説明

ポリイソシアネート組成物及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】 貯蔵安定性が非常に高く、反応発泡の際における離型性、キュア性等の成型性も良好であり、さらにそれを用いると引き裂き強度、引張り強度といった機械的物性及び反発弾性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られるポリイソシアネート組成物を提供すること。
【解決手段】 2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜90質量%であるジフェニルメタンジイソシアネートと、オキシエチレン含量が1〜40質量%、平均ヒドロキシル当量が700〜2500及び公称平均官能基数が2〜6であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとの、イソシアネート基含量が15〜30質量%である反応生成物を含むことを特徴とするポリイソシアネート組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォーム用のポリイソシアネート組成物、並びにそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォームは適当な大きさにカットされ、家具や自動車座席用等のクッション材、寝具用マットレス、枕、工業用シール材、防音材等幅広い用途に用いられている。近年、高齢化に伴い家具やマットレス用途において良好なサポート性、更には難燃性の高いフォームに対するニーズが大きくなってきている。また、生産現場においては高反応性かつ高キュア性の生産効率の高い原料システムが望まれている。
【0003】
軟質ポリウレタンフォームとしてトルエンジイソシアネートをポリイソシアネート成分に用いた技術が既に広く知られている。しかしながら、トルエンジイソシアネートの凝固点は常圧下で約17℃と高く、冬場に固化してしまうために保温、温調が必要であった。
【0004】
また、最近では、生産場所でのイソシアネートの作業者の健康への影響、及び反応性向上の観点から蒸気圧の低いジフェニルメタンジイソシアネートをポリイソシアネート成分に用いた軟質ポリウレタンフォームも提案されている。しかしながら、従来のジフェニルメタンジイソシアネートの主成分である4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの凝固点は常圧下で約38℃とトルエンジイソシアネートに比べ更に高く、プレポリマー化等の前処理が必要であり、その結果として非常に高粘度となるため、作業性の悪化や生産設備条件による制限等の問題点があった。
【0005】
このような状況の下、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを比較的多く含有するジフェニルメタンジイソシアネートをポリイソシアネート成分に用いた技術が以下の公報に記載されている。
【0006】
すなわち、特開2002−322236号公報(特許文献1)には、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを20〜50質量%含むジフェニルメタンジイソシアネートと、公称官能基数が2〜4で平均ヒドロキシル当量が200〜2,500のポリオキシアルキレンポリオールとを反応させて得られるイソシアネート基含量が23〜33質量%のポリイソシアネート組成物を用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法が開示されている。
【0007】
また、特開2001−2749号公報(特許文献2)には、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを5〜30質量%含むジフェニルメタンジイソシアネートと、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、オキシエチレン含量が50質量%未満で官能基数が2〜4で平均ヒドロキシル当量が200〜2500のポリエーテルポリオールと、オキシエチレン含量が50質量%以上で官能基数2〜4で平均ヒドロキシル当量が200〜2500のポリエーテルポリオールとを反応させて得られるイソシアネート基含量が10〜25質量%のポリイソシアネート組成物を用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法が開示されている。
【0008】
さらに、特開平6−41265号公報(特許文献3)には、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25〜70質量%含むジフェニルメタンジイソシアネートと、オキシエチレン含量が50〜90質量%で官能基数が2〜6で平均ヒドロキシル当量が700〜2000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとを反応させて得られるイソシアネート基含量が2〜31質量%のポリイソシアネート組成物を用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法が開示されている。なお、特許文献3において実質的に記載されているジフェニルメタンジイソシアネートは、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを30質量%含むもののみである。
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法をはじめ従来の軟質ポリウレタンフォームの製造方法はいずれも、用いるポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性、反応発泡の際における離型性、キュア性等の成型性、並びに得られる軟質ポリウレタンフォームの機械的物性及び反発弾性のうちの少なくともいずれかの点で未だ十分なものではなかった。
【特許文献1】特開2002−322236号公報
【特許文献2】特開2001−2749号公報
【特許文献3】特開平6−41265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、以下の(i)〜(iii)の全ての点に対してバランス良く高水準に達成することが可能なポリイソシアネート組成物及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することを目的とする。
(i)ポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が高いこと。
(ii)反応発泡の際における離型性、キュア性等の成型性が良好であること。
(iii)引き裂き強度、引張り強度といった機械的物性及び反発弾性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、従来は生産技術上の問題から入手が困難であったものの近年は入手することが可能となった2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの含量が高いものを用いて2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜90質量%であるジフェニルメタンジイソシアネートを採用すると共に、オキシエチレン含量が1〜40質量%、平均ヒドロキシル当量が700〜2500及び公称平均官能基数が2〜6であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールを用いてイソシアネート基含量が15〜30質量%である反応生成物を得ることにより、得られるポリイソシアネート組成物は貯蔵安定性が非常に高く、反応発泡の際における離型性、キュア性等の成型性も良好であり、さらにそれを用いると引き裂き強度、引張り強度といった機械的物性及び反発弾性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のポリイソシアネート組成物は、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜90質量%であるジフェニルメタンジイソシアネートと、オキシエチレン含量が1〜40質量%、平均ヒドロキシル当量が700〜2500及び公称平均官能基数が2〜6であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとの、イソシアネート基含量が15〜30質量%である反応生成物を含むことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、発泡剤としての水(D)、及び整泡剤(E)の混合液を反応発泡せしめる軟質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリイソシアネート組成物(A)は、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜90質量%であるジフェニルメタンジイソシアネートと、オキシエチレン含量が1〜40質量%、平均ヒドロキシル当量が700〜2500及び公称平均官能基数が2〜6であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとの、イソシアネート基含量が15〜30質量%である反応生成物を含むポリイソシアネート組成物であることを特徴とする方法である。
【0014】
本発明にかかる前記ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜80質量%のものであることがより好ましい。
【0015】
また、本発明にかかる前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとしては、オキシエチレン含量が10〜20質量%のものであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の(i)〜(iii)の全ての点に対してバランス良く高水準に達成することが可能なポリイソシアネート組成物及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することが可能となる。
(i)ポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が高いこと。
(ii)反応発泡の際における離型性、キュア性等の成型性が良好であること。
(iii)引き裂き強度、引張り強度といった機械的物性及び反発弾性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0018】
先ず、本発明のポリイソシアネート組成物について説明する。本発明のポリイソシアネート組成物は、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜90質量%であるジフェニルメタンジイソシアネートと、オキシエチレン含量が1〜40質量%、平均ヒドロキシル当量が700〜2500及び公称平均官能基数が2〜6であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとの、イソシアネート基含量が15〜30質量%である反応生成物(プレポリマーであるウレタン変性ポリイソシアネート)を含むことを特徴とするものである。
【0019】
本発明にかかるジフェニルメタンジイソシアネート(以下、場合により「MDI」という)においては、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、場合により「2,4’−MDI」という)の含量が55〜90質量%であることが必要であり、55〜80質量%であることがより好ましく、55〜70質量%であることが特に好ましい。
【0020】
本発明にかかるMDIにおける2,4’−MDIの比率が55質量%未満では得られるポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が損なわれて不十分となり、他方、90質量%を超えると発泡倍率が低下してしまい、金型内に軟質ポリウレタンフォームを良好に充填することができない。
【0021】
このような本発明にかかるMDIは、従来は生産技術上の問題から入手が困難であったものの近年は入手することが可能となった2,4’−MDIの含量が高いMDIをそのまま、或いは2,4’−MDIの含量が低いMDIと混合して得ることができる。
【0022】
なお、本発明にかかるMDIにおける2,4’−MDIの含量とは、MDIを構成する異性体である2,4’−MDIと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、場合により「4,4’−MDI」という)と2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、場合により「2,2’−MDI」という)との合計量における2,4’−MDIの量の割合(重量基準)をいう。
【0023】
また、2,4’−MDIと共に本発明にかかるMDIを構成する異性体である4,4’−MDI及び2,2’−MDIの含量は特に限定されないが、4,4’−MDIの含量は8〜44.9質量%程度、2,2’−MDIの含量は0.1〜2質量%程度であることが好ましい。
【0024】
上記本発明にかかるMDIを用いて得られる本発明のポリイソシアネート組成物は貯蔵安定性が高いため、従来は貯蔵安定性の向上等を目的として用いられてきたいわゆるポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(以下、場合により「ポリメリックMDI」という)を配合する必要はない。したがって、本発明においてはかかるポリメリックMDIを用いないことが好ましいが、ポリメリックMDIを配合する場合はポリイソシアネート組成物において10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。なお、ポリメリックMDIは、ジフェニルメタンジイソシアネートとベンゼン環を3個以上有する多核体からなるポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートとからなり、例えば、日本ポリウレタン工業のミリオネート(登録商標)MR−100、ミリオネートMR−200等として入手することができる。また、ポリメリックMDIを配合する場合は、ポリメリックMDI中の2,4’−MDIも合算して前記2,4’−MDIの含量を求める。
【0025】
本発明のポリイソシアネート組成物の合成に使用されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールにおいては、オキシエチレン含量が1〜40質量%であることが必要であり、10〜20質量%であることがより好ましい。かかるオキシエチレン含量が1質量%未満では湿潤状態(Wet)における圧縮永久歪みが悪化し、他方、40質量%を超えると得られるポリイソシアネート組成物を反応発泡させる際における離型性、キュア性等の成型性が悪化し、金型等を用いて軟質ポリウレタンフォームを形成することが困難となる。
【0026】
また、本発明にかかるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールにおいては、平均ヒドロキシル当量が700〜2500(より好ましくは1000〜2000)及び公称平均官能基数が2〜6であることが必要であり、数平均分子量は1400〜12000であることが好ましい。かかる平均ヒドロキシル当量が700未満では得られるポリウレタンフォームの柔軟性が低下し、他方、2500を超えると得られるポリウレタンフォームの機械的強度が低下する。なお、「公称平均官能基数」とは、ポリオールを得る際に用いられる開始剤の(平均)官能基数をいう。
【0027】
このようなポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールは、水;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等のアミノアルコール類;或いはエチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、メチレンビスアニリン等のアミン類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等をブロック又はランダムに開環付加させて得ることができる。
【0028】
本発明のポリイソシアネート組成物は、前記ジフェニルメタンジイソシアネートと前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとの反応生成物を含むものであり、これらの配合比は特に限定されないが、60〜98質量部のMDIと2〜40質量部のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとの反応生成物であることが好ましい。本発明のポリイソシアネート組成物におけるMDI成分の含量が前記下限未満では得られるポリウレタンフォームの柔軟性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると貯蔵安定性が低下する傾向にある。
【0029】
本発明のポリイソシアネート組成物における前記反応生成物のイソシアネート基含量(NCO含量)は15〜30質量%である。かかるNCO含量が15質量%未満では、発泡倍率が低下してしまい、金型内に軟質ポリウレタンフォームを良好に充填することができず、フォームを形成することが困難となり、他方、30質量%を超えると貯蔵安定性が低下する。
【0030】
前記ジフェニルメタンジイソシアネートと前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとを反応せしめる合成法としては特に制限されるものではなく、MDIとポリオールを全量仕込みプレポリマー化する方法、MDIの一部とポリオールを反応させてから残りのMDIを混合する方法等が適用できる。
【0031】
なお、流れ性、硬さ、発泡速度調整等の目的で他のイソシアネートを一部併用することもできる。具体例としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネートや、これらジイソシアネートのビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトンイミン変性体、カルボジイミド変性体、ポリオール変性体が挙げられる。
【0032】
また、ヒートシール性及び後加工での接着性改良を目的とし上記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのトータル量を超えない範囲で、他のポリオールを併用することができる。その具体例としては、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸等のジカルボン酸と、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3ーメチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオールのジオールや、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールとの重縮合反応により得られるポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン等の環状ラクトン類をエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等を開始剤として開環重合して得られるポリエステルポリオール、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られるポリテトラメチレングリコール、ヒマシ油、大豆油、パーム油等の動植物系ポリオール、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン等のポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
【0033】
次に、本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法について説明する。本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、発泡剤としての水(D)、及び整泡剤(E)の混合液を反応発泡せしめる軟質ポリウレタンフォームの製造方法であって、前記ポリイソシアネート組成物(A)が上記本発明のポリイソシアネート組成物であることを特徴とする方法である。
【0034】
本発明にかかるポリオール(B)としては、特に限定されないが、軟質ポリウレタンフォームとしての物性を発現しやすい、平均ヒドロキシル当量が700〜2500及び公称平均官能基数が2〜6のポリエーテルポリオールを主体とするものが好ましい。
【0035】
このようなポリエーテルポリオールとしては、公知のものが使用でき、例えば、(数平均)分子量700未満の低分子量ポリオール類、低分子量ポリアミン類、低分子量アミノアルコール類等を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドや、テトラヒドロフラン等の環状エーテルを付加させて得られるものが挙げられる。このような開始剤としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール類;アニリン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子量アミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の低分子量アミノアルコール類等が挙げられる。
【0036】
また、かかる平均ヒドロキシル当量が前記下限未満では得られるポリウレタンフォームの柔軟性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られるポリウレタンフォームの機械的強度が低下する傾向にある。
【0037】
このようなポリエーテルポリオールは、水;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等のポリオール類;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等のアミノアルコール類;或いはエチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、トリエチレンテトラアミン、アニリン、トルイレンジアミン、メチレンビスアニリン等のアミン類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等をブロック又はランダムに開環付加させて得ることもできる。
【0038】
また、硬さ調整を目的として、ポリオール中でビニル系モノマーを通常の方法で重合せしめて製造したポリマーポリオールを更に併用することができる。このようなポリマーポリオールとしては、前記と同様のポリエーテルポリオールを用い、ラジカル開始剤の存在下でビニル系モノマーを重合させ、安定分散させたものが挙げられる。また、ビニル系モノマーとしては、例えばアクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ヒドロキシアルキル、メタアクリレート、アルキルメタアクリレートが挙げられ、中でもアクリロニトリル、スチレンが好ましい。このようなポリマーポリオールの具体例としては、旭硝子ウレタン社製のEL−910、EL−923、三洋化成工業社製のFA−728R等が挙げられる。
【0039】
本発明に使用される触媒(C)としては、当業界で公知の各種ウレタン化触媒や三量化触媒を用いることができる。代表例としてはトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N''−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の三級アミン、ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等の反応型三級アミン又はこれらの有機酸塩、1−メチイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ナフテン酸亜鉛等の有機金属化合物、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等の三量化触媒が挙げられる。反応をマイルドに、かつ、高キュア性のバランスから、触媒として少なくともイミダゾール系とエーテル基含有三級アミン化合物を用いることが好ましく、特に好ましい触媒は1,2−ジメチルイミダゾールとビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテルとの組み合わせである。
【0040】
本発明に使用される発泡剤(D)はイソシアネート基と水との反応で発生する炭酸ガスにより発泡させるものであるが、低密度化を目的に二酸化炭素を液状で混合し発泡時に気化発泡する方式を併用することもできる。水の量はポリイソシアネート組成物100質量部に対し2〜20質量部が好ましい。液化炭酸ガスを併用する場合はその量としてポリイソシアネート組成物100質量部に対し0.5〜6質量部が好ましい。
【0041】
本発明に使用される整泡剤(E)は当業界で公知の有機珪素系界面活性剤であり、例えば、東レ・ダウコーニング社製のSZ−1328、SZ−1325、SZ−1336、SZ−3601、GE東芝シリコン社製のL−3165、L−3151、L−3417、L−3415、ゴールドシュミット社製のB−8727LF、B−8724LF、B−8729LF、B−8715LF、信越化学社製のF−122等が挙げられる。これら整泡剤の量はポリイソシアネート組成物100質量部に対し0.1〜3質量部が好ましい。
【0042】
また、本発明にはセルの安定化を目的としてジエタノールアミン又はトリエタノールアミンを添加することができる。好ましい添加量はポリオール成分100質量部に対し0.5〜5質量部である。
【0043】
本発明は更に必要に応じ、トリクロロエチルホスフェート、トリクロロプロピルホスフェート、これらの縮合タイプに代表されるリン−ハロゲン系液状難燃剤、メラミン粉末に代表される固体難燃剤、ケッチェンブラックに代表される導電性カーボン、ジオクチルフタレート等の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、内部離型剤、その他の助剤を用いることができる。なおこれらの助剤は通常ポリオールに添加して用いられるが、イソシアネートと反応し得る活性水素を有しない助剤はポリイソシアネート組成物にあらかじめ混合しておくこともできる。
【0044】
本発明のポリイソシアネート組成物中の全イソシアネート基と水を含むイソシアネート反応性化合物中の全イソシアネート反応性基の当量比(NCO/NCO反応性基)としては0.5〜1.5(イソシアネートインデックス(NCO INDEX)=50〜150)であることが好ましく、0.7〜1.2(イソシアネートインデックス(NCO INDEX)=70〜120)であることがより好ましい。
【0045】
本発明の軟質ポリウレタンフォームの製造方法において上述のポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、発泡剤(D)及び整泡剤(E)の混合液を反応発泡せしめる具体的な方法は特に限定されず、例えば原料混合用として当業界で公知のローター回転式又は高圧衝突混合式の混合ヘッドを有する多成分型の発泡機を用いる方法が好適に採用され、ヘッドからの混合液が箱状又は連続的にベルトコンベア上で発泡することにより任意の大きさのスラブフォームを得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、文中の「部」、「%」は質量基準であるものとする。また、実施例及び比較例において用いた原料は以下のとおりである。
【0047】
(使用原料)
<イソシアネート>
MDI−1:2,4’−MDIを98%、4,4’−MDIを0.8%、2,2’−MDIを1.2%含有するジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業社製
MDI−2:2,4’−MDIを18.6%、4,4’−MDIを81%、2,2’−MDIを0.4%含有するジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業社製
<ポリオール>
EL−838:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、公称平均官能基数4、平均ヒドロキシル当量2000、数平均分子量8000、EO含量13%、旭硝子社製
QB−8000:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、公称平均官能基数4、平均ヒドロキシル当量2000、数平均分子量8000、EO含量80%、東邦化学社製
EL−837:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、公称平均官能基数3、平均ヒドロキシル当量2000、数平均分子量6000、EO含量17%、旭硝子社製
EL−910:ポリマーポリオール、公称平均官能基数3、平均ヒドロキシル当量1633、数平均分子量4900、EO含量14.5%、旭硝子社製
PP−2000:ポリオキシプロピレンポリオール、公称平均官能基数2、平均ヒドロキシル当量1000、数平均分子量2000、EO含量0%、三洋化成工業社製
PEG−2000:ポリオキシエチレンポリオール、公称平均官能基数2、平均ヒドロキシル当量1000、数平均分子量2000、EO含量100%、三洋化成工業社製
<触媒>
TEDA−L33:トリエチレンジアミン33%DPG溶液、東ソー社製
Toyocat−ET:70%ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、30%ジプロピレングリコール、東ソー社製
<ポリマーポリオール>
TELA:トリエタノールアミン、三井化学社製
<整泡剤>
F−122:シリコーン系整泡剤、信越化学社製。
【0048】
(実施例1〜7及び比較例1〜6)
<ポリイソシアネート組成物の調製>
実施例1においては、以下のようにしてポリイソシアネート組成物(C−60)を調製した。すなわち、攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応器を窒素置換した後、MDI−1を32kg及びMDI−2を30kg仕込み(MDIの組成は表1に示すとおり)、80℃に加温した。次いでEL−838を38kg仕込み、攪拌しながら80℃にて4時間反応させて、MDIイソシアネート基末端プレポリマー(反応生成物)を含有するポリイソシアネート組成物(C−60)を得た。得られたプレポリマーにおけるNCO含量は20.0%であり、2,4’−MDI含量は58.6%であった。
【0049】
また、実施例2〜4及び比較例1〜3においても実施例1と同様に、表1に記載のポリイソシアネート組成物(実施例2:C−70、実施例3:C−80、実施例4:C−90、比較例1:C−19、比較例2:C−40、比較例3:C−98)を得た。得られたプレポリマーにおけるNCO含量及び2,4’−MDI含量は表1に示すとおりであった。
【0050】
さらに、比較例4〜5においては、EL−838に代えてQB−8000を用いて実施例1と同様に、表1に記載のポリイソシアネート組成物(比較例4:C−60a、比較例5:C−60b)を得た。得られたプレポリマーにおけるNCO含量及び2,4’−MDI含量は表1に示すとおりであった。
【0051】
また、実施例5〜7及び比較例6においては、EL−838に代えてPP−2000及びPEG−2000を用いて実施例1と同様に、表2に記載のポリイソシアネート組成物(実施例5:C−60PEG5、実施例6:C−60PEG15、実施例7:C−60PEG25、比較例6:C−60PEG50)を得た。得られたプレポリマーにおけるNCO含量及び2,4’−MDI含量は表2に示すとおりであった。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
<貯蔵安定性試験>
実施例1、実施例3、比較例1及び比較例2で得られたポリイソシアネート組成物を用いて以下のようにして貯蔵安定性を評価した。すなわち、各ポリイソシアネート組成物を0℃、5℃、室温(25℃)の温度条件下でそれぞれ貯蔵し、目視にて濁り、析出、沈殿等によって外観に変化が確認されるまでの時間を求めた。得られた結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
表3に示した結果から明らかなように、実施例1及び実施例3で得られた本発明のポリイソシアネート組成物はいずれも貯蔵安定性が非常に良好であり、特に実施例1で得られたポリイソシアネート組成物は貯蔵安定性に優れていることが確認された。
【0057】
<ポリオールプレミックスの調製>
EL−837を80kg、EL−910を20kg、TEDA−L33を0.55kg、水を5.2kg、F−122を1kg、TELAを3kg、Toyocat−ETを0.2kg、及びQB−8000を3kg容器に仕込み、攪拌・混合してポリオールプレミックスを得た。
【0058】
<軟質ポリウレタンフォームの調製>
実施例1〜7及び比較例3〜6で得られたポリイソシアネート組成物と、上記のポリオールプレミックスとを用いて以下のようにして軟質ポリウレタンフォームを調製した。すなわち、各ポリイソシアネート組成物と前記ポリオールプレミックスとを22〜24℃で温調し、それらをNCOインデックス{(イソシアネート基/水酸基)×100(当量比)}が90となる割合で混合し、3000rpmで7秒間攪拌・混合した。その後、得られた混合液を58〜62℃の金型(長さ300mm×幅300mm×厚さ100mm)に注型し、5分間反応発泡(キュア)せしめた後、脱型することにより軟質ポリウレタンフォームを得た。
【0059】
その結果、実施例1〜7で得られたポリイソシアネート組成物を用いた場合は軟質ポリウレタンフォームを得ることができたが、比較例3で得られたポリイソシアネート組成物を用いた場合は、発泡倍率が低下してしまい、金型内に軟質ポリウレタンフォームを良好に充填することができなかった。また、比較例4及び比較例6で得られたポリイソシアネート組成物を用いた場合は、ポリウレタンフォームが陥没してしまい、結果的に軟質ポリウレタンフォームを得ることができなかった。さらに、比較例5で得られたポリイソシアネート組成物を用いた場合は、離型性やキュア性等の成型性が悪化してしまった。
【0060】
<物性測定試験>
実施例1〜7で得られた軟質ポリウレタンフォームについて、以下のようにして諸物性(フォーム物性)を測定した。すなわち、JIS K6400(1997)に記載の方法に準拠して以下の諸物性{密度(全密度、コア密度)、圧縮試験(サンプル厚み:約100mm)による硬度及び元厚み、反発弾性率、機械的物性(引張強度、破断時伸び率、引裂強度)、圧縮永久歪み)について測定を行った。得られた結果を表4及び表5に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
表4及び表5に示した結果から明らかなように、本発明のポリイソシアネート組成物を用いて本発明の方法によって得られた軟質ポリウレタンフォームはいずれも、上記の諸物性(フォーム物性)について優れたものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明によれば、以下の(i)〜(iii)の全ての点に対してバランス良く高水準に達成することが可能なポリイソシアネート組成物及びそれを用いた軟質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することが可能となる。
(i)ポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が高いこと。
(ii)反応発泡の際における離型性、キュア性等の成型性が良好であること。
(iii)引き裂き強度、引張り強度といった機械的物性及び反発弾性に優れた軟質ポリウレタンフォームが得られること。
【0065】
したがって、本発明により得られる軟質ポリウレタンフォームは耐久性、サポート性等に優れており、ソファー等の家具用クッション材、衣料用、自動車や鉄道車両用クッション材、自動車内装材、マットレス、布団、枕等の寝具用、吸音材、遮音材、家庭電器製品用、電子部品用、工業用シール材、梱包材、日用雑貨用等に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜90質量%であるジフェニルメタンジイソシアネートと、オキシエチレン含量が1〜40質量%、平均ヒドロキシル当量が700〜2500及び公称平均官能基数が2〜6であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとの、イソシアネート基含量が15〜30質量%である反応生成物を含むことを特徴とするポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ジフェニルメタンジイソシアネートの2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜80質量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン含量が10〜20質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
ポリイソシアネート組成物(A)、ポリオール(B)、触媒(C)、発泡剤としての水(D)、及び整泡剤(E)の混合液を反応発泡せしめる軟質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリイソシアネート組成物(A)は、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜90質量%であるジフェニルメタンジイソシアネートと、オキシエチレン含量が1〜40質量%、平均ヒドロキシル当量が700〜2500及び公称平均官能基数が2〜6であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールとの、イソシアネート基含量が15〜30質量%である反応生成物を含むポリイソシアネート組成物であることを特徴とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記ジフェニルメタンジイソシアネートの2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が55〜80質量%であることを特徴とする請求項4に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールのオキシエチレン含量が10〜20質量%であることを特徴とする請求項4又は5に記載の軟質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2008−247996(P2008−247996A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88488(P2007−88488)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】