説明

ポリイミドシート

【課題】積層時にポリイミドフィルムに対しスリキズを発生させることすることがない高品位なポリイミドシートを提供する。
【解決手段】粒子径が1.5μm以下の無機粒子をフィルム樹脂重量あたり0.1〜0.9重量%の割合で含み、厚さが250μ以下の実質的に1種類のポリイミドフィルムのみを複数枚積層して成ることを特徴とするポリイミドシートであり、前記無機粒子の平均粒子径が0.7μm以下で、さらに粒子径0.6μm以下の無機粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のポリイミドフィルムを積層一体化してなるポリイミドシートに関する。さらに詳しくは、積層時にポリイミドフィルムにスリキズを発生させることのない高品位のポリイミドシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、優れた耐熱性と耐摩耗性を持つことから機械・電機部品を始め幅広い用途で使用されている。
【0003】
ポリイミドシートを作成する方法としては、ポリイミド粉体をシート状に成形する方法が一般的であるが、同方法では成形できるシートの厚さに限界があるため、成形したシートを切削加工し、目的とする厚さへ加工する工程が必要であった。
【0004】
このため、ポリイミドフィルムを積層して目的厚さを調整する方法(例えば、特許文献1参照)が考えられているが、ポリイミドフィルムを積層する場合には、フィルムを重ねる際にフィルム同士が擦れ、フィルム表面にスリキズが発生し、このスリキズが発生した状態での積層を行うと、スリキズによって圧着時の圧力ムラが発生し、積層が不十分となるばかりか、クラックの発生による亀裂などの不具合を生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−183040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、積層時にポリイミドフィルムに対しスリキズを発生させることすることがない高品位なポリイミドシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため本発明によれば、粒子径が1.5μm以下の無機粒子をフィルム樹脂重量あたり0.1〜0.9重量%の割合で含み、厚さが250μ以下の実質的に1種類のポリイミドフィルムのみを複数枚積層して成ることを特徴とするポリイミドシートが提供される。
【0008】
なお、本発明のポリイミドシートにおいては、
前記無機粒子の平均粒子径が0.7μm以下で、さらに粒子径0.6μm以下の無機粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有すること、
前記ポリイミドフィルムが、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを主たる構成成分とすること、
前記ポリイミドフィルムが、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物および3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主たる構成成分とすること、
シート片面の任意方向の熱膨張係数が30ppm/℃以下であること、および
シート片面の任意方向の25℃雰囲気下における破断点ひずみが20%以上であること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層時にポリイミドフィルムに対しスリキズを発生させることすることがない高品位なポリイミドシートを作成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明のポリイミドシートについて具体的に説明する。
【0011】
本発明のポリイミドシートは、粒子径が1.5μm以下の無機粒子をフィルム樹脂重量あたり0.1−0.9重量%の割合で含む、厚さが250μm以下の実質的に1種類のポリイミドフィルムを複数枚積層したものである。
【0012】
本発明のポリイミドシートにおいて素材として用いるポリイミドフィルムの製造方法には特に限定がなく、一般的に知られている方法で製造されたポリイミドフィルムである。例えば、酸二無水物とジアミンを反応させたポリアミド酸溶液を流延またはフィルム状に押出し、乾燥、熱処理を行って、イミド化を進行させることにより、製膜するのが一般的である。
【0013】
この際、乾燥・熱処理は、流延またはフィルム状に押し出されたポリアミド酸溶液を、200〜600℃、好ましくは250〜550℃の高温雰囲気に維持した乾燥熱処理ゾーンを通過させることにより達成することができる。
【0014】
一般的に知られているイミド化の方法には、加熱することにより脱水をおこなう熱閉環法と触媒、脱水剤を使用して化学的に脱水をおこなう化学閉環法があるが、本発明に用いられるイミド化の方法は特に限定されない。ただ、線膨張係数を小さくすることから化学閉環法の方が好ましい。イミド化触媒としては、第三級アミン類が好ましく、具体例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、イソキノリン、2−エチルピリジン、2−メチルピリジン、N−エチルモルフォリン、N−メチルモルフォリン、ジエチルシクロヘキシルアミン、N−ジメチルシクロヘキシルアミン、4−ベンゾイルピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4,6−コリジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、4−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−イソプロピルピリジン、N−ジメチルベンジルアミン、4−ベンジルピリジン、およびN−ジメチルドデシルアミンなどが挙げられる。また、脱水剤としては、有機カルボン酸無水物、N,N−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物およびチオニルハロゲン化物が挙げられる。
【0015】
本発明で用いるポリイミドフィルムを構成する酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6,−ジクロロナフタレン−1,4,58−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0016】
これらの酸二無水物の中で好ましいものはピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。好ましい形態としては、本発明で用いるポリイミドフィルムの全酸成分のうち、ピロメリット酸成分を0〜85mol%含有することが好ましく、さらに好ましくは10〜80mol%、さらに好ましくは20〜75mol%である。また、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分は0〜60mol%が好ましく、さらに好ましくは5〜50mol%、さらに好ましくは5〜40mol%である。
【0017】
本発明で用いるポリイミドフィルムを構成するジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンチジン、4,4’−ジアミノジフェニルサルファイド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、2,6−ジアミノピリジン、ビス−(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス−(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、3,3’−ジクロロベンチジン、ビス−(4−アミノフェニル)エチルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス−(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジメチル−3’,4−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンチジン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチル−フェニル)エーテル、p−ビス−(2−メチル−4−アミノ−ベンチル)ベンゼン、p−ビス−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ジアミノアダマンタン、3,37−ジアミノ−1,17−ジアダマンタン、3,3’−ジアミノ−1,1’−ジアダマンタン、ビス(p−アミノ−シクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノ−ドデカン、1,2−ビス−(3−アミノ−プロポキシ)エタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシ−ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノ−シクロヘキサン、1,12−ジアミノ−オクタデカン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエートなどが挙げられ、これらを単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0018】
これらのジアミンの中で好ましいものは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびパラフェニレンジアミンである。好ましい形態としては、本発明で用いるポリイミドフィルムの全ジアミン成分のうち、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを0〜95mol%含有することが好ましく、さらに好ましくは10〜90mol%、さらに好ましくは20〜85mol%である。また、パラフェニレンジアミン成分は0〜60mol%が好ましく、さらに好ましくは5〜50mol%、さらに好ましくは5〜40mol%である。
【0019】
得られたポリイミドフィルムは別途、熱処理、またはコロナ放電処理やプラズマ放電処理等の表面処理法によって処理されていても良い。
【0020】
本発明のポリイミドシートは、粒子径が1.5μm以下の無機粒子をフィルム樹脂重量あたり0.1−0.9重量%の割合で含む、厚さが250μm以下のポリイミドフィルムのみを使用して作成したものである。
【0021】
ポリイミドフィルム中に無機粒子を含ませることにより、フィルム表面に突起を形成させることができる。この突起によりポリイミドフィルムの滑性が向上し、積層時にスリキズが発生しない積層板の作成が可能となる。本発明において、ポリイミドフィルムに添加する無機粒子は、その粒子径が1.5μm以下であり、好ましくは0.1〜1.0μm、さらにこのましくは0.3〜0.5μmである。この粒子径よりも大きい場合は、フィルム間に空間ができて接着不良になるため好ましくない。
【0022】
また、本発明に使用される無機粒子は、フィルム樹脂重量あたり0.1〜0.9重量%の割合で含むことが好ましく、より好ましくは0.3〜0.8重量%である。0.1重量%以下であるとフィルム表面の突起数が不足するために滑性が不足し好ましくない。また、逆に0.9重量%以上であると外観不良やフィルムの伸度が低下することで物性不良になるばかりか、突起数の増大によってフィルム間に空間ができ接着不良になるために好ましくない。
【0023】
本発明で使用する無機粒子としては、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカなどが挙げられ、なかでもリン酸水素カルシウムが好ましく使用できる。
【0024】
本発明においては、このような無機粒子をポリイミドフィルムの製造に使用されるものと同じ溶媒に分散させたスラリー状とし、ポリイミドフィルム製造工程中のポリアミック酸溶液中に添加した後、脱環化、脱溶媒させてポリイミドフィルムとすることが好ましいが、ポリアミック酸重合前の溶媒中に無機粒子スラリーまたは無機粒子を添加した後、ポリアミック酸を重合、脱環化、脱溶媒を経てポリイミドフィルムを得る方法など、脱環化、脱溶媒前であればいかなる工程においても無機粒子を添加することが可能である。
【0025】
本発明におけるポリイミドシートに使用するポリイミドフィルムの厚みの範囲は250μm以下である。好ましくは5〜200μmであり、より好ましくは10〜50μmである。これは、ポリイミドフィルムが薄い場合は、積層枚数が多くなるために空気泡が発生しシートの収率が悪化する傾向となり、逆にポリイミドフィルムが厚い場合は、ポリイミドフィルム内で相分離がおこり、十分な密着力が得られないという好ましくない傾向が招かれる。
【0026】
本発明では、上記のポリイミドフィルムを複数枚積層圧着して一体化し、一枚のシートにする。積層圧着手段は特に限定されないが、通常は同種のポリイミドフィルムを所望の枚数積層し、適宜の温度と圧力で圧着する。加圧には通常のプレス機を用いることができるが、積層したポリイミドフィルム間に空気層ができるのを防止できることから、真空プレス機を用いることが好ましい。
【0027】
本発明のポリイミドシートは、任意の面の熱膨張係数が30ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは20ppm/℃以下である。
【0028】
また、本発明のポリイミドシートは、任意の面の25℃雰囲気下での破断点ひずみが20%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。
【0029】
ポリイミド樹脂は、一般的に直方体のポリイミド樹脂を切削加工して得られる。しかし、最近は切削加工技術の向上や最終用途の高密度化、小型化により、従来よりもピッチの狭い加工が求められている。このため、高精細な切削に耐えられるだけの破断点ひずみが必要となる。また、これらの樹脂は高い温度領域で使用されることが多いため、これらの温度領域における精度を保つためには低い熱膨張率が必要となる。
【0030】
かくしてなる本発明のポリイミドシートは、積層時にポリイミドフィルムに対しスリキズを発生させることすることがなく高品位であることから、耐熱性、摺動性、寸法安定性が求められる電子部品用途などに有効に利用することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し本発明はこれらの実施例のみによって限定されない。また、シートの各物性は以下の方法に従って測定した。
【0032】
[破断点ひずみ]
ASTM D1780に準じた。この時の引っ張り速度は1mm/minであり、試験片は試験部が長さ22.5mm、幅4.75mm、つかみ部の幅が115.88mm、試験部、つかみ部を合わせた全体の長さが60mmである。
【0033】
[熱膨張係数]
長さ5mm、幅5mm、高さ3mmの試験片を作成し、10℃/minの昇温速度で、室温〜500℃まで測定した。このときの50〜250℃平均膨張の値を熱膨張係数とした。
【0034】
(ポリアミック酸1の作成)
ケミカルスターラーを備えた300mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル15.02g(0.075mol)、パラフェニレンジアミン2.70g(0.025mol)、N,N’−ジメチルアセトアミド155.49gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。60分撹拌後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物7.36g(0.025mol)とピロメリット酸二無水物15.70g(0.072mol)を数回に分けて投入し、更に180分撹拌後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(溶液濃度6wt%)適量を30分かけて滴下し、更に60分攪拌してポリアミック酸溶液を得た。この時のポリマーをポリアミック酸1とする。
【0035】
(ポリイミドフィルム1の作成)
全粒子の粒子径が1.5μm以下に収まっており、平均粒子径0.30μm、粒子径0.15〜0.60μmの粒子が全粒子中87.2体積%のシリカのN,N’−ジメチルアセトアミドスラリーを、上記ポリアミック酸1に樹脂重量あたり0.35重量%添加し、十分攪拌、分散させた後、ポリアミック酸溶液を連続製膜装置に供し、ポリイミドに転化すると同時に乾燥固化し、ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムをポリイミドフィルム1とする。この時のポリイミドフィルム1の平均厚みは39μmであった。
【0036】
[実施例1]
上記で得られたポリイミドフィルム1を75枚積層し、真空プレス機を用いて350℃、10.2MPaで積層圧着し、ポリイミドシートを得た。積層条件と結果を表1に示す。
【0037】
(ポリイミドフィルム2の作成)
シリカのN,N’−ジメチルアセトアミドスラリーを添加しない以外は、ポリイミドフィルム1と同様にして、ポリアミック酸1を使用してポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムをポリイミドフィルム2とする。この時のポリイミドフィルム1の平均厚みは40μmであった。
【0038】
(ポリイミドフィルム3の作成)
粒子径範囲が0.1〜4.5μm、平均粒子径1.1μm、添加量0.2重量%、粒子径0.15〜0.6μmの粒子の全粒子中に占める割合27.3体積%のリン酸水素カルシウムを、上記ポリアミック酸1に樹脂重量あたり0.35重量%添加し、十分攪拌、分散させた後、ポリアミック酸溶液を連続製膜装置を用い、ポリイミドに転化すると同時に乾燥固化し、ポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムをポリイミドフィルム3とする。この時のポリイミドフィルム3の平均厚みは40μmであった。
【0039】
[比較例1−2]
上記で得られたポリイミドフィルム2および3を、それぞれ75枚積層し、真空プレス機を用いて350℃、10.2MPaで積層圧着したが、いずれの場合にも重ねた際にスリキズが発生した。
【0040】
実施例1および比較例1、2における積層条件と結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のポリイミドシートは、積層時にポリイミドフィルムに対しスリキズを発生させることすることがなく高品位であることから、耐熱性、摺動性、寸法安定性が求められる電子部品用途などに有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が1.5μm以下の無機粒子をフィルム樹脂重量あたり0.1〜0.9重量%の割合で含み、厚さが250μ以下の実質的に1種類のポリイミドフィルムのみを複数枚積層して成ることを特徴とするポリイミドシート。
【請求項2】
前記無機粒子の平均粒子径が0.7μm以下で、さらに粒子径0.6μm以下の無機粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有することを特徴とする請求項1に記載のポリイミドシート。
【請求項3】
前記ポリイミドフィルムが、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを主たる構成成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドシート。
【請求項4】
前記ポリイミドフィルムが、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主たる構成成分とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミドシート。
【請求項5】
シート片面の任意方向の熱膨張係数が30ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミドシート。
【請求項6】
シート片面の任意方向の25℃雰囲気下における破断点ひずみが20%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミドシート。

【公開番号】特開2011−167904(P2011−167904A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33169(P2010−33169)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】