説明

ポリイソシアネート組成物およびそれを用いた2液型塗料組成物

【課題】低極性有機溶剤に可溶であるとともに、ポリオール化合物との相溶性に優れ、耐溶剤性および伸展性に優れた塗膜を与え得るポリイソシアネート組成物およびそれを用いた2液型塗料組成物を提供すること。
【解決手段】ベースポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとをウレタン化反応させて得られるポリイソシアネート組成物であって、ベースポリイソシアネートが、アロファネート基とイソシアヌレート基とを、アロファネート基/イソシアヌレート基=80/20〜30/70(モル比)で含有するポリイソシアネート組成物、およびこれを用いた2液型塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物およびそれを用いた2液型塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートを一成分として用いる2液型のウレタン系塗料は、耐候性や耐摩耗性に優れた塗膜を与えることから、従来、建築物、土木構築物等の屋外基材の塗装、自動車の補修、プラスチックの塗装などに使用されている。
この塗料では、ポリイソシアネートの極性の高さから、一般的に、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶剤や、酢酸ブチル等のエステル系溶剤などの強溶剤、すなわち、溶解力の強い溶剤が用いられていた。
【0003】
これらの強溶剤は、臭気が強いため、近年は作業環境の改善や地球環境負荷の低減という点から敬遠される傾向にある。さらに、旧塗膜の上から新たに塗装して塗装の補修や塗り替えを行う際、補修用塗料中に高い溶解力を有する強溶剤が含まれている場合、旧塗膜が膨潤ないしは溶解し、旧塗膜まで補修する必要が発生する虞がある。その結果、塗装作業の拡大化と煩雑化、塗装費用の増大、工期の延長などの問題が生じる場合がある。
【0004】
以上の点に鑑み、近年、低極性有機溶剤に溶解し易いポリイソシアネートの開発が進められている。
例えば、特許文献1(特開平8−198928号公報)には、低極性溶剤による希釈性に優れているポリイソシアネートとして、脂環式ジイソシアネートと、低極性有機溶剤による希釈性が100%以上のポリオールとを反応させて得られたポリイソシアネートが開示されている。また、この文献では、このポリイソシアネートを硬化剤として得られた塗膜が伸展性に優れていることも開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2(特開2008−24828号公報)には、低極性有機溶剤に対する溶解性およびシリケート化合物との相溶性に優れているポリイソシアネートとして、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートと炭素数1〜20のモノアルコールとから得られ、所定のアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比および所定の分子量分布を有するポリイソシアネート化合物が開示されている。
【0006】
上記特許文献1のポリイソシアネートは、低極性有機溶剤に対する溶解性には優れているものの、得られた塗膜の破断伸度は50%程度であり、伸展性という点では改良の余地がある。
一方、特許文献2のポリイソシアネート化合物を用いて得られた塗膜の伸展性も不十分である。
また、いずれのポリイソシアネートも、主剤であるポリオール化合物との相溶性という点において、さらなる改善が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−198928号公報
【特許文献2】特開2008−24828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低極性有機溶剤に可溶であるとともに、ポリオール化合物との相溶性に優れ、耐溶剤性および伸展性に優れた塗膜を与え得るポリイソシアネート組成物およびそれを用いた2液型塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ベースポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとをウレタン化反応させて得られるポリイソシアネート組成物において、ベースポリイソシアネートとして、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が所定範囲のものを用いることで、低極性有機溶剤に対する溶解性が向上するとともに、このポリイソシアネート組成物とポリオールとを含む塗料から得られた塗膜の伸展性および耐溶剤性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
1. ベースポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとをウレタン化反応させて得られるポリイソシアネート組成物であって、前記ベースポリイソシアネートが、アロファネート基とイソシアヌレート基とを、アロファネート基/イソシアヌレート基=80/20〜30/70(モル比)で含有することを特徴とするポリイソシアネート組成物、
2. 前記ベースポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ジイソシアネートと、炭素数3〜20のモノアルコールとを、アロファネート化触媒の存在下で反応させて得られたものを含む1のポリイソシアネート組成物、
3. 前記ベースポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ジイソシアネートと、炭素数3〜20のモノアルコールとを、イソシアヌレート化触媒の存在下で反応させて得られたものを含む1のポリイソシアネート組成物、
4. 前記ベースポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ジイソシアネートと炭素数3〜20のモノアルコールとをアロファネート化触媒の存在下で反応させて得られたアロファネート変性ポリイソシアネート、および脂肪族または脂環式ジイソシアネートのポリイソシアヌレートの混合物からなる1のポリイソシアネート組成物、
5. ベースポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとをウレタン化反応させて得られるポリイソシアネート組成物であって、アロファネート基とイソシアヌレート基とを、アロファネート基/イソシアヌレート基=80/20〜30/70(モル比)で含有し、前記ベースポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ジイソシアネートと炭素数3〜20のモノアルコールとをアロファネート化触媒の存在下で反応させて得られたアロファネート変性ポリイソシアネート、および脂肪族または脂環式ジイソシアネートのポリイソシアヌレートの混合物からなることを特徴とするポリイソシアネート組成物、
6. 前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が1,000〜10,000である1〜5のいずれかのポリイソシアネート組成物、
7. 1〜6のいずれかのポリイソシアネート組成物と、ポリオール化合物とを含む2液型塗料組成物、
8. アニリン点が10〜70℃の低極性有機溶剤、または混合アニリン点が5〜50℃の低極性有機溶剤を含む7の2液型塗料組成物
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリイソシアネート組成物は、低極性有機溶剤(弱溶剤)に対する溶解性に優れるとともに、2液型塗料に用いられるフッ素系やアクリル系のポリオールとの相溶性が良好である。
このポリイソシアネート組成物を用いた2液型塗料組成物から得られた塗膜は、耐溶剤性に優れるうえ、引張強度および引張伸びが大きく、強靱である。
また、本発明の2液型塗料組成物は、低極性有機溶剤(弱溶剤)に可溶であることから、重ね塗りする際に下地層を侵食することがないため、再コート性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るポリイソシアネート組成物は、アロファネート基とイソシアヌレート基とを、アロファネート基/イソシアヌレート基=80/20〜30/70(モル比)で含有するベースポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールとをウレタン化反応させて得られたものである。
【0013】
本発明において、アロファネート基の含有モル比が上記下限よりも少ないと、得られるポリイソシアネートの低極性有機溶剤に対する溶解性が低下して塗料として使用できなくなる。一方、アロファネート基の含有モル比が上記上限を超えると、得られる塗膜の引張強度および耐溶剤性が不十分となる。
より好ましくは、アロファネート基/イソシアヌレート基(モル比)=78/22〜32/68(モル比)、より一層好ましくは、70/30〜40/60である。
なお、このモル比は、1H−NMR測定により算出することができる。
【0014】
上記ベースポリイソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアネートとアルコールとをアロファネート化させたもの、および/またはこれらをイソシアヌレート化させたものを用いることができる。
この場合、ポリイソシアネートとしては、従来公知の各種ポリイソシアネートから適宜選択して用いることができ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化キシレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート等を用いることができる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0015】
これらの中でも、得られる塗膜の耐候性をより高めることを考慮すると、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好適であり、特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートが好ましい。
【0016】
一方、アルコールとしても特に限定されるものではなく、アロファネート変性ポリイソシアネートに用いられるものとしては、例えば、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−へプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、エチルジメチル−1−ヘキサノール、メチル−1−ノナノール、ジメチル−1−オクタノール、テトラメチル−1−ヘキサノール、3−エチル−4,5,6−トリメチルオクタノール、4,5,6,7−テトラメチルノナノール、4,5,8−トリメチルデカノール、4,7,8−トリメチルデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、2−ヘキシルドデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ドデシルデカノール、2−ヘキサデシルオクタデカノール等の炭素数3〜20のモノオール類が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
イソシアヌレート変性ポリイソシアネートに用いられるものとしては、例えば、上述したアロファネート変性ポリイソシアネートに用いられる炭素数3〜20のモノオール類に加え、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物、水添化ビスフェノールA、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート等のジオール類;トリメチロールプロパン、グリセリン等のトリオール類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
これらのアルコールの中でも、得られるポリイソシアネート組成物の低極性有機溶剤に対する溶解性をより高めることを考慮すると、炭素数3〜20のモノオールが好ましく、炭素数3〜18のモノオールがより好ましく、炭素数3〜15のモノオールが最適である。
【0019】
アロファネート化反応は、上述のようなポリイソシアネートとアルコールとを有機溶剤の存在下または非存在下、50〜150℃程度に加熱して行うことができる。
アロファネート化は、ウレタン化と同時に行っても、ウレタン化後に行ってもよい。ウレタン化とアロファネート化とを同時に行う場合、アロファネート化触媒の存在下で反応を行えばよく、ウレタン化後にアロファネート化を行う場合、アロファネート化触媒の非存在下で、所定時間ウレタン化反応を行った後、アロファネート化触媒を添加してアロファネート化反応を行えばよい。
【0020】
アロファネート化触媒としては、公知の触媒から適宜選択して用いることができ、例えば、カルボン酸のジルコニウム塩を用いることができる。上記カルボン酸としては、例えば、酢酸,プロピオン酸,酪酸,カプロン酸,オクチル酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸,シクロペンタンカルボン酸等の飽和単環カルボン酸、ビシクロ(4.4.0)デカン−2−カルボン酸等の飽和複環カルボン酸、ナフテン酸等の上述したカルボン酸の混合物、オレイン酸,リノール酸,リノレン酸,大豆油脂肪酸,トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族カルボン酸、ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸、安息香酸,トルイル酸等の芳香族カルボン酸等のモノカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸類が挙げられる。これらのカルボン酸ジルコニウム塩は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、オクチル酸ジルコニウム、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム等の炭素数10以下のモノカルボン酸ジルコニウム塩を用いることがより好ましい。
なお、アロファネート化触媒の使用量は、ポリイソシアネートとアルコールとの合計質量に対して0.0005〜1質量%が好ましく、0.001〜0.1質量%がより好ましい。
【0021】
有機溶媒の存在下で反応を行う場合、反応に影響を与えない各種有機溶媒を用いることができ、その具体例としては、n−ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
反応終了後、リン酸やリン酸エステル等の反応停止剤を反応系内に加え、30〜100℃で1〜2時間停止反応を行い、アロファネート化反応を停止させる。
反応停止後は、薄膜蒸留等の公知の手法により未反応成分を除去して目的とするアロファネート変性ポリイソシアネートを得ることができる。
得られたアロファネート変性ポリイソシアネートは、(上述のアロファネート基/イソシアヌレート基の範囲を満たすものである場合)そのままベースポリイソシアネートとすることができる。
【0023】
以上のようにして得られるアロファネート変性ポリイソシアネートは、アロファネート基を主として有するものであるが、イソシアネート基が過剰に存在する条件下で反応を行うなどによって副反応が生じ、イソシアヌレート基が生成する。
したがって、アロファネート化における[NCO]/[OH]の比などの各種条件を適宜調整することで、得られるポリイソシアネートにおけるアロファネート基とイソシアヌレート基とのモル比を、80/20〜30/70程度の範囲で適宜調整することができる。
【0024】
一方、イソシアヌレート化反応としては、イソシアヌレート化触媒の存在下、ポリイソシアネートを変性(三量体化)する方法が挙げられる。このような変性方法としては、例えば、特許第3371480号公報、特開2002−241458号公報に記載の方法を用いることができる。
【0025】
イソシアヌレート化触媒としては、例えば、脂肪族カルボン酸の金属塩、カリウムフェノラート等のフェノラート、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノトリメチルシランフェノール、トリエチルアミン、N,N',N''−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、ジアザビシクロウンデセン等のアミン系化合物を用いることができる。中でも、脂肪族カルボン酸の錫塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、ビスマス塩が好ましく、特に、酢酸、プロピオン酸、ウンデシル酸、カプリン酸、オクチル酸、ミリスチル酸の塩が最適である。市販品として、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム・オクチル酸塩(DABCO TMR、三共エアープロダクツ(株)製)、オクチル酸カリウム(DABCO K−15、三共エアープロダクツ(株)製)を用いることもできる。
【0026】
以上のようにして得られるポリイソシアヌレートは、イソシアヌレート基を有するものであるが、反応時に副生したアロファネート基も有している。
得られるポリイソシアヌレートにおけるアロファネート基とイソシアヌレート基とのモル比は、イソシアヌレート化反応時間などを適宜調整することで、80/20〜30/70程度の範囲で調整することができる。
なお、先にアロファネート化したポリイソシアネートを、さらにイソシアヌレート化して、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比を調整してもよい。
【0027】
また、本発明のベースポリイソシアネートは、アロファネート変性ポリイソシアネートと、ポリイソシアネートのポリイソシアヌレートとを配合したものでもよい。
この場合、アロファネート変性ポリイソシアネートとポリイソシアヌレートとを、上述したアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比を満たす割合で混合してもよく、アロファネート変性ポリイソシアネート中に存在するイソシアヌレート基を考慮して、後述するポリエーテルポリオールとの反応生成物(ポリイソシアネート組成物)中において、アロファネート基とイソシアヌレート基とを、アロファネート基/イソシアヌレート基=80/20〜30/70(モル比)を満たすようにしてもよい。
【0028】
アロファネート変性ポリイソシアネートおよびポリイソシヌレートの原料ポリイソシアネートとしては、上述と同様のものが挙げられるが、この場合も脂肪族または脂環式ポリイソシアネートが好ましい。
また、アロファネート変性させる場合に用いられるアルコールとしても、上述と同様のものが挙げられるが、この場合も炭素数3〜20のモノオールが好適である。
なお、イソシアヌレート化の原料ポリイソシアネートには、その一部にポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させて得られたイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含んでいてもよい。
【0029】
以上説明したベースポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールとを、溶媒の存在下または非存在下で反応させることで、本発明のポリイソシアネート組成物を得ることができる。
ベースポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールとの反応条件は特に限定されるものではなく、例えば、必要に応じてウレタン化触媒の存在下、20〜150℃で過剰量のベースポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオールとを反応させる手法が挙げられる。
ベースポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとの反応は、無溶媒でも、溶媒の存在下でも行うことができる。溶媒としては、上述と同様のものが挙げられる。
【0030】
この際、ベースポリイソシアネートの[NCO]と、ポリエーテルポリオールの[OH]とのモル比は、[NCO]が過剰であれば特に限定されるものではないが、得られたポリイソシアネート組成物とポリオール化合物との相溶性を高め、かつ、架橋密度を高めて塗膜性能を高めることを考慮すると、[NCO]/[OH]=1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.7以上がより一層好ましい。
なお、必要に応じて用いられるウレタン化触媒は公知のものから適宜選択することができ、例えば、ジブチル錫ラウレート、ジオクチル錫ラウレートなどを用いることができる。
【0031】
上記ポリエーテルポリオールとしては、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合して得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等、およびこれらの共重合体等が挙げられる。
なお、これらのポリオールは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができるが、低極性溶剤に対する溶解性および得られる塗膜の耐溶剤性を高めることを考慮すると、少なくともポリプロピレングリコールを含むことが好ましい。
【0032】
本発明において、ポリエーテルポリオールの平均官能基数は、特に限定されるものではないが、ベースポリイソシアネートとの反応時のゲル化の抑制や、得られたポリイソシアネート組成物とポリオール化合物との相溶性を良好にするということを考慮すると、2〜4が好ましい。
また、その数平均分子量も特に限定されるものではないが、変性したポリイソシアネートの粘度や低極性溶剤への溶解性や溶解後の粘度などを考慮すると、数平均分子量1,000〜10,000が好ましく、1,000〜8,000がより好ましい。
なお、数平均分子量は、示差屈折率計検出によるゲルパーミェーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)による測定値(ポリスチレン換算値)である。
【0033】
ポリエーテルポリオールの市販品としては、サンニックスPP−1000,PP−2000,PP−3000,GP−1000、GP−3000(以上、三洋化成工業(株)製)、エクセノール−823,828,830,837,840,850,851B,5030(以上、旭硝子ウレタン(株)製)、プレミノール−3005,4002,5001,7001(以上、旭硝子ウレタン(株)製)等が挙げられる。
【0034】
本発明のポリイソシアネート組成物の粘度は、25℃で2,000mPa・s以下であることが好ましく、1,500mPa・s以下であることがより好ましく、1,000mPa・s以下であることがさらに好ましい。ポリイソシアネート組成物の粘度が、2,000mPa・sを超えると、塗料組成物の粘度が高くなり、取り扱い難くなる場合がある。一方、粘度の下限値は特に制限されないが、取り扱いの観点から、50mPa・s以上であることが好ましい。
【0035】
本発明の塗料組成物は、上述したポリイソシアネート組成物に特徴があるため、これと反応硬化させるもう一方の成分としては、当該用途に一般に用いられているポリオール化合物から適宜選択すればよい。
具体例としては、アクリル系ポリオール、フッ素系ポリオールなどが挙げられ、これらの中でも、耐候性を考慮するとフッ素系ポリオールが好適であり、耐候性とコスト面のバランスを考慮するとアクリル系ポリオールが好適である。
また、本発明においては、低極性有機溶剤に対する溶解性が良好であるという本発明のポリイソシアネート組成物の特性から、ポリオール化合物も低極性溶剤に可溶なものが好適である。
【0036】
低極性有機溶剤に可溶なアクリル系ポリオールとしては、特に限定されるものではなく、公知の弱溶剤可溶型アクリル系ポリオールを用いることができる。その具体例としては、市販品である、アクリディックHU−596(DIC(株)製)、ヒタロイド6500(日立化成工業(株)製)等が挙げられる。
【0037】
低極性有機溶剤に可溶なフッ素系ポリオールとしては、特に限定されるものではなく、公知の弱溶剤可溶型フッ素系ポリオールを用いることができる。その具体例としては、フルオロエチレン−ビニルエーテル(ビニルエステル)共重合体等が挙げられる。市販品としては、ルミフロンLF800(旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0038】
上記ポリオール化合物の水酸基価および酸価は特に限定されるものではないが、本発明の塗料では、水酸基価は、1〜300mgKOH/gであることが好ましく、1〜250mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が1mgKOH/g未満では、塗膜の架橋が不十分となり、塗膜強度等の物性が低下する傾向があり、300mgKOH/gを超えると塗膜の架橋密度が高くなり過ぎて硬くなり、基材に対する追従性および柔軟性が低下する場合がある。
一方、酸価は、0.1〜5mgKOH/gが好ましく、0.5〜3mgKOH/gがより好ましい。
また、ポリオール化合物の数平均分子量は、得られる塗膜の強度や、塗料の取り扱い性などを考慮すると、5,000〜20,000が好ましく、7,000〜15,000がより好ましい。数平均分子量は、示差屈折率計検出によるゲルパーミェーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)による測定値(ポリスチレン換算値)である。
【0039】
本発明の塗料組成物中における、ポリイソシアネート組成物とポリオール化合物との配合割合は、ポリオール化合物100質量部に対し、ポリイソシアネート組成物1〜150質量部であることが好ましく、1〜130質量部であることがより好ましく、1〜100質量部であることがより一層好ましい。
【0040】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて、アニリン点が10〜70℃の低極性有機溶剤、または混合アニリン点が5〜50℃の低極性有機溶剤を含有することができる。これらの低極性有機溶剤は、ポリイソシアネート組成物および/またはポリオールの調製時にそれぞれ添加してもよく、ポリイソシアネート組成物とポリオールとの混合時に粘度調整用に添加してもよい。
【0041】
ここで、「アニリン点」とは、等容量のアニリンと試料(有機溶剤)とが均一な混合溶液として存在する最低温度のことである。また、「混合アニリン点」とは、アニリン2容量、試料1容量および1−ヘプタン1容量が均一な混合溶液として存在する最低温度のことである。アニリン点および混合アニリン点はJIS K 2256に記載のアニリン点および混合アニリン点試験方法に準じて測定することができる。
なお、アニリンは凝固点が−6℃であるため、それ以下の温度ではアニリン点は測定できない。そこで、アニリンにヘプタンを混合して有機溶剤の溶解力をより広域に測定するために、混合アニリン点が用いられる。
【0042】
上記アニリン点は10〜70℃が好ましく、10〜65℃がより好ましく、10〜50℃がより好ましい。また、混合アニリン点の場合は5〜50℃が好ましい。アニリン点が10℃未満または混合アニリン点が5℃未満では下地を侵し易くなり、アニリン点が70℃を超えるまたは混合アニリン点が50℃を超えるとポリイソシアネートを溶解し難くなる。
【0043】
このような有機溶剤としては、例えば、メチルシクロヘキサン(アニリン点:40℃)、エチルシクロヘキサン(アニリン点:44℃)、ミネラルスピリット(アニリン点:56℃)、テレビン油(アニリン点:44℃)が挙げられ、また、石油系炭化水素として市販されている商品名で、High Aromatic White Spirit(以下、「HAWS」と表記する)(シェルケミカルズジャパン製、アニリン点:17℃)、Low Aromatic White Spirit(以下、「LAWS」と表記する)(シェルケミカルズジャパン製、アニリン点:44℃)、エッソナフサNo.6(エクソンモービル社製、アニリン点:43℃)、ペガゾール3040(エクソンモービル社製、アニリン点:55℃)、Aソルベント(新日本石油社製、アニリン点:45℃)、クレンゾル(新日本石油社製、アニリン点:64℃)、ミネラルスピリットA(新日本石油社製、アニリン点:43℃)、ハイアロム2S(新日本石油社製、アニリン点:44℃)、ソルベッソ100(エクソンモービル社製、混合アニリン点:14℃)、ソルベッソ150(エクソンモービル社製、混合アニリン点:18.3℃)、スワゾール100(丸善石油化学社製、混合アニリン点:24.6℃)、スワゾール200(丸善石油化学社製、混合アニリン点:23.8℃)、スワゾール1000(丸善石油化学社製、混合アニリン点:12.7℃)、スワゾール1500(丸善石油化学社製、混合アニリン点:16.5℃)、スワゾール1800(丸善石油化学社製、混合アニリン点:15.7℃)、出光イプゾール100(出光興産社製、混合アニリン点:13.5℃)、出光イプゾール150(出光興産社製、混合アニリン点:15.2℃)、ペガゾールARO−80(エクソンモービル社製、混合アニリン点:25℃)、ペガゾールR−100(エクソンモービル社製、混合アニリン点:14℃)、昭石特ハイゾール(シェルケミカルズジャパン社製、混合アニリン点:12.6℃)、日石ハイゾール(新日本石油社製、混合アニリン点:17℃以下)などが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
アニリン点が80℃以下または混合アニリン点が50℃以下である有機溶剤は臭気が少ないという特徴がある。そのため、このような低極性有機溶剤を含有する本発明の塗料組成物は、耐環境性の観点からも優れるものとなる。
また、上記のような低極性有機溶剤は、溶解力が低く下地を侵し難いため、塗料用組成物の重ね塗りが可能となり、補修用の塗料としても有用である。
【0045】
なお、上記塗料組成物は、一般的に塗料に用いられる各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、触媒、硬化促進剤、脱水剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、界面活性剤などが挙げられる。
【0046】
本発明の塗料組成物から塗膜を作製する場合、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、磁器タイル、金属、ガラス、木材、プラスチックなどの適宜な基材に、ハケ塗り、ローラー塗り、吹きつけ塗装などの方法により塗布し、適宜な手法で乾燥、硬化させればよい。
また、乾式建材に塗装を行う場合は、フローコーターまたはロールコーターにより工場等でプレコートしてもよい。
なお、塗料用組成物は基材に直接塗布してもよく、目止め、電着や下塗り(プライマー塗布)、中塗り(着色等)の上から塗布してもよい。また、基材が金属の場合、リン酸鉄処理またはリン酸亜鉛処理等の表面処理が施された上に塗布してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、粘度はB型回転粘度計による測定値である。
【0048】
[1]変性ポリイソシアネートの製造
[合成例1]アロファネート変性ポリイソシアネートの合成
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、NCO含量:49.9質量%、以下HDIという)950g、およびイソプロパノール50gを仕込み、これらを撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行った。
その後、この反応液中にアロファネート化触媒であるオクチル酸ジルコニウム(第一稀元素化学工業(株)製)0.1gを添加し、110℃にて3時間反応させた後、反応停止剤である酸性リン酸エステル(JP−508、城北化学工業(株)製)0.1gを添加し、50℃で1時間停止反応を行った。
この反応生成物から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、NCO含量19.3質量%、粘度(25℃)100mPa・s、遊離のHDI含量0.1質量%の変性ポリイソシアネートS−1を得た。
【0049】
[合成例2]アロファネート変性ポリイソシアネートの合成
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI880g、およびトリデカノール120gを仕込み、これらを撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行った。
その後、この反応液中にアロファネート化触媒であるオクチル酸ジルコニウム(第一稀元素化学工業(株)製)0.1gを添加し、110℃にて3時間反応させた後、反応停止剤である酸性リン酸エステル(JP−508、城北化学工業(株)製)0.1gを添加し、50℃で1時間停止反応を行った。
この反応生成物から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、NCO含量14.8質量%、粘度(25℃)150mPa・s、遊離のHDI含量0.1質量%の変性ポリイソシアネートS−2を得た。
【0050】
[合成例3]HDIのポリイソシアヌレートの合成
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI997g、1,3−ブタンジオール2g、およびフェノール1gを仕込み、さらに、イソシアヌレート化触媒であるカプリン酸カリウム0.2gを仕込み、50℃で1.5時間反応させた。その後、直ちに65℃に昇温して1時間反応させ、NCO含量が44.8質量%に到達した時点で反応停止剤であるリン酸0.1gを添加し、1時間停止反応を行った。
この反応生成物から、薄膜蒸留(条件:130℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、NCO含量23.2質量%、粘度(25℃)1,180mPa・s、遊離のHDI含量0.2質量%の変性ポリイソシアネートS−3を得た。
【0051】
[合成例4]HDIのポリイソシアヌレートの合成
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI880g、およびトリデカノール120gを仕込み、これらを撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行った。
その後、この反応液中にイソシアヌレート化触媒であるニッカオクチックス錫(日本化学産業(株))0.15gを添加し、110℃で反応を行い、NCO含量が36.9質量%に到達した時点で反応停止剤であるリン酸0.1gを添加し、1時間停止反応を行った。
この反応生成物から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、NCO含量15.8質量%、粘度(25℃)320mPa・s、遊離のHDI含量0.1質量%の変性ポリイソシアネートS−4を得た。
【0052】
[合成例5]HDIのポリイソシアヌレートの合成
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI880g、およびトリデカノール120gを仕込み、これらを撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行った。
その後、この反応液中にイソシアヌレート化触媒であるニッカオクチックス錫(日本化学産業(株))0.15gを添加し、110℃で反応を行い、NCO含量が32.6質量%に到達した時点で反応停止剤であるリン酸0.1gを添加し、1時間停止反応を行った。
この反応生成物から、薄膜蒸留(条件:140℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、NCO含量16.5質量%、粘度(25℃)800mPa・s、遊離のHDI含量0.1質量%の変性ポリイソシアネートS−5を得た。
【0053】
[合成例6]HDIのポリイソシアヌレートの合成
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、HDI910g、および2−エチルヘキサノール90gを仕込んだ後、直ちに80℃に加熱し、2時間ウレタン化反応を行った。
その後、この反応液中にイソシアヌレート化触媒であるニッカオクチックス錫(日本化学産業(株))0.05gを添加し、110℃で反応を行い、NCO含量が36.9質量%に到達した時点で反応停止剤であるリン酸0.1gを添加し、1時間停止反応を行った。
この反応生成物から、薄膜蒸留(条件:130℃,0.04kPa)により過剰のHDIを除去し、NCO含量17.3質量%、粘度(25℃)470mPa・s、遊離のHDI含量0.1質量%の変性ポリイソシアネートS−6を得た。
【0054】
[2]ポリイソシアネート組成物の製造
[実施例1]
攪拌機、温度計、冷却管、および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、ベースポリイソシアネートとして合成例1で得られた変性ポリイソシアネートS−1 147g、合成例3で得られた変性ポリイソシアネートS−3、およびポリエーテルポリオール(エクセノール−851B、数平均分子量6,700、旭硝子ウレタン(株)製)90gを仕込み、85℃に加熱し、4時間ウレタン化反応を行い、NCO含量13.8質量%、粘度(25℃)1170mPa・sのポリイソシアネート組成物P−1を得た。
【0055】
[実施例2〜12]
表1に示される各成分を、表1に示される配合割合(g)で仕込んだ以外は、実施例1と同様にして、ポリイソシアネート組成物P−2〜P−12を得た。
【0056】
[比較例1〜8]
表2に示される各成分を、表2に示される配合割合(g)で仕込んだ以外は、実施例1と同様にして、ポリイソシアネート組成物P−13〜P−20を得た。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表1および表2において、使用したポリオールの詳細は以下のとおりである。
エクセノール851B:ポリ(オキシプロピレン)ポリオール
数平均分子量6,700
旭硝子ウレタン(株)製
サンニックスPP−3000:ポリ(オキシプロピレン)ポリオール
数平均分子量3,000
三洋化成工業(株)製
サンニックスGP−3000:ポリ(オキシプロピレン)ポリオール
数平均分子量3,000
三洋化成工業(株)製
【0060】
上記各実施例および比較例で得られたポリイソシアネート組成物P−1〜P−20について、それぞれアロファネート基とイソシアヌレート基との(生成)モル比を下記手法により測定した。結果を表3に示す。
なお、アロファネート基とイソシアヌレート基との(生成)モル比は、使用した全ベースポリイソシアネート中のそれらのモル比と同一である。
[測定法]
1H−NMR(ECX400M、日本電子製)を用いて、8.55ppm付近のアロファネート基の窒素原子に結合した水素原子のシグナルと、3.85ppm付近のイソシアヌレート基の窒素原子に隣接したメチレン基の水素原子のシグナルの面積比から求めた。具体的な測定条件は以下のとおりである。
測定温度:23℃
試料濃度:0.1g/1ml
積算回数:16回
緩和時間:1秒
溶媒:重水素クロロホルム
化学シフト基準:CDCl3中のCHCl3の水素原子のシグナル(7.24ppm)
【0061】
また、上記各実施例および比較例で得られたポリイソシアネート組成物P−1〜P−20について、HAWS(シェルケミカルズ製、アニリン点15℃)に対する25℃での溶解性を以下の手法により測定した。結果を表3に併せて示す。
[測定法]
ポリイソシアネート組成物をHAWSにて希釈後、25℃で一日静置し、濁りの無い最大の希釈倍率を求めた。
【0062】
【表3】

【0063】
表3に示されるように、各実施例で得られたポリイソシアネート組成物は、低極性溶剤であるHAWSに対する溶解性に優れていることがわかる。
【0064】
[3]2液型塗料組成物の製造
[実施例13〜24,比較例9〜16]
実施例1〜12および比較例1〜8で得られたポリイソシアネート組成物S−1〜S−20、アクリルポルオール(アクリディック HU−596、DIC(株)製)、およびHAWS(シェルケミカルズ製)を表4または表5に示される割合(g)で配合して2液型塗料組成物を調製した。
【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
上記実施例13〜24および比較例9〜16で調製した2液型塗料組成物を、それぞれメチルエチルケトンで脱脂した鋼板(JIS G3141 商品名SPCC−SB、PF−1077処理、日本テストパネル工業(株)製)にアプリケーターを用い、ウェット膜厚100μmで塗布し、温度20℃、相対湿度65%の環境下で7日間養生を行い、乾燥膜厚40〜50μmの塗膜を形成させた。
得られた塗膜について、塗膜の架橋密度による耐溶剤性について、下記(1)記載の方法によって評価を行った。結果を表6に示す。
また、下記(2)記載の方法によって形成した塗膜の引張物性を確認した。結果を併せて表6に示す。
なお、比較例12および14については、ポリイソシアネートP−16およびP−18の溶解性が不足しているため、塗膜試験は実施しなかった。
【0068】
(1)耐溶剤性
以下の手法により溶剤ラビング試験を実施した。
ミネラルスピリットA(新日本石油(株)製)で湿らせた脱脂綿で塗膜の表面を軽く擦り、1往復1回として、塗膜が損傷するまでの回数を測定し、下記基準により評価した。
×:19回以下
△:20〜29回
○:30〜49回
◎:50回以上
(2)塗膜の引張物性
表4および5に示す各配合液を離型紙とガイドを貼り付けたガラス板に塗布し、温度20℃、相対湿度65%の環境下で7日間養生を行い、乾燥膜厚100μmの塗膜を形成させた。得られた塗膜からダンベルカッターを用いて試験片を作製し、塗膜の引張物性(破断時強度と100%伸長)を確認した。
試験片:4号ダンベル型
引張速度:200mm/min
100%伸長の評価
○:破断時伸びが100%以上
×:破断時伸びが100%未満
【0069】
【表6】

【0070】
表6に示されるように、実施例13〜24の塗料組成物から得られた塗膜は、比較例の塗膜と比べて引張強度および耐溶剤性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとをウレタン化反応させて得られるポリイソシアネート組成物であって、
前記ベースポリイソシアネートが、アロファネート基とイソシアヌレート基とを、アロファネート基/イソシアヌレート基=80/20〜30/70(モル比)で含有することを特徴とするポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ベースポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ジイソシアネートと、炭素数3〜20のモノアルコールとを、アロファネート化触媒の存在下で反応させて得られたものを含む請求項1記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ベースポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ジイソシアネートと、炭素数3〜20のモノアルコールとを、イソシアヌレート化触媒の存在下で反応させて得られたものを含む請求項1記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記ベースポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ジイソシアネートと炭素数3〜20のモノアルコールとをアロファネート化触媒の存在下で反応させて得られたアロファネート変性ポリイソシアネート、および脂肪族または脂環式ジイソシアネートのポリイソシアヌレートの混合物からなる請求項1記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
ベースポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとをウレタン化反応させて得られるポリイソシアネート組成物であって、
アロファネート基とイソシアヌレート基とを、アロファネート基/イソシアヌレート基=80/20〜30/70(モル比)で含有し、
前記ベースポリイソシアネートが、脂肪族または脂環式ジイソシアネートと炭素数3〜20のモノアルコールとをアロファネート化触媒の存在下で反応させて得られたアロファネート変性ポリイソシアネート、および脂肪族または脂環式ジイソシアネートのポリイソシアヌレートの混合物からなることを特徴とするポリイソシアネート組成物。
【請求項6】
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が1,000〜10,000である請求項1〜5のいずれか1項記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のポリイソシアネート組成物と、ポリオール化合物とを含む2液型塗料組成物。
【請求項8】
アニリン点が10〜70℃の低極性有機溶剤、または混合アニリン点が5〜50℃の低極性有機溶剤を含む請求項7記載の2液型塗料組成物。

【公開番号】特開2010−53238(P2010−53238A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219368(P2008−219368)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】