説明

ポリイソシアネートの製造方法

【課題】ポリイソシアネートの色相を十分に改善すると共に、精製時における沈降物の生成を抑制することのできるポリイソシアネートの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアミンをホスゲンと反応させて得られる反応液を60〜230℃でゼオライトと接触させる接触工程と、前記接触工程においてゼオライトと接触させた後の反応液を180〜230℃で加熱する加熱工程とを備える、ポリイソシアネートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイソシアネートの製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、着色の少ないポリイソシアネートを製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートは、工業的にはポリアミン混合物を溶媒の存在下、ホスゲンと反応させることによって製造されており、続いて減圧蒸留によって留出成分と不留出成分を分離する。この方法によって得られた不留出成分は、不純物として酸分や加水分解性塩素含有化合物を含んでおり、これら不純物が多いとウレタン製造時の反応性が悪くなることが知られている。これらの不純物を低減する方法としては、減圧下180〜230℃の加熱処理が行われている。しかし、この高温処理ではポリイソシアネートの色相が悪化し、これがウレタン製品の着色原因になるため、着色が小さいポリイソシアネートの製造法の開発が望まれている。
【0003】
ポリイソシアネートの色相改善については、数多くの報告がある(例えば、特許文献1及び特許文献2)が、ポリアミンとホスゲンの反応物を、塩化水素ガス存在下、加熱処理を行う方法が工業的に有効とされている。
【0004】
一方、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、場合により「MDI」と記載する。)を、少なくとも100m/gの内部表面積を有する微孔質吸着剤で処理し、鉄含有量を減少させる方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特公昭57−15827号公報
【特許文献2】特許第3229714号公報
【特許文献3】特開平8−99946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記方法でもポリイソシアネートの色相改善は十分でなく、より一層の色相改善が望まれている。また、製造するポリイソシアネート中に、溶解性の低い成分が含まれていると、常温まで冷却したときに沈降物を生じてしまう問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ポリイソシアネートの色相を十分に改善すると共に、精製時における沈降物の生成を抑制することの可能なポリイソシアネートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、着色の少ないポリイソシアネートを製造する方法を鋭意検討した結果、ポリイソシアネート反応液をゼオライト存在下で所定温度で加熱した後、所定温度で再加熱することで、色相が大幅に改善されると共に、沈降物も抑制可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリアミンをホスゲンと反応させて得られる反応液を60〜230℃でゼオライトと接触させる接触工程と、接触工程においてゼオライトと接触させた後の反応液を180〜230℃で加熱する加熱工程と、を備える、ポリイソシアネートの製造方法を提供する。
【0010】
本発明の製造方法により、色相が大幅に改善されると共に沈降物が抑制されたポリイソシアネートが得られる。本発明者らは、特定の理論に拘束されるものではないが、色相の改善は、接触工程において反応液をゼオライト存在下60〜230℃で加熱することに起因するものと考える。また、加熱工程において180〜230℃で加熱することは沈降物の抑制に寄与しているものと推測される。なお、本発明の方法はエネルギー消費の点でも従来法に比べて格段に優れている。すなわち、従来はホスゲンや塩化水素を完全に除去した後に、再度色相改善のため塩化水素等を加えて精製することによりエネルギー消費の点で不利であったが、本発明では再度塩化水素ガスを加えることなく、色相改善を図ることができることから、エネルギー消費を低く抑えることができる。
【0011】
本発明において使用するゼオライトは、SiO/Al(モル比)が5/1〜500/1のゼオライトであることが好ましい。このようなゼオライトは、塩化水素やホスゲン等に対して十分な耐久性を有するため、色相改善効果が十分に発揮される。
【0012】
上記反応液は溶媒を含んでおり、接触工程において、溶媒及び/又は未反応のホスゲンが除去されることが好ましい。このような構成により、色相改善と不純物除去が同時に進行するため、エネルギー的にも色相改善効率の点からも有利である。
【0013】
上述した効果が顕著に発揮されることから、接触工程において、上記反応液を100〜160℃にてゼオライトと接触させることが好ましい。
【0014】
本発明で好適に用いられるポリアミンは、アニリンとホルムアルデヒドの付加縮合により得られるポリアミンであって、アニリンに由来する骨格の数が異なるものの混合物である。このようなポリアミンとしては、メチレンジアニリンやその高級類似体(多核体)が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、色相に優れる(すなわち、着色が極めて少ない)と共に、精製時における沈降物の生成が抑制されたポリイソシアネートを製造でき、ポリイソシアネートの製造方法として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明のポリイソシアネートの製造方法は、ポリアミンをホスゲンと反応(ホスゲン化)させて得られる反応液を60〜230℃でゼオライトと接触させる接触工程と、接触工程においてゼオライトと接触させた後の反応液を180〜230℃で加熱する加熱工程とを備える。
【0018】
接触工程においてホスゲン化反応に使用されるポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂環式ポリアミン等いずれの骨格を有するポリアミンも用いることができる。反応性や安全性に優れるポリイソシアネートを得ることができることから、本発明では、アニリンとホルムアルデヒドの付加縮合により得られるポリアミン、すなわち、下記一般式(1)で表されるポリアミンを用いることが好ましい。式中nは、0又は1以上の数を表す。
【化1】

【0019】
上記において、n=0の場合は、一般式(1)で表されるポリアミンはメチレンジアニリン(MDA)であり2核体に相当する。また、n=1の場合は3核体、n=2の場合は4核体であり、n=mの場合は(m+2)核体となる。一般式(1)で表されるポリアミンは、アニリンに由来する骨格(1つのアミノ基と1つのベンゼン環からなる骨格)の数が異なるものの混合物であってもよい。すなわち、2核体、3核体、4核体、5核体及びそれ以上の多核体の混合物であってもよい。
【0020】
ホスゲン化は、ポリアミンを反応溶媒である不活性溶媒に溶解させ、これにホスゲンを導入することによって行うことができる。不活性溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロロトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルイソブチル等のケトン類等が挙げられる。ホスゲン化は、塩酸塩法、冷熱2段法、ホスゲン加圧法等の方法を用いて行うことができ、工業的見地からは、連続的に反応を生じさせる方法が好ましい。
【0021】
ホスゲン化を塩酸塩法で行う場合は、上述した不活性溶媒中にポリアミンを溶解させ、この溶媒の沸点以下の温度で塩化水素ガスを導入し、ポリアミンの塩酸塩を形成させ、更にホスゲンガスを導入して、例えば100〜180℃でホスゲン化反応を生じさせることができる。
【0022】
ホスゲン化を冷熱2段法で行う場合は、上述した不活性溶媒中にポリアミンを溶解させ、その溶液にポリアミンの5〜20倍モル程度のホスゲンを導入し、例えば0〜90℃で第1段の反応を行い、続いて、ポリアミンに対して0.5〜10倍モル程度のホスゲンの存在下、例えば100〜150℃で第2段の反応を行う。
【0023】
ホスゲン化をホスゲン加圧法で行う場合は、ポリアミンをその沸点又は沸点以上の温度に加熱し、例えば100〜500kPaの圧力下でホスゲン(ポリアミンの1〜10倍モル程度)を窒素やアルゴン等のキャリアガスとともに導入して反応を行うことができる。
【0024】
接触工程においては、ポリアミンをホスゲン化させて得られる反応液を60〜230℃でゼオライトと接触させる前に、残存ホスゲンと反応溶媒の含有量を低減させることが好ましい。
【0025】
残存ホスゲンと反応溶媒の含有量を低減させる方法としては、ポリアミンをホスゲン化させて得られる反応液に、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを装入する方法や、減圧下で反応溶媒の沸点まで加熱する方法(減圧法)が挙げられ、コストの点からは減圧法が好ましい。この場合において、反応液中の残存ホスゲン量が100ppm程度、残存反応溶媒量が10%程度まで、含有量の低減を行うことが好ましい。
【0026】
残存ホスゲンと反応溶媒の含有量の低減は、低減効率とポリイソシアネートの色相を維持するため、100〜160℃で加熱することにより行われることが好ましい。160℃より高い温度で長時間加熱を続けると、ポリイソシアネートの色相が悪化する場合があり、100℃より低い温度では低減の効率が不十分になる場合がある。
【0027】
ポリアミンをホスゲンと反応させて得られる反応液は、好ましくは、残存ホスゲンを100ppm、残存反応溶媒を10%程度まで低減させた後、ゼオライト存在下、60〜230℃で加熱される。ゼオライト存在下の加熱は、製造プロセスの流れから100〜160℃で行うのが、エネルギー消費の点で有利である。加熱温度が60℃より低くなると、色相改善効果が低下する傾向があり、230℃より高くなると、ポリイソシアネートが熱分解し色相が悪化する傾向がある。
【0028】
前記接触工程における加熱処理の温度は、100〜200℃がより好ましく、100〜160℃が特に好ましい。加熱は、水分等の混入を防ぐため、窒素等不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましい。
【0029】
このような加熱処理を行う場合、ゼオライトは、バッチ様式、連続様式又は半連続様式で使用できるが、工業的に実施する場合の設備面、省力面等から連続様式が好ましい。
【0030】
ゼオライトの使用量は、バッチ様式では反応液100質量部に対し0.01〜10質量部の範囲である。処理時間は処理温度によって異なり、ゼオライトの使用量によっても異なるが、通常150℃で20分程度を与えるとよい。
【0031】
接触工程で用いられるゼオライトは、天然ゼオライトであっても合成ゼオライトであってもよいが、組成や細孔の均一性の点からは、合成ゼオライトが好ましい。天然ゼオライトとしては、チャバサイト、モルデナイト、エリオナイト、ホージャサイト、クリノプチロライト等が挙げられ、合成ゼオライトとしては、A型、B型、D型、L型、X型、Y型、Z型、オメガ型(Omega型)、ベータ型(Beta型)、モルデナイト型(Mordenite型)、フェリエライト型(Ferrierite型)等が挙げられる。合成ゼオライトとしては、ベータ型(Beta型)、モルデナイト型(Mordenite型)が好ましい。
【0032】
接触工程で用いられるゼオライトは、SiO/Al(モル比)が5/1〜500/1のゼオライトであることが好ましい。すなわち、ゼオライトは、その組成をM2/XO・Al・mSiO・nHO(ここで、Mはx価の金属元素、xはMの価数、mは2以上の数、nは0以上の数を示す)と表したときに、SiO/Al(モル比)が5/1〜500/1となるゼオライトであることが好ましい。なお、Mとしては、Na、K、Ca、Ba、Mg等の金属元素が挙げられ、xとしては1又は2が挙げられる。なお、nはM2/XO・Al・mSiOで表される化合物の骨格における空隙に含まれる水分子の数に従って決定される数であり、例えば、10〜300の値(13、16、21、22、24、27、235、250、264等)をとることができる。
【0033】
SiO/Alのモル比が5/1より小さい場合、塩化水素やホスゲン等の酸に対する耐久性が劣る傾向にある。また、SiO/Alのモル比が500/1より大きい場合、塩化水素やホスゲン等の酸に対する耐久性は向上するが、色相改善効果が小さくなる傾向にある。
【0034】
ゼオライトのカチオンタイプは、プロトン型が好ましい。ナトリウム型やカルシウム型等の金属型では、ポリイソシアネート成分中にこれらの金属が溶出し、製品の反応性や貯蔵安定性に不具合を生じる場合がある。
【0035】
ゼオライトは粒子状であることが好ましく、その平均粒径は2〜20μmが好ましい。ゼオライトのBET値は、150〜800m/gが好ましく、200〜800m/gであることがより好ましく、400〜600m/gが更に好ましい。
【0036】
アミンのホスゲン化反応は、R−NH+COCl→R−NCO+2HClで表すことができるが、副反応として、R−NH+COCl→R−NHCOCl+HCl、R−NH+HCl→R−NH・HCl、R−NH+R−NCO→R−NHCONH−R等が考えられる(Rはイソシアネート残基であり、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基等が挙げられる)。このような副反応で生じる物質は、接触工程中に除かれることが好ましい。
【0037】
ポリアミンとして、上記一般式(1)で表されるポリアミンを用いた場合、ホスゲンとの反応で得られる物質は下記一般式(2)で表されるポリイソシアネートである。式中nは、0又は1以上の数を表す。
【化2】

【0038】
一般式(1)で表されるポリアミンが多核体の混合物であった場合、得られるポリイソシアネートも多核体の混合物となる。一般式(2)で表されるポリイソシアネートは、n=0のときは、モノメリックMDIであり(2核体)、n≧1のときはポリメリックMDIである(3核体以上)。この場合、得られるポリイソシアネートは、n=0の2核体であるモノメリックMDIとn≧1の3核体以上であるポリメリックMDIからなる混合物である。
【0039】
以上説明した接触工程の後、ゼオライトと接触させた後の反応液を180〜230℃で加熱する加熱工程を実施する。
【0040】
加熱工程では、反応液からゼオライトを除去して180〜230℃に加熱することが必要であるが、そのためには反応液の上澄みを採取すればよい。また加熱温度は、190〜230℃がより好ましく、200〜230℃が更に好ましい。なお、加熱温度は180〜230℃になっていればよく、この範囲内で昇温又は降温があってもよい。加熱は、水分等の混入を防ぐため、窒素等不活性気体の雰囲気下で行うことが好ましい。
【0041】
このような加熱工程を行うことで、生成したポリイソシアネートの色相改善をより確実にすることができるだけでなく、反応液中に生じる溶解性の低い微量成分の沈降を抑制(沈降物の発生を抑制)することができる。このように、溶解性の低い微量成分の沈降が抑制される理由は必ずしも明らかではないが、生成した微量成分が加熱により分解することが考えられる。なお、230℃より高い温度に反応液を加熱した場合、上記微量成分のみならず、本発明の目的とするポリイソシアネート自体も分解が生じるので避けるべきである。また、180℃より低い温度で反応液を加熱した場合、上記微量成分の分解が不十分になること等に基づいて沈降物が生じるようになるので避けるべきである。
【0042】
加熱時間は特に制限されず、例えば1分〜30分とすることができるが、変性や分解等を防ぐために10分以内で終了させることが好ましい。上記の効果を確実に奏させるとともに過剰な加熱を防止するために、加熱時間は5〜10分が好ましい。
【0043】
加熱工程実施後に得られるポリイソシアネートは着色が極めて少ないものであり、製造時の沈降物の生成が抑制されているので純度が高い。したがって、例えば、ポリウレタンの製造に用いれば、着色が抑えられた淡色のポリウレタンを得ることができ、また性能の安定性も向上する。
【0044】
本発明のポリイソシアネートの製造方法は、上述した接触工程と加熱工程を備えるものであればよく、その工程の前後又は間に他の工程を備えるものであってもよい。例えば、接触工程と加熱工程の間に、ゼオライトと接触させた後の反応液を保管する保管工程を実施してもよく、加熱工程の後に、室温付近(例えば30℃)まで急冷する工程を実施してもよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。但し、本発明はこれらの例によって何ら限定して解釈されるものではない。なお、以下においては特段の記載がない限り、「%」は「質量%」を示す。
【0046】
ポリアミン混合物を溶媒の存在下でホスゲンと反応させる工程、次いで、減圧蒸留により留出成分と不留出成分を分離する工程を経て、以下に示すポリイソシアネート(以下「原料ポリMDI」と略記する。)を得た。この原料ポリMDIを用いて、以降に示す各実施例並びに各比較例を行った。
【0047】
<原料ポリMDIの詳細>
MDIのピーク面積(PA)比(GPCによる測定)
二核体:三核体:四核体:五核体以上=66.4:16.7:6.9:10.0PA%
ここで、核体とは分子中のベンゼン環のことを示す。
例えば、二核体とはベンゼン環を分子内に二つ有するMDIを示す。
MDI中の4,4’−MDIの割合(GCによる測定)=98.7PA%、MDI中の4,4’−MDI以外の異性体(2,4’−MDI並びに2,2’−MDI)の割合(GCによる測定)=1.3PA%
ホスゲン含有量=100ppm
モノクロルベンゼン含有量=8%
【0048】
実施例並びに比較例中、ポリイソシアネートの色相は以下のようにして測定した。
<溶液色相測定方法>
450mlの無色透明瓶に試料2gとアセトン400mlを加え溶解し、23℃で溶液の色相を目視にて測定した。値はAPHA(ハーゼン単位色数)で示した。なお、原料ポリMDIの溶液色相は10APHAであった。
【0049】
実施例並びに比較例中、沈降物の有無を目視確認にて評価した。
(実施例1)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト930HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、150℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は20APHAであった。
【0050】
(実施例2)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト660HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、150℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は20APHAであった。
【0051】
(実施例3)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト640HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、150℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は20APHAであった。
【0052】
(実施例4)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト690HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、150℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は30APHAであった。
【0053】
(実施例5)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト390HUA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、150℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は30APHAであった。
【0054】
(実施例6)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト320HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、150℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、溶液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は30APHAであった。
【0055】
(実施例7)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト930HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、100℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は30APHAであった。
【0056】
(実施例8)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト930HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、160℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は20APHAであった。
【0057】
(実施例9)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト930HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、60℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は40APHAであった。
【0058】
(実施例10)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト930HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、230℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は40APHAであった。
【0059】
(比較例1)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g加え、窒素雰囲気下、150℃で20分間、150rpmで攪拌した。溶液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、溶液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は80APHAであり、本発明の実施例1〜10に比べ、溶液色相が劣る。
【0060】
(比較例2)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g加え、塩化水素ガス100ml/分をバブリングしながら、150℃で20分間、150rpmで攪拌した。溶液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、溶液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は60APHAであった。
【0061】
(比較例3)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト930HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、23℃で20分間、150rpmで攪拌した。上澄み液50mlをあらかじめ220℃に加熱しておいたステンレス製の100ml容器に加え、50ml/分の窒素でバブリングしながら7分間放置した。次にこの容器を氷浴に浸し、液温度が30℃になるまで急冷した。この処理液には沈降物が確認されなかった。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は80APHAであった。
【0062】
(比較例4)
留出口を備えた300mlの4つ口セパラブルフラスコに原料ポリMDIを200g及びゼオライト930HOA(東ソー社製)を10g加え、窒素雰囲気下、150℃で20分間、150rpmで攪拌した。その後、加熱を停止して放置した。24時間後の液温は30℃であった。この処理液には沈降物が確認された。その後、この処理液をろ過し、試料を得た。得られた試料の溶液色相は20APHAであった。
【0063】
実施例1〜10、比較例1〜4について、以下の表1〜3にまとめて示す。なお、実施例並びに比較例において用いた各ゼオライトの詳細は、以下のとおりである。
【0064】
<ゼオライト930HOA>
Beta型ゼオライト
商品名「HSZ−930HOA」(東ソー(株)製)
カチオンタイプ: H
SiO/Al(モル比): 27/1
NaO含有量(質量%): 0.03
表面積(BET,m/g): 600
結晶サイズ(μm): 0.04
平均粒径(μm): 5
【0065】
<ゼオライト660HOA>
Mordenite型ゼオライト
商品名「HSZ−660HOA」(東ソー(株)製)
カチオンタイプ: H
SiO/Al(モル比): 33/1
NaO含有量(質量%): 0.03
表面積(BET,m/g): 400
結晶サイズ(μm): 0.1×0.5
平均粒径(μm): 13
【0066】
<ゼオライト640HOA>
Mordenite型ゼオライト
商品名「HSZ−640HOA」(東ソー(株)製)
カチオンタイプ: H
SiO/Al(モル比): 18/1
NaO含有量(質量%): 0.05
NHN−TPD(mmol/g): 0.7
表面積(BET,m/g): 400
結晶サイズ(μm): 0.1×0.5
平均粒径(μm): 13
【0067】
<ゼオライト690HOA>
Mordenite型ゼオライト
商品名「HSZ−690HOA」(東ソー(株)製)
カチオンタイプ: H
SiO/Al(モル比): 240/1
NaO含有量(質量%): 0.05
NHN−TPD(mmol/g): 0.2
表面積(BET,m/g): 450
結晶サイズ(μm): 0.1×0.5
平均粒径(μm): 13
【0068】
<ゼオライト390HUA>
Y型ゼオライト
商品名「HSZ−390HUA」(東ソー(株)製)
カチオンタイプ: H
SiO/Al(モル比): 470/1
NaO含有量(質量%): 0.05
ウルトラ・クリーン・コール(ASTM): 24.26
NHN−TPD(mmol/g): 0.1
表面積(BET,m/g): 620
結晶サイズ(μm): 0.3
【0069】
<ゼオライト320HOA>
Y型ゼオライト
商品名「HSZ−320HOA」(東ソー(株)製)
カチオンタイプ: H
SiO/Al(モル比): 5/1
NaO含有量(質量%): 4
ウルトラ・クリーン・コール(ASTM): 24.50
NHN−TPD(mmol/g): 0.7
表面積(BET,m/g): 550
結晶サイズ(μm): 0.3
平均粒径(μm): 6
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により得ることが可能となった、着色の極めて少ないポリイソシアネートは、このポリイソシアネートを原料とする分野(バインダー等)、又は、このポリイソシアネートを原料として得られるポリウレタン樹脂が用いられるあらゆる分野(発泡体、塗料、接着剤、シーラント、エラストマー等)において、低着色が要求される場合に有用である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミンをホスゲンと反応させて得られる反応液を60〜230℃でゼオライトと接触させる接触工程と、前記接触工程においてゼオライトと接触させた後の反応液を180〜230℃で加熱する加熱工程と、を備える、ポリイソシアネートの製造方法。
【請求項2】
前記ゼオライトは、SiO/Al(モル比)が5/1〜500/1のゼオライトである、請求項1記載のポリイソシアネートの製造方法。
【請求項3】
前記反応液は溶媒を含んでおり、接触工程において、前記溶媒及び/又は未反応の前記ホスゲンが除去される、請求項1又は2に記載のポリイソシアネートの製造方法。
【請求項4】
前記接触工程において、前記反応液を100〜160℃で前記ゼオライトと接触させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリイソシアネートの製造方法。
【請求項5】
前記ポリアミンは、アニリンとホルムアルデヒドの付加縮合により得られるポリアミンであって、アニリンに由来する骨格の数が異なるものの混合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリイソシアネートの製造方法。


【公開番号】特開2009−203198(P2009−203198A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48214(P2008−48214)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】