説明

ポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、及びそれを含有するポリイソシアネート接着剤組成物

【課題】合成ボード製造時における熱圧縮工程前の初期成形性と、熱圧縮成型時の高反応性を両立させることが可能なポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、及びそのアミン触媒を含有するポリイソシアネート接着剤組成物の提供。
【解決手段】


[R及びRは各々独立して、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、第三級アミノ基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、第三級アミノ基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、水酸基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、又は水酸基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基若しくは水酸基を有する炭化水素基、m及びnは各々独立して、1〜6の範囲の整数。]で示される環状アミン化合物をポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、及びそれを含有するポリイソシアネート接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物のデッキ、テラス、フェンス、手摺り、柱、ベンチ等に使用される建築資材や、車両の内装品であるドアの内張りの芯材、トランクルームの床に敷かれるパネルの芯材、等に、合成ボード(合成板)が用いられている。この合成ボードは、木材等の小片を接着剤と混合し熱圧縮成型して得られる合成素材であり、例えば、配向性ストランドボード(OSB)、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質の合成ボードや、フォーム屑、ゴム粉砕物、紙、布、もみ等から成型される合成ボード、更には各種植物繊維から成型されるボード、無機系軽量骨材を成型して得られる合成ボードが知られている。
【0003】
従来、これらの合成ボードの製造時に用いられる汎用接着剤としては、尿素樹脂、尿素メラミン樹脂、フェノール樹脂が主に使用されているが、これらの汎用接着剤を用いた合成ボードからは、シックハウス症候群の原因物質の一つであるホルムアルデヒドが放散するという問題があった。
【0004】
その対策として、有機ポリイソシアネート化合物とその硬化触媒である第3級アミン化合物を含有する接着剤組成物を使用することが試みられている。有機ポリイソシアネート系接着剤を用いる場合、一般的に、木材等の小片と接着剤組成物との混合物の可使時間が比較的短いため、合成ボード製造時の作業性が悪化する問題がある。この可使時間の延長は触媒量の低減により可能とはなるものの、それにより、合成ボードの物性が低下したり、熱圧縮時間の増大によって生産性が低下するという問題が生じる。
【0005】
このような問題を解決するため、有機ポリイソシアネート系接着剤に用いられる触媒に常温では触媒活性が少ないが、成形温度に応じた特定温度で触媒活性を発揮する触媒(感温性触媒)が用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0006】
特許文献1には、このような感温性触媒として、環状アミン化合物の有機酸塩触媒が記載されているが、この触媒では、アミン化合物に比べてポリイソシアネート化合物への溶解性に劣り、接着剤組成物に均一分散しにくく、均一な反応性が得られない場合があった。また、特許文献2には、ギ酸(及び必要に応じて炭素数2〜20の脂肪族モノカルボン酸)及び脂肪族三級アミンの複合体からなる触媒が記載されているが、この触媒は、ギ酸による装置腐食の問題を有しており、代替品が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−35918号公報
【特許文献2】特開2002−69417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、合成ボード製造時における熱圧縮工程前の初期成形性と、熱圧縮成型時の高反応性を両立させることが可能なポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、及びそのアミン触媒を含有するポリイソシアネート接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、特定の構造を有する環状アミン化合物をポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒として用いると、有機酸塩にする必要もなく、合成ボード製造時における熱圧縮工程前の初期成形性と、熱圧縮成型時の高反応性を両立できるという優れた効果をもつことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの、ポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、及びそれを含有するポリイソシアネート接着剤組成物である。
【0011】
[1]下記式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
[上記式(1)中、R及びRは各々独立して、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、第三級アミノ基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、第三級アミノ基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、水酸基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、又は水酸基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。m及びnは各々独立して、1〜6の範囲の整数を表す。]
で示される環状アミン化合物を含有するポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【0014】
[2]上記式(1)で示される環状アミン化合物の環状構造が、ピラゾリジン構造、イミダドリジン構造、ヘキサヒドロピリダジン構造、ヘキサヒドロピリミジン構造、ピペラジン構造、1,2−ジアゼパン構造、1,3−ジアゼパン構造、及び1,4−ジアゼパン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【0015】
[3]上記[1]に記載の第三級アミノ基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基が、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、1−(ジメチルアミノ)エチル基、1−メチル−1−(ジメチルアミノ)エチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、及びジエチルアミノプロピル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【0016】
[4]上記[1]に記載の水酸基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基が、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシエチル基、及び1−メチル−1−ヒドロキシエチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記[1]又は[2]記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【0017】
[5]上記[1]に記載の上記式(1)で示される環状アミン化合物が、1,4−ジメチルピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−メチルピペラジン、及びN−(2−ヒドロキシエチル)−N’−メチルピペラジンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【0018】
[6]さらに第3級アミン類を含有することを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれか記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【0019】
[7]上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒と有機ポリイソシアネート化合物とを含有するポリイソシアネート接着剤組成物。
【0020】
[8]有機ポリイソシアネート100重量部に対し、上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒を0.1〜10重量部の範囲で含有することを特徴とする上記[7]に記載のポリイソシアネート接着剤組成物。
【0021】
[9]上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、有機ポリイソシアネート化合物、及び活性水素基含有化合物を含有することを特徴とするポリイソシアネート接着剤組成物。
【0022】
[10]有機ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物との合計で100重量部に対し、上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒を0.1〜10重量部の範囲で含有することを特徴とする上記[7]に記載のポリイソシアネート接着剤組成物。
【0023】
[11]木質片、フォーム屑、ゴム粉砕物、紙、布、もみ、及び無機系軽量骨材からなる群より選択される合成ボード原料に、上記[7]乃至[10]のいずれかに記載のポリイソシアネート接着剤組成物を混合し、成形した後、熱圧縮することを特徴とする合成ボードの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、及びそれを含有するポリイソシアネート接着剤組成物は、合成ボード製造時における熱圧縮工程前の初期成形性と、熱圧縮成型時の高反応性を両立でき、エネルギー的に有利であると共に生産性が向上することから、合成ボードの低コスト化に有利であり、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をさらに詳しく述べる。
【0026】
まず、本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒について説明する。
【0027】
本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒は、上記式(1)で示される環状アミン化合物を含有することを特徴とする。
【0028】
上記式(1)において、R及びRは各々独立して、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、第三級アミノ基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、第三級アミノ基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、水酸基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、又は水酸基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基若しくは水酸基を有する炭化水素基を表す。
【0029】
炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐のいずれでもよく、また、飽和又は不飽和のどちらでもよく、特に限定されない。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基等が挙げられる。
【0030】
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては単環又は多環のどちらでもよく、特に限定されない。例えば、フェニル基、(2−,3−,4−)ビフェニリル基、(1−,2−)ナフチル基、アセナフチレン−(1−,3−,4−,5−)イル基、フルオレン−(1−,2−,3−,4−,9−)イル基、フェナレン−(1−,2−)イル基、(1−,2−,3−,4−,9−)フェナントリル基等が挙げられる。
【0031】
第三級アミノ基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基や、第三級アミノ基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えば、上記した炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基や、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が第三級アミノ基に置換された炭化水素基が挙げられ、特に限定されない。具体的には、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、1−(ジメチルアミノ)エチル基、1−メチル−1−(ジメチルアミノ)エチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基等が例示される。
【0032】
水酸基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基や、水酸基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、例えば、上記した炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基や、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基の少なくとも1つの水素原子が水酸基に置換された炭化水素基が挙げられ、特に限定されない。具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシエチル基、1−メチル−1−ヒドロキシエチル基等が例示される。
【0033】
上記式(1)において、m及びnは1〜6の範囲の整数であって、m及びnが同一、若しくは異なってもよく、特に限定されない。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンテン基、ヘキセン基、オクテン基等が例示される。
【0034】
また、上記式(1)の環状構造としては、特に限定するものではないが、例えば、ピラゾリジン構造、イミダドリジン構造、ヘキサヒドロピリダジン構造、ヘキサヒドロピリミジン構造、ピペラジン構造、1,2−ジアゼパン構造、1,3−ジアゼパン構造、1,4−ジアゼパン構造等が挙げられる。好ましくはピペラジン構造である。
【0035】
本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒は、上記式(1)で示される環状アミン化合物を含有するものであるが、これらのうち、1,4−ジメチルピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−メチルピペラジン、N−(ヒドロキシエチル)−N’−メチルピペラジンを含有することが好ましい。
【0036】
本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒は、上記式(1)で示される環状アミン化合物を含有するものであり、塩にする必要も、他の触媒を併用する必要も特段なく、本発明の所望の効果を発揮することができる。ただし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の触媒を併用してもよい。このような他の触媒としては、例えば、従来公知の有機金属触媒、カルボン酸金属塩、第3級アミン類や第4級アンモニウム塩類等を挙げることができる。これらのうち、上記式(1)で示される環状アミン化合物の使用量を低減することができ、高温での反応活性も向上することから、従来公知の第3級アミン類が好適に使用される。
【0037】
第3級アミン類としては、従来公知の触媒でよく、特に限定するものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン等の第3級アミン化合物が挙げられる。これらのうち、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン等が、特に好ましく使用される。
【0038】
上記式(1)で示される環状アミン化合物と上記した第3級アミン類との混合比率は、通常100/0〜50/50(重量比)、好ましくは、95/5〜70/30(重量比)の範囲である。第3級アミン類を50重量%以下の範囲内で使用することで、合成ボード製造時における熱圧縮工程前の初期成形性と、熱圧縮成型時の高反応性とのバランスが保たれ、熱圧縮工程前の早期硬化による初期成形性が悪化することなく、熱圧縮成型時の反応性が低下して、長時間の熱圧縮が必要となることもない。
【0039】
上記式(1)で示される環状アミン化合物と上記した第3級アミン類とを混合して使用する場合、混合調製にあたっては、必要ならば、溶媒を使用してもよい。このような溶媒としては、例えば、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、水等が挙げられる。また、溶媒の量は、特に限定するものではないが、触媒の全量に対し20重量倍以下であることが好ましい。20重量倍を超えると、それに応じて多量の触媒添加が必要となり、経済的ではない。
【0040】
次に本発明のポリイソシアネート接着剤組成物について説明する。
【0041】
本発明のポリイソシアネート接着剤組成物は、上記した本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒と有機ポリイソシアネート化合物とを含有するか、又は上記したポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、有機ポリイソシアネート化合物、及び活性水素基含有化合物を含有することをその特徴とする。
【0042】
有機ポリイソシアネートとしては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、それらのポリイソシアネートとポリオールとの反応による遊離イソシアネート含有プレポリマー類、カルボジイミド変性イソシアネート等の変性ポリイソシアネート類、これらの混合体等が挙げられる。
【0043】
TDIとその誘導体としては、例えば、2,4−TDIと2,6−TDIとの混合物や、TDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体等を挙げることができる。
【0044】
MDIとその誘導体としては、例えば、MDIとその重合体であるポリフェニルポリメチレンジイソシアネートとの混合体や、末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体等を挙げることができる。
【0045】
本発明において、活性水素基含有化合物とは、水酸基やアミノ基等の活性水素含有官能基を有する化合物を意味し、例えば、ポリオールが好適なものとして挙げられる。このようなポリオールとしては、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、更には含リンポリオールやハロゲン含有ポリオール等の難燃ポリオール等、マンニッヒベースポリオール等のフェノール系ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0046】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これに、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等)の付加反応により、例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers社(ドイツ) p.42−53に記載の方法によって製造されたものが挙げられる。ここで、2個以上の活性水素基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン等の脂肪族アミン類、トルエンジアミン等の芳香族アミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等、ソルビトール、シュークロース等が挙げられる。
【0047】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸とグリコールの反応から得られるものや、DMT残査、無水フタル酸を出発原料とするポリエステルポリオール、ナイロン製造時の廃物、TMP、ペンタエリスリトールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる[岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社 p.116−117参照]。
【0048】
ポリマーポリオールとしては、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)とをラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオール等が挙げられる。
【0049】
難燃ポリオールとしては、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる含リンポリオール、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られる含ハロゲンポリオール、マンニッヒベースポリオール等のフェノールポリオール等が挙げられる。
【0050】
上記した本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒と有機ポリイソシアネート化合物とを含有するポリイソシアネート接着剤組成物において、上記した本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒の含有量は、有機ポリイソシアネート、又は有機ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物の合計100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜8重量部の範囲である。また、上記したポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、有機ポリイソシアネート化合物、及び活性水素基含有化合物を含有するポリイソシアネート接着剤組成物においては、上記した本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒の含有量は、有機ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物との合計で100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜8重量部の範囲である。上記した本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒を0.1重量部以上とすることで、十分な硬化が得られ、合成ボードの物性は良好なものとなる。また、上記した本発明のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒を10重量部以下とすることで、熱圧縮工程前の早期硬化による初期成形性が良好なものとなる。
【0051】
本発明のポリイソシアネート接着剤組成物は、例えば、木質片、フォーム屑、ゴム粉砕物、紙、布、もみ、及び無機系軽量骨材等の合成ボード原料と混合され、所定の形状に成形された後、熱圧縮されることにより、各種合成ボードとなる。このようにして得られた合成ボードは、廃棄物を再利用したエコ材料として各分野で広く使用される。本発明のポリイソシアネート接着剤組成物は、その際、必要に応じて溶剤に溶解したり、分散剤で分散したりして用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定して解釈されるものではない。
【0053】
なお、以下の実施例、比較例において、各種測定項目の測定方法は以下の通りである。
【0054】
・室温反応の測定項目.
表1及び表2記載の配合比率にて、液温20℃でラボミキサーを使用し6000rpmで5秒間攪拌し、この混合物に熱電対を挿入して混合物の温度上昇を測定する。
【0055】
30℃到達時間:ラボミキサーによる混合開始から、液温が30℃に達するまでの時間(秒数)。
【0056】
最高温度:温度測定期間中の最も高い温度(℃)。
【0057】
最高温度到達時間:ラボミキサーによる混合開始から、最高温度に達するまでの時間(秒数)。
【0058】
・高温反応の測定項目.
表1及び表2記載の配合比率にて、液温20℃でラボミキサーを使用し6000rpmで5秒間攪拌し、この混合物を100℃に加熱したアルミ製モールドに注入し、これに熱電対を挿入して混合物の温度上昇を測定する。
【0059】
80℃到達時間:ラボミキサーによる混合開始から、液温が80℃に達するまでの時間(秒数)。
【0060】
最高温度:温度測定期間中の最も高い温度(℃)。
【0061】
最高温度到達時間:ラボミキサーによる混合開始から、最高温度に達するまでの時間(秒数)。
【0062】
実施例1〜実施例13、比較例1〜比較例13.
表1及び表2に示した原料配合比にて、液温20℃で、ラボミキサーを使用し6000rpmで5秒間攪拌することにより、硬化反応性を評価した。これらの結果を表1及び表2にあわせて示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

実施例1〜実施例13より明らかなように、本発明の環状アミン化合物を含有するポリイソシアネート接着剤組成物は、室温条件では30℃到達時間及び最高温度到達時間が長いことから反応性が低く、かつ高温反応では80℃到達時間及び最高温度到達時間が短いことから、反応性が高く、合成ボード製造時における熱圧縮工程前の初期成形性と、熱圧縮成型時の高反応性を両立できることを示している。
【0065】
これに対して、比較例1〜比較例13は、高温反応において、80℃到達時間及び最高温度到達時間が長かった。そのため、合成ボード製造時における熱圧縮成型時の反応性が劣り、長時間の熱圧縮が必要であったり、得られる合成ボードの機械物性が劣る問題を有することを示している。
【0066】
また、実施例9〜実施例13は、実施例2の環状アミン化合物と比較例1の三級アミン類との混合系触媒となっている。実施例9〜13では、実施例2に比べ、触媒量(環状アミン化合物と三級アミン類の合計量)が大幅に低減可能であることがわかる。しかも、実施例9〜11、総触媒量が実施例2より大幅に少ないにもかかわらず、高温反応活性が実施例2より良好である。
【0067】
実施例14
ポリイソシアネート化合物(MR−200、日本ポリウレタン工業社製)100gと、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−メチルピペラジン0.8gとからなるポリイソシアネート接着剤組成物に、水120gを混合することによりエマルジョンを得た。ミキサーに木材チップ500g、及び前述のエマルジョン40gを添加して混合することにより木材チップにエマルジョンを均一塗布した。エマルジョンを塗布した木材チップをステンレス板に挟み、180℃に設定した電熱プレスを用い、圧力10MPa、プレス時間150秒で熱プレスすることにより木質合成ボードを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

[上記式(1)中、R及びRは各々独立して、水素原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、第三級アミノ基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、第三級アミノ基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、水酸基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、又は水酸基を有する炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。m及びnは各々独立して、1〜6の範囲の整数を表す。]
で示される環状アミン化合物を含有するポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【請求項2】
式(1)で示される環状アミン化合物の環状構造が、ピラゾリジン構造、イミダドリジン構造、ヘキサヒドロピリダジン構造、ヘキサヒドロピリミジン構造、ピペラジン構造、1,2−ジアゼパン構造、1,3−ジアゼパン構造、及び1,4−ジアゼパン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【請求項3】
請求項1に記載の第三級アミノ基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基が、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、1−(ジメチルアミノ)エチル基、1−メチル−1−(ジメチルアミノ)エチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、及びジエチルアミノプロピル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【請求項4】
請求項1に記載の水酸基を有する炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基が、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシエチル基、及び1−メチル−1−ヒドロキシエチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【請求項5】
請求項1に記載の式(1)で示される環状アミン化合物が、1,4−ジメチルピペラジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−メチルピペラジン、及びN−(2−ヒドロキシエチル)−N’−メチルピペラジンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【請求項6】
さらに第3級アミン類を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒と有機ポリイソシアネート化合物とを含有するポリイソシアネート接着剤組成物。
【請求項8】
有機ポリイソシアネート100重量部に対し、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒を0.1〜10重量部の範囲で含有することを特徴とする請求項7に記載のポリイソシアネート接着剤組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒、有機ポリイソシアネート化合物、及び活性水素基含有化合物を含有することを特徴とするポリイソシアネート接着剤組成物。
【請求項10】
有機ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物との合計で100重量部に対し、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のポリイソシアネート化合物硬化用アミン触媒を0.1〜10重量部の範囲で含有することを特徴とする請求項9に記載のポリイソシアネート接着剤組成物。
【請求項11】
木質片、フォーム屑、ゴム粉砕物、紙、布、もみ、及び無機系軽量骨材からなる群より選択される合成ボード原料に、請求項7乃至請求項10のいずれかに記載のポリイソシアネート接着剤組成物を混合し、成形した後、熱圧縮することを特徴とする合成ボードの製造方法。

【公開番号】特開2013−100380(P2013−100380A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243415(P2011−243415)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】