説明

ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法

【課題】副生物の生成を抑制し、高い収率かつ高い選択率で有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を製造することができ、かつ、高純度の有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】
本発明はグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体と水酸基含有化合物を反応させることを特徴とする有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法に関するものである。より詳しくは、洗剤組成物や繊維処理剤、水処理剤、顔料分散剤等の種々の用途に用いられる重合体の原料として用いられるポリアルキレングリコール系単量体の製造に好適に用いられる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコール系単量体は、種々の工業分野において活用されている有用な工業原料の一つであり、例えば、カルボン酸(塩)系単量体と共重合して、多様な用途に用いることのできる重合体が得られることになる。
このようなポリアルキレングリコール系単量体を原料とするポリアルキレングリコール系重合体は、例えば、高い基本性能を有するセメント添加剤、増粘剤等として、各種の分野で用いられている。例えば、疎水性部分を含有するポリアルキレングリコール系単量体を原料とするポリアルキレングリコール系重合体は、疎水性相互作用によって疎水性物質を吸着し、ポリアルキレングリコール鎖の分散性とあいまって、疎水性粒子の分散性、疎水性汚れの再汚染防止能、洗浄力に優れるという特性が発揮され、洗剤組成物や繊維処理剤、水処理剤、顔料等の各種分散剤等の様々な用途に好適に適用することができることが知られている(例えば、特許文献1)。また、特許文献1には、これらのポリアルキレングリコール系単量体の製造方法として、ポリアルキレングリコール鎖と重合性二重結合としてイソプレノール、アリルアルコール、又はメタリルアルコールを有する単量体と、炭素数1〜20のグリシジルエーテルとを反応させることにより製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−510175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この製造方法を用いた場合では、2分子以上の炭素数1〜20のグリシジルエーテルが、ポリアルキレングリコール鎖と重合性二重結合を有する単量体と反応した副生物が生じるため、反応の選択率が低く、得られるポリアルキレングリコール系単量体の純度が低いという課題があった。その結果、該単量体より得られた重合体の性能が充分に発揮されないおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高い収率かつ高い選択率で有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を製造することができ、かつ、高純度の有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法に関して、上述した課題を解決するための手段を種々検討したところ、グリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体と水酸基含有化合物とを反応させることにより副生物が生成することなく高い収率かつ高い選択率で有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を製造することができることを見出し、上記課題を見事に解決ができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち、本発明は下記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体と水酸基含有化合物を反応させることを特徴とする下記一般式(2)で表される有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法である。
【0008】
【化1】

【0009】
上記一般式(1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。
【0010】
【化2】

【0011】
上記一般式(2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Rは炭素数1〜20の有機基を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、副生物の生成を抑制し高い収率かつ高い選択率で有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を製造することができる。該単量体は洗剤組成物や繊維処理剤、水処理剤、顔料分散剤等の種々の用途に用いられる重合体の原料として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリアルキレングリコール系単量体の製造方法は、下記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体と水酸基含有化合物を反応させることを特徴とする下記一般式(2)で表される有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法である。
【0014】
【化3】

【0015】
上記一般式(1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。
【0016】
【化4】

【0017】
上記一般式(2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Rは炭素数1〜20の有機基を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。
【0018】
本発明の製造方法においては、目的生成物である上記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコール系単量体の合成に際し、上記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を原料として上記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコール系単量体を合成するか、他の原料を用いて上記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を中間体として生成させて上記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコール系単量体を合成するか、又は、これらを組み合わせて合成することになる。いずれにしても上記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を経由する製法に本発明を適用することになる。なお、原料及び/又は中間体として用いる上記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体の合成、製造については、特に限定されるものではない。
【0019】
上記一般式(1)および一般式(2)において、Rが単結合である場合とは、上記一般式(1)および一般式(2)のHC=C(R)−R−O−において、HC=C(R)−O−で表されることを意味する。すなわちHC=C(R)−R−は、RがCH基、RがCH基の場合はメタリル基、RがCH基、RがCHCH基の場合はイソプレニル基、RがCH基、Rが単結合の場合はイソプロペニル基、Rが水素原子、RがCH基の場合はアリル基、Rが水素原子、RがCHCH基の場合はブテニル基、Rが水素原子、Rが単結合の場合はビニル基を意味する。
【0020】
上記一般式(1)および一般式(2)において、重合する炭素炭素二重結合を有する基、すなわちHC=C(R)−R−としては、イソプレニル基、メタリル基、アリル基、ビニル基が好ましい。重合性の観点から、イソプレニル基、メタリル基、アリル基がより好ましく、イソプレニル基、メタリル基が特に好ましい。
【0021】
上記一般式(1)および一般式(2)において、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基であるが、本発明の製造方法により得られるポリアルキレングリコール系単量体の重合性が良好となることから、Yは炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基であることが特に好ましい。具体的にはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数2〜4のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基、プロピレン基等の炭素数2〜3のアルキレン基であることが特に好ましい。アルキレン基は、1種でも2種以上でも構わないが、2種以上の場合は、−Y−O−の構造はランダムに連続していても、交互に連続していても、ブロック状に連続していても良い。
【0022】
上記一般式(1)および一般式(2)において、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であるが、単量体の水溶性の観点から、nは2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。また、本発明の製造方法により得られるポリアルキレングリコール系単量体の重合性が良好になるという観点から、nは200以下が好ましく、100以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。
【0023】
上記一般式(2)において、Rは炭素数1〜20の有機基である。該有機基は、置換基を有していてもよい。炭素数1〜20の有機基は全体として炭素数が1〜20であれば制限はないが、上記有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシル基やこれらの基を組み合わせてできる基等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシル基やこれらの基を組み合わせてできる基が好ましく、より好ましくは、アルキル基、アリール基、アルコキシル基やこれらの基を組み合わせてできる基である。上記炭素数1〜20の有機基における置換基としては、例えばハロゲン原子、ジアルキル基、アミノ基、ニトロ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、メルカプト基、スルホン基、メチレンビスカルボニル基等が挙げられる。有機基の炭素数は、1〜18であることが好ましい。より好ましくは1〜16であり、更に好ましく1〜14である。
具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基;アリル基、イソプレニル基等のアルケニル基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等のアリール基、又はこれらの水素原子の一部が、アルコキシ基、カルボキシエステル基、アミノ基、アミド基、水酸基等で置換された基、例えば2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、p−メトキシフェニル基等が挙げられる。中でも、高い収率で本発明のポリアルキレングリコール系単量体を製造することができることから、メチル基、エチル基、n−ブチル基、オクチル基、ラウリル基、2−エチルヘキシル基であることが好ましい。
上記水酸基含有化合物としては、下記一般式(a);
【0024】
【化5】

【0025】
で表される化合物であることが好ましい。上記一般式(a)中、Rの好ましい態様は、上記一般式(2)におけるRの好ましい態様と同様である。
【0026】
上記水酸基含有化合物としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、2−エチルヘキサノール等のアルキルアルコール類;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等のシクロアルキルアルコール類;ベンジルアルコール等のアリールアルコール類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、フェノール、p−メトキシフェノール、ナフトール等のフェノール類;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸類等が挙げられる。中でも、高い収率で本発明のポリアルキレングリコール系単量体を製造することができることから、メタノール、エタノール、n−ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、グリコール酸であることが好ましい。
【0027】
上記水酸基含有化合物の使用量は上記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体のグリシジル基に対するモル比で、(グリシジル基)/(水酸基含有化合物)=1/1〜1/100が好ましく、1/2〜1/50がより好ましく、より高純度に上記一般式(2)で表されるポリアルキレングリコール系単量体が製造できるという観点から1/3〜1/20が特に好ましい。
【0028】
本発明の製造方法は触媒として、酸を用いてもアルカリを用いても良い。酸としては、ルイス酸でもブレンステッド酸でも構わないが、ルイス酸が好ましい。ルイス酸としては、一般的にルイス酸と呼ばれるものは使用できるが、例えば、三フッ化ホウ素、四塩化錫、二塩化錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、四塩化チタン、塩化マグネシウム、五塩化アンチモンなどが挙げられる。その使用量は上記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体のグリシジル基に対して、モル比で、通常は(グリシジル基)/(酸)=1/0.0001〜1/0.1であり、好ましくは1/0.0005〜1/0.05であり、より好ましくは1/0.001〜1/0.03である。触媒量が少なすぎると十分な触媒効果は得られず、多過ぎても、それ以上の効果はなく、経済的に不利である。アルカリとしては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。アルカリ化合物の使用量は上記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体のグリシジル基に対するモル比で、通常は(グリシジル基)/(アルカリ化合物)=1/0.001〜1/1であり、好ましくは1/0.005〜1/0.75であり、より好ましくは1/0.01〜1/0.5である。アルカリとして、上記アルカリ金属水酸化物の水溶液を用いても良い。また、必要に応じて相間移動触媒及び/又は溶媒の存在下行っても良い。
【0029】
相間移動触媒の種類に特に限定はないが、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムクロリド、トリエチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、トリメチルアンモニウムブロミド、トリエチルアンモニウムブロミド等の四級アンモニウム塩;テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩;15−クラウン−5、18−クラウン−6等のクラウンエーテル類が挙げられる。相間移動触媒を使用する場合は、その使用量は上記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体のグリシジル基に対して、モル比で、通常は(グリシジル基)/(相間移動触媒)=1/0.0001〜1/0.3であり、好ましくは1/0.001〜1/0.2であり、より好ましくは1/0.005〜1/0.1である。触媒量が少なすぎると十分な触媒効果は得られず、多過ぎても、それ以上の効果はなく、経済的に不利である。
【0030】
本発明の製造方法は、溶媒非存在下に実施することが、効率よく反応が進行し、容積効率の観点からより好ましいが、溶媒の存在下でも実施できる。使用できる溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に制限はなく、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジクロロメタン、ジクロロエタン等の塩素系炭化水素類を挙げることができる。これらは一種のみを単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。その使用量に特に制限はないが、上記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体に対して、通常は0.005〜5倍質量の範囲であり、好ましくは0.01〜3倍質量の範囲である。
【0031】
本発明の製造方法は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、減圧下、大気圧下、加圧下いずれでも実施できる。反応温度としては、通常は0〜200℃であり、好ましくは15〜160℃であり、より好ましくは30〜120℃である。また、反応時間としては、通常は0.1〜50時間であり、好ましくは0.5〜30時間であり、より好ましくは1〜15時間である。反応はバッチで行っても、連続で行っても良く、例えば、槽型、管型反応器のいずれの装置でも実施することができる。反応後、過剰な水酸基含有化合物の除去工程を実施することが好ましい。過剰な水酸基含有化合物は洗浄、蒸留、蒸発操作等によって容易に取り除くことができる。また、反応後、触媒の除去工程を実施しても良い。
【0032】
本発明の製造方法により得られる上記一般式(2)で表される有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体を重合することにより、得られる重合体は、本発明の有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体由来の構造を有することになる。すなわち、本発明の製造方法により得られる有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系含有単量体の炭素炭素二重結合が単結合になった構造であり、下記一般式(3)で表すことができる。
【0033】
【化6】

【0034】
上記一般式(3)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Rは炭素数1〜20の有機基を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。
【0035】
本発明の製造法で得られた有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体は、水処理剤、洗剤用ビルダー、洗剤組成物、分散剤、洗浄剤など、様々な用途に使用される重合体の原料として用いられる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0037】
<反応収率及び原料転化率>
反応の収率及び原料転化率は、以下の条件の液体クロマトグラフィーにより定量した。
測定装置:東ソー社製 HPLC8020システム
カラム:資生堂社製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:アセトニトリル/10mmolリン酸水素ナトリウム水溶液(りん酸でpH7に調整)=55/45(体積比)
流速:1.0mL/min
検出器:RI、UV(検出波長210nm)。
【0038】
<中間体合成例1>
攪拌翼、温度計、冷却管を備えた1L4つ口フラスコに、イソプレノールのエチレンオキシド平均10モル付加物(以下、「IPN10」とも称する。水酸基価106.5(mgKOH/g))を400g、エピクロルヒドリン351.7g、48%水酸化ナトリウム水溶液94.9gを仕込み、50℃に保ちながら6時間攪拌させて、反応させた。反応後、生成する塩を除去した後、残った有機層からエピクロルヒドリンと水を除去して、中間体(A)(下記一般式(4)において、nが平均10である構造の化合物)を含む反応液を451.2gを得た。液体クロマトグラフィーによる分析の結果、中間体(A)が324.9g、IPN10が64.1g含まれていた。
【0039】
【化7】

【0040】
<実施例1>
次に、攪拌翼、温度計、冷却管を備えた200mL4つ口フラスコに、上記中間体(A)を含む反応液を150.0gとn−ブタノール159.9gと粒状の水酸化カリウム2.4gを仕込み、80℃に保ちながら2時間攪拌させた。反応後、未溶解の水酸化カリウムを除去した後、残った有機層からn−ブタノールを除去して、単量体(1)(下記一般式(5)において、nが平均10である構造の化合物)の溶液を154.1g得た。液体クロマトグラフィーによる分析の結果、単量体(1)が95.4g、IPN10が11.1g含まれており、単量体(1)の収率は、原料の中間体(A)基準で74モル%であった。副生物(1)(下記一般式(6)においてnが平均10である構造の化合物)の生成は確認されなかった。
【0041】
【化8】

【0042】
【化9】

【0043】
<比較例2>
マグネチックスターラー、温度計、冷却管、滴下漏斗を備えた200mL4つ口フラスコに、IPN10を84.3g、ブチルグリシジルエーテル20.8g、粒状の水酸化カリウム1.1gを仕込み、90℃に保ちながら4時間攪拌させた。こうして、単量体(1)の溶液を106.2g得た。高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、単量体(1)が55.6g、IPN10が24.6g、副生物(1)が19.3g含まれていた。単量体(1)の収率は、原料のIPN10基準で53モル%であった。
なお、上記実施例においては、原料、触媒、水酸基含有化合物として特定の化合物を用いて反応を行った例が示されているが、反応機構はすべて同様であることから、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるグリシジル基含有ポリアルキレングリコール系単量体と水酸基含有化合物を反応させることを特徴とする下記一般式(2)で表される有機エーテル基含有ポリアルキレングリコール系単量体の製造方法
【化1】

上記一般式(1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。
【化2】

上記一般式(2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表し、Rは炭素数1〜20の有機基を表し、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基(−Y−O−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数を表す。

【公開番号】特開2012−56912(P2012−56912A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203746(P2010−203746)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】