説明

ポリアルキレンポリオールの製造方法

【課題】 成形性に優れる水膨張性シール材用ポリウレタン樹脂用のポリアルキレンポリオールを提供する。
【解決手段】 アルカリ金属水酸化物の存在下にて、活性水素含有化合物にエチレンオキサイドおよびアリルグリシジルエーテルからなるエポキシドを付加させた後、気相酸素濃度1.0体積%以下の雰囲気下で、アルカリ金属水酸化物を吸着剤を用いて除去して脱水することからなり、アリルグリシジルエーテルの多量体からなる副生物の含有量が0〜0.3重量%であることを特徴とするポリアルキレンポリオール(A1)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレンポリオールの製造方法に関する。さらに詳しくは、アリルグリシジルエーテルの多量体からなる副生物の含有量が極めて少ないポリアルキレンポリオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分子中にエチレン性不飽和結合を持つポリウレタン樹脂をゴムに添加して加硫成形を行い、水膨張性シール材として利用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。該ポリウレタン樹脂は、分子中にエチレン性不飽和結合を持つポリアルキレンポリオールからなるポリオール成分とポリイソシアネートからなるイソシアネート成分とを反応させて得られる。
該ポリアルキレンポリオールの製造方法としては、触媒として有機アルミニウム−水−アセチルアセトンを反応させてなる金属錯体(例えば、特許文献2参照)やアルカリ金属水酸化物(例えば、特許文献3参照)を用いて、活性水素含有化合物にアルキレンオキサイドおよびアリルグリシジルエーテルを付加させる方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭57−119972号公報
【特許文献2】特公昭45−12866号公報
【特許文献3】特開平8−193128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属錯体またはアルカリ金属水酸化物を用いる製造方法のいずれにおいても、アリルグリシジルエーテルの多量体からなる副生物含量が高くなり、得られるポリアルキレンポリオールが架橋体になるという問題があった。その結果、該ポリアルキレンポリオールから形成されるポリウレタン樹脂が架橋体となりゴム等の高分子弾性体への分散が著しく悪化、特に押出成形をした場合には形状が安定せず、また、水膨張性シール材として成形した場合は、均一な水膨張性が得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、アルカリ金属水酸化物の存在下にて、活性水素含有化合物にエチレンオキサイドおよびアリルグリシジルエーテルからなるエポキシドを付加させた後、気相酸素濃度1.0体積%以下の雰囲気下で、アルカリ金属水酸化物を吸着剤を用いて除去して脱水することからなり、アリルグリシジルエーテルの多量体からなる副生物の含有量が0〜0.3重量%であることを特徴とするポリアルキレンポリオール(A1)の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリアルキレンポリオール(A1)の製造方法、該(A1)から形成されてなる水膨張性ポリウレタン樹脂、および該水膨張性ポリウレタン樹脂を成形してなる水膨張性シール材は、下記の効果を奏する。
(1)アリルグリシジルエーテルの多量体からなる副生物含量が少ない。
(2)(A1)からなるポリオール成分およびイソシアネート成分から形成されてなる水膨張性ポリウレタン樹脂は、高分子弾性体への分散性が良好で、成形性に優れる。
(3)該水膨張性ポリウレタン樹脂を成形してなる水膨張性シール材は、水膨張後の強度低下が少なく、長期間の止水性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造方法において、活性水素含有化合物に付加させるエポキシドには、エチレンオキサイド(以下EOと略記)とアリルグリシジルエーテル(以下AGEと略記)が含まれ、必要により炭素数(以下Cと略記)3〜4のアルキレンオキサイド(以下AOと略記)を加えてもよい。これらの異種のエポキシドの付加形式としてはランダム付加および/またはブロック付加のいずれでもよいが、水膨張性シール材の止水性の観点から好ましいのはブロック付加である。
【0008】
(A1)を構成するEO単位の含量(重量%)は、後述する水膨張性ポリウレタン樹脂の体積水膨張倍率および後述する水膨張性シール材の水膨張後の強度の観点から好ましくは15〜99%、さらに好ましくは20〜95%、とくに好ましくは25〜90%である。
【0009】
(A1)を構成するAGE単位の含量(重量%)は、後述する水膨張性シール材の水膨張後の強度および後述する水膨張性ポリウレタン樹脂の成形性の観点から好ましくは1〜65%、さらに好ましくは3〜60%、とくに好ましくは5〜50%である。
【0010】
上記C3〜4のAOとしては、例えば、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−、1,3−、1,4−および2,3−ブチレンオキサイド、並びにこれらの2種以上の併用が挙げらる。
必要により(A1)を構成する該C3〜4のAO単位の含量(重量%)は、後述する水膨張性ポリウレタン樹脂の体積水膨張倍率の観点から好ましくは25%以下、さらに好ましくは22%以下、とくに好ましくは20%以下、最も好ましくは15%以下である。
【0011】
上記活性水素含有化合物としては、水およびC2以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]400以下の、下記(i)低分子ポリオール、(ii)多価フェノールおよび(iii)低分子アミン、並びにそれらのAO(C2〜12)付加物等が挙げられる。
C2〜12のAOとしては、EO、PO、1,2−、1,3−、1,4−および2,3−ブチレンオキシド、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、必要によりその他のAOおよび置換AOを併用してもよい。その他のAOおよび置換AOとしては、C5〜12のα−オレフィンのエポキシ化物、スチレンオキシドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリンおよびエピブロモヒドリン等)等が挙げられる。
【0012】
(i)低分子ポリオール
C2〜20またはそれ以上の2価アルコール、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1
,2−、2,3−、1,3−およ
び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等]、C6〜10の脂環含有2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等]、C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトール(以下それぞれGR、TMP、PE、SOおよびDPEと略記)、1,2 ,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[例えば蔗糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、およびグリコシド(メチルグルコシド等)]等。
【0013】
(ii)多価フェノール
C6〜18の2価フェノール、例えば単環2価フェノ ール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、−F、−C、−B、−ADおよび−S、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)、および縮合多環2価フェノール[ジヒドロキシナフタレン(1,5−ジヒドロキシナフタレン等)、ビナフトール等];並びに3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシノール、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、グリオキザール、アセトン)低縮合物(フェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂、レゾールの中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルタールアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)等。
【0014】
(iii) 低分子アミン
アンモニア;C2〜20の脂肪族モノまたはポリアミン[C2〜20のアルカノールアミン(モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等)、C1〜20のアルキルアミン(n−ブチルアミン、オクチルアミン等)、C2〜6のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、C4〜20のポリアルキレンポリアミン(アルキレン基のCが2〜6のジアルキレントリアミン〜ヘキサアルキレンヘプタミン、例えば、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミン)];C6〜20の芳香族モノまたはポリアミン(アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン等)、C4〜20の脂環含有モノまたはポリアミン(シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン等)、C4〜20の複素環含有アミン(ピペラジン、アミノエチルピペラジン等)等。
これらの(i)〜(iii)のうち、後述する水膨張性ポリウレタン樹脂の水膨張後の強度の観点から好ましいのは、(i)および(ii)、さらに好ましいのは2〜3価のアルコール、ビスフェノール、それらのAO付加物、およびそれらの併用である。
【0015】
上記活性水素含有化合物のうち、(i)〜(iii)のAO付加物のMnは、反応前の取り扱い易さおよびエポキシドの反応率向上の観点から好ましくは500〜6,000、さらに好ましくは1,000〜5,000である。
【0016】
本発明のポリアルキレンポリオール(以下、PAPと略記)(A1)は、アルカリ金属水酸化物の存在下にて、上記活性水素含有化合物にEOおよびAGEからなるエポキシド(必要によりC3〜4のAOを加えたエポキシド、以下同じ。)を付加させた後、気相酸素濃度1.0(好ましくは0.5、さらに好ましくは0.3)体積%以下の雰囲気下で、アルカリ金属水酸化物を吸着剤を用いて除去して脱水することにより製造される。気相酸素濃度が1.0体積%を超えると酸素に起因してAGEの多量体からなる副生物が反応生成物の重量に基づいて0.3%を超えることとなり、結果的に水膨張性ポリウレタン樹脂の成形性が悪化するため好ましくない。(A1)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量は、GPC法により測定することができる。
(A1)の製造方法は、具体的には、アルカリ金属水酸化物の存在下、活性水素含有化合物にEOおよびAGEからなるエポキシドを付加させる[I]反応工程、アルカリ金属水酸化物を吸着剤を用いて吸着させ、ろ過除去する[II]ろ過工程、およびろ過物を減圧下で脱水する[III]脱水工程からなる。
【0017】
[I]の反応工程においては、反応温度は、エポキシドの反応率向上およびAGEのアリル基の異性化(プロペニル転位)抑制の観点から、好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃、反応圧力は、同様の観点から好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.4MPa以下である。
【0018】
触媒として用いられるアルカリ金属水酸化物は、通常低分子活性水素化合物に添加され、脱水(好ましくは低分子活性水素化合物中の水分が0.1重量%以下)された後、EOおよびAGEからなるエポキシドを付加重合させる。アルカリ金属水酸化物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの水酸化物が挙げられる。
【0019】
アルカリ金属水酸化物の使用量は、エポキシドの反応率向上およびAGEのアリル基の異性化(プロペニル転位)抑制の観点から、反応終了時のPAP(A1)の重量に基づいて、好ましくは0.01〜0.3%、さらに好ましくは0.05〜0.2%である。
【0020】
[II]のろ過工程では、反応生成物が得られた反応容器内に不活性ガス(窒素、アルゴン等)を導入しながら、反応容器内の気相酸素濃度を1.0(好ましくは0.5、さらに好ましくは0.3)体積%以下にした後、反応生成物の重量に基づいて好ましくは0.1〜3さらに好ましくは0.5〜2%の水を添加して、70〜80℃まで昇温し、直ちにアルカリ金属水酸化物の吸着剤を投入した後、約30分撹拌、混合してからろ過が行われる。
【0021】
上記吸着剤としては、合成珪酸塩、ハイドロタルサイト、マグネシア−アルミナ、活性白土、活性アルミナ、合成ゼオライトおよびイオン交換樹脂からなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
合成珪酸塩としては、合成珪酸マグネシウム〔キョーワード600[商品名、協和化学工業(株)製]、トミタAD600[商品名、富田製薬(株)製]等〕、合成珪酸アルミニウム〔シリカアルミナ[商品名、触媒化成工業(株)製]、キョーワード700[商品名、協和化学工業(株)製]、トミタAD700[商品名、富田製薬(株)製]等〕等;ハイドロタルサイトとしては、天然ハイドロタルサイト、合成ハイドロタルサイト〔キョーワード500、キョーワード1000[商品名、いずれも協和化学工業(株)製]等〕;マグネシア−アルミナとしては、キョーワード2000[商品名、協和化学工業(株)製]等;活性白土としてはガレオンアース[商品名、水澤化学工業(株)製]、活性アルミナとしては、ネオビード[商品名、水澤化学工業(株)製]等;合成ゼオライトとしては、ミズカシーブス[商品名、水澤化学工業(株)製]等;イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂〔アーバンライトIR120B[商品名、ローム・アンド・ハース(株)製]等〕、陰イオン交換樹脂〔アーバンライトIR900A[商品名、ローム・アンド・ハース(株)製]等〕等、が挙げられる。
これらのうちアルカリ金属の吸着量の観点から好ましいのは合成珪酸マグネシウム、合成珪酸アルミニウムである。
吸着剤の使用量は、PAP(A1)反応生成物の重量に基づいてアルカリ金属吸着量および吸着剤からの酸素持ち込み抑制の観点から好ましくは0.1〜2%、さらに好ましくは0.5〜1%である。
【0022】
[III]の脱水工程は、不活性ガス(窒素、アルゴン等)を気相中または液中から通じ気相酸素濃度1.0体積%以下で行われる。脱水方法としては、AGEの分解または多量体からなる副生物抑制の観点から連続式またはバッチ(回分)式脱水方法で行うことが好ましい。連続式とは、ろ過後のろ液を減圧下、縦長のエバポレータ上部から中に噴霧し、エバポレーター下部に貯まったろ液がある水分値になるまでろ液を連続的に別ラインを通してエバポレーター上部に送り、脱水を繰り返す方法であり、回分式とは、ろ過後のろ液を脱水槽に貯め、減圧下、撹拌しながら脱水する方法である。
脱水温度は、脱水時間短縮およびAGEの分解または多量体からなる副生物抑制の観点から好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃である。
【0023】
(A1)のMnは、(A1)から形成されてなる後述の水膨張性シール材の機械特性および該シール材の水膨張後の強度の観点から好ましくは220〜8,000、さらに好ましくは260〜7,000、とくに好ましくは300〜6,000である。
また、(A1)の官能基数は、水膨張性ポリウレタン樹脂の成形性の観点から好ましくは2〜3、さらに好ましくは2である。
【0024】
(A1)の重量に基づく、AGEの多量体からなる副生物の含有量は0〜0.3%、水膨張性ポリウレタン樹脂の成形性の観点から好ましくは0〜0.1%である。
【0025】
本発明のPAP(A1)には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により酸化防止剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、トコフェロール化合物(ビタミンE等)、および下記のフェノール化合物(ヒンダードフェノール化合物等)が挙げられる。
ヒンダードフェノール化合物:
(1)単環式ヒンダードフェノール
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、6−t−ブチル−2,4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、ジオクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスホネート、ジエチル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスホネート、6−(4−オキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン等;
(2)二環ヒンダードフェノール
4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノール)、4,4−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(6−ブチル−4−メチルフェノール)、1,6−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン等;
(3)多環(三環またはそれ以上)ヒンダードフェノール
1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等。
【0026】
酸化防止剤の使用量は、(A1)の重量に基づいて、酸化防止および工業上の観点から好ましくは0.01〜0.5%、さらに好ましくは0.05〜0.3%である。
酸化防止剤を添加、混合する方法には特に限定はなく、従来公知の混合装置を用いることができる。また、添加する時期についても特に限定はないが、(A1)の製造前の原料に添加、混合する、(A1)の製造工程中で添加、混合する、または、(A1)の製造後に添加、混合する、のいずれの方法で行ってもよい。
【0027】
本発明の水膨張性ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分(A)とイソシアネート成分(B)から形成される。
ポリオール成分(A)には、上記PAP(A1)、(A1)以外の、EO単位を99重量%以下含有する高分子ポリオール(A2)および低分子ポリオール(A3)が含まれる。
(A2)としては、前記(i)低分子ポリオール、(ii)多価フェノールおよび(iii)低分子アミンにAO(C2〜12)を付加させたMn1,000〜8,000のポリオール等が挙げられる。これらの高分子ポリオールは、単独または併用して使用することができる。
【0028】
低分子ポリオール(A3)としては、前記(i)および、前記(i)、(ii)および(iii)のAO(C2〜12)付加物(Mn1,000未満)等のポリオールが挙げられる。これらの低分子ポリオールは、単独または併用して使用することができる。
【0029】
ポリオール成分(A)中の(A1)の割合は、後述する水膨張性シール材の水膨張後の強度および水膨張性ポリウレタン樹脂の成形性の観点から好ましくは5〜98重量%、さらに好ましくは10〜90重量%である。
【0030】
イソシアネート成分(B)を構成するポリ(n=2〜3、好ましくは2)イソシアネートとしては、非芳香族ポリイソシアネート、例えばC(イソシアネート基中の炭素を除く、以下同様。)2〜18の脂肪族ポリイソシアネート[エチレンジイソシアネート(ジイソシアネートは以下DIと略記)、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ドデカメチレンDI、2,2,4−トリメチルヘキサンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート等];C8〜15の脂環式ポリイソシアネート[イソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンDI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI(水添TDI)、ビス(2−イソシアネートエチル)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート等];C8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート[キシリレンDI(XDI)、テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)等];およびこれらのポリイソシアネートの変性(カーボジイミド変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、ウレア変性、ビューレット変性、イソシアヌレート変性等)物等が挙げられる。
これらのうち耐薬品性および耐候性の観点から好ましいのは、脂肪族または脂環式ポリイソシアネート(とくにDI)、さらに好ましいのはHDI、IPDIおよび水添MDIである。
【0031】
上記水膨張性ポリウレタン樹脂の製造に際して、イソシアネート成分(B)とポリオール成分(A)との反応割合[NCO/OH当量比]は、後述する水膨張性シール材の水膨張後の強度および水膨張性ポリウレタン樹脂の成形性の観点から好ましくは0.8/1〜1/1、さらに好ましくは0.9/1〜0.98/1である。該反応割合は、最終的な反応割合であり、後述する製造方法(ワンショット法またはプレポリマー法)の違いで通常変わることはない。
【0032】
水膨張性ポリウレタン樹脂の製造方法としては、通常用いられる方法(ワンショット法、プレポリマー法等)が挙げられ、これらのうち、得られるポリウレタン樹脂の品質のばらつきが少ない観点から好ましいのはプレポリマー法である。次にプレポリマー法による製造方法を例示する。
まず、中間体である末端イソシアネート基含有プレポリマーは、ポリオール成分(A)の一部とイソシアネート成分(B)[NCO/OH当量比は好ましくは1.2/1〜10/1]とを、70〜150℃で常法により反応させて得られる。得られたプレポリマー中のイソシアネート基含有量[NCO含量(重量%)]は、好ましくは2〜15%、さらに好ましくは3〜10%である。
次に、該プレポリマーと上記(A)の残部を混合して反応させ[反応割合は前記の最終的な反応割合となるように反応させる。]、金型等に注型した後、好ましくは70〜120℃、さらに好ましくは80〜110℃で、0.5〜10時間反応させることにより水膨張性ポリウレタン樹脂が得られる。
【0033】
水膨張性ポリウレタン樹脂の製造に際しては、必要により種々のウレタン化反応触媒を使用することができる。
該触媒としては、3級アミン[C6〜20、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、N−メチル−N−ジメチルアミノエチルピペラジン、ピリジン等]およびこれらの酸ブロック化合物、カルボン酸(C2〜20)の金属塩(酢酸ナトリウム、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシドまたはフェノキシド(C1〜12、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムフェノキシド)、4級アンモニウム塩(C4〜12、例えばテトラエチルヒドロキシルアンモニウム)、イミダゾール化合物(C3〜12、例えばイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール)、キレート金属塩(C5〜20、例えばアセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトン鉄)、およびスズ、アンチモン等の金属を含有する有機金属化合物(C3〜30、例えばテトラフェニルスズ、トリブチルアンチモンオキサイド)等が挙げられる。これらの触媒は、単独または併用して使用することができる。これらのうち好ましいのはカルボン酸の金属塩
、さらに好ましいのはオクチル酸鉛、オクチル酸ビスマスである。
ウレタン化反応触媒の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.001〜3%である。
【0034】
本発明の水膨張性シール材は、上記水膨張性ポリウレタン樹脂と加硫剤、または該水膨張性ポリウレタン樹脂、加硫剤にさらに必要により高分子弾性体を加えてなるものである。
加硫剤としては、通常ゴムの加硫に用いられるものでよく、イオウ、塩化イオウ、有機過酸化物(C4〜24、例えばベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ラウリルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート)、オキシム(C6〜20、例えばp−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム)、金属酸化物(マグネシア、リサージ等)、アルキルフェノール樹脂〔タッキロール201[商品名、田岡化学工業(株)製]等〕、ポリチオール化合物[TMPトリチオグリコレート、TMPトリ(3−メルカプトプロピオネート)、グリコールジメルカプトプロピオネート、グリコールジメルカプトアセテート、PEテトラチオグリコレート、ジPEヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)など]、ポリアミン化合物(アルデヒド−アミン縮合物、グアニジン化合物等)、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メチルペンタン、4−t−ブチルアゾ−4−シアノ−吉草酸等)等が挙げられる。これらの加硫剤は1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
これらのうちで好ましいのは、取り扱いの容易さ等の観点から、硫黄および硫黄と他の加硫剤との併用、とくに硫黄である。
【0035】
高分子弾性体としては、天然ゴム、合成ゴム[スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ブチルゴム等]およびそれらの再生ゴム、並びにエチレン性不飽和結合を側鎖に有する非水膨張性ポリウレタンゴム(PU)等が挙げられる。
【0036】
非水膨張性ポリウレタンゴム(PU)としては、ポリエーテルポリウレタンゴム〔ミラセンCM[商品名、TSE(株)製]等〕およびポリエステルポリウレタンゴム〔ミラセン76[商品名、TSE(株)製]等〕が挙げられる。
【0037】
上記高分子弾性体のうち、水膨張性ポリウレタン樹脂との相溶性の観点から好ましいのは、溶解度パラメーター(Fedors法による溶解度パラメーター。以下SP値と略記。)が8.4以上の合成ゴムであり、さらに好ましいのは、SBR、CR、NBR、およびPUである。
ここにおいて、SP値とは、下記のとおり凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表されるものである。

[SP]=(△E/V)1/2

式中、△Eは凝集エネルギー密度、Vは分子容を表す。Robert F.Fedorsらにより計算されたSP値は、例えば、Polymer engineering and
science、第14巻、147〜154頁に記載されている。
【0038】
本発明の水膨張性シール材には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、充填剤、顔料、軟化剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、ファクチス、老化防止剤および脱水剤からなる群から選ばれる1種または2種以上のゴム用添加剤を含有させることができる。
【0039】
充填剤としては、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびクレー等;
顔料としては、無機顔料(酸化チタン、ベンガラ、黄鉛、硫化カドミウム、群青等)、および有機顔料(アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系等)等;
軟化剤としては、潤滑油、脂肪酸油、鉱物油(パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、石油アスファルト等)、タール系軟化剤(タール、クマロン−インデン樹脂等)、エステル系軟化剤(フタル酸誘導体オイル、アジピン酸誘導体オイル、安息香酸誘導体オイル、セバシン酸誘導体オイル、マレイン酸誘導体オイル、フマル酸誘導体オイル、トリメリット酸誘導体オイル、クエン酸誘導体オイル、オレイン酸誘導体オイル、リシノール酸誘導体オイル、ステアリン酸誘導体オイル、リン酸誘導体オイル、グリコール酸誘導体オイル等)、合成樹脂系軟化剤(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等)等;
【0040】
加硫促進剤としては、グアニジン化合物(ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等)、チアゾール化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等)、チウラム化合物(テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等)、スルフェンアミド化合物(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等)、金属化合物(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、ジベンゾチアジルジスルフィド塩化亜鉛錯体等)等;
加硫促進助剤としては、C8〜24の脂肪酸およびその誘導体(ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸亜鉛等)、金属酸化物(酸化亜鉛等)、金属塩(炭酸亜鉛等)等;
【0041】
ファクチスとしては、黒サブ、白サブ、あめサブおよび無硫黄ファクチス等;
老化防止剤としては、アミン(N−フェニル−α−ナフチルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等)、アミンケトン(ジフェニルアミンと
アセトンの反応物等)、前記ヒンダードフェノール化合物、ジチオカルバミン酸塩(ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等)等;
脱水剤としては、酸化カルシウム、硫酸カルシウム(半水石膏)、塩化カルシウム、モレキュラーシーブ等、が挙げられる。
【0042】
水膨張性シール材の全重量に基づく上記ゴム用添加剤全体の使用量は、通常100%以下、好ましくは0.01〜60%である。
各ゴム用添加剤の使用量は、充填剤は、通常60%以下、好ましくは5〜50%;顔料は、通常5%以下、好ましくは0.1〜2%;軟化剤は、通常20%以下、好ましくは3〜10%;加硫促進剤、加硫促進助剤、ファクチス、老化防止剤および脱水剤は、それぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜3%である。
【0043】
本発明の水膨張性シール材は、例えばバンバリーミキサーまたはニーダーを用いて、ポリウレタン樹脂、加硫剤、および必要により高分子弾性体、上記ゴム用添加剤の一部(軟化剤、加硫促進助剤、老化防止剤等)等を混練後の温度が80〜120℃になるように混練した後、加硫剤および必要によりその他の添加剤(加硫促進剤、脱水剤等)をロール上で外観が均一になるまで混練し、押出成形またはプレス成形することにより得られる。
成形温度は加硫剤の種類により設定されるが、水膨張性シール材の水膨張後の強度および水膨張性シール材の機械特性の観点から好ましくは140〜200℃である。
【0044】
本発明の水膨張性シール材は、23℃の精製水(蒸留水または脱イオン水、以下同じ。)中で、通常1.2〜5倍の飽和体積水膨張倍率を有する。飽和体積水膨張倍率は、水膨張後の止水効果および水膨張後の引張強度の観点から好ましくは1.4〜4倍、さらに好ましくは1.5〜3倍である。ここにおける飽和体積水膨張倍率とは下記の方法で求められるものである。
(飽和体積水膨張倍率)
水膨張性シール材の帯状体から20×20×2mmの試験片を採取し、この試験片を23℃の精製水中に浸漬した際の体積を一定期間(日単位)毎に測定し、次式にて体積水膨張倍率を算出する。

体積水膨張倍率(倍)=膨張後の体積/膨張前の体積

1日当たりの体積水膨張倍率の増加率が0.01%以下となった時点での倍率(前日の倍率の1.0001倍以下となった時点の倍率)を、試験片の飽和体積水膨張倍率とする。
【0045】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において部は重量部、%は重量%を表す
【0046】
以下の実施例および比較例で使用した原料の組成、記号は次の通りである。
ポリエーテルポリオール(1):ビスフェノールAのEO/PO(重量比80/20)
ランダム付加物(Mn4,000)
ポリエーテルポリオール(2):ビスフェノールAのPO付加物(Mn2,000)
ポリエーテルポリオール(3):ビスフェノールAのPO付加物(Mn600)
ポリエーテルポリオール(4):ポリプロピレングリコール(Mn1,000)
触媒 (1):オクチル酸鉛
高分子弾性体(1):SBR[商品名「JSR SL552」、JSR(株)製]
充填剤 (1):カーボンブラック[商品名「旭#50」、旭カーボン(株)製]
(2):炭酸カルシウム[商品名「ソフトン1500」、備北粉化工業
(株)製]
加硫促進助剤(1):ステアリン酸
(2):酸化亜鉛
軟化剤 (1):芳香族系鉱物油[商品名「ダイナプロセスオイルAC−460」、
出光興産(株)製]
(2):ジプロピレングリコールジベンゾエート[商品名「アデカサイザー
PN6120」、旭電化工業(株)製]
ファクチス (1):黒サブ[商品名「黒サブ純種」、天満サブ化工(株)製]
加硫剤 (1):硫黄
加硫促進剤 (1):ジベンゾチアジルジスルフィド
(2):2−メルカプトベンゾチアゾール
脱水剤 (1):酸化カルシウム
【0047】
実施例1
十分に乾燥した耐圧反応容器にDEG53.4部、水酸化カリウム2部を仕込み、密閉した後、120℃で減圧脱水を行い、水分0.05%以下であることを確認した。減圧下、容器内温度を95℃まで冷却してから、EO836.6部を90〜100℃の範囲で釜下から導入し、2時間、90〜100℃で反応させた。反応容器内を減圧にした後、AGE110部を90〜100℃の範囲で釜下から導入して2時間90〜100℃で反応させた(ブロック付加)。70℃まで冷却した後、反応容器上部から窒素を吹き込み、気相酸素濃度0%の雰囲気下、1%の水を加えて撹拌、混合した。次いでキョーワード600[商品名、協和化学工業(株)製。以下同じ。]5部を加えて70〜80℃で撹拌混合して水酸化カリウム触媒を吸着処理し、窒素加圧下(気相酸素濃度0%)でろ過した。2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(酸化防止剤)0.5部を添加し、気相酸素濃度0%で加熱して95〜105℃範囲とし、その後減圧脱水した。水分が0.05%になった時点で直ちに冷却し、水酸基価56.1mgKOH/g(以下、数値のみを示す。)のPAP(A1−1)を得た。(A1−1)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0%であった。
【0048】
実施例2
十分に乾燥した耐圧反応容器にDEG53.4部、水酸化カリウム2部を仕込み、密閉した後、120℃で減圧脱水を行い、水分0.05%以下であることを確認した。減圧下、容器内温度を95℃まで冷却してから、EO896.6部、AGE50部を予め混合し、90〜100℃の範囲で釜下から導入して2時間、90〜100℃で反応させた(ランダム付加)。70℃まで冷却した後は、実施例1と同様に行い、水酸基価56.1のPAP(A1−2)を得た。(A1−2)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0%であった。
【0049】
実施例3
十分に乾燥した耐圧反応容器にビスフェノールA114部、水酸化カリウム2部を仕込み、密閉した後、EO776部を90〜100℃の範囲で釜下から導入し、2時間、90〜100℃で反応させた。反応容器内を減圧にした後、AGE110部を90〜100℃の範囲で釜下から導入して2時間90〜100℃で反応させた(ブロック付加)。70℃まで冷却した後は、実施例1と同様に行い、水酸基価56.1のPAP(A1−3)を得た。(A1−3)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0%であった。
【0050】
実施例4
実施例2において、DEG53.4部、EO896.6部、AGE50部に代えて、DEG101.6部、EO298.4部、PO100部、AGE500部を用いたこと以外は実施例2と同様に行い(ランダム付加)、水酸基価112.2のPAP(A1−4)を得た。(A1−4)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0%であった。
【0051】
実施例5
実施例1において、反応終了後から減圧脱水開始までの間は窒素を吹き込みながら、気相酸素濃度0.5%で行ったこと以外は実施例1と同様に行い(ブロック付加)、水酸基価56.1のPAP(A1−5)を得た。(A1−5)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0.1%であった。
【0052】
実施例6
実施例1において、反応終了後から減圧脱水開始までの間は窒素を吹き込みながら、気相酸素濃度1.0%で行ったこと以外は実施例1と同様に行い(ブロック付加)、水酸基価56.1のPAP(A1−6)を得た。(A1−6)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0.3%であった。
【0053】
実施例7
実施例2において、DEG53.4部、EO896.6部、AGE50部に代えて、EG20部、EO950部、AGE30部を用いたこと以外は実施例2と同様に行い(ランダム付加)、水酸基価36.2のPAP(A1−7)を得た。(A1−7)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0%であった。
【0054】
実施例8
実施例2において、DEG53.4部、EO896.6部、AGE50部に代えて、EG10部、EO980部、AGE10部を用いたこと以外は実施例2と同様に行い(ランダム付加)、水酸基価18.1のPAP(A1−8)を得た。(A1−8)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0%であった。
【0055】
実施例9
実施例2において、DEG53.4部、EO896.6部、AGE50部に代えて、ポリエーテルポリオール(4)200部、EO250部、PO250部、AGE300部を用いたこと以外は実施例2と同様に行い(ランダム付加)、水酸基価22.4のPAP(A1−9)を得た。(A1−9)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0%であった。
【0056】
実施例10
実施例2において、DEG53.4部、EO896.6部、AGE50部に代えて、DEG101.6部、EO200部、PO98.4部、AGE600部を用いたこと以外は実施例2と同様に行い(ランダム付加)、水酸基価112.2のPAP(A1−10)を得た。(A1−10)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0%であった。
【0057】
実施例11
実施例2において、EO896.6部、AGE50部に代えて、EO150部、PO146.6部、AGE650部を用いたこと以外は実施例2と同様に行い(ランダム付加)、水酸基価56.1のPAP(A1−11)を得た。(A1−11)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で0%であった。
【0058】
比較例1
実施例1において、窒素加圧下でのろ過を空気加圧下でのろ過に代え、反応終了後から減圧脱水開始までの間は大気中(気相酸素濃度21%)で行ったこと以外は実施例1と同様に行い(ブロック付加)、水酸基価56.1のPAP(比A1−1)を得た。(比A1−1)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で10.0%であった。
【0059】
比較例2
実施例1において、反応終了後から減圧脱水開始までの間は窒素を吹き込みながら、気相酸素濃度3.0%で行ったこと以外は実施例1と同様に行い(ブロック付加)、水酸基価56.1のPAP(比A1−2)を得た。(比A1−2)中の、AGEの多量体からなる副生物の含量はGPC測定で1.0%であった。
【0060】
実施例1〜11および比較例1〜2における水酸基価および副生物の含量の測定方法は以下のとおりである。結果を表1に示す。
(1)水酸基価
JIS K7117−1:1999記載の「ポリウレタン用ポリエーテル試験方法」に従った。
(2)GPCによる副生物の含量の測定方法
機種 :HLC−8120[東ソー(株)製]
カラム :TSK gel SuperH4000
TSK gel SuperH3000
TSK gel SuperH2000 [いずれも東ソー(株)製]
カラム温度:40℃
検出器 :RI
溶媒 :テトラヒドロフラン
流速 :0.6ml/分
試料濃度 :0.25〜0.50%
注入量 :10μl
標準物質 :ポリエチレングリコール [TSK STANDARD POLYETHYL
ENE OXIDE、東ソー(株)製]
【0061】
【表1】

【0062】
製造例1
ポリエーテルポリオール(1)822部とイソホロンジイソシアネート178部を120℃で3時間反応させてNCO含量が5.0%のプレポリマー(1)を得た。
【0063】
製造例2
PAP(A1−2)781部とイソホロンジイソシアネート219部を120℃で3時間反応させてNCO含量が5.0%のプレポリマー(2)を得た。
【0064】
製造例3
ポリエーテルポリオール(1)807部と水添MDI193部を120℃で3時間反応させてNCO含量が4.5%のプレポリマー(3)を得た。
【0065】
製造例4
ポリエーテルポリオール(1)844部とHDI156部を120℃で3時間反応させてNCO含量が6.0%のプレポリマー(4)を得た。
【0066】
製造例5〜18
表2の組成(部)で配合し、100℃で10時間反応させて、水膨張性ポリウレタン樹脂(1)〜(14)を得た。該ポリウレタン樹脂について、下記の試験法に準じてムーニー粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0067】
実施例12〜23
表3の組成に従って、配合成分のうちの<混練成分1>をバンバリーミキサーで10分間混練した。次に、<混練成分2>を加え、2本ロールで30分間混練した。混練物は、押出成形機を用いて断面がタテ20mm×ヨコ2mmの棒状に押出した後、160℃で10分間加熱して水膨張性シール材成形品を得た。
【0068】
比較例3〜4
表3の組成に従って、実施例12〜23と同様にして、水膨張性シール材成形品を得た。
【0069】
実施例12〜23および比較例3〜4の各成形品について、押出成形性、引張強さ、伸び、飽和体積水膨張倍率、水浸漬1ヶ月後の引張強さ、伸びを測定した。結果を表3に示す。試験法は以下のとおりである。
<試験法>
(1)ムーニー粘度
JIS K6300−1:2001「未加硫ゴム―物理特性―第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に従い、ムーニー粘度を測定した。
(2)押出成形性
ASTM D2230−96(2002)e1(B評価)に準じ、ガーベダイ押出成形品について、押出成形性を下記の基準で評価した。
<評価基準>
次の[1]、[2]の項目について上記ASTMに記載された評価基準に従った。
すなわち、[1]の評価結果と[2]の評価結果を順番に記載し、例えば、[1]と[2]でどちらも優秀であれば評価は「10A」、[1]と[2]でどちらも劣悪であれば評価は「1E」と記載する。
[1]30°エッジ部分の鋭さ並びに連続性
1(悪)〜10(良)の10段階で評価。
[2]表面の平滑性
A(良)〜E(悪)の5段階で評価。
(3)引張強さ、伸び
JIS K6251:2004記載の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、2mm厚にプレス成形したシートから3号ダンベル試験片を打ち抜き、測定した。水膨張後の測定は、上記の試験片を23℃の精製水中に1ヶ月間浸漬してから行った。
(4)飽和体積水膨張倍率
成形品から20×20×2mmの試験片を採取し、この試験片を23℃の精製水中に浸漬した際の体積を一定期間毎に測定し、次式にて体積水膨張倍率を算出した。

体積水膨張倍率(倍)=膨張時の体積/膨張前の体積

また、1日当たりの体積膨張倍率の増加量が0.01%以下となった時点での体積膨倍率を試験片の飽和体積水膨張倍率とした。
【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

(注*1)膨張により形状が維持できなかった。
【0072】
実施例の結果から、本発明の製造方法で得られるPAPは、AGEの多量体からなる副生物含量が少なく、該PAPから形成される水膨張性ポリウレタン樹脂は成形性に優れ、該水膨張性ポリウレタン樹脂を成形してなる水膨張性シール材は水膨張後の強度低下が少なく、長期間の止水性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の製造方法で得られるPAPは、アリルグリシジルエーテル(AGE)の多量体からなる副生物含量が少ないという効果を奏することから、成形性に優れる水膨張性シール材用ポリウレタン樹脂用原料として、(1)押出成形、あるいは非膨張性ゴムと共押出成形してなる各種断面形状のセグメント用シール材、(2)中空状や板状に成形してなる建築用ガスケット等、(3)断面が円形のリング状に成形してなるグラウトホール等の水膨張性パッキン等、の幅広い用途に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属水酸化物の存在下にて、活性水素含有化合物にエチレンオキサイドおよびアリルグリシジルエーテルからなるエポキシドを付加させた後、気相酸素濃度1.0体積%以下の雰囲気下で、アルカリ金属水酸化物を吸着剤を用いて除去して脱水することからなり、アリルグリシジルエーテルの多量体からなる副生物の含有量が0〜0.3重量%であることを特徴とするポリアルキレンポリオール(A1)の製造方法。
【請求項2】
(A1)が、エチレンオキサイド単位を15〜99重量%、およびアリルグリシジルエーテル単位を1〜65重量%含有してなるポリアルキレンポリオールである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の製造方法で得られるポリアルキレンポリオール(A1)。
【請求項4】
請求項3記載の(A1)を含有するポリオール成分とイソシアネート成分から形成されてなる水膨張性ポリウレタン樹脂からなる水膨張性シール材。
【請求項5】
(A1)の含有量がポリオール成分の重量に基づいて5〜98%である請求項4記載のシール材。
【請求項6】
さらに、高分子弾性体を加えてなる請求項4または5記載のシール材。

【公開番号】特開2008−156626(P2008−156626A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309185(P2007−309185)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】