説明

ポリイソシアネート組成物、及び二液型ポリウレタン組成物

【課題】低粘度でかつ、塗膜の初期硬化性が優れた低極性有機溶剤可溶の二液型ポリウレタン組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、下記(A)、(B)、(C)を含むポリイソシアネート組成物を含有する。(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下であるポリイソシアネート化合物。(B)アニリン点が、−6℃〜70℃である低極性有機溶剤。(C)特定のテトラアルコキシシラン、同縮合物、及び同誘導体から選ばれる少なくとも1種類のシリケート化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族、あるいは脂環式ジイソシアネートから得られ、低粘度でかつ低極性有機溶剤可溶性に優れるポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート組成物、及びそのポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤とポリオールを含有する主剤からなり、塗膜の初期硬化性が優れた低極性有機溶剤可溶の二液型ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDI)やイソホロンジイソシアネート(以下、IPDI)から得られるポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた二液型ポリウレタン組成物から得られた塗膜は、耐候性や、耐薬品性、耐摩耗性等に優れた性能を示すために、塗料、インキ及び接着剤等として広く使われている。特に、近年、低極性有機溶剤に可溶なポリイソシアネート組成物が望まれるようになった。これは、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの強溶剤の臭気や安全性に懸念がある場合が有り、これに加え、塗り替え用途で、旧塗膜を侵さない溶解性の弱い、低極性有機溶剤に可溶なポリイソシアネート組成物が望まれるようになったためである。
また、塗料分野においては、大気汚染に対する環境保全、省資源の観点から有機溶剤の使用量削減が急務になっている。こうした状況の中で、取り扱いの容易さ、および有機溶剤の使用量削減、更に下地塗膜を侵すことのない低極性有機溶剤に希釈できる、低粘度で低極性有機溶剤可溶のポリイソシアネート組成物が要望されてきた。
【0003】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5で開示されているイソシアヌレート構造と、モノアルコールのアロファネート構造を有するポリイソシアネートは、低粘度であり低極性有機溶剤への溶解性が優れているという特徴を有している。しかし、これらのポリイソシアネート組成物を用いた二液型ポリウレタン組成物を用いた塗料では、硬化性が遅い場合がある。特に、冬場では、硬化性が遅いため、塗膜が白化する問題もある。
特許文献6,7では、低粘度であるウレトジオン基を含有するポリイソシアネートに関する技術が開示されている。この技術により低粘度のポリイソシアネート組成物が得られるが、ウレトジオン基のみを含むポリイソシアネート組成物は、その分子量に関わらず、ポリイソシアネート1分子が有するイソシアネート基の平均数は2であり、架橋性が劣る場合がある。また、これらの文献には低極性有機溶剤との相溶性については記述が無く、シリケート化合物との組成物に関する記載も無い。
特許文献8には、ウレトジオン基を実質的に含有しないで、アロファネート基を有する低粘度でかつ低極性有機溶媒との相溶性が良好なイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物に関する技術が開示されている。しかし、低極性有機溶媒との更なる相溶性を求められる場合には相溶性が不足する事があった。また、シリケート化合物との組成物に関する記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−250872号公報
【特許文献2】特開平4−306218号公報
【特許文献3】特開平5−70444号公報
【特許文献4】特開平5−222007号公報
【特許文献5】特開2003−55433号公報
【特許文献6】特開昭61−97265公報
【特許文献7】特許第3055197号
【特許文献8】国際公開番号WO2007/034883
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、脂肪族、あるいは脂環式ジイソシアネートから得られ、低粘度であり、かつ低極性有機溶剤可溶性に優れるポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート組成物、およびそのポリイソシアネート組成物を含有する硬化剤とポリオールを含有する主剤からなり、優れた初期硬化性を有する塗膜が得られる低極性有機溶剤可溶の二液型ポリウレタン組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するため検討を重ね、脂肪族あるいは脂環式ジイソシアネートから得られるポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート組成物、および該ポリイソシアネート組成物からなる硬化剤とポリオールからなる主剤とからなる二液型ポリウレタン組成物が前記課題を達成することを見いだし、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の通りである。
1)(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下であるポリイソシアネート化合物、及び
(B)アニリン点−6℃〜70℃の低極性有機溶剤、
からなるポリイソシアネート組成物。
2)(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下であるポリイソシアネート化合物、及び
(B)アニリン点−6℃〜70℃の低極性有機溶剤、及び
(C)下記式(3)で表されるテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びテトラアルコキシシランの誘導物から選ばれる少なくとも1種類のシリケート化合物、
からなるポリイソシアネート組成物。
【0007】
【化1】

【0008】
式中のRは、同一、もしくは異なって炭素数1〜10のアルキル基、またはアリール基である。
3)上記1)〜2)記載の低極性有機溶剤が、第三種有機溶剤等であるであるポリイソシアネート組成物。
4)(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオールを含有する主剤、及び
(ロ)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下であるポリイソシアネート化合物からなる硬化剤、及び
(ハ)アニリン点−6℃〜70℃の低極性有機溶剤、
からなる二液型ポリウレタン組成物。
5)(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオールを含有する主剤、及び
(ロ)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下であるポリイソシアネート化合物からなる硬化剤、及び
(ハ)アニリン点−6℃〜70℃の低極性有機溶剤、及び
(ニ)下記式(2)で表されるテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びテトラアルコキシシランの誘導物から選ばれる少なくとも1種類のシリケート化合物、
からなる二液型ポリウレタン組成物。
【0009】
【化2】

【0010】
式中のRは、同一、もしくは異なって炭素数1〜10のアルキル基、またはアリール基である。
6)上記4)〜5)記載の低極性有機溶剤が、第三種有機溶剤等である二液型ポリウレタン組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリイソシアネート組成物は、低粘度であり、低極性有機溶剤への溶解性が高いポリイソシアネート化合物を含み、本発明のポリイソシアネート組成物を用いた二液型ポリウレタン組成物、特に低極性有機溶剤を含有する主剤と組み合わせた二液型ポリウレタン組成物を塗布した場合は、下地を侵し難くなる。つまり、塗り替え作業の際、旧塗膜の除去やシーリング剤の塗布なしに、直接本発明の二液型ポリウレタン組成物を用いた塗料を塗布した場合、リフティングが起こりにくくなる。また、補修作業、重ね塗り作業を行う場合も、下地塗膜を侵すことなく、上塗りが可能となる。更に、低極性有機溶剤は低臭気という性質を併せ持つ場合が多く、塗装作業者や、近くの人に臭気を及ぼし難いという特徴も有する。
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、該ポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた二液型ポリウレタン組成物から得られる塗膜に優れた架橋性を付与することが出来る。
更に、本発明のポリイソシアネート組成物は、低粘度という特徴も有しているため、本発明の二液型ポリウレタン組成物が含有する有機溶剤量を減らすことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について、以下具体的に説明する。
【0013】
まず、ポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート組成物について説明する。
本発明のポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート化合物を含有している。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下である。
まず、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートについて記載する。
脂肪族ジイソシアネートとは分子中に飽和脂肪族基を有する化合物である。一方、脂環式ジイソシアネートとは、分子中に環状脂肪族基を有する化合物である。脂肪族ジイソシアネートを用いると、得られるポリイソシアネート化合物が低粘度となるのでより好ましい。脂肪族ジイソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等が挙げられる。脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等が挙げられる。この中でもHDI、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートは、工業的に入手し易いため好ましい。中でもHDIは耐候性と塗膜の柔軟性が非常に優れており最も好ましい。以下、脂肪族ジイソシアネートと脂環式ジイソシアネートを総称してジイソシアネートという。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物は、イソシアヌレート3量体を60質量%〜95質量%含有する。イソシアヌレート3量体とは、ジイソシアネートモノマー3分子からなるイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートであり、式(5)で示される。
【0014】
【化3】


R:ジイソシアネートモノマー残基
【0015】
イソシアヌレート3量体の濃度は、60質量%〜95質量%であり、好ましくは60質量%〜90質量%、より好ましくは60質量%〜85質量%である。60質量%未満であると架橋性が低下し、95質量%を超えるとポリイソシアネート化合物の粘度が増加する。
イソシアヌレート3量体含有量の測定は、ゲル濾過クロマトグラフィー(以下、GPC)によりジイソシアネートの3倍の分子量に相当するピーク面積%をイソシアヌレート3量体含有量として示した。
以下、GPCの測定方法について述べる。ポリイソシアネート化合物の分子量に関する測定値は、全て以下の測定方法で行ったものである。使用機器:HLC−8120(東ソー株式会社製)、使用カラム:TSK GEL SuperH1000、TSK GEL SuperH2000、TSK GEL SuperH3000(何れも東ソー株式会社製)、試料濃度:5wt/vol%(例えば、試料50mgを1mlのTHFに溶解する)、キャリア:THF、検出方法:示差屈折計、流出量0.6ml/min.、カラム温度30℃)。GPCの検量線は、分子量50000〜2050のポリスチレン(ジーエルサイエンス株式会社製PSS−06(Mw50000)、BK13007(Mp=20000、Mw/Mn=1.03)、PSS−08(Mw=9000)、PSS−09(Mw=4000)、5040−35125(Mp=2050、Mw/Mn=1.05)と、ヘキサメチレンジイソシアネート系ポリイソシアネート組成物(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)のイソシアヌレート体の3量体〜7量体(イソシアヌレート3量体分子量=504、イソシアヌレート5量体分子量=840、イソシアヌレート7量体分子量=1176)及びHDI(分子量=168)を標準として作成した。
【0016】
ジイソシアネートモノマーからイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを誘導する場合は通常、イソシアヌレート化触媒を用いて行う。具体的なイソシアヌレート化触媒としては、例えば一般に塩基性を有するものが好ましく、1)例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、2)例えばトリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、3)酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の例えば錫、亜鉛、鉛、ナトリウム、カリウム等の金属塩、4)例えばナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、5)例えばヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、6)マンニッヒ塩基類、7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用等がある。更に好ましくは、前期1)、2)、3)である。アミノシリル基含有化合物はその使用条件により、ウレトジオン生成などの副反応が起きる。
これらの触媒を使用して、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを得る事が出来る。得られるポリイソシアネート基含有ポリイソシアネートは3量体以外に、5量体、7量体などを含む。本発明のイソシアヌレート3量体濃度範囲を得るためのイソシアヌレート化反応の転化率(イソシアヌレート化反応で生成したポリイソシアネートの質量の割合)は、20%以下、好ましくは15%以下である。20%を超えると、本発明の構成要件である、イソシアヌレート3量体濃度の達成が困難となる場合があり、ポリイソシアネート化合物の低粘度と架橋性を両立できない場合がある。
イソシアヌレート化反応に用いる触媒はイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの選択率が高い上記1)、2)、3)が好ましい。
【0017】
本発明の構成要件の1つであるアロファネート基とは、モノアルコールの水酸基とイソシアネート基から形成され、式(6)で示される。
【0018】
【化4】

【0019】
本発明のポリイソシアネート化合物のモノアルコールから誘導されるアロファネート基とイソシアヌレート基のモル比(以下、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比)は、1/99〜30/70である。好ましくは2/98〜20/80であり、より好ましくは2/98〜10/90である。アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比が91/99〜30/70の範囲であれば、低粘度であり架橋性も良好である。
本発明で用いるモノアルコールは、分子内にエーテル基、例えば、1−ブトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−ブトキシプロパノール、2−ブトキシプロパノール、3−ブトキシプロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等や、エステル基、カルボニル基、フェニル基、例えば、ベンジルアルコール等を含んでも良いが、好ましいのは飽和炭化水素基だけからなるモノアルコールである。更に、分岐を有しているモノアルコールがより好ましい。このようなモノアルコールとして例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。この中でイソブタノール、n−ブタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、1−へプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、トリデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、1,3,5−トリメチルシクロヘキサノールは低極性有機溶剤への溶解性が特に優れているため、より好ましい。1−プロパノール、イソブタノール、1−ブタノール、イソアミルアルコール、ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノールは、粘度がより低くなるため、より一層好ましい。イソブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノールは、低極性有機溶剤への溶解性が非常に優れており、最も好ましい。
これらのモノアルコールの添加量は、イソシアネート基とモノアルコールの水酸基の等量比で1000/1〜10/1、好ましくは1000/1〜100/1である。10/1を下回ると、モノアルコール2分子とジイソシアネートモノマー1分子からなる化合物が生成する場合があり、低粘度のポリイソシアネート化合物を作るには好ましくない。
アロファネート基を生成するには、アロファネート化触媒を使用する事が出来る。この具体的な化合物としては、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニルなどのアルキルカルボン酸塩である。例えば、2−エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、2−エチルヘキサン酸鉛などの有機鉛化合物、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの有機亜鉛化合物、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸ビスマス、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニルなどがあり、2種以上を併用する事もできる。
【0020】
また、前記のイソシアヌレート化触媒もアロファネート化触媒になり得る。前記のイソシアヌレート化触媒を用いて、アロファネート化反応を行う場合、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート化合物も生成する。
なお、アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比は、1H−NMRにより求めることができる。HDIおよびそれから得られるイソシアネートプレポリマーを原料として用いたポリイソシアネート組成物を1H−NMRで測定する方法の一例を以下に示す。
1H−NMRの測定方法例:ポリイソシアネート化合物を重水素クロロホルムに10質量%の濃度で溶解する(ポリイソシアネート化合物に対して0.03質量%テトラメチルシランを添加)。化学シフト基準は、テトラメチルシランの水素のシグナルを0ppmとした。1H−NMRにて測定し、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素に結合した水素原子(アロファネート基1molに対して、1molの水素原子)のシグナルと、3.85ppm付近のイソシアヌレート基に隣接したメチレン基の水素原子(イソシアヌレート基1モルに対して、6molの水素原子)のシグナルの面積比を測定する。
アロファネート基/イソシアヌレート基=(8.5ppm付近のシグナル面積)/(3.85ppm付近のシグナル面積/6)
【0021】
本発明の構成成分の1つである、ウレトジオン2量体とは、ジイソシアネートモノマー2分子からなる、ウレトジオン基を有する化合物であり、式(7)で表される。
【0022】
【化5】


R:ジイソシアネートモノマー残基
【0023】
ウレトジオン2量体含有量は2質量%〜25質量%である。この間であれば、低粘度でありつつ架橋性が良好である。ウレトジオン2量体はウレトジオン化触媒を用いて得る事が出来る。この具体的な化合物の例としては、第3ホスフィンである、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリス−(ジメチルアミノ)−ホスフィンなどのトリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロヘキシル−ジ−n−ヘキシルホスフィンなどのシクロアルキルホスフィンなどがある。これらの化合物は、アロファネート化触媒にもなり得る。また、これらの化合物の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進し、ウレトジオン基含有ポリイソシアネートに加えてイソシアヌレート基含有ポリイソシアネートを生成する。
また、前記のような触媒を用いることなく、加熱で得る事も出来る。加熱により得る事の出来るウレトジオン基含有ポリイソシアネート収率は低く、ウレトジオン基含有ポリイソシアネートのみを得る手段としては効率的では無かった。
しかし、驚くべき事に触媒を使用せず、加熱のみにより得られるウレトジオン基含有ポリイソシアネートの貯蔵時に遊離するジイソシアネートモノマー量が格段に低い事が判明した。ウレトジオン基は加熱により分解しやすく、そのためウレトジオン基含有ポリイソシアネート貯蔵時にジイソシアネートモノマーが遊離すると考えられていた。本発明の構成成分の1つであるウレトジオン基含有ポリイソシアネートは加熱で製造する事が好ましい。
ウレトジオン2量体含有量の測定は、GPCの分子量336程度のピークの面積の割合を示差屈折計で測定することで求めることができる。336程度のピーク付近に測定の障害となるようなピークがある場合は、フーリエ変換赤外分光光度計(以下、FT−IR)を用いて、1770cm−1程度のウレトジオン基のピークの高さと、1720cm−1程度のアロファネート基のピークの高さの比を、内部標準を用いて定量する方法によっても求めることができる。
【0024】
本発明のポリイソシアネート組成物中のポリイソシアネート化合物は、数平均分子量が1000以上の多量体の含有量が10wt%以下である。ポリイソシアネート多量体がイソシアヌレート多量体主体である場合は、含有量が10wt%を超えると低極性有機溶剤への溶解性が低下する。また、ポリイソシアネート多量体がアロファネート多量体主体である場合は含有量が10wt%を超えると、これらのポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた二液型ポリウレタン組成物の硬化性が低下する。
数平均分子量が1000以上の多量体の含有量は、GPCの示差屈折計で測定した分子量1000以上のピーク面積を合計する事により求める事が出来る。
ビウレット体、その他のジイソシアネート重合体は、低極性有機溶剤への溶解性が低下するため、含有量が多くなるのは好ましくない。本発明のポリイソシアネート組成物にビウレット体、その他のジイソシアネート重合体が含まれる量の範囲としては、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に一層好ましくは3質量%以下が適当である。
ウレタン体は、基材との密着性を向上させるが、多すぎると低極性有機溶剤への溶解性が低下する場合がある。本発明で用いるポリイソシアネート化合物に、ウレタン体が含まれる量としては、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に一層好ましくは3重量%以下が適当である。ウレタン基の重量%は、1H−NMRを用いて求めることができる。前記の方法で、アロファネート基とイソシアヌレート基の合計のモル数を測定し、更に、4〜5ppm付近のウレタン基の窒素に結合した水素原子(ウレタン基1molに対して、1molの水素原子)のシグナルの面積から、ウレタン基のモル数を測定することによって、ウレタン基の重量%を測定することができる。
反応終了後、ポリイソシアネート化合物からは、未反応のジイソシアネートや溶媒を分離しても良い。安全性を考えると、未反応のジイソシアネートは分離した方が好ましい。未反応のジイソシアネートや溶媒を分離する方法として、例えば、薄膜蒸留法や溶剤抽出法が挙げられる。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基含有量(以下、NCO含有量)は、実質的に溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で18〜27質量%である。NCO含有量の下限は、好ましくは、20質量%、より一層好ましくは22質量%である。上限は、好ましくは27質量%、より好ましくは26質量%、もっとも好ましくは25質量である。18〜27質量%の範囲であれば低極性有機溶剤に十分溶解して、かつ十分な架橋性を有するポリイソシアネート組成物を得ることができる。
【0025】
本発明での「実質的に溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態」とは、溶剤、又はジイソシアネートの含有量が1質量%未満の事である。
本発明で用いるポリイソシアネート化合物の25℃での粘度は、実質的に溶剤やジイソシアネートを含んでいない状態で好ましくは100〜800mPa.sである。粘度の下限は、より好ましくは150mPa.sである。粘度の上限は、より好ましくは700mPa.sである。100mPa.s以上であれば十分な架橋性を有するポリイソシアネート組成物を得ることができる。800mPa.s以下であればVOC成分を減らした二液型ポリウレタン組成物を得ることが可能となる。
本発明のポリイソシアネート組成物は、アニリン点−6〜70℃の低極性有機溶剤を含有する。アニリン点の下限は好ましくは−5℃である。上限は、好ましくは65℃、より好ましくは60℃である。アニリン点が−6℃以上であれば下地塗膜を侵しがたく、70℃以下であればポリイソシアネート化合物を溶解することができる。本発明のポリイソシアネート化合物が、硬化性を低下させる事なく、上記の低極性有機溶剤と良好な相溶性を示すのは驚くべき事である。低極性有機溶剤とは、脂肪族、脂環式炭化水素系溶剤を主な成分として含有した有機溶剤であるが、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤等を含有していても良い。
【0026】
このような有機溶剤の例としては、メチルシクロヘキサン(アニリン点40℃)、エチルシクロヘキサン(アニリン点44℃)、ミネラルスピリット(ミネラルターペン)(アニリン点56℃)、テレビン油(アニリン点20℃)等の他に、一般に石油系炭化水素として市販されているHAWS(シェルジャパン製、アニリン点17℃)、エッソナフサNo.6(エクソンモービル化学製、アニリン点43℃)、LAWS(シェルジャパン製、アニリン点44℃)、ペガゾール3040(エクソンモービル化学製、アニリン点55℃)、Aソルベント(新日本石油化学株式会社、アニリン点45℃)、クレンゾル(新日本石油化学株式会社製、アニリン点64℃)、ミネラルスピリットA(新日本石油化学株式会社製、アニリン点43℃)、ハイアロム2S(新日本石油化学株式会社製、アニリン点44℃)等、あるいはこれらの有機溶剤の少なくとも1種類と、必要に応じて芳香族炭化水素系溶剤やエステル系溶剤、エーテル系溶剤等を混合したものが挙げられる。
近年、塗り替え需要が増加し、下地塗膜をより侵しにくい溶剤、すなわちより一層溶解力が弱い有機溶剤に希釈を求められる場合が多くなっている。このような場合には、アニリン点の下限は、好ましくは30℃、より一層好ましくは40℃が適当である。このような有機溶剤の具体例としては、LAWS(シェルケミカルズジャパン株式会社製、アニリン点44℃)、ペガソール3040(エクソンモービル有限会社製、アニリン点55℃)、Aソルベント(新日本石油化学株式会社製、アニリン点45℃)、クレンゾル(新日本石油化学株式会社製、アニリン点64℃)、ミネラルスピリットA(新日本石油化学株式会社製、アニリン点43℃)、ハイアロム2S(新日本石油化学株式会社製、アニリン点44℃)、リニアレン10、リニアレン12(出光石油化学株式会社製、αオレフィン系炭化水素、アニリン点44℃、54℃)、エクソールD30(エクソンモービル有限会社製、ナフテン系溶剤、アニリン点63℃)、リカソルブ900、910B、1000(新日本理化株式会社製、水添C9溶剤、アニリン点53℃、40℃、55℃)などが好ましい。なお、石油より精製されたアニリン点45℃付近の溶剤、例えばLAWS、ミネラルスピリットA、Aソルベント、ハイアロム2Sなどをミネラルターペンと呼ぶ場合もある。これらの有機溶剤に芳香族系、エーテル系、エステル系等の溶剤を混合しても、混ぜた溶剤が前記のアニリン点の範囲内に入っていれば構わない。芳香族系の溶剤としては、例えばソルベッソ100、150,200(エクソンモービル有限会社製)、シェルゾールA100、150(シェルケミカルズジャパン株式会社製)トルエン、キシレン等が挙げられ、エステル系、エーテル系の溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート等が挙げられる。なお、アニリン点はJIS K 2256に記載のアニリン点試験方法に準じて測定すればよい。
【0027】
更に、溶剤の中にトルエン、キシレン、1,3,5−トリメチルベンゼンなどのいわゆるPRTR対象物質を含有しない有機溶剤に溶解することが求められる場合も多い。このような場合には、PRTR対象物質を含有しない溶剤を用いる方がより一層好ましい。このような溶剤の具体例として、αオレフィン系炭化水素(ニリアレン10、リニアレン12等)や比較的アニリン点が低いナフテン系溶剤(エクソールD30等)、水添溶剤(リカソルブ900、910B、1000、スワクリーン150等)などが挙げられる。あるいは、アニリン点が70℃を超えるイソパラフィン系、ナフテン系、パラフィン系の溶剤とエーテル系、エステル系等の溶剤を混合して、アニリン点を−6℃〜70℃に調整して用いることもできる。イソパラフィン系の溶剤としては、例えばシェルゾールS(シェルケミカルズジャパン株式会社製、アニリン点78℃)やアイソパーG(エクソンモービル有限会社製、アニリン点78℃)、日石アイソゾール300(新日本石油化学株式会社製、アニリン点80℃)が挙げられる。ナフテン系の溶剤としては、例えばエクソールD40(エクソンモービル有限会社製、アニリン点69℃)、ナフテゾール160(新日本石油化学株式会社製、アニリン点69℃)、IPソルベント1016、1620(出光石油化学株式会社製、アニリン点72℃、81℃)などが挙げられる。パラフィン系溶剤としては、例えばノルマルパラフィン SL(新日本石油化学株式会社製、アニリン点80℃)等が挙げられる。芳香族系の溶剤としては、例えばソルベッソ100(エクソンモービル有限会社製)等が挙げられる。エステル系、エーテル系の溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピルアセテート等が挙げられる。
【0028】
本発明の第三種有機溶剤等とは、労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則で定められた第三種有機溶剤等を指す。
【0029】
以下、本発明で用いる(イ)主剤について記載する。
本発明で用いる(イ)主剤は、水酸基価が5〜200mgKOH/gのポリオールを含有する。
ポリオールの水酸基価は、5〜200mgKOH/gである。水酸基価の下限は、好ましくは10mgKOH/g、より好ましくは15mgKOH/g、より一層好ましくは20mgKOH/gである。上限は、好ましくは160mgKOH/g、より好ましくは120mgKOH/g、より一層好ましくは80mgKOH/gである。水酸基価が5〜200mgKOH/gであれば、柔軟で、かつ強靱な塗膜を得ることができる二液ポリウレタン組成物を得ることができる。
本発明の主剤で用いるポリオールとしては、例えばアクリルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィン系ポリオール類、含ケイ素系ポリオール類、含フッ素ポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、エポキシ樹脂類、及びアルキドポリオール類等の中の1種類またはその混合物などが挙げられる。また、ポリオールには、アクリルポリオールやポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールなどを、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートあるいはこれらから得られるポリイソシアネート化合物で変成した、ウレタン変成アクリルポリオールやウレタン変成ポリエステルポリオールやウレタン変成ポリエーテルポリオールなどを用いることもできる。
その中でも長鎖アルキル基などを導入して低極性有機溶剤に溶解可能なあるいは溶解しているポリオールや、低極性有機溶剤に分散している、いわゆるNAD系のポリオールは、塗り替え作業の際に旧塗膜を侵しにくいので好ましい。
本発明で用いるポリオールは公知の技術で製造することができるが、以下、代表的なアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールの製造方法について述べる。
【0030】
アクリルポリオールの製造方法としては、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を有する重合性モノマーと、これに共重合可能な他のモノマーを共重合させることによって得ることができる。例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を有するアクリル酸エステル類、またはメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を有するメタクリル酸エステル類、またはグリセリンやトリメチロールプロパンなどのトリオールのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類と上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類とのモノエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸などの一塩基酸との付加物、あるいは上記の活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類の活性水素にε−カプロラクタム、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合させることにより得られる付加物の群から選ばれた単独または混合物を必須成分として、必要に応じてアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類、またはビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独、又は混合物を、常法により共重合させて得ることができる。例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合することによって得ることができる。
ポリエステルポリオールの製造方法としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等の多価アルコールの単独または混合物とを公知の縮合反応を行うことによって得ることができる。例えば、上記の成分を一緒にし、そして約160〜220℃で加熱することによって行うことができる。更に、例えばε−カプロラクトンなどのラクトン類を多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
ポリエーテルポリオールの製造方法としては、多価アルコール、多価フェノール、ポリアミン、アルカノールアミンなど、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、エチレンジアミンなどのジアミンの単独または混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒、金属ポルフィリン、複合金属シアン化合物錯体、金属と3座配位以上のキレート化剤との錯体、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体などの複合金属錯体を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加して得られる。
【0031】
以下、本発明の二液型ポリウレタン組成物について記載する。
本発明の二液型ポリウレタン組成物は、(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオール成分を含有する主剤、(ロ)本発明のポリイソシアネート組成物に含有するポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤及び、(ハ)低極性有機溶剤からなる。
本発明の二液型ポリウレタン組成物において、低極性有機溶剤を含有する質量%は、二液型ポリウレタン組成物に対して、5〜95質量%が好ましい。低極性有機溶剤を含有する質量%の下限は、より好ましくは10質量%、より一層好ましくは15質量%である。質量%の上限は、より好ましくは90質量%、より一層好ましくは85質量%である。なお、本発明において、二液型ポリウレタン組成物に含有される低極性有機溶剤は、主剤、硬化剤のいずれに含有されていても良い。
本発明の二液型ポリウレタン組成物における(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオール成分を含有する主剤と、(ロ)本発明のポリイソシアネート組成物に含有するポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤の混合比は、イソシアネート基/水酸基のモル比で、0.1〜5.0の範囲が好ましい。モル比の下限は、より好ましくは、0.3、より一層好ましくは0.4、最も好ましくは0.5である。モル比の上限は、より好ましくは、4.0、より一層好ましくは3.0、最も好ましくは2.0である。0.1〜5.0の範囲の場合、強靭な塗膜を形成することができる。
本発明の二液型ポリウレタン組成物には、目的及び用途に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、着色顔料、染料、塗膜の付着性向上のためのシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、つや消し剤、塗膜表面親水化剤、触媒、乾燥性改良剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等の当該技術分野で使用されている各種添加剤を混合して使用することもできる。
着色顔料、染料としては、耐候性の良いカーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等の有機顔料、染料等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、アデカスタブLA62、アデカスタブLA67(商品名、アデカアーガス化学社製、商品名)、チヌビン292、チヌビン144、チヌビン123、チヌビン440(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、サノールLS−765(商品名、三共ライフテック株式会社製)等が挙げられる。
つや消し剤としては、超微粉合成シリカ等が挙げられ、つや消し剤を使用した場合、優雅な半光沢、つや消し仕上げの塗膜を形成できる。
塗膜表面親水剤としては、シリケート化合物が好ましい。シリケート化合物を含有する事によって、二液型ポリウレタン組成物を用いて塗膜を作製した場合に、塗膜表面を親水性にし、耐雨筋汚染性が発現する。
【0032】
シリケート化合物とは、下記式(8)で表されるテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びテトラアルコキシシランの誘導体から選ばれる少なくとも1種類の物を言う。
【0033】
【化6】

【0034】
シリケート化合物を含有することによって、主剤ポリオールと組み合わせて塗膜を作製した場合に、塗膜表面を親水性にし、耐雨筋汚染性が発現する。なお、シリケート化合物は、水酸基と反応するため、予め混合する場合には(ロ)硬化剤に添加するのが好ましい。あるいは、(イ)主剤と(ロ)硬化剤を混合する際に、同時に混合しても良い。
式中のRは、同一、もしくは異なって炭素数1〜10のアルキル基、またはアリール基である。炭素数の上限は好ましくは8、より好ましくは6、より一層好ましくは4である。また、Rは、好ましくはアルキル基である。
Rがアルキル基の場合、直鎖、分岐いずれのタイプで良いが、直鎖状である方がより好ましい。
Rがアリール基の場合、単環および多環のいずれのタイプでも良いが、単環のものがより好ましい。
このようなテトラアルコキシシランとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラフェノキシシラン、およびこれらの縮合物等があげられる。このなかで、テトラメトキシシランの縮合物、テトラエトキシシランの縮合物は、塗膜を作製した場合、塗膜表面が親水性になりやすいため、好ましい。
【0035】
更に、シリケート化合物として、炭素数が異なる2種類以上のアルコキシル基が混在するテトラアルコキシシランの縮合物を使用することもできる。これは、テトラメトキシシラン縮合物、あるいはテトラエトキシシラン縮合物のメトキシ基あるいはエトキシ基、より好ましくはテトラメトキシシラン縮合物のメトキシ基の5〜50mol%を炭素数3〜10のアルコキシル基で置換した化合物を用いる方法である。メトキシ基、エトキシ基を炭素数3〜10のアルコキシル基に置換する割合は、より好ましくは8〜40mol%、より一層好ましくは12〜35mol%である。置換するアルコキシル基としては、好ましくはブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基であり、より好ましくは、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチル−1−ヘキシル基である。このようなシリケート化合物は、塗膜を作成した場合の塗膜の親水性が高く、低極性有機溶剤への溶解性が高い特徴があり、非常に好ましい。
【0036】
本発明のポリイソシアネート組成物において、ポリイソシアネート化合物とシリケート化合物の質量比は、好ましくは5/95〜95/5である。ポリイソシアネート化合物とシリケート化合物の質量比の下限は、より好ましくは10/90、より一層好ましくは15/85である。上限は、より好ましくは90/10、より一層好ましくは85/15である。
【0037】
硬化促進用の触媒の例としては、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等のジアルキルスズジカルボキシレートや、ジブチルスズオキサイド等のスズオキサイド化合物、2−エチルヘキサン酸スズ、2−エチルヘキサン酸亜鉛、コバルト塩等の金属カルボン酸塩、トリエチルアミン、ピリジン、メチルピリジン、ベンジルジメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−エンドエチレンピペラジン、及びN,N’−ジメチルピペラジンのような3級アミン類等が挙げられる。
乾燥性改良剤としては、CAB(セルロースアセテートブトレート)、NC(ニトロセルロース)等が挙げられる。
本発明の二液型ポリウレタン組成物は、(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオール成分を含有する主剤、(ロ)本発明のポリイソシアネート組成物に含有するポリイソシアネート化合物を含有する硬化剤、及び(ハ)低極性有機溶剤を塗装現場で混合して使用する二液型の塗料であるが、必要に応じて添加剤を混合することができる。更に別の形態では、(ニ)シリケート化合物を塗装現場で混合して使用する二液型の塗料であるが、更に必要に応じて添加剤を混合することができる。
その混合順序は特に限定されず、使用例を以下に挙げる。
・低極性有機溶剤と添加剤を予め混合した主剤に、塗装現場にて硬化剤及びシリケート化合物を混合する使用方法、
・塗装現場にて主剤及び硬化剤を混合し、次いで更に低極性有機溶剤及びシリケート化合物及び添加剤を混合する使用方法、
・塗装現場にて主剤及び硬化剤及びシリケート化合物を混合して、次いで更に低極性有機溶剤及び添加剤を混合する使用方法、
・低極性有機溶剤と添加剤を予め混合した主剤に、塗装現場にて予め添加剤と低極性有機溶剤とシリケート化合物を混合した硬化剤(本発明のポリイソシアネート組成物)を混合する使用方法。
・低極性有機溶剤と添加剤を予め混合した主剤に、塗装現場にて予め低極性有機溶剤を混合したシリケート化合物と硬化剤(本発明のポリイソシアネート組成物)を混合して使用する方法、
【0038】
本発明の二液型ポリウレタン組成物を用いて塗装する方法としては、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーター等の任意の方法を適用できる。
本発明のポリイソシアネート組成物は、低粘度で、低極性有機溶剤に溶けやすいという特徴を有している。低極性有機溶剤は溶解力が小さいため、本発明のポリイソシアネート組成物を用いた二液型ポリウレタン組成物は、下地を侵し難くなる。つまり、塗り替え作業の際、旧塗膜の除去やシーリング剤の塗布なしに、直接本発明の二液型ポリウレタン組成物を用いた塗料を塗布した場合、リフティングが起こりにくくなる。また、補修作業、重ね塗り作業を行う場合も、下地塗膜を侵すことなく、上塗りが可能となる。更に、低極性有機溶剤は低臭気という性質を併せ持つ場合が多く、塗装作業者や、近くの人に臭気を及ぼし難いという特徴も有する。
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、低粘度という特徴も有しているため、本発明の二液型ポリウレタン組成物が含有する有機溶剤量を減らすことが可能となる。
従って、本発明のポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた二液型ポリウレタン組成物は、塗料、インキ、接着剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック材料の原料として使用することができる。中でも、建築用塗料、重防食用塗料、自動車用塗料、家電用塗料、パソコンや携帯電話等の情報機器用塗料に用いることができる。特に、塗り替え用途の建築外装塗料、重防食用塗料に適している。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例に基づいて説明する。
アロファネート基とイソシアヌレート基のモル比は、H−NMR(Bruker社製FT−NMR DPX−400)を用いて、8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子上の水素のシグナルと、3.8ppm付近のイソシアヌレート基のイソシアヌレート環の窒素原子の隣のメチレン基の水素のシグナルの面積比から求めた。
NCO含有率は、イソシアネート基を過剰の2Nアミン(ジ−n−ブチルアミンのトルエン溶液)と反応させた後、1N塩酸による逆滴定によって求めた。
粘度は、E型粘度計(株式会社トキメック社)を用いて25℃で測定した。
標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下の通り。
100r.p.m. (128mPa.s未満の場合)
50r.p.m. (128mPa.s〜256mPa.sの場合)
20r.p.m. (256mPa.s〜640mPa.sの場合)
10r.p.m. (640mPa.s〜1280mPa.sの場合)
5r.p.m. (1280mPa.s〜2560mPa.sの場合)
低極性有機溶剤への溶解性は、23℃の条件で、ポリイソシアネート化合物100質量部に対して、低極性有機溶剤100質量部、200質量部、300質量部を加え、24時間放置後の状態を観察し、均一透明であれば溶解していると判断した。なお、低極性有機溶剤への溶解性は以下の式で表される。
低極性有機溶剤への溶解性(%)=((添加した低極性有機溶剤の質量(g))×100)/(ポリイソシアネート化合物の質量(g))
反応の転化率は、反応液屈折率より求めた。
イソシアヌレート3量体含有量の測定は、GPCによりジイソシアネートの3倍の分子量に相当するピーク面積%をイソシアヌレート3量体含有量として示した。
数平均分子量が1000以上の含有量は、GPCにより分子量分布を測定する事により求めた。
ゲル分率の測定は、ポリプロピレン板上に樹脂膜厚50ミクロンになるようにアプリケーター塗装を行い、23℃、湿度50RH%で24Hr放置した硬化塗膜を、アセトンに23℃で24時間浸漬した時の未溶解部分質量の浸漬前質量に対する値を計算する事で求めた。
【0040】
[合成例1]
撹拌器、温度計、冷却管を取り付けた四ッ口フラスコの内部を窒素置換し、HDI 1200gとイソブタノールを0.6部を仕込み、撹拌下反応器内温度を80℃で2時間保持した。その後、イソシアヌレート化触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを0.1g加え、イソシアヌレート化反応を行い、転化率が20%になった時点でリン酸を0.2g加え、反応を停止した。反応液を更に160℃で1時間保持した。この加熱によりウレトジオン基含有ポリイソシアネートが更に生成した。
反応液を濾過後、流下式薄膜蒸留装置を用いて、未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート化合物は透明の液体であり、収量280g、粘度620mPa.s、NCO含有率23.0%であった。GPCで測定した所、ウレトジオン2量体含有量は12%、数平均分子量が1000以上の割合は10%、イソシアヌレート3量体含有量は61%であった。NMRを測定した所、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は5/95であった。得られたポリイソシアネート化合物をM−1とする。
[合成例2]
イソシアヌレート化反応による転化率を12%とした以外は合成例1と同様に行った。
得られたポリイソシアネート化合物は透明の液体であり、収量230g、粘度300mPa.s、NCO含有率22.6%であった。GPCで測定した所、ウレトジオン2量体含有量は13%、数平均分子量が1000以上の割合は4%、イソシアヌレート3量体含有量は68%であった。NMRを測定したところ、アロファネート/イソシアヌレートのモル比は22/78であった。得られたポリイソシアネート化合物をM−2とする。
[合成例3]
合成例1と同様の装置に、HDI 600gと2−エチル−1−ヘキサノール 1.2gを仕込み、を仕込み、撹拌下反応器内温度を60℃で2時間保持した。その後、イソシアヌレート化触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを0.06g加え、イソシアヌレート化反応を行い、転化率が40%になった時点でリン酸を0.16g加え、反応を停止した。
反応液を濾過後、流下式薄膜蒸留装置を用いて、未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート化合物は透明の液体であり、収量130g、粘度14000mPa.s、NCO含有率23.1%であった。GPCで測定した所、ウレトジオン2量体含有量は0%、数平均分子量が1000以上の含有量は12%、イソシアヌレート3量体含有量は67%であった。NMRを測定した所、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は2/98であった。得られたポリイソシアネート化合物をM−3とする。
[合成例4]
合成例1と同様の装置に、HDI 600gと2−エチル−1−ヘキサノール 60gを仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃で2時間ウレタン化を行った。その後、イソシアヌレート化触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを0.1g加え、イソシアヌレート化反応を行い、転化率が30%になった時点でリン酸を0.2g加え、反応を停止した。
反応液を濾過後、流下式薄膜蒸留装置を用いて、未反応のHDIを除去した。
得られたポリイソシアネート化合物は透明の液体であり、収量290g、粘度400mPa.s、NCO含有率17.8%であった。GPCで測定した所、ウレトジオン2量体含有量は0%、数平均分子量が1000以上の含有量は15%、イソシアヌレート3量体含有量は58%であった。NMRを測定した所、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は63/37であった。得られたポリイソシアネート化合物をM−4とする。
【0041】
[実施例1〜2、及び比較例1〜2]
ポリイソシアネート化合物M−1〜M−4のHAWS/ソルベッソ100=8/2(混合物、アニリン点−5℃(HAWS:商品名、アニリン点17℃、シェルジャパン製、ソルベッソ100:商品名、エクソンモービル有限会社製))への溶解性を調べた結果を表1に示す。なお、表1では、溶解性100%で不合格を×、200%、又は300%で不合格を△、300%で合格を○で表す。
【0042】
[実施例3〜14、及び比較例3〜8]
ポリイソシアネート組成物を以下のようにして作製した。
ポリイソシアネート化合物M−1〜M−4、及び低極性有機溶剤「HAWS」(商品名、アニリン点17℃、シェルジャパン製)あるいは「HAWS/ソルベッソ100=8/2」(混合物、アニリン点−5℃(ソルベッソ100:商品名、エクソンモービル有限会社製))を用いてMx−1〜Mx−4を得た。上記に加えて更にシリケート化合物「MKCシリケート MS58B30」(商品名、ブチル変性メチルシリケートの縮合物、三菱化学株式会社製)あるいは「MKCシリケート MS58B15」(商品名、ブチル変性メチルシリケートの縮合物、三菱化学株式会社製)を用いて、ポリイソシアネート組成物Mx−5〜Mx−12、Qx−3〜Qx−6を得た。また、ポリイソシアネート組成物Mx−3、Mx−6、Mx−12には、添加剤としてHALS(商品名「サノールLS−765」:三共株式会社製の添加剤)をポリイソシアネート化合物に対して1000ppm添加した。得られたポリイソシアネート組成物を表2に示す。実施例3〜14では、得られたポリイソシアネート組成物Mx−1〜Mx−12を用い、比較例3〜8では、得られたポリイソシアネート組成物Qx−1〜Qx−6の23℃12時間後の外観の様子を測定した。結果を表2に併せて示す。なお、表2では、クリアの場合は○、微白濁の場合は△、白濁や分離の場合は×で示している。
【0043】
[実施例15〜26、及び比較例9〜14]
二液型ポリウレタン組成物を以下のようにして作製した。
主剤には、非水分散型(低極性有機溶剤分散型)アクリルポリオール(商品名:ヒタロイド6500、日立化成工業株式会社製、水酸基価=30mgKOH/g(固形分)、Tg=33℃、加熱残分=53%、溶剤組成=ミネラルターペン/ソルベッソ100=44/7)と低極性有機溶剤可溶型アクリルポリオール(商品名:ヒタロイド6500B、日立化成工業株式会社製、水酸基価=30mgKOH/g(固形分)、Tg=35℃、加熱残分=53質量%、溶剤組成=ミネラルターペン)を9/1で混合したものを用いた。
硬化剤には、表2に示すポリイソシアネート組成物Mx−1〜Mx−12、Qx−1〜Qx−6を用いた。主剤と硬化剤をNCO/OH比=1.0で混合し、二液型ポリウレタン組成物を作成した。得られた二液型ポリウレタン組成物をアプリケーターにて乾燥膜厚50ミクロンとなるように塗布し、23℃50%RH条件下で24時間硬化させ塗膜を作製した。実施例15〜26では、ポリイソシアネート組成物Mx−1〜Mx−12を用いた塗膜でゲル分率の測定を行った。比較例9〜14では、ポリイソシアネート組成物Qx−1〜Qx−6を用いた塗膜でゲル分率の測定を行った。結果を表3に示す。なお、表3では、ゲル分率で0〜40%を×、40〜60%を△、60%以上を○で表す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のポリイソシアネート組成物は、低粘度であり、低極性有機溶剤への溶解性が高いポリイソシアネート化合物を含み、本発明のポリイソシアネート組成物を用いた二液型ポリウレタン組成物は、下地を侵し難くなる。つまり、塗り替え作業の際、旧塗膜の除去やシーリング剤の塗布なしに、直接本発明の二液型ポリウレタン組成物を用いた塗料を塗布した場合、リフティングが起こりにくくなる。また、補修作業、重ね塗り作業を行う場合も、下地塗膜を侵すことなく、上塗りが可能となる。更に、低極性有機溶剤は低臭気という性質を併せ持つ場合が多く、塗装作業者や、近くの人に臭気を及ぼし難いという特徴も有する。
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、該ポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた二液型ポリウレタン組成物から得られる塗膜に優れた架橋性を付与することが出来る。
更に、本発明のポリイソシアネート組成物は、低粘度という特徴も有しているため、本発明の二液型ポリウレタン組成物が含有する有機溶剤量を減らすことが可能となる。
従って、本発明のポリイソシアネート組成物を硬化剤として用いた本発明の二液型ポリウレタン組成物は、塗料、インキ、接着剤、インキ、注型材、エラストマー、フォーム、プラスチック材料の原料として使用することができる。中でも、建築用塗料、重防食用塗料、自動車用塗料、家電用塗料、パソコンや携帯電話等の情報機器用塗料に用いることができる。特に、塗り替え用途の建築外装塗料、重防食用塗料に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記(A)、(B)を含むポリイソシアネート組成物:
(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下であるポリイソシアネート化合物。
(B)アニリン点が、−6℃〜70℃である低極性有機溶剤。
【請求項2】
少なくとも、下記(A)、(B)、(C)を含むポリイソシアネート組成物:
(A)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下であるポリイソシアネート化合物。
(B)アニリン点が、−6℃〜70℃である低極性有機溶剤。
(C)下記式(1)で表されるテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びテトラアルコキシシランの誘導物から選ばれる少なくとも1種類のシリケート化合。
【化1】


式中のRは、同一、もしくは異なって炭素数1〜10のアルキル基、またはアリール基である。
【請求項3】
低極性有機溶剤が、第三種有機溶剤等であるである請求項1又は2記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
少なくとも、下記(イ)、(ロ)、(ハ)を含む二液型ポリウレタン組成物:
(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオールを含有する主剤。
(ロ)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下であるポリイソシアネート化合物からなる硬化剤。
(ハ)アニリン点が、−6℃〜70℃である低極性有機溶剤。
【請求項5】
少なくとも、下記(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)を含む二液型ポリウレタン組成物:
(イ)水酸基価が5〜200mgKOH/gであるポリオールを含有する主剤。
(ロ)脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートからなり、a)イソシアヌレート3量体含有量が60質量%〜95質量%、b)モノアルコールから誘導されるアロファネート基と、イソシアヌレート基のモル比が1/99〜30/70、c)ウレトジオン2量体含有量が2質量%〜25質量%、d)数平均分子量が1000以上の多量体が10wt%以下であるポリイソシアネート化合物からなる硬化剤。
(ハ)アニリン点が、−6℃〜70℃である低極性有機溶剤。
(ニ)下記式(2)で表されるテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの縮合物、及びテトラアルコキシシランの誘導物から選ばれる少なくとも1種類のシリケート化合物。
【化2】


式中のRは、同一、もしくは異なって炭素数1〜10のアルキル基、またはアリール基である。
【請求項6】
低極性有機溶剤が、第三種有機溶剤等である請求項4又は5記載の二液型ポリウレタン組成物。

【公開番号】特開2010−280837(P2010−280837A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135894(P2009−135894)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】