説明

ポリアルキレングリコール系共重合体およびその製造方法およびそれからなる洗剤組成物

【課題】析出抑制能に優れ、残り湯等で洗濯する等、厳しい条件下で洗濯しても良好な洗浄効果を示す洗剤組成物に好ましく適用できる新規共重合体を提供する。
【解決手段】
1質量%以上90質量%未満の、炭素数8〜20の有機基を有するポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)、10質量%以上99質量%未満のカルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を必須構成単位として有するポリアルキレングリコール系共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレングリコール系共重合体、及びその製造方法、およびその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料類に用いられる洗剤には、洗剤の洗浄効果を向上させることを目的として、ゼオライト、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールなどの洗剤ビルダー(洗剤助剤)を配合することが行われている。
また、上記の各種洗剤ビルダーに加えて、近年では、重合体が洗剤ビルダーとして洗剤組成物に配合されている。
【0003】
例えば、鎖中および/または末端にグリシジルエーテルに由来する疎水性部分を有し、重合性二重結合がイソプレノール、アリルアルコール、またはメタリルアルコールに由来するポリアルキレングリコール系単量体に由来する単量体単位を有し、かつカルボン酸基および/またはスルホン酸基を有するポリアルキレングリコール系重合体を洗剤ビルダーとして用いることが開示されている(特許文献1参照)。特許文献1は、上記重合体が、界面活性剤の析出を抑制する性能および/または洗濯時に汚れによる再汚染を抑制する性能(再汚染防止能という)を有することを開示している。
【0004】
また、洗剤ビルダーに要求される性能としては、洗剤の洗浄力を向上させる性能は勿論のこと、洗浄力の低下につながる界面活性剤の析出を抑制/防止する性能(以下、単に「析出抑制能」とも称する)もまた、要求されているのが現状である。ここで、界面活性剤の析出の問題は、アニオン界面活性剤である、ドデシルベンゼンスルホン酸(塩)のような直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(塩)(LAS)が、水中に存在するカルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合することにより生じるため、比較的硬度の高い水を用いて洗浄を行う場合に顕著である(非特許文献1を参照)。
【0005】
析出抑制能を向上させる技術としては、特許文献2が挙げられる。特許文献2では、炭化水素基を含有するポリオキシアルキレン系化合物に対して、所定量の酸基含有不飽和単量体がグラフト重合されてなるグラフト重合体が、洗剤ビルダーとして優れた性能を発揮しうることが示されている。
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/037469号パンフレット
【特許文献2】特開2007−254679号公報
【非特許文献1】Louis Ho Tan Tai,“Formulating Detergents and Personal Care Products”,AOCS Press,pp.53−54(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来、様々な重合体が報告されているにもかかわらず、洗剤用途に用いられた場合に十分な析出抑制能を発現する重合体は存在しないのが実情である。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、洗剤用途に用いられた場合に界面活性剤が析出することを効果的に抑制できる重合体(あるいは重合体組成物)を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、このような重合体(あるいは重合体組成物)を効率よく製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために様々な重合体(共重合体を含む)について鋭意検討を行なった結果、特定の疎水性基を有するポリアルキレングリコール系単量体由来の構成単位及びカルボキシル基含有単量体の構成単位を特定の割合で導入した共重合体(ポリアルキレングリコール系共重合体)は、優れた析出抑制能(界面活性剤の析出を抑制/防止する性能)を有することを知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、1質量%以上90質量%未満の下記式(1)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)、
【0009】
【化1】

【0010】

上記一般式(1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Zは炭素数2〜30のオキシアルキレン構造を表し、nは、5を超えて300以下の数を表し、Rは炭素数8〜20の有機基を表し、
10質量%以上99質量%未満のカルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)、
を必須構成単位として有するポリアルキレングリコール系共重合体。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体(あるいは本発明の重合体組成物)は、優れた析出抑制能(界面活性剤の析出を抑制/防止する性能)を示すことから、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体を洗剤組成物に用いると、界面活性剤の析出が効果的に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
〔本発明のポリアルキレングリコール系共重合体〕
<単量体(A)としてのポリアルキレングリコール系単量体>
本発明のポリアルキレングリコール系単量体は、下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)を特定の割合で有することを必須としている。
【0014】
【化2】

【0015】

上記一般式(1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Zは炭素数2〜30のオキシアルキレン構造を表し、nは、5を超えて300以下の数を表し、Rは炭素数8〜20の有機基を表わす。
上記一般式(1)中、nは、得られるポリアルキレングリコール系共重合体の界面活性剤との相溶性が向上することから、nが5を超えることが好ましい。界面活性剤との相溶性が向上すれば、液体洗剤などの液体薬剤へ配合できることから好ましい。又、界面活性剤の析出抑制能が更に向上することからnは110以下が好ましく、55以下がより好ましい。
【0016】
一般式(1)において、得られる共重合体の析出抑制能の向上効果が高いことから、RはCHCH基、CH基であることが好ましい。
なお、本明細書において、Rが単結合をあらわす場合とは、例えばC−R−Oと表される場合にC−Cとなることを意味する。
【0017】
一般式(1)において、Rは、上述の通り、炭素数8〜20の有機基であるが、Rは好ましくは炭素数8〜17の有機基であることが好ましく、炭素数8〜14の有機基であることがより好ましい。Rは、アミノ基、アミド基、水酸基、アルコキシド基、スルホン酸基、カルボニル基、カルボキシル基等の官能基を含んでいても良い。Rは、エーテル結合やスルフィド結合、エステル結合、アミド結合を含んでいても良い。有機基としては、得られる共重合体の析出抑制能の向上効果が高いことから、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。
【0018】
好ましいRとして、具体的にはオクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基のアルキル基;オクチレン基、ノニレン基等のアルケニル基;ナフチル基、ノニルフェニール基等のアリール基が挙げられる。
【0019】
一般式(1)の単量体として、Rが炭素数8〜20のアルキル基である単量体、Rが下記一般式(4)〜(6)で表される有機基である単量体であることが好ましい。
(i)Rが炭素数8〜20のアルキル基である単量体は、好ましくは(i‐1)メタリルクロライドまたはアリルクロライドまたはイソプレニルクロライドと対応するモノアルコキシポリアルキレングリコールとを反応させる方法、(i‐2)メタリルアルコールまたはアリルアルコールまたはイソプレノール、のアルキレンオキサイド付加物と対応するハロゲン化アルキルを反応させる方法により製造することが好ましい。
(ii)Rが下記一般式(4)で表される有機基で表される単量体は、メタリルアルコールまたはアリルアルコールまたはイソプレノール、のアルキレンオキサイド付加物にエピクロロヒドリン等のハロゲン化グリシジル化合物を付加した化合物と、アミノ基、水酸基、チオール基を有する化合物またはこれらにアルキレンオキサイドを付加した化合物を反応させることにより製造することが好ましい。
(iii)Rが下記一般式(5)で表される単量体で表される単量体は、メタリルアルコールまたはアリルアルコールまたはイソプレノール、のアルキレンオキサイド付加物に対応するエステル化合物または酸を反応させる方法により製造することが好ましい。
(iV)Rが下記一般式(6)で表される単量体で表される単量体は、メタリルアルコールまたはアリルアルコールまたはイソプレノール、のアルキレンオキサイド付加物に対応するイソシアネート化合物を反応させる方法により製造することが好ましい。
【0020】
【化3】

【0021】

一般式(4)におけるX、Yは、水酸基または下記一般式(4−2)で表される有機基を表し、X、Yのいずれか一方は水酸基であり、残りの一方が一般式(4−2)〜(4−4)で表される有機基であり、一般式(5)、(6)におけるRは、炭素数8〜19のアルキル基を表わす。ここで、上記一般式(4)〜(6)は式中の左末端の炭素原子を介して上記一般式(1)の残りの部分と結合する。
【0022】
【化4】

【0023】

一般式(4−2)〜(4−4)においてZは、炭素数2〜9のアルキレングリコール基を表し、nは0〜4であり、一般式(4−2)〜(4−3)においてRは、炭素数8〜17のアルキル基を表わし、一般式(4−4)において、R、Rは、水素原子または炭素数1〜17のアルキル基を表す。ここで、一般式(4−2)は式中の左末端の酸素原子を介して上記一般式(4)の残りの部分と結合し、一般式(4−3)〜(4−4)は式中の左末端のZ中の酸素原子で上記一般式(4)の残りの部分と結合する。
【0024】
上記一般式(1)の単量体の製造方法として、上記(i)〜(iV)の中でも単量体の収率が高い(不純物の生成が少ない)ことから、上記(i)、(iii)、(iV)であることが好ましい。特に好ましくは上記(i)である。
【0025】
上記の通り、上記一般式(1)において、Zは炭素数2〜30のオキシアルキレン構造を表す。オキシアルキレンとしては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレンが挙げられる。オキシフェニレン、オキシナフチレン基を含んでいても良い。
重合体の製造が容易である観点から、上記一般式(1)におけるオキシアルキレン構造のうち、50mol%以上はオキシエチレン構造であることが好ましい。より好ましくはオキシアルキレン構造のうち、80mol%以上はオキシエチレン構造であり、最も好ましくは100mol%がオキシエチレン構造である。オキシアルキレン構造のうち、100mol%がオキシエチレン構造であるとは、具体的には、例えば単量体(A)が上記一般式(1)で表される単量体である場合、単量体(A)が下記一般式(11)で表される構造を有することになる。
【0026】
【化5】

【0027】

上記一般式(11)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Zは炭素数2〜30のオキシアルキレン構造を表し、nは、5を超えて300以下の数を表し、Rは炭素数8〜20の有機基を表わす。
【0028】
本発明の本発明のポリアルキレングリコール系共重合体が、アルカリ条件下においても安定して析出抑制能を発現することから、単量体(A)は、エステル基、アミド基を含有しないことが好ましい。
【0029】
上記構成単位(a)は、単量体(A)、すなわち上記式(1)において、不飽和二重結合(CH=CH−)が単結合(−CH−CH−)になった形態となる。
すなわち、単量体(A)由来の構造単位(a)とは下記一般式で表される構造を示す。
【0030】
【化6】

【0031】

上記一般式(P−1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Zは炭素数2〜30のオキシアルキレン構造を表し、nは、5を超えて300以下の数を表し、Rは炭素数8〜20の有機基を表わす。
【0032】
構成単位(a)を本発明のポリアルキレングリコール系共重合体中に導入することによって、ポリアルキレングリコール系共重合体は、界面活性剤との相互作用を上げて界面活性剤が析出することを抑制することができる。また、単量体(A)は、水などの親水性溶媒中においても、単量体(B)、(C)と比較的共重合が容易であることから、得られるポリアルキレングリコール系共重合体の析出抑制能を有意に向上することができる。
【0033】
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体は、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)を全単量体由来の構造100質量%に対して、1質量%以上90質量%未満の割合で有することを必須としている。本発明において、単量体とは、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合をいう)を有する化合物を言う。構造単位(a)が上記範囲内であれば、優れた共重合体の析出抑制能の向上効果が得られる。全単量体由来の構造100質量%に対する構造単位(a)の割合は、好ましくは2質量%以上70質量%未満であり、さらに好ましくは3質量%以上60質量%未満であり、より好ましくは4質量%以上50質量%未満であり、最も好ましくは5質量%以上40質量%未満である。本発明のポリアルキレングリコール系共重合体が、上記範囲で単量体(A)由来の構造単位(a)を有することにより、共重合体が良好な水溶性を示し、また残存ポリアルキレングリコール系単量体が低減する傾向にある。残存ポリアルキレングリコール系単量体の低減に起因して、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体を水溶液で保存した際の均一性が向上する。
【0034】
<カルボキシル基含有単量体>
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を特定の割合で有することを必須としている。
【0035】
本発明のカルボキシル基含有単量体(B)は、1)不飽和二重結合と2)カルボキシル基および/またはその塩を必須として含有する単量体である(但し単量体(A)または単量体(C)に属する単量体は、単量体(B)から除くものとする)。具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の、不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩等;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチレングルタル酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩等が挙げられる。この際、不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に1つの不飽和基と2つのカルボキシル基を有する単量体であればよいが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アンモニウム塩(有機アミン塩)等、又は、それらの無水物が好適である。または、(メタ)アクリル酸系単量体(A)は、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミド酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミド等であってもよい。
【0036】
不飽和モノカルボン酸の塩、不飽和ジカルボン酸の塩としては、金属塩、アンモニウム塩または有機アミン塩である。この際、金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等のアルカリ金属の一価の金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属の塩;アルミニウム、鉄等の塩等が挙げられる。また、有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;エチレンジアミン塩、トリエチレンジアミン塩等のポリアミン等の有機アミンの塩が挙げられる。これらのうち、得られる共重合体の析出抑制能の向上効果が高いことから、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩であることが好ましく、より好ましくはナトリウム塩である。
【0037】
カルボキシル基含有単量体(B)の中でも、アクリル酸、アクリル酸塩、マレイン酸、マレイン酸塩が得られる共重合体の析出抑制能の向上効果が高いことから好ましく、アクリル酸、アクリル酸塩を必須とすることがより好ましい。
【0038】
カルボキシル基含有単量体(B)は、1種のみであっても良いが、2種類以上の由来の構造を有しても良い。この場合、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体は、全種のカルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)の合計を特定の割合で有することになる。
【0039】
上記構成単位(b)は、単量体(B)の不飽和二重結合(CH=CH−)が単結合(−CH−CH−)になった形態となる。
【0040】
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を全単量体由来の構造100質量%に対して、10質量%以上99質量%未満の割合で有することを必須としている。構造単位(b)が上記範囲内であれば、優れた共重合体の析出抑制能の向上効果が得られる。全単量体由来の構造100質量%に対する構造単位(b)の割合は、好ましくは30質量%以上98質量%未満であり、さらに好ましくは40質量%以上97質量%未満であり、より好ましくは50質量%以上96質量%未満であり、最も好ましくは60質量%以上95質量%未満である。
【0041】
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体は、洗剤ビルダーとして使用した場合、構造単位(a)を有することにより相互作用した界面活性剤の析出を抑制する効果を発揮することが可能となる。
【0042】
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体は、構造単位(b)を特定割合で有することにより、共重合体が良好な水溶性を示し、また残存ポリアルキレングリコール系単量体が低減する傾向にある。残存ポリアルキレングリコール系単量体の低減に起因して、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体を水溶液で保存した際の均一性が向上する。
【0043】
なお、本発明において、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)の全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応する酸換算として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムに由来の構造単位−CH−CH(COONa)−であれば、対応する酸であるアクリル酸由来の構造単位−CH−CH(COOH)−として、質量割合(質量%)の計算をする。同様に、カルボキシル基含有単量体(B)の全単量体に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムであれば、対応する酸であるアクリル酸として質量割合(質量%)の計算をする。
【0044】
更に、カルボキシル基含有単量体(B)以外の酸基含有単量体由来の構造単位の全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応する酸換算として計算するものとし、カルボキシル基含有単量体(B)以外の酸基含有単量体の全単量体に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算として計算するものとする。アミノ基含有単量体由来の構造単位、アミノ基含有単量体も対応する未中和アミン由来の構造単位、未中和アミンとして質量計算するものとする。例えば、ビニルアミン塩酸塩の場合、対応する未中和アミンであるビニルアミンとして質量割合(質量%)を計算する。
【0045】
<その他の単量体>
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体は、その他の単量体(C)由来の構造単位(c)を有していても構わない。
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体が他の単量体(C)を含む際の他の単量体(C)としては、上記単量体(A)および/または(B)と共重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、所望の効果によって適宜選択される。具体的には、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロパンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−3−メタアリルオキシプロパンスルホン酸ナトリウム、イソプレンスルホン酸、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3ブテンスルホン酸等、及びこれらの塩等のスルホン酸基含有単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の水酸基含有不飽和単量体にエチレンオキサイドを6〜200モル付加させた化合物(3−アリルオキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン等)、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステル等;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシネオペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体、スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体、イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
また、上記他の単量体(C)は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体は、上記構成単位(a)、(b)、ならびに必要であれば構成単位(c)が、上記したような特定の割合で導入されていればよく、各構成単位は、ブロック状あるいはランダム状のいずれで存在していてもよい。また、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体の重量平均分子量は、適宜設定できるものであり、特に限定されない。具体的には、ポリアルキレングリコール系共重合体の重量平均分子量は、1,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは1,500〜60,000、最も好ましくは2,000〜30,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、析出抑制能が向上する傾向にある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、具体的な測定方法は実施例に記載される方法に従って算出される。
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体は、析出抑制能に優れる為、界面活性剤の析出を抑制するので、例えば洗剤組成物に使用される。
【0046】
ところで、上記特許文献1には末端変性ポリアルキレングリコール系単量体として、(i)末端疎水基を有するポリアルキレングリコールにアリルグリシジルエーテル等を反応させることにより重合性二重結合を導入した単量体、(ii)不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物の末端水酸基に疎水性基を有するエポキシ化合物を反応させて疎水基を導入した単量体、が開示されている。
【0047】
しかし、アリルグリシジルエーテルや疎水性基を有するエポキシ化合物等のエポキシ化合物を使用して単量体を製造すると、例えば前者の場合、アリルグリシジルエーテルがアルコール等と反応した際に生成する水酸基が、更にアリルグリシジルエーテルと反応する副反応により、アリル基を2つ以上有する単量体が生成することがある。これに起因して、共重合する際に溶液粘度が増加する虞がある、という観点から改良の余地があった。また、上記副反応によりアリル基を2つ以上有する単量体が生成すると、化学量論的にアリルグリシジルエーテルが不足することとなる為、アリル基(重合性基)を有しないアルコール等が生成することとなる。これに起因して、共重合後も不純物として残存することとなり、共重合体の性能(析出抑制能等)が低下する虞がある、という観点から改良の余地があった。後者の場合も同様に、疎水性基を有するエポキシ化合物が不飽和アルコールのアルキレンオキシド付加物と反応した際に生成する水酸基が、更に疎水性基を有するエポキシ化合物と反応する副反応により、疎水基を2つ有する単量体が生成することがある。これに起因して、重合し難くなって不純物として残存する虞がある、という観点から改良の余地があった。また、上記副反応により疎水性基を有するエポキシ化合物と2つ以上反応した単量体が生成すると、化学量論的に疎水性基を有するエポキシ化合物が不足することとなる為、疎水基を有しない不飽和アルコール等が生成することとなる。これに起因して、共重合体の性能(析出抑制能等)が低下する虞がある、という観点から改良の余地があった。
【0048】
一方、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコール系単量体は、純度良く製造できる為、上記問題点を抑制し、好ましいポリアルキレングリコール系共重合体を製造することができる。
【0049】
〔本発明のポリアルキレングリコール系共重合体組成物(単に、重合体組成物ともいう)〕
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体組成物は、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体を必須として含有し、ポリアルキレングリコール系共重合体以外の成分は任意であるが、通常はその他に、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分から選ばれる1以上を含有する。好ましいポリアルキレングリコール系共重合体組成物の形態は、ポリアルキレングリコール系共重合体を30〜80質量%含有し、水を20〜70質量%含有する形態である。
【0050】
〔本発明のポリアルキレングリコール系共重合体の製造方法〕
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体の製造方法は、特に断りの無い限りは、公知の重合方法を同様にしてあるいは修飾した方法が使用できる。本発明のポリアルキレングリコール系共重合体を製造する方法としては、ポリアルキレングリコール系単量体(A)、カルボキシル基含有単量体(B)を必須成分として含む単量体成分を共重合することにより製造することができる。また、単量体成分を共重合する際には、必要に応じ、上記その他の単量体(C)を更に共重合させてもよい。
【0051】
このような製造方法においては、重合開始剤を用いて単量体成分を共重合すればよい。なお、ポリアルキレングリコール系共重合体を構成する構成単位が上述したようになるように、単量体成分に含まれる単量体の種類や使用量を適宜設定することになる。すなわち、上記ポリアルキレングリコール系共重合体を形成する各単量体の組成比は、全単量体に対して、ポリアルキレングリコール系共単量体(A)が1質量%以上90質量%未満、カルボキシル基含有単量体(B)が10質量%以上99質量%未満である。上述したように、さらにこれらと共重合可能な上記その他の単量体(C)を、単量体(A)〜(B)の合計を100質量%とした場合に、0〜10質量%の量で使用してもよい。より好ましくは、ポリアルキレングリコール系単量体(A)が2質量%以上70質量%未満、カルボキシル基含有単量体(B)が30質量%以上98質量%未満であり、さらに好ましくは、ポリアルキレングリコール系単量体(A)が3質量%以上60質量%未満、カルボキシル基含有単量体(B)が40質量%以上97質量%未満であり、より好ましくは、ポリアルキレングリコール系単量体(A)が4質量%以上50質量%未満、カルボキシル基含有単量体(B)が50質量%以上96質量%未満であり、最も好ましくは、ポリアルキレングリコール系単量体(A)が5質量%以上40質量%未満、カルボキシル基含有単量体(B)が60質量%以上95質量%未満である。なお、上記単量体(A)、(B)及び(C)の合計量は100質量%としている。
【0052】
本発明において、単量体(A)〜(B)、さらに必要であれば他の単量体(C)の共重合は、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いる、および/または連鎖移動剤の存在下で行なうことが好ましく、使用する溶媒の50質量%以上に水を用い、かつ連鎖移動剤の存在下で行なうことがより好ましい。この際、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることによって、重合に使用される有機溶剤の量を抑制できるため、重合終了後の有機溶剤の留去が容易であるという利点がある。また、連鎖移動剤を使用すると、製造されるポリアルキレングリコール系共重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量のポリアルキレングリコール系共重合体を効率よく製造することができるという利点がある。特に連鎖移動剤として亜硫酸や亜硫酸塩を使用すると、以下に詳述するが、得られるポリアルキレングリコール系共重合体の末端に定量的にスルホン酸基を導入することができ、更に耐ゲル性を向上することができる。
【0053】
したがって、本発明の製造方法の好ましい形態は、1質量%以上90質量%未満の式(1)のポリアルキレングリコール系単量体(A)、10質量%以上99質量%未満の式(2)のカルボキシル基含有単量体(B)、必要に応じてその他の単量体(C)(ただし、単量体(A)、(B)及び(C)の合計比率は100質量%である)を、使用する溶媒の50質量%以上に水を用い、かつ連鎖移動剤を用いて重合反応を行なう工程を含む、ポリアルキレングリコール系共重合体の製造方法に関するものである。
【0054】
上記態様で使用される溶媒としては、使用する溶媒全量に対して50質量%の割合で水を含むものであれば特に制限されない。重合に使用される単量体の溶媒への溶解性向上という観点から、必要に応じて、有機溶媒を添加してもよい。この場合においても、全混合溶媒中の水の含量は50質量%以上である。この際使用できる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で試用されてもよい。本発明では、水の量は、使用する溶媒全量に対して、好ましくは80質量%以上であることが好ましく、最も好ましくは水単独(即ち、100質量%)である。
【0055】
本発明の製造方法において、共重合を連鎖移動剤の存在下で行なうことが好ましい要件である。この際使用できる連鎖移動剤としては、分子量の調節ができる化合物であれば特に制限されず、公知の連鎖移動剤が使用できる。具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。これらのうち、本発明に係る共重合反応においては、亜硫酸や亜硫酸塩を用いることが好適である。これにより、得られるポリアルキレングリコール系共重合体の主鎖末端に定量的にスルホン酸基を導入することができることとなり、耐ゲル性を向上することが可能となる。なお、スルホン酸基を定量的に導入できるということは、亜硫酸塩が連鎖移動剤等として非常に良好に機能していることを示しており、これにより、重合反応系に過剰な連鎖移動剤等を添加する必要がなくなり、共重合体の製造コストの上昇を低減するとともに、製造効率が向上され、しかも不純物を十分に低減することが可能となる。また、重合反応系に亜硫酸塩を加えることによって、得られる共重合体が必要以上に高分子量化することが抑制されることとなる。
【0056】
上記製造方法において、上述したように、好ましくは亜硫酸および/または亜硫酸塩(以下、単に「亜硫酸(塩)」と記載する)を連鎖移動剤として含む。また、上記製造方法において、亜硫酸(塩)に加えて、開始剤を使用する。さらに、反応促進剤として、重金属イオンを併用してもよい。
【0057】
上記亜硫酸(塩)としては、亜硫酸若しくは亜硫酸水素またはこれらの塩をいい、亜硫酸/亜硫酸水素が塩である形態が好適である。亜硫酸/亜硫酸水素が塩である場合、上記した例に加えて、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等の塩が好ましい。また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノ
ールアミンや、トリエチルアミン等が好適である。更に、アンモニウムであってもよい。ゆえに、本発明で好ましく使用される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。上記亜硫酸(塩)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0058】
本発明の方法において、連鎖移動剤の添加量は、単量体(A)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(C)が良好に重合する量であれば制限されないが、好ましくは単量体(A)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(C)からなる全単量体成分1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがあり、逆に、20gを超えると、不純物が多量に生成し、重合体純分が低下するおそれがあり、特に亜硫酸塩を使用する場合には、余剰の亜硫酸塩が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生するおそれがある。しかも、経済的にも不利となるおそれがある。
【0059】
上記開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0060】
開始剤の使用量は、単量体(A)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(C)の共重合を開始できる量であれば特に制限されないが、単量体(A)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(C)からなる全単量体成分1モルに対して、10g以下、より好ましくは1〜5gであることが好ましい。
【0061】
本発明ので反応促進剤として使用される重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
【0062】
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いる方法を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
【0063】
上記重金属イオンを使用する場合の重金属イオン量、本発明における重合工程において、触媒量含まれていることが好ましい。本明細書でいう触媒量とは、触媒として、最終目的物に取り込まれるものでなく作用するものであり、具体的には、100ppm以下であり、好ましくは、10ppm以下であり、より好ましくは5ppm以下である。
【0064】
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である重合体を洗剤ビルダーとして用いる場合に、着色汚れの原因となるおそれがある。
【0065】
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体がアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0066】
上記開始剤と連鎖移動剤との組み合わせとしては、過硫酸塩と亜硫酸塩とをそれぞれ1種以上用いることが最も好ましい。この場合、過硫酸塩と亜硫酸塩との混合比は、特に制限されないが、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩0.5〜5質量部を用いることが好ましい。より好ましくは、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩の下限は、1質量部であり、最も好ましくは2質量部である。また、亜硫酸塩の上限は、過硫酸塩1質量部に対して、より好ましくは4質量部であり、最も好ましくは3質量部である。ここで、亜硫酸塩が0.5質量部未満であると、低分子量化する際に開始剤総量が増加するおそれがあり、逆に5質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加するおそれがある。
【0067】
上記連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせは、特に制限されず、上記各例示の中から適宜選択できる。例えば、連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせとしては、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過酸化水素(H)、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/Fe、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過酸化水素(H)/Fe、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)/Fe、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)/過酸化水素(H)、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/酸素/Fe等の形態が好ましい。より好ましくは、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)/Feであり、最も好ましくは亜硫酸水素ナトリウム(SBS)/過硫酸ナトリウム(NaPS)/Feである。
【0068】
上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の総使用量は、単量体(A)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(C)からなる全単量体成分1モルに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体を効率よく生産することができ、また、ポリアルキレングリコール系共重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
【0069】
上記重合開始剤及び連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入しても
よく、単量体成分を構成する各単量体(A)〜(B)やその他の単量体(C)、溶媒等とあらかじめ混同しておいてもよい。
【0070】
上記共重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体(A)〜(B)のうちの一つ(例えば、単量体(B))の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分(単量体(B)の残り及び単量体(A)ならびに必要であれば単量体(C)のすべて)を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、洗剤ビルダーとして用いる場合の分散性を向上することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
【0071】
上記共重合方法としては、例えば、溶液重合や懸濁重合、乳化重合等の通常用いられる方法で行うことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合が好ましい。この際使用できる溶媒は、上述したように、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒または水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。
【0072】
上記共重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。また、共重合の際、必要に応じて使用される溶媒としては、公知のものを使用でき、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;グリセリン;ポリエチレングリコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の芳香族又は脂肪族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、単量体成分及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
【0073】
上記溶媒の使用量としては、単量体成分100質量%に対して40〜200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、180質量%以下であり、更に好ましくは、150質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%未満であると、得られる共重合体の分子量が高くなるおそれがあり、200質量%を超えると、得られる共重合体の濃度が低くなり、溶媒除去が必要となるおそれがある。なお、溶媒は、重合初期に一部又は全量を反応容器内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部を重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよいし、単量体成分や開始剤等を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよい。
【0074】
上記共重合方法において、共重合温度等の共重合条件としては、用いられる共重合方法、溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、共重合温度としては、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。特に、亜硫酸(塩)を用いる場合には、共重合温度は、通常、60℃〜95℃、好ましくは70℃〜95℃、さらに好ましくは、80℃〜95℃である。この際、60℃未満では、
亜硫酸(塩)由来の不純物が多量に生成するおそれがある。逆に、95℃を越えると、有毒な亜硫酸ガスが放出されるおそれがある。
【0075】
上記共重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0076】
上記共重合時間としては、30〜360分であることが好ましい。より好ましくは、60〜300分であり、更に好ましくは、120〜240分である。なお、本発明において、「共重合時間」とは、特に断らない限り、単量体を添加している時間を表す。
【0077】
上記共重合方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであってもよいが、得られる共重合体の分子量の点で、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0078】
上記共重合における重合中のpHは、酸性が好ましい。特に、上記開始剤として、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、酸性条件下で行うことが好ましい。酸性条件下で行うことによって、重合反応系の水溶液の粘度の上昇を抑制し、共重合体を良好に製造することができる。また、高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるので、製造効率を大幅に上昇することができ、最終固形分濃度が40%以上の高濃度重合とすることができ、含まれる残存モノマーの総濃度が15000ppm以下のものを得ることができる。更に、エーテル結合含有単量体の重合性を向上することができる。
【0079】
上記酸性条件としては、重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であることが好ましい。より好ましくは、5以下であり、更に好ましくは、3以下である。上記共重合方法により得られる共重合体は、そのままでも洗剤組成物(洗剤ビルダー)の主成分等として用いることができるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アンモニウム(有機アミン)等を用いることが好ましい。
【0080】
共重合を行う際の中和率は、開始剤によって適宜変更できる。例えば、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、上記単量体が塩を形成し得るものである場合、カルボキシル基含有単量体の中和率を0〜60モル%として単量体成分の共重合を行うことが好ましい。単量体の中和率は、単量体の全モル数を100モル%としたときに、塩を形成している単量体のモル%で表されることになる。単量体の中和率が60モル%を超えると、共重合工程における重合率が上がらず、得られる共重合体の分子量が低下したり、製造効率が低下したりするおそれがある。より好ましくは、50モル%以下であり、更に好ましくは、40モル%以下、特に好ましくは、30モル%以下であり、より特に好ましくは、20モル%以下であり、最も好ましくは、10モル%以下である。
【0081】
上記単量体の中和率を0〜60モル%として共重合を行う方法としては、例えば、単量体が不飽和カルボン酸系単量体である場合、全て酸型である不飽和カルボン酸系単量体を中和せずに共重合に付することにより行う方法や、不飽和カルボン酸系単量体をアルカリ性物質を用いてナトリウム塩やアンモニウム塩等の塩の形態に中和するときに中和率を0〜60モル%としたものを共重合に付することにより行う方法等が好適である。
【0082】
上記ポリアルキレングリコール系共重合体(または重合体組成物)は、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)、スケール防止剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤、スキンケア剤、ヘアケア剤等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0083】
<水処理剤>
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体(または重合体組成物)は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0084】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0085】
<繊維処理剤>
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体(または重合体組成物)は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体(または重合体組成物)を含む。
【0086】
上記繊維処理剤における本発明のポリアルキレングリコール系共重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0087】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0088】
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0089】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0090】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体(または重合体組成物)は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0091】
上記無機顔料分散剤中における、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0092】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0093】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0094】
<洗剤組成物>
本発明のポリアルキレングリコール系共重合体(または重合体組成物)は、洗剤組成物にも添加しうる。
【0095】
洗剤組成物における当該ポリアルキレングリコール系共重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、ポリアルキレングリコール系共重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0096】
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0097】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0098】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0099】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0100】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0101】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【0102】
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0103】
上記洗剤組成物は、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体(または重合体組成物)に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
【0104】
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
【0105】
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
【0106】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
【0107】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、STPP(トリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸等が好適である。本発明における共重合体以外のその他の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
上記洗浄剤組成物は、析出抑制能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質で安定性に優れた洗剤とすることができる。
【実施例】
【0108】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、本発明のポリアルキレングリコール系共重合体の重量平均分子量、抑制能等は、下記方法に従って測定した。
【0109】
<重量平均分子量の測定条件>
装置:日立社製 L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ, GF−710−HQ, GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min.
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
<ポリオキシアルキレングリコール系単量体等の定量方法>
ポリオキシアルキレングリコール系単量体等の定量は、以下の条件の高速クロマトグラフィーで行った。
高速液体クロマトグラフィー
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)
<カルボキシル基含有単量体等の定量方法>
カルボキシル基含有単量体等の定量は、下記表1の条件にて液体クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:株式会社昭和電工製 SHODEX RSpak DE−413
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0ml/min
<析出抑制能(LAS−Ca塩析出抑制能)の測定方法>
(1)グリシン9.3793g、塩化ナトリウム9.6452g、水酸化ナトリウム5.1975gに純水を加えて1000.0gとし、グリシン緩衝液を作製した。
(2)15%(w/w)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)水溶液1.50g、硫酸ナトリウム0.80g、(1)で調製したグリシン緩衝液11.25gに純水を加えて、500.0gとした。
(3)0.1%(w/w)サンプル重合体水溶液を調製した。
(4)1M塩化カルシウム2水和物水溶液を調製した。
(5)100mLビーカーに(3)で調製した0.1%サンプル重合体水溶液1.80g、純水8.20g、(2)を80.00g加えて、試験液とした。
(6)試験液に、(4)で調製した1M塩化カルシウム2水和物水溶液を滴下、攪拌し、濁度変化を測定した。測定には、平沼産業製自動滴定装置(本体:COM−550、光度速度ユニット;M−500)を用いた。濁度変化は、波長650nmにおける透過率変化で測定した。
(7)1M塩化カルシウム2水和物水溶液の添加量が0.270mlの時点における透過率の値を析出抑制能とした。なお、値が高いほど、析出抑制能に優れることを意味する。
【0110】
<重合体組成物の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで重合体組成物(重合体組成物1.0g+水3.0g)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0111】
<単量体合成例1>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、ニューコール2310(株式会社日本乳化剤製;C12−13アルコールのエチレンオキサイド10モル付加物)125.2gと、水酸化カリウム(以下、「KOH」とも称する。)16.8gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、60℃まで降温し、塩化メタリル(以下、「MLC」とも称する。)27.0gを30分かけて添加し、その後、5時間反応させた。ここに純水200.0gを加え、1時間反応させた後、硫酸で中性とした。室温まで冷却後、この水溶液を500mlの分液ロートへ移し、分層するまで静置し、下層を取り除いた。残った上層を300mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。析出してきた塩を濾過により取り除き、単量体1を得た。
【0112】
<実施例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水89.0g、およびモール塩0.0125gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」とも称する。)212.5g、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」とも称する。)9.8g、単量体1を30.0g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」とも称する。)48.1g、および35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」とも称する。)34.4gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、単量体1については90分間、15%NaPSについては185分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH167.2gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45.5%、重量平均分子量8500の重合体1(ポリアルキレングリコール系共重合体1)の水溶液(ポリアルキレングリコール系共重合体組成物1)を得た。
【0113】
<実施例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水113.0g、およびモール塩0.0121gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AAを175.0g、48%NaOHを8.1g、単量体1を60.0g、15%NaPSを40.7g、および35%SBSを40.7g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、単量体1については90分間、15%NaPSについては185分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH137.7gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45.6%、重量平均分子量9400の重合体2(ポリアルキレングリコール系共重合体2)の水溶液(ポリアルキレングリコール系共重合体組成物2)を得た。
【0114】
<単量体合成例2>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、、ニューコール2320(株式会社日本乳化剤製;C12−13アルコールのエチレンオキサイド20モル付加物)425.6gと、KOH35.3gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、60℃まで降温し、MLC54.0gを30分かけて添加し、その後、5時間反応させた。さらに、純水50.0gを加え、1時間反応させた後、硫酸で中性とした。室温まで冷却後、この水溶液を1000mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。ここにエタノールを加え、析出してきた塩を濾過により取り除いた。この一連の脱塩操作を3回繰り返し、完全に脱溶媒して単量体2を得た。
【0115】
<実施例3>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水89.0g、およびモール塩0.0124gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AAを212.5g、48%NaOHを9.8g、単量体2を30.0g、15%NaPSを47.8g、および35%SBSを34.1g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、単量体2については150分間、15%NaPSについては185分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH167.2gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45.8%、重量平均分子量8800の重合体3(ポリアルキレングリコール系共重合体3)の水溶液(ポリアルキレングリコール系共重合体組成物3)を得た。
【0116】
<実施例4>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水117.0g、およびモール塩0.0121gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AAを175.0g、48%NaOHを8.1g、単量体2を60.0g、15%NaPSを40.0g、および35%SBSを22.8g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、単量体2については120分間、15%NaPSについては185分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH137.7gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度46.0%、重量平均分子量9500の重合体4(ポリアルキレングリコール系共重合体4)の水溶液(ポリアルキレングリコール系共重合体組成物4)を得た。
【0117】
<単量体合成例3>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、、ニューコール2360(株式会社日本乳化剤製;C12−13アルコールのエチレンオキサイド60モル付加物)480.1gと、KOH15.0gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、60℃まで降温し、MLC23.0gを30分かけて添加し、その後、5時間反応させた。さらに、純水50.0gを加え、1時間反応させた後、硫酸で中性とした。室温まで冷却後、この水溶液を1000mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。ここにエタノールを加え、析出してきた塩を濾過により取り除いた。この一連の脱塩操作を3回繰り返し、完全に脱溶媒して単量体3を得た。
【0118】
<実施例5>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水115.0g、およびモール塩0.0120gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AAを175.0g、48%NaOHを8.1g、単量体3を60.0g、15%NaPSを39.3g、および35%SBSを33.7g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、単量体3については120分間、15%NaPSについては185分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH137.7gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度45.9%、重量平均分子量9800の重合体5(ポリアルキレングリコール系共重合体5)の水溶液(ポリアルキレングリコール系共重合体組成物5)を得た。
【0119】
<実施例6>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水152.0g、およびモール塩0.0119gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AAを125.0g、48%NaOHを5.8g、単量体3を100.0g、15%NaPSを28.5g、および35%SBSを24.4gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、単量体3については90分間、15%NaPSについては185分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH98.3gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度46.4%、重量平均分子量10000の重合体6(ポリアルキレングリコール系共重合体6)の水溶液(ポリアルキレングリコール系共重合体組成物6)を得た。
【0120】
<比較例1>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水116.0g、およびモール塩0.0119gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AA175.0g、48%NaOH8.1g、イソプレノールのエチレンオキサイド25モル付加物(以下、「IPN25」とも称する。)60.0g、15%NaPS39.9g、および35%SBS28.5gを、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、IPN25については150分間、15%NaPSについては185分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
【0121】
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH137.7gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
【0122】
このようにして、固形分濃度45.6%、重量平均分子量9600の比較重合体1の水溶液を得た。
【0123】
<単量体合成例4>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、メタノールのエチレンオキサイド25モル付加物(以下、「PGM25」とも称する。)226.4gと、KOH16.8gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、60℃まで降温し、MLC27.0gを30分かけて添加し、その後、5時間反応させた。ここに純水200.0gを加え、1時間反応させた後、硫酸で中性とした。室温まで冷却後、この水溶液を500mlの分液ロートへ移し、分層するまで静置し、下層を取り除いた。残った上層を300mlのナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターで脱溶媒した。析出してきた塩を濾過により取り除き、単量体4を得た。
【0124】
<比較例2>
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水116.0g、およびモール塩0.0119gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、90℃に保持された重合反応系中に、80%AAを175.0g、48%NaOHを8.1g、単量体4を60.0g、15%NaPSを39.9g、および35%SBSを28.5g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAおよび48%NaOHについては180分間、単量体4については150分間、15%NaPSについては185分間、35%SBSについては175分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。
80%AAの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、48%NaOH137.7gを徐々に滴下し、重合反応液を中和した。
このようにして、固形分濃度46.1%、重量平均分子量9800の比較重合体2の水溶液を得た。
【0125】
<実施例7>
次に、実施例1〜6および比較例1〜2の重合体の、析出抑制能を上記評価方法に従って評価した。結果を表1にまとめた。
【0126】
【表1】

【0127】

表1から明らかなように、本発明における共重合体は、本発明の構造単位(a)を有していない比較重合体を含む比較共重合体に比して、有意に優れた析出抑制能を有している。よって、洗剤添加物として好ましく使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1質量%以上90質量%未満の下記式(1)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)由来の構造単位(a)、
【化1】


上記一般式(1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Zは炭素数2〜30のオキシアルキレン構造を表し、nは、5を超えて300以下の数を表し、Rは炭素数8〜20の有機基を表し、
10質量%以上99質量%未満のカルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)、
を必須構成単位として有するポリアルキレングリコール系共重合体。
【請求項2】
1質量%以上90質量%未満の下記式(1)で表されるポリアルキレングリコール系単量体(A)、
【化2】


上記一般式(1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Zは炭素数2〜30のオキシアルキレン構造を表し、nは、5を超えて300以下の数を表し、Rは炭素数8〜20の有機基を表し、
10質量%以上99質量%未満のカルボキシル基含有単量体(B)、
を必須として重合開始剤の存在下重合する、
ポリアルキレングリコール系共重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のポリアルキレングリコール系共重合体を含む洗剤組成物。

【公開番号】特開2010−138242(P2010−138242A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314241(P2008−314241)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】