説明

ポリイミドシート

【課題】
ポリイミドフィルムでは厚すぎて製膜が難しく、ポリイミド粉体を用いた成形では薄すぎてシート状にするのが困難な厚み領域のポリイミドシートを提供する。
【解決手段】
膜厚が5〜250μmであって、酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムを複数枚積層圧着して一体化させることにより厚さ0.25〜2mmのシートにしたことを特徴とするポリイミドシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のポリイミドフィルムを積層一体化してなるポリイミドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは優れた耐熱性と耐摩耗性を持つことから機械・電機部品を始め幅広い用途で使用されている。通常、ポリイミド粉体をシート状、棒状に成形したものを切削加工し、目的とする部品類を作成する。一般的に、ポリイミド粉体を用いてシート状に成形する場合、薄いものを作ることは非常に難しく、厚いシート(板状物)を成形後、希望する厚さに削るという作業をおこなっている。しかし、板状物からシートを作るには限界があり、実質的に2mm以下の厚みのシートを得ることはできなかった。
【0003】
一方、ポリイミドフィルムも、優れた耐熱性、電気絶縁性を持つことから、回路用基板、電線の被覆材料など幅広い用途で使用されている。しかし一般的に、250ミクロンメートルを超える厚みのフィルムは製膜するのが困難であり、切削加工によって機械・電機部品を作成するような厚さのフィルムを得ることができない。
【0004】
そこで、通常のポリイミドフィルムを積層して圧着することが考えられるが、ポリイミドは通常、熱可塑性が乏しく通常の圧着手段では一体化したシートにならない。つまり、厚さが250μmから2mm位までのシートを作ることが難しいのである。
【0005】
ポリイミドフィルムを積層するという観点ではポリイミドあるいはポリアミック酸溶液を支持体上に何度も重ねて積層していく方法が知られている(特許文献1)。この方法は本来異なった種類のポリアミドを層状に積層しようとするもので250μmを越える厚みのシートを得ようとするものではなく、また液膜の端部領域に外力を加えなければならないという不都合があった。
【0006】
また、通常のポリイミドフィルムを銅板などの基材に積層する際、接着性を良くするため耐熱性のポリイミドを積層することは知られている(特許文献2)。しかし、この場合、片側の耐熱性ポリイミドは接着剤の役割を持つものであり、このシートはポリイミドシートと呼べるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−103148号公報
【特許文献2】特開2006−183040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ポリイミドフィルムでは厚すぎて製膜が難しく、ポリイミド粉体を用いた成形では薄すぎてシート状にするのが困難な厚み領域のポリイミドシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は次のような構成である。
(1)膜厚が5〜250μmであって、酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムを複数枚積層圧着して一体化させることにより厚さ0.25〜2mmのシートにしたことを特徴とするポリイミドシート。
(2)シート片面の任意方向の熱膨張係数が30ppm/℃以下であることを特徴とする上記(1)に記載のポリイミドシート。
(3)シート片面の任意方向の25℃雰囲気下における破断点ひずみが20%以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のポリイミドシート。
(3)シート片面の任意方向の25℃雰囲気下における引っ張り強度が200MPa以上であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリイミドシート。
(5)ビフェニルテトラカルボン酸成分が全酸成分中5mol%以上含まれることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリイミドシート。
(6)酸成分としてさらにピロメリット酸成分を含有し、ジアミン成分としてジアミノジフェニルエーテル成分を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリイミドシート。
(7)ジアミン成分としてさらにパラフェニレンジアミン成分を含有することを特徴とする上記(6)に記載のポリイミドシート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって、今まで得ることが困難とされていた厚みのポリイミドシートを容易に得ることができ、かつ、粉体から作成した樹脂よりも高強度、低熱膨張率を発現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明のポリイミドシートについて具体的に説明する。
【0012】
本発明のポリイミドシートは、膜厚が5〜250μmであって、酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムを複数枚積層圧着して一体化させることにより厚さ0.25〜2mmのシートにしたものである。
【0013】
本発明に用いるポリイミドフィルムは、製造方法に特に限定はなく、一般的に知られている方法で製造されたポリイミドフィルムである。例えば、酸二無水物とジアミンを反応させたポリアミド酸溶液を流延またはフィルム状に押出し、乾燥、熱処理を行って、イミド化を進行させることにより、製膜するのが一般的である。
【0014】
この際、乾燥・熱処理は、流延またはフィルム状に押し出されたポリアミド酸溶液を、200〜550℃、好ましくは250〜500℃の高温雰囲気に維持した乾燥熱処理ゾーンを通過させることにより達成することができる。
【0015】
一般的に知られているイミド化の方法には、加熱することにより脱水をおこなう熱閉環法と触媒、脱水剤を使用して化学的に脱水をおこなう化学閉環法があるが、本発明に用いられるイミド化の方法は特に限定されない。ただ、線膨張係数を小さくすることから化学閉環法の方が好ましい。イミド化触媒としては、第三級アミン類が好ましく、具体例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、イソキノリン、2−エチルピリジン、2−メチルピリジン、N−エチルモルフォリン、N−メチルモルフォリン、ジエチルシクロヘキシルアミン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン、4−ベンゾイルピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、4−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−イソプロピルピリジン、N−ジメチルベンジルアミン、4−ベンジルピリジン、およびN−ジメチルドデシルアミンなどが挙げられる。また、脱水剤としては、有機カルボン酸無水物、N,N−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物およびチオニルハロゲン化物が挙げられる。
【0016】
本発明で用いられるポリイミドフィルムは、酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含んでいることを特徴としている。初期の重合反応の際、酸二無水物として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などのビフェニルテトラカルボン酸二無水物を原料として用いることで、ビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムを得ることができる。
【0017】
本発明で用いられるポリイミドフィルムの酸成分は、ビフェニルテトラカルボン酸成分のみに限定されるものではなく、その他に、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6,−ジクロロナフタレン−1,4,58−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などの酸二無水物を併用することができる。これらの中で好ましいものはピロメリット酸二無水物である。
【0018】
本発明で用いるポリイミドフィルムの全酸成分のうち、ビフェニルテトラカルボン酸成分は5mol%以上が好ましく、さらに好ましくは25mol%以上である。
【0019】
本発明で用いるポリイミドフィルムを構成するジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンチジン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,6−ジアミノピリジン、ビス−(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス−(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、3,3’−ジクロロベンチジン、ビス−(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス−(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジメチル−3’,4−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンチジン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−ベータ−アミノ−t−ブチル−フェニル)エーテル、p−ビス−(2−メチル−4−アミノ−ベンチル)ベンゼン、p−ビス−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ジアミノアダマンタン、3,37−ジアミノ−1,17−ジアダマンタン、3,3’−ジアミノ−1,1’−ジアダマンタン、ビス(p−アミノ−シクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノ−ドデカン、1,2−ビス−(3−アミノ−プロポキシ)エタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシ−ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノ−シクロヘキサン、1,12−ジアミノ−オクタデカン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエートなどが挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも好ましいものは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミンである。
【0020】
本発明で使用するポリイミドフィルムの厚みの範囲は5〜250μmであり、10〜150μmが好ましく、より好ましくは25〜50μmである。これは、ポリイミドフィルムが薄い場合は積層枚数が多くなるために空気泡が発生しシートの収率が悪化するためであり、ポリイミドフィルムが厚い場合はポリイミドフィルム内で相分離がおこり、十分な密着力が得られないためである。
【0021】
本発明では、上記のポリイミドフィルムを複数枚積層圧着して一体化し、一枚のシートにする。積層圧着手段は特に限定されないが、通常は同種のポリイミドフィルムを所望の枚数積層し、適宜の温度と圧力で圧着する。その結果、ビフェニルテトラカルボン酸成分を含まないポリイミドフィルムでは一体化しないが、ビフェニルテトラカルボン酸成分を含む積層体は一体化され、シート状になる。加圧には通常のプレス機を用いることができるが、積層したポリイミドフィルム間に空気層ができるのを防止できることから、真空プレス機を用いることが好ましい。
【0022】
ビフェニルテトラカルボン酸成分を含むポリイミドフィルムが何故一体化されやすいか理由は定かでないが、フィルムの圧力に対する接着能にビフェニルテトラカルボン酸成分が寄与しているものと考えられる。
【0023】
本発明のシートの厚み範囲は0.25〜2mmであり、好ましい厚み範囲は、0.25〜1.5mmである。この範囲より薄いものは単一のフィルムで代替可能であり、厚いものは粉末からの板状物の切削で製作可能である。
【0024】
本発明のポリイミドシートは、任意の面の熱膨張係数が30ppm/℃以下であり、任意の面の25℃雰囲気下での引っ張り強度が200MPa以上であり、破断点ひずみが30%以上であることが好ましい。
【0025】
ポリイミド樹脂は耐熱性、耐摩擦・摩耗性、真空特性等に優れ、ウエハガイドやテストソケット、クランプリング、真空パッド等に使用されている。これらの用途は一般的に直方体のポリイミド樹脂を切削加工して得られる。しかし、最近は切削加工技術の向上や最終用途の高密度化、小型化により、従来よりもピッチの狭い加工が求められている。このため、高精細な切削に耐えられるだけの強度、ひずみが必要となる。また、これらの樹脂は高い温度領域で使用されることが多いが、これらの精度を保つためには低い熱膨張率が必要となるためである。
【0026】
これらの好ましい物性を有するシートを得るためには、積層前のポリイミドフィルムがこのような性質を備えている必要があり、これらはポリイミドを構成する酸成分、ジアミン成分の種類およびモル組成に影響される。本発明において好ましい組み合わせは、酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物または3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とピロメリット酸二無水物の併用であり、ジアミン成分としては4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとパラフェニレンジアミンとの併用である。そしてさらに好ましくは酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物25〜95mol%/ピロメリット酸二無水物5〜75mol%、ジアミン成分として4,4’−ジアミノジフェニルエーテル10〜90mol%/パラフェニレンジアミン90〜10mol%である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例のみによって限定されない。また、シートの各物性は以下の方法に従って測定した。
【0028】
[引っ張り強度]
ASTM D1708に準じた引っ張り試験によって測定した。この時の引っ張り速度は1mm/minであり、試験片は試験部が長さ22.5mm、幅4.75mm、つかみ部の幅が115.88mm、試験部、つかみ部を合わせた全体の長さが60mmである。
【0029】
[破断点ひずみ]
ASTM D1708に準じた引っ張り試験によって測定した。この時の引っ張り速度は1mm/minであり、試験片は試験部が長さ22.5mm、幅4.75mm、つかみ部の幅が115.88mm、試験部、つかみ部を合わせた全体の長さが60mmである。
【0030】
[熱膨張係数]
長さ5mm、幅5mm、高さ3mmの試験片を作成し、10℃/minの昇温速度で、室温〜500℃まで測定した。この時の50〜200℃平均膨張の値を熱膨張係数とした。
【0031】
(ポリイミドフィルム1の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル20.02g (0.100mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド182.98gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物28.54g (0.097mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)10.9gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0032】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0033】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠に固定し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを複数枚得た。得られたポリイミドフィルムの膜厚は32〜49μmであり、このフィルムをポリイミドフィルム1とする。
【0034】
(ポリイミドフィルム2の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、パラフェニレンジアミン14.06g (0.130mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド190.87gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物37.10g (0.126mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)14.18gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0035】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0036】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠に固定し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを複数枚得た。得られたポリイミドフィルムの膜厚は23〜35μmであり、このフィルムをポリイミドフィルム2とする。
【0037】
(ポリイミドフィルム3の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル23.03g (0.115mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド185.69gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物8.46g (0.028mol)とピロメリット酸二無水物18.06g (0.082mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)12.54gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0038】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0039】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠に固定し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを複数枚得た。得られたポリイミドフィルムの膜厚は30〜44μmであり、このフィルムをポリイミドフィルム3とする。
【0040】
(ポリイミドフィルム4の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル12.94g (0.065mol)、パラフェニレンジアミン6.99g (0.065mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド189.32gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物19.03g (0.065mol)とピロメリット酸二無水物13.26g (0.061mol)を数回に分けて投入し、更に180分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)14.09gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0041】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0042】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠に固定し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを複数枚得た。得られたポリイミドフィルムの膜厚は29〜47μmであり、このフィルムをポリイミドフィルム4とする。
【0043】
(ポリイミドフィルム5の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル25.03g (0.125mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド192.50gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、ピロメリット酸二無水物26.45g (0.121mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)13.63gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0044】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0045】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠で把持し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを複数枚得た。得られたポリイミドフィルムの膜厚は25〜32μmであり、このフィルムをポリイミドフィルム5とする。
【0046】
(ポリイミドフィルム6の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル18.92g (0.095mol)、パラフェニレンジアミン4.38g (0.041mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド193.26gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、ピロメリット酸二無水物28.56g (0.131mol)を数回に分けて投入し、更に120分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)14.72gを30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0047】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをオーブンで100℃、1時間加熱乾燥することにより自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た。
【0048】
自己支持性のポリアミック酸フィルムをポリエステルフィルムより剥離し、これを金属枠で把持し、200℃30分、300℃20分、400℃5分の条件で熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを複数枚得た。得られたポリイミドフィルムの膜厚は27〜38μmであり、このフィルムをポリイミドフィルム6とする。
【0049】
[実施例1−4]
(ポリイミドシートの作成)
上記方法により作成したポリイミドフィルム1〜5を複数枚積層し、350℃、10.2MPa真空プレス機を用いて積層圧着し、シートを得た。積層条件と結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1,2]
(ポリイミドシートの作成)
上記方法により作成したポリイミドフィルム6〜8を複数枚積層し、真空プレス機を用いて350℃で積層したがシート状に一体化することができなかった。積層条件、結果を表1に示す。
【0051】
[比較例3]
(ポリイミド樹脂)
デュポン社の“ベスペル”SP−1(板状物)を実施例記載の評価方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の、複数枚のポリイミドフィルムを積層一体化してなるポリイミドシートは、単一のポリイミドフィルム、ポリイミド粉体から得られる板状物の切削では成形できない膜厚を有しているため、ウエハガイドやテストソケット等の電子部品に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜厚が5〜250μmであって、酸成分としてビフェニルテトラカルボン酸成分を含有するポリイミドフィルムを複数枚積層圧着して一体化させることにより厚さ0.25〜2mmのシートにしたことを特徴とするポリイミドシート。
【請求項2】
シート片面の任意方向の熱膨張係数が30ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドシート。
【請求項3】
シート片面の任意方向の25℃雰囲気下における破断点ひずみが20%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドシート。
【請求項4】
シート片面の任意方向の25℃雰囲気下における引っ張り強度が200MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドシート。
【請求項5】
ビフェニルテトラカルボン酸成分が全酸成分中5mol%以上含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミドシート。
【請求項6】
酸成分としてさらにピロメリット酸成分を含有し、ジアミン成分としてジアミノジフェニルエーテル成分を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミドシート。
【請求項7】
ジアミン成分としてさらにパラフェニレンジアミン成分を含有することを特徴とする請求項6に記載のポリイミドシート。

【公開番号】特開2010−167566(P2010−167566A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9468(P2009−9468)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】