説明

ポリイソシアヌレート発泡体及びそれを用いた発泡ボード

【課題】環境負荷が少なく、原材料の取り扱い性が容易で、強度、難燃性、寸法安定性及び面材との接着性に優れたポリイソシアヌレート発泡体及び発泡ボードを提供する。
【解決手段】芳香族ポリイソシアネート化合物(A)からなるイソシアネート成分と、水(B)と、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)と、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)とからなるポリエステルポリオール(C‐3)を含有する平均水酸基価が140〜220[KOHmg/g]のポリオール(C)を含むポリオール成分とを、イソシアネートインデックスが200〜300で、かつ、水(B)を、ポリオール(C)100質量部に対し3〜8質量部となるように反応させてポリイソシアヌレート発泡体を得る。この発泡体に、アルミニウム層を有する面材を貼り付けて発泡ボードとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性及び寸法安定性に優れたポリイソシアヌレート発泡体、及びそれを用いた発泡ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
各種ウレタンフォームのなかでも、ポリイソシアヌレート発泡体は、断熱性及び難燃性に優れ、かつ、高強度であることから、各種断熱材や建材パネル等に好適に利用されている。そして、難燃性及び断熱性に優れた発泡体が得られるということから、従来は、発泡剤としてトリクロロフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(フロン)が用いられてきた。
【0003】
しかしながら、このフロンは、成層圏におけるオゾン層の破壊および地球温暖化等の環境破壊物質であることから、その使用に制限が求められている。そこで、オゾン破壊係数が少なく、環境破壊の少ないHFC−365mfc、HFC−245fa等の次世代フロンや、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の炭化水素系を発泡剤として用いたポリイソシアヌレート発泡体等のウレタンフォームが各種検討されている。
【0004】
炭化水素系の発泡剤は、環境負荷が少なく、また、断熱性能に優れた発泡体が得られることから、発泡剤として現在広く使用されているが、VOCによる問題や、可燃性物質であることによる取り扱い上の問題などがあり、水をイソシアネートと反応させて発生する炭酸ガスで発泡体の気泡を形成する、いわゆる水発泡を利用した発泡体が現在着目されている。
【0005】
このような、水発泡を利用した発泡体として、例えば下記特許文献1には、芳香族多官能ポリオール化合物と、水酸基価が200〜500(mgKOH/g)ポリエーテルポリオールとを含み、前記芳香族多官能ポリオール化合物の含有量が40〜85質量%であるポリオールと、水と、有機酸金属塩イソシアヌレート化触媒と、イミダゾール系触媒とを含有するポリオール成分と、イソシアネート成分とを反応させて得られる硬質ポリウレタンフォームが開示されている。
【特許文献1】特開2003−48943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水発泡を利用した上記特許文献1に記載された発泡体は、難燃性、寸法安定性などが充分とはいえなかった。また、この発泡体の難燃性を向上させようとすると、面材を被着させた発泡体においては、発泡体と面材との接着性が劣るといった問題点を有していた。更に、この発泡体を実用に適したレベルの防火・断熱性能を備えた発泡ボードとして用いるには、比較的厚みのある鋼板などを面材として発泡体に被着させる必要があり、発泡ボードとしての取り扱い性が劣るものであった。
【0007】
したがって、本発明は、上記課題に鑑み、環境負荷が少なく、強度、難燃性、寸法安定性、及び面材との接着性に優れたポリイソシアヌレート発泡体及びそれを用いた発泡ボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するにあたって、芳香族ポリイソシアネート化合物(A)からなるイソシアネート成分と、水(B)と、ポリオール(C)を含むポリオール成分とを反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体であって、前記ポリオール(C)は、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)と、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)とからなるポリエステルポリオール(C‐3)を75〜100質量%含有する平均水酸基価が140〜220[KOHmg/g]のポリオールであり、イソシアネートインデックスが200〜300で、かつ、水(B)を、ポリオール(C)100質量部に対し3〜8質量部となるように、前記イソシアネート成分と、水(B)と、前記ポリオール成分とを反応させて得られたことを特徴とする。
【0009】
本発明のポリイソシアヌレート発泡体は、フロンや炭化水素などの発泡剤を使用していないので、原材料の取り扱い性が容易で、また、環境負荷が極めて少ないものである。そして、ポリオール(C)としてポリエステルポリオールを含む平均水酸基価が140〜220[KOHmg/g]のポリオールを用い、イソシアネートインデックスが200〜300で、かつ、水(B)を、ポリオール(C)100質量部に対し3〜8質量部となるように、前記イソシアネート成分と、水(B)と、前記ポリオール成分とを反応させて得られるので、難燃性及び面材との接着性が向上する。また、ポリエステルポリオールとして、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)と、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)とを併用しているので、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)によって、面材との接着性を向上させることができ、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)によって強度、寸法安定性を向上させることができ、更には面材との接着性も良好であることから、防火性に優れた発泡ボードなどとして好適に用いることができる。
【0010】
本発明のポリイソシアヌレート発泡体において、前記ポリエステルポリオール(C‐3)は、前記水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)と、前記水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)との質量比が、ポリエステルポリオール(C‐1)/ポリエステルポリオール(C‐2)で、0.3〜3であることが好ましい。これによれば、面材との接着性に優れたポリイソシアヌレート発泡体とすることができる。
【0011】
また、ポリオール(C)は、水酸基価が250〜400[KOHmg/g]のポリエーテルポリオール(C‐4)を更に含有し、ポリエーテルポリオール(C‐4)の含有量が5〜25質量%であることが好ましい。これによれば、ポリイソシアヌレート発泡体のシュリンクを防止でき、また、硬化が速やかに進むため、製造時のハンドリング性を向上させることができる。
【0012】
また、前記ポリイソシアヌレート発泡体は、リン酸エステル系難燃剤(D)を0.2〜3質量%するものであることが好ましい。このポリイソシアヌレート発泡体は、難燃性が極めて高く、面材として比較的薄膜なものを用いた発泡ボードであっても、防火・断熱性能に優れている。
【0013】
一方、本発明の発泡ボードは、上記ポリイソシアヌレート発泡体と、アルミニウム層を1層以上有し、かつ、前記アルミニウム層の合計厚みが3〜40μmであり、前記ポリイソシアネート発泡体に当接する面に樹脂層が形成されている面材とからなり、前記ポリイソシアヌレート発泡体の少なくとも一面に、前記面材が貼り付けられていることを特徴とする。上記ポリイソシアヌレート発泡体は、面材との接着性が良好であり、また、こうして得られた発泡ボードは優れた防火性を有していることから、ISO5660 コーンカロリーメータ試験に定められる不燃材料として用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フロンや炭化水素などの発泡剤を使用していないので、原材料の取り扱い性が容易で、また、環境負荷が極めて少なくなる。そして、ポリオール(C)としてポリエステルポリオールを含む平均水酸基価が140〜220[KOHmg/g]のポリオールを用い、イソシアネートインデックスが200〜300で、かつ、水(B)を、ポリオール(C)100質量部に対し3〜8質量部となるように、前記イソシアネート成分と、水(B)と、前記ポリオール成分とを反応させて得られるので、強度及び難燃性が向上し、更に、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)と、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)とを含むポリエステルポリオールを用いたことにより、面材との接着性にも優れている。したがって、このポリイソシアヌレート発泡体に面材を貼り付けることにより、防火・断熱性能が高く、取り扱い性や施工性にも優れた発泡ボードとして利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明におけるポリイソシアヌレート発泡体とは、芳香族ポリイソシアネート化合物(A)からなるイソシアネート成分と、水(B)と、ポリオール(C)を含むポリオール成分とを反応させて得られたものである。以下、本発明のポリイソシアヌレート発泡体の各成分について詳しく説明する。
【0016】
イソシアネート成分として用いる芳香族ポリイソシアネート化合物(A)としては、一般のウレタン系樹脂発泡体に使用するものであれば特に限定はなく、具体的には、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられ、なかでも、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI)が好ましい。そして、上記芳香族ポリイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上用いて混合物としてもよく、更には、脂肪族イソシアネート、又は脂環族イソシアネートと、上記イソシアネート化合物とを、ポリオールを用いて反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーや、イソシアネート化合物を三量体化させて得られたイソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物等を混合して使用しても良い。
【0017】
本発明のポリイソシアヌレート発泡体には水(B)を用いる。水(B)は、イソシアネート成分と、ポリオール成分とを混合する際に添加してもよく、また、後述するポリオール成分中に含有させて用いてもよい。
【0018】
本発明のポリイソシアヌレート発泡体のポリオール成分は、ポリオール(C)を少なくとも含有するものである。
ポリオール成分として用いるポリオール(C)の平均水酸基価は、140〜220[KOHmg/g]であることが必要であり、150〜210[KOHmg/g]が好ましい。ポリオール(C)の平均水酸基価が上記範囲内であれば、イソシアネート成分との混和性を損なうことがないので、ポリイソシアヌレート発泡体を生産性よく製造することができ、また、難燃性、寸法安定性、及び面材との接着性に優れたポリイソシアヌレート発泡体とすることができる。
【0019】
そして、本発明においては、ポリオール(C)として、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)と、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)とからなるポリエステルポリオール(C‐3)を用いる。
【0020】
イソシアネート成分と反応させるポリオール成分に用いるポリオールとして、ポリエステルポリオールを用いた場合、比較的難燃性に優れたポリイソシアヌレート発泡体を得ることができるが、面材との接着性が劣る傾向がある。しかし、本発明では、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)によって、面材との接着性を向上させることができ、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)によって強度、寸法安定性を向上させることができるので、難燃性、強度、寸法安定性、及び面材との接着性に優れたポリイソシアヌレート発泡体とすることができる。
【0021】
そして、ポリエステルポリオール(C‐1)の水酸基価は、90〜130[KOHmg/g]が好ましい。また、ポリエステルポリオール(C‐2)の水酸基価は、220〜280[KOHmg/g]が好ましい。
【0022】
また、ポリエステルポリオール(C‐3)の、ポリエステルポリオール(C‐1)とポリエステルポリオール(C‐2)との質量比は、ポリエステルポリオール(C‐1)/ポリエステルポリオール(C‐2)で、0.3〜3が好ましく、0.4〜2.5がより好ましい。ポリエステルポリオール(C‐1)と、ポリエステルポリオール(C‐2)とが、上記質量比であれば、難燃性、強度、及び面材との接着性に優れたポリイソシアヌレート発泡体とすることができる。
【0023】
そして、ポリオール(C)におけるポリエステルポリオール(C‐3)の含有量は、75〜100質量%であることが必要であり、80〜100質量%が好ましい。75質量%未満であると、得られるポリイソシアヌレート発泡体の強度、寸法安定性及び面材との接着性などの性能が劣りやすい。
【0024】
ポリエステルポリオール(C‐1)、ポリエステルポリオール(C‐2)として用いるポリオールの種類としては、上記水酸基価を有するものであれば特に限定は無く、2官能以上の多官能性ポリオールと、多塩基酸とを縮合させて得られた、末端あるいは側鎖に水酸基を2個以上有する芳香族ポリエステルポリオールが好ましい。
【0025】
多官能性ポリオールとしては、1);エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等、又は、これらにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドのアルキレンオキサイド類を付加重合した化合物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2官能ポリオール、2);トリメチロールプロパン、グリセリン等、又は、これらにアルキレンオキサイド類を付加重合した化合物等の3官能ポリオール、3);ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、糖類等、又は、これらにアルキレンオキサイド類を付加重合した化合物等の多官能ポリオール等が挙げられる。
【0026】
多塩基酸としては、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0027】
難燃性の観点からフタル酸と、2官能、3官能、あるいは多官能のアルコール類またはこれらのアルキレンオキサイド付加物の1種以上とを縮合させて得られたポリエステルポリオールが好ましく、テレフタル酸とジエチレングリコールとを縮合させて得られたポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0028】
ポリエステルポリオールの水酸基の含有量としては、2〜3個であることが好ましい。水酸基の含有量が2個以上であれば、得られるポリイソシアヌレート発泡体の寸法安定性が良好となり、また、4個より多いと面材との接着性が損なわれる虞れがあるので3個以下とすることが好ましい。
【0029】
本発明においては、ポリオール(C)として、上記ポリエステルポリオール(C‐3)の他に、ポリエーテルポリオール(C‐4)を併用しても良い。
【0030】
ポリエーテルポリオール(C‐4)を用いることで、ポリイソシアヌレート発泡体のシュリンクを防止でき、また、硬化が速やかに進むため製造時のハンドリング性を向上させることができる。
【0031】
ポリエーテルポリオール(C‐4)の水酸基価は、250〜400[KOHmg/g]が好ましい。ポリエーテルポリオール(C‐4)の水酸基価は、250[KOHmg/g]未満であると、上記効果が十分得られにくく、また、強度及び難燃性の劣るポリイソシアヌレート発泡体となる傾向にあり、400[KOHmg/g]を超えた場合、剛直なポリイソシアヌレート発泡体となる傾向にあり、面材との接着性が損なわれやすい。
【0032】
そして、ポリオール(C)中におけるポリエーテルポリオール(C‐4)の含有量は、5〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。5質量%未満であると、上記効果を発現させることが困難であり、25質量%を越えると、ポリイソシアヌレート発泡体の難燃性が低下しやすい。
【0033】
上記ポリエーテルポリオール(C‐4)に用いるポリオールの種類としては、上記水酸基価を有するものであれば特に限定はないが、3官能以上のポリオール(トリメチルプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等)に、アルキレンオキサイド類を付加重合した化合物が挙げられ、シュークローズに、グリセリンを付加し、これにアルキレンオキサイド類を付加重合させた化合物が好ましい。
【0034】
本発明のポリイソシアヌレート発泡体は、触媒を更に含有することが好ましい。触媒は、ポリオール成分と、水(B)と、イソシアネート成分とを混合する際に添加してもよく、また、あらかじめポリオール成分中に含有させておいてもよい。
【0035】
触媒としては、三量化触媒が好ましく、反応速度や成形性や断熱性を調整するため、泡化触媒や樹脂化触媒などと組み合わせて用いても良い。
【0036】
三量化触媒としては、例えば、1);酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム等の金属酸化物類、2);メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、プロポキシナトリウム、ブトキシナトリウム、メトキシカリウム、エトキシカリウム、プロポキシカリウム、ブトキシカリウム等のアルコキシド類、3);酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、シュウ酸鉄等の有機金属塩類、4);2,4,6‐トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N’,N”‐トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、トリエチレンジアミン等の3級アミン類、5);エチレンイミンの誘導体、6);アルカリ金属、アルミニウム、遷移金属類のアセチルアセトンのキレート類、4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独、又は2種以上を混合して使用することができ、なかでも、有機金属塩類や4級アンモニウム塩を使用することがより好ましい。
【0037】
また、泡化触媒としては、水とイソシアネート基との反応を促進する効果の高い触媒を用いることが好ましく、具体的には、N,N,N’,N’,N”‐ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2‐ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’‐トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N’,N”-トリス(3−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンが好ましい。
【0038】
また、N‐メチルモルフォリン、N‐エチルモルフォリン、4,4’‐オキシジメチレンジモルフォリン、N,N‐ジメチルアミノエチルモルフォリン等の分子内にモルホリン環を有する化合物(以下「モルホリン系化合物」とする)は、得られる発泡体の表面特性を改質し、面材との接着性を向上できるという理由から、好ましく採用することができ、モルホリン系化合物としては、沸点が200℃以下であるものが好ましい。
【0039】
そして、触媒の含有量は、生産速度などの条件に合わせて適宜調整することができ、ポリイソシアヌレート発泡体の全量に対し、1〜5質量%が好ましい。
【0040】
また、本発明のポリイソシアヌレート発泡体は、難燃剤(D)を更に含有するものであることが好ましい。そして、この難燃剤(D)は、ポリオール成分と、水(B)と、イソシアネート成分とを混合する際に添加してもよく、また、あらかじめポリオール成分中に含有させておいてもよい。
【0041】
難燃剤(D)としては、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、メラミンシアヌレート、メラミン等のメラミン系化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェノルホスフェート、クレジルジ2,6‐キシレニルホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等のリン酸エステル系化合物が挙げられるが、なかでも、リン酸エステル系化合物が好ましく、特に好ましくは、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェートである。
【0042】
また、本発明のポリイソシアヌレート発泡体は、整泡剤、減粘剤、面材接着性向上剤、気泡微細化剤等の各種添加剤を更に含有させてもよく、これらの添加剤は、ポリオール混合物と、水(B)と、イソシアネート組成物とを混合する際に添加してもよく、また、あらかじめポリオール混合物中に含有させておいてもよい。
【0043】
整泡剤としては、特に限定はなく、従来公知のノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が使用できる。そして、断熱性の観点から、発泡体の気泡径は小さいことが好ましいことより、気泡径が比較的小さくなる傾向の気泡核形成能の高い整泡剤が好ましい。このような整泡剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング社から市販されている「SF2937F」、「SF2938」等を好ましく利用できる。
【0044】
減粘剤としては、従来公知のものが使用でき、グリコールエーテル類、又は、これらにアルキレンオキサイド類を付加重合した化合物、低分子アルコール類、低粘度のリン酸エステル類等が挙げられる。また、面材接着性向上剤としては、従来公知のものが使用でき、グリコールエーテル類、又は、これらにアルキレンオキサイド類を付加重合した化合物、低分子アルコール類、低粘度のリン酸エステル類等が挙げられる。また、気泡微細化剤としては、従来公知のものが使用でき、縮合度の小さなポリアルキルポリシロキサン、パーフロロ化合物等が挙げられる。
【0045】
本発明のポリイソシアヌレート発泡体は、上記芳香族ポリイソシアネート化合物(A)からなるイソシアネート成分と、水(B)と、ポリオール(C)を少なくとも含有するポリオール成分とを、例えば汎用の高圧発泡機などを用い、衝突混合して混合液とし、該混合液を所定の寸法の金型などに入れて発泡硬化させることで得られる。
【0046】
この時、イソシアネートインデックスが200〜300となるように、イソシアネート成分と、水(B)と、ポリオール成分とを混合することが必要であり、イソシアネートインデックスは220〜300が好ましい。イソシアネートインデックスが200未満であると、ヌレート環の生成量が少なくなり、得られるポリイソシアヌレート発泡体の強度が不充分で、また、難燃性が劣りやすく、300を超えると、発泡体が剛直になりすぎて面材の接着性が劣り、また、硬化が不充分となったり、ボイドやしわ等が生じやすく成形性が劣るので、発泡ボード等として使用しにくい。
【0047】
また、水(B)は、ポリオール(C)100質量部に対し3〜8質量部となるようにイソシアネート成分と、水(B)と、ポリオール成分とを混合することが必要であり、4〜7質量部が好ましい。3質量部未満であると、発泡体が高密度になり重くなり、また、面材との接着性が劣ることがある。また、8質量部を超えると、密度の比較的低いポリイソシアヌレート発泡体となるため、強度、寸法安定性が低下する傾向がある。
【0048】
金型などの成形容器の温度としては、40〜90℃であることが好ましく、より好ましくは50〜80℃である。発泡硬化温度が40℃未満では硬化性が乏しく、製造時間を要し、90℃を超えると発泡体の表面が粗くなり、外観が劣るばかりでなく、面材との接着性が劣りやすい。
【0049】
そして、イソシネート成分と、水(B)及びポリオール成分との混合割合は、水(B)とポリオール成分との合計100質量部に対し150〜400質量部が好ましく、より好ましくは、200〜350質量部である。上記混合割合であれは、混合液の粘度が高くなりすぎることがないので、イソシアネート成分と、水(B)と、ポリオール成分との混和性が良好である。
【0050】
こうして得られたポリイソシアヌレート発泡体は、密度が25〜60kg/mで、熱伝導率が22〜36mW/mKで、独立気泡率が80%以上であり、高い断熱性を有するものである。そして、経時で発泡体が収縮することがないので寸法安定性にも優れており、更には、ボイドやしわなどの発生が極めて少ないため、成形性の良いものでもある。
【0051】
次に、本発明の発泡ボードについて説明する。
【0052】
本発明における発泡ボードは、上記本発明のポリイソシアヌレート発泡体の外周の少なくとも一面に、面材を貼り付けたものである。
【0053】
そして、本発明の発泡ボードは、例えば、連続ラミネータを用いて、連続して供給される面材(下面材)の上に、上記イソシアネート成分とポリオール成分とを混合した発泡液を吐塗し、同時に発泡液の上に面材(上面材)を配置してサンドイッチして、発泡硬化させるなどの方法によって得ることができる。
【0054】
本発明の発泡ボードで使用する面材としては、ポリイソシアヌレート発泡体と当接する面にポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂層を有し、かつ、アルミニウム層を少なくとも1層以上有するものである。また、樹脂層と、アルミニウム層との間には、クラフト紙、不織布、織布などの繊維層を介在させたものでもよい。
【0055】
樹脂層としては、ポリイソシアヌレート発泡体との接着性等を考慮すると、ポリエチレン樹脂層であることが好ましい。
【0056】
また、アルミニウム層の厚みは、合計して3〜40μmであることが好ましく、より好ましくは9〜40μmである。3μm以上であれば、断熱性を向上させることができ、9μm以上とすることで、本発泡体と組み合わせ、ISO5660に定められた難燃材料として用いることができる。なお、アルミニウム層の厚みは40μmよりも大きくしても、コストや重量が増加するばかりで、さほど効果は向上しないため、40μm以下とすることが好ましい。
【0057】
上記面材を貼り付けた発泡ボードは、難燃性、断熱性に優れたものであり、更には、ISO5660 コーンカロリーメータ試験で定められた不燃材料として用いることもできる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0059】
[発泡ボードの製造]
各原料を表1に示した割合で混合し、ラボミキサーを用いて、回転数5000rpmにて5秒間攪拌した。その後、上下面にポリエチレン樹脂塗膜の形成された面材が設置され、65℃に加温された、内寸法500mm×500mm×48mmのサイド部開放アルミ製のモールドにこの混合液を注入し、6分後脱型して、実施例1〜9、比較例1〜7の発泡ボードを得た。




























【0060】
【表1】

【0061】
[評価項目]
(熱伝導率の劣化量)
得られた試験体を1日間室温でエージングした後、面材を残して200×200mmに切出し、JIS A 1412に準拠した方法で行い、平均温度20℃にて熱伝導率(初期値)を測定した。その後、この試験体を25℃、湿度50%の状態で1ヶ月間エージング後、同様にして熱伝導率(1カ月後)を測定し、熱伝導率(初期値)との差分を求めた。
【0062】
(寸法安定性)
JIS A 9511に準拠した方法で行い、発泡体の湿熱条件(温度;60℃、湿度;95%)における厚み方向の寸法変化率を測定した。寸法変化率が1%未満であれば◎、1〜2%であれば○、2〜3%であれば△、3%以上であれば×とした。
【0063】
(面材との接着性)
得られた試験体の面材に、100mm×100mm角の切り目を入れ、その面材の一辺を発泡体から5mm剥離させ、剥離した部分にクリップを取付けた。その後、クリップを、面材の垂直方向に引張り、発泡体から、面材を剥離させ、その時の最大荷重を測定した。最大荷重が2.0kgf以上であれば◎、1.5〜2.0kgfであれば○、1.0〜1.5kgfであれば△、1.0kgf未満であれば×とした。
【0064】
(外観)
得られた試験体をそれぞれ1日間放置し、発泡体の表面状態を観察し、ボイドの数や大きさ、しわの発生の有無、凸凹具合などを目視で観察した。
【0065】
(防火性試験)
得られた試験体をそれぞれ1日間放置し、面材を残して100×100mmに切出し、IOS 5660 コーンカロリーメータ試験に準拠した方法で、総発熱量を測定した。総発熱量が3MJ/m未満であれば◎、3〜9MJ/mであれば○、10〜14MJ/mであれば△、15MJ/m以上であれば×とした。
【0066】
(不燃性試験)
ISO 5660 コーンカロリーメータ試験に準拠した方法で行い、下記(1)〜(3)の基準を満たすことができれば合格とした。
(1)加熱開始後20分間の総発熱量が、8MJ/m以下であること。
(2)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと。
(3)加熱開始後20分間、最高発熱速度が、10秒以上継続して200kW/mを超えないこと。
【0067】
実施例1〜9、比較例1〜7について上記試験を行い、結果を表2にまとめて記す。










【0068】
【表2】

【0069】
上記結果より、ポリオール(C)として、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)と、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)とを併用していない比較例1、3〜5、7の発泡体及び、ポリオール(C)の平均水酸基価が220[KOHmg/g]を超える比較例2の発泡体は、面材との接着性の劣るものであった。なお、比較例6の発泡体も上記ポリエステルポリオールを併用していないが、ポリエーテルポリオールを併用したことにより、面材との接着性は改善している。しかしながら、比較例6は、防火性及び難燃性の劣るものであり、発泡ボードとしての使用に適しにくいものであった。
【0070】
また、イソシネートインデックスが200を下回っている比較例2,6,7は、防火性、難燃性の劣るものであり、発泡ボードとしての使用に適しにくいものであった。
【0071】
一方、ポリオールとして、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオールと、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオールとからなるポリエステルポリオールを含有する平均水酸基価が140〜220[KOHmg/g]のポリオールを用い、イソシアネートインデックスが200〜300となるように、イソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られた実施例1〜9の発泡体は、面材との接着性や難燃性、防火性に優れたものであり、特に、リン酸エステル系難燃剤(D)を0.2〜3質量%含有している実施例1〜6、9の発泡体を用いた発泡ボードは、難燃性及び防火性の極めて優れたものであり、ISO 5660 コーンカロリーメータ試験に定められる不燃材料として用いることのできるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のポリイソシアヌレート発泡体は、環境負荷の少ない断熱材として利用でき、住宅用パネル等の建材として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリイソシアネート化合物(A)からなるイソシアネート成分と、水(B)と、ポリオール(C)を含むポリオール成分とを反応させて得られるポリイソシアヌレート発泡体であって、
前記ポリオール(C)は、水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)と、水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)とからなるポリエステルポリオール(C‐3)を75〜100質量%含有する平均水酸基価が140〜220[KOHmg/g]のポリオールであり、
イソシアネートインデックスが200〜300で、かつ、水(B)を、ポリオール(C)100質量部に対し3〜8質量部となるように、前記イソシアネート成分と、水(B)と、前記ポリオール成分とを反応させて得られたことを特徴とするポリイソシアヌレート発泡体。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール(C‐3)は、前記水酸基価が70〜150[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐1)と、前記水酸基価が200〜300[KOHmg/g]のポリエステルポリオール(C‐2)との質量比が、ポリエステルポリオール(C‐1)/ポリエステルポリオール(C‐2)で、0.3〜3である請求項1に記載のポリイソシアヌレート発泡体。
【請求項3】
前記ポリオール(C)は、水酸基価が250〜400[KOHmg/g]のポリエーテルポリオール(C‐4)を更に含有し、該ポリエーテルポリオール(C‐4)の含有量が5〜25質量%である請求項1又は2に記載のポリイソシアヌレート発泡体。
【請求項4】
更に、リン酸エステル系難燃剤(D)を0.2〜3質量%含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリイソシアヌレート発泡体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載のポリイソシアヌレート発泡体と、アルミニウム層を1層以上有し、かつ、前記アルミニウム層の合計厚みが3〜40μmであり、前記ポリイソシアネート発泡体に当接する面に樹脂層が形成されている面材とからなり、前記ポリイソシアヌレート発泡体の少なくとも一面に、前記面材が貼り付けられていることを特徴とする発泡ボード。
【請求項6】
ISO5660 コーンカロリーメータ試験に定められる不燃材料である請求項5に記載の発泡ボード。

【公開番号】特開2007−99822(P2007−99822A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288490(P2005−288490)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000116792)旭ファイバーグラス株式会社 (101)
【Fターム(参考)】