説明

ポリイミドおよびポリアミック酸

【課題】 低誘電率、低誘電正接、低吸水性の高分子材料として、新規なポリイミド、ならびに該ポリイミドを生成しうるポリアミック酸を提供する。
【解決手段】 特定の2官能フェニレンエーテルオリゴマーの両末端に芳香族アミノ基を導入した芳香族ジアミンと酸二無水物を反応させて得られるポリアミック酸およびポリイミド

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する2官能フェニレンエーテルオリゴマーを原料とする芳香族ジアミンと酸二無水物を反応させて得られるポリイミドおよびポリアミック酸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイミドはその優れた耐熱性に加え、機械物性、耐薬品性、難燃性、電気特性等の点において優れた特性を有しているために、成形材料、複合材料、電気・電子部品等の分野において幅広く用いられている。近年の電気・電子部品分野においては、マイクロエレクトロニクス化の発達は著しい。特に、大型コンピュータでは多層回路基板の採用等により信号の高速伝送が不可欠となるが、基板材料の誘電率が大きいと信号の伝送に遅延が生じ高速化の障害となる。ポリイミドは多層配線構造の層間絶縁膜に用いられるが、これらの理由から従来ポリイミドが有していた優れた絶縁性に加えて低誘電率化の必要性がクローズアップされてきている。
一方、近年の電子材料の発展に伴う高密度実装に不可欠な要素である絶縁信頼性や寸法安定性を確保するため、電子材料用樹脂には高湿度下でも低誘電特性であることも求められている。しかしながら、一般にポリイミドはイミド基が吸水しやすく、吸湿時と乾燥時で誘電特性が大きく異なることが、ポリイミドを電子材料に展開する上で課題となっていた。
これらの課題に応えるべく、種々のポリイミドおよびその原料であるポリアミック酸が提案されているが(例えば、特許文献1参照)、近年の電子材料分野のますますの高性能化の要請に対応するためには必ずしも満足すべきものとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-152559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低誘電率、低誘電正接、低吸水性の高分子材料として有用なポリイミド、ならびに該ポリイミドを生成しうるポリアミック酸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、ポリフェニレンエーテル骨格の優れた低誘電特性・耐熱性を引継いだ、特定の構造を有する2官能フェニレンエーテルオリゴマーならびにその誘導体を開発してきた。更なる鋭意検討を加えた結果、2官能フェニレンエーテルオリゴマーから末端芳香族ジニトロ化合物を経由して、末端芳香族ジアミンが誘導できることを見出し、さらに該末端芳香族ジアミンと酸二無水物から得られるポリイミドが低誘電特性でありさらに吸湿しても低誘電特性を維持できることを有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、一般式(1)で表される構成単位からなるポリイミドに関し、該ポリイミドからなるフィルムならびに該フィルムの片面または両面に金属層を有する積層体に関する。
【化1】


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。)
【化2】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化3】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化4】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【0006】
さらに、本発明は、一般式(18)で表される構成単位からなるポリアミック酸に関する。
【化5】


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリイミドは低吸水性なため、高湿度下での誘電特性の変化が少なく、銅張り積層板用樹脂、レジスト用樹脂、電子部品の封止用樹脂、液晶のカラーフィルター用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、ビルドアップ積層板材料、フレキシブル基板用樹脂、機能性フィルムなどの幅広い用途に使用することができる。また、本発明のポリアミック酸は、低誘電特性、低吸水性に優れたポリイミドを容易に生成する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。まず、一般式(1)で表される構成単位のポリイミドにおいて、-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなり、-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造または一般式(4)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列する。Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。一般式(2)において、R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。一般式(3)において、R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。一般式(4)において、R17,R18は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。
これらの中でも、一般式(2)で表されるR1,R2,R3,R7,R8が炭素数3以下のアルキル基であり、R4,R5,R6が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるポリイミド、一般式(3)で表されるR9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるポリイミド、および一般式(4)で表されるR17,R18が炭素数3以下のアルキル基であり、R19,R20が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるポリイミドが好ましい。
特に好ましくは、一般式(2)で表される-(O-X-O)-が一般式(6)であり、一般式(3)で表される-(O-X-O)-が一般式(7)または一般式(8)であり、一般式(4)で表される-(Y-O)-が一般式(9)または一般式(10)あるいは一般式(9)と一般式(10)がランダムに配列した構造を有するポリイミドである。
【0009】
【化6】


【化7】


(R21,R22,R23,R24は、水素原子またはメチル基である。-A -は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化8】


(-A -は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化9】


【化10】

【0010】
一般式(1)におけるArとしては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、ベンゾフェノン、2,2-ジフェニルプロパン、2,2-ジフェニル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、9,9-ジフェニルフルオレン、ペリレン、等の分子構造を有する4価の芳香族基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、一般式(1)におけるArは、ベンゼン、ビフェニル等の単環式芳香族基が酸素原子、カルボニル基、エステル基、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の連結基により相互に連結された4価の非縮合多環式芳香族基であってもよく、Arに用いられる芳香族基はメチル基やエチル基などの置換基を有していてもよい。
【0011】
これらの中で、Arとしては、炭素数が6〜30の4価の芳香族基または一般式(11)で表される4価の芳香族基が好ましい。さらに好ましくは、一般式(1)が一般式(15)、一般式(16)、一般式(17)で表される構造である。
【化12】


(-(O-X’-O)-は、一般式(12)または一般式(13)で定義される構造からなる。-(Y’-O)-は、一般式(14)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a’,b’は、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【化13】


(R24、R25、R26、R30、R31は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R27、R28、R29は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化14】


(R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A’-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化15】


(R40、R41は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R42、R43は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化16】


【化17】


【化18】


(-(O-X’-O)-は、一般式(12)または一般式(13)で定義される構造からなる。-(Y’-O)-は、一般式(14)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a’,b’は、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【0012】
一般式(4)における-A -としては、例えば、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明のポリイミドは一般式(5)で表される構成単位を、一般式(1):一般式(5)=100:0〜50:50の範囲で含むことができる。
【化11】

(Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。Bは、単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる炭素数6〜30の2価の芳香族基である。)
【0014】
Bとしては、例えば、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、5-クロロ-1,3-フェニレン、5-メトキシ-1,3-フェニレン、等の単環式芳香族基や、1,4-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,4-アントリレン、9,10-アントリレン、3,4-ペリレニレン、等の縮合多環式芳香族基、あるいは2,2-プロピリデンビス(1,4-フェニレン)、2,2-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピリデン)ビス(1,4-フェニレン)、カルボニルビス(1,4-フェニレン)、オキシビス(1,4-フェニレン)、スルホニルビス(1,4-フェニレン)、9,9-フルオレニリデンビス(1,4-フェニレン)、等のフェニル、ビフェニル等の単環式芳香族基が酸素原子、カルボニル基、エステル基、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の連結基により相互に連結された2価の非縮合多環式芳香族基等の炭素数6〜30の2価の芳香族基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、Bに用いられる芳香族基はメチル基やエチル基等の置換基を有していてもよい。
【0015】
本発明のポリイミドは一般式(18)で表される構成単位を有するポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより製造することができる。
【化19】


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。)
【化20】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化21】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化22】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【0016】
イミド化に際しては、加熱イミド化法または化学イミド化法を採用することができる。加熱イミド化法としては、例えば、(a)ポリアミック酸溶液をガラス、金属等の表面平滑な基板上に流延後、加熱して脱水閉環する方法、あるいは、(b)ポリアミック酸溶液をそのまま加熱して脱水閉環する方法、が適用される。これらの方法におけるポリアミック酸溶液の溶媒としては、例えば、ポリアミック酸の製造に使用されるものと同様の有機溶媒を挙げることができる。前記(a)の加熱イミド化法では、ポリアミック酸溶液を基板上に流延して形成された薄膜を、常圧下または減圧下で加熱することにより、フィルム状のポリイミドを得ることができる。この場合の脱水閉環のための加熱温度は、通常、100〜400℃、好ましくは150〜350℃であり、反応中徐々に温度を上げることが好ましい。また、前記(b)の加熱イミド化法では、ポリアミック酸溶液を加熱することにより、ポリイミドが粉末ないし溶液として得られる。この場合の脱水閉環のために加熱温度は、通常、80〜300℃、好ましくは100〜250℃である。また、(b)の加熱イミド化法に際しては、副生する水の除去を容易とするため、水と共沸し、特に反応系外で水と容易に分離しうる成分、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を脱水剤として存在させることもできる。さらに、(b)の加熱イミド化法に際しては、脱水閉環を促進するため、第三級アミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-i-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン等の脂肪族第三級アミン類;N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の芳香族第三級アミン類;ピリジン、キノリン、イソキノリン等の複素環式第三級アミン類等の触媒を、ポリアミック酸100重量部当たり、例えば10〜400重量部用いることもできる。
【0017】
化学イミド化法としては、例えば、(c)ポリアミック酸を脱水環化させる閉環剤を用い、溶液状態でポリイミド化する方法が採用され、ポリイミドが粉末あるいは溶液として得られる。この方法で使用される溶媒としても、例えば、ポリアミック酸の製造に使用されるものと同様の有機溶媒を挙げることができる。(c)の化学イミド化法に使用される閉環剤としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸の如き酸無水物等を挙げることができる。これらの閉環剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、その使用量は、ポリアミック酸の繰返し単位1モル当たり、通常、2〜100モル、好ましくは2〜50モルである。(3)の化学イミド化法における反応温度は、通常、0〜200℃である。なお化学イミド化法においても、前記加熱イミド化法の場合と同様に第三級アミンを触媒として使用することができる。前記加熱イミド化法または化学イミド化法によりポリイミドが粉末として得られた場合は、ろ過、噴霧乾燥、水蒸気蒸留等の適宜の方法により、ポリイミド粉末を媒体から分離回収することができる。本発明のポリイミドのイミド化率は、50%以上、好ましくは90%以上である。
【0018】
続いて、本発明のポリアミック酸について説明する。
一般式(18)で表される構成単位のポリアミック酸において、-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなり、-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造または一般式(4)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列する。Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。一般式(2)において、R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。一般式(3)において、R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。一般式(4)において、R17,R18は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基であり、R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。
これらの中でも、一般式(2)で表されるR1,R2,R3,R7,R8が炭素数3以下のアルキル基であり、R4,R5,R6が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるポリアミック酸、一般式(3)で表されるR9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるポリアミック酸、および一般式(4)で表されるR17,R18が炭素数3以下のアルキル基であり、R19,R20が水素原子または炭素数3以下のアルキル基であるポリアミック酸が好ましい。
特に好ましくは、一般式(2)で表される-(O-X-O)-が一般式(6)であり、一般式(3)で表される-(O-X-O)-が一般式(7)または一般式(8)であり、一般式(4)で表される-(Y-O)-が一般式(9)または一般式(10)あるいは一般式(9)と一般式(10)がランダムに配列した構造を有するポリアミック酸である。
【0019】
一般式(18)におけるArとしては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、ベンゾフェノン、2,2-ジフェニルプロパン、2,2-ジフェニル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、9,9-ジフェニルフルオレン、ペリレン、等の分子構造を有する4価の芳香族基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、一般式(18)におけるArは、ベンゼン、ビフェニル等の単環式芳香族基が酸素原子、カルボニル基、エステル基、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の連結基により相互に連結された4価の非縮合多環式芳香族基であってもよく、Arに用いられる芳香族基はメチル基やエチル基などの置換基を有していてもよい。
【0020】
これらの中で、Arとしては、炭素数が6〜30の4価の芳香族基または一般式(11)で表される4価の芳香族基が好ましい。さらに好ましくは、一般式(18)が一般式(20)、一般式(21)、一般式(22)で表される構造である。
【化24】


(-(O-X’-O)-は、一般式(12)または一般式(13)で定義される構造からなる。-(Y’-O)-は、一般式(14)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a’,b’は、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【化25】


(R24、R25、R26、R30、R31は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R27、R28、R29は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化26】


(R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A’-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化27】


(R40、R41は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R42、R43は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化28】


【化29】


【化30】


(-(O-X’-O)-は、一般式(12)または一般式(13)で定義される構造からなる。-(Y’-O)-は、一般式(14)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a’,b’は、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【0021】
一般式(4)における-A -としては、例えば、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明のポリアミック酸は一般式(19)で表される構成単位を、一般式(18):一般式(19)=100:0〜50:50の範囲で含むことができる。
【化23】


(Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。Bは、単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる炭素数6〜30の2価の芳香族基である。)
【0023】
Bとしては、例えば、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、5-クロロ-1,3-フェニレン、5-メトキシ-1,3-フェニレン、等の単環式芳香族基や、1,4-ナフチレン、2,6-ナフチレン、1,4-アントリレン、9,10-アントリレン、3,4-ペリレニレン、等の縮合多環式芳香族基、あるいは2,2-プロピリデンビス(1,4-フェニレン)、2,2-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピリデン)ビス(1,4-フェニレン)、カルボニルビス(1,4-フェニレン)、オキシビス(1,4-フェニレン)、スルホニルビス(1,4-フェニレン)、9,9-フルオレニリデンビス(1,4-フェニレン)、等のフェニル、ビフェニル等の単環式芳香族基が酸素原子、カルボニル基、エステル基、メチレン、エチリデン、1-メチルエチリデン、1,1-プロピリデン、1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)、シクロヘキシリデン、フェニルメチレン、ナフチルメチレン、1-フェニルエチリデン、等の連結基により相互に連結された2価の非縮合多環式芳香族基等の炭素数6〜30の2価の芳香族基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、Bに用いられる芳香族基はメチル基やエチル基等の置換基を有していてもよい。
【0024】
本発明のポリアミック酸は、一般式(23)で表されるジアミンまたは、一般式(23)で表されるジアミンおよび一般式(24)で表されるジアミンと、酸二無水物とを、有機溶媒中で重縮合することにより製造することができる。
【化31】


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【化32】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化33】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化43】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化35】


(Bは、単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる炭素数6〜30の2価の芳香族基である。)
【0025】
一般式(23)で表されるジアミンの製法は特に限定されず、いかなる方法で製造してもよい。例えば、2官能フェノール化合物と1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーと、ニトロハロベンゼン化合物またはジニトロベンゼン化合物とを有機溶媒中、塩基性化合物の存在下で反応させることで得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物を還元することにより得ることができる。
【0026】
前述の2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物の還元方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ニトロ基をアミノ基に還元する公知の方法を用いることができる。2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物の還元反応は、例えば、ニッケル、パラジウム、白金等の金属触媒や、これら金属を適宜の担体に担持させた担持触媒、あるいはニッケル、銅等のラネー触媒等の水素化触媒の存在下で、反応に不活性な反応溶媒中、温度20〜200℃、圧力を常圧〜50kgf/cm2 とし、水素を用いて、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物を2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミノ化合物に還元することにより実施される。前記反応溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の脂肪族アルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類等が挙げられるが、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物が溶解する溶媒であれば、これらに限定されることはない。また、これらの反応溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
一般式(23)で表されるジアミンの数平均分子量は500〜3000の範囲が好ましく、分散(重量平均分子量/数平均分子量)は1〜3の範囲が好ましい。数平均分子量が500未満では、フェニレンエーテル骨格の有する電気特性が得られにくく、また、3000を超えると、末端官能基の反応性が低下し、溶剤への溶解性も低下する。分散が3を超えると、溶剤への溶解性が低下する。
【0028】
一般式(23)で表されるジアミンのアミノ基の置換位置は酸素原子の置換位置に対してパラ位またはメタ位のいずれかであると好ましい。
【0029】
続いて、一般式(23)で表されるジアミンの前駆体となり得る2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物について説明する。2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物の製法は特に限定されず、いかなる方法で製造してもよい。例えば、2官能フェノール化合物と1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーと、ニトロハロベンゼン化合物またはジニトロベンゼン化合物とを有機溶媒中、塩基性化合物の存在下で、温度50〜250℃、好ましくは50〜180℃にて0.5〜24時間反応させることにより実施される。これらの方法は公知の方法を利用でき、例えば、特開平4-178358号公報、特開2006-219396号公報などに記載の方法を用いることができる。
【0030】
前記2官能フェニレンエーテルオリゴマーは、例えば、2官能フェノール化合物、1官能フェノール化合物、触媒を溶剤に溶解させた後、加熱撹拌下で酸素を吹き込むことで製造することができる。2官能フェノール化合物としては、例えば、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。1官能フェノールとしては、2,6-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。触媒としては、例えば、CuCl、CuBr、CuI、CuCl2、CuBr2等の銅塩類とジ-n-ブチルアミン、n-ブチルジメチルアミン、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン、ピリジン、N,N,N'N’-テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、ピペリジン、イミダゾール等のアミン類を組合せたものが使用できるが、これらに限定されるものではない。溶剤としては、例えば、トルエン、メタノール、メチルエチルケトン、キシレン、等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
一般式(24)で表されるジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,5-ナフチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,4-ジアミノクロロベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)] プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−[4−(4−アミノフェノキシフェニル)][4−(3−アミノフェノキシフェニル)] −1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、等を挙げることができる。これらのジアミンの使用量は、全ジアミン成分に対して50モル%以下である。これらのジアミンは、単独でまた2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、2,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、9,9-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン二無水物、9,9-ビス(4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)フルオレン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、一般式(25)で表される酸二無水物、等を挙げることができる。
これらの酸二無水物の中で好ましくは、ピロメリット酸二無水物と2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、一般式(25)で表される酸二無水物、である。
これらの酸二無水物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【化36】


(-(O-X’-O)-は、一般式(12)または一般式(13)で定義される構造からなる。-(Y’-O)-は、一般式(14)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a’,b’は、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【化37】


(R24、R25、R26、R30、R31は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R27、R28、R29は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化38】


(R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A’-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化39】


(R40、R41は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R42、R43は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【0033】
一般式(25)で表される酸二無水物の製法は特に限定されず、いかなる方法で製造してもよい。例えば、前記2官能フェニレンエーテルオリゴマーと無水トリメリット酸クロライドをピリジン、トリエチルアミン等の塩基存在下で反応させることにより得られる。溶媒としては、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム等の無水酸、酸クロライドと反応しないものを用いることができ、無水酸、酸クロライドの失活を防ぐため、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で反応するのが好ましい。
【0034】
また、一般式(25)で表される酸二無水物は、縮合剤存在下で、前記2官能フェニレンエーテルオリゴマーと無水トリメリット酸を反応することでも得られる。縮合剤としては、硫酸等の公知のエステル化剤を用いることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン等の無水酸と反応しないものを用いることができ、無水酸の失活を防ぐため、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で反応するのが好ましい。
【0035】
一般式(25)で表される酸二無水物の数平均分子量は500〜3000の範囲が好ましく、分散(重量平均分子量/数平均分子量)は1〜3の範囲が好ましい。
【0036】
本発明のポリアミック酸は、2種以上の一般式(23)で表されるジアミン、2種以上の一般式(24)で表されるジアミン、あるいは2種以上の酸二無水物を用いて製造することができ、これらのポリアミック酸は、ある一定量同じ繰り返し単位のアミック酸が続いた後に異なる種類のアミック酸がある一定量続くブロックコポリマーであっても、異なる原料からなるアミック酸がそれぞれランダムに繰り返すランダムコポリマーであってもよい。
【0037】
ジアミンと酸二無水物との反応は、通常、有機溶媒中で実施される。有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、N,N-ジエチルメトキシアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ピリジン、ピコリン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチル尿素等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上混合して使用することができる。前記重縮合反応における反応原料の濃度は、通常2〜50wt%、好ましくは5〜30wt%であり、反応温度は、通常、60℃以下、好ましくは50℃以下である。反応圧力は特に限定されず、通常、常圧で実施することができる。また、反応時間は、通常、0.5〜24時間である。このような重縮合反応により、本発明のポリアミック酸を得ることができる。
【0038】
本発明のポリアミック酸の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、濃度0.5g/dl)は、好ましくは0.1〜5dl/gである。
また、本発明のポリアミック酸は、イミド化率が50%を超えない範囲で、部分的にイミド化されていてもよい。
【0039】
本発明のフィルムについて説明する。
本発明のポリイミドからなるフィルムは、本発明のポリイミドまたは本発明のポリアミック酸を含有する溶液を、ガラス板、金属板、プラスチックフィルム、等の支持体の上に、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等の方法で塗布し、加熱して、乾燥、脱水閉環したのち、支持体を除去することで得られる。脱水閉環の加熱条件は、温度は通常100℃〜400℃、好ましくは、150℃〜350℃であり、徐々に温度を上げていくのが好ましい。加熱時間は1〜10時間が好ましい。加熱中必要に応じて、減圧下にしたり、雰囲気を窒素、アルゴン等の不活性ガスにすることもできる。支持体を除去する方法としては、剥離、エッチング、等の方法が用いられる。支持体の除去は、乾燥、脱水閉環が完了してからでなくてもよく、自己支持性が得られるまで乾燥、脱水閉環した段階で支持体から剥離した後、再度、乾燥、脱水閉環してもよい。塗布厚みが厚くなると溶剤が残りやすくなることから、本発明のフィルムの厚さは、0.1〜500μmであるのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜200μmである。
【0040】
本発明の片側または両側に金属層を有する積層体について説明する。
本発明の積層体は、本発明のフィルムと金属箔あるいは金属板を加熱、加圧して圧着させる方法、あるいは、本発明のフィルムと金属箔または金属板を接着剤を用いて接着させる方法、あるいは、本発明のフィルムにメッキ、スパッター、等で金属層を形成する方法、あるいは、本発明のポリアミック酸の溶液を金属板あるいは金属箔上に流延し、加熱して、乾燥、脱水閉環してポリイミドとする方法、等で得ることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。なお、数平均分子量および重量平均分子量はゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により求めた(ポリスチレン換算)。GPCの展開溶媒はTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。水酸基当量およびアミノ基当量は末端官能基を滴定により定量することにより求めた。誘電率、誘電正接は、空胴共振摂動法により10GHzでの値を測定した。本発明の実施例において、乾燥時とは、塩化カルシウムの入ったデシケーター中(湿度21%)、温度20℃で12時間保持した状態を指し、吸湿時とは、湿度50%、温度25℃で12時間保持した状態を指す。ポリアミック酸の還元粘度は、ポリアミック酸溶液をN,N-ジメチルアセトアミドに溶解して、濃度0.5g/dlとなるようにして、25 ℃ にてウベローデ粘度計で測定した。
【0042】
合成例1
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr2 3.88g(17.4mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n-ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン 2600gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、あらかじめ2300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール292.19g(2.40mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n-ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、撹拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに120℃で3時間減圧乾燥して、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「A」)を416.7g得た。樹脂「A」の数平均分子量は1035、重量平均分子量は1598、水酸基当量が435であった。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計を装着した2Lの反応容器にN,N-ジメチルアセトアミド999.3g、樹脂「A」250.4g、4-フルオロニトロベンゼン89.4g(0.63mol)、炭酸カリウム95.3g(0.69mol)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、110℃にて5時間撹拌を続け反応を行った。反応終了後、90〜100℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液をメタノール1000gと純水500gの混合溶媒中に注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物(樹脂「B」)286.9gを得た。樹脂「B」の数平均分子量は1246、重量平均分子量は1779であった。樹脂「B」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1520cm-1および波数1343cm-1の吸収を示した。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミンの合成)
次いで、撹拌器を備えた2Lの反応容器に、樹脂「B」100.0g、N,N-ジメチルアセトアミド600g、5%Pd/alumina触媒2.5gを仕込み、水素雰囲気下で撹拌しながら80℃で7.5時間反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、1000gの純水中に注ぎ、析出した固形物を濾過、純水洗浄、乾燥することにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミン(樹脂「C」)85.1gを得た。樹脂「C」の数平均分子量は1269、重量平均分子量は1788、アミノ基当量が590であった。樹脂「C」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3448cm-1および波数3367cm-1の吸収を示した。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの酸二無水物の合成)
攪拌装置、温度計、滴下ロート、還流管を備えた200mlの反応器に無水トリメリット酸クロライド6.31g(0.03mol)、トルエン40gをし込んで、窒素下で70℃に加熱攪拌し、滴下ロートに仕込んだ樹脂「A」8.27g(水酸基0.019mol)、ピリジン2.41g、トルエン80gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに加熱し2時間還流した。反応終了後、反応器を氷浴で冷却し、析出した無水トリメリット酸クロライドとピリジン塩酸塩を濾過により取り除き、濾液をエバポレーション、減圧乾燥して、上記一般式(25)で表される酸二無水物(樹脂「D」)11.6gを得た。樹脂「D」の数平均分子量は1343、重量平均分子量は2782であった。核磁気共鳴スペクトルおよび赤外分光スペクトルにより構造を確認した。
【0043】
合成例2
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr2 9.36g(42.1mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.81g(10.5mmol)、n-ブチルジメチルアミン67.77g(671.0mmol)、トルエン2600gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、あらかじめ2300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール 129.31g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール878.4g(7.2mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.22g(7.2mmol)、n-ブチルジメチルアミン26.35g(260.9mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、撹拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム48.06g(126.4mmol)を溶解した水1500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに120℃で3時間減圧乾燥して、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「E」)を990.5g得た。樹脂「E」の数平均分子量は1975、重量平均分子量は3514、水酸基当量が990であった。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド250.2g、樹脂「E」148.5g、4-クロロニトロベンゼン52.1g(0.33mol)、炭酸カリウム25.0g(0.18mol)を装入し、トルエン20.0gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を320.1gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物(樹脂「F」)140.3gを得た。樹脂「F」の数平均分子量は3081、重量平均分子量は5587であった。樹脂「F」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1519cm-1および波数1342cm-1の吸収を示した。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミンの合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「F」1.20g、N,N-ジメチルホルムアミド35.0g、5%Pd/C触媒156mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で8時間反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミン(樹脂「G」)0.99gを得た。樹脂「G」の数平均分子量は2905、重量平均分子量は6388、アミノ基当量が1351であった。樹脂「G」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3447cm-1および波数3365cm-1の吸収を示した。
【0044】
合成例3
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuCl13.1g(0.12mol)、ジ-n-ブチルアミン707.0g(5.5mol)、メチルエチルケトン4000gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、2L/minの空気をバブリングしながら、あらかじめ8000gのメチルエチルケトンに溶解させた4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)410.2g(1.6mol)と2,6-ジメチルフェノール586.5g(4.8mol)を120分かけて滴下した。これに、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。その後、1Nの塩酸水溶液で3回洗浄を行った後、イオン交換水で洗浄を行った。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに120℃で3時間減圧乾燥を行い、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「H」)を946.6g得た。樹脂「H」の数平均分子量は801、重量平均分子量は1081、水酸基当量が455であった。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド200.2g、樹脂「H」68.3g、4-クロロニトロベンゼン52.2g(0.33mol)、炭酸カリウム24.9g(0.18mol)を装入し、トルエン19.0gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を290.2gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物(樹脂「I」)63.8gを得た。樹脂「I」の数平均分子量は1250、重量平均分子量は1719であった。樹脂「I」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1522cm-1および波数1340cm-1の吸収を示した。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミンの合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「I」1.15g、N,N-ジメチルホルムアミド29.9g、5%Pd/C触媒160mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で6時間反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミン(樹脂「J」)0.88gを得た。樹脂「J」の数平均分子量は1205、重量平均分子量は2009、アミノ基当量が560であった。樹脂「J」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3446cm-1および波数3367cm-1の吸収を示した。
【0045】
合成例4
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuCl13.1g(0.12mol)、ジ-n-ブチルアミン707.0g(5.5mol)、メチルエチルケトン4000gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、2L/minの空気をバブリングしながら、あらかじめ8000gのメチルエチルケトンに溶解させた4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェノール)82.1g(0.32mol)と2,6-ジメチルフェノール586.5g(4.8mol)を120分かけて滴下した。これに、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム水溶液を加え、反応を停止した。その後、1Nの塩酸水溶液で3回洗浄を行った後、イオン交換水で洗浄を行った。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行い、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「K」)を632.5g得た。樹脂「K」の数平均分子量は1884、重量平均分子量は3763、水酸基当量が840であった。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド250.5g、樹脂「K」126.0g、4-クロロニトロベンゼン51.9g(0.33mol)、炭酸カリウム25.0g(0.18mol)を装入し、トルエン19.2gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を330.3gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物(樹脂「L」)115.0gを得た。樹脂「L」の数平均分子量は2939、重量平均分子量は5982であった。樹脂「L」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1518cm-1および波数1343cm-1の吸収を示した。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミンの合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「L」2.13g、N,N-ジメチルホルムアミド35.1g、5%Pd/C触媒189mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で8時間反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミン(樹脂「M」)1.89gを得た。樹脂「M」の数平均分子量は2733、重量平均分子量は6746、アミノ基当量が1271であった。樹脂「M」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3449cm-1および波数3366cm-1の吸収を示した。
【0046】
合成例5
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた2Lの縦長反応器に2,2−ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)18.0g(78.8mmol)、CuBr2 0.172g(0.77mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.199g(1.15mmol)、n-ブチルジメチルアミン2.10g(2.07mmol)、メタノール139g、トルエン279gを仕込み、液温を40℃にして撹拌した状態の反応器の中へ、メタノール133gとトルエン266gに溶解させた2,6-ジメチルフェノール48.17g(0.394mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.245g(1.44mmol)、n-ブチルジメチルアミン2.628g(25.9mmol)の混合溶液を、空気を0.5 L/minの流速でバブリングを行いながら132分かけて滴下し、滴下終了後さらに120分撹拌した後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム2.40gを溶解した水400gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに120℃で3時間真空乾燥して、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「N」)を54.8g得た。樹脂「N」の数平均分子量は1348、重量平均分子量は3267、水酸基当量が503であった。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド200.1g、樹脂「N」75.5g、4-クロロニトロベンゼン52.0g(0.33mol)、炭酸カリウム25.0g(0.18mol)を装入し、トルエン20.0gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を300.2gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物(樹脂「O」)72.1gを得た。樹脂「O」の数平均分子量は2103、重量平均分子量は5194であった。樹脂「O」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1516cm-1および波数1340cm-1の吸収を示した。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミンの合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「O」1.31g、N,N-ジメチルホルムアミド30.0g、5%Pd/C触媒165mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で6時間反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミン(樹脂「P」)1.10gを得た。樹脂「P」の数平均分子量は2051、重量平均分子量は6142、アミノ基当量が954であった。樹脂「P」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3450cm-1および波数3365cm-1の吸収を示した。
【0047】
合成例6
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成)
撹拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr2 3.88g(17.4mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.75g(4.4mmol)、n-ブチルジメチルアミン28.04g(277.6mmol)、トルエン 2600gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、あらかじめ2300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジオール 129.3g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール233.7g(1.92mol)、2,3,6-トリメチルフェノール 64.9g(0.48mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン0.51g(2.9mmol)、n-ブチルジメチルアミン10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2 L/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、撹拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム19.89g(52.3mmol)を溶解した水1500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、さらに120℃で3時間減圧乾燥して、2官能フェニレンエーテルオリゴマー(樹脂「Q」)を418.1g得た。樹脂「Q」の数平均分子量は986、重量平均分子量は1530、水酸基当量が471であった。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物の合成)
撹拌器、還流冷却器、温度計、ディーンスターク水分離器を装着した500mlの反応容器にN,N-ジメチルホルムアミド200.0g、樹脂「Q」70.7g、4-クロロニトロベンゼン52.0g(0.33mol)、炭酸カリウム25.1g(0.18mol)を装入し、トルエン19.3gを添加して、反応容器内を窒素置換した。次いで、この混合物を加熱し、140〜150℃の温度を保ちながら5時間撹拌を続け反応を行った。反応により生成する水は、トルエンとの共沸により順次除去した。反応終了後、80〜90℃で濾過を行い、無機塩を除去した後、濾液を室温まで冷却した。この濾液を300.3gのメタノールに注ぎ、析出した固形物を濾過、メタノール洗浄、乾燥することにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジニトロ化合物(樹脂「R」)64.1gを得た。樹脂「R」の数平均分子量は1538、重量平均分子量は2432であった。樹脂「R」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-O結合に対応する波数1522cm-1および波数1344cm-1の吸収を示した。
(2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミンの合成)
次いで、撹拌器を備えた100mlの反応容器に、樹脂「R」1.50g、N,N-ジメチルホルムアミド30.3g、5%Pd/C触媒170mgを仕込み、水素雰囲気下で激しく撹拌しながら室温で6時間反応させた。その後、反応溶液を濾過して触媒を除去した後、エバポレーターで濃縮し、さらに減圧乾燥を行うことにより、2官能フェニレンエーテルオリゴマーのジアミン(樹脂「S」)1.14gを得た。樹脂「S」の数平均分子量は1465、重量平均分子量は2809、アミノ基当量が681であった。樹脂「S」の赤外吸収スペクトル(IR)は、N-H結合に対応する波数3447cm-1および波数3360cm-1の吸収を示した。
【0048】
実施例1
(ポリアミック酸の合成)
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、樹脂「C」1.18gを仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド12.6gを添加して十分溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物0.22gを添加した後、30℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸「T」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「T」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5g/dl)は1.09dl/gであった。ポリアミック酸「T」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3300cm-1の吸収を示した。
【0049】
実施例2
(ポリアミック酸の合成)
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、樹脂「C」1.18gを仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド10.3gを添加して十分溶解させた。その後、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物0.29gを添加した後、30℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸「U」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「U」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5d/g)は0.53 dl/gであった。ポリアミック酸「U」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3304cm-1の吸収を示した。
【0050】
実施例3
(ポリアミック酸の合成)
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、樹脂「C」1.18gを仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド22.3gを添加して十分溶解させた。その後、樹脂「D」1.30gを添加した後、30℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸「V」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「V」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5d/g)は0.67 dl/gであった。ポリアミック酸「V」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3301cm-1の吸収を示した。
【0051】
実施例4
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、樹脂「G」2.70gを仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド12.6gを添加して十分溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物0.22gを添加した後、30℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸「W」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「W」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5g/dl)は0.99dl/gであった。ポリアミック酸「W」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3305cm-1の吸収を示した。
【0052】
実施例5
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、樹脂「J」1.12gを仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド10.3gを添加して十分溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物0.22gを添加した後、30℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸「X」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「X」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5g/dl)は0.92dl/gであった。ポリアミック酸「X」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3295cm-1の吸収を示した。
【0053】
実施例6
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、樹脂「M」2.54gを仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド10.3gを添加して十分溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物0.22gを添加した後、30℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸「Y」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「Y」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5g/dl)は0.87dl/gであった。ポリアミック酸「Y」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3297cm-1の吸収を示した。
【0054】
実施例7
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、樹脂「P」1.91gを仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド10.3gを添加して十分溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物0.22gを添加した後、30℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸「Z」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「Z」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5g/dl)は0.61dl/gであった。ポリアミック酸「Z」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3301cm-1の吸収を示した。
【0055】
実施例8
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、樹脂「S」1.36gを仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド12.6gを添加して十分溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物0.22gを添加した後、30℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸「AA」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「AA」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5g/dl)は1.22dl/gであった。ポリアミック酸「AA」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3303cm-1の吸収を示した。
【0056】
実施例9
(ポリアミック酸の合成)
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、樹脂「C」0.66g、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル0.12g(一般式(23)と一般式(24)のモル比50:50)を仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド16.45gを添加して十分溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物0.26gを添加した後、25℃で1時間撹拌して、ポリアミック酸「AB」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「AB」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5g/dl)は2.11dl/gであった。ポリアミック酸「AB」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3300cm-1の吸収を示した。
【0057】
比較例1
撹拌器、還流冷却器、窒素導入管を備えた容器内に窒素ガスを流し、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル1.00gを仕込んだ後、N,N-ジメチルアセトアミド18.8gを添加して十分溶解させた。その後、ピロメリット酸二無水物1.09gを添加した後、30℃で3時間撹拌して、ポリアミック酸「AC」のN,N-ジメチルアセトアミド溶液を得た。このポリアミック酸「AC」の還元粘度(N,N-ジメチルアセトアミド溶媒、25℃、0.5g/dl)は4.16dl/gであった。ポリアミック酸「AC」の赤外吸収(IR)スペクトルは、アミド基のN-H伸縮振動に対応する波数3300cm-1の吸収を示した。
【0058】
実施例10
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「T」の溶液をガラス板上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行いポリイミド「AD」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AD」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1740cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1375cm-1の吸収を示した。
【0059】
実施例11
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「U」の溶液をガラス板上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行いポリイミド「AE」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AE」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1741cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1373cm-1の吸収を示した。
【0060】
実施例12
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「V」の溶液をガラス板上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で250℃で2時間熱処理を行いポリイミド「AF」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AF」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1739cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1371cm-1の吸収を示した。
【0061】
実施例13
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「W」の溶液をガラス板上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行いポリイミド「AG」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AG」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1738cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1373cm-1の吸収を示した。
【0062】
実施例14
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「X」の溶液をガラス板上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行いポリイミド「AH」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AH」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1743cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1375cm-1の吸収を示した。
【0063】
実施例15
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「Y」の溶液をガラス板上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行いポリイミド「AI」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AI」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1741cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1376cm-1の吸収を示した。
【0064】
実施例16
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「Z」の溶液をガラス板上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行いポリイミド「AJ」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AJ」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1738cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1377cm-1の吸収を示した。
【0065】
実施例17
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「AA」の溶液をガラス板上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行いポリイミド「AK」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AK」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1742cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1378cm-1の吸収を示した。
【0066】
実施例18
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「AB」の溶液を電解銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC-III、18μmt)のシャイニー面上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行い、片面に金属層を有する積層体を得た。エッチングにより銅箔を除去しポリイミド「AL」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AL」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1740cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1375cm-1の吸収を示した。
【0067】
比較例2
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「AC」の溶液をガラス板上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行いポリイミド「AM」のフィルム(厚さ15μm)を得た。ポリイミド「AM」の赤外吸収(IR)スペクトルは、イミド基のC-O伸縮振動に対応する1735cm-1の吸収と、イミド基のC-N伸縮振動に対応する1374cm-1の吸収を示した。
【0068】
実施例10〜18、比較例2で得られたポリイミドフィルムの乾燥時と吸湿時の誘電特性を評価した結果を表1に示す。
【0069】
【表1】


ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
【0070】
実施例10〜18、比較例2より、本発明のポリイミドは誘電率が極めて低く、吸湿時でも低誘電特性を維持できることが分かる。
【0071】
実施例19
(ポリイミドの合成)
ポリアミック酸「T」の溶液を電解銅箔(三井金属鉱業株式会社製、3EC-III、18μmt)のマット面上に、ドクターブレードで塗布し、空気下で80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間乾燥した後、窒素下で300℃で1時間熱処理を行い、片面に金属層を有する積層体を得た。ポリイミド層の厚さは15μmであった。得られた積層体の銅箔ピール強度をJIS C-6481に基づき測定したところ、1.3kN/mであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される構成単位を有するポリイミド。
【化1】


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。)
【化2】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化3】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化4】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【請求項2】
一般式(5)で表される構成単位を、一般式(1):一般式(5)=100:0〜50:50の範囲で含む請求項1記載のポリイミド。
【化5】


(Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。Bは、単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる炭素数6〜30の2価の芳香族基である。)
【請求項3】
-(O-X-O)-が一般式(6)、一般式(7)または一般式(8)であり、-(Y-O)-が一般式(9)または一般式(10)あるいは一般式(9)と一般式(10)がランダムに配列した構造を有する請求項1または2記載のポリイミド。
【化6】


【化7】


(R21,R22,R23,R24は、水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化8】


(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化9】


【化10】

【請求項4】
一般式(1)中のArが炭素数6〜30の芳香族基または一般式(11)で表される芳香族基である請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド。
【化11】


(-(O-X’-O)-は、一般式(12)または一般式(13)で定義される構造からなる。-(Y’-O)-は、一般式(14)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a’,b’は、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【化12】


(R24、R25、R26、R30、R31は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R27、R28、R29は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化13】


(R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A’-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化14】


(R40、R41は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R42、R43は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【請求項5】
一般式(1)で表される構成単位が一般式(15)である請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド。
【化15】

【請求項6】
一般式(1)で表される構成単位が一般式(16)である請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド。
【化16】

【請求項7】
一般式(1)で表される繰り返し単位が一般式(13)である請求項4に記載のポリイミド。
【化17】

【請求項8】
一般式(18)で表される構成単位を有するポリアミック酸を脱水閉環して請求項1記載のポリイミドを製造することを特徴とするポリイミドの製造方法。
【化18】


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。)
【化19】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化20】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化21】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【請求項9】
一般式(19)で表される構成単位を、一般式(18):一般式(19)=100:0〜50:50の範囲で含むポリアミック酸を脱水閉環して請求項2記載のポリイミドを製造することを特徴とするポリイミドの製造方法。
【化22】


(Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。Bは、単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは次に示す連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる炭素数6〜30の2価の芳香族基である。)
【請求項10】
一般式(18)で表される構成単位を有するポリアミック酸。
【化23】


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。)
【化24】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化25】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化26】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【請求項11】
一般式(19)で表される構成単位を、一般式(18):一般式(19)=100:0〜50:50で有する請求項10記載のポリアミック酸。
【化27】


(Arは単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる4価の芳香族基を示す。Bは、単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは次に示す連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる炭素数6〜30の2価の芳香族基である。)
【請求項12】
-(O-X-O)-が一般式(6)、一般式(7)または一般式(8)であり、-(Y-O)-が一般式(9)または一般式(10)あるいは一般式(9)と一般式(10)がランダムに配列した構造を有する請求項10または11に記載のポリアミック酸。
【化28】


【化29】


(R21,R22,R23,R24は、水素原子またはメチル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化30】


(-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である)
【化31】


【化32】

【請求項13】
一般式(18)中のArが炭素数6〜30の芳香族基または一般式(11)である請求項10〜12のいずれかに記載のポリアミック酸
【化33】


(-(O-X’-O)-は、一般式(12)または一般式(13)で定義される構造からなる。-(Y’-O)-は、一般式(14)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a’,b’は、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【請求項14】
一般式(18)で表される構成単位が一般式(20)である請求項10〜12のいずれかに記載のポリアミック酸。
【化34】

【請求項15】
一般式(18)で表される構成単位が一般式(21)である請求項10〜12のいずれかに記載のポリアミック酸。
【化35】

【請求項16】
一般式(18)で表される構成単位が一般式(22)である請求項13に記載のポリアミック酸。
【化36】

【請求項17】
一般式(23)で表されるジアミンと酸二無水物とを有機溶媒中で脱水縮合して請求項10記載のポリアミック酸を製造する事を特徴とするポリアミック酸の製造方法。


(-(O-X-O)-は、一般式(2)または一般式(3)で定義される構造からなる。-(Y-O)-は、一般式(4)で定義される1種類の構造が配列するかまたは2種類以上の構造がランダムに配列する。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜100の整数を示す。)
【化37】


(R1,R2,R3,R7,R8は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R4,R5,R6は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【化38】


(R9,R10,R11,R12,R13,R14,R15,R16は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。-A-は、炭素数20以下の直鎖状、分岐状または環状の2価の炭化水素基である。)
【化39】


(R17,R18は、同一または異なってもよく、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R19,R20は、同一または異なってもよく、水素原子、炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。)
【請求項18】
一般式(23)で表されるジアミンと一般式(24)で表されるジアミンのモル比が一般式(23):一般式(24)=100:0〜50:50であるジアミン成分と酸二無水物とを有機溶媒中で脱水縮合して請求項11記載のポリアミック酸を製造する事を特徴とするポリアミック酸の製造方法。
【化40】


(Bは、単環式芳香族基および縮合多環式芳香族基ならびに単環式芳香族基が直接もしくは次に示す連結基により相互に連結された非縮合多環式芳香族基から選ばれる炭素数6〜30の2価の芳香族基である。)
【請求項19】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリイミドからなるフィルム。
【請求項20】
請求項19記載のフィルムの片面または両面に金属層を有する積層体。

【公開番号】特開2009−299040(P2009−299040A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114634(P2009−114634)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】