説明

ポリイオンおよび物質送達に関連する材料および方法

所望の物質を標的部位に送達するための材料および方法であって、担体と物質とが一緒に第1のpHでイオン相互作用により会合する少なくとも3つの層を形成し、少なくとも1つの層が、電離性基を含み、第1のpHで正電荷を、第2のpHでより小さい正、中性または負の電荷を有する電荷転換材料を含み、少なくとも1つの層が第1のpHで負に荷電するポリイオンを含み、少なくとも1つの層が所望の物質を含む層状担体を用いるものを開示する。好ましい担体は、電荷転換材料であるポリBis-Trisおよびポリイオン高分子であるポリアクリル酸に基づいている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイオンおよび物質送達に関連する材料および方法、ならびに特に、物質の送達のための電荷転換材料を含む材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一連の目的のためのDNA分析の非常に大きい需要が存在し、これが、DNAおよび他の核酸の分離および精製の迅速、安全かつハイスループットな方法の要求につながった。DNA同定または分析用試料は、動物および植物細胞、糞、組織等の生物学的材料などの広範囲な源から採取することができ、また、試料は土壌、食品材料、水等から採取することができる。
【0003】
DNAの抽出の既存の方法は、フェノール/クロロホルムの使用、塩析、カオトロピック塩およびシリカ樹脂の使用、アフィニティ樹脂の使用、イオン交換クロマトグラフィーおよび磁性ビーズの使用などである。方法は、米国特許第5057426号および第4923978号、EP0512767AおよびEP0515484AならびにWO95/13368、WO97/10331およびWO96/18731に記載されている。これらの特許および特許出願は、固体保持体上に核酸を吸着させ、次いで核酸を分離する方法を開示している。この以前に用いられた方法は、ある種の溶媒を用いて核酸を分離するものであり、たびたび、引火性、可燃性または有毒な溶媒を使用する。
【0004】
EP0707077Aは、核酸を酸性pHで沈殿させ、アルカリ性pHで放出させる合成水溶性高分子を記載している。核酸の再溶解は、核酸、特にRNAが変性、分解し得る、あるいは保存および分析の前にさらなる精製または調節を必要とする極端なpH、温度および/または高い塩濃度で行われる。
【0005】
WO96/09116は、pHの変化を用いて高または低イオン強度の水溶液から標的化合物、特にタンパク質を回収するための混合形樹脂を開示している。樹脂は、標的化合物が結合するpHで疎水性を有し、標的化合物が脱着するpHで親水性および/または静電特性を有する。
【0006】
WO99/29703およびWO02/48164は、試料中の核酸を低いpH(例えば、pH6)で固相に結合させ、より高いpH(例えば、pH8)で核酸を放出させて、核酸を精製するための電荷転換材料の使用を開示している。WO99/29703は、ヒスチジンおよびポリヒスチジン群を取り込む固相の使用を例示しており、WO02/48164は、生物学的緩衝剤、例えば、Bis-Trisのような電荷転換材料の使用をさらに開示している。
【0007】
DNA、薬物および他の治療薬のような活性分子を運び、それらを標的部位、特に生体内標的部位に送達する方法にも現在著しい関心が払われている。
【0008】
DNAを標的部位に送達する既存の方法としては、修飾レトロウイルスまたはアデノウイルスを用いるDNAの送達、生物への裸のDNAの直接注入またはリポソームの使用などがある。
【0009】
リポソームのような合成送達システムは、免疫原性反応のリスクの低減、および輸送能力の増加の可能性を含む多くの理由で、ウイルスと比較して有利である。しかし、陽イオンリポソームについては、送達エンベロープの表面上の正電荷により、非特異的組織取込み、ならびに負に荷電した血清分子、血球および細胞外マトリックスとの非特異的相互作用をもたらし得る。これらの相互作用は、時として沈殿も引き起こす。他方で、陰イオンリポソームは、DNAが被覆リポソームと相互作用することができないため、低い被包を達成する。
【0010】
DNAを送達する代替法は、DNAとポリカチオンとのコンプレックスの形成を含む(Cotton 1993、Current Opinion in Biotechnology、第4巻、705頁)。米国特許第5908777号は、所望の物質とポリリシンのようなポリカチオンとのコンプレックスを生成させ、次いで、コンプレックスと陰イオン脂質製剤とを混合することを含む、治療分子の送達のための脂質ベクターを形成する方法を記載している。
【0011】
米国特許第5679559号は、リポタンパク質のコアを提供することを含む、細胞内にDNAを導入する方法を記載している。これは、ひいては核酸分子と会合する、正に荷電した生体適合性高分子の疎水性側鎖と会合している。高分子は粒子の表面に輸送されるので、粒子によって輸送することができる高分子の量は限られている。
【0012】
米国特許第6383811号は、粒子を全体として負に荷電させ、それにより、送達をより容易にするための、DNAとポリカチオンとのコンプレックスが負に荷電した高分子と会合している送達システムを開示している。負に荷電した高分子は、あらかじめ形成したDNA/ポリカチオンコンプレックスに添加されている分離した高分子であってよく、あるいは、それをポリカチオンに共有結合させて両性高分子電解質を生成させ、次いで、それをDNAと複合させてよい。しかしながら、ポリカチオンまたはポリアニオンが、DNAの放出がpH環境の変化によって誘発されるような電荷転換特性を有するという開示は存在しない。また、粒子の成分を多層構造に配置すべきであるという開示も存在しない。
【特許文献1】米国特許第5057426号
【特許文献2】米国特許第4923978号
【特許文献3】EP0512767A
【特許文献4】EP0515484A
【特許文献5】WO95/13368
【特許文献6】WO97/10331
【特許文献7】WO96/18731
【特許文献8】EP0707077A
【特許文献9】WO96/09116
【特許文献10】WO99/29703
【特許文献11】WO02/48164
【非特許文献1】Cotton 1993、Current Opinion in Biotechnology、第4巻、705頁
【特許文献12】米国特許第5908777号
【特許文献13】米国特許第5679559号
【特許文献14】米国特許第6383811号
【非特許文献2】Immobilised Affinity Ligand Techniques、Greg T. Hermanson、A. Krishna MalliaおよびPaul K. Smith、Academic Press Inc.、San Diego、CA、1992、ISBN 0123423309
【特許文献15】WO97/2982
【非特許文献3】Decherら、Thin Solid Films 244、(1994)、722頁
【非特許文献4】Lvovら、Colloids and Surfaces A 146、(1999)、337頁
【非特許文献5】Arigaら、J. Am. Chem. Soc. 119、(1997)、2224頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
概して、本発明は、所望の物質を標的部位に輸送し、送達する新規の方法およびそれに用いるための新規の生成物に関する。いくつかの態様において、本発明は、物質の送達または核酸の精製に用いるために電荷転換材料(charge switch material)を用いて他の物質とのポリイオンを生成させることに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の態様において、本発明は、所望の物質を細胞に送達する方法であって、
所望の物質がイオン相互作用により電荷転換材料と結合するように、電離性基を有し、第1のpHで正の電荷を有する電荷転換材料を含む担体を第1のpHで所望の物質と接触させる工程、
担体を標的部位に送達する工程、および
電荷転換材料上の電荷が負、中性またはより小さい正である、より高い第2のpHで担体から所望の物質を放出させる工程を含む方法
を提供する。
【0015】
好ましい実施形態において、担体は、第1のpHで、イオン相互作用により会合している少なくとも3つの層を含み、1つまたは複数の層が電荷転換材料を含む。
【0016】
担体材料の電荷の変化は、本明細書では「電荷転換」と称し、「電荷転換材料」の使用によって実現される。
【0017】
電荷転換材料は、周囲条件に応じて電荷を変化させる電離性基を含む。電荷転換材料は、電離性基のpKaが、望むように核酸を担体に結合させ、核酸を担体から放出できるような条件に合致するように選択する。一般的に、核酸または他の所望の物質は、pKaより低いか、またはほぼ等しいpHで、電荷転換材料が正に荷電しているときに、電荷転換材料に結合し、より高いpH(通常pKaより高い)で、電荷転換材料がより小さい正に荷電、中性、または負に荷電しているときに、放出される。
【0018】
しかし、電荷転換材料が、高い、電荷転換材料が負に荷電している第1のpHで所望の物質に結合し、より低い、電荷転換材料がより小さい負に荷電、中性または正に荷電している第2のpHで所望の物質を放出させるということも可能である。
【0019】
本発明は、より詳細には、所望の物質の放出が生理的条件下で起ることを可能にする電荷転換材料の使用を対象とする。標的部位は、細胞内の標的部位であってよく、あるいは細胞外標的部位、例えば、ヒトもしくは動物の身体または植物の内部または表面上であってよい。したがって、本発明は、薬物の局所、経腸、経口および非経口送達の環境依存性放出、ならびに遺伝子治療に広い適用範囲を有する。さらに、本発明は、細胞封じ込め、ならびに農薬、園芸、漁業、獣医学、生物医学産業、機能性食品、食物および食物連鎖、化粧品および防衛産業における指示薬、化学物質、生物および生物活性物質のpH依存性放出に有用であると思われる。
【0020】
所望の物質を細胞に送達する以前の方法としては、DNAとポリカチオン分子、特にポリリシンとのコンプレックスの形成などがある。しかし、本願発明者らは、放出制御のメカニズムが存在しないので、そのようなコンプレックスからの所望の物質の放出は効率が悪い可能性があることを認識した。電荷転換材料を用いることによって、pH環境の変化に基づいて、標的部位における所望の物質の放出の制御を得ることが可能である。
【0021】
第2の態様において、本発明は、所望の物質を標的部位に送達するための担体を提供する。1つの実施形態において、担体は、イオン相互作用により会合している少なくとも3つの層を含み、これらの層の少なくとも1つが電荷転換材料であり、所望の物質がイオン相互作用により担体に結合している。他の実施形態において、担体は、イオン相互作用により会合している少なくとも4つの層を含み、これらの層の少なくとも1つが電荷転換材料を含み、所望の物質がイオン相互作用により任意に担体に結合している。
【0022】
担体における多層の使用は、各担体の輸送能力を増加させる手段を提供する。これは、2つの方法のうちの1つにより達成することができる。第1に、所望の物質を担体の少なくとも1つの層に組み込み、また場合によって担体の表面に結合させることができる。したがって、本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの層、好ましくは複数の負の電荷を有する材料を含む少なくとも1つの層は、所望の物質を含む。これは、担体の外表面に結合する所望の物質と同じ、または異なっていてよい。
【0023】
さらに、本願発明者らは、末端が第1のpHで正に荷電するポリイオンを含む層になっている、正電荷と負電荷を交互に有するポリイオンの連続する層を積み重ねる場合、得られる生成物は、正に荷電したポリイオンを含む1層のみを有する粒子よりも、多くの負に荷電した所望の物質を結合することができることを発見した。したがって、本発明のさらなる、または追加の実施形態において、担体の少なくとも2層がポリイオンを含む。層が隣接していることが好ましい。所望の物質がこれらの層の最外層に結合することがより好ましい。
【0024】
担体は所望の物質の分離のためにも用いることができ、担体の輸送能力の改善は所望の物質の収率の改善をもたらす。
【0025】
電荷転換材料は、電離性基を有し、第1のpHで荷電し、第2のpHで電荷をもたない、中性またはより小さい電荷を有する材料と本明細書では定義する。
【0026】
一般的に、電荷転換材料上の電荷は変化するのは、pHが、正に荷電する電離性基のpKaにまたがる、または近い範囲で増加するとき、正に荷電する電離性基上の電荷が、正からより小さい正または中性に変化するためである。これは、中性またはより小さい負から、より大きい負への、負に荷電する電離性基上の電荷の変化と同時に発生しているのかもしれない。しかし、別の実施形態(下で述べる)において、電荷転換材料は、両pH値で正に荷電する材料(金属酸化物のような)、およびpHがそのpKaにまたがる、または近い範囲で増加するとき電荷がより負になる、負に荷電する電離性基を含む。
【0027】
電荷転換材料は、約3〜9のpKaを有する電離性基を含んでいてよい。正に荷電する電離性基については、pKaは、より好ましくは少なくとも約4.5、5.0、5.5、6.0もしくは6.5および/または多くて約8.5、8.0、7.5もしくは7.0である。正に荷電する電離性基の特に好ましいpKaは約5〜8であり、より好ましいpKaは約6.0〜7.0であり、より好ましくは約6.5〜7.0である。負に荷電する電離性基のpKaは、好ましくは約3〜7、より好ましくは約4〜6であり、さらに好ましくは、望むように所望の物質に結合することができる、おおよそのpHである。
【0028】
複数のpKa値を有する(例えば、異なる電離性基を有する)材料、または異なるpKa値を有する材料の組合せも、第1の(低い)pHで材料が正電荷を有し、より高いpHで電荷がより小さい正、中性または負であるならば、本発明による電荷転換材料としての使用に適していると思われる。
【0029】
一般的に、電荷転換は、pHを電離性基のpKaより低い値から高い値に変化させることによって達成される。しかし、pHが特定の電離性基のpKa値と同じであるとき、個々の電離性基の50%が荷電されており、50%が中性であるということは認識されよう。したがって、電荷転換効果は、電離性基のpKaに近いが、それをまたがない範囲でpHを変化させることによって達成することもできる。例えば、カルボキシ基(pKaは一般的に約4である)のような負に荷電する電離性基のpKaにおいて、そのような基の50%がイオン化されており(例えば、COO-)、50%が中性形(例えば、COOH)である。pHが上昇するとき、割合が増加する基は、負の形態である。
【0030】
結合工程は、電離性基のpKaより低い、または(好ましくないが)pKaより高い約1pH単位内のpHで行わせることが好ましい。一般的に、放出工程は、電離性基のpKaより高いpHで、好ましくはpKaより1〜3pH単位高いpHで行わせる。
【0031】
適切な電荷転換材料の例は、出願WO99/29703およびWO02/48164に記載されており、その内容は参照として本明細書に組み込まれる。電荷転換材料のクラスの例としては、生物緩衝剤、ポリヒドロキシル化アミン、洗浄剤または界面活性剤、核酸塩基、複素環式窒素含有化合物、モノアミン、染料、および、負に荷電する電離性基を有し、そのpKaが3.0〜7.0であり、前記第1のpHで、また場合によって前記第2のpHでも正に荷電する金属酸化物と組み合わせた化合物などがある。それらは、ヒスチジン、ポリヒスチジン、および重合させることができる、または高分子主鎖に結合させることができる正に荷電する電離性基を含む緩衝剤などである。
【0032】
概して、本発明による電荷転換材料としての使用に好ましい化学種は、正に荷電する電離性窒素原子、およびそのpKaを低下させるのに窒素原子に十分に近い、少なくとも1つ、好ましくは複数の電気的陰性基(ヒドロキシ、カルボキシ、カルボニル、リン酸またはスルホン酸基)または二重結合(例えば、C=C二重結合)を含む。そのような分子は、本発明による温和な条件下の核酸の抽出に適するpKa値を有する傾向があることが見出された。好ましくは、少なくとも1つ(しかし、より好ましくは複数)の電気的陰性基が2個を超えない原子(通常炭素原子)によって電離性窒素から隔てられている。ヒドロキシル基が特に好ましい電気的陰性基である(特に、いくつかのヒドロキシル基が例えば、トリス(C(CH2OH)3-NH2)またはBIS-TRIS(下を参照)のようなポリヒドロキシルアミン中に存在する場合)。その理由は、それらが(1)窒素原子のpKa(例えば、アミン基、例えば、約10〜11)を中性のまわりの適切な値(例えば、約7のpKa)に低下させ、(2)アミン基の窒素原子がその正電荷を失うとき、そのpKa以上で種を可溶性/親水性のままにし、(3)固体基材、例えば、ポリカルボキシル化高分子(ポリアクリル酸のような)に共有結合の部位を与え、および(4)放出に適するpH値およびPCRのような処置が行われるpH(一般的にpH8.5)で荷電されていないからである(荷電した種の存在は特にPCRを妨害することがある)。特に好ましいものは、電離性窒素原子および少なくとも2、3、4、5または6個のヒドロキシル基を有する化学種である。ポリヒドロキシル化アミンのさらなる例は、ジエタノールアミンのようなジアルコールアミン試薬である。これらの化合物を基礎としたシラン試薬は、[HO-(CH2)n]2-N-(CH2)m-部分(式中nおよびmは1〜10から選択される)を固相に、例えば、3-ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシランを用いて結合させるのに用いることができる。
【0033】
多くの標準的な弱塩基性緩衝剤は、中性(すなわち7)に近いpKa値を有するので、電荷転換材料の電離性基を提供する理想的な化学種である。
【0034】
電荷転換材料としての使用のために、電離性基を含む化学種を、固体保持体(例えば、ビーズ、粒子、チューブ、ウェル、プローブ、ディップスティック、ピペットチップ、スライドガラス、繊維、膜、紙、セルロース、アガロース、ガラスまたはプラスチック)上に吸着、イオンまたは共有結合相互作用により、あるいは同様に固体保持体に固定化される高分子主鎖への共有結合により、モノマーまたはポリマーの形態で固定化することができる。あるいは、それらを、本質的に電荷転換を示す不溶性の形の固体、例えば、ビーズ、粒子、チューブ、ウェル、プローブ、ディップスティック、ピペットチップ、スライドガラス、繊維、膜またはプラスチックに組み込むことができる(高分子主鎖への結合を有するまたは有さない)。本発明においては、ポリイオン性高分子と所望の物質の層をそのような固相上に積み重ねることができる。
【0035】
固相物質、特に、ビーズおよび粒子は、磁化性、磁性または常磁性であってよい。これは、核酸の後続の処理または保存を行う前に、放出された核酸を含む溶液から固相を除去する助けとなり得る。したがって、本発明のコンプレックスは、ビーズのようなコア粒子の周囲に蓄積させることができる。本明細書に記載した実施例では、磁性ビーズおよびポリスチレン粒子であるコア粒子を使用している。
【0036】
好ましくは、弱塩基性緩衝剤は、生物緩衝剤、すなわち、生物緩衝液に一般的に用いられている緩衝剤のクラスの緩衝剤である。生物緩衝剤の例は、Sigmaカタログのような商業用化学カタログに見出すことができる。本発明による電荷転換材料用の適切な生物緩衝剤の例とそれらのpKa値は次の通りである。
N-2-アセトアミド-2-アミノエタンスルホン酸‡‡(ACES)、pKa 6.8、
N-2-アセトアミド-2-イミノ二酢酸‡‡(ADA)、pKa 6.6、
アミノメチルプロパンジオール†(AMP)、pKa 8.8、
3-1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチルアミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸†(AMPSO)、pKa 9.0、
N,N-ビス2-ヒドロキシエチル-2-アミノエタンスルホン酸‡‡(BES)、pKa 7.1、
N,N-ビス-2-ヒドロキシエチルグリシン†(BICINE)、pKa 8.3、
ビス-2-ヒドロキシエチルイミノトリスヒドロキシメチルメタン‡‡(BIS-TRIS)、pKa 6.5
1,3-Bis-Trisヒドロキシメチルメチルアミノプロパン‡‡(BIS-TRISプロパン)、pKa 6.8
4-シクロヘキシルアミノ-1-ブタンスルホン酸(CABS)、pKa 10.7、
3-シクロヘキシルアミノ-1-プロパンスルホン酸(CAPS)、pKa 10.4、
3-シクロヘキシルアミノ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)、pKa 9.6、
2-N-シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)、pKa 9.6、
3-N,N-ビス-2-ヒドロキシエチルアミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸††(DIPSO)、pKa 7.6、
N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-3-プロパンスルホン酸††(EPPSまたはHEPPS)、pKa 8.0、
N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-4-ブタンスルホン酸†(HEPBS)、pKa 8.3、
N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-エタンスルホン酸††(HEPES)、pKa 7.5、
N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N-2-プロパンスルホン酸††(HEPPSO)、pKa 7.8、
2-N-モルホリノエタンスルホン酸‡(MES)、pKa 6.1、
4-N-モルホリノブタンスルホン酸††(MOBS)、pKa 7.6、
3-N-モルホリノプロパンスルホン酸††(MOPS)、pKa 7.2、
3-N-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸‡‡(MOPSO)、pKa 6.9、
ピペラジン-N-N-ビス-2-エタンスルホン酸‡‡(PIPES)、pKa 6.8、
ピペラジン-N-N-ビス-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸††(POPSO)、pKa 7.8、
N-トリスヒドロキシメチル-メチル-4-アミノブタンスルホン酸†(TABS)、pKa 8.9、
N-トリスヒドロキシメチル-メチル-3-アミノプロパンスルホン酸††(TAPS)、pKa 8.4、
3-N-トリスヒドロキシメチル-メチルアミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸††(TAPSO)、pKa 7.4、
N-トリスヒドロキシメチル-メチル-2-アミノエタンスルホン酸††(TES)、pKa 7.4、
N-トリスヒドロキシメチルメチルグリシン†(TRICINE)、pKa 8.1、ならびに
トリスヒドロキシメチルアミノメタン†(TRIS)、pKa 8.1、
ヒスチジン*、pKa 6.0およびポリヒスチジン‡‡、
イミダゾ-ル*、pKa 6.9およびその誘導体(すなわち、イミダゾ-ル類)、特にヒドロキシル基を含む誘導体**、
トリエタノールアミン二量体**、オリゴマー**およびポリマー**、ならびに
ジ/トリ/オリゴアミノ酸**、例えば、Gly-Gly、pKa 8.2、ならびにSer-Ser、Gly-Gly-GlyおよびSer-Gly、後三者は7〜9のpKa値を有する。
【0037】
好ましい実施形態において、上で星印(*)を付した緩衝剤は本発明の目的のための生物緩衝剤とみなされない(それら自体化学カタログで指定されているか否かにかかわりなく)。より好ましい実施形態において、2つの星印(**)を付したものも生物緩衝剤とみなされない。好ましい生物緩衝剤には短剣符(†)を付し、より好ましい緩衝剤には2つの短剣符(††)を付し、さらにより好ましい緩衝剤には二重短剣符(‡)を付し、最も好ましい緩衝剤には2つの二重短剣符(‡‡)を付す。
【0038】
電離性基を有するこれらおよび他の化学種は、共有結合、イオンまたは吸着相互作用を用いて固相保持体上にモノマーとして被覆することができる。さらに、またはあるいは、それらは、重合した形態で(好ましくは縮合重合の後)、例えば、負に荷電した表面(例えば、露出したCOOHまたはSO3基を有する表面)上への吸着により、または共有結合により、そのような固相保持体上に被覆することができる。さらに、またはあるいは、電離性基を含む化学種を高分子(下を参照)に結合させ、次いでその高分子を吸着または共有結合により固体保持体に結合させる。
【0039】
好ましくは、化学種または高分子主鎖は、所望のpKa値を有する電離性基(通常窒素原子であるが、これに限定されない)が核酸に結合し、放出することが依然としてできるように、ヒドロキシル基または他の基を介して固体保持体に共有結合させる。
【0040】
正に電荷する電離性基を含む生物緩衝剤および他の化学種は、好ましくは上記の範囲の適切なpKaを有する負に荷電する電離性基を含む化学種と共に用いることができる。例えば、生物緩衝剤(1つまたは複数の正に荷電する電離性窒素原子を含む)は、生物緩衝剤の結合の後でさえも露出したカルボキシ基を有する高分子または他の固相材料に結合させることができる。そのような材料は、低いpHで、少数のカルボキシ基が負に荷電し(すなわち、少数のものがCOO-の形で存在し、ほとんどのものがCOOHの形で存在する)、電離性窒素原子のほとんどが正に荷電しているときに、核酸に結合することができる。より高いpHでは、負電荷がより強く(すなわち、より大きい割合のカルボキシ基がCOO-の形で存在する)、かつ/または正電荷がより弱く、核酸は固相から追い出される。
【0041】
電離性基を含む化学種(上記の生物緩衝剤のような)は、既知の化学を用いて高分子主鎖に結合させることができる。例えば、ヒドロキシル基を含む化学種は、カルボジイミドケミストリー(carbodiimide chemistry)を用いてカルボキシル化高分子主鎖に結合させることができる。当業者が用いることができる他の化学は、一連の標準的カップリング化学(例えば、Immobilised Affinity Ligand Techniques、Greg T. Hermanson、A. Krishna MalliaおよびPaul K. Smith、Academic Press Inc.、San Diego、CA、1992、ISBN 0123423309、その全体を参照として本明細書に組み込まれる)を用いて他の高分子主鎖(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)または炭水化物に基づく)を用いることなどである。
【0042】
あるいは、電離性基を含む化学種は、主鎖高分子を用いずに、架橋剤、例えば、ヒドロキシ基を介して結合する試薬(例えば、カルボニルジイミダゾール、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジアルデヒド、ジイソチオシアナート)を用いて重合させることができる。高分子は、適切なpKaを有する重合したアミノ酸、例えば、Gly-Glyを生成するために単純縮合化学により生成させることもできる。
【0043】
電離性基を含む化学種のそのような固定化、結合および/または重合は、電離性基のpKaに影響を及ぼさないか、またはpKaを上に示した所望の範囲内にあるままにすることが好ましい。例えば、化学種は正に荷電する電離性窒素原子を介して化学種を結合または重合させないことが一般的に好ましい(例えば、WO97/2982と異なる)。本発明の実施に際して、化学種をヒドロキシ基を介して固定化、結合および/または重合させることが特に好ましい。
【0044】
本発明による電荷転換材料としての使用に好ましい緩衝剤は、ポリアクリル酸のような高分子主鎖への結合により重合させることができるBis-Trisである。この適用例では、ポリアクリル酸主鎖または類似物へのBis-Trisモノマーの結合により生成したBis-Tris高分子は、「ポリBis-Tris」と称する。
【0045】
ポリBis-Trisは、1-エチル-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)を用いてBis-Trisモノマーをポリアクリル酸と反応させることによって生成させることができる。この高分子は、適切な試薬または水に対する透析を用いて反応物から容易に分離することができる。ポリアクリル酸は、約500〜5000000以上の分子量を有することが好ましい。100000〜500000の分子量を有することがより好ましい。
【0046】
得られるBis-Tris/ポリアクリル酸分子は、Bis-Trisによって修飾されているアクリル酸基の割合によって異なる特性を有するので、その性質は結合している成分の比に依存する。例えば、非修飾カルボキシ基の存在はBis-Trisが低いpHで核酸に結合することを妨げない(特にBis-Trisが過剰である場合)が、より高いpHsでのそれらの負の電荷は核酸の放出の助けとなるので、一部のカルボキシ基が非修飾のままであることが望ましい。本発明に使用するために、Bis-Tris:カルボキシ基のモル比(結合前)は、好ましくは5:1〜1:5、より好ましくは3:1〜1:3、さらにより好ましくは2:1〜1:2、さらに好ましくは1.5:1〜1:1.5、最も好ましくは1:1である。
【0047】
本発明の別の実施形態は、0〜12または0〜14のような広いpH範囲にわたり正に荷電する材料を用いる(例えば、pKa値を欠く、またはpKa値が高pHの極値において存在する金属酸化物、金属、強もしくは弱塩基などの電気陽性物質)。そのような正に荷電する材料を、核酸に結合するのに望ましいpHと放出するのに望ましいpH値の間の値のpKaを有する、負に荷電する物質と組み合わせる、或いは、核酸を結合するのに望ましいpHよりわずかに低いpKaを有する、負に荷電する物質と組み合わせる。この材料の組合せにより、負に荷電する電離性材料のpKaのまわりおよびそれ以下の特定のpH値(より少数の負に荷電した基が存在する)で核酸を結合することができるが、pHを上昇させ、より多数の電離性基を負に荷電させるときに、核酸を放出することができる。例えば、鉄II、III酸化物とポリカルボン酸エステルとの組合せは、負電荷が相対的に欠乏しているため正に荷電した鉄酸化物が核酸に結合することができるpH4で核酸に結合する。pHを約8に上昇させるとき、大部分のカルボキシ基が負に荷電し、鉄酸化物上に正電荷が残存しているにもかかわらず、全正電荷が減少することによって核酸が放出される。
【0048】
核酸精製用の電荷転換分子のさらなる例は、適切なpKaを有する正に荷電する電離性基を含む疎水性部分および親水性部分を有する洗浄剤または界面活性剤、例えば、デシルメチルイミダゾールまたはドデシル-Bis-Trisに基づいている。これらの洗浄剤または界面活性剤は、それらの疎水性部分を介して表面、例えば、プラスチック上に吸着させることができ、親水性(電離性)部分は核酸を捕捉するのに用いることができる。
【0049】
適切なpKa値を有する材料の他の群は、核酸塩基、例えば、シチジン(pKa 4.2)である。これらは、カルボジイミドを用いて高分子または固相カルボキシ基にヒドロキシ基を介して固定化することができる。
【0050】
適切なpKa値を有するメンバーを有する材料のさらなる群は、複素環式窒素含有化合物である。そのような化合物は、芳香族または脂肪族であってよく、モルホリン、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピリジノール、ピリドン、ピロリン、ピラゾール、ピリダジン、ピラジン、ピペリドン、ピペリジンまたはピペラジン含有化合物、例えば、ポリビニルピリジンのようなモノマー、オリゴマーまたはポリマーであってよい。そのような化合物は、電離性窒素原子のpKa値を例えば、上で定めたような許容できる範囲に至らせるために、電気陰性基で置換することができる。しかし、いくつかの化合物においては、これは必要ではなく、pKaは既にそのような範囲内にある。
【0051】
核酸を結合させるための固相のさらなる群は、表面アミン基、および特に、ポリアミンでないアミン基を有する。これらのモノアミン基は、式-NR1R2によって表すことができる。ここで、R1およびR2は水素または置換もしくは非置換アルキルである。これらの材料は本発明の好ましい実施形態で用いる物質よりも高いpKa値を一般的に有するが、それらは、核酸の抽出に用いることができ、場合によってそれらを固相の総括pKaを改変するために本明細書に記載したように負に荷電した種と共に用いる。
【0052】
さらなる群は、電荷転換材料として作用し、核酸に結合することができる電離性基を備えた材料であり、5〜8のpKaを有する染料および特に生物色素である。これらの材料は、固相に固定化させるか、または被覆することができる。
【0053】
本発明の材料および方法は、動物またはヒト身体上もしくは身体内または植物に存在する標的部位に生物活性物質を送達するのに有用である。血液のpHは通常約7.4であるが、細胞質のpHは7.1〜7.2である。同様に、本発明は、中性から遠くないpHも有する土壌または水中の物質のpH依存性放出に用いることができる。電荷転換材料のpKaは、これらの条件における放出を最適化するために選択することができる。
【0054】
所望の物質は、電荷転換材料に直接的または間接的に結合させることができる。いくつかの実施形態において、所望の物質は、イオン種として担体から放出されるように電荷転換材料に直接的に結合させる。これらの状況では、送達に供する物質は負に荷電していることが好ましい。しかし、所望の物質を1つまたは複数の中間層を介して電荷転換材料に結合させることができる。例えば、正に荷電した物質は、第1のpHで、負に荷電した対イオンの層を介して電荷転換材料に結合させることができる。第2のpHで、その物質は、担体から、その対イオンと会合して放出される。
【0055】
実施例に開示した本発明のいくつかの実施形態において、電荷転換材料をポリアクリル酸のようなポリイオン性高分子と共に用いる。電荷転換材料は第1のpHで一般的に正に荷電し、ポリイオン性高分子は負に荷電しているので、これは、正に荷電、負に荷電または両性イオンである所望の物質を輸送することを可能にする。さらに、実施例に示すように、これらの種は、いずれかの成分のみと比較して、驚くべき有利なことに、所望の物質の実質的に多い装填をもたらす。
【0056】
さらに、所望の物質を結合させた後、電荷転換材料でない、または非常に高いpKaを有する材料を含むさらなる層を結合させることが可能である。これは、輸送段階中に担体を安定化し、かつ/または放出速度を遅延させることを目的としている。再び、所望の物質はこの対イオンと共に放出される可能性がある。
【0057】
送達に供する所望の物質は、核酸、製薬上活性な化合物、タンパク質、炭水化物、成長因子、ホルモン、酵素、ワクチン、細胞、細胞成分およびウイルスを含む生物活性物質から選択することができる。さらに、それは、肥料、農薬、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤、ビタミンまたは飼料サプリメント、造影剤(放射性診断薬を含む)、染料およびキレート化剤から選択される化学物質であってよい。好ましくは、所望の物質は生物活性物質であり、最も好ましくは、それは核酸である。特に、一態様において、本発明は特に、本明細書に開示する担体を用いて細胞に核酸をトランスフェクトする方法を提供する。
【0058】
好ましくは、電荷転換材料は、第1のpHで正に荷電する複数の基を含む粒子または分子である。より好ましくは、第1のpHにおいて電荷転換分子は、ポリカチオンである。すなわち、線状または分枝状であってよい高分子で、第1のpHで陽イオンである1つまたは複数の基を有する複数のモノマー単位を含む。適切なポリカチオンの例としては、ポリヒスチジンおよびポリBis-Trisなどがある。他の適切なポリカチオンは、その内容が参照として本明細書に組み込まれるWO02/48164に記載されている。
【0059】
好ましい実施形態において、担体は、第1のpHにおいてイオン相互作用により会合している多層を含む。
【0060】
層は、各層が、イオン相互作用により多層構造に集合することを可能にする正に荷電した面と負に荷電した面を有するように両性イオン材料を含んでいてよい。
【0061】
あるいは、各層は、同じ電荷の複数の電離性基を有する材料を含んでいてよい。材料は、粒子、分子(例えば、低分子量分子またはポリイオン)または誘導体化固体表面もしくはコア(特にベース層のための)であってよい。この場合、交互に正と負に荷電した多層を作ることが可能である。
【0062】
交互に正と負に荷電した材料の多層を作る方法は、内容が参照として本明細書に組み込まれるDecherら、Thin Solid Films 244、(1994)、722頁、Lvovら、Colloids and Surfaces A 146、(1999)、337頁およびArigaら、J. Am. Chem. Soc. 119、(1997)、2224頁に記載されている。DecherらおよびLvovらはポリカチオンとポリアニオンの交互の層を作る方法を記載しているが、Arigaらは複数の負に荷電した基を有する小色素分子の層を含むポリカチオンの層を作る方法を記載している。各場合のアセンブリの基礎をなす原理は、各層において、過剰の電荷が前の層の電荷を中和するのに必要な電荷の量に応じて吸収されるということであると思われる。この過剰の電荷は、次の反対符号に荷電した層が結合することを可能にする。
【0063】
ポリイオンは、電離性基を有する複数のモノマー単位を含む高分子である。この高分子は、1種類のモノマー単位のみを含んでいてよく、あるいは複数の種類のモノマー単位を含んでいてよい(すなわち、コポリマーであってよい)。ポリカチオンは、正に荷電する電離性基を有する複数のモノマーを含む。それは、負に荷電する電離性基も含んでいてよいが、第1のpHで全体として正に荷電する。同様に、ポリアニオンは、負に荷電する電離性基を有する複数のモノマーを含み、いくつかの正に荷電する電離性基も含んでいてよいが、第1のpHで負に荷電する。
【0064】
ポリカチオンまたはポリアニオンは、反対符号のポリイオンにおそらく共有結合しているより大きい分子の一部を形成している可能性がある。ポリカチオンである部分とポリアニオンである部分を含むこの種の分子は、両極性高分子として知られている。層を組み立てるとき、これらのポリイオンは、負の面と正の面を有する層を提供する両性イオン分子として働く。
【0065】
ポリイオンは、直鎖状、環状または分枝状であってよい。線状であることが好ましい。
【0066】
本発明による使用に供するポリアニオンの例は以下の通りであった。
【0067】
ポリアニオン:
種類-陰イオン官能基-メルクインデックス番号
アセチル化ポリグルコン酸塩 COOH
酸性多糖 COOH
アルギン酸/アルギン酸塩 COOH M1835
アスコフィラン(Ascophyllan) SO3H
カラゲナン硫酸化ガラクトース M1872
カルボマー(Carbomer)(ポリビニルカルボキシル) COOH M1836
カルボキシル化ポリエチレンオキシド COOH
カルボキシメチルセルロース(CMC) COOH M1835
カルボキシメチルデキストラン COOH
シトラコン酸 COOH M2323
クエン酸 COOH M2328
コンドロイチン硫酸 SO4 M2217
デオキシリボ核酸 PO4
リボ核酸 PO4 M8204
デキストラン硫酸 SO3H-AntiCoag M2929
EDTA(エチレンジニトリロ四酢酸) COOH M3483
フコイダン(Fucoidan) SO3H
フマル酸 COOH 4200
ポリフマル酸 COOH 4200
ヘパリン(硫酸) SO4 M4571
ヒアルロン酸/ヒアルロン酸塩 COOH
酸化セルロース COOH
多塩基酸 COOH
核酸 PO4
ペクチン/ペクチン酸塩 COOH
ペントサンポリリン酸 PO4
ペントサンポリ硫酸[SO4] SO3H M7090
リン酸化ポリエチレンオキシド PO4
ポリアスパラギン酸 COOH M862
ポリアクリル酸 COOH
ポリカルボキシアスパラギン酸 COOH M1833
ポリアミノ酸 COOH/NH2
ポリカルボン酸 COOH
ポリカルボキシグルタミン酸 COOH M1834
ポリケイ皮酸 COOH M2300
ポリシステイン SH
ポリエストラジオールリン酸 PO4 M7542
ポリガラクツロン酸 COOH M4242
ポリグルロン酸 COOH
ポリグルクロン酸 COOH M4360
ポリグルタミン酸 COOH M4363
ポリグルタチオン COOH/SH M4369
ポリグリセロールリン酸、テイコ酸 PO4 M9061
ポリグリコール酸(PGA) COOH
ポリヒドロキシカルボン酸 COOH
ポリイズロン酸 COOH M4571
ポリ乳酸(PLA) COOH
ポリマレイン酸 COOH M5585
ポリマンヌロン酸/ポリマンヌロン酸塩 COOH
ポリヌクレオチド PO4 M6647
ポリペプチド COOH/NH2/SH
ポリリン酸塩 PO4
ポリリビトールリン酸 PO4 M9061
ポリ酢酸ビニル(PVA) [COO] COOH
硫酸化ポリエチレンオキシド SO4
三塩基カルボン酸 COOH
二塩基カルボン酸 COOH
酒石酸 COOH M9039
硫酸水素キシラン SO3H M7090
【0068】
本発明に使用する好ましいポリアニオンは、例えば、10k〜500k、より好ましくは100k〜300kの分子量を有するポリアクリル酸である。
【0069】
本発明の一実施形態において、担体は、イオン相互作用により会合している少なくとも3つの層を含み、少なくとも1つの層が電荷転換材料を含み、所望の物質がイオン相互作用により担体に結合している。他の実施形態において、担体は、イオン相互作用により会合している少なくとも4つの層を含み、少なくとも1つの層が電荷転換材料を含み、所望の物質が場合によってイオン相互作用により担体に結合している。担体は、少なくとも5つ、場合によって少なくとも6つ、7つ、8つ、9つまたはそれ以上の層を含んでいてよい。
【0070】
担体における多層の使用は、それにより輸送することができる所望の物質の量を増加する手段を提供する。本願発明者らは、これを達成することができる2つの方法を特定した。
【0071】
第1に、輸送する物質の量の増加は、所望の物質を1つまたは複数の層に組み込むことによって達成することができる。したがって、本発明の一実施形態において、担体の少なくとも1つの層が所望の物質を含む。
【0072】
この所望の物質は、正に荷電、負に荷電、両性イオンまたは中性であってよい。担体の層が交互に正と負に荷電している場合、好ましくは、所望の物質は、それが組み込まれる層と同じ電荷を有し、この場合、イオン引力によって下にある層に結合し、イオン種として放出される。その層が全体として、前の層の電荷を中和するのに必要なより多くの電荷を含むならば、所望の物質は複数の荷電した基を含む必要はない。あるいは、またさほど好ましくない実施形態において、さらなる所望の物質は中性であってよく、捕捉によって層に組み込まれてよい。
【0073】
1つまたは複数の層に組み込まれている、または形成している所望の物質は、担体の表面に結合している所望の物質と同じ、または異なっていてよい。同様に、所望の物質が複数の層に組み込まれているか、または形成している場合、これらの層の各々における物質は同じ、または異なっていてよい。所望の物質は、核酸、製薬上活性な化合物、タンパク質、炭水化物、成長因子、ホルモン、酵素、ワクチン、細胞、細胞成分およびウイルスを含む生物活性物質から選択することができる。さらに、それは、肥料、農薬、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤、ビタミンまたは飼料サプリメント、造影剤(放射性診断薬を含む)、染料、キレート化剤、化粧品、ペンキ、接着剤、洗浄剤、脂質、栄養補助食品および機能性食品から選択される化学物質であってよい。好ましくは、所望の物質は生物活性物質であり、最も好ましくは、それは核酸である。これに関連して、「核酸」、すなわち1本または2本鎖核酸は、ゲノムDNA、cDNAまたはRNAを含んでいてよい。核酸は、完全に、または部分的に合成されていてよい。核酸は、それ自体、または他の配列、例えば、担体もしくはプラスミドのような発現伝達体に連結させて、本発明により用いることができる。
【0074】
本発明は、酵素を所望の物質として用いることができる。酵素は、触媒性ポリペプチドであり、当業者は、本発明による使用に供する酵素の例を容易に見出すことができる。簡単な例証としての6つのクラスの代表的な例は、NAD+のNADHへの還元を伴うL-乳酸のピルビン酸への変換を触媒する酸化還元酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)(IUB 1.1.1.27);3種の転移酵素である、ヘキソキナーゼ(2.7.1.1)、ピルビン酸キナーゼ(2.7.1.40)およびDNA依存性RNAポリメラーゼ(2.7.7.6);リボヌクレアーゼA(3.1.4.22)、リゾチーム(3.2.1.17)およびトリプシン(3.4.21.4)のような加水分解酵素;脱離酵素であるエノラーゼ(4.2.1.11);異性化酵素であるトリオースリン酸イソメラーゼ(5.3.1.1):ならびにリガーゼ(合成酵素)であるグルタミンシンテターゼ(6.3.1.2)である。
【0075】
担体は、第1のpHで正に荷電する材料と第1のpHで負に荷電する材料を交互に含む層(すなわち、交互の電荷の層)を含むことが好ましい。所望の物質は、1つまたは複数の負に荷電した層に組み込まれていることが好ましい。1つまたは複数の負に荷電した層中の所望の物質は、同じ分子または粒子上の複数の負に荷電した基を含むことがより好ましい。さらにより好ましい実施形態において、1つまたは複数の負に荷電した層中の所望の物質は、ポリイオンであり、より好ましくは線状ポリイオンであり、より好ましくは核酸である。
【0076】
所望の物質がそれ自体、複数の負に荷電した基を含む粒子または分子である場合、負に荷電した層中に他のそのような材料を含む必要がない、すなわち、その層は主として、または完全に所望の物質により形成することができることは明らかであろう。
【0077】
所望の物質が担体の1つまたは複数の層に組み込まれているか、形成している場合、この標的材料を標的部位で放出することは明らかに望ましい。これが達成されるためには、標的材料を含む層の下にある少なくとも1つの層、および/または標的材料を含む層は、電荷転換材料を含むべきである。物質が担体の他の成分と会合せずに放出されることが好ましく、したがって、電荷転換材料を含む層の直下の層とその直上の層(もし存在する場合)は電荷転換材料を含むことが好ましい。さらなる所望の物質が中性であるか、またはそれが組み込まれている層中の材料と同じ電荷を有し、そのため、それがこの層のあらゆる成分と会合しないままであることも好ましい。
【0078】
発明者らは、正および負電荷を交互に有するポリイオンの連続的な層が積み重なり、第1のpHで正に荷電するポリイオンを含む層で終わっている場合、得られる生成物は、正に荷電したポリイオンを含む単層のみを有する粒子よりも多くの負に荷電した所望の物質を結合することができることをさらに認識した。
【0079】
理論に拘束されることを望むことなく、この理由は、ポリイオンの第1の層が構築されるとき、それは、基板に対して完全に平らには位置しないが、基板に対向して位置する部分と基板から伸びた部分を有することであると考えられる。基板から離れて伸びているこれらの部分は、下にある層上の電荷の中和には必ずしも寄与しないが、次の層に結合するために利用可能な過剰電荷を担う。表面から離れたこれらの部分の配向は、それらが複数の荷電した基を有することと合わせて、単位表面積当たり高密度の電荷の存在をもたらす。したがって、次の層における反対符号に荷電したより多くのポリイオンに結合し、ひいては単位面積当たりの電荷密度の増加をもたらす可能性がある。その結果、多量の所望の物質を担体の表面に結合させることができる。
【0080】
したがって、本発明の好ましい実施形態において、少なくとも2つの層がポリイオンを含む。ポリイオンを含む層が隣接していることが好ましい。輸送能力における最大のメリットを得るために、所望の物質がこれらの層の最外層に直接結合させることも好ましい。
【0081】
輸送能力の増加は、標的部位への物質の送達(より多くの物質が各ビーズ上で輸送されることを可能にする)と試料からの物質の分離(同等の数のビーズからより大きい収率を得ることを可能にする)との両面で有用である。
【0082】
多層生成物では、上記の輸送能力の改善の両方を同時に得ることができることは明らかであろう。担体が、核酸のようなポリアニオン性の所望の物質とポリカチオン性の電荷転換材料を交互に含む層から構成されているならば、最大の利益が得られるであろう。
【0083】
本発明による担体は、ビーズのような担体粒子であってよい。粒子は、固体材料であるコアを含んでいてよい。あるいは、担体は、本発明による材料を被覆したピペットチップ、容器またはフィルターであってよい。固体コアまたは表面は、イオン会合によりさらなる層が積み重なるように、荷電した基(例えば、カルボキシ基)で誘導体化してもよく、またそれ自体、本発明による層であってもよい。
【0084】
ビーズは、電荷転換ポリカチオンまたはポリアニオンであってよい粒子状材料のコアで形成させることもできる。例えば、特定のポリBis-Tris高分子は粒子状をとる自然の傾向を有するが、DNAは「コア」を形成する対イオンと共に沈殿させることができる。
【0085】
さらなる態様において、本発明は、本発明による担体を細胞に供給することを含む療法による、ヒトまたは動物の身体の処置の方法における上記のような担体の使用を提供する。この場合、担体は所望の物質を含み、所望の物質は細胞内pHで放出される。
【0086】
本発明は、所望の物質を標的部位に送達する方法における本発明による担体の使用も提供する。標的部位は、細胞内であってよい。方法は、in vitroまたはin vivoで行うことができる。
【0087】
さらに、本発明は、
第1のpHで、核酸を担体に結合させるように、試料を本発明による担体と接触させる工程、および
材料上の電荷が負、中性またはより小さい正である、より高い第2のpHで、核酸を放出する工程を含む、
試料から核酸を分離する方法を提供する。
【0088】
本発明の実施形態(その様々な態様における)は、実施例のみによってさらに詳細に記載する。
【実施例】
【0089】
材料
沈降バッファ[PB]は、1M酢酸カリウム、0.66M塩化カリウムからなる。PB/100は、PB を1:99に希釈したもので、10mM酢酸カリウムおよび7mM塩化カリウムを含む。
【0090】
溶出バッファ[EB]は、10mM Trizma Baseおよび1mM Trizma HClからなる。
【0091】
(実施例1)
ポリBis-Trisポリマー形成
50mMイミダゾール中pH6.0で160mgのポリアクリル酸(分子量240,000)、1.6gのBis-Trisおよび1.6gのEDCを混合することによって、Bis-Trisモノマーをポリマーに変えた。一晩インキュベーション後、混合物を水で透析した。
【0092】
(実施例2)
ポリBis-Trisポリマー形成
代替方法として、分子量15,000または分子量450,000のポリアクリル酸(PAA)を使用してポリBis-Trisポリマーを調製した。100mgのPAAポリマーを30mlの0.1Mイミダゾール(HCl)pH6.0および1gのBis-Trisと混合した。バッファをNaOHでpH6.0〜7.0に調整し、固体として1.0mgのEDCを添加した。チューブを1分間、激しく上下させ、14時間、反転させながら混合させた。
【0093】
その後、混合物を水で透析した。
【0094】
(実施例3)
Bis-Tris固相磁性ビーズ
112mgのカルボキシル化磁性粒子(1μm)を、0.1Mイミダゾール塩酸(pH6.0)中で、110mgのBis-Trisおよび110mgのカルボジイミド、EDCと1段階の手順で反応させた。一晩インキュベーション後、磁性粒子を洗浄した。粒子は後述のように使用することができる。
【0095】
(実施例4)
Bis-Tris固相ポリスチレンビーズ
1gのカルボキシル化ポリスチレン粒子(60μm)を、50mMイミダゾールバッファ(pH6.0)中で、500mgのBis-Trisおよび500mgのカルボジイミド、EDCと1段階の手順で反応させた。一晩インキュベーション後、粒子を洗浄した。粒子は後述の方法において使用することができる。
【0096】
(実施例5)
ピペットチップ上の固相化ポリBis-Tris
0.1M重炭酸ナトリウム(pH8.0)中の実施例1または実施例2で記述したように作製したポリBis-Trisの溶液(1mg/ml)を、20個の200μlポリプロピレンピペットチップと60℃で8時間インキュベートした。チップは後述の方法において使用することができる。
【0097】
(実施例6)
ポリアクリル酸およびポリBis-Trisの多層をもつビーズ形成
2種類の磁性粒子、両性イオン表面特性をもつ対照のポリスチレン磁性ビーズ(C)および前述のBis-Trisから誘導体化したビーズ(BTビーズ)を使用した。
【0098】
5種類の処理のうちの1処理を各組に行う。各処理で使用するポリBis-Trisは実施例1に記述の方法で作製した。処理は以下の通りであった。
A)対照:1mlのビーズ(1mg/ml)をPB/100(pH4.0)で処理。
B)PAA:PB/100(pH4.0)に溶解した0.1%(w/w)ポリアクリル酸(PAA)(分子量240,000、供給元:アルドリッチ(Aldrich))で処理。
C)PT:PB/100(pH4.0)中で1mlのポリBis-Tris(PT)で処理(1mg/ml)。
D)PT/PAA:(C)に記述のようにポリBis-Tris(PT)で処理後、PB/100で洗浄し、(B)に記述のようにPAA処理。
E)PAA/PT:(B)に記述のようにPAA処理を行った後、PB/100で洗浄し、(C)に記述のようにポリBis-Trisで処理。
【0099】
処置A、B、C、DおよびEを行った、対照ビーズまたはBT誘導化ビーズのそれぞれのために、4つの複製サンプルを準備した。
【0100】
(実施例7)
DNAの結合および溶出
PB/100バッファで2回洗浄後、実施例6で作製した2種類のビーズ1mgでDNAの結合および溶出を行った。
【0101】
開始量1mgのビーズを、1mlの50μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(シグマ(Sigma)D-1501 lot 11K7025)(蒸留水に溶解)と接触させてDNAの結合および放出を行った。ビーズを5分間インキュベート後、PB/100(pH5)で2回洗浄し、200μlの溶出バッファで溶出した。DNA収量を分光法によって260/280nmの吸光度(OD)比率から測定した。
【0102】
対照ビーズの平均収量は、A)対照3.74+/-0.15se μg/mg、B)コア-PAA 2.62+/-0.35se μg/mg、C)コア-PT 7.95+/-0.38se μg/mg、D)コア-PT-PAA 2.63+/-0.17se μg/mg、E)コア-PAA-PT 11.57+/-0.36se μg/mg。
【0103】
Bis-Tris結合ビーズ(BT)の平均収量は、A)BT-対照3.24+/-0.16sse μg/mg、B)BT-PAA 3.40+/-0.19se μg/mg、C)BT-PT 4.51+/-0.16se μg/mg、D)BT-PT-PAA 2.89+/-0.21se μg/mg、E)BT-PAA-PT 10.38+/-0.52se μg/mg。
【0104】
これらの結果を図4に示す。
【0105】
ポリBis-Trisの表面層(すなわち、第1のpHで正に荷電する層)はDNAの結合に必要だが、PAAのアンダーコートが結合能力を高め、溶出において回収されるDNAの比率を上げることがわかる。
【0106】
(実施例8)
色素の結合および溶出
本実施例では、本発明の医薬品などの小分子を担体に結合かつ担体から溶出することが実現可能であることを示しているために、色素分子を使用する。2種類の色素、コンゴーレッド(Congo Red)(低pHで陰イオン性)およびニュートラルレッド(Neutral Red)(低pHで陽イオン性)を使用する。
【0107】
1mMコンゴーレッドまたは1mMニュートラルレッドの水溶液(1ml体積)を、実施例6に記述した各ビーズ1mgに添加した。希釈した酢酸カリウム/塩化カリウム緩衝液(10/7mM)中で1時間結合させ(pH5)、ビーズを洗浄した。
【0108】
10mM Tris HClを含む200μlの溶出バッファで色素の溶出を行った。陽イオン性ニュートラルレッドに関してのみ、低いpH(pH1〜2)で2度目の溶出および最終の溶出を行った。
【0109】
得られた溶出液をビーズとの接触からはがした。溶出液を10mM HClで1:1に希釈して低pHに調整した(ニュートラルレッド)。または、10mM NaOHで1:1に希釈して高pHに調整した(コンゴーレッド)。525nm(ニュートラルレッド)および495nm(コンゴーレッド)での分光測光により各色素の濃度を測定した(0.1mMスタンダード)。
【0110】
対照ビーズおよびポリBis-Tris結合ビーズに関して、高pH(コンゴーレッド)および低pH(ニュートラルレッド)での単一溶出の平均収量を以下に示す。
【0111】
対照ビーズに関する陰イオン性コンゴーレッドの平均収量は、A)対照75.3+/-1.1nM/mg、B)コア-PAA 3.0+/-0.3se nM/mg、C)コア-PT 71.7+/-4.9se nM/mg、D)コア-PT-PAA 79.3+/-1.2nM/mg、E)コア-PAA-PT 72.6+/-1.1se nM/mg。
【0112】
Bis-Tris結合ビーズ(BT)に関する陰イオン性コンゴーレッドの平均収量は、A)BT対照82.2+/-4.7se nM/mg、B)BT-PAA 13.4+/-0.1se nM/mg、C)BT-PT 77.0+/-2.8se nM/mg、D)Bコア-PT-PAA 32.4+/-1.0se nM/mg、E)BT-PAA-PT 68.4+/-1.1se nM/mg。
【0113】
対照ビーズに関する陽イオン性ニュートラルレッドの低pHでの溶出後の収量は、A)コア11.7+/-0.3se nM/mg、B)コア-PAA 13.4+/-0.1se nM/mg、C)コア-PT 4.2+/-0.1se nM/mg、D)コア-PT-PAA 13.3+/-0.4se nM/mg、E)コア-PAA-PT 6.9+/-0.1se nM/mg。
【0114】
Bis-Tris結合ビーズ(BT)に関する陽イオン性ニュートラルレッドの低pHでの溶出後の平均収量は、A)BT対照1.5+/-0.2se nM/mg、B)BT-PAA 12.9+/-0.9se nM/mg、C)BT-PT 1.4+/-0.2se nM/mg、D)BT-PT-PAA 13.8+/-0.1se nM/mg、E)BT-PAA-PT 6.8+/-0.9se nM/mg。
【0115】
Bis-Tris結合ビーズに関するコンゴーレッドの結果を図5に示す。多層ビーズの陽イオン表面を含めて、陽イオン表面へ結合することによって良い収量が得られることがわかる。
【0116】
これらの結果は、粒子の合成後、生物活性小分子類似物を中性pHで結合させ、結合分子の主極性に応じて、高pHまたは低pHのどちらかで溶出できることを示している。さらにまた、異なる種類の層およびポリマーの結合順序が、類似物質の結合量および溶出量を制御する。
【0117】
(実施例9)
ポリBis-Trisおよびポリアクリル酸の多層をもつSpherotechビーズの形成
DNAの結合および溶出を行う前に、5種類の処理のうちの1処理をSpherotechビーズ(アミン表面をもつ大きな磁性ポリスチレンビーズ)に行う。本実施例で使用するポリBis-Trisを、実施例2に記述した方法で作製した。処理は以下の通りであった。
A)対照:沈降バッファ(1/100強度)(pH5.0)で処理。
B)PAA:PAA(0.1%w/wポリアクリル酸(分子量240kシグマ(Sigma)、PB/100(pH5.0)に溶解)で処理。
C)PT:ポリBis-Tris(PT)(1mg/ml使用、PB/100(pH5.0)に溶解)で処理。
D)PAA/PT:(B)に記述のように0.1%w/wPAAで処理後、PB/100(pH5.0)で洗浄し、(C)に記述のようにポリBis-Trisで処理。
E)PAA/PT/PAA/PT:PAA/PTを作製するために(D)に記述のように処理後、PB/100(pH5.0)で洗浄し、(B)に記述のようにPAA処理を行ってPB/100(pH5.0)で洗浄し、最後に(C)に記述のようにポリBis-Trisで処理して二重層サイクルを形成する。
【0118】
(実施例10)
DNAの結合と溶出
開始量1mgの前述のビーズを、1mlの50μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(シグマ(Sigma)D-1501 lot 11K7025)(PB/100(pH5.0)に溶解)に接触させてDNAの結合および放出を行った。ビーズを5分間インキュベート後、PB/100(pH5)で2回洗浄し、200μlの溶出バッファで溶出した。DNA収量を分光法によって260/280nmの吸光度(OD)比率から測定した。
【0119】
DNA平均溶出量は、A)コアビーズ0.52+/-0.06se μg/mg、B)コア-PAA 0.57+/-0.20se μg/mg、C)コア-PT 2.39+/-0.04se μg/mg、D)コア-PAA-PT 3.84+/-0.10se μg/mg、E)コア-PAA-PT-PAA-PT 6.47+/-0.26se μg/mg。seは標準誤差を示す。
【0120】
これらの収量を図6に示す。PT処理前にPAAで前処理を行うことは(D)、PT処理のみの場合(C)と比較してDNA結合の相乗的な増大をもたらすことがわかる。さらにまた、PAAおよびポリBis-Trisの層が追加された場合、DNA収量は一層増大する。
【0121】
(実施例11)
色素の結合と溶出
実施例9で作製したビーズをそれぞれ、1mlの0.1mMコンゴーレッドまたはニュートラルレッド(いずれもPB/100(pH4.0)に溶解)と1時間接触させ、PB/100(pH4.0)で洗浄した。
【0122】
200μlの溶出バッファで色素を放出させた。ニュートラルレッドに関しては溶出液を低pHに調節した。また、コンゴーレッドに関しては溶出液を高pHに調節した。ニュートラルレッドに関しては525nm、コンゴーレッドに関しては495nmでの分光測光から色素放出量を測定した。
【0123】
pH8.5で放出されたコンゴーレッド色素(通常、酸結合条件化では陰イオン)の収量は、以下の通りであった。
【0124】
A)コアビーズ3.6+/-0.1se nM/mg、B)コア-PAA 1.2+/-0.0se nM/mg、C)コア-PT 17.5+/-0.3se nM/mg、D)コア-PAA-PT 20.7+/-0.7se nM/mg、E)コア-PAA-PT-PAA-PT 42.7+/-1.6se nM/mg。ここではseは標準誤差を示す。これらの結果を図7に示す。
【0125】
pH8.5で放出されたニュートラルレッド(通常、結合時は陽イオン)の平均収量は、以下の通りであった。
【0126】
A)コアビーズ1.5+/-0.0se nM/mg、B)コア-PAA 2.6+/-0.1se nM/mg、C)コア-PT 1.1+/-0.0se nM/mg、D)コア-PAA-PT 1.5+/-0.1se nM/mg、E)コア-PAA-PT-PAA-PT 9.9+/-0.7se nM/mg。ここではseは標準誤差を示す。
【0127】
低pH条件下(pH1〜2)でのニュートラルレッドの溶出で、以下の放出量が最終的に得られた。A)コアビーズ1.4+/-0.0se nM/mg、B)コア-PAA 3.6+/-0.1se nM/mg、C)コア-PT 1.1+/-0.1se nM/mg、D)コア-PAA-PT 2.0+/-0.1se nM/mg、E)コア-PAA-PT-PAA-PT 13.8+/-0.2se nM/mg。ここではseは標準誤差を示す。これらの結果を図8に示す。
【0128】
本実施例の色素結合の結果は、粒子の合成後、生物活性小分子類似物を中性pHで結合させ、結合分子の主極性に応じて、高pHまたは低pHのどちらかで溶出できることを示している。さらにまた、粒子上でポリイオンの層を交互に重ねることは、類似物質の結合および溶出を増大させる。
【0129】
(実施例12)
ポリBis-Trisを有するDNAの多層
5種類の処理のうちの1処理を、Bis-Tris誘導体化ビーズに行った。本実施例で使用のポリBis-Trisを実施例1の方法で作製した。処理は以下の通りであった。
A)対照:沈降バッファで処理。
B)DNA:DNAで処理。DNAはシグマ(Sigma)D-1501、Lot 11K7025である。50μl/ml DNA(100倍希釈の沈降バッファ(pH4.0)に溶解)を使用して10分間処理。
C)DNA/PT:(B)に記述のようにDNAで処理後、25mg/mlポリBis-Tris(PB/100(pH4.0)に溶解)で処理。
D)DNA/PT/DNA:(C)に記述のようにDNAおよびポリBis-Trisで処理後、(B)に記述のようにDNAで2度目の処理。
E)DNA/PT/DNA/PT:(D)に記述のように処理後、25mg/mlポリBis-Tris(PB/100(pH4.0)に溶解)で2度目の処理。
【0130】
各処理に関して4つずつ同じ実験を行った。
【0131】
(実施例13)
DNAの結合と溶出
実施例12で作製した各処理グループを、1mlの50μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(100倍希釈の沈降バッファ(pH4.0)に溶解)中でインキュベーションして、すべての処理グループに最終的なDNA処理を行った。
【0132】
2回洗浄後、200μlの溶出バッファを使用して溶出を行った。260/280nmでの吸光度からDNA収量を測定した。
【0133】
単一溶出のDNA濃度は、
A)17.41+/-0.28se μg/ml 、B)18.35+/-0.44se μg/ml、C)28.53+/-0.61se μg/ml、D)44.2+/-1.31se μg/ml、E)54.46+/-1.15se μg/ml。
【0134】
これらの結果を図9に示す。層の数が増えるにつれDNA収量が増大し、以前の実施例よりも大きいことがわかる。このことは、DNA(望ましい物質)が多層に含まれる事実から部分的には説明できる。
【0135】
実施例Cおよび実施例Dでは、DNA処理後の層数が等しいにもかかわらず、DNA収量は実施例Dの方が多いことが観察されるだろう。このことは十分なDNA結合能力(1回の曝露後に低下しない)によるものとみられる。
【0136】
(実施例14)
色素の結合と溶出
実施例12で作製した各種ビーズを約1mgずつ、1mlの0.1mMコンゴーレッド(CR)またはニュートラルレッド(NR)(どちらもPB/100(pH4.0)に溶解)と接触させた。ビーズをこれらの色素のどちらかと共に1時間インキュベ-ションし、PB/100(pH4.0)で洗浄した。
【0137】
10mM Tris HClを含む溶出バッファ200μlで色素を放出させた。コンゴーレッドを含む溶出液を高pHに、ニュートラルレッドを含む溶出液を低pHに調整した。495nm(コンゴーレッド)および525nm(ニュートラルレッド)での分光測光から色素放出量を測定した。
【0138】
pH8.5で放出されたコンゴーレッド色素(通常、結合時には陰イオン)の収量は、以下の通りであった。
A)BT対照90.4+/-1.4se nM/mg、B)BT-DNA 56.2+/-1.4se nM/mg、C)BT-DNA-PT 70.1+/-0.8se nM/mg、D)BT-DNA-PT-DNA 35.7+/-3.2se nM/mg、E)BT-DNA-PT1-DNA-PT 53.3+/-2.6se nM/mg。結果を図10に示す。
【0139】
pH8.5で放出されたニュートラルレッド色素(通常、結合時には陽イオン)の収量は、以下の通りであった。
(A)BT対照1.1+/-0.1se nM/mg、(B)BT-DNA 3.9+/-0.1se nM/mg、(C)BT-DNA-PT 1.1+/-0.1se nM/mg、(D)BT-DNA-PT-DNA 2.5+/-0.2se nM/mg、(E)BT-DNA-PT-DNA-PT 1.1+/-0.0se nM/mg。
【0140】
低pH(pH1〜2)で引き続き2度目のNR溶出を行ったときの色素収量は以下の通りであった。
(A)BT対照1.2+/-0.1se nM/mg、(B)BT-DNA 9.3+/-0.3se nM/mg、(C)BT-DNA-PT 1.4+/-0.3se nM/mg、(D)BT-DNA-PT-DNA 1.0+/-0.1se nM/mg、(E)BT-DNA-PT-DNA-PT 3.3+/-0.5se nM/mg。これらの結果を図11に示す。
【0141】
これらの結果は、PTおよびDNAからなる粒子の合成後、生物活性小分子類似物を中性pHで結合させ、結合分子の主極性に応じて高pH(CR)または低pH(NR)のどちらかで溶出させることができることを示している。
【0142】
これらの結果はまた、ポリアニオンとしてのDNAが、正に荷電した生物活性分子(本実施例ではNR)を運ぶ結合基質として作用できることを示す。
【0143】
実施例15〜33で使用される略語
PT=ポリBis-Tris
PA=ポリアクリル酸
PAM=ポリアリルアミン
DNA=デオキシリボ核酸
PL=GFPプラスミド[pCS2*mt-SGP]
【0144】
実施例15〜21の層状ポリBis-Tris結合ビーズの形成
(A)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(B)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。200μlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,000)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(C)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。200μlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,000)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。200μlの1mg/mlポリBis-Trisで層形成させ、5分間室温でインキュベート。ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
【0145】
各実験に関して、前述のように処理したビーズを4つずつ準備した。前述の(A)および(C)で処理したビーズを、以下の種を結合かつ溶出するために使用した。
【0146】
(実施例15)
葉酸の結合および溶出
葉酸は陰イオン性で、ビタミンBcとして知られている。葉酸は、医学、保健医療、農業、畜産業および食品産業で使用されるビタミン群の代表的なものである。1mgずつの各種類の処理済みビーズを、1mlの1mg/ml葉酸(PB1/100(pH4.0)に溶解)に接触させて、葉酸(FA)の結合と放出を行った。ビーズを5分間インキュベートし、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄し、200μlの溶出バッファで溶出した。275nmでの吸光度から葉酸の標準曲線を作成して葉酸の収量を計算した。
【0147】
葉酸の平均溶出量は下記の通りであった。
(A)Bis-Tris:3.178μg/mg+/-0.276、
(B)Bis-Tris/PA:8.748μg/mg+/-5.32、
(C)Bis-Tris/PA/PT:4.191μg/mg+/-2.10、
(D)Bis-Tris/FA:189.756μg/mg+/-22.40、
(E)Bis-Tris/PA/PT/FA:1306.816μg/mg+/-94.93。
【0148】
これらの結果は、非常に多くの量の葉酸がBis-Tris結合ビーズに結合し、溶出されることを示す。この収量は、結合磁性ビーズ上にポリアクリル酸およびポリBis-Trisの層を重ねることによって増大する。
【0149】
(実施例16)
サリチル酸の結合および溶出
サリチル酸は陰イオン性で、アスピリンの前駆物質である。サリチル酸は、製薬産業および保健医療産業において重要な鎮痛剤および他の薬物グループの1つである。
【0150】
1mgずつの各種類の処理済みビーズを、1mlの2mg/ml葉酸(PB1/100(pH4.0)に溶解)に接触させてサリチル酸(SA)の結合と放出を行った。ビーズを5分間インキュベートし、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄し、200μlの溶出バッファで溶出した。275nmでの吸光度からサリチル酸の標準曲線を作成してサリチル酸の収量を計算した。
【0151】
サリチル酸の平均溶出量は下記の通りであった。
(A)Bis-Tris:0.03μg/mg+/-0.001、
(B)Bis-Tris/PA:0.03μg/mg+/-0.002、
(C)Bis-Tris/PA/PT:0.042μg/mg+/-0.001、
(D)Bis-Tris/SA:3.37μg/mg+/-0.21、
(E)Bis-Tris/PA/PT/SA:8.90μg/mg+/-1.06。
【0152】
これらの結果は、非常に多くの量のサリチル酸がBis-Tris結合ビーズに結合し、溶出されることを示す。この収量は、結合磁性ビーズ上にポリアクリル酸およびポリBis-Trisの層を重ねることによって増大する。
【0153】
(実施例17)
アンピシリンの結合と溶出
アンピシリンは両性イオンで、広域抗生物質である。ペニシリンの半合成誘導体として、製薬的および薬理的に活性をもつ薬剤の代表的なものである。
【0154】
1mgずつの各種類の処理済みビーズを、1mlの10mg/ml葉酸(PB1/100(pH4.0)に溶解)に接触させて、アンピシリン(Amp)の結合と放出を行った。ビーズを5分間インキュベートし、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄し、200μlの溶出バッファで溶出した。255nmでの吸光度からサリチル酸の標準曲線を作成してアンピシリンの収量を計算した。
【0155】
アンピシリンの平均溶出量は下記の通りであった。
(A)Bis-Tris:34.40μg/mg+/-1.09、
(B)Bis-Tris/PA:39.08μg/mg+/-1.48、
(C)Bis-Tris/PA/PT:56.27μg/mg+/-1.02、
(D)Bis-Tris/Amp:85.96μg/mg+/-2.34、
(E)Bis-Tris/PA/PT/Amp:128.15μg/mg+/-0.47。
【0156】
これらの結果は、非常に多くの量のアンピシリンがBis-Tris結合ビーズに結合し、溶出されることを示す。この収量は、結合磁性ビーズ上にポリアクリル酸およびポリBis-Trisの層を重ねることによって増大する。
【0157】
(実施例18)
アブシジン酸の結合と溶出
アブシジン酸は有機酸の植物ホルモンであり、落葉のような器官離脱を促進する。植物ホルモンとして、植物用、園芸用および農業用活性剤のグループの代表的なものである。
【0158】
1mgずつの各種類の処理済みビーズを、200μlのPB1/100(pH4.0)および50μlの10mg/mlアブシジン酸(100mM NaHCO3に溶解)に接触させて、アブシジン酸(AA)の結合と放出を行った。ビーズを5分間インキュベートし、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄し、200μlの溶出バッファで溶出した。252nmでの吸光度からアブシジン酸の標準曲線を作成してアブシジン酸の収量を計算した。
【0159】
アブシジン酸の平均溶出量は下記の通りであった。
(A)Bis-Tris:1.038mg/mg+/-0.034、
(B)Bis-Tris/PA:1.403mg/mg+/-0.007、
(C)Bis-Tris/PA/PT:1.923mg/mg+/-0.019、
(D)Bis-Tris/AA:4.327mg/mg+/-923.077、
(E)Bis-Tris/PA/PT/AA:12.60mg/mg+/-1.019。
【0160】
これらの結果は、非常に多くの量のアブシジン酸がBis-Tris結合ビーズに結合し、溶出されることを示す。この収量は、結合磁性ビーズ上にポリアクリル酸およびポリBis-Trisの層を重ねることによって増大する。
【0161】
(実施例19)
塩化セチルピリジニウムの結合と溶出
塩化セチルピリジニウムは、製薬において消毒剤、殺菌剤、局所性抗感染薬および防腐剤として使用される陽イオン性有機界面活性剤である。したがって、家庭用洗剤および工業用洗剤を含めて、医学、獣医学、製薬および各種産業で使用される抗菌剤および殺生剤の代表的なものである。
【0162】
1mgずつの各種類の処理済みビーズを、1mlの10mg/ml塩化セチルピリジニウム(PB1/100(pH4.0)に溶解)に接触させて、塩化セチルピリジニウム(CC)の結合と放出を行った。ビーズを5分間インキュベートし、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄し、200μlの10mM NaOHで溶出した。255nmでの吸光度から塩化セチルピリジニウムの標準曲線を作成して塩化セチルピリジニウムの収量を計算した。
【0163】
塩化セチルピリジニウムの平均溶出量は下記の通りであった。
(A)Bis-Tris:1.59μg/mg+/-0.03、
(B)Bis-Tris/PA:2.84μg/mg+/-0.17、
(C)Bis-Tris/PA/PT:4.90μg/mg+/-0.11、
(D)Bis-Tris/CC:2.78μg/mg+/-0.27、
(E)Bis-Tris/PA/PT/CC:8.83μg/mg+/-0.46。
【0164】
これらの結果は、非常に多くの量の正に荷電した分子である塩化セチルピリジニウム(ゼータ電位+39.6mV+/-1.3、pH4.0)がBis-Tris結合ビーズに結合し、溶出されることを示す。この収量は、結合磁性ビーズ上にポリアクリル酸およびポリBis-Trisの層を重ねることによって増大する。
【0165】
(実施例20)
pH4.0およびpH6.5でのアルブミン(ウシ)の結合と溶出
アルブミンは球状タンパク質で、血中の主要な血清タンパク質である。生化学のタンパク質類の代表的なもので、農業、医学、生物医学、生命工学、製薬、防御、化粧品および食品産業において薬剤成分、化粧品製剤、食料品、飼料および栄養補助食品として重要なものである。
【0166】
1mgずつの各種類の処理済みビーズを、1mlの30mg/mlアルブミン(PB1/100(pH4.0)に溶解)に接触させて、アルブミン(ウシ)(Alb)の結合と放出を行った。ビーズを5分間インキュベートし、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄後、200μlの溶出バッファで溶出した。280nmでの吸光度からアルブミンの標準曲線を作成してアルブミンの収量を計算した。この方法をまた、PB1/100(pH6.5)を使用して行った。
【0167】
PB1/100(pH4.0)中で結合したアルブミンの平均溶出量は下記の通りであった。
(B)Bis-Tris/PA:54.6μg/mg+/-1.9、
(C)Bis-Tris/PA/PT:109.1μg/mg+/-7.0、
(D)Bis-Tris/Alb:158.0μg/mg+/-24.5、
(E)Bis-Tris/PA/PT/Alb:1004.5μg/mg+/-28.2。
【0168】
これらの結果は、非常に多くの量のアルブミンがpH4.0で結合し、Bis-Tris結合ビーズから溶出されることを示す。この収量は、結合磁性ビーズ上にポリアクリル酸およびポリBis-Trisの層を重ねることによって増大する。
【0169】
PB1/100(pH6.5)中で結合したアルブミンの平均溶出量は下記の通りであった。
(B)Bis-Tris/PA:60.2μg/mg+/-2.8、
(C)Bis-Tris/PA/PT:176.8μg/mg+/-3.2、
(D)Bis-Tris/Alb:41.4μg/mg+/-4.0、
(E)Bis-Tris/PA/PT/Alb:423.2μg/mg+/-1.1。
【0170】
これらの結果は、非常に多くの量のアルブミンがpH6.5で結合し、Bis-Tris結合ビーズから溶出されることを示す。この収量は、結合磁性ビーズ上にポリアクリル酸およびポリBis-Trisの層を重ねることによって増大する。
【0171】
アルブミンタンパク質の多価性により、ポリアクリル酸およびポリBis-Tris層状ビーズはpH4.0およびpH6.5でアルブミンを結合かつ溶出することができる。アルブミンのゼータ電位は、PB1/100(pH4.0)中で3.3MV+/-0.9、PB1/100(pH6.5)中で0.9MV+/-0.9である。
【0172】
(実施例21)
ゲノムDNAおよびサリチル酸の二重結合および放出
複合放出系として、本実施例は、サリチル酸(鎮痛剤または薬剤前駆体として)の放出とDNA(治療薬、トランスフェクション剤または診断用薬として)の放出を組み合わせる。この複合放出系は、医学、生物医学、生命工学、製薬、農業、園芸、漁業および畜産業において実用性をもつ。
【0173】
本実施例は、2種類の異なる物質をより高pHで連続的に多層状ビーズから溶出できることを示す。多層カルボキシル化磁性ビーズを使用して、仔ウシ胸腺ゲノムDNAおよびサリチル酸の結合および放出を行った。
【0174】
ゲノムDNAおよびサリチル酸の二重放出に用いる多層状ビーズの形成
(A)1mgのカルボキシル化磁性ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(B)1mgのカルボキシル化磁性ビーズを、200μlの20mg/ml塩酸ポリアリルアミン(PB1/100(pH4.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベーション後、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(C)1mgのカルボキシル化磁性ビーズを、200μlの20mg/ml塩酸ポリアリルアミン(分子量15,000)(PB1/100(pH4.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベーション後、50μg/mlの仔ウシ胸腺ゲノムDNA1mlで層形成させ、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(D)1mgのカルボキシル化磁性ビーズを、200μlの20mg/ml塩酸ポリアリルアミン(PB1/100(pH4.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベーション後、50μg/mlの仔ウシ胸腺ゲノムDNA1mlおよび200μlの1mg/mlポリBis-Tris(PB1/100(pH4.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベーション後、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(E)1mgのカルボキシル化磁性ビーズを、200μlの20mg/ml塩酸ポリアリルアミン(PB1/100(pH4.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベーション後、50μg/mlの仔ウシ胸腺ゲノムDNA1mlおよび200μlの1mg/mlポリBis-Tris(PB1/100(pH4.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベーション後、1mlの2mg/mlサリチル酸(PB1/100(pH4.0)に溶解)と5分間インキュベーションし、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
【0175】
処理済ビーズ(A-E)を1mlのPB1/100(pH4.0)、200μlの溶出バッファそして200μlの10mM NaOHで洗浄した。300nmでの吸光度からサリチル酸の標準曲線を作成してサリチル酸の収量を計算した。また、260nmでの吸光度からゲノムDNAの標準曲線を作成してゲノムDNAの収量を計算した。
【0176】
最初の溶出からのサリチル酸の平均溶出量は下記の通りであった。
(A)Bis-Tris/PAM:0.05μg/mg+/-0.00、
(B)Bis-Tris/PAM/DNA:0.05μg/mg+/-0.00、
(C)Bis-Tris/PAM/PT:0.06μg/mg+/-0.01、
(D)Bis-Tris/PAM/PT/SA:1.09μg/mg+/-0.06。
【0177】
これらの結果は、非常に多くの量のサリチル酸が多層状ビーズに結合し、溶出されることを示す。最初の溶出からのDNA収量はいずれも0.1μg/mg以下でアガロースゲル電気泳動によって確認した。
【0178】
2度目の溶出からのDNAの平均収量は、以下の通りであった。
(A)Bis-Tris/PAM:0.27μg/mg+/-0.04、
(B)Bis-Tris/PAM/DNA:0.90μg/mg+/-0.91、
(C)Bis-Tris/PAM/PT:8.65μg/mg+/-1.23、
(D)Bis-Tris/PAM/PT/SA:7.45μg/mg+/-0.70。
【0179】
溶出中のDNAの存在を決定するためにアガロースゲル電気泳動を使用した。
【0180】
(実施例22)
ニュートラルレッドの結合と溶出
ニュートラルレッドは低pHで陽イオン性を示す両性イオン色素で、薬剤および殺虫剤などの物質および活性剤の大部分を占める陽イオン分子グループの代表例である。本実施例では、多層状ビーズからの陽イオン分子の結合と溶出を説明するためにニュートラルレッドを使用した。
【0181】
ニュートラルレッドの結合および溶出に使用する多層状ビーズの形成
(A)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(B)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。200μlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,000)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(C)1mgのBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。200μlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,000)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。その後、200μlの1mg/mlポリトリスで層形成させ、5分間室温でインキュベート。ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(D)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。200μlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,000)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。その後、200μlの1mg/mlポリトリスで層形成させ、5分間室温でインキュベート。最後に、直前の層として200μlの0.1%ポリアクリル酸で層形成を行い、ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
【0182】
0.1mMニュートラルレッド水溶液を1mgずつの各種類のビーズ(前述のA〜Dで記述したビーズ)に添加した(全量1ml)。PB1/100(pH4.0)中で1時間結合させた後、ビーズをPB1/100(pH4.0)で洗浄した。
【0183】
ニュートラルレッドを200μlの溶出バッファ中で溶出し、その後200μlの1%w/wHClで溶出した。これらの溶出液を1%HClで低pHに調整した。492nmでの分光測光によって濃度を決定した(0.1mMスタンダード)。
【0184】
陽イオン性ニュートラルレッドの平均収量は、以下の通りであった。
(A)Bis-Tris/NR:9.56nM/mg+/-0.91、
(B)Bis-Tris/PA/NR:10.23nM/mg+/-0.27、
(C)Bis-Tris/PA/PT/NR:10.50nM/mg+/-1.42、
(D)Bis-Tris/ PA/PT/PA/NR:37.61μg/mg+/-10.73。
【0185】
これらの結果は、Bis-Tris-結合ビーズへのPA/PT/PAの多層形成が、陽イオン分子の結合量および溶出量を非常に増大させることを示している。
【0186】
(実施例23)
カルボキシメチルセルロースの結合および溶出
カルボキシメチルセルロース(本実施例ではナトリウム塩として)は、多くの食材、塗料、接着剤、インクおよび製剤において増粘剤および粘着促進剤として使用される陰イオン性ポリイオンであり、食品産業、化学工業、農業および製薬産業においてみられる天然ポリマー、半合成ポリマーおよび合成ポリマーに特有のものである。本実施例では、ポリイオンの結合および溶出を示すために、表面電荷測定としてゼータ電位を使用し、結合および溶出を間接的に測定した。
【0187】
この実験は、カルボキシメチルセルロース(CMC)の結合および放出時のBis-Tris-結合ビーズ表面の変化を示す。1mgずつの各種類の処理済ビーズ(A〜C)を接触させることによって、カルボキシメチルセルロース(CMC)の結合と放出を行った。
(A)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(B)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。200μlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,000)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。
(C)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄。200μlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,000)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。その後、200μlの1mg/mlポリBis-Trisで層形成させ、5分間室温でインキュベート。1mlのPB1/100(pH4.0)でビーズを洗浄。
【0188】
各種類のビーズ(A〜C)に、200μlの0.25%w/wカルボキシメチルセルロース(PB1/100(pH4.0)に溶解)を添加して5分間インキュベーションし、1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄してゼータ電位を測定した。処理済ビーズを200μlの溶出バッファで洗浄し、ゼータ電位を測定した。Bis-Tris-結合ビーズのゼータ電位は+23.8mV+/-0.2(正)
【0189】
以下の結果は、カルボキシメチルセルロースで処理した処理済ビーズのゼータ電位を示す。
(A)Bis-Tris/CMC:-23.4mV+/-0.8、
(B)Bis-Tris/PA/CMC:-21.2mV+/-0.7、
(C)Bis-Tris/PA/PT/CMC:-20.0mV+/-0.9。
【0190】
これらの結果は、対照ビーズが正に荷電している(+23mV)のに対して、ゼータ電位は正から負へ移行していることが示すように(c.20mV)、全体でほぼ等量のポリイオンが、A、BおよびCに結合することを示している。
【0191】
カルボキシメチルセルロース溶出後の処理済ビーズのゼータ電位は、以下の通りであった。
(B)Bis-Tris/CMC:-8.2mV+/-1.4、
(C)Bis-Tris/PA/CMC:-18.2mV+/-0.7、
(D)Bis-Tris/PA/PT/CMC:-6.6mV+/-0.5。
【0192】
これらの結果は、溶出後のPA/PT/CMCビーズがより陽のゼータ電位をもち、(A)[変化+15.2mV]および(b)[変化+3.0mV]と比較して最大の変化(C)[-20.0mVから+6.6mVの変化=+26.6mV]を示し、それ故により多くのカルボキメチルセルロースがPA/PT/CMCから溶出されることを示す。
【0193】
(実施例24)
DNAとポリBis-Trisまたは塩酸ポリアリルアミンの多層形成
本実施例は、ポリBis-TrisおよびDNAをもつ多層状磁性粒子、またはポリアリルアミンおよびDNAをもつ多層状磁性粒子上でのDNAの結合と放出を示す。ポリBis-Trisおよびポリアリルアミンは2種類のポリカチオン系ポリマーである。ポリアリルアミンは様々な化学的利用、生物学的利用および工業において使途をもつ接着剤としてあらゆる場面で使用される。
【0194】
ポリBis-Trisの多層および仔ウシ胸腺ゲノムDNAに、1mgずつの各種類の処理済ビーズを接触させることによって、DNAの結合と放出を行った。本実験の処理は以下の通りであった。
(A)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH5.0)で洗浄。
(B)1mgのBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH5.0)で洗浄。1mlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,00)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。その後、200μlの1mg/mlポリBis-Trisで層形成させ、5分間室温でインキュベート。ビーズを1mlのPB1/100(pH5.0)で洗浄。
(C)1mgのBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/100(pH5.0)で洗浄。1mlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,00)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。その後、200μlの1mg/mlポリBis-Trisで層形成させ、5分間室温でインキュベート。PB1/100(pH5.0)に溶解した50μg/mlの仔ウシ胸腺ゲノムDNA1mlを添加し5分間インキュベートし、ビーズを1mlのPB1/100(pH5.0)で洗浄。
(D)(C)のビーズ上にさらに200μlの1mg/mlポリBis-Trisで1層の外側層を形成させた後、PB1/100(pH5.0)に溶解した50μg/mlの仔ウシ胸腺ゲノムDNA1mlで層形成させ、5分間インキュベートし、1mlのPB1/100(pH5.0)で洗浄。
(E)(C)のビーズ上にさらに200μlの1mg/mlポリBis-Trisで2層の外側層を形成させた後、PB1/100(pH5.0)に溶解した50μg/mlの仔ウシ胸腺ゲノムDNA1mlで層形成させ、5分間インキュベートし、1mlのPB1/100(pH5.0)で洗浄。
(F)(C)のビーズ上にさらに200μlの1mg/mlポリBis-Trisで3層の外側層を形成させた後、1mlの50μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(PB1/100(pH5.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベートし、1mlのPB1/100(pH5.0)で洗浄。
【0195】
処理済磁性ビーズの第二のセットを、
ポリBis-Trisの層の代わりに、200μlの1mg/mlポリアクリルアミン塩酸(PB1/100(pH5.0)に溶解)を用いて、前述の処理(B〜F)のように層形成した(G〜K)。すべての処理サンプルを、200μlの溶出バッファおよび200μlの10mM NaOHに接触させた。溶出物をアガロースゲル電気泳動で分析した。
【0196】
各処理に対する最初の溶出でのDNAの平均濃度は、以下の通りであった。
(A)Bis-Tris:0.23μg/mg+/-0.03、
(B)Bis-Tris/PA/PT:0.45μg/mg+/-0.16、
(C)Bis-Tris/PA/PT/DNA:2.42μg/mg+/-0.68、
(D)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PT/DNA:7.44μg/mg+/-0.26、
(E)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PT/DNA:7.82μg/mg+/-0.123、
(F)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PT/DNA/PT/DNA:8.65μg/mg+/-0.945、
(G)Bis-Tris/PA/PAM:0.42μg/mg+/-0.03、
(H)Bis-Tris/PA/PAM/DNA:0.68μg/mg+/-0.02、
(I)Bis-Tris/PA/PAM/DNA/PAM/DNA:0.28μg/mg+/-0.13、
(J)Bis-Tris/PA/PAM/DNA/PAM/DNA:0.33μg/mg+/-0.111、
(K)Bis-Tris/PA/PAM/DNA/PAM/DNA/PAM/DNA:0.37μg/mg+/-0.151。
【0197】
これらの結果は、ポリ-Bis-TrisおよびDNAの層を増加させた処理では、溶出されるDNA濃度の増大が観察されることを示す。代わりにポリアリルアミンおよびDNAの層で処理したビーズは、溶出バッファに接触させた時に最小量のDNA溶出を示す。
【0198】
各処理に対する2度目の溶出でのDNAの平均濃度は以下の通りであった。
(A)Bis-Tris:0.76μg/mg+/-0.19、
(B)Bis-Tris/PA/PT:0.62μg/mg+/-0.04、
(C)Bis-Tris/PA/PT/DNA:0.92μg/mg+/-0.02、
(D)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PT/DNA:1.09μg/mg+/-0.05、
(E)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PT/DNA:0.91μg/mg+/-0.02、
(F)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PT/DNA/PT/DNA:0.98μg/mg+/-0.117、
(G)Bis-Tris/PA/PAM:0.85μg/mg+/-0.03、
(H)Bis-Tris/PA/PAM/DNA:2.54μg/mg+/-0.13、
(I)Bis-Tris/PA/PAM/DNA/PAM/DNA:3.57μg/mg+/-0.12、
(J)Bis-Tris/PA/PAM/DNA/PAM/DNA:4.96μg/mg+/-2.739、
(K)Bis-Tris/PA/PAM/DNA/PAM/DNA/PAM/DNA:13.60μg/mg+/-2.024。
【0199】
これらの結果は、ポリBis-TrisおよびDNAの層をもつ処理よりも、その代わりとして塩酸ポリアリルアミンおよびDNAの層をもつ処理のほうが、2度目の溶出、すなわち、より高いpHでDNAが溶出されることを示す。塩酸ポリアリルアミンおよびDNAの層を増やすことで、2度目の溶出でのDNA濃度が増大する。
【0200】
(実施例25)
ポリBis-Tris、DNAおよびポリエチレンイミン、DNAの多層形成の結合と溶出
本実施例は、DNAおよびポリエチレンイミンをもつ多層状カルボキシル化磁性粒子上でのDNAの結合と放出を示す。ポリエチレンイミンは多様な産業で接着剤として様々に使用される陽イオン性ポリマーである。
【0201】
1mgずつの各種類の処理済ビーズを、ポリエチレンイミン(分子量70k)および仔ウシ胸腺ゲノムDNAの多層に接触させることによってDNAの結合と放出を行った。本実験の処理は以下の通りであった。
(A)1mgのポリBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/5(pH5.0)で洗浄。
(B)1mgのBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/5(pH5.0)で洗浄。1mlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,00)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。その後、200μlの1mg/mlポリトリスで層形成させ、5分間室温でインキュベート。ビーズを1mlのPB1/5(pH5.0)で洗浄。
(C)1mgのBis-Tris結合ビーズを1mlのPB1/5(pH5.0)で洗浄。1mlの0.1%ポリアクリル酸(分子量240,00)で層形成させ、5分間室温でインキュベート。その後、200μlの1mg/mlポリトリスで層形成させ、5分間室温でインキュベート。1mlの50μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(PB1/100(pH5.0)に溶解)を添加し5分間インキュベートし、ビーズを1mlのPB1/5(pH5.0)で洗浄。
(D)(C)のビーズ上にさらに1mlの1mg/mlポリエチレンイミンで1層の外側層を形成させた後、1mlの50μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(PB1/5(pH5.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベートし、1mlのPB1/5(pH5.0)で洗浄。
(E)(C)のビーズ上にさらに1mlの1mg/mlポリエチレンイミンで2層の外側層を形成させた後、1mlの50μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(PB1/5(pH5.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベートし、1mlのPB1/5(pH5.0)で洗浄。
(F)(C)のビーズ上にさらに1mlの1mg/mlポリエチレンイミンで3層の外側層を形成させた後、1mlの50μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(PB1/5(pH5.0)に溶解)で層形成させ、5分間インキュベートし、1mlのPB1/5(pH5.0)で洗浄。
【0202】
すべての処理サンプルを、200μlの溶出バッファおよび200μlの10mM NaOHに接触させた。DNA濃度を260nmで測定し、溶出物をアガロースゲル電気泳動で分析した。
【0203】
各処理に対する最初の溶出でのDNAの平均濃度は、以下の通りであった。
(A)Bis-Tris:4.43μg/mg+/-1.39、
(B)Bis-Tris/PA/PT:5.69μg/mg+/-0.33、
(C)Bis-Tris/PA/PT/DNA:46.76μg/mg+/-0.38、
(D)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PEI/DNA:4.04μg/mg+/-0.51、
(E)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PEI/DNA/PT/DNA:6.88μg/mg+/-0.273、
(F)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PEI/DNA/PT/DNA/PEI/DNA:2.44μg/mg+/-0.036。
【0204】
各処理に対する2度目の溶出でのDNAの平均濃度は、以下の通りであった。
(A)Bis-Tris:5.69μg/mg+/-0.29、
(B)Bis-Tris/PA/PT:3.94μg/mg+/-0.39、
(C)Bis-Tris/PA/PT/DNA:11.18μg/mg+/-0.18、
(D)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PEI/DNA:61.86μg/mg+/-5.71、
(E)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PEI/DNA/PT/DNA:84.09μg/mg+/-4.108、
(F)Bis-Tris/PA/PT/DNA/PEI/DNA/PT/DNA/PEI/DNA:33.91μg/mg+/-5.922。
【0205】
このように、PA/PT/DNAをもつ(c)が、最初の溶出では47μg/mgと最も溶出量が多く、2度目の溶出では、PA/PT/DNA/PEI/DNA/PT/DNA層をもつ(E)が、それをしのいで、84μg/mgを放出した。
【0206】
(実施例26)
インシュリンの結合と溶出
インシュリンはポリペプチドで、脊椎動物で見られる炭水化物代謝を制御する内分泌腺ホルモンである。インシュリンは、生化学分野、生物医学分野、獣医学分野および製薬分野において重要な天然および合成ホルモン、生物活性ペプチドおよび生物ペプチド剤ならびに類似物の代表的なものである。
【0207】
1mgずつの各種類の処理済ビーズを、1mlの500μg/mlインシュリン(PB1/100(pH4.0)に溶解)に接触させることによって、インシュリン(IN)の結合と放出を行った。これらは以下の通りであった。
(A)1mgのBis-Tris結合時磁性ポリスチレンビーズを1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄。
(B)1mgのBis-Tris結合磁性ポリスチレンビーズを1mlのPB/100で洗浄し、0.1%ポリアクリル酸(PA、分子量240,000、w/w)で5分間処理。ビーズを1mlのPB1/100(pH4.0)で洗浄し、200μlの1mg/mlポリトリス(PT)で処理し、5分間室温でインキュベート。ビーズを1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄。
【0208】
実験用に、前述のビーズをそれぞれ8個ずつ準備し、4個ずつをインシュリンを結合するのに使用し、残りの4個ずつをバックグラウンド対照として使用した。インキュベーション後、ビーズ試料を磁石で引きよせ、上清を除去し1mlのPB/100バッファに再懸濁した。その後、試料を再懸濁し、200μlの溶出バッファ(EB)で溶出した。上清の除去後、200μlの水酸化ナトリウム(10mM)で2度目の溶出を行った。255nmでの吸光度を使用し、pH8での溶出バッファ中におけるインシュリン溶液の標準曲線からインシュリンの収量を計算した。その結果から、インシュリンを結合していないビーズで測定したバックグラウンドの測定値を差し引いた。
【0209】
インシュリンの最初の平均溶出量は下記の通りであった。
(A)Bis-Tris:3μg/mg+/-1、
(B)Bis-Tris/PA/PT:38μg/mg+/-3。
【0210】
インシュリンの2度目の溶出量は、
(A)Bis-Tris:16μg/mg+/-5μg/mg、
(B)Bis-Tris/PA/PT:62μg/mg+/-12。
【0211】
ビーズのみの場合と比較すると、ポリアクリル酸およびポリトリスポリマーの層を1枚ずつ重ねることによってはるかに多いインシュリンがこれらのビーズから溶出された。
【0212】
(実施例27)
カフェインの結合と溶出
カフェインは塩基性プリンで、中枢神経系(CNS)に対する興奮剤として働く生物活性剤である。カフェインは、医学、製薬産業、食品産業および飲料産業において重要な薬剤、薬物および生物活性剤の代表的なものである。
【0213】
4種類の処理済ビーズの各種1mgを、1mlの5mg/mlカフェイン2硫酸塩(PB1/100(pH4.0)に溶解)に接触させることによって、カフェイン(CAF)の結合と放出を行った。これらの結果は以下の通りであった。
A)1mgのBis-Tris結合磁性ポリエチレンビーズを1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄。
B)1mgのBis-Tris結合ビーズを1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄し、1mlの0.5%ポリアクリル酸(分子量240,000)で処理。磁石に接触させ、再懸濁し、0.75mlのPB/100(pH4.0)で1時間洗浄。
C)1mgのBis-Tris結合ビーズを1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄し、PB/100(pH4.0)に溶解した0.5%のポリアクリル酸(分子量240,000)1mlで1時間処理。磁石に接触させ、再懸濁し、0.75mlのPB/100(pH4.0)で1時間インキュベート。その後、1mlのPB/100(pH4.0)中に0.2mg/mlのポリBis-Trisで30分間処理、1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄し、1mlのPB/100(pH4.0)で再懸濁。
D)1mgのBis-Tris結合ビーズを1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄し、1mlの0.5%ポリアクリル酸(分子量240,000)(PB/100(pH4.0)に溶解)で1時間処理。磁石に接触させ、再懸濁し、0.75mlのPB/100(pH4.0)で1時間インキュベート。その後、1mlの0.2mg/mlポリBis-Tris(PB/100(pH4.0)に溶解)で30分間処理し、1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄。2度目の量のポリアクリル酸(0.5%w/w、(PB/100(pH4.0)に溶解)とインキュベート。最後に1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄し、1mlのPB/100(pH4.0)に再懸濁。
【0214】
前述のビーズを実験用にそれぞれ4個ずつ準備し、カフェインを結合するのに使用した。4時間インキュベーション後、ビーズ試料を磁石で引きよせ、上清を除去し1mlのPB/100バッファに2回再懸濁した。洗浄液を除去し、200μlの溶出バッファ(EB)で溶出した。上清の除去後、200μlの水酸化ナトリウム(10mM)で2度目の溶出を行った。255nmでの吸光度を使用し、蒸留中でのカフェイン溶液の標準曲線からカフェインの収量を計算した。
【0215】
カフェインの最初の平均溶出量は、下記の通りであった。
(A)Bis-Tris:7.7μg/mg+/-0.3se、
(B)Bis-Tris/PA:23.7μg/mg+/-0.7、
(C)Bis-Tris/PA/PT:8.6μg/mg+/-0.4、
(D)Bis-Tris/PA/PT/PA:15.2μg/mg+/-0.5μg/mg。
【0216】
本実施例では、最初の溶出におけるポリアクリル層状ビーズタイプB(Bis-Tris/PA)の溶出量は、多層状タイプD(Bis-Tris/PA/PT/PA)ビーズよりも多かった。しかしながら、2度目の平均溶出量は、下記の通りであった。
(A)Bis-Tris:5.3μg/mg+/-0.3、
(B)Bis-Tris/PA:12.4μg/mg+/-0.3、
(C)Bis-Tris/PA/PT:9.4μg/mg+/-0.2、
(D)Bis-Tris/PA/PT/PA:51.8μg/mg+/-9.6μg/mg。
【0217】
カフェインの総溶出量は、(A)13.0(0.6)、(B)36.1(0.4)、(C)18.0(0.5)および(D)67.0(10.0)μg/mgである。このようにポリアクリル酸ポリマーのみで処理されたビーズの場合と比較すると、ポリアクリル酸およびポリトリスポリマーの層を1枚ずつ重ねることによって、はるかに多いカフェインがこれらのビーズから溶出された。
【0218】
(実施例28)
マグネタイトの結合と放出
マグネタイトは常磁性無機酸化鉄で、生命工学、環境管理および化学工学を含む様々な産業において重要な天然微粒子、合成微粒子、分散物および微粉のグループの比較的無活性なものである。本実施例では、反対の電荷を帯びたポリマーをビーズに前もって吸着させて実験を行い、サイズおよび電荷の異なる粒子を区別するための物理的方法を用いる。一方は磁性をもち、除去することができるが、他方には磁性がなく、より大きいことから、これらを同定することができ、吸着させたポリマーの有る場合およびない場合のそれらの挙動を決定することができる。
【0219】
2種類のマグネタイトをPB1/100(pH4.0)中で2種類のポリスチレン(S7)に接触させることによって、コロイドマグネタイト(MAG)の結合と放出を行った。2種類のマグネタイトは以下の通りであった。
A)MAG:1mlのマグネタイトストック(PC170503)を1mlのPB/100(pH3.97)に再懸濁し、洗浄。その200μlを0.8mlのPB/100(pH4.0)中で希釈。さらに洗浄し、PB/100(pH4.0)で1mlにした。マルバーンゼータサイザー(Malvern Zetasizer)によってPB/100(pH4.0)中で測定したところ、最終的なサイズは129+/-38.7で、電荷は+38.1+/-mVである。
B)MAG/PA:1mlのマグネタイトストック(PC170503)を1mlのPB/100(pH3.97)で洗浄し、その200μlを0.8mlのPB/100(pH4.0)中で希釈。これを1mlの1%のポリアクリル酸(分子量240,000、PB/100(pH4.0)に溶解)に1時間再懸濁した。磁石で引き寄せ、1mlのPB/100(pH4.0)に再懸濁し、1時間インキュベート。最終的なサイズは336.8+/-25.4で、電荷は+21.8+/-1.0mV。
【0220】
2種類のポリスチレンビーズ(S7)は以下の通りであった。
C)PS:100μlのS7ストック(c.10%w/w)を0.9mlのPB/100(pH4.0)に添加。サイズは186.4+/-2.5nmで、電荷は+40.6+/-0.9mV。
D)PS/PT:100μlのS7ストック(c.10%w/w)を0.9mlのPB/100(pH4.0)に添加。13,000rpmで10分間遠心して100μlのPB/100に再懸濁し、0.9mlのポリBis-Tris(PB/100(pH4.0)に溶解、0.2%w/w)中でインキュベート。1mlのPB/100(pH4.0)で洗浄し、1mlのPB/100(pH4.0)に再懸濁。サイズは370+/-31nmで、電荷は+33.3+/-2.0mV。
【0221】
前述のビーズを実験用にそれぞれ3つずつ準備した。実験では、C型(PS)をマグネタイトA型(MAG)に等量(200μl)添加し、D型(PS/PT)をB型(MAG/PA)に添加した。この2実験の各々に対して3つずつ準備し、以下の方法のうちの1つに使用した。
I) AとCを組み合わた(PS-MAG)、または、BとDを組み合わせた(PSPT-MAGPA)1つ目の組を、サイズ解析用に使用した。
II)前述の(I)の2つ目の組を、600μlの溶出バッファ(EB)で処理。ビーズ試料の磁性部分を磁石で引き付け、上清を除去し(未結合のポリスチレンビーズ(PS)と共に)、サイズ測定用に保存。磁石で捕獲した物質を0.5mlのPB/100バッファ(pH4.0)に再懸濁し、PCSサイズ測定用に保存。
III)前述の(I)の3つ目の組を600μlの水酸化ナトリウム(10mM、EB2)で処理。
【0222】
4測定の平均サイズは、以下の通りであった。
(1)PS-MAG:264+/-9.8nm、
(2)PSPT-MAGPA:412.6+/-18nm
(3)PS-MAGの最初の溶出(EB1 pH8)(磁石から再懸濁):330+/-16nm、
(4)PS-MAGの最初の溶出(EB1)(磁石で引き付けられなかった):43.5+/-37nm(すなわちクリアー)、
(5)PSPT-MAGPAの最初の溶出(EB1)(磁石から再懸濁):199.1+/-90nm、
(6)PSPT-MAGPAの最初の溶出(EB1)(磁石に引き付けられなかった):238.7+/-50nm
(7)PS-MAGの2度目の溶出(EB2 pH11)(磁石から再懸濁):272.27+/-25nm、
(8)PS-MAGの最初の溶出(EB)(磁石に引き付けられなかった):240.6+/-20nm、
(9)PSPT-MAGPAの最初の溶出(EB2)(磁石から再懸濁):120.3+/-66nm、
(10)PSPT-MAGPAの最初の溶出(EB2)(磁石に引き付けられなかった):229.7+/-27nm。
【0223】
これらの結果を図12に示す。
【0224】
これらの粒子が凝集かつ分散するときに、公称寸法の違いおよび常磁性反応の違いが、次のような方法のいずれかを通じてこれらの粒子の分離を可能にする。
(1)それぞれの粒子の本来の電荷を通じてまたは、(2)反対の電荷を帯びた粒子へのポリイオン吸着。本実施例では、反対の電荷を帯びた裸の粒子およびその凝集性を、反対の電荷を帯びたポリマー層を有したときに結合する同様の粒子と比較する。PS-MAG(1)の凝集体(264nm)は、粒子それのみ(MAG129nmまたはPS186nm)よりも大きい。同様にポリマーの吸着は、MAGPAのサイズを337nmに、PSPTのサイズを370nmに増大させ、MAGPA-PSPT凝集体のサイズは413nmになる。最初の溶出ではPS-MAGは、すべて磁石に結合して除去され(330nm)(3)、上清中にはビーズは存在しない(43nm)(4)。最初の溶出ではPSPT-MAGPAは、磁石に結合した199nm(5)および上清中の238nm(6)からなるが、サイズに違いがあり、より大きな(非磁性の)PSを基礎とした粒子が上清を占める。2度目の溶出(EB2)では、PS-MAGは磁石上で凝集したより大きな物質(273nm)および懸濁されたより小さい物質(240nm)を示す。このことは、PS粒子が幾分放出されたことを示すが、磁石から再懸濁された凝集体のサイズは、もともとのPS-MAG凝集体のサイズ(264nm)(1)と変わらない。それに比べて、2度目の溶出でPSPT-MAGは、磁石から再懸濁された画分においては、120nm(9)の粒子を有するオリジナルのマグネタイトの再生を示すが、上清には230nm(10)のサイズの粒子が存在し、186nmである未結合PSビーズと44nmの差がある。このように、本実施例では、二重ポリイオン層(最初に異なる表面上に重ねたにもかかわらず-時間的な順序)により、粒子間の接着ならびに物理化学的手段(pHの変化)による粒子の脱離および解離が可能になることを示した。これは、反対の電荷を有する表面を有しているがポリイオン構造をもたない同様の粒子では達成できない。
【0225】
(実施例29)
ポリイオン層の濾紙ローディング
本実施例では、ポリイオン溶液で4種類の前処理をして多孔質担体物質として使用した2種類の濾紙上で仔ウシ胸腺ゲノムDNAの結合と放出を行った。3mlの50μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(PB1/100(pH4.0)に溶解)で処理する前に、ワットマン番号2濾紙(W2)およびワットマン番号54濾紙(W54)をポリアクリル酸および/またはポリBis-Trisで処理した。
【0226】
ワットマン濾紙2および54のそれぞれに対して30×47mm(c14cm2)のサイズのものを4つずつ、以下の処理によって準備した。
A)PT:1mlの1mg/mlのポリBis-Tris(PB/50(pH4.0)に溶解)で10分間インキュベートし、液を抜く。
B)PT/PA:1mlの1mg/mlポリBis-Tris(PB/50(pH4.0)に溶解)で10分間インキュベートし、液を抜く。その後、1mlの0.5%(w/v)ポリアクリル酸(分子量240k)中で30分間回転させ、液を抜く。
C)PA:1mlの0.5%(w/v)ポリアクリル酸(分子量240k、PB/50(pH4.0)に溶解)中で10分間インキュベートし、液を抜く。
D)PA/PT:1mlの0.5%(w/v)のポリアクリル酸(分子量240k、PB/50(pH4.0)に溶解)中で10分間インキュベートし、液をぬく。その後、1mlの1mg/mlポリBis-Tris(PB/50(pH4.0)に溶解)中でインキュベートし、30分間回転させてから、液を抜く。
【0227】
5mlのPB/100による洗浄1回を各処理に付け加えた。その後、1mlの50μg/ml仔ウシ胸腺DNA(PB/100(pH4.0)に溶解)を5分間接触させて、3mlのPB/50(pH4.0)中で2回洗浄した。2mlの溶出バッファ(EB)で溶出を行った結果は以下の通りであった。
(A)ワットマン番号2(W2)、PT:0.30μg/cm2+/-0.05、
(B)W2、PT/PA:0.85μg/cm2+/-0.09、
(C)W2、PA:0.41μg/cm2+/-0.01、
(D)W2、PA/PT:0.89μg/cm2+/-0.12、
(E)ワットマン番号54(W54)、PT:0.41μg/cm2+/-0.02、
(F)W54、PT/PA:0.81μg/cm2+/-0.10、
(G)W54、PA:0.47μg/cm2+/-0.01、
(H)W54、PA/PT:0.82μg/cm2+/-0.00。
【0228】
これは、濾紙が溶液に反応した物質のリザーバーとして機能していることを示す。濾紙は処理の間に乾燥させてはならなかったので、結果的には、DNAの結合能力または放出能力において、濾紙に固定されたPT/PAまたはPA/PTの間で順序による影響はない。しかしながら、PTに対してPAがまたはPAに対してPTが、濾紙に単独で固定したときにポリBis-Trisに対して非常に大きな効果をもつことを示す。
【0229】
(実施例30)
DNA含有サブミクロン非磁性多層状粒子
1,000nm(1ミクロン)に満たないサイズのナノ粒子およびナノ粒子ポリマー系は、担体、成分ならびに材料、塗料、被覆剤およびコロイド分散における粘着系としての特有の役割をもつ。そのような粒子は、医学、製薬、食品、化学工業、化粧品、農芸化学、電子工学、航空宇宙産業、防衛、新興のナノ工学産業および生命工学産業で幅広く使用される。
【0230】
本実施例では、交互に電荷を帯びたポリマーの多層を重ね合わせたサブミクロンコアとして機能するポリスチレン微粒子を使用する。過剰のポリマーが混じった上清を置換するために遠心を必要とする広範な浄化サイクルの間にポリマー層が堆積される。D-S6と名付けたカルボキシル化コア粒子(149nm+/-1.2、電荷-53.9+/-1.6)を使用した。各ビーズストック(5%分)の開始材料2×1mlを5回の連続した遠心サイクル(13,000rpm、30分)によって浄化し、上清を除去して1mlの18メガオームのミリQ水に再懸濁した。その結果、各実験の粒子セットとして約50mg/mlの量を得た。
【0231】
このコア上に以下の層を重ねた。
層1-ポリカチオン:100μl(c5mg)のコアビーズを遠心して上清を除去し、ポリカチオンの第1層を重ねるために、1mlの2mg/mlポリBis-Tris(15k、水に溶解)と30分間インキュベートした。遠心(13,000×15分)で2回洗浄。
任意的な層2-DNA:1.4mlの500μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(PB/100(pH4.0)に溶解)で30分間、任意的なDNA結合工程を行い、2回洗浄。
層2-ポリアニオン:100μlのPB/100(pH4.0)にビーズを再懸濁し、1mlの0.5%(w/v)のポリアクリル酸(分子量240,000、PB/100(pH4.0)に溶解)を添加。13,000rpmで遠心し、PB/100に2回再懸濁。
層3-ポリカチオン:2mg/mlのポリBis-Tris(15k)1mlで10分間処理。遠心2回(PB/100で)洗浄。
層4-DNA:1.4mlの500μg/ml仔ウシ胸腺ゲノムDNA(PB/100(pH4.0)に溶解)で室温で30分間、DNA結合工程を行い、2回洗浄。
層5-ポリアニオン:0.5%(w/v)ポリアクリル酸(分子量15,000、水に溶解)を使用して10分間処理。2回洗浄。
層5-ポリカチオン:DNA層4の上に、層3のようにポリBis-Tris処理。
層6-ポリカチオン:ポリアクリル層5の上に、層3のようにポリBis-Tris処理。
【0232】
コアビーズを含む9個の開始チューブを用いて実験を計画した。D-S6コア、コア/PT、コア/PT/DNA、コア/PT//PA、コア/PT/PA/PT、コア/PT/PA/PT/DNA、コア/PT/PA/PT/DNA/PA、コア/PT/PA/PT/DNA/PT、コア/PT/PA/PT/DNA/PA/PTを含む一連のチューブを作製した。
【0233】
PB100(pH4.0)中でこれらのビーズの表面電荷(ゼータ電位)分析した。DNAを含有するビーズに関しては、1,000μlの試料(c1mg)の200μlを使用して標準EB溶液バッファ(pH8.0)によるDNA溶出のシングル測定値を解析した。ビーズD-36の結果は、以下の通りであった。
(1)S6:-37.8mV+/-18.50
(2)S6/PT:+34.9mV+/-1.3
(3)S6/PT/DNA:32.3mV+/-2.5、EB1溶出物30.0μgDNA
(4)S6/ PT/DNA:-23.9mV+/-2.6
(5)S6/PT/PA/PT:25.5mV+/-1.0
(6)S6/PT/PA/PT/DNA:28.0mV+/-1.3、EB1溶出物33.84μgDNA
(7)S6/PT/PA/PT/DNA/PA:-27.5mV+/-5.1、EB1溶出物21.2μgDNA
(8)S6/PT/PA/PT/DNA/PT:28.5mV+/-5.0、EB1溶出物29.3μgDNA
(9)S6/PT/PA/PT/DNA/PA/PT:33.7mV+/-0.8、EB1溶出物16.3μgDNA
【0234】
ポリカチオンまたはポリイオンで交互に層形成させることは、ビーズの電荷極性に変化を引き起こす。また、引き続き積み重ねられた層(すなわち8.C/PT/PA/PT/DNA/PA)によって表面電荷が変化を受けた後、溶出によってこれらのビーズからDNAが放出されることから分かるように、積み重ねたDNA層が組み込まれても、DNA堆積後にビーズの表面電荷は変化する。このように、通常の方法で、本発明は、DNAを交互に積み重ねたポリイオン層の中に組み入れることを可能にする。
【0235】
(実施例31)
多層安定性におけるポリカチオンの外層の効果
10種類の異なったカルボキシル化ポリスチレンビーズを使用して実施例30に類似した実験を行った。それらは、4層(コア/PAM/PA/PT/DNA)(層4)まで積み重ねたものや、その外側にさらにポリBis-Tris層を重ねたもの(コア/PAM/PA/PT/DNA/PT)(層5)である。組み込まれた第1層はポリアリルアミン(分子量15,000)(0.05%w/v)であった。DNAの移動および溶出に引き続きアガロースゲル電気泳動を行い、260/280nmの吸光度を測定した。
【0236】
アガロースゲルの結果は、4層ビーズおよび5層ビーズがいずれもDNAを結合することを示す(図13)。第1溶出および第2溶出の分析は、4層ビーズからのDNAの放出(収量μg+/-)と5層ビーズからのDNAの放出において、またはこれらの層の間で表面電荷において統計的にみて大きな違いがないことを示す。しかしながら、ポリBis-Trisの層を余分にもつ5層ビーズからのDNA溶出の規模の間に弱い相関関係があり、それは、その下の4層DNAビーズからのDNA溶出の規模に依存する。4層ビーズおよび5層ビーズからのDNA溶出において、ポリBis-Trisの外層が、ポリBis-Trisに吸着したDNAのみと比較して、DNA放出を減らすことも分かった。このように2層のポリBis-Trisで挟まれたDNAは安定化され、最初に溶出されるDNA量が減少し、2度目の溶出量で増大する。表面に露出した吸着DNA(層4)をもつ4層ビーズ系よりも最初の溶出量は約20%少なく(傾きm=0.8、pH8、r=0.713、df=8、rstat=0.685、P=0.02、確率2%で顕著)、それに付随して2度目の溶出量(傾きL4に関するL5 m=1.2、pH11、r=0.889、df=7、rstat=0.798、P=0.01、確率1%で顕著)が約20%多くなっていることを示す。
【0237】
(実施例32)
GFPプラスミドを含むコロイドポリBis-Trisおよびポリアクリル酸ポリイオンポリイオンコンプレックスコロイドの調製
ポリイオンコンプレックスは、薬の送達のための進歩的処方および治療学で使用されるコロイド分散から、分離技術応用における膜のような特別の合成物において使用される活性化機能的表面をもつ物質まで、様々な応用で使用される物質の代表的なものである。分散液または固相のようなポリイオンコンプレックスは、生命工学、生物医学分野および製薬分野を含む多くの産業で使用される物質の代表的なものである。
【0238】
2分子量のポリBis-Tris溶液の1分子量を2分子量のポリアクリル酸溶液の1分子量と混合することによって、ポリアクリル酸をコンプレックス化したポリBis-Tris分散液を処方した。溶液は、以下の通りであった。
(A)ポリアクリル酸(PA15 分子量15,000 溶液PB/50(pH4.60)中に0.1%w/v、-7.1mV+/-11.7)
(B)ポリアクリル酸(PA240 分子量240,000 溶液PB/50(pH43.75)中に0.1%w/v、-1.7mV+/-5.7)
(C)ポリBis-Tris(PT15 分子量15,000 溶液PB/50(pH4.46)中に0.1%w/v、+5.4mV+/-3.9)
(D)ポリアクリル酸(PT240 分子量240,000 溶液PB/50(pH4.82)中に0.1%w/v、+3.6mV+/-0.6)
【0239】
ポリイオン分散液を合成するために等量の溶液を加えた。(1)CにA、(2)DにA、(3)CにB、(4)DにBという溶液の組み合わせでコンプレックスを合成した。(5)AにC、(6)BにC、(7)AにD、(8)BにDといった2番目のグループを合成するために添加の向きを逆にした。このような処方について、PB/100(pH4.0)中でのサイズと電荷を分析した。
【0240】
【表1】

【0241】
サイズと電荷の違いは混合の向きから生じる。これらの分散液のいくつかに、さらにポリBis-TrisPT240(PB/200(pH4.0)中に0.5mg/ml)で処理を加えた。結果は以下の通りであった。
【0242】
【表2】

【0243】
表面層の電荷変化は、3度目のポリマー処理の吸着により二重ポリマー処方の最外層を変化させることができることを示す。これらの処方型のいくつかを、GFPプラスミド(5.1kb、pCS2*mt-SGP)を結合させるために使用した。それらは、以下の通りであった。
(1)PT15(PL)-PA15:GFPプラスミド(30μlの蒸留水に溶解した1μgのエンドトキシンフリープラスミド)を1mlの0.2%PT15k(PB/100に溶解)に添加し、10分間インキュベート。これに2mlの0.1%PA15k(PB/100に溶解)を添加、遠心によって2回洗浄しPB/100に再懸濁。最後に、60μlのPB/100(pH4.0)に再懸濁。
(2)PT15(PL)-PA15-PT15:GFPプラスミド(30μlの蒸留水に溶解した1μgのエンドトキシンフリープラスミド)を1mlの0.2%PT15k(PB/100に溶解)に添加し、10分間インキュベート。これに2mlの0.1%PA15k(PB/100に溶解)を添加、遠心によって2回洗浄しPB/100に再懸濁。最後に、1000μlのPB/100(pH4.0)に再懸濁。その後、1mlの0.2%PT15kを添加し、2回洗浄、60μlのEB/100に再懸濁。
(3)PT240(PL)-PA15:GFPプラスミド(30μlの蒸留水に溶解した1μgのエンドトキシンフリープラスミド)を1mlの0.2%PT240k(PB/100に溶解)に添加し、10分間インキュベート。これに2mlの0.1%PA15k(PB/100に溶解)を添加、遠心によって2回洗浄しPB/100に再懸濁。最後に、60μlのPB/100(pH4.0)に再懸濁。
(4)PT240(PL)-PA15-PT240:GFPプラスミド(30μlの蒸留水に溶解した1μgのエンドトキシンフリープラスミド)を1mlの0.2%PT240k(PB/100に溶解)に添加し、10分間インキュベート。これに2mlの0.1%PA15k(PB/100に溶解)を添加、遠心によって2回洗浄しPB/100に再懸濁。最後に、1000μlのPB/100(pH4.0)に再懸濁。その後、1mlの0.2%PT240kを添加し、2回洗浄、60μlのEB/100に再懸濁。
(5)PT15(PL)-PA240:GFPプラスミド(30μlの蒸留水に溶解した1μgのエンドトキシンフリープラスミド)を1mlの0.2%PT15k(PB/100に溶解)に添加し、10分間インキュベート。これに80μlの0.5%PA240k(PB/100に溶解)を添加、遠心によって2回洗浄しPB/100に再懸濁。最後に、60μlのPB/100(pH4.0)に再懸濁。
(6)PT15(PL)-PA240-PT15:GFPプラスミド(30μlの蒸留水に溶解した1μgのエンドトキシンフリープラスミド)を1mlの0.2%PT15k(PB/100に溶解)に添加し、10分間インキュベート。これに80μlの0.5%PA240k(PB/100に溶解)を添加、遠心によって2回洗浄しPB/100に再懸濁。最後に、1000μlのPB/100(pH4.0)に再懸濁。その後、40μlの2%PT15kを添加し、2回洗浄、60μlのEB/100に再懸濁。
【0244】
1%アガロースル電気泳動ゲルに6μlの試料(溶出なし)を流し、処方中のGFPプラスミドの存在を調べた。この結果を図14に示す。試料1から試料6をゲル上でレーン3、4、5、6、13および14と表示する。(1)PT15(PL)-PA15(レーン3)、(2)PT15-PA15-PT15(レーン4)、(3)PT240(PL)-PA15(レーン5)および(6)PT15(PL)-PA240-PT15(レーン14)はいずれもプラスミドを含むが、電気泳動下において、(4)PT240(PL)-PA15-PT240および(5)PT15(PL)-PA240(レーン13)に関しては、放出量は最も少なかった。
【0245】
(実施例33)
GFPプラスミドを含むポリイオン処方の哺乳類COS細胞へのトランスフェクション
GFP(緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだプラスミド)を組み込んだポリイオン処方は、トランスフェクション、動植物の遺伝子修飾および病気の遺伝子治療の科学技術においてマーカーとして有用である。このような製剤は、製薬、生命工学、生命科学、医学および遺伝子組み換え産業において使用される処方クラスの代表的なものである。
【0246】
哺乳類のCOS細胞にGFPプラスミドを含んだ異なる種類のポリイオンコンプレックスをトランスフェクションさせるために実験を行った。使用する粒子型は、実施例29タイプ(コアビースを基礎としたサブミクロン多層状粒子)、実施例30タイプ(ポリBis-Trisおよびポリアクリル酸の分散液処方)を含み、GFPプラスミドを含有するように処方した。
【0247】
1つ目のタイプは、コアポリスチレン型S5およびコアポリスチレン型S6であった。以下の層を合成した。S5/PT240[PL]PA15/ PT240、ならびにS5/PT240/PA15/PT240およびS6/PT240/PA15/PT240のストック。これらからS5/PT240/PA15/PT240[PL]/PA15/、S5/PT240/PA15/PT240[PL]PT240、S5/PT240/PA15/PT240[PL]/PA15/PAM、S5/PT240/PA15/PT240[PL]/PAM、S6/PT240/PA15/ PT240[PL]/PT240およびS6/PT240/PA15/ PT240[PL]/PAMを処方した。
【0248】
2つ目のタイプ(分散液形態粒子)は、PT15[PL]PA15、PT15[PL]PA15/PT15、PT240[PL]PA15、PT240[PL]PA15/PT15、PT15[PL]PA240、PT15[PL]PA240/PT15であった。
【0249】
対照(ポリイオン層なし)を合成した。PT240[PL]、PT15[PL]、PT240のみ。
S5およびS6セット。非多層状対照としてS5/PT240[PL]およびS6/PT240[PL]。名目1μgのGFPプラスミドを含有する試料を60μlのPB/100に再懸濁した。以下の方法により試料をCOS7細胞に接触させた。共焦点顕微鏡を使用し、トランスフェクションの証拠となる緑色の蛍光に関して結果評定を行った。
【0250】
トランスフェクション手順:
75cm2組織培養フラスコを使用して10%ウシ胎仔血清(FCS)、L-グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するD-MEMでCOS7細胞を培養した。細胞を1〜2分間37℃でトリプシン処理し、10%FCSおよびL-グルタミン(非抗生物質)を含有する培地で中和し、約2×105/mlの細胞密度になるように希釈した。8ウェルチャンバースライドに300μLずつのせた。33℃で一晩インキュベートした(CO2濃度7%)。トランスフェクションに備えて各ウェルの培地体積を250μlに減らした。オーバーナイト培養培地をプラスした細胞または酸性化オーバーナイト培養培地をプラスした細胞に直接トランスフェクションした。4μlの100mMクエン酸を添加して培養培地を酸性化した。それは各ウェル中の培地のpHを約7.2まで下げる。トランスフェクション用の試料を表1に示すように準備した。各試料50μlをCOS7細胞(標準的条件下または酸性化条件下で一晩培養した細胞250μl)にトランスフェクションするために使用した。リポフェクタミン(インビトロジェン(Invitrogen))仲介トランスフェクションを利用して陽性対照を以下のように準備した。16μlのGFPプラスミド(1μg/40μl)を9μlのD-MEMで最終体積が25μlになるように希釈した。別のマイクロフュージチューブで、1μlのリポフェクタミン試薬を24μlのD-MEMで希釈し、穏やかに混合後、3分間または5分間室温でインキュベートした。インキュベーション後、そのGFP-D-MEM試料をリポフェクタミン-D-MEM試料と混合した。20〜30分間室温でインキュベーション後、50μlの混合液を細胞(標準条件下または酸性条件下の250μl培地中)にトランスフェクションするのに使用した。すべての試料を添加後、24〜48時間37℃で細胞をインキュベートした(CO2濃度7%)。
【0251】
蛍光および共焦点顕微鏡[Zeiss LSM510 Meta Confocal Microscope]によってGFP生成を評価した(励起波長488nm、GFP蛍光検出520nm)。
【0252】
【表3】

【0253】
結果:蛍光共焦点顕微鏡写真を実験プレートの代表的な領域について撮った。結果を表形式でまとめる。
【0254】
【表4】

【0255】
これらの結果は、陰性対照および陽性対照が効果的に働いていることを示した。GFPトランスフェクションは、顕微鏡写真で緑色の蛍光として検出される。PAM外層(内側にGFPプラスミド層およびポリBis-Tris層をもつ)をもつGFP処方の蛍光は非常に強かった。このことはトランスフェクションが正しく行われたことを示す。相対反応をランク付けして表形式にまとめ、結果を上記に示した。
【0256】
(実施例34)
使い捨て96ピンプラスチックに層形成したポリイオンを使用したDNA精製
1組のプラスチック96ピンは、表面をアミン基またはカルボキシ基で修飾したものを、ミモトープスピティ社(Mimotopes Pty Ltd)より購入して使用した。幾つかを、WO02/48164に従って調製したポリ-Bis-Tris溶液中にpH4で60分間浸した。またはさらに追加の層を重ねるために、引き続いてポリアクリル酸(分子量240k)溶液中に5mg/ml濃度で浸した。水でフリーのポリマーを洗浄後、ピンをウシDNA溶液(約100μg/ml、15mM酢酸カリウムバッファ(pH4.0)に溶解)中に浸し、60分間インキュベートした。再度ピンを洗浄し、10mM Tris HCl(pH8.5)に約10分間浸すことによってDNAを溶出した。
【0257】
【表5】

【0258】
結果は、DNAがわずかにアルカリ側になったpHで回収される、典型的な電荷転換反応を示した。また、多層方法は、表面の結合力が非常に増大するという、ポリイオンコンプレックスのメリットを示す。
【0259】
(実施例35)
ポリイオンチッププラグを使用した改良型DNA精製
チッププラグ:1mlのピペットチップの底に焼結したプラスチックプラグをはめ込んでチッププラグを作製した。5mg/mlポリBis-Tris、5mg/mlポリアクリル酸および5g/mlポリアリルアミンでコーティングした(各層形成の間にプラグを順次浸漬し10mM酢酸バッファ(pH4)による洗浄を行った)。PUC19を含有する大腸菌(E.coli)細胞(一晩培養した培養液1ml 、pH4.0に調節)を結合するのにチッププラグを使用した。結合した細胞を、1mlの10mM Tris HCl(pH8.5)で溶出することにより回収した。細胞を遠心によって沈殿させ、DRIプラスミドミニプレップキットを使用してプラスミドを抽出し、5チッププラグの沈殿をひとまとめにした。溶出されたDNAの260nmでの吸光度は0.15、260/280比率は1.9で、数μgの純粋なプラスミドが回収されたことをこの結果は示す。
【0260】
磁性ビーズ:DRIBis-Tris磁性ビーズをポリアクリル酸およびポリアリルアミンで前述のように処理した。約5mgの修飾ビーズを使用して、2mlの大腸菌培養液から菌を結合させた。ビーズによって培養液は即座に透明になり、前述のように溶出液で細胞を放出させた。細胞を沈殿させ、DRIプラスミド抽出キットでプラスミドを精製した。260nmでの吸光度(0.53)および260/280比率(1.7)は、精製DNAの存在を示す。本出願において参照した全てのリファレンスは、完全にリファレンスとして挿入される。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】DNAを含む多層ポリアニオン/ポリカチオン構造の形成、およびこの構造からのDNAの放出の概略を示す図である。
【図2】本発明による様々な多層担体の概略を示す図である。
【図3】本発明による様々な多層担体の概略を示す図である。
【図4】ポリアクリル酸(PAA)および/またはポリBis-Tris(PT)の種々の数の層を有する、Bis-Tris誘導体化ビーズならびに両性イオン対照ビーズからの溶出により得られたDNAの収量を示す図である。
【図5】ポリアクリル酸(PAA)および/またはポリBis-Tris(PT)の種々の数の層を有する、Bis-Tris誘導体化ビーズ(BT)ならびに両性イオン対照ビーズ(C)からの溶出により得られた陰イオン色素の収量を示す図である。
【図6】ポリアクリル酸およびポリBis-Trisの種々の数の層を有するSpherotechビーズからの溶出により得られたDNAの収量を示す図である。
【図7】ポリアクリル酸およびポリBis-Trisの種々の数の層を有するSpherotechビーズからの溶出により得られた陰イオン色素の収量を示す図である。
【図8】ポリアクリル酸およびポリBis-Trisの種々の数の層を有するSpherotechビーズからの低pHでの溶出により得られた陽イオン色素の収量を示す図である。
【図9】DNAおよびポリBis-Tris(PT)の種々の数の層を有するビーズからの溶出により得られたDNAの収量を示す図である。
【図10】DNAおよびポリBis-Tris(PT)の種々の数の層を有するビーズからの溶出により得られた陰イオン色素の収量を示す図である。
【図11】DNAおよびポリBis-Tris(PT)の種々の数の層を有するビーズからの低pHでの溶出により得られた陽イオン色素の収量を示す図である。
【図12】実施例28で述べたマグネタイト/ポリスチレン凝集結果に関するサイズおよび移動度結果を示す図である。
【図13】4層(L4):コア-PAM-PA-PT-DNAおよび5層(L5):コア-PAM-PA-PT-DNA-PTを有する種々のコアビーズ[S1〜S10]上の多層調合物からのウシ胸腺ゲノムDNA放出のアガロースゲルを示す図である。実施例31も参照されたい。
【図14】種々のポリTrisおよび多層調合物のGFPプラスミドDNA負荷のアガロースゲルを示す図である。実施例32も参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的部位に所望の物質を送達する方法であって、
(a)物質がイオン相互作用により担体に結合するように、担体を第1のpHで物質と接触させる工程、
(b)担体を標的部位に送達する工程、および
(c)第2のpHで担体から物質を放出させる工程を含み、
担体と物質とが一緒に、第1のpHでイオン相互作用により会合している少なくとも3つの層を形成し、
(1)少なくとも1つの層が、電離性基を含み、第1のpHで正電荷を、第2のpHでより小さい正、中性または負である電荷を有する電荷転換材料を含み、
(2)少なくとも1つの層が、第1のpHで負に荷電するポリイオン性高分子を含み、
(3)少なくとも1つの層が所望の物質を含む方法。
【請求項2】
前記層が固相またはコア粒子上に形成されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固相が磁化性粒子であるコア粒子である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電荷転換化合物およびポリイオン性高分子を、分離した粒子の集団に最初に固定化する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
凝集して層状担体を形成するように、前記粒子の集団を接触させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1のpHにおいて前記担体が、イオン相互作用により会合している少なくとも4つの層を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記担体および物質が、所望の物質の少なくとも2つの層を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記所望の物質の少なくとも2つの層が、異なる第2のpHで放出可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所望の物質の少なくとも2つの層が、異なる所望の物質を含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所望の物質の少なくとも2つの層が、同じ所望の物質を含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所望の物質が核酸、製薬上活性な化合物、タンパク質、炭水化物、成長因子、ホルモン、酵素、ワクチン、細胞、細胞成分、ウイルス、肥料、農薬、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤、ビタミン、飼料サプリメント、造影剤、染料、キレート化剤、化粧品、ペンキ、洗浄剤、脂質、食品サプリメントおよび栄養補助食品から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記所望の物質が第1のpHで負に荷電する物質である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記所望の物質が第1のpHで正に荷電する物質である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記所望の物質が第1のpHで両性イオン物質である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記電荷転換材料がポリBis-Trisであり、前記ポリイオン性高分子がポリアクリル酸である請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記担体が、所望の物質の最外層上に配置された外層を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記外層が電荷転換材料またはポリイオン性高分子を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記担体の少なくとも1つの層中の所望の物質が核酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記所望の物質が核酸であり、方法が細胞を前記核酸でトランスフェクトするものである、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のpHがpH9.0より低い、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記電離性基のpKaが3.0〜9.0、好ましくは4.0〜9.0である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記電荷転換材料が正に荷電する電離性基を含み、そのpKaが5.0〜8.0、好ましくは6.0〜7.0である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
標的部位に所望の物質を送達するための担体であり、イオン相互作用により会合している少なくとも4つの層を含み、少なくとも1つの層が、電離性基を含み、第1のpHで正電荷を、第2のpHでより小さい正、中性または負である電荷を有する電荷転換材料を含む担体。
【請求項23】
前記所望の物質がイオン相互作用により担体に結合している、請求項22に記載の担体。
【請求項24】
標的部位に所望の物質を送達するための担体であり、
第1のpHでイオン相互作用により会合している少なくとも3つの層を含み、
少なくとも1つの層が、電離性基を含み、第1のpHで正電荷を、第2のpHでより小さい正、中性または負である電荷を有する電荷転換材料を含み、
少なくとも1つの層が、第1のpHで負に荷電するポリイオン性高分子を含み、
少なくとも1つの層が、電荷転換材料上の電荷が負、中性またはより小さい正である第2のpHで担体から放出可能である所望の物質を含む担体。
【請求項25】
前記層が固相またはコア粒子上に形成されている請求項24に記載の担体。
【請求項26】
前記固相が磁化性粒子であるコア粒子である請求項25に記載の担体。
【請求項27】
前記電荷転換化合物およびポリイオン性高分子を、分離した粒子の集団に最初に固定化する請求項24に記載の担体。
【請求項28】
凝集して層状担体を形成するように、前記粒子の集団を接触させることをさらに含む、請求項27に記載の担体。
【請求項29】
前記担体が少なくとも4つの層を含む、請求項24から28のいずれか一項に記載の担体。
【請求項30】
前記所望の物質が核酸、製薬上活性な化合物、タンパク質、炭水化物、成長因子、ホルモン、酵素、ワクチン、細胞、細胞成分、ウイルス、肥料、農薬、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤、ビタミン、飼料サプリメント、造影剤、染料、キレート化剤、化粧品、ペンキ、洗浄剤、脂質、食品サプリメントおよび栄養補助食品から選択される請求項22から29のいずれか一項に記載の担体。
【請求項31】
前記所望の物質が核酸である請求項30に記載の担体。
【請求項32】
前記所望の物質が第1のpHで負に荷電する物質である、請求項30または請求項31に記載の担体。
【請求項33】
前記所望の物質が第1のpHで正に荷電する物質である、請求項30に記載の担体。
【請求項34】
前記所望の物質が第1のpHで両性イオン物質である、請求項30に記載の担体。
【請求項35】
前記電荷転換材料がポリBis-Trisであり、前記ポリイオン性高分子がポリアクリル酸である請求項1から34のいずれか一項に記載の担体。
【請求項36】
前記担体が所望の物質の最外層上に配置された外層を有する、請求項22から35のいずれか一項に記載の担体。
【請求項37】
前記外層が電荷転換材料またはポリイオン性高分子を含む、請求項36に記載の担体。
【請求項37】
前記担体の外層が電荷転換材料を含む、請求項37に記載の担体。
【請求項39】
前記第2のpHがpH9より低い、請求項22から37のいずれか一項に記載の担体。
【請求項40】
前記電離性基のpKaが3.0〜9.0、好ましくは4.0〜9.0である、請求項22から39のいずれか一項に記載の担体。
【請求項41】
前記電荷転換材料が正に荷電する電離性基を含み、そのpKaが5.0〜8.0、好ましくは6.0〜7.0である請求項22から40のいずれか一項に記載の担体。
【請求項42】
前記電荷転換材料が第1のpHでポリカチオンである、請求項22から41のいずれか一項に記載の担体。
【請求項43】
前記第1のpHで担体の少なくとも2つの層がポリイオン性高分子を含む、請求項22から41のいずれか一項に記載の担体。
【請求項44】
請求項22から43のいずれか一項に記載の担体を第2のpHの標的部位に供給することを含む、所望の物質を標的部位に送達するための担体の使用。
【請求項45】
前記標的部位が生体内にある請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記所望の物質が非治療用である請求項44または請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記標的部位が植物または動物に存在する請求項30に記載の使用。
【請求項48】
所望の物質によるヒトまたは動物の身体の治療方法に使用するための請求項22から43のいずれか一項に記載の担体であり、所望の物質を放出させるために第2のpHの細胞内標的部位に所望の物質を送達するためのものである担体。
【請求項49】
試料から所望の物質を分離する方法であり、
第1のpHで試料を請求項22から43のいずれか一項に記載の担体と接触させ、核酸を担体に結合させる工程、および
物質上の電荷が負、中性またはより小さい正である、より高い第2のpHで所望の物質を放出させる工程を含む方法。
【請求項50】
前記担体の2つ以上の層がポリイオンを含む、請求項49に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的部位に所望の物質を送達する方法であって、
(a)物質がイオン相互作用により担体に結合するように、担体を第1のpHで物質と接触させる工程、
(b)担体を標的部位に送達する工程、および
(c)第2のpHで担体から物質を放出させる工程を含み、
担体と物質とが一緒に、第1のpHでイオン相互作用により会合している少なくとも3つの層を形成し、
(1)少なくとも1つの層が、電離性基を含み、第1のpHで正電荷を、第2のpHでより小さい正、中性または負である電荷を有する電荷転換材料を含み、
(2)少なくとも1つの層が、第1のpHで負に荷電するポリイオン性高分子を含み、
(3)少なくとも1つの層が所望の物質を含む方法。
【請求項2】
前記層が固相またはコア粒子上に形成されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コア粒子が磁化性粒子である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電荷転換化合物およびポリイオン性高分子を、分離した粒子の集団に最初に固定化する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
凝集して層状担体を形成するように、前記粒子の集団を接触させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1のpHにおいて前記担体が、イオン相互作用により会合している少なくとも4つの層を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記担体および物質が、所望の物質の少なくとも2つの層を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記所望の物質の少なくとも2つの層が、異なる第2のpHで放出可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所望の物質の少なくとも2つの層が、異なる所望の物質を含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所望の物質の少なくとも2つの層が、同じ所望の物質を含む、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記所望の物質が核酸、製薬上活性な化合物、タンパク質、炭水化物、成長因子、ホルモン、酵素、ワクチン、細胞、細胞成分、ウイルス、肥料、農薬、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤、ビタミン、飼料サプリメント、造影剤、染料、キレート化剤、化粧品、ペンキ、洗浄剤、脂質、食品サプリメントおよび栄養補助食品から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記所望の物質が第1のpHで負に荷電する物質である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記所望の物質が第1のpHで正に荷電する物質である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記所望の物質が第1のpHで両性イオン物質である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記電荷転換材料がポリBis-Trisであり、前記ポリイオン性高分子がポリアクリル酸である請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記担体が、所望の物質の最外層上に配置された外層を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記外層が電荷転換材料またはポリイオン性高分子を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記担体の少なくとも1つの層中の所望の物質が核酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記所望の物質が核酸であり、方法が細胞を前記核酸でトランスフェクトするものである、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のpHがpH9.0より低い、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記電離性基のpKaが3.0〜9.0、好ましくは4.0〜9.0である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記電荷転換材料が正に荷電する電離性基を含み、そのpKaが5.0〜8.0、好ましくは6.0〜7.0である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
標的部位に所望の物質を送達するための担体であり、イオン相互作用により会合している少なくとも4つの層を含み、少なくとも1つの層が、電離性基を含み、第1のpHで正電荷を、第2のpHでより小さい正、中性または負である電荷を有する電荷転換材料を含む担体。
【請求項24】
前記所望の物質がイオン相互作用により担体に結合している、請求項23に記載の担体。
【請求項25】
標的部位に所望の物質を送達するための担体であり、
第1のpHでイオン相互作用により会合している少なくとも3つの層を含み、
少なくとも1つの層が、電離性基を含み、第1のpHで正電荷を、第2のpHでより小さい正、中性または負である電荷を有する電荷転換材料を含み、
少なくとも1つの層が、第1のpHで負に荷電するポリイオン性高分子を含み、
少なくとも1つの層が、電荷転換材料上の電荷が負、中性またはより小さい正である第2のpHで担体から放出可能である所望の物質を含む担体。
【請求項26】
前記層が固相またはコア粒子上に形成されている請求項25に記載の担体。
【請求項27】
前記コア粒子が磁化性粒子である請求項26に記載の担体。
【請求項28】
前記電荷転換化合物およびポリイオン性高分子を、分離した粒子の集団に最初に固定化する請求項25に記載の担体。
【請求項29】
凝集して層状担体を形成するように、前記粒子の集団を接触させることをさらに含む、請求項28に記載の担体。
【請求項30】
前記担体が少なくとも4つの層を含む、請求項25から29のいずれか一項に記載の担体。
【請求項31】
前記所望の物質が核酸、製薬上活性な化合物、タンパク質、炭水化物、成長因子、ホルモン、酵素、ワクチン、細胞、細胞成分、ウイルス、肥料、農薬、殺虫剤、除草剤、殺真菌剤、ビタミン、飼料サプリメント、造影剤、染料、キレート化剤、化粧品、ペンキ、洗浄剤、脂質、食品サプリメントおよび栄養補助食品から選択される請求項23から30のいずれか一項に記載の担体。
【請求項32】
前記所望の物質が核酸である請求項31に記載の担体。
【請求項33】
前記所望の物質が第1のpHで負に荷電する物質である、請求項31または請求項32に記載の担体。
【請求項34】
前記所望の物質が第1のpHで正に荷電する物質である、請求項31に記載の担体。
【請求項35】
前記所望の物質が第1のpHで両性イオン物質である、請求項31に記載の担体。
【請求項36】
前記電荷転換材料がポリBis-Trisであり、前記ポリイオン性高分子がポリアクリル酸である請求項23から35のいずれか一項に記載の担体。
【請求項37】
前記担体が所望の物質の最外層上に配置された外層を有する、請求項23から36のいずれか一項に記載の担体。
【請求項38】
前記外層が電荷転換材料またはポリイオン性高分子を含む、請求項37に記載の担体。
【請求項39】
前記担体の外層が電荷転換材料を含む、請求項38に記載の担体。
【請求項40】
前記第2のpHがpH9より低い、請求項23から38のいずれか一項に記載の担体。
【請求項41】
前記電離性基のpKaが3.0〜9.0、好ましくは4.0〜9.0である、請求項23から40のいずれか一項に記載の担体。
【請求項42】
前記電荷転換材料が正に荷電する電離性基を含み、そのpKaが5.0〜8.0、好ましくは6.0〜7.0である請求項23から41のいずれか一項に記載の担体。
【請求項43】
前記電荷転換材料が第1のpHでポリカチオンである、請求項23から42のいずれか一項に記載の担体。
【請求項44】
前記第1のpHで担体の少なくとも2つの層がポリイオン性高分子を含む、請求項23から42のいずれか一項に記載の担体。
【請求項45】
請求項23から44のいずれか一項に記載の担体を第2のpHの標的部位に供給することを含む、所望の物質を標的部位に送達するための担体の使用。
【請求項46】
前記標的部位が生体内にある請求項45に記載の使用。
【請求項47】
前記所望の物質が非治療用である請求項45または請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記標的部位が植物または動物に存在する請求項45に記載の使用。
【請求項49】
所望の物質によるヒトまたは動物の身体の治療方法に使用するための請求項23から44のいずれか一項に記載の担体であり、所望の物質を放出させるために第2のpHの細胞内標的部位に所望の物質を送達するためのものである担体。
【請求項50】
試料から所望の物質を分離する方法であり、
第1のpHで試料を請求項23から44のいずれか一項に記載の担体と接触させ、核酸を担体に結合させる工程、および
物質上の電荷が負、中性またはより小さい正である、より高い第2のpHで所望の物質を放出させる工程を含む方法。
【請求項51】
前記担体の2つ以上の層がポリイオンを含む、請求項50に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−501156(P2006−501156A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−508848(P2004−508848)
【出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【国際出願番号】PCT/GB2003/002417
【国際公開番号】WO2003/101494
【国際公開日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(504438336)ディーエヌエー・リサーチ・イノヴェイションズ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】