説明

ポリアレーンアゾール重合体の製造方法

本発明はポリアレーンアゾール重合体の製造方法に関し、この方法は、下記の段階:a)アレーンアゾール生成用単量体、好適には2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、金属粉末および場合によりPをポリ燐酸中で接触させることで混合物を生じさせ、b)前記混合物を50℃から110℃の温度で混合し、c)前記混合物を約145℃以下の温度で更に混合することでオリゴマーを含有して成る溶液を生じさせ、d)場合により、前記溶液に脱気を受けさせ、そしてe)前記オリゴマーの溶液を160から250℃の温度で重合体が生じるに充分な時間反応させる段階を含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2005年3月28日付けで出願した米国出願番号60/665,737(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)の利点を請求するものである。
【0002】
本発明は、剛体棒状重合体、前記重合体の製造方法、そして前記重合体を含有して成るフィラメントおよびヤーンの製造に関する。
【背景技術】
【0003】
過去の数十年に渡る重合体化学および技術の進展によって、高性能の重合体繊維を生じさせることが可能になった。例えば、剛体棒状の複素環式重合体の液晶重合体溶液を紡績して湿った状態の繊維を生じさせ、溶媒を除去することで前記繊維を乾燥させそしてその乾燥させた繊維を熱で処理することで、その液晶溶液から高強度の繊維を生じさせることができる。高性能の重合体繊維の例にはポリ(p−フェニレンベンゾビスチアゾール)(「PBZT」)およびポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(「PBO」)が含まれる。
【0004】
繊維の強度は典型的に1つ以上の重合体パラメーターと相互に関係しており、それらには、組成、分子量、分子間相互作用、バックボーン、残存溶媒もしくは水、高分子配向および工程履歴が含まれる。繊維の強度は、典型的に、例えば重合体の長さ(即ち分子量)、重合体の配向および強力な分子間相互作用引力の存在などに伴って高くなる。高分子量の剛体棒状重合体は繊維に紡績することが可能な重合体溶液(「ドープ(dopes)」)を生じさせるに有用であり、典型的には、分子量を高くすると結果として繊維の強度が高くなる。
【0005】
剛体棒状重合体の分子量は典型的に1つ以上の希溶液の粘度測定を行うことで監視されかつそれと相互に関係している。従って、重合体の分子量を監視する目的で典型的に希溶液の相対粘度(「Vrel」または「ηrel」または「nrel」)および固有粘度「Vinh」または「ηinh」または「ninh」)の測定値が用いられる。希重合体溶液の相対粘度と固有粘度は式
inh=ln(Vrel)/C
[式中、lnは自然対数関数であり、そしてCは重合体溶液の濃度である]
に従って関係している。Vrelは単位の無い比率であり、従って、Vinhは逆濃度の単位、典型的には1グラム当たりのデシリットル(「dl/g」)として表される。
【0006】
重合体鎖間に強い水素結合を有する剛体棒状重合体繊維、例えばポリピリドビスイミダゾールなどが特許文献1に記述されている。ポリピリドビスイミダゾールの例にはポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾールが含まれ、これの製造は、2,3,5,6−テトラアミノピリジンと2,5−ジヒドロキシテレフタル酸の縮合重合をポリ燐酸中で起こさせることで実施可能である。一次元もしくは二次元物、例えば繊維、フィルム、テープなどを製造しようとする時にはポリピリドビスイミダゾールの分子量を高くする必要があることが特許文献1に記述されているが、そのような分子量は、重合体をメタンスルホン酸に0.25g/dlの濃度で入れて25℃で測定した時の相対粘度(「Vrel」または「ηrel」)が少なくとも約3.5、好適には少なくとも約5、より特別には約10に等しいか或はそれ以上であることに相当する。特許文献1には、また、相対粘度が約12以上のポリ[ピ
リドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)]を用いると非常に良好な繊維紡績結果が得られかつ50を超える相対粘度(固有粘度が約15.6dl/g以上であることに相当する)を達成することができることも開示されている。従って、重合体溶液の粘度が更により高いとして特徴づけられる分子量が更により高い剛体棒状重合体、例えばポリピリドビスイミダゾールなどを生じさせるには、さらなる技術的進展が要求される。
【0007】
分子量がより高い剛体棒状ポリアレーンアゾール重合体を生じさせるにはさらなる技術的進展が必要である。
【特許文献1】Sikkema他の米国特許第5,674,969号
【0008】
発明の要約
本発明は、いくつかの面において、ポリアレーンアゾール重合体の製造方法に関し、この方法は、
a)アレーンアゾール生成用単量体(arenazole−forming monomers)、金属粉末および場合によりPをポリ燐酸中で接触させることで混合物を生じさせ、
b)前記混合物を約50℃から約110℃の温度で混合し、
c)前記混合物を約145℃以下の温度で更に混合することでオリゴマーを含有して成る溶液を生じさせ、
d)場合により、前記溶液に脱気を受けさせ、そして
e)前記オリゴマーの溶液を約160から約250℃の温度で重合体が生じるに充分な時間反応させる、
段階を含んで成る。
【0009】
いくつかの態様において、前記アレーンアゾール生成用単量体には、2,5−ジメルカプト−p−フェニレンジアミン、テレフタル酸、ビス−(4−安息香酸)、オキシ−ビス−(4−安息香酸)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ピリドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾール、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノヒドロキノン、2,5−ジアミノ−4,6−ジチオベンゼンまたはこれらの任意組み合わせが含まれる。特定の態様における前記アレーンアゾール生成用単量体は2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸である。そのような単量体は2,3,5,6−テトラアミノピリジンと2,5−ジヒドロキシテレフタル酸の複合体の形態であってもよい。
【0010】
段階a)に更に前記重合体用の連鎖停止剤を含めてもよい。適切な連鎖停止剤には安息香酸、安息香酸フェニルまたはオルソフェニレンジアミンが含まれる。
【0011】
特定の態様における前記金属粉末は錫粉末または鉄粉である。
【0012】
本発明のいくつかの態様における前記ポリ燐酸は重合後に少なくとも約81パーセントの相当P含有量を有する。更に別の態様における前記ポリ燐酸は重合後に少なくとも約82パーセントの相当P含有量を有する。
【0013】
いくつかの態様では、段階c)を約145℃以下の温度で実施してもよい。段階c)を制御せん断環境下で実施してもよい。いくつかの態様における前記制御せん断環境は1個以上の静的混合装置である。他の態様における前記制御せん断環境は押出し加工機である
。特定の好適な態様では、段階e)において制御せん断環境下で与えられるせん断速度が8秒−1以下であるようにする。
【0014】
いくつかの態様では、段階c)後に燐酸を添加することで前記混合物中の前記ポリ燐酸と任意のPを一緒にした濃度を低くする。適切な燐酸にはスーパー燐酸またはポリ燐酸が含まれる。
【0015】
段階e)に場合により多数の反応段階を含めて、各段階の温度を高くして行ってもよい。特定の態様では、段階e)における温度を約180℃から約200℃にする。いくつかの態様では、段階e)における時間を約1から約6時間にする。いくつかの態様では、段階e)における溶液の固体濃度パーセントを約10から約21重量パーセントにしてもよい。
【0016】
本発明の方法に、更に、下記の段階:
f)段階e)の重合体を含有して成る溶液からフィラメントを紡績する、
段階を含めてもよい。
【0017】
いくつかの態様では、段階a)の後の溶液に脱気を受けさせる。また、段階c)の後の溶液にも有利に脱気を受けさせてもよい。
【0018】
具体的な態様の詳細な説明
以下の詳細な説明を本開示の一部を構成する添付図および実施例に関連させて参考にすることで本発明をより容易に理解することができるであろう。本発明を本明細書に記述そして/または示す具体的なデバイスにも方法にも条件にもパラメーターにも限定するものでないことと本明細書で用いる用語は単に例として個々の態様を記述する目的で用いる用語であり、請求する発明の限定として解釈されるべきではないと理解されるべきである。また、添付請求項を包含する本明細書で用いる如き単数形「a」、「an」および「the」は複数形を包含し、かつ特定数値の言及は、本文で他の様式であると明らかに示さない限り、少なくともその特定値を包含する。ある範囲の値を示す場合の別の態様は、1つの特定値からそして/または他の特定値までを包含する。同様に、値を先行詞「約」を用いて近似値として表す場合、その特定値が別の態様を構成することは理解されるであろう。範囲は全部が包含かつ組み合わせ可能である。いずれかの変項がいずれかの成分またはいずれかの式の中に2回以上存在する場合、各存在におけるそれの定義は他の全ての存在におけるそれの定義から独立している。置換基および/または変項の組み合わせが許されるのはそのような組み合わせの結果として安定な化合物がもたらされる場合のみである。
【0019】
この上および本開示全体に渡って用いる如き下記の用語は、特に明記しない限り、下記の意味を有すると理解されるべきである。
【0020】
本発明のフィラメントはポリアレーンアゾール重合体から製造可能である。本明細書で定義する如き「ポリアレーンアゾール」は、隣接する芳香基(Ar)と縮合している1個の複素芳香環[これは繰り返し単位構造(a):
【0021】
【化1】

【0022】
(ここで、Nは窒素原子であり、そしてZは硫黄、酸素またはNR基であり、ここで、Rは、Nと結合している水素または置換もしくは非置換アルキルもしくはアリールである)で表される]、または各々が共通の芳香基(Ar)と縮合している2個の複素芳香環[これは繰り返し単位構造(b1またはb2):
【0023】
【化2】

【0024】
(ここで、Nは窒素原子であり、そしてBは酸素、硫黄またはNR基であり、ここで、Rは、Nと結合している水素または置換もしくは非置換アルキルもしくはアリールである)で表される]のいずれかを有する重合体を指す。構造(a)、(b1)および(b2)で表される繰り返し単位構造の数は決定的ではない。各重合体鎖の繰り返し単位数を典型的には約10から約25,000にする。ポリアレーンアゾール重合体には、ポリベンゾアゾール重合体および/またはポリピリドアゾール重合体が含まれる。特定の態様におけるポリベンゾアゾール重合体にはポリベンゾイミダゾールまたはポリベンゾビスイミダゾール重合体が含まれる。他の特定態様におけるポリピリドアゾール重合体にはポリピリドビスイミダゾールまたはポリピリドイミダゾール重合体が含まれる。好適な特定態様における重合体は、ポリベンゾビスイミダゾールまたはポリピリドビスイミダゾールの種類の重合体である。
【0025】
構造(b1)および(b2)におけるYは、芳香、複素芳香、脂肪基または無し、好適には芳香基、より好適には炭素原子が6員の芳香基である。更により好適には、炭素原子が6員の芳香基(Y)は、結合がパラに配向していることに加えて2個のヒドロキシル置換基を有し、更により好適には2,5−ジヒドロキシ−パラ−フェニレンである。
【0026】
構造(a)、(b1)または(b2)におけるArおよびArは、各々、芳香もしくは複素芳香基のいずれかを表す。
【0027】
「芳香」基は、場合により置換されていてもよい5員から13員の単もしくは二炭素環式芳香環、例えばフェニルまたはナフチルなどであってもよい。好適には、アリール部分を含有する基は環中の炭素原子数が5から6の単環式である。フェニルが1つの好適なアリールである。
【0028】
本明細書で用いる如き「複素芳香」基は、ヘテロ原子(独立して窒素、酸素または硫黄であってもよい)を1から5個有する5員から13員の炭素含有単もしくは二環式芳香環であってもよい。好適には、ヘテロアリール部分を含有する基は環中の員数が5から6でありかつ前記環員の中の1から2員が独立して窒素、酸素または硫黄から選択される単環式である。好適な態様における剛体棒状重合体の繰り返し単位には、本質的に、ヘテロ原子が3個の構造物、中心がピリジン型の環およびアゾールが2個の環が含まれる。中心がピリジン型の環は、好適には、環中の員数が5から6でありかつ前記環員の中の1から2員が独立して窒素、酸素または硫黄から選択される単環式ヘテロアゾール部分である。
【0029】
いくつか態様において、アリールまたは複素芳香部分は場合により置換されていてもよ
く、置換基には、C−Cアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、C−Cアルコキシ、CN、−NO、アミノ、C−Cアルキルアミノ、アルキル基1個当たりの炭素原子数が1−6のジアルキルアミノ、チオ、C−Cアルキルチオ、C−Cアルキルスルフィニル、C−Cアルキルスルホニル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアルキルカルボニル、トリフルオロアルコキシ、ベンジルニトリルおよびベンゾイル基の中の1個以上が含まれる。
【0030】
前記芳香もしくは複素芳香基は適切な縮合もしくは非縮合多環式系のいずれであってもよいが、いくつかの態様では、好適には、単一の6員環である。特定の態様におけるArまたはAr基は、より好適には、環系の炭素原子の中の1個が窒素原子に置き換わっている複素芳香であるか、或はArまたはArが含有する環原子は炭素のみであってもよい。更に別の態様におけるArまたはAr基はより好適には複素芳香である。
【0031】
本明細書で定義する如き「ポリベンゾアゾール」は、ArまたはAr基が炭素原子が6員の単一芳香環である繰り返し構造(a)、(b1)または(b2)を有するポリアレーンアゾール重合体を指す。ポリベンゾアゾールには、好適には、構造(b1)または(b2)で表される種類の剛体棒状ポリベンゾアゾール、より好適には、6員炭素環式芳香環Arを有する構造(b1)または(b2)で表される剛体棒状ポリベンゾアゾールが含まれる。そのような好適なポリベンゾアゾールには、これらに限定するものでないが、ポリベンゾイミダゾール(B=NR)、ポリベンゾチアゾール(B=S)、ポリベンゾオキサゾール(B=O)およびこれらの混合物または共重合体が含まれる。ポリベンゾアゾールがポリベンゾイミダゾールである場合のそれは好適にはポリ(ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスイミダゾール−2,6−ジイル−1,4−フェニレン)である。ポリベンゾアゾールがポリベンゾチアゾールである場合のそれは好適にはポリ(ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスチアゾール−2,6−ジイル−1,4−フェニレン)である。ポリベンゾアゾールがポリベンゾオキサゾールである場合のそれは好適にはポリ(ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール−2,6−ジイル−1,4−フェニレン)である。
【0032】
本明細書で定義する如き「ポリピリドアゾール」は、ArまたはAr基が炭素原子を5個と窒素原子を1個有する6員の単一芳香環である繰り返し構造(a)、(b1)または(b2)を有するポリアレーンアゾール重合体を指す。そのようなポリピリドアゾールには、好適には、構造(b1)または(b2)で表される種類の剛体棒状ポリピリドアゾール、より好適には、6員複素環式芳香環Arを有する構造(b1)または(b2)で表される剛体棒状ポリピリドアゾールが含まれる。そのようなより好適なポリピリドアゾールには、これらに限定するものでないが、ポリピリドビスイミダゾール(B=NR)、ポリピリドビスチアゾール(B=S)、ポリピリドビスオキサゾール(B=O)およびこれらの混合物または共重合体が含まれる。更により好適なポリピリドアゾールは構造:
【0033】
【化3】

【0034】
[ここで、Nは窒素原子であり、Rは、Nと結合している水素または置換もしくは非置換アルキルもしくはアリールであり、好適にはRはHである]
で表されるポリピリドビスイミダゾール(B=NR)である。その重合体鎖の繰り返し単位の平均数を典型的には約10から約25,000の範囲、より典型的には約100から1,000の範囲、更により典型的には約125から500の範囲、更に典型的には約150から300の範囲内にする。
【0035】
本発明のいくつかの態様は、ポリアレーンアゾールフィラメント、より具体的にはポリベンゾアゾール(PBZ)フィラメントまたはポリピリドアゾールフィラメント、そしてそのようなフィラメントの製造方法に向けたものである。他の態様は、更に、本発明のフィラメントを組み込んだヤーン、ファブリックおよび製品、そしてそのようなヤーン、ファブリックおよび製品を製造する方法も包含する。
【0036】
本明細書で用いる如き本発明のフィラメントを製造する時、ポリアレーンアゾール重合体、例えばポリベンゾアゾール(PBZ)またはポリピリドアゾール重合体を用いる。本明細書の目的で、用語「フィラメント」は、長さ方向に垂直な断面領域を横切る幅に対する長さの比率が高い相対的に柔軟で巨視的に均一な素地を指す。そのフィラメントの断面形状は如何なる形状であってもよいが、典型的には円形である。用語「フィラメント」を用語「繊維」と互換的に用いるかもしれない。
【0037】
本明細書で定義する如き「ヤーン」は、連続的長さの2本以上の繊維を指し、ここで、繊維は本明細書の上で定義した通りである。
【0038】
本明細書の目的で、「ファブリック」は、織り、編みまたは不織構造物のいずれかを指す。「織り」は、ファブリックの織り方、例えば平織り、カラス足(crowfoot)織り、バスケット織り、サテン織り、あや織りなどのいずれかを意味する。「編み」は、1個以上の末端部、繊維またはマルチフィラメントヤーンのインタールーピング(int
erlooping)またはインターメッシイング(intermeshing)で生じさせた構造物を意味する。「不織」は、繊維の網状組織を意味し、それには一方向繊維、フェルトなどが含まれる。
【0039】
本明細書で用いる如き用語「オリゴマー」は、共有結合している化学単位(これらは同じまたは異なってもよい)を2から約5個有する分子を指す。
【0040】
本明細書で用いる如き用語「重合体」は、共有結合している化学単位(これらは同じまたは異なってもよい)を約5より多い数で有する分子を指す。
【0041】
いくつかの態様において、より好適な剛体棒状ポリピリドアゾールには、これらに限定するものでないが、ポリピリドビスイミダゾールのホモ重合体および共重合体、例えば米国特許第5,674,969号に記述されているそれらが含まれる。そのようなある種の典型的なポリピリドビスイミダゾールは、ホモ重合体であるポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジニレン)である。この重合体はまたいろいろな用語でも知られており、例えばポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール);ポリ[(1,4−ジヒドロキシイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジン−2,6−ジイル)(2,5−ジヒドロキシ−1,4−フェニレン)];ポリ[(2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジニレン−(2,5−ジヒドロキシ−1,4−フェニレン)];Chemical Abstracts Registry No.167304−74−7、ポリ[(1,4−ジヒドロキシジイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジン−2,6−ジイル)(2,5−ジヒドロキシ−1,4−フェニレン)];2,5−ジヒドロキシテレフタル酸−1,2,4,5−テトラアミノピリジン共重合体;PIPD;ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)共重合体;ポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4’,5’−e]ピリジニレン)およびポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d5,6−d’]ビスイミダゾ)などでも知られている。
【0042】
本発明で用いるポリアレーンアゾール重合体は、剛体棒状構造、半剛体棒状構造または柔軟なコイル構造、好適には剛体棒状構造に関連した特性を示し得る。この種類の剛体棒状重合体が構造(b1)または(b2)で表される場合、それは好適には芳香基Arと縮合している2個のアゾール基を有する。
【0043】
本発明で用いるに有用な適切なポリアレーンアゾールにはホモ重合体および共重合体が含まれる。そのポリアレーンアゾールと一緒に混合可能な他の重合体材料の量は約25重量パーセント以下である。また、主要なポリアレーンアゾールの単量体の代わりに他のポリアレーンアゾール単量体もしくは他の単量体が約25パーセント以上入っている共重合体を用いることも可能である。適切なポリアレーンアゾールホモ重合体および共重合体の製造は公知手順を用いて実施可能であり、例えば米国特許第4,533,693号(Wolfe他、1985年8月6日)、米国特許第4,703,103号(Wolfe他、1987年10月27日)、米国特許第5,089,591号(Gregory他、1992年2月18日)、米国特許第4,772,678号(Sybert他、1988年9月20日)、米国特許第4,847,350号(Harris他、1992年8月11)、米国特許第5,276,128号(Rosenberg他、1994年1月4日)および米国特許第5,674,969号(Sikkema他、1997年10月7日)(これらは各々が引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)などに記述されている手順を用いて実施可能である。また、そのようなポリアレーンアゾールに添加剤、例えば抗酸化剤、滑剤、紫外線遮断剤、着色剤などを所望量で混合することも可能である。
【0044】
適切なポリアレーンアゾールの単量体を非酸化性で脱水性の酸の溶液に入れて非酸化性雰囲気下で温度を段階的または傾斜的上昇様式で高くしながら混合しつつ反応させる。そのポリアレーンアゾール重合体は剛体棒状、半剛体棒状または柔軟なコイル状であり得る。それは好適には離液性の液晶重合体であり、これは溶液中でそれの濃度が臨界濃度を超えると液晶ドメインを形成する。
【0045】
本発明の特定態様では、ポリアレーンアゾール重合体溶液の固有粘度を高くする方法を提供する。この方法は、典型的に、アゾール生成用単量体および鉄金属粉末(この鉄金属粉末を前記アゾール生成用単量体の総重量を基準にして約0.05から約0.9重量パーセントの量で添加する)をポリ燐酸に入れて接触させることで前記アゾール生成用単量体を反応させてポリアレーンアゾール重合体を生じさせる段階を包含する。前記アゾール生成用単量体の調製を適切には反応槽内で個別に水溶液中で実施した後、沈澱させることで単量体の複合体を生じさせる。例えば、1つの適切な方法では、槽を窒素パージ下で用いてこれに燐酸緩衝液(pHの範囲が約4.0から約4.5)および水を仕込む。その溶液を約50℃に加熱する。2番目の槽を窒素パージ下で用いて、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ塩とNaとNHOHと水を一緒にすることでアゾール生成用単量体の水溶液、好適には2,5−ジヒドロキシテレフタル酸(「DHTA」)を生じさせる。3番目の槽を用いて前記1番目のアゾール生成用単量体と反応し得る2番目のアゾール生成用単量体の水性混合物を調製、好適には窒素ブランケット下の槽内でテトラアミノピリジン(「TAP」)・3HCl・HOと水を一緒にした後にNHOHをいくらか添加することでTAP・3HCl・HOの溶液を生じさせる。
【0046】
前記3番目の槽の溶液を2番目の槽に移した後、いくつかの態様では、pHを約9から約10の範囲内に調整する。次に、その一緒にした溶液に窒素を吹き込みながらそれを撹拌しつつ約50℃に前記溶液が透明になるまで温める。その透明になった溶液を前記1番目の槽に添加過程中のpHを約4.5に維持するに充分な量の追加的HPOと一緒に移すことで前記単量体複合体を沈澱させ、それによってスラリーを生じさせる。その単量体複合体が入っているスラリーを典型的には窒素下で濾過した後、水そして脱気しておいたエタノールで洗浄する。その単量体複合体を不活性な雰囲気下に維持しそして重合前に乾燥させてもよい。
【0047】
ポリアレーンアゾール重合体溶液の固有粘度を高くするより好適な方法は、オートクレーブの中で2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジン(「DADNP」)と水と5%Pt/C触媒と水酸化アンモニウムを一緒にして加圧下で加熱することで前記DADNPに水添を受けさせることを包含する。排気および冷却を実施した後、活性炭を水に入れてスラリーとして前記オートクレーブに加えた後、混合する。次に、その溶液を濾過することで無色のTAP溶液を生じさせる。これをK−DHTA/Na溶液に撹拌しながら加える。前以て混合しておいた燐酸塩緩衝溶液を水で希釈した後、連成用槽の中に前以て仕込んでおいて、混合しながら約50℃に加熱する。次に、その連成用槽に塩基性TAP/K−DHTA混合物(pH約10)を添加しながらHPO水溶液を添加してpHを約4.5に調整する。この添加中に明黄色の微細な単量体複合体結晶が多量に生じる。その単量体複合体スラリーを冷却しながら最終的pHを約4.5にする。次に、そのスラリーを濾過することで淡黄色のケーキを得る。その単量体複合体ケーキを水に続いてエタノールで洗浄した後、窒素でパージしながら一晩放置する。最終的ケーキの色は淡黄色である。
【0048】
前記単量体複合体の重合を典型的には不活性ガスパージ用連結具を適切に装備しておいた反応槽内で真空をかけ、加熱および撹拌を行いながら実施する。その反応槽に典型的には単量体複合体、P、PPAおよび粉末にした金属を加える。典型的には、その反
応槽をパージ洗浄し、加熱した後、混合することで重合を起こさせる。1つの特に好適な態様では、適切な反応槽に単量体複合体を約20部、Pを約10部、ポリ燐酸を約60部および錫もしくは鉄金属を約0.1部加える。その反応槽の内容物を約60rpmで撹拌しながら若干窒素パージを伴わせた真空下で約100℃に約1時間加熱する。典型的には、温度を少なくとも120℃、好適には少なくとも約130℃(好適には約140℃以下)になるまで更に数時間、好適には約4時間かけて上昇させる。次に、温度をより高い温度、即ち少なくとも約150℃、より典型的には少なくとも約170℃、好適には約180℃にまで上昇させて約1時間、より好適には約2時間保持する。典型的には、その反応槽を窒素でフラッシュ洗浄した後、重合体溶液のサンプルを採取して粘度を測定する。
【0049】
いくつかの態様における本方法は下記を含んで成る:
a)アゾール生成用単量体、金属粉末および場合によりPをポリ燐酸中で接触させることで混合物を生じさせ、
b)前記混合物を約50℃から約110℃の温度で混合し、
c)前記混合物を約144℃以下の温度で更に混合することでオリゴマーを含有して成る溶液を生じさせ、
d)前記溶液に脱気を受けさせ、そして
e)前記オリゴマーの溶液を約160℃から約250℃の温度で重合体が生じるに充分な時間反応させる、
ことを含んで成る。
【0050】
そのようなポリアレーンアゾール重合体が示す相対的分子量を、適切には、前記重合体生成物を適切な溶媒、例えばメタンスルホン酸などで希釈して重合体の濃度を0.05g/dlにした後に1つ以上の希溶液の粘度値を30℃で測定することで特徴付ける。本発明のポリアレーンアゾール重合体が示す分子量の進展を適切には1つ以上の希溶液の粘度を測定することで監視しかつそれと相互に関係付ける。従って、重合体の分子量を監視する目的で典型的には希溶液の相対粘度(「Vrel」または「ηrel」または「nrel」)および固有粘度「Vinh」または「ηinh」または「ninh」)の測定値を用いる。希重合体溶液の相対粘度と固有粘度は式
inh=ln(Vrel)/C
[式中、lnは自然対数関数であり、そしてCは重合体溶液の濃度である]
に従って関係している。Vrelは、当該重合体が無溶媒の時に示す粘度に対する重合体溶液の粘度の単位の無い比率であり、従って、Vinhは逆濃度の単位、典型的には1グラム当たりのデシリットル(「dl/g」)として表される。従って、本発明の特定の面では、重合体をメタンスルホン酸に0.05g/dlの濃度で入れた時の30℃における固有粘度が少なくとも約22dl/gの重合体溶液をもたらすとして特徴付けられるポリアレーンアゾール重合体を生じさせる。本明細書に開示する本発明の結果として生じさせる重合体の分子量を高くすると粘性のある重合体溶液がもたらされることから、重合体をメタンスルホン酸に約0.05dl/gの濃度で入れるのが固有粘度を妥当な時間で測定するに有用である。
【0051】
ポリアレーンアゾールの分子量の確立に役立たせるには、いろいろな種類の金属粉末をいろいろな量で用いるのが有用である。特定の方法では、鉄金属粉末を単量体を基準にして約0.1から約0.5重量パーセントの量で存在させるのが特に好適である。適切な鉄金属粉末は、特に、重合反応に触媒作用を及ぼすに充分な表面積を有する微細な粉末であろう。これに関して、鉄金属粉末の粒径を適切には200メッシュのスクリーンを通るような粒径にする。
【0052】
アゾール生成用単量体に、適切には、2,5−ジメルカプト−p−フェニレンジアミン
、テレフタル酸、ビス−(4−安息香酸)、オキシ−ビス−(4−安息香酸)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ピリドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾール、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノヒドロキノン、1,4−ジアミノ−2,5−ジチオベンゼンまたはこれらの任意組み合わせを含める。好適には、前記アゾール生成用単量体に2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸を含める。特定の態様では、前記アゾール生成用単量体に燐酸化を受けさせるのが好適である。好適には、燐酸化アゾール生成用単量体をポリ燐酸および金属触媒の存在下で重合させる。
【0053】
アゾール生成用単量体をいろいろなポリアレーンアゾールのいずれかが生じるように選択してもよいが、本発明の方法の特定態様に従って生じさせる適切なポリアレーンアゾールにはポリピリドアゾールが含まれ、これには好適にはポリピリドビスイミダゾールが含まれ、これには好適にはポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)が含まれる。
【0054】
単量体をいろいろなポリアレーンアゾールのいずれかが生じるように選択するが、本発明の方法の特定態様に従って生じさせる適切なポリアレーンアゾールにはポリベンゾアゾールが含まれ、これには好適にはポリベンゾビスアゾールが含まれる。
【0055】
いくつかの態様において、本発明は、また、ポリアレーンアゾール重合体の製造方法も提供する。本方法は、適切には、アゾール生成用単量体と金属粉末(これには錫金属、鉄金属、バナジウム金属、クロム金属またはこれらの任意組み合わせが含まれる)(この金属粉末をアゾール生成用単量体の総量を基準にして約0.05から約0.9重量パーセントの量で添加する)をポリ燐酸に入れて接触させることで前記単量体を反応させてポリアレーンアゾール重合体を生じさせる段階を包含する。典型的には、この方法で適切には重合体をメタンスルホン酸に0.05g/dlの濃度で入れた時の30℃における固有粘度が少なくとも約22dl/gの重合体溶液をもたらすとして特徴付けられるポリアレーンアゾールを生じさせる。特定の態様では、前記金属粉末を単量体を基準にして約0.1から約0.5重量パーセントの量で存在させる。適切な金属粉末は、重合反応に触媒作用を及ぼすに適切な高い表面積を有する微細な粒径の粉末である。従って、適切な金属粉末の粒径は200メッシュのスクリーンを通るような粒径である。そのような方法に従って同様な単量体を重合させることで、この上に記述した如き方法を用いて生じさせた重合体を生じさせることも可能である。
【0056】
また、2,3,5,6−テトラアミノピリジン(TAP)と2,5−ジヒドロキシテレフタル酸(DHTA)単量体を含有して成る単量体複合体を製造する方法も提供する。この態様における方法は、典型的に、モル過剰量の2,3,5,6−テトラアミノピリジン遊離塩基を水中で2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジカリウム塩と接触させて水性混合物を生じさせた後に前記水性混合物のpHを約3から約5の範囲内に調整することで単量体複合体を沈澱させる段階を包含する。特定の態様では、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジカリウム塩に対する2,3,5,6−テトラアミノピリジン遊離塩基のモル比をより典型的には少なくとも約1.05から1、更により典型的には少なくとも約1.075から1、特に少なくとも約1.15から1にする。
【0057】
その反応混合物のpHを適切にはその水性混合物に酸、好適にはオルト燐酸を添加することで維持する。いろいろな態様において、適切な塩には2,5−ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ塩および2,5−ジヒドロキシテレフタル酸のアンモニウム塩が含まれる。その2,5−ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ塩は好適には2,5−ジヒドロキシ
テレフタル酸ジカリウム塩である。
【0058】
その水性混合物のpHを典型的には前記単量体複合体が沈澱するように調整する。前記単量体複合体を沈澱させるに適切なpHは約4.3から約4.6の範囲内である。前記単量体複合体を生じさせた後、本発明の特定態様に、また、その単量体複合体を重合させてポリアレーンアゾールを生じさせる1段階以上の追加的段階も含める。この態様では、本明細書に記述した如き単量体のいずれかを用いてポリアレーンアゾールのいずれかを生じさせることができる。例えば、特定態様では、2,3,5,6−テトラアミノピリジンと2,5−ジヒドロキシテレフタル酸単量体で構成させた単量体複合体を用いてポリアレーンアゾールであるポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)を生じさせる。
【0059】
また、いくつかの態様ではポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)重合体を生じさせる。この重合体は、メタンスルホン酸を用いて重合体の濃度を0.05g/dlにした時の30℃における固有粘度が少なくとも約22dl/g、より典型的には少なくとも約25dl/g、更により典型的には少なくとも約28dl/g、更に典型的には少なくとも約30dl/gの重合体溶液をもたらすとして特徴付けられる。本発明のいろいろな態様に、また、前記ポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)重合体を用いて製造可能なフィラメントも包含させる。例えば、重合体ドープ(polymer dope)溶液をダイスまたは紡績口金に通して押出し加工または紡績することでドープフィラメント(dope filament)を生じさせるか或はそれを紡績してもよい。その紡績口金に好適には多数の穴を含める。そのような紡績口金の中の穴の数およびそれらの配置は本発明にとって決定的ではないが、経済性が理由で穴の数を最大限にするのが望ましい。紡績口金に含める穴の数を約100から1000またはそれ以上にしてもよく、それらを円形、格子または他の所望配列のいずれかに配置してもよい。紡績口金はドープ溶液によって劣化しない如何なる材料で作られていてもよい。いろいろな態様において、また、多数のフィラメントを含有して成るマルチフィラメントも提供する。マルチフィラメントヤーン1本当たりのフィラメントの数はおおよそ紡績口金の中の穴の数である。本発明のフィラメントを用いて生じさせるマルチフィラメントが示すヤーン引っ張り強さは典型的に1デニール当たり少なくとも約24グラム(「gpd」)である。
【0060】
また、追加的ポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)重合体製造方法も提供する。この態様は、モル過剰量の2,3,5,6−テトラアミノピリジン遊離塩基を水中で2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩と接触させて水性混合物を生じさせ、前記水性混合物のpHを約3から約5の範囲内に調整することで2,3,5,6−テトラアミノピリジンと2,5−ジヒドロキシテレフタル酸単量体で構成されている単量体複合体を沈澱させ、前記単量体複合体をポリ燐酸中で金属粉末(この金属粉末を前記単量体複合体の総重量を基準にして約0.05から約0.9重量パーセントの量で添加する)と接触させて前記単量体複合体をポリ燐酸中で重合させることで重合体溶液を生じさせることを包含する。これらの態様の中の特定態様では、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸に対する2,3,5,6−テトラアミノピリジンのモル比を典型的には少なくとも約1.05から1、より典型的には少なくとも約1.075から1、更により典型的には少なくとも約1.15から1にする。これらの態様の中の特定態様では、酸、例えばオルト燐酸などを前記水性混合物に添加することでpHを適切に調整する。適切には、前記ポリ燐酸が重合後に示す相当P含有量が典型的には少なくとも約81重量パーセント、より典型的少なくとも約82重量パーセントであるようにする。特定の態様では相当するP含有量が少なくとも約83重量パーセントであるようにし、そして他の態様では少なくとも87重量パーセントである
ようにする。前記金属粉末に適切には鉄粉、錫粉末、バナジウム粉末、クロム粉末またはこれらの任意組み合わせを含める。そのような金属粉末は好適には鉄粉である。これらの態様の中の特定態様における2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩は2,5−ジヒドロキシテレフタル酸のアルカリ塩もしくはアンモニウム塩であり、好適には、前記アルカリ塩は2,5−ジヒドロキシテレフタル酸ジカリウム塩である。追加的態様では、本方法に、更に、製造品、例えばフィラメントおよびヤーンなどを生じさせる1段階以上の追加的段階も含めてもよい。従って、本発明は、また、ある紡績方法または繊維紡績方法を用いてポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)をポリ燐酸に入れることで生じさせた重合体溶液(即ちドープ)から繊維を生じさせる追加的段階も提供する。ポリ(1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン−2,6−ピリド[2,3−d:5,6−d’]ビスイミダゾール)重合体をメタンスルホン酸に0.05g/dl入れることで生じさせた溶液の測定固有粘度がそれをメタンスルホン酸に0.05g/dl入れて30℃で測定した時に好適には少なくとも約22dl/gであるようにする。
【0061】
本発明の特定態様を図1を参照して考察する。いくつかの態様では、当該重合体を酸である溶媒中で生じさせることでドープ溶液2を生じさせる。他の態様では、当該重合体を生じさせた後に酸である溶媒に溶解させる。いずれも本発明の範囲内である。好適には、当該重合体を酸である溶媒中で生じさせた後、それを本発明で用いる。その重合体とポリ燐酸が入っているドープ溶液2には重合体が典型的にこの重合体が押出し加工そして凝固後に受け入れられるフィラメント6を形成するに充分なほど高い濃度で入っている。その重合体が離液性液晶の場合、そのドープ2中の重合体濃度を好適には液晶ドープが生じるに充分なほど高くする。その重合体濃度を好適には少なくとも約7重量パーセント、より好適には少なくとも約10重量パーセント、最も好適には少なくとも約14重量パーセントにする。最大濃度を典型的には主に実用上の要因、例えば重合体の溶解性およびドープの粘度などによって選択する。その重合体の濃度を好適には30重量パーセント以下、より好適には約20重量パーセント以下にする。
【0062】
その重合体ドープ溶液2に添加剤、例えば抗酸化剤、滑剤、紫外線遮断剤、着色剤などを入れてもよく、通常はそれらを入れる。
【0063】
前記重合体ドープ溶液2を典型的にはダイスもしくは紡績口金4に通して押出し加工または紡績することでドープフィラメント6を生じさせるか或は紡績する。紡績口金4に含める穴の数を好適には多数にする。その紡績口金の中の穴の数およびそれらの配置は本発明にとって決定的ではないが、経済性が理由で穴の数を最大限にするのが望ましい。紡績口金4に含める穴を数を約100から1000またはそれ以上にしてもよく、それらを円形、格子または他の所望配列のいずれかに配置してもよい。紡績口金4はドープ溶液2によって劣化しない如何なる材料で作られていてもよい。
【0064】
溶液を用いて繊維を紡績する時、かなりの数の方法を用いることができるが、しかしながら、湿式紡績および「エアギャップ」紡績が最も良く知られている。そのような紡績方法に適した紡績口金および浴の一般的な配置は本技術分野で良く知られており、米国特許第3,227,793号、3,414,645号、3,767,756号および5,667,743号(各々が引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に示されている図が高強度の重合体をそのように紡績する方法の例示である。「エアギャップ」紡績では典型的に最初に紡績口金に通して繊維を押出して気体、例えば空気の中に入れる。「エアギャップ」紡績(時にはまた「ドライジェット」湿式紡績としても知られる)を用いる方法の例示に役立たせる目的で図1を用い、紡績口金4から出たドープ溶液2は、非常に短い時間ではあるが、紡績口金4と凝固浴10の間のギャップ8(必ずしも空気が入っている必要はないが典型的に「エアギャップ」と呼ばれる)の中に入る。そのギャップ
8の中に入れる流体は、凝固を誘発することも当該ドープと不利な反応を起こすこともない如何なる流体であってもよく、例えば空気、窒素、アルゴン、ヘリウムまたは二酸化炭素などであってもよい。そのドープフィラメント6は引き伸ばしの有り無しでエアギャップ8を通ることで延伸を受けた後、直ちに液状の凝固浴液の中に入る。別法として、その繊維に「湿式紡績」を受けさせることも可能である。湿式紡績の場合、典型的に、紡績口金に通して繊維を押出した後に凝固浴の液体の中に直接入らせるが、その紡績口金を一般的には前記凝固浴液の中に浸漬しておくか或は液面下に位置させる。本発明の方法で用いる繊維を生じさせる時にいずれの紡績方法も使用可能である。本発明のいくつかの態様では、エアギャップ紡績が好適である。
【0065】
そのフィラメント6を水または水と燐酸の混合物を入れておいた凝固浴10の中で「凝固」させ、それによって、ポリ燐酸をそのフィラメント6が次のいずれかの工程中に実質的な伸びを示さなくなるに充分なほど除去する。多数の繊維を同時に押出す場合、それらに凝固段階を受けさせる前、間および後にそれらを一緒にすることでマルチフィラメントヤーンを生じさせてもよい。本明細書で用いる如き用語「凝固」は、必ずしも、そのドープフィラメント6が流動する流体でありそして固相に変化することを意味するものでない。そのドープフィラメント6の温度は、それが凝固浴10の中に入る前に本質的に流動しないほど低い温度であってもよい。しかしながら、その凝固浴10によって当該フィラメントの凝固を確保するか或は完了させる、即ち当該重合体をドープ溶液2から実質的に固体状の重合体フィラメント12に変化させる。この凝固段階中に除去される溶媒、即ちポリ燐酸の量は、そのフィラメント6が凝固浴の中に入っている時間、その浴10の温度およびそれに入っている溶媒の濃度に依存するであろう。例えば、20重量パーセントの燐酸溶液を約23℃の温度で用いた時に滞留時間を約1秒にするとフィラメント6に存在する溶媒の約70パーセントが除去されるであろう。
【0066】
典型的には、重合体の繊維特性を保存する目的で、前記フィラメントに付随して残存するポリ燐酸に実質的に加水分解を受けさせた後にそれを除去する。通常は、前記フィラメントもしくはヤーンを加熱した後に洗浄および/または中和段階を設けることでPPAに加水分解を受けさせる。1つの加水分解様式には、凝固させた繊維を短時間対流加熱することが含まれる。対流加熱の代替法として、凝固させたままの湿った状態のフィラメントもしくはヤーンを沸騰水または酸水溶液に入れて加熱することで加水分解を起こさせることも可能である。そのような処理によって、製品である繊維の引張り強度が充分に保持されながらPPAが加水分解を起こすようにする。そのような熱処理段階を個別のキャビネット14内で実施してもよいか、或はそれを最初の工程順として実施した後に現存の洗浄用キャビネット14の中で洗浄を1回以上行う段階を設けてもよい。いくつかの態様では、それを、(a)当該ドープフィラメントと溶液の接触を浴槽またはキャビネット14中で起こさせることでPPAに加水分解を受けさせた後、(b)前記フィラメントと中和用溶液の接触を水と有効量の塩基が入っている浴槽またはキャビネット16の中で前記フィラメントに入っている燐酸、ポリ燐酸またはこれらの任意組み合わせが充分な量で中和されるに充分な条件下で起こさせることで解決する。
【0067】
その凝固させたフィラメントに付随するPPAに実質的な加水分解を受けさせる処理を実施した後、フィラメントもしくはヤーン12を1回以上の洗浄段階で洗浄して残存する酸である溶媒/およびまたはPPAの加水分解物の大部分をフィラメントもしくはヤーン12から除去することで、PPAの加水分解物を前記フィラメントもしくはヤーン12から除去してもよい。そのフィラメントもしくはヤーン12の洗浄は、このフィラメントもしくはヤーン12を塩基で処理するか或はフィラメントもしくはヤーンに塩基を用いた処理を受けさせる前および/または後に水を用いた洗浄を行う複数回の洗浄で実施することも可能である。また、その後、そのフィラメントもしくはヤーンに酸を用いた処理を受けさせることで当該重合体に入っているカチオンの濃度を低くすることも可能である。その
一連の洗浄は当該フィラメントを一連の浴槽および/または1個以上の洗浄用キャビネットの中に通すことによる連続工程として実施可能である。図1に、1種の洗浄用浴槽もしくはキャビネット14を示す。洗浄用キャビネットは、典型的に、1本以上のロールが入っている密封されたキャビネットを含んで成り、前記フィラメントは前記ロールの回りを複数回移動しかつ横切った後に前記キャビネットから出て行く。フィラメントもしくはヤーン12がロールの回りを移動している時にそれに洗浄用流体を噴霧する。その洗浄用流体を前記キャビネットの底に連続的に集めた後、それから排出させる。
【0068】
洗浄用流体1種または2種以上の温度を好適には30℃以上にする。また、その洗浄用流体を気体形態(蒸気)で加えることも可能ではあるが、より便利には、液状形態で用いる。好適には、多数の洗浄用浴槽またはキャビネットを用いる。フィラメントもしくはヤーン12をいずれか1つの洗浄用浴槽またはキャビネット14の中に滞留させる時間は、フィラメントもしくはヤーン12中の所望残存燐濃度に依存するが、好適には、滞留時間を約1秒から約2分以内の範囲内にする。連続工程の場合には、好適な多数の洗浄用浴槽および/またはキャビネットの中の全洗浄工程時間を好適には約10分以内、より好適には約5秒以上から約160秒以内にする。
【0069】
いくつかの態様において、PPA加水分解物を除去するに好適な塩基には、NaOH、KOH、NaCO、NaHCO、KCO、KHCOまたはトリアルキルアミン、好適にはトリブチルアミンまたはこれらの混合物が含まれる。1つの態様における塩基は水溶性である。
【0070】
当該繊維を塩基で処理した後の工程に、場合により、過剰量の塩基の全部または実質的に全部が除去されるように前記フィラメントを水もしくは酸が入っている洗浄用溶液と接触させる段階を含めてもよい。その洗浄用溶液を洗浄用浴槽またはキャビネット18の中に加えてもよい。
【0071】
繊維もしくはヤーン12を乾燥機20で乾燥させることで水および他の液体を除去してもよい。その乾燥機内の温度を典型的には約80℃から約130℃にする。その乾燥機内の滞留時間を典型的には5秒から恐らくは温度を低くした時の約5分にする。その乾燥機の雰囲気を窒素または他の非反応性雰囲気にしてもよい。次に、その繊維に場合によりさらなる処理を例えば熱硬化用装置22内などで受けさせてもよい。当該フィラメントの引っ張り強さを向上させそして/または分子の物理的歪みを解放するためのさらなる処理を窒素パージ管炉22内で実施してもよい。最後に、フィラメントもしくはヤーン12を巻き取り装置24で巻き取ってパッケージにする。そのフィラメントもしくはヤーンを工程全体に渡って移送する目的でロール、ピン、ガイドおよび/または電動装置26を適切に位置させる。
【0072】
PPAの加水分解物を除去した後に乾燥させたフィラメントの燐含有量が好適には約5,000ppm(0.5%)重量未満、より好適には約4,000ppm(0.4%)重量未満、最も好適には約2,000ppm(0.2%)重量未満になるようにする。
【0073】
典型的には、前記ヤーンを1分当たり少なくとも50、または少なくとも100、または少なくとも250、または少なくとも500、または少なくとも800メートルの速度で集める。
【0074】
いくつかの態様において、本発明は、ポリアレーンアゾールマルチフィラメントの連続製造方法に関し、この方法は、
a)ポリアレーンアゾール重合体とポリ燐酸を含有して成る溶液を多数のオリフィスに通して押出すことで多数のフィラメントを生じさせ、
b)前記フィラメントからマルチフィラメントヤーンを生じさせ、
c)前記ヤーンを約120℃以上の温度に約2分以内の時間加熱することで前記ヤーンに入っているポリ燐酸の少なくともいくらかに加水分解を受けさせ、
d)前記ポリ燐酸の加水分解物の少なくともいくらかを前記ヤーンから洗い流し、
e)前記洗浄したヤーンを乾燥させ、
f)場合により、前記ヤーンを約300℃以上に加熱し、そして
g)前記ヤーンを1分当たり少なくとも約50メートルの速度で集める、
ことを含んで成る。
【0075】
特定の態様では、前記方法に追加的に前記ヤーンに加水分解を受けさせる前にそれを調整することも含める。
【0076】
いくつかの態様では、前記フィラメントを押出した後にエアギャップに通しそして次に凝固浴の中に通す。
【0077】
[実施例]
本明細書で用いる如き用語「mモル」と「ミリモル」は同義語である。重合体の固体濃度、単量体を基にした重量パーセントおよび重合体溶液のP濃度パーセントの全部をTAPとDHTAが1:1モルの複合体としてのTD−複合体を基準にして表す(TD−複合体は一水化物であると考えている)。
【0078】
以下の実施例では以下に記述する試験方法を用いた。
【0079】
温度を特に明記しない限り摂氏度(℃)で測定する。
【0080】
デニールをASTM D 1577に従って測定し、これは9000メートルの繊維の重量(グラム)として表される如き繊維の線形密度である。
【0081】
引っ張り強さをASTM D 3822に従って測定し、これは断面積単位当たりの力として表される如き繊維の最大もしくは破断時応力である。
【0082】
アルカリカチオン(M)および燐(P)の元素分析値を下記の如き誘導結合プラズマ(ICP)方法に従って測定する。重量を正確に測定しておいたサンプル(1−2グラム)をCEM Star 6マイクロ波装置の石英製容器の中に入れる。濃硫酸(5ml)を加えた後、渦巻き撹拌することで湿らせる。前記容器に冷却器を連結した後、サンプルを適度炭化方法を用いて分解させる。この方法はサンプルを260℃以下のいろいろな温度に加熱することで有機材料を炭化させることを伴う。その装置を用いていろいろな分解段階で一定分量の硝酸を自動的に加える。透明な最終的液状分解物を室温に冷却した後、脱イオン水で50mlに希釈する。Perkin Elmer optima誘導結合プラズマ装置を製造業者が推奨する条件および設定で用いて前記溶液を分析することができる。1サンプル当たり数種の異なる波長を用いて全体で26種の異なる元素を分析することができる。特定の元素、例えばナトリウムおよび燐などの場合には1/10の希釈度が必要であり得る。較正標準は1から10ppmである。
【0083】
以下の実施例の多くは本発明のいろいろな態様を例示する目的で示すものであり、決して限定するとして解釈されるべきでない。部およびパーセントは全部特に明記しない限り重量である。
【0084】
単量体複合体の実施例
【実施例1】
【0085】
この実施例では、単量体複合体をバッチ方法で製造する時に2,3,5,6−テトラアミノピリジン(「TAP」)を5パーセントモル過剰量で用いることを示す。水に脱気および脱イオンを受けさせた。
【0086】
1番目の2リットルの撹拌型樹脂製槽に窒素パージ下で85%のHPOを50mlおよび水を450ml仕込んだ後、10重量パーセントの水酸化ナトリウム溶液を前記槽内の材料のpHがpHプローブで測定して約4.6になるまで添加した。その溶液を約50℃に加熱した。
【0087】
2番目の2リットルの撹拌型樹脂製槽内で2,5−ジヒドロキシテレフタル酸のジカリウム塩(「K−DHTA」)(41.1g)と1gのNaと60gのNHOHと700gの水を窒素パージ下で一緒にすることで2,5−ジヒドロキシテレフタル酸(「DHTA」)溶液を生じさせた。前記K−DHTAおよびNaの重量測定を最初にグローブボックス内で実施した。
【0088】
隔壁を取り付けておいたクォート瓶の中で700gの水と42gのTAP・3HCl・HOを一緒にする(窒素ブランケット下で)ことでTAP・3HCl・HO溶液を生じさせた。次に、NHOHを60g加えた。この溶液を前記2番目の樹脂製槽にカニューレで移した。この2番目の槽内で一緒にした溶液のpHは約9から10であった。その一緒にした溶液を撹拌しながらこれに窒素を吹き込みつつ溶液が透明になるまで約50℃にまで温めた。その溶液を前記1番目の樹脂製槽にpHを4.5に調整するに充分な量の追加的HPOと一緒にカニューレで移して単量体複合体を沈澱させることでスラリーを生じさせた。50mlの85%HPOを500mlの水で希釈することで前記HPO溶液を生じさせた。
【0089】
前記単量体複合体が入っているスラリーを窒素下で濾過した後、200mlの水(湿った状態の生成物スラリー1グラム当たり6−8グラムの水)で2回そして10mlの脱気エタノール(湿った状態の生成物1グラム当たり〜1グラムのエタノール)で洗浄した。その単量体複合体を窒素下に保持しながら蒸気加熱で一晩乾燥させた後、窒素雰囲気のグローブボックス内で回収した。
【0090】
重合(単量体複合体配合物にTAPを5.0%モル過剰量で用いる実施例)。乾燥させておいた奇麗な200mlのガラス製管状反応槽[内径が4.8cmであり、窒素パージおよび真空をかけるに必要な連結具を装備し、これの回りに加熱用ジャケットを配置し、かつ更に、二重螺旋形状のバスケット型撹拌子を入れておいた]に、単量体複合体を23.00g、Pを11.24g、ポリ燐酸(「PPA」)(Pの%が85.15%に相当する)を66.29gおよびSnを0.115g仕込んだ。その内容物を60rpmで撹拌しながら若干の窒素パージを伴わせた真空下で100℃に1時間加熱した。温度を137℃に上昇させて4時間保持した。その温度を180℃に上昇させて2時間保持した。その反応槽を窒素でフラッシュ洗浄し、重合体溶液のサンプルをメタンスルホン酸で濃度が0.05%になるまで希釈した後、30℃で測定した固有粘度ninhは23dl/gであった。
【実施例2】
【0091】
実施例1の手順を繰り返したが、しかしながら、TAP・3HCl・HO溶液を生じさせる時にTAPを43グラム用いることで、実施例1に示したようにTAPが5%のモル過剰量であることに対比させてTAPのモル過剰量を7.5%にした。
【0092】
重合(単量体複合体配合物にTAPを7.5%モル過剰量で用いる実施例)。乾燥させ
ておいた奇麗な200mlのガラス製管状反応槽[内径が4.8cmであり、窒素パージおよび真空をかけるに必要な連結具を装備し、これの回りに加熱用ジャケットを配置し、かつ更に、二重螺旋形状のバスケット型撹拌子を入れておいた]に、単量体複合体を20.00g、Pを7.78g、PPA(Pの%が85.65%に相当する)を59.52gおよびSnを0.115g仕込んだ。撹拌子を100rpmで回転させながら内容物を若干のNパージを伴わせた真空下で100℃に1時間加熱した。温度を137℃に上昇させて3時間保持した。その温度を180℃に上昇させて2時間保持した。その反応槽を窒素ガス(「N」)でフラッシュ洗浄した後、重合体溶液のサンプルをメタンスルホン酸で濃度が0.05%になるまで希釈した。ninh=28.5dl/g。
【実施例3】
【0093】
実施例1の手順を繰り返したが、しかしながら、TAP・3HCl・HO溶液を生じさせる時にTAPを46グラム用いることで、実施例1に示したようにTAPが5%のモル過剰量であることに対比させてTAPのモル過剰量を15%にした。
【0094】
重合(単量体複合体配合物にTAPを15%モル過剰量で用いる実施例)。乾燥させておいた奇麗な200mlのガラス製管状反応槽[内径が4.8cmであり、窒素パージおよび真空をかけるに必要な連結具を装備し、これの回りに加熱用ジャケットを配置し、かつ更に、二重螺旋形状のバスケット型撹拌子を入れておいた]に、単量体複合体を20.00g、Pを7.79g、PPA(Pの%が85.65%に相当する)を59.54gおよびSnを0.115g仕込んだ。その内容物を100rpmで撹拌しながら若干のNパージを伴わせた真空下で100℃に1時間加熱した。温度を137℃に上昇させて4時間保持した。その温度を180℃に上昇させて2時間保持した。その反応槽をNでフラッシュ洗浄した後、重合体溶液のサンプルをメタンスルホン酸で濃度が0.05%になるまで希釈した。ninh=33.4dl/g。
【実施例4】
【0095】
この実施例では、単量体複合体を直接連成方法で製造する時に2,3,5,6−テトラアミノピリジン(TAP)を7.5パーセントモル過剰量で用いることを示す。槽内で126.81gのK−DHTAと2208gの水と2.2グラムのジチオ酸ナトリウムを一緒にすることで2,5−ジヒドロキシテレフタル酸のジカリウム塩(K−DHTA/Na)溶液を生じさせた。
【0096】
オートクレーブ内で100.3グラムの2,6−ジアミノ−3,5−ジニトロピリジン(DADNP)と508グラムの水と2.04グラムの5%Pt/C触媒(乾燥ベースで触媒を1グラム使用)と10グラムの水酸化アンモニウムを一緒にして500psig下で65℃に加熱した。前記DADNPの水添が2時間で完了した。排気そして30℃になるまで冷却した後、約15gのDarco G60活性炭を100gの水に入れてスラリーとして前記クレーブに加えて1時間混合した。その溶液を濾過して前記触媒を除去した後、単一のCUNO Biocap 30 54SPフィルターで濾過した。その濾過に30分要し、そしてその濾過した溶液の色は移している間全体に渡って透明であった。
【0097】
その無色のTAP溶液を前記K−DHTA/Na溶液に50℃で混合しながら加えた。そのK−DHTA/Na溶液の色は若干黄色でありかつ前記TAPを添加している間も変化せず、そのTAP/K−DHTA混合物のpHは10.0であった。次に、前記クレーブおよびフィルターを100gのHOで濯いでそれを前記槽に加えた。生じさせ、濾過しそして混合用槽に移すことができたTAPの理論的量[DADNPの純度(98%)を包含]は68.8g(0.494モル)であり、それによってもたらされたTAP/K−DHTAの最大モル比は1.075であった。
【0098】
150mlの前以て混合しておいた燐酸塩緩衝溶液(pH=4.7)を600mlの水で希釈し、連成用槽の中に前以て仕込んでおいて、混合しながら50℃に加熱した。その連成用槽に塩基性TAP/K−DHTA混合物(pH=10)を加えると同時にpHを約4.5に調節する目的で25%のHPO水溶液を加えた。ほとんど直ちに明黄色の微細な単量体複合体結晶が多量に生じそして添加中に量が増えた。その単量体複合体のスラリーを30℃に冷却しながら最終的pHを4.5にした。そのスラリーを濾過することで淡黄色のケーキを得た。その単量体複合体のケーキを各々400gの水で3回に続いて200gのエタノールで洗浄した後、窒素パージ洗浄下に一晩置いた。そのケーキの色は淡黄色であった。
【0099】
実施例A:
この実施例では、単量体複合体の製造をTAPとDHTAを1:1の比率で用いて行った時の効果を示す。乾燥させておいた奇麗な2CV Model DIT Mixer[Design Integrated Technology,Inc(Warrenton、Virginia)から入手可能]を窒素ガスで絶えずパージ洗浄しながら、これの中で下記を一緒にした:
a)P濃度が84.84%のポリ燐酸(PPA)を62.4g、
b)Pを14.71グラム、
c)錫粉末[325メッシュ、VWR scientificから入手可能;これの量をTD−複合体の重量を基準にして0.5%、またはTD−複合体1ミリモル当たり0.01421ミリモルの錫にする]を0.11グラム、および
d)TD−複合体[テトラアミノピリジン(TAP)とジヒドロキシテレフタル酸が1:1の複合体、即ちTAPが47.21gでDHTAが67.21g]を22.89グラム。
【0100】
前記CV Modelはジャケット付き双錐体反応槽であり、前記ジャケットに熱油を循環させることでそれを加熱した。この反応槽には、ボウルの円錐形エンベロープ全体に渡って互いにかみ合うように交差する二重螺旋円錐形ブレードが用いられていた。その混合装置のブレードを開始させて約53rpmに設定した。その反応槽を無水Nガスで清掃した。反応混合物の温度を全体に渡って熱電対で測定した。その反応混合物の温度を100℃に上昇させて1時間保持した。その反応混合物の温度を137℃に上昇させて3時間保持した。次に、その反応混合物の温度を180℃に上昇させて真空下で3時間保持した。その混合装置を窒素でパージ洗浄しながら重合体溶液をガラス製容器の中に排出させた。この重合体を前記混合装置から重合体がPPAに固体量が18%の状態で入っている形態で取り出した。その溶液から重合体サンプルを取り出した後、メタンスルホン酸(「MSA」)で重合体固体が0.05%の濃度になるように希釈した。その重合体サンプルの固有粘度は6dl/gであった。
【0101】
金属粉末実施例。以下の実施例では、錫(Sn)、バナジウム(V)、クロム(Cr)および鉄(Fe)金属が還元剤として重合中に示す効果を立証する。
【実施例5】
【0102】
乾燥させておいた奇麗な2CV Model DIT Mixerを窒素ガスで絶えずパージ洗浄しながら、これの中で下記を一緒にした:
a)P濃度が85.15%のポリ燐酸(PPA)を126.5g、
b)Pを26.82グラム、
c)錫粉末[325メッシュ、VWR scientificから入手可能;これの量をTD−複合体の重量を基準にして0.5%、またはTD−複合体1ミリモル当たり0.01421ミリモルの錫にする]を0.23グラム、および
d)TD−複合体[テトラアミノピリジン(TAP)とジヒドロキシテレフタル酸が1:
1の複合体、即ち有効にTAPが94.42gでDHTAが134.42g、調製中に用いるTAPの約10%モル過剰量]を45.78グラム。
【0103】
ボウルの円錐形エンベロープ全体に渡って互いにかみ合うように交差する二重螺旋円錐形ブレードが備わっている油加熱CV Model双錐体反応槽を用いた。その混合装置のブレードを開始させて53rpmに設定した後、その反応混合物に真空を反応中の混合物の発泡が抑えられるような様式でかけた。反応混合物の温度を全体に渡って熱電対で測定した。その温度を100℃に上昇させて1時間保持した。その温度を137℃に上昇させて3時間保持した。次に、その温度を180℃に上昇させて真空下で3時間保持した。その混合装置を窒素でパージ洗浄しながら重合体溶液をガラス製容器の中に排出させた。この重合体を前記混合装置から重合体がPPAに18%入っている形態で取り出した。
【0104】
その結果として得た重合体溶液のサンプルをメタンスルホン酸(MSA)で重合体固体が0.05%の濃度になるように希釈した。その生じさせた重合体サンプルの固有粘度は23dl/gであった。表1を参照。
【実施例6】
【0105】
鉄粉を1ミリモルのTD−複合体当たり0.01421ミリモル用いて実施例5の手順を繰り返した。その生じさせた重合体サンプルの測定固有粘度は29dl/gであった。表1を参照。
【実施例7】
【0106】
バナジウムおよびクロム粉末を1ミリモルのTD−複合体当たり0.01421ミリモル用いて実施例5の手順を繰り返した。バナジウムおよびクロムを用いて生じさせた重合体サンプルの固有粘度は両方とも22dl/gであった。表1を参照。
【0107】
実施例B
還元用金属を用いないで実施例5を繰り返した。その結果としてもたらされた固有粘度は9dl/gであった。表1を参照。
【0108】
実施例C
還元用金属である銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)および亜鉛(Zn)を用いて実施例5を繰り返した。その結果を表2に示す。
【0109】
実施例D
金属粉末の代わりに金属塩である塩化錫および塩化マグネシウムを還元剤として用いて実施例5を繰り返した。その結果を表3に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【実施例8】
【0113】
重合中に還元剤を最適化。乾燥させておいた奇麗な4CV Model DIT Mixerを窒素ガスで絶えずパージ洗浄しながら、これの中で下記を一緒にした:
a)P濃度が84.79%のポリ燐酸(PPA)を643.94g、
b)Pを127.22グラム、
c)錫粉末[325メッシュ、VWR scientificから入手可能;この錫粉末の量をTD複合体の量を基準にして約1.09重量パーセントにする]を2.5グラム、および
d)TD複合体[テトラアミノピリジン(TAP)とジヒドロキシテレフタル酸が1:1の複合体、即ち有効にTAPが94.42gでDHTAが134.42g、調製中に用いるTAPの約10%モル過剰量]を228.84グラム。
【0114】
前記CV Modelは、ボウルの円錐形エンベロープ全体に渡って互いにかみ合うように交差する二重螺旋円錐形ブレードが用いられている油加熱双錐体反応槽であった。その混合装置のブレードを開始させて53rpmに設定した後、その反応混合物に真空を反応中の混合物の発泡が抑えられるような様式でかけた。反応混合物の温度を熱電対で測定した。その温度を100℃に上昇させて1時間保持した。その温度を135℃に上昇させて3時間保持した。次に、その温度を180℃に上昇させて2時間保持した。その混合装置を窒素でパージ洗浄しながら重合体溶液をガラス製容器の中に排出させた。この重合体を前記混合装置から重合体がPPAに18%入っている形態で取り出した。
【0115】
その結果として得た重合体溶液のサンプルをメタンスルホン酸(MSA)で重合体固体
が0.05%の濃度になるように希釈した。このサンプルの測定固有粘度は27dl/gであり、これを表4中に項目1と表示した。錫を使用するTD複合体の重量を基準にして0.8、0.5、0.3、0.074および0%用いて前記手順を繰り返した。錫含有量に対する固有粘度の傾向を図2にグラフで示す。
【0116】
【表4】

【0117】
繊維紡績実施例
【実施例9】
【0118】
錫を用いた重合(TAPを10%モル過剰量で用いて繊維を紡績)。乾燥させておいた奇麗な4CV Model DIT Mixerを窒素ガスで絶えずパージ洗浄しながら、これの中で下記を一緒にした:
a)P濃度が85.15%のポリ燐酸(PPA)を663.0グラム、
b)Pを112.5グラム、
c)錫粉末[325メッシュ、VWR scientificから入手可能;この錫粉末の量をTD複合体の量を基準にして約0.5重量%にする]を1.1グラム、および
d)TD複合体[テトラアミノピリジン(TAP)とジヒドロキシテレフタル酸が1:1の複合体、即ちTAPが94.45gでDHTAが134.45g]を230.0グラム。
【0119】
前記4CV Modelはジャケット付き双錐体反応槽[前記ジャケットに熱油を循環させることでそれを加熱し、ボウルの円錐形エンベロープ全体に渡って互いにかみ合うように交差する二重螺旋円錐形ブレードが用いられている]であった。その混合装置のブレードを80rpmに設定した後、その反応混合物に真空を反応中の混合物の発泡が抑えられるような様式でかけた。反応混合物の温度を熱電対で測定した。その反応混合物の温度を100℃に上昇させて1時間保持した。その温度を135℃に上昇させて4時間保持した。次に、その温度を180℃に上昇させて2時間保持した。その混合装置を窒素でパージ洗浄しながら重合体溶液をガラス製容器の中に排出させた。この重合体を前記混合装置から重合体がPPAに18%入っている形態で取り出した。その重合体溶液のサンプルをメタンスルホン酸で濃度が0.05%になるように希釈した。その結果として得た重合体が示した固有粘度は26dl/gであった。
【0120】
繊維紡績。前記重合させた重合体がポリ燐酸に入っている溶液の紡績を、ドライジェット湿式紡績技術を用い、水を凝固用媒体として用いて実施して、直径が90ミクロンの穴が備わっている250穴紡績口金に通すことでマルチフィラメントヤーンを生じさせた。エアギャップの長さを15mmにし、エアギャップ内で起こる紡績延伸比(spin draw ratio)が約14になるようにした。そのマルチフィラメントヤーンのボビンを乾燥させる前に熱(50℃)水中で2週間洗浄した。その湿った状態のヤーンを170℃で890gの張力をかけながら長さが170インチの4セクション管型オーブンの中に窒素でパージ洗浄しながら7m/分の速度で通すことで乾燥させた。その結果として得
た373デニールのヤーンは下記の物性を示した:引っ張り強さ/伸び/引っ張り応力:27.8gpd/2.62%/1345gpd。
【実施例10】
【0121】
Fe金属を用いた重合(TAPを10%モル過剰量で用いて繊維を紡績)。乾燥させておいた奇麗な4CV Model DIT Mixerを窒素ガスで絶えずパージ洗浄しながら、これの中で下記を一緒にした:
a)P濃度が85.65%のポリ燐酸(PPA)を682.1グラム、
b)Pを89グラム、
c)鉄粉[325メッシュ、Sigma−Aldrichから入手可能;このFe粉末の量をTD複合体の量を基準にして約0.5重量%にする]を1.15グラム、および
d)TD複合体[テトラアミノピリジン(TAP)とジヒドロキシテレフタル酸が1:1の複合体、即ちTAPが94.45gでDHTAが134.45g]を228.9グラム。
【0122】
前記4CV Modelを熱油で加熱し、そしてこれにはボウルの円錐形エンベロープ全体に渡って互いにかみ合うように交差する二重螺旋円錐形ブレードが用いられていた。その混合装置のブレードを開始させて80rpmに設定した後、その反応混合物に真空を反応中の混合物の発泡が抑えられるような様式でかけた。反応混合物の温度を全体に渡って熱電対で測定した。その反応混合物の温度を100℃に上昇させて1時間保持した。その温度を135℃に上昇させて4時間保持した。次に、その温度を180℃に上昇させて2時間保持した。その混合装置を窒素でパージ洗浄しながら重合体溶液をガラス製容器の中に排出させた。この重合体を前記混合装置から重合体がPPAに18%入っている形態で取り出した。その重合体溶液のサンプルをメタンスルホン酸で濃度が0.05%になるように希釈した。ninhは24dl/gであった。
【0123】
繊維紡績。前記重合させた重合体がポリ燐酸に入っている溶液の紡績を、ドライジェット湿式紡績技術を用い、水を凝固用媒体として用いて実施して、直径が90ミクロンの穴が備わっている250穴紡績口金に通すことでマルチフィラメントヤーンを生じさせた。エアギャップの長さを15mmにし、エアギャップ内で起こる紡績延伸比が約14になるようにした。そのマルチフィラメントヤーンのボビンを沸騰水中で90分間洗浄し、次に2重量%の活性水溶液に2時間浸漬した後、水に2時間浸漬し、その水を新鮮な水と2回交換した後、2重量%の酢酸水溶液に2時間浸漬し、次に新鮮な水に2時間浸漬し、その水を新鮮な水と2回交換した。その洗浄したヤーンのボビンをプラスチック製バッグの中に湿った状態で入れて管型オーブンの中に乾燥するまで貯蔵した。そのヤーンを170℃で1000グラムの張力をかけながら長さが1フィートの管型オーブンの中に窒素でパージ洗浄しながら0.5m/分の速度で通すことで乾燥させた。その結果として得た387デニールのヤーンは下記の物性を示した:引っ張り強さ/伸び/引っ張り応力:25.9gpd/2.24%/1398gpd。
【実施例11】
【0124】
重合体方法
11,580グラムのポリ燐酸(PPA)(Pが84.7%)を120℃で秤量用タンクから窒素が1気圧の雰囲気の10CV DIT Helicone混合装置(添加口が隠されることがないように前記混合装置のブレードを停止させておいた)に送る。そのPPAを前記混合装置に入れた後、前記混合装置のブレードを40rpmで回転させかつジャケット冷却水を開始させてPPAを70℃に冷却する。そのPPAが冷えた時点で水の流れを停止させ、そして添加口が隠されることがないように前記混合装置のブレードを停止させる。
【0125】
3400グラムのPを計り取って無水窒素(N)下の秤量用チャンバの中のトランスファービン(transfer bin)の中に入れる。前記混合装置の中の1気圧(絶対)の窒素圧をNブランケット下の秤量用チャンバの中の1気圧と等しくする。前記Pを前記10CV混合装置に移した後、トランスファーバルブ(tranfer valve)を閉じる。前記混合装置のブレードを開始させた後、それの速度を高くして40rpmにする。水冷を再開した後、PをPPAの中に混合しながら真空をゆっくりかけることで前記混合物に脱気を受けさせる。前記混合装置の内容物が75(±5)℃に維持されるように水冷を調節する。前記混合装置内の圧力を50mmHgにまで低下させた後、混合を更に10分間継続する。次に、水の流れを停止させた後、添加口が隠されることがないように前記混合装置のブレードを停止させる。Nを入り込ませることで圧力を1気圧(絶対)にする。
【0126】
10174グラムの単量体−複合体を計り取って無水N下の秤量用チャンバの中のトランスファービンの中に入れる。加うるに、51グラムの錫粉末(約325メッシュ)および25グラムの安息香酸を計り取って同じ秤量用チャンバの中の個別のNブランケット下のトランスファーベッセル(transfer vessel)の中に入れる。
【0127】
前記混合装置の中の1気圧(絶対)の圧力をNブランケット下の秤量用チャンバの中の1気圧と等しくする。前記単量体複合体、錫および安息香酸を前記10CV混合装置に移した後、トランスファーバルブを閉じる。前記混合装置のブレードを開始させた後、それの速度を高くして40rpmにする。その撹拌装置を開始させた時点で水冷を再開し、そして前記混合装置のブレードが40rpmの速度に到達した後、前記単量体複合体、錫および安息香酸を前記PPA混合物の中に10分かけて混合する。次に、その混合を継続しながら真空をゆっくりかけることで前記混合物に脱気を受けさせる。前記混合装置の内容物が75(±5)℃に維持されるように水冷を調節する。前記混合装置内の圧力を50mmHgにまで低下させた後、混合を10分間継続する。次に、前記混合装置のブレードの速度を12rpmになるまで下げ、そして冷却水を減少させることで前記混合装置内の内容物の温度を上昇させて85(±5)℃にする。次に、前記混合装置のブレードを停止させ、Nを入り込ませることで圧力を1気圧にした後、前記混合装置の内容物を撹拌機が2つ備わっているフィードタンク(feed tank)(DIT 10SC混合装置)に移す。
【0128】
前記フィードタンク内の反応混合物を110℃の温度および50mmHg絶対の圧力に維持する。両方の撹拌機を40rpmで回転させる。反応体混合物を前記タンクから10,050グラム/時の平均速度で熱交換器に通してポンプ輸送することで前記混合物の温度を137℃にまで高くした後、3個が1組の静的混合装置型反応槽の中に滞留時間が3時間になるように入れることで、オリゴマーを生じさせる。その静的混合装置型の反応槽から出て来たオリゴマー混合物の中にスーパー燐酸(SPA)(Pが76%)を1079グラム/時の平均速度で注入する。
【0129】
次に、そのオリゴマー混合物とSPAを静的混合装置で充分に混合した後、撹拌型サージタンク(surge tank)に移して、いくらか存在する揮発物を真空で除去する。その撹拌型サージタンクはDIT 5SC混合装置であり、それの温度を137℃に維持する。そのサージタンク内の平均滞留時間を1.25時間にする。
【0130】
前記混合物の重合
次に、前記オリゴマー混合物を180℃の温度で更に重合させることで所望の分子量にする。そのオリゴマー混合物を最初に熱交換器に通してポンプ輸送することで前記混合物の温度を180℃にまで上昇させた後、重合用溶液に5秒−1のせん断速度を与える回転式Couette型せん断反応槽と静的混合装置の反応槽系の中に通す。前記反応槽系を
180℃(±5)℃に維持しそしてこの反応槽系内の滞留時間を4時間にする。固有粘度が25dl/gの重合体が入っている溶液を得る。
【0131】
紡績方法
繊維の成形および急冷
次に、圧力を高める目的でギアポンプを用いて、IVが25の重合体をPPA(Pが81.5%に相当する濃度を有する)に18重量%入れることで生じさせた溶液を紡績機に送る。次に、前記溶液の一部を計量して180℃で5cc/1回転のギアポンプに通す。その重合体溶液をスクリーンとフィルターと流れ分配および支持用プレートの組み合わせで構成されている紡績パックに穴が500個の紡績口金に通してポンプ輸送する。
【0132】
前記紡績口金から出た500本のフィラメントを12mmのエアギャップに通して紡績した後、直径が5mmの急冷管が備わっている20%の燐酸水溶液の中で浴液の温度を20℃に調節しながら凝固させることでヤーンを生じさせる。そのヤーンを1分当たり200メートル送る1対のフィードロールで前方に進める。
【0133】
加水分解および洗浄
前記ヤーンを最初に洗浄用容器の中の水で濯いだ後、ロール上で濯ぐ。次に、前記ヤーンを円柱形ピンと接触させることで表面の液体の大部分を除去する。次に、前記ヤーンを105℃の表面温度で作動している乾燥用ロールに送る。前記ヤーンが前記ロールの表面と接触している時間を4.2秒にする。
【0134】
次に、前記ヤーンを200℃の表面温度で作動している電気加熱ロールに送ることで前記フィラメントに残存するPPAに加水分解を受けさせる。前記ロールの上を移動する時間が全体で14秒になるようにすることに加えて、前記ヤーンが前記ロールの表面と接触している時間が7秒になるようにする。
【0135】
次に、前記ヤーンを洗浄用ロールに送って、それを洗浄することで残存する酸を除去する。前記ヤーンを8対の前進巻き洗浄用ロール(advancing−wrap wash rolls)に通す。各ロール対毎の巻き数を10にし、滞留時間を7.5秒にしそして洗浄液の温度を70℃に調節する。
【0136】
最初の4組の洗浄用ロール上で前記ヤーンを向流の水で洗浄する工程を実施する。前記ヤーンから燐酸が抽出されることで、その洗浄水中の燐酸の量は4番目の組のロールから1番目の組のロールの方向に向かって高い。
【0137】
5番目の組の洗浄用ロール上で前記ヤーンを水中2%の水酸化ナトリウムで洗浄した後、6番目の組の洗浄用ロール上で前記ヤーンを水で洗浄する。この操作中、前記5番目の組の洗浄用ロールから6番目の組のロールに向かって苛性がいくらか運ばれる。
【0138】
7番目の組の洗浄用ロール上で前記ヤーンを水中2%の酢酸で洗浄した後、8番目の組の洗浄用ロール上で前記ヤーンを水で洗浄する。この操作中、前記7番目の組の洗浄用ロールから8番目の組のロールに向かって酢酸がいくらか運ばれる。
【0139】
乾燥
前記洗浄を乾燥から孤立させる目的で、前記洗浄したヤーンを1対のロールに通して移送する。前記ヤーンを接触している円柱形ピンの間に通すことで前記ヤーンから表面の洗浄液の大部分を除去した後、表面温度が150℃の1対の蒸気加熱乾燥用ロールの上に移送する。前記乾燥用ロール上の接触時間を30秒にする。次に、前記ヤーンにテキスタイル仕上げ剤を塗布した後、それをボビン上に巻き取る。
【実施例12】
【0140】
この実施例では、実施例11で生じさせたヤーンの任意の熱処理を説明する。乾燥後の前記ヤーンにテキスタイル仕上げ剤の代わりに揮発性の帯電性仕上げ剤を塗布しそして前記ヤーンをボビン上に巻き取る代わりにそれを直ちに加熱ロールに送る以外は実施例11の方法を繰り返す。
【0141】
熱処理
その乾燥させたヤーンを3対の電気加熱ロールに送ることで前記ヤーンの温度を400℃にまで上昇させる。次に、前記ヤーンをNブランケット下の管型オーブンの中に移送することで前記ヤーンの温度を500℃にまで上昇させる。前記ヤーンがN雰囲気から出る前にそれを室温のN雰囲気下で2秒間冷却した後、仕上げ剤を塗布する。次に、前記ヤーンを巻き取りに適した張力を確立するための1組のロールに通して移送した後、前記ヤーンを張力制御スピンドル駆動巻き取り機で管上に巻き取る。
【実施例13】
【0142】
乾燥させておいた奇麗な4CV Model DIT Mixer[Design Integrated Technology,Inc(Warrenton、VA)から入手可能]を窒素ガスで絶えずパージ洗浄しながら、これの中で下記を一緒にした:
a)Pに相当する濃度が84.84%のポリ燐酸(PPA)を585.71グラム、
b)Pを168.90グラム、
c)錫粉末[325メッシュ、VWR scientificから入手可能;この錫粉末の量をTD複合体の量を基準にして約1.2重量%にする]を3グラム、および
d)TD複合体[テトラアミノピリジン(TAP)とジヒドロキシテレフタル酸が1:1の複合体、即ちTAPが101.28gでDHTAが144.21g]を245.44グラム。
【0143】
前記4CV Modelはジャケット付き双錐体反応槽であり、前記ジャケットに熱油を循環させることでそれを加熱し、これにはボウルの円錐形エンベロープ全体に渡って互いにかみ合うように交差する二重螺旋円錐形ブレードが用いられていて、ユニークな混合原理を与えた。その混合装置のブレードを開始させて80rpmに設定した後、その反応混合物に真空を反応中の混合物の発泡が抑えられるような様式でかけた。その反応混合物の温度を全体に渡って熱電対で測定する。その温度を100℃に上昇させて1時間保持した。次に、その温度を135℃に上昇させて2時間保持した。次に、前記混合装置を窒素ガスでフラッシュ洗浄する。次に、前記混合装置にPの濃度が84.84%に相当するPPAが49.73グラムで水が5.49gの混合物を55.2グラム加える。その溶液を15分間撹拌する。次に、温度を180℃に上昇させて2時間保持した後、真空を前記混合装置に重合の最後の30分間の間かける。次に、前記混合装置を窒素でパージ洗浄した後、重合体溶液をガラス製容器の中に排出させた。この重合体を前記混合装置から重合体がPPAに18.29%入っている形態で取り出した。その重合体溶液のサンプルをメタンスルホン酸で濃度が0.05%になるように希釈した。ninh=23.9。
【図面の簡単な説明】
【0144】
この上に記述した要約ばかりでなく詳細な説明も添付図と関連させて読むことで更に理解されるであろう。本発明を例示する目的で、本発明の典型的な態様を本図に示すが、しかしながら、本発明をその開示する具体的な方法、組成物およびデバイスに限定するものでない。
【図1】図1は、ポリアレーンアゾール繊維製造方法の図式図である。
【図2】図2は、表4に示す本発明の特定態様に従うポリアレーンアゾール重合体溶液が示す固有粘度を錫含有量と対比させたグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアレーンアゾール重合体の製造方法であって、
a)アレーンアゾール生成用単量体、金属粉末および場合によりPをポリ燐酸中で接触させることで混合物を生じさせ、
b)前記混合物を約50℃から約110℃の温度で混合し、
c)前記混合物を約145℃以下の温度で更に混合することでオリゴマーを含有して成る溶液を生じさせ、
d)場合により、前記溶液に脱気を受けさせ、そして
e)前記オリゴマーの溶液を約160から約250℃の温度で重合体が生じるに充分な時間反応させる、
段階を含んで成る方法。
【請求項2】
前記アレーンアゾール生成用単量体に2,5−ジメルカプト−p−フェニレンジアミン、テレフタル酸、ビス−(4−安息香酸)、オキシ−ビス−(4−安息香酸)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ピリドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾール、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノヒドロキノン、2,5−ジアミノ−4,6−ジチオベンゼンまたはこれらの任意組み合わせを含める請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アレーンアゾール生成用単量体が2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸である請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記アレーンアゾール生成用単量体が2,3,5,6−テトラアミノピリジンと2,5−ジヒドロキシテレフタル酸の複合体の形態である請求項3記載の方法。
【請求項5】
段階a)に更に前記重合体用の連鎖停止剤も含める請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記連鎖停止剤が安息香酸、安息香酸フェニルまたはオルソフェニレンジアミンである請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記金属粉末が錫粉末または鉄粉である請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記ポリ燐酸が重合後に少なくとも約81パーセントの相当P含有量を有する請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ポリ燐酸が重合後に少なくとも約82パーセントの相当P含有量を有する請求項1記載の方法。
【請求項10】
段階c)を制御せん断環境下で実施する請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記制御せん断環境が1個以上の静的混合装置である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記制御せん断環境が押出し加工機である請求項10記載の方法。
【請求項13】
段階c)後に燐酸を添加することで前記混合物中の前記ポリ燐酸と任意のPを一緒にした濃度を低くする請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記燐酸がスーパー燐酸またはポリ燐酸である請求項13記載の方法。
【請求項15】
段階e)において制御せん断環境下で与えられるせん断速度が8秒−1以下であるようにする請求項12記載の方法。
【請求項16】
段階e)における温度を約180℃から約200℃にする請求項1記載の方法。
【請求項17】
段階e)における時間を約1から約6時間にする請求項1記載の方法。
【請求項18】
段階e)に多数の反応段階を含めて、各段階の温度を高くして行く請求項1記載の方法。
【請求項19】
段階e)における溶液の固体濃度パーセントを約10から約21重量パーセントにする請求項1記載の方法。
【請求項20】
更に、
f)段階e)の重合体を含有して成る溶液からフィラメントを紡績する、
段階も含んで成る請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−534743(P2008−534743A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504213(P2008−504213)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/011026
【国際公開番号】WO2006/104974
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【出願人】(507318358)マゼラン・システムズ・インターナシヨナル・エルエルシー (13)
【Fターム(参考)】