量の低いポリアルキレングリコールを効率よく製造する方法となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、少なくとも下記の(A)〜(D)工程を経てなることを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法に関するものである。
(A)工程;下記一般式(1)に示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩と活性水素化合物によりポリアルキレングリコール製造用活性種を調製した後、アルキレンオキシドの重合反応を行う工程。
【0011】
【化1】

(ここで、R、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、また、RとRが互いに結合して環構造を形成していても良いし、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。Xは、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。)
(B)工程;(A)工程により得られたポリアルキレングリコール100重量部に対して、0.5〜12重量部の水性媒体と、(A)工程で用いたイミノ含有ホスファゼニウム塩1モルに対して0.5モル以上3.5モル未満の2価以上の無機酸とを混合する工程。
(C)工程;(B)工程で得られた混合物から水性媒体を除去し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を析出し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を分離する工程。
(D)工程;(C)工程で得られたポリアルキレングリコールに固体酸を接触させた後、固体酸を分離する工程。
【0012】
以下に、本発明に関して詳細に説明する。
【0013】
本発明は、少なくとも上記した(A)〜(D)工程を経てなることにより、イミノ基含有ホスファゼニウム塩を効率よく分離・回収できるとともに、重合活性種及び/又は該重合活性種の原材料の残存量の低いポリアルキレングリコールを効率よく製造する方法に関するものである。
【0014】
該(A)工程は、アルキレンオキシドの重合反応を行いポリアルキレングリコールを製造する工程である。その際のポリアルキレングリコール製造用活性種は、上記一般式(1)で示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩と活性水素含有化合物により調製されるものである。
【0015】
一般式(1)に示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩において、R、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R、Rを構成する炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、ビニル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ヘプチル基、シクロヘプチル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、シクロデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基等を挙げることができる。また、RとRは、互いに結合して環構造を形成していても良く、RとRが互いに結合し環構造を形成した場合としては、例えばピロリジニル基、ピロリル基、ピペリジニル基、インドリル基、イソインドリル基等を挙げることができる。さらに、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良く、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成している場合としては、例えば、一方の置換基がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基となって、他方の置換基と互いに結合し環構造を形成している場合を挙げることができる。そして、R、Rとしては、原料であるグアニジン類の入手が容易という点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましい。
【0016】
一般式(1)に示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩において、Xは、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンであり、Xを構成するアルコキシアニオンとしては、例えばメトキシアニオン、エトキシアニオン、n−プロポキシアニオン、イソプロポキシアニオン、n−ブトキシアニオン、イソブトキシアニオン、t−ブトキシアニオン等が挙げられ、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオンとしては、例えばアセトキシアニオン、エチルカルボキシアニオン、n−プロピルカルボキシアニオン、イソプロピルカルボキシアニオン、n−ブチルカルボキシアニオン、イソブチルカルボキシアニオン、t−ブチルカルボキシアニオン等が挙げられる。その中でも、該イミノ基含有ホスファゼニウム塩の塩基性が強く、得られるポリアルキレングリコール製造用活性種の重合活性が高くなることから、Xとしては、ヒドロキシアニオンが好ましい。
【0017】
一般式(1)に示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩は、如何なる方法により入手することも可能であり、例えばイミノ基含有ホスファゼニウム塩化物塩、イミノ基含有ホスファゼニウムヨウ化物塩又はイミノ基含有ホスファゼニウム臭化物塩を塩基性化合物又はイオン交換樹脂を用いてイオン交換する方法を挙げることができ、塩基性化合物としては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素化物等を挙げることができ、その中でも、入手が容易で塩基性が強くイオン交換が容易に進行することから、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0018】
また、イミノ基含有ホスファゼニウム塩化物塩、イミノ基含有ホスファゼニウム臭化物塩又はイミノ基含有ホスファゼニウムヨウ化物塩の製造方法としては、例えば五塩化リンと下記一般式(2)で示されるグアニジン類を反応する方法を挙げることができる。
【0019】
【化2】

(ここで、R及びRは、上記一般式(1)中のR及びRと同じ定義である。)
そして、一般式(1)に示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩としては、例えばテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムメトキシド、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムエトキシド、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムカルボキシド、テトラキス(テトラエチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(テトラエチルグアニジノ)ホスファゼニウムメトキシド、テトラキス(テトラエチルグアニジノ)ホスファゼニウムエトキシド、テトラキス(テトラエチルグアニジノ)ホスファゼニウムカルボキシド等を例示でき、なかでも、容易に製造でき、アルキレンオキシドの重合反応において高い活性を有する活性種を提供できることから、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドが好ましい。
【0020】
該(A)工程において、ポリアルキレングリコール製造用活性種を調製する際に用いられる活性水素含有化合物としては、分子中に活性水素基を有する化合物であればよく、例えばヒドロキシル化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、チオール化合物等を挙げることができ、より具体的には、例えば水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークローズ、グルコース等のヒドロキシ化合物;エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン等のアミン化合物;安息香酸、アジピン酸等のカルボン酸化合物;2−ナフトール、ビスフェノール等のフェノール化合物;エタンジチオール、ブタンジチオール等のチオール化合物等を挙げることができる。これらは、用途に応じて適宜選択できる。例えば、硬質フォーム用のポリアルキレングリコールを製造する際には、例えばペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ、エチレンジアミン等を用いることが好ましく、軟質フォーム用のポリアルキレングリコールを製造する際には、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン等を用いるのが好ましい。
【0021】
また、活性水素含有化合物として、水酸基を有するポリアルキレングリコールを用いることも可能であり、例えばポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールグリセリンエーテル等を挙げることができる。この際に使用するポリアルキレングリコールの分子量に特に制限はなく、その中でも、低粘度で流動性に優れ、ハンドリングが容易な分子量200〜3000のポリアルキレングリコールであることが望ましい。
【0022】
これら活性水素含有化合物は、単独で用いても良いし、数種類を混合して用いても良い。
【0023】
該(A)工程において、ポリアルキレングリコール製造用活性種を調製する際の一般式(1)で示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩と活性水素含有化合物の割合は任意であり、その中でも、より容易に高分子量を有するポリアルキレングリコールを製造することが可能となることから、該活性水素化合物1モルに対し、一般式(1)で示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩1×10−4〜1×10−1モルで用いることが好ましく、特に5×10−3〜5×10−2モルの範囲であることが好ましい。
【0024】
また、該(A)工程においては、一般式(1)で示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩と該活性水素含有化合物により、イミノ基含有ホスファゼニウムカチオンと活性水素含有化合物のアニオンから構成されるポリアルキレングリコール製造用活性種を調製するものであり、その際の調製条件は任意である。なかでも高純度のポリアルキレングリコール製造用活性種を調製することが可能となることから、溶媒や副生物である水を効率よく除去することが望ましく、特に1.3kPa以下の減圧下、60℃以上の温度で調製を行うことが好ましい。
【0025】
該(A)工程において用いるアルキレンオキシドとしては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシド又はシクロヘキセンオキシド等のエポキシ化合物を挙げることができる。これらのうち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド又はスチレンオキシドが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドがより好ましい。また、該アルキレンオキシドは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。2種類以上のアルキレンオキシドを併用する場合、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が特に好ましい。プロピレンオキシド、エチレンオキシドを併用する場合には、例えば、プロピレンオキシドとエチレンオキシドを同時に添加する方法、プロピレンオキシドの次にエチレンオキシドを添加する方法、又はプロピレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシドと繰り返して添加する方法等をとることができる。このうち、プロピレンオキシドの重合反応の後、エチレンオキシドを添加しさらに重合する方法が好ましい。
【0026】
そして、該(A)工程におけるアルキレンオキシドの重合反応の際の反応温度、反応圧力は任意に設定できる。なかでも、重合の効率、生産性の観点から、反応温度は、40〜130℃の範囲であることが好ましく、特に80〜120℃の範囲が好ましい。同様に、反応圧力は、0.05〜1.0MPaであることが好ましく、特に0.1〜0.6MPaであることが好ましい。
【0027】
該(A)工程によりポリアルキレングリコールを得ることができ、該ポリアルキレングリコールは、粗製ポリアルキレングリコールであり、一般式(1)で示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩、ポリアルキレングリコール製造用活性種を多量に含有するものである。
【0028】
本発明における(B)工程は、(A)工程により得られたポリアルキレングリコール100重量部に対して0.5〜10重量部の水性媒体と、該(A)工程において用いた該一般式(1)で示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩1モルに対して、0.5モル以上3.5モル未満の2価以上の無機酸とを混合する工程である。この混合工程により、ポリアルキレングリコール中に含まれるポリアルキレングリコール製造用活性種、イミノ基含有ホスファゼニウム塩の中和反応が進行し、ポリアルキレングリコールに不溶性を示すイミノ基含有ホスファゼニウム化合物となるものである。
【0029】
該二価以上の無機酸としては、例えばリン酸、亜リン酸、二リン酸、炭酸、硫酸、チオ硫酸、ホウ酸およびそれらの水溶液が挙げられ、中でも、中和反応が効率的に進行し、生成するイミノ基含有ホスファゼニウム化合物がポリアルキレングリコールに高い不溶性を示し析出・回収効率に優れることから、リン酸及び/又は硫酸、それら水溶液であることが好ましく、特に、後述する(D)工程において、固体酸への吸着性に優れるイミノ基含有ホスファゼニウム化合物となることからリン酸、その水溶液であることが好ましい。ここで、1価の無機酸又は有機酸を用いた場合、中和反応がうまく進行しない、中和反応により生成するイミノ基含有ホスファゼニウム化合物がポリアルキレングリコールに可溶性を示す、等が発生し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物としての析出・回収がうまく進行しなくなる。
【0030】
該2価以上の無機酸の添加量としては、該(A)工程において用いた上記一般式(1)で示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩1モルに対して0.5モル以上3.5モル未満であり、特に効率的な中和が可能となり、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物としての析出・回収効率に優れるものとなることから、0.5モル以上2.5モル以下であることが好ましい。ここで、2価以上の無機酸の添加量が0.5モル未満である場合、イミノ基含有ホスファゼニウム塩の中和が不十分となり、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の析出が困難となる。一方、2価以上の無機酸の使用量が3.5モル以上である場合、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の析出が困難となる,イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の析出が可能であっても非常に微細なものとなり回収が困難となる,最終的に得られるポリアルキレングリコールに酸が残留し、このようなポリアルキレングリコールをポリウレタンの原料として用いた場合、ウレタン化反応に悪影響を及ぼし、品質に劣るポリウレタンとなる,等の課題を有するものとなる。
【0031】
また、該(B)工程は、(A)工程により得られたポリアルキレングリコール100重量部に対して0.5〜12重量部の水性媒体、好ましくは3〜7重量部の水性媒体を混合するものである。ここで、水性媒体としては、例えば水、蒸留水、イオン交換水、工業用水、飲料水等を挙げることができ、多少の有機溶媒等を含有するものであってもよい。そして、水性媒体が0.5重量部未満である場合、中和反応の効率が低下し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物としての析出・回収がうまく進行しなくなる。一方、水性媒体が12重量部を超える場合、水性媒体の除去に長時間要し、効率が悪くなるばかりか、ポリアルキレングリコールに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0032】
該(B)工程における反応条件は、任意であり、中でも反応がより効率的に進行することから、反応温度としては、60〜110℃、特に70〜95℃であることが好ましい。また、反応時間としては、1〜4時間であることが好ましい。
【0033】
本発明における(C)工程は、(B)工程により得られた混合物から水性媒体を除去し、析出したイミノ基含有ホスファゼニウム化合物とポリアルキレングリコールとを分離する工程であり、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を回収する工程である。
【0034】
そして、該(C)工程においては、(B)工程により得られた混合物から水性媒体を除去することにより、ポリアルキレングリコールに不溶性を示すイミノ基含有ホスファゼニウム化合物が析出するものであり、水性媒体の除去方法としては通常一般的に用いられている方法を適用することが可能であり、その中でも効率的な除去が可能であることから減圧脱水を行うことが好ましい。その際の水性媒体としては、上記(B)工程に例示したものを挙げることができ、さらに中和反応の際の生成水をも挙げることができる。また、水性媒体の除去後のポリアルキレングリコール中の水性媒体の含有量としては、その後のイミノ基含有ホスファゼニウム化合物の析出・分離が可能であれば如何なるものでもよく、その中でもより効率的な分離が可能となることから、2500ppm以下であることが好ましく、特に1000ppm以下であることが好ましい。
【0035】
該(C)工程における該イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の除去方法としては、ポリアルキレングリコール中に析出したイミノ基含有ホスファゼニウム化合物の分離・回収が可能であれば如何なる方法を用いることも可能であり、例えば減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過、デカンテーション、遠心デンカンテーション等の方法を用いることが可能である。また、その際には、ケイソウ土、セルライトなどの濾過助剤を用いることも可能である。
【0036】
該(C)工程において得られるポリアルキレングリコールは、(B)工程により遊離したイミノ基含有ホスファゼニウム化合物を分離したものではあるが、まだ、若干のイミノ基含有ホスファゼニウム化合物を含有する粗製ポリアルキレングリコールとも言えるものである。ここでいう遊離したイミノ基含有ホスファゼニウム化合物とはあくまで(B)工程(中和反応)により生成するものであり、必ずしも上記一般式(1)で示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩及び/又はポリアルキレングリコール製造用活性種と一致するものではない。
【0037】
本発明における該(D)工程は、(C)工程により得られたポリアルキレングリコールに固体酸を接触させた後、固体酸を分離する工程である。
【0038】
そして、該(D)工程においては、(C)工程により得られたポリアルキレングリコールと固体酸を接触することにより、ポリアルキレングリコール中に残存するイミノ基含有ホスファゼニウム化合物を固体酸に吸着させ、該固体酸を分離することにより、よりイミノ基含有ホスファゼニウム化合物の残存量の低いポリアルキレングリコールとする工程である。
【0039】
この際の固体酸は、ポリアルキレングリコール中に残存するイミノ基含有ホスファゼニウム化合物を効率的に除去するために用いるものであり、比表面積が300〜1200m/g、且つ平均細孔直径が50〜100Åである固体酸が好ましい。そして、該固体酸としては、固体酸の範疇に属するものであれば如何なるものも用いることができ、例えば合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウム、活性白土、ゼオライト、酸性白土等が挙げられる。特に好ましく用いられる固体酸は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びこれらの混合物である。このような固体酸は、市販品として、(商品名)KW−600BUP−S(協和化学工業(株)製)、(商品名)KW−700PEL(協和化学工業(株)製)、(商品名)KW−700SEN−S(協和化学工業(株)製)、等を入手可能である。
【0040】
ここで、該固体酸の使用量に制限はなく、その中でも効率的な工程が可能となることからポリアルキレングリコール100重量部に対して、0.1〜3重量部が好ましく、特に0.5〜2重量部であることが好ましい。
【0041】
該(D)工程におけるポリアルキレングリコールと固体酸との接触方法としては任意であり、その際の温度としては、例えば60〜110℃、好ましくは70〜100℃を挙げることができる。また、接触時間としては、例えば0.5〜10時間、好ましくは1〜3時間を挙げることができる。
【0042】
該(D)工程におけるポリアルキレングリコールと固体酸とを接触させる際、水性媒体を共存させてもよい。この場合の水性媒体の量としては、ポリアルキレングリコール100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましい。また、水性媒体を使用した場合、ポリアルキレングリコールと固体酸とを接触させた後に減圧脱水してもよいし、固体酸を分離した後に減圧脱水してもよい。このときの減圧脱水条件に特に制限はなく、例えば80〜120℃、0.01〜5kPaで行うことができる。
【0043】
該(D)工程において、ポリアルキレングリコールと固体酸との分離方法は任意であり、例えば減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過、デカンテーション、遠心デンカンテーション等の方法を用いることが可能である。また、その際には、ケイソウ土、セルライトなどの濾過助剤を用いることも可能である。
【0044】
該(D)工程においては、ポリアルキレングリコールと固体酸とを接触させる際に過酸化物、アルデヒド等の発生を抑制するために酸化防止剤を存在させることが好ましく、その際の酸化防止剤の添加量としては、該ポリアルキレングリコール100重量部に対して、100〜2000ppmであることが好ましく、特に600〜1000ppmであることが好ましい。また、その際の酸化防止剤としては、例えばフェノール系化合物酸化防止剤、アミン系化合物酸化防止剤、亜リン酸エステル系化合物酸化防止剤、等が例示でき、具体的には、フェノール系化合物酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(以下BHTと略することもある。)、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(以下、BHAと略することもある。)、6−tert−ブチル−2,4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジーtert−ブチル−4−エチルフェノール、等があげられる。また、アミン系化合物酸化防止剤としては、n−ブチル−p−アミノフェノール、4,4−ジメチルジフェニルアミン、4,4−ジオクチルジフェニルアミン(以下DOAと略す。)、4,4−ビス−α,α’−ジメチルベンジルフェニルアミン等が挙げられる。これらの酸化防止剤は単独、もしくは2種類以上併用しても構わない。これらの酸化防止剤の中で好ましくは、BHT、BHA、DOAである。
【0045】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法は、上記(A)〜(D)工程を経てなるものであり、これら工程を経てなるものであれば本発明を逸脱しない限りにおいて如何なる付加工程を付随することも可能である。
【0046】
そして、本発明の製造方法によれば、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を効率よく回収することが可能となるとともに、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の残存量の低いポリアルキレングリコールを効率的に製造することが可能となる。そして、ポリアルキレングリコール中に残存するイミノ基含有ホスファゼニウム化合物は、ポリウレタン用材料として用いた際に、ポリイソシアネート化合物との反応に悪影響を及ぼす可能性が高く、ポリアルキレングリコールとしては、その残存量の低いものであることが好ましく、本発明の製造方法により得られるポリアルキレングリコールとしては、そのイミノ基含有ホスファゼニウム化合物の残存量が50ppm以下のものが好ましく、特に20ppm以下、さらに10ppm以下のポリアルキレングリコールとすることが好ましい。
【0047】
また、本発明の製造方法により得られるポリアルキレングリコールは、ポリイソシアネート化合物と反応しポリウレタンとした際の着色が少なく、反応制御が容易なポリアルキレングリコールとなることから、pH5.5〜8.0のポリアルキレングリコールとすることが好ましい。なお、ここでいうpHとは、例えばpH計(飽和カロメル電極はスリープ形)を用い、室温における2−プロパノール溶液(2−プロパノール/水容量比=100/60)により見掛けのpHとして測定することができる。
【0048】
さらに、本発明の製造方法により得られるポリアルキレングリコールとしては、水酸基価5〜500mgKOH/g、特に10〜100mgKOH/g、さらに15〜50mgKOH/gを有すものが好ましい。また、総不飽和度が0.05meq./g以下であるものが好ましく、加えて、分子量分布が1.1以下の狭いものであることが好ましい。また、このようなポリアルキレングリコールを効率的に容易に製造できるものである。
【0049】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法により得られるポリアルキレングリコールは、ポリウレタン原料、ポリエステル原料、界面活性剤原料、潤滑剤原料等に有用である。特に各種イソシアネート化合物と反応させることにより、断熱材等に使用される硬質フォームや、自動車のシート・クッション、寝具等に使用される軟質フォーム、接着剤、塗料、シーリング材、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーへの展開が期待される。
【発明の効果】
【0050】
本発明により、ポリウレタン原材料として期待される品質に優れ、重合活性種の残存量の低いポリアルキレングリコールを効率よく製造することが可能となった。
【実施例】
【0051】
以下に本発明の実施例を示し、本発明の態様を明らかにするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、得られたポリアルキレングリコールは以下に示す方法により評価した。
【0052】
〜ポリアルキレングリコール中の残存イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の測定〜
得られたポリアルキレングリコールをメスフラスコに秤量し、シクロヘキサノンを用いて希釈し、次いで微量全窒素分析装置(三菱化学製、(商品名)TN−100)を用い、ヒーター温度T1:600℃、T2:800℃、ガス流量O:500ml/min、O:200ml/minの条件で該溶液の窒素濃度(cとする。)を測定した。この際の窒素濃度から、下記の式により溶液中のイミノ基含有ホスファゼニウム化合物の濃度を算出した。
【0053】
ポリアルキレングリコール中の残存イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の残存量(重量%)=c/0.33
〜ポリアルキレングリコールのpH測定〜
JIS K 1557記載の測定方法に準拠し、ポリアルキレングリコールのpHは、pH計(飽和カロメル電極はスリープ形)を用い、室温における2−プロパノール水溶液(2−プロパノール/水容量比=100/60)での見掛けのpHを測定した。
【0054】
〜ポリアルキレングリコールの水酸基価および総不飽和度の測定〜
JIS K 1557記載の測定法に準拠し測定した。
【0055】
合成例1(イミノ基含有ホスファゼニウム塩の調製)
〜イミノ基含有ホスファゼニウム塩化物塩の合成〜
攪拌翼を付した500mlの4つ口フラスコを窒素雰囲気とし、五塩化リン11.5g(55mmol)とトルエン225mlを加え、−20℃で攪拌した。フラスコ内を−20℃に維持したまま、テトラメチルグアニジン65g(550mmol)を滴下し、−20℃で1時間攪拌を継続した。さらに、110℃に昇温し15時間攪拌を行った。得られた白色懸濁液を濾過し、濾物として白色固体を得た。この白色固体をアセトンに溶解し、濾過を行い、無色透明の濾液を得た。得られた濾液を濃縮し、目的とするテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドの粗生成物を白色固体として得た。
【0056】
得られた粗生成物をクロロホルムと水で分液抽出した。クロロホルム相を濃縮し、目的とするテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド25.5g(48.5mmol;収率88%)を白色固体として得た。
【0057】
〜イミノ基含有ホスファゼニウム塩の合成〜
磁気回転子を備えた300mlのシュレンクフラスコにテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド21g(40mmol)を加え、フラスコ内を窒素雰囲気下とした。そこへ水酸化カリウム2.2g(40mmol)、エタノール80mlを加え、室温中で1時間撹拌した。反応終了後に得られる白色固体を含む懸濁液を濾紙を付した漏斗を用い、減圧下にて濾過を行った。濾液側に目的とするテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド(一般式(1)におけるRがメチル基、Rがメチル基、Xがヒドロキシアニオンに相当するイミノ基含有ホスファゼニウム塩)のエタノール溶液が得られ、濾物側に副生塩である塩化カリウムが得られた。
【0058】
得られたテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド−エタノール溶液にイオン交換水80mlを加え、減圧下溶媒除去を行い、40mlになるまで濃縮し、さらにイオン交換水80mlを加え、減圧下溶媒除去を行い、40mlになるまで濃縮し、イミノ基含有ホスファゼニウム塩水溶液を得た。このイミノ基含有ホスファゼニウム塩の純度は99.6%、水溶液濃度は50重量%であった。
【0059】
実施例1
(A工程)
撹拌翼を備えた2リットルのオートクレーブに、合成例1により得られたイミノ基含有ホスファゼニウム塩水溶液(50重量%;テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド)4.0gおよび活性化水素化合物として3官能性のポリアルキレングリコール(三洋化成工業製、(商品名)サンニックスGP−1000;水酸基価160mgKOH/g)175g(175mmol)を加え、オートクレーブ内を窒素雰囲気下とし、内温を80℃とし、0.2kPaの減圧下で溶媒及び副生水の除去を行い、ポリアルキレングリコール製造用活性種の調製を行った。
【0060】
その後、内温を90℃とし、プロピレンオキシド880gを反応圧力0.3MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温90℃を維持しながら8時間開環重合反応を行った。次いで、0.2kPaの減圧下で残留プロピレンオキシドの除去を行った後、エチレンオキシド210gを反応圧力0.4MPa以下を保つように間欠的に供給しながら、内温90℃を維持しながら6時間開環重合反応を行った。そして0.2kPaの減圧下で残留エチレンオキシドの除去を行い、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体1200gを得た。
【0061】
(B工程)
窒素雰囲気下、得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体に対して5重量%に相当するイオン交換水、用いたテトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1molに相当するリン酸(3重量%の水溶液の形態)を添加し(その際の水分量はポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して7重量部であった。)、85℃で3時間の中和反応を行い、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物とした。
【0062】
(C工程)
中和反応終了後に、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(酸化防止剤)をポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体に対して750ppm添加し、昇温及び減圧をしながら脱水を開始し、最終的に120℃、5kPaの条件で3時間減圧脱水操作を行い、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を析出させ、さらに、窒素により減圧から大気圧状態にした。そして、5Aろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、保持粒子7μ)により加圧ろ過を行い、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の分離・回収を行った。
【0063】
回収したイミノ基含有ホスファゼニウム化合物100重量部に対し、ジエチルエーテル(和光純薬製試薬特級)300重量部を加え洗浄し、乾燥させた。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の回収率は71%と高いものであった。
【0064】
(D工程)
(C)工程により分離したポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して5重量部に相当するイオン交換水、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム((商品名)KW−700SEN−S;協和化学工業(株)製)1.5重量部を添加し、85℃で3時間撹拌した。その後、昇温及び減圧をしながら脱水を開始し、最終的に120℃、5kPaの条件で3時間減圧脱水操作を行った。加圧ろ過器によるろ過操作により、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Aと固体酸との分離操作を行った。
【0065】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Aは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.025meq./g、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は6ppm、pH6.8を有するものであった。その結果を表1に示す。
【0066】
実施例2
実施例1の(D)工程において、合成ケイ酸アルミニウム1.5重量部の代わりに、合成ケイ酸アルミニウム0.5重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を回収し、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Bの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の回収率は71%と高いものであった。その結果を表1に示す。
【0067】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Bは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./g、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は12ppm、pH6.9を有するものであった。その結果を表1に示す。
【0068】
実施例3
実施例1の(B)工程において、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1モルのリン酸を用いた代わりに、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して2.1molのリン酸を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を回収し、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Cの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の回収率は60%と高いものであった。その結果を表1に示す。
【0069】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Cは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./g、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は6.0ppm、pH6.9を有するものであった。その結果を表1に示す。
【0070】
実施例4
実施例1の(B)工程において、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1モルのリン酸を用いた代わりに、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して0.5molのリン酸を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を回収し、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Dの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の回収率は50%と高いものであった。その結果を表1に示す。
【0071】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Dは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./g、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は6.0ppm、pH7.2を有するものであった。その結果を表1に示す。
【0072】
比較例1
実施例1の(B)工程において、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1モルのリン酸を用いた代わりに、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して0.3molのリン酸を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Eの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の析出は起こらず、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物は回収できなかった。
【0073】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Eは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./g、pH6.9を有するものであったが、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は150.0ppmと非常に高いものであった。その結果を表2に示す。
【0074】
比較例2
実施例1の(B)工程において、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1モルのリン酸を用いた代わりに、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して3.5molのリン酸を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Fの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の析出は見られたが非常に微細なものであり、加圧ろ過の際のろ紙を通過し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物は回収できなかった。
【0075】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Fは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./g、pH6.6を有するものであったが、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は250.0ppmと非常に高いものであった。その結果を表2に示す。
【0076】
実施例5
実施例1の(B)工程において、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1モルのリン酸(3重量%の水溶液の形態)を用いた代わりに、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して2.5molに相当する硫酸(2重量%の水溶液の形態)を用い、(D)工程において、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム1.5重量部の代わりに、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム2.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を回収し、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Gの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の回収率は90%と高いものであった。その結果を表1に示す。
【0077】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Gは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./g、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は12.0ppm、pH5.8を有するものであった。その結果を表1に示す。
【0078】
比較例3
実施例1の(B)工程において、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1モルのリン酸(3重量%の水溶液の形態)を用いた代わりに、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して3.5molに相当する硫酸(2重量%の水溶液の形態)を用い、(D)工程において、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム1.5重量部の代わりに、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム2.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を回収し、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Hの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の回収率は80%と高いものであった。その結果を表2に示す。
【0079】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Hは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./gであったが、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は47.0ppm、pH4.0を有するものであった。その結果を表2に示す。
【0080】
比較例4
実施例1の(B)工程において、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1モルのリン酸(3重量%の水溶液の形態)を用いた代わりに、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して2.5molに相当する塩酸(1重量%の水溶液の形態)を用い、(D)工程において、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム1.5重量部の代わりに、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム2.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Iの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の析出は起こらず、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物は回収できなかった。
【0081】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Iは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./g、pH6.0を有するものであったが、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は200.0ppmと非常に高いものであった。その結果を表2に示す。
【0082】
比較例5
実施例1の(B)工程において、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1モルのリン酸(3重量%の水溶液の形態)を用いた代わりに、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1molに相当するシュウ酸(2重量%の水溶液の形態)を用い、(D)工程において、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム1.5重量部の代わりに、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム2.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Jの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の析出は起こらず、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物は回収できなかった。
【0083】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Jは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./g、pH6.8を有するものであったが、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は300.0ppmと非常に高いものであった。その結果を表2に示す。
【0084】
比較例6
実施例1の(B)工程において、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して1.1モルのリン酸(3重量%の水溶液の形態)を用いた代わりに、テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド1molに対して2.1molに相当するアジピン酸(2重量%の水溶液の形態)を用い、(D)工程において、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム1.5重量部の代わりに、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体100重量部に対して、固体酸として合成ケイ酸アルミニウム2.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Kの製造を行った。イミノ基含有ホスファゼニウム化合物の析出は起こらず、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物は回収できなかった。
【0085】
得られたポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体Kは、水酸基価は24mgKOH/g、不飽和度は0.024meq./g、pH7.0を有するものであったが、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量は350.0ppmと非常に高いものであった。その結果を表2に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の製造方法によれば、高価なイミノ基含有ホスファゼニウム塩を効率よく回収でき、得られたポリアルキレングリコールは、ウレタン化反応性に優れ、品質に優れるポリウレタン製品を提供することが可能となるとともに、イミノ基含有ホスファゼニウム塩残存量が低く、pH特性にも優れるポリアルキレングリコールを効率的に供給することが可能となり、産業上の利用可能性は極めて高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の(A)〜(D)工程を経てなることを特徴とするポリアルキレングリコールの製造方法。
(A)工程;下記一般式(1)に示されるイミノ基含有ホスファゼニウム塩と活性水素化合物によりポリアルキレングリコール製造用活性種を調製した後、アルキレンオキシドの重合反応を行う工程。
【化1】

(ここで、R、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、また、RとRが互いに結合して環構造を形成していても良いし、R同士又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。Xは、ヒドロキシアニオン、アルコキシアニオン、カルボキシアニオン、炭素数2〜5のアルキルカルボキシアニオン、又は炭酸水素アニオンを表す。)
(B)工程;(A)工程により得られたポリアルキレングリコール100重量部に対して、0.5〜12重量部の水性媒体と、(A)工程で用いたイミノ含有ホスファゼニウム塩1モルに対して0.5モル以上3.5モル未満の2価以上の無機酸とを混合する工程。
(C)工程;(B)工程で得られた混合物から水性媒体を除去し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を析出し、イミノ基含有ホスファゼニウム化合物を分離する工程。
(D)工程;(C)工程で得られたポリアルキレングリコールに固体酸を接触させた後、固体酸を分離する工程。
【請求項2】
(A)工程におけるアルキレンオキシドの重合反応が、プロピレンオキシドの重合反応後、エチレンオキシドをさらに重合する、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールブロック共重合体の製造方法であることを特徴とする請求項1に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項3】
(B)工程における2価以上の無機酸が、リン酸及び/又は硫酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項4】
(D)工程における固体酸が、合成ケイ酸アルミニウム及び/又は合成ケイ酸マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項5】
(D)工程において、ポリアルキレングリコール100重量部に対して、0.1〜3重量部の固体酸を接触させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項6】
イミノ基含有ホスファゼニウム化合物残存量50ppm以下、pH5.5〜8.0のポリアルキレングリコールを製造することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。
【請求項7】
水酸基価10〜100mgKOH/g、総不飽和度0.05meq/g以下のポリアルキレングリコールを製造することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリアルキレングリコールの製造方法。

【公開番号】特開2013−82791(P2013−82791A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222774(P2011−222774)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】