ポリイミドフィルムのカール制御方法、およびポリイミドフィルムの製造方法

【課題】本発明は、線膨張係数(CTE)等のフィルム物性に極力影響を与えずに、カール量を制御する方法を提供する。
【解決手段】ポリイミド前駆体溶液を支持体上にキャストし、自己支持性フィルムとする第1工程と、前記自己支持性フィルムを、少なくとも幅方向に延伸する延伸処理と、加熱処理とを行う第2工程とを有するポリイミドフィルムの製造方法により製造されるポリイミドフィルムのカール制御方法であって、前記第2工程において、(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)未満の温度領域での延伸量と(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)以上の温度領域での延伸量の割合を変更することで、カール量を制御することを特徴とするポリイミドフィルムのカール制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子デバイス分野、半導体分野、航空・宇宙分野、原子力分野の広い分野で、電気・電子材料、構造材料、精密成形材料、熱制御材料等として有用なポリイミドフィルムの製造方法に関し、特にCOF用基板フィルム、太陽電池用ベースフィルム、有機EL用ベースフィルムとして好適な延伸ポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、軽量で、柔軟性、フィルム強度および耐熱性等の諸特性において優れていることから、種々の分野、特に電子・電気分野において、例えばフレキシブル配線基板材料およびCOF用基板材料等として使用されている。
【0003】
一般的なポリイミドフィルムの製造方法としては、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体の溶媒溶液を、支持体上にキャストして得た自己支持性フィルム(ゲル状フィルム、ゲルフィルム等とも呼ばれる)を、例えば300〜500℃で加熱処理する方法(熱キュアともよばれる)が知られている。イミド化には、化学イミド化、熱イミド化、または両者を併用した反応が利用される。
【0004】
ポリイミドの製造工程において、ポリイミドフィルムの接着性、スパッタリング性や金属蒸着性を改良するために、自己支持性フィルムの表面にカップリング剤の溶液を塗布することがしばしば行われる。しかし、カップリング剤で処理されたポリイミドフィルムは、処理面の接着性は改良されるものの、フィルムにカールが発生しやすい。
【0005】
フィルムにカールが生じる原因としては、種々の原因が考えられるが、特許文献1には、特にはピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの組み合わせから化学閉環法により得られる二軸配向ポリイミドフィルムについて、フィルムの表裏の配向の比(フィルム表面とその反対面のフィルム表面の配向比、つまりフィルム製造時の延伸工程で発生するフィルムの表裏の高分子鎖の配向状態の比)が大きいとフィルムのカールが大きくなることが記載されている。また、フィルムの表裏の配向主軸の方向(同一表面上で配向パラメーターが最も大きくなる方向)の角度差が大きい場合は、配向の差に応じてツイスト(ねじれ)が発生しやすくなることが記載されている。さらに、支持体から剥離した直後のフィルムの延伸倍率が1.01〜1.2倍になるように剥離すること、支持体の表面温度を雰囲気温度+35℃以下、かつ50〜100℃の範囲に制御することが重要な条件であることが記載されている。
【0006】
特許文献2には、化学閉環法により得られる二軸配向ポリイミドフィルム、特にはピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミンの組み合わせから化学閉環法により得られる二軸配向ポリイミドフィルムにおいて、十分に配向されていることにより平均面内熱膨張係数が小さくなり、また走行方向と幅方向の延伸倍率比を調整して面内異方性指数を小さくすることによりフレキシブル銅張板のカールを小さくすることができることが記載されている。
【0007】
一方、カールの問題は、単にポリイミドフィルムだけの問題ではなく、積層される材料が積層された後のカール量(例えば銅張積層基板の場合は、銅を積層した後のカール量)も重要である。さらに、カール量が小さければよいというわけではなく、搬送時の垂れ下がりを防止するために、搬送時に上になる面が凹になるようにカールしていた方が良い場合もあり、その際に、銅箔の厚み、パターン形状および搭載される電子部品の重量等に依存して、求められるカール量が異なる。つまり、用途に合わせてカール量を制御できることが求められている。
【0008】
特許文献3には、自己支持性フィルムの片面にカップリング剤の有機溶媒溶液を塗布し、他面に有機液体を塗布し、この有機液体の塗布量を制御することにより、ポリイミドフィルムに生じるカールを制御する方法が提案されている。
【0009】
また、特許文献4には、自己支持性フィルムの、製造時に支持体と接していた側の面(B面)にカップリング剤の溶液を塗布し、これを加熱、イミド化することによって製造され、B面の反対側の面(A面)側にカールしており、配線基板の金属配線形成時の垂れが減少するように、このポリイミドフィルムのカールが制御されているポリイミドフィルムが開示されている。
【0010】
さらに、多層フィルムの場合は、多種のポリイミド前駆体ワニスを用い、例えば多層押出し機などにより流延し、ポリイミド前駆体の表面および内部の線膨張係数を厚み方向で制御することにより、カールを制御する方法がある。
【0011】
しかし、これらの方法では、カール量だけでなく線膨張係数(CTE)等のフィルム物性も変動してしまう場合がある。従って、線膨張係数(CTE)等のフィルム物性に極力影響を与えずに、カール量を制御する方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−85007号公報
【特許文献2】特開平5−237928号公報
【特許文献3】WO2006/109753号公報
【特許文献4】WO2009/017073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、少なくとも幅方向に延伸して得られる延伸ポリイミドフィルムで、線膨張係数(CTE)等のフィルム物性に極力影響を与えずに、カール量を制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の事項に関する。
【0015】
1. ポリイミド前駆体溶液を支持体上にキャストし、自己支持性フィルムとする第1工程と、前記自己支持性フィルムを、少なくとも幅方向に延伸する延伸処理と、加熱処理とを行う第2工程とを有するポリイミドフィルムの製造方法により製造されるポリイミドフィルムのカール制御方法であって、
前記第2工程において、(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)未満の温度領域での延伸量と(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)以上の温度領域での延伸量の割合を変更することで、カール量を制御することを特徴とするポリイミドフィルムのカール制御方法。
【0016】
2. 前記第2工程において、全体の延伸倍率を変更せずに、(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)未満の温度領域での延伸量と(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)以上の温度領域での延伸量の割合を変更することを特徴とする上記1記載のポリイミドフィルムのカール制御方法。
【0017】
3. (自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)以上の温度領域での延伸が、(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)〜(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+120℃)の間で行われることを特徴とする上記1または2に記載のポリイミドフィルムのカール制御方法。
【0018】
4. 3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主成分とする芳香族テトラカルボン酸成分とパラフェニレンジアミンを主成分とする芳香族ジアミン成分とを溶媒中で反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を、支持体上にキャストし、自己支持性フィルムとする第1工程と、前記自己支持性フィルムを、少なくとも幅方向に延伸する延伸処理と、加熱処理とを行う第2工程とを有するポリイミドフィルムの製造方法により製造されるポリイミドフィルムのカール制御方法であって、
前記第2工程において、200℃未満の温度領域での延伸量と200℃以上の温度領域での延伸量の割合を変更することで、カール量を制御することを特徴とするポリイミドフィルムのカール制御方法。
【0019】
5. 前記第2工程において、全体の延伸倍率を変更せずに、200℃未満の温度領域での延伸量と200℃以上の温度領域での延伸量の割合を変更することを特徴とする上記4記載のポリイミドフィルムのカール制御方法。
【0020】
6. 200℃以上の温度領域での延伸が、200〜250℃の間で行われることを特徴とする上記4または5に記載のポリイミドフィルムのカール制御方法。
【0021】
7. 上記1〜6のいずれかに記載のポリイミドフィルムのカール制御方法によるポリイミドフィルムの製造方法。
【0022】
8. 上記7に記載のポリイミドフィルムの製造方法により製造されたポリイミドフィルム。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、少なくとも幅方向に延伸して得られる延伸ポリイミドフィルムで、線膨張係数(CTE)等のフィルム物性に極力影響を与えずに、カール量を制御する方法を提供することができる。
【0024】
本発明によれば、線膨張係数とは独立して、カール量を変更できるため、得られるポリイミドフィルムは、目的の用途に適したフィルム物性を有しながら、用途に好ましいカール量を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ポリイミドフィルムのカール量を測定する方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミド前駆体溶液を支持体上にキャストし、自己支持性フィルムとする第1工程と、前記自己支持性フィルムの幅方向の両端をテンター装置で把持し搬送しながら、加熱処理する第2工程(キュア工程)とを有する。本発明のカール制御方法は、第2工程で実施される。
【0027】
最終的に製造されるポリイミド層は、1層で構成されても、成分の異なる多層で構成されてもよい。ポリイミドフィルムを構成する層のうちで少なくとも1層は、耐熱性ポリイミドで構成される層であることが好ましい。多層構造の例としては、耐熱性ポリイミドで構成される層の片面または両面に熱圧着性ポリイミドで構成される層が形成された例、表面が平滑性に優れる層と他面が易滑性に優れる層で形成された例、少なくとも1層が透明性又は非透明性に優れる層で形成された例、などが挙げられる。最終的に製造されるポリイミドフィルムに対応して、自己支持性フィルムも、1層で構成されても、ポリイミド前駆体の成分が異なる多層で構成されてもよい。
【0028】
以下の説明では、耐熱性に優れる1層構造のポリイミドフィルムの製造方法を例にして説明する。
【0029】
自己支持性フィルムは、半硬化状態またはそれ以前の乾燥状態である。この半硬化状態またはそれ以前の乾燥状態とは、加熱および/または化学イミド化によって自己支持性の状態にあることを意味する。自己支持性フィルムは、支持体から剥がせるものであればよく、溶媒含量(加熱減量)やイミド化率はどのような範囲であってもよい。自己支持性フィルムの溶媒含量およびイミド化率は、製造を意図するポリイミドフィルムにより適宜設定される。
【0030】
ポリイミドフィルムは、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを反応させて得られるものであり、熱イミド化、化学イミド化、または熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することができる。
【0031】
本発明のポリイミドフィルムを製造する方法としては、
(1)ポリアミック酸溶液、またはポリアミック酸溶液に必要に応じてイミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子などを選択して加えたポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、加熱乾燥して自己支持性フィルムを得た後、熱的に脱水環化、脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、
(2)ポリアミック酸溶液に環化触媒及び脱水剤を加え、さらに必要に応じて無機微粒子などを選択して加えたポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、化学的に脱水環化させて、必要に応じて加熱乾燥して自己支持性フィルムを得た後、これを加熱脱溶媒、イミド化することによりポリイミドフィルムを得る方法
が挙げられる。
【0032】
<第1工程>
ポリイミド前駆体溶液を支持体上にキャストし、自己支持性フィルムとする第1工程を最初に説明する。
【0033】
まず、有機溶媒中でテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を合成する。次に、得られたポリイミド前駆体の溶液に必要であればイミド化触媒、有機リン化合物や無機微粒子を加えた後、支持体上に流延し、加熱・乾燥して、自己支持性フィルムを製造する。
【0034】
上記テトラカルボン酸成分としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0035】
上記ジアミン成分としては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等を挙げることができる。具体例としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、m−トリジン、p−トリジン、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
【0036】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分との組み合わせの一例としては、以下の1)〜3)が、機械的特性に優れ、高い剛性と優れた寸法安定性を有するフィルムが得られやすく、配線基板などの各種基板に好適に用いることができる。
【0037】
1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミン、又はp−フェニレンジアミン及び4,4−ジアミノジフェニルエ−テル(例えば、PPD/DADE(モル比)は100/0〜85/15であることが好ましい。)との組み合わせ。
【0038】
2)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物(例えば、s−BPDA/PMDA(モル比)は、99/1〜0/100、さらに97/3〜70/30、特に95/5〜80/20であることが好ましい)と、p−フェニレンジアミン、又はp−フェニレンジアミン及び4,4−ジアミノジフェニルエ−テル(例えば、PPD/DADE(モル比)は90/10〜10/90であることが好ましい。)との組み合わせ。
【0039】
3)ピロメリット酸二無水物と、p−フェニレンジアミン及び4,4−ジアミノジフェニルエ−テル(例えば、PPD/DADE(モル比)は90/10〜10/90であることが好ましい。)との組み合わせ。
【0040】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分との組み合わせは、上記1)と2)、さらに上記1)であることが好ましい。
【0041】
中でも、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下単にs−BPDAと略記することもある。)を主成分とするテトラカルボン酸成分と、パラフェニレンジアミン(以下単にPPDと略記することもある。)を主成分とするジアミン成分とから製造されるポリイミド前駆体が好ましい。具体的には、s−BPDAを70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含むテトラカルボン酸成分が好ましく、PPDを70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含むジアミン成分が好ましい。このようなテトラカルボン酸成分とジアミン成分とからは機械的特性に優れ、高い剛性と優れた寸法安定性を有するフィルムが得られやすく、配線基板などの各種基板に好適に用いることができる。
【0042】
さらに、本発明の特性を損なわない範囲で、他のテトラカルボン酸および他のジアミンを用いることもできる。
【0043】
ポリイミド前駆体の合成は、有機溶媒中で、略等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとをランダム重合またはブロック重合することによって達成される。また、予めどちらかの成分が過剰である2種類以上のポリイミド前駆体を合成しておき、各ポリイミド前駆体溶液を一緒にした後反応条件下で混合してもよい。このようにして得られたポリイミド前駆体溶液はそのまま、あるいは必要であれば溶媒を除去または加えて、自己支持性フィルムの製造に使用することができる。
【0044】
ポリイミド前駆体溶液の有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
ポリイミド前駆体溶液には、必要に応じて、熱イミド化であればイミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えてもよい。
【0046】
ポリイミド前駆体溶液には、必要に応じて、化学イミド化であれば環化触媒及び脱水剤、無機微粒子などを加えてもよい。
【0047】
イミド化触媒としては、置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物、該含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換もしくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物が挙げられ、特に1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾールなどの低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのベンズイミダゾール、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジンなどの置換ピリジンなどを好適に使用することができる。イミド化触媒の使用量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01−2倍当量、特に0.02−1倍当量程度であることが好ましい。イミド化触媒を使用することによって、得られるポリイミドフィルムの物性、特に伸びや端裂抵抗が向上することがある。
【0048】
有機リン含有化合物としては、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのモノリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのモノリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのモノリン酸エステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのジリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのジリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのジリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのジリン酸エステル等のリン酸エステルや、これらリン酸エステルのアミン塩が挙げられる。アミンとしてはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0049】
化学イミド化の場合、環化触媒としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられる。環化触媒の使用量は、溶液中の芳香族ポリアミック酸のアミック酸結合1モルに対して0.1モル以上であることが好ましい。
【0050】
化学イミド化の場合、脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられる。脱水剤の使用量は、溶液中の芳香族ポリアミック酸のアミック酸結合1モルに対して0.5モル以上であることが好ましい。
【0051】
無機微粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。これらの無機微粒子は二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
【0052】
ポリイミド前駆体溶液の自己支持性フィルムは、上記のようなポリイミド前駆体の有機溶媒溶液、あるいはこれにイミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えたポリイミド前駆体溶液組成物を支持体上に流延塗布し、自己支持性となる程度(通常のキュア工程前の段階を意味する)、例えば支持体上より剥離することができる程度に加熱して製造される。
【0053】
ポリイミド前駆体溶液は、ポリイミド前駆体を10〜30質量%程度含むものが好ましい。また、ポリイミド前駆体溶液としては、ポリマー濃度が8〜25質量%程度であるものが好ましい。
【0054】
このときの加熱温度および加熱時間は適宜決めることができ、熱イミド化では、例えば、温度100〜180℃で1〜60分間程度加熱すればよい。化学イミド化では、例えば40〜200℃の温度で自己支持性となる程度にまで加熱する。
【0055】
支持体としては、平滑な基材を用いることが好ましく、例えばステンレス基板、ステンレスベルトなどが使用される。連続生産するためには、エンドレスベルトなどのエンドレスな基材が好ましい。
【0056】
自己支持性フィルムは、支持体上より剥離することができる程度にまで溶媒が除去され、および/またはイミド化されていれば特に限定されないが、熱イミド化では、その加熱減量が20〜50質量%の範囲にあること、さらに加熱減量が20〜50質量%の範囲で且つイミド化率が8〜55%の範囲にあることが、自己支持性フィルムの力学的性質が十分となり、好ましい。また、自己支持性フィルムの上面にカップリング剤の溶液を塗工する場合には、カップリング剤溶液をきれいに塗布しやすくなり、イミド化後に得られるポリイミドフィルムに発泡、亀裂、クレーズ、クラック、ひびワレなどの発生が観察されないために好ましい。
【0057】
なお、上記の自己支持性フィルムの加熱減量とは、自己支持性フィルムの質量W1とキュア後のフィルムの質量W2とから次式によって求めた値である。
【0058】
加熱減量(質量%)={(W1−W2)/W1}×100
【0059】
また、上記の自己支持性フィルムのイミド化率は、IR(ATR)で測定し、フィルムとフルキュア品との振動帯ピーク面積または高さの比を利用して、イミド化率を算出することができる。振動帯ピークとしては、イミドカルボニル基の対称伸縮振動帯やベンゼン環骨格伸縮振動帯などを利用する。またイミド化率測定に関し、特開平9−316199号公報に記載のカールフィッシャー水分計を用いる手法もある。
【0060】
本発明においては、このようにして得られた自己支持性フィルムの片面または両面に、必要に応じて、カップリング剤やキレート剤などの表面処理剤の溶液を塗布してもよい。
【0061】
表面処理剤としては、シランカップリング剤、ボランカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、アルミニウム系キレート剤、チタネート系カップリング剤、鉄カップリング剤、銅カップリング剤などの各種カップリング剤やキレート剤などの接着性や密着性を向上させる処理剤を挙げることができる。特に表面処理剤としては、シランカップリング剤などのカップリング剤を用いる場合に優れた効果が得られる。
【0062】
シラン系カップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン系、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が例示される。また、チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等が挙げられる。
【0063】
カップリング剤としてはシラン系カップリング剤、特にγ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(アミノカルボニル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−[β−(フェニルアミノ)−エチル]−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシランカップリング剤が好適で、その中でも特にN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0064】
カップリング剤やキレート剤など、表面処理剤の溶液の溶媒としては、例えばポリイミド前駆体溶液の有機溶媒(自己支持性フィルムに含有されている溶媒)と同じものを挙げることができる。有機溶媒は、ポリイミド前駆体溶液と相溶する溶媒であっても、相溶しない貧溶媒であっても構わない。有機溶媒は2種以上の混合物であってもよい。
【0065】
カップリング剤やキレート剤などの表面処理剤の有機溶媒溶液は、表面処理剤の含有量が0.5質量%以上、より好ましくは1〜100質量%、特に好ましくは3〜60質量%、さらに好ましくは5〜55質量%であるものが好ましい。また、水分の含有量は20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下であることが好ましい。表面処理剤の有機溶媒溶液の回転粘度(測定温度25℃で回転粘度計によって測定した溶液粘度)は0.8〜50000センチポイズであることが好ましい。
【0066】
表面処理剤の有機溶媒溶液としては、特に、表面処理剤が0.5質量%以上、特に好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは3〜55質量%の濃度でアミド系溶媒に均一に溶解している、低粘度(特に、回転粘度0.8〜5000センチポイズ)のものが好ましい。
【0067】
表面処理剤溶液の塗布量は適宜決めることができ、例えば、1〜50g/m2が好ましく、2〜30g/m2がさらに好ましく、3〜20g/m2が特に好ましい。塗布量は、両方の面が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
表面処理剤溶液の塗布は、公知の方法を用いることができ、例えば、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などの公知の塗布方法を挙げることができる。
【0069】
以上のようにして、第1工程において製造された自己支持性フィルムは、必要により表面処理剤塗布等を行った後、第2工程に送られる。
【0070】
<第2工程>
第2工程(キュア工程)においては、第1工程で製造した自己支持性フィルムを、フィルムの延伸と加熱処理(熱キュア)して目的のポリイミドフィルムとする。延伸方向は、少なくとも幅方向(TD方向)であり、加えて長さ方向(MD方向)にも延伸を行ってもよい。
【0071】
第2工程における加熱処理の温度プロファイルは、目的とするポリイミドフィルムの物性に合わせて適宜設定することができる。
【0072】
最高温度が、200〜600℃の範囲、好ましくは350〜550℃の範囲、特に好ましくは400〜500℃の範囲となるような条件で、例えば約0.05〜5時間で徐々に加熱されることが好ましい。好ましくは最終的に得られるポリイミドフィルム中の有機溶媒および生成水等からなる揮発物の含有量が1重量%以下になるように、自己支持性フィルムから溶媒などを充分に除去するとともに前記フィルムを構成しているポリマーのイミド化を充分に行う。
【0073】
加熱ゾーンは、温度勾配を有していることも好ましく、また加熱温度の異なるいくつかブロックに分かれていてもよい。1例を挙げると、約100〜170℃の比較的低い温度で約0.5〜30分間第一次加熱処理し、次いで170〜220℃の温度で約0.5〜30分間第二次加熱処理して、その後、220〜400℃の高温で約0.5〜30分間第三次加熱処理し、必要により400〜600℃の高い温度で第四次高温加熱処理する。また、別の1例では、80〜240℃で第一次加熱処理し、必要により中間加熱温度で加熱処理し、350〜600℃で最終加熱処理する。
【0074】
上記の加熱処理は、熱風炉、赤外線加熱炉などの公知の種々の加熱装置を使用して行うことができる。フィルムの初期加熱温度、中間加熱温度および/または最終加熱温度などの加熱処理は、窒素、アルゴンなどの不活性ガスや、空気などの加熱ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0075】
延伸処理は、第2工程の間に行われる。全体の延伸倍率は、線膨張係数に関連するため、目的の線膨張係数が得られるように、決められる。以下の説明で、自己支持性フィルムの熱変形開始温度Tを、単に「熱変形開始温度T」または「T」と表記する。
【0076】
カール量の制御は、自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃を基準として、(T+70℃)未満の温度領域での延伸量と(T+70℃)以上の温度領域での延伸量の割合を変更することで、実施できることが本発明者らの検討により明らかになった。常識的には、配向緩和を防止するために熱変形開始温度より低い温度範囲でキュアを開始し延伸する方が、容易に分子を配向させることができると考えられおり、従って、(T+70℃)未満での延伸が常識的であった。しかし、(T+70℃)以上での延伸を組み合わせて、その比率を変更することで、カール量を制御できることは予想外の発見であり、その際、線膨張係数に影響をほとんど与えずにカール量を制御できるので、用途、使用目的に合わせた物性を有するポリイミドを容易に製造することができる。
【0077】
延伸倍率(%)、(T+70℃)未満の温度領域での延伸量ΔL1、(T+70℃)以上の温度領域での延伸量ΔL2を次のように定義する。
【0078】
延伸倍率=(A−B)/B×100
A−B=ΔL1+ΔL2
従って、延伸倍率=(ΔL1/B+ΔL2/B)×100
ここで、Aは、延伸後の製造されたポリイミドフィルムの幅方向の長さ、B:延伸前の自己支持性フィルムの幅方向の長さである。ΔL1は、(T+70℃)未満の温度領域で伸びた長さを表し、ΔL2は、(T+70℃)以上の温度領域で伸びた長さを表す。
【0079】
ΔL1とΔL2との比率{(T+70℃)未満での延伸倍率(ΔL1/B)と、(T+70℃)以上での延伸倍率(ΔL2/B)の比率としても同じ}を変更することで、カール量を制御する。
【0080】
(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)以上の温度領域での延伸は、好ましくは(T+70℃)以上(T+170℃)以下、より好ましくは(T+70℃)以上(T+120℃)以下、さらに好ましくは(T+70℃)以上(T+100℃)以下の間で実施される。
【0081】
(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)未満の温度領域での延伸は、好ましくは(T−50℃)以上(T+70℃)未満の間、より好ましくは(T−40℃)以上(T+70℃)未満の間で実施される。(T+70℃)未満の温度領域での延伸には、好ましくはT以上(T+50℃)未満の範囲の領域での延伸が含まれ、任意の延伸としてT未満の温度領域での延伸と、任意の延伸として(T+50℃)以上(T+70℃)未満の領域での延伸を加えても良い。
【0082】
(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)未満の温度領域の中でも、好ましくは(T+60℃)未満、より好ましくは(T+50℃)未満の温度での延伸の少なくとも一部を、自己支持性フィルムの(T+70℃)以上の延伸に置き換えることで、より効果的にカール量を制御できる。T未満の温度領域での延伸の少なくとも一部を、(T+70℃)以上の延伸に置き換えることも、カール量の制御に効果がある。
【0083】
自己支持性フィルムが、前述の好ましいポリイミド前駆体から製造される場合、即ち、自己支持性フィルムが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)を主成分とする芳香族テトラカルボン酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)を主成分とする芳香族ジアミン成分とから製造されるポリイミド前駆体から製造される場合(以下、「s−BPDA−PPD系自己支持性フィルム」という。)、自己支持性フィルムの熱変形開始温度Tは、ほぼ130℃である。従って、Tを130℃、(T+70℃)を200℃とすることができる。
【0084】
従って、s−BPDA−PPD系自己支持性フィルムの場合、200℃以上の温度領域での延伸は、好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは200℃以上250℃以下、さらに好ましくは200℃以上230℃以下の間で実施される。
【0085】
200℃未満の温度領域での延伸は、好ましくは80℃以上200℃未満の間、より好ましくは90℃以上200℃未満の間で実施される。200℃未満の温度領域での延伸には、好ましくは熱変形開始温度(例えば130℃)以上180℃未満の範囲の領域での延伸が含まれ、任意の延伸として熱変形開始温度未満の温度領域での延伸と、任意の延伸として180℃以上200℃未満の領域での延伸を加えても良い。
【0086】
200℃未満の温度領域の中でも、好ましくは190℃未満、より好ましくは180℃未満の温度での延伸の少なくとも一部を、200℃以上の延伸に置き換えることで、より効果的にカール量を制御できる。熱変形開始温度未満の温度領域での延伸の少なくとも一部を、200℃以上の延伸に置き換えることも、カール量の制御に効果がある。
【0087】
尚、熱変形開始温度は、熱機械的分析装置(TMA)により、下記の条件で、昇温しながら伸び(%)を測定し、温度(℃)に対する伸び(%)のグラフから、伸び(%)の立ち上がり温度として求めることができる。
【0088】
測定モード:引張モード、荷重4g
試料長さ:15mm
試料幅:4mm
昇温開始温度:25℃、
昇温終了温度:適宜500℃(500℃での保持時間はなし)、
昇温速度:20℃/min
測定雰囲気:窒素
【0089】
第2工程において、幅方向の延伸速度は、目的とする線膨張係数が得られるように適宜選択すればよく、好ましくは1%/分〜20%/分、より好ましくは1%/分〜10%/分である。
【0090】
延伸のパターンとしては、所定の延伸倍率まで、一気に延伸する方法、逐次に延伸する方法、少しずつ不定率な倍率で延伸する方法、少しずつ定率な倍率で延伸する方法、またはこれらを複数組み合わせた方法などを挙げることができる。特に少しずつ定率で延伸する方法が好ましく、その際に異なる温度領域(例えば(T+70℃)未満の領域と(T+70℃)以上の領域との間)で率を変更するようにしてもよい。
【0091】
第2工程(キュア工程)における熱処理、および延伸処理は、好ましくは所定の加熱ゾーンを有するキュア炉の中を、テンター装置により自己支持性フィルムを連続して搬送し、その間に少なくとも幅方向を拡大することで行う。
【0092】
テンター装置としては、加熱処理の間、自己支持性フィルムの幅方向の両端を把持しながら搬送できるものであればよく、フィルム把持部材として突き刺しピンを使用する(ピン式テンター)、クリップまたはチャックにより自己支持性フィルムの端部を把持するクリップ式テンター、チャック式テンター等を使用することができる。
【0093】
そして、延伸倍率は、フィルムの幅方向の両端でフィルムを把持しているフィルム把持部材の間隔の拡大倍率で定められる。ΔL1とΔL2との比率を変更するには、両端でフィルムを把持しているフィルム把持部材(突き刺しピン)の間隔の拡大量を、(T+70℃)未満の温度領域と(T+70℃)以上の温度領域とで変更することで行うことができる。
【0094】
以上の製造方法により、ポリイミドフィルムは長尺状に製造されるので、一般的には、テンター装置により幅方向に把持した自己支持性フィルムの両端部を切断除外した部分を、ロール状に巻いて保存され、次の加工に提供される。
【0095】
ポリイミドフィルムの厚みは、適宜選択すればよく特に限定されるものではないが、厚さが150μm以下、好ましくは5〜120μm、より好ましくは6〜50μm、さらに好ましくは7〜40μm、特に好ましくは8〜35μmとすることができる。
【0096】
本発明で製造されるポリイミドフィルムは、少なくとも片面に直接又は接着剤層を介して、金属層や樹脂層を積層することができる。
【0097】
本発明で製造されるポリイミドフィルムは、回路基板用ベースフィルム、フレキシブル基板(フレキシブル配線版用ベースフィルム、太陽電池用ベースフィルム、有機EL用ベースフィルムとして好適に使用することができる。
【0098】
本発明のカール制御方法では、TD方向、又はTD方向とMD方向の延伸倍率などを制御することで所望の線膨張係数のポリイミドフィルムを得ることができる。
【0099】
本発明のカール制御方法では、ポリイミドフィルムのTD方向の線膨張係数(CTE−TD)は、MD方向の線膨張係数(CTE−MD)に対して小さいことが好ましく、[(CTE−MD)−(CTE−TD)]>3ppm/℃、さらに[(CTE−MD)−(CTE−TD)]>5ppm/℃、特に[(CTE−MD)−(CTE−TD)]>7ppm/℃の範囲であることが好ましい。
【0100】
例えば、ポリイミドフィルムに直接又は間接的に銅を積層して銅より配線を形成した場合、ポリイミドフィルムのMD方向の線膨張係数が銅の線膨張係数に近いことが好ましく、具体的には、10〜30ppm/℃であることが好ましく、11〜25ppm/℃であることがより好ましく、13〜20ppm/℃であることがさらに好ましく、ポリイミドフィルムのTD方向の線膨張係数は、配線が接続する部材の線膨張係数に近いことが好ましく、例えば配線が接続する部材がシリコンチップなどのICチップやガラス板(特に液晶用ガラス板)の場合は、具体的には、10ppm/℃未満であることが好ましく、0〜9ppm/℃であることがより好ましく、3〜8ppm/℃であることがさらに好ましい。
【0101】
本発明において線膨張係数は、線膨張係数(50〜200℃)を意味し、線膨張係数(50〜200℃)は平均線膨張係数(50〜200℃)を意味する。
【実施例】
【0102】
実施例により、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。実施例の評価方法は以下の通りである。
【0103】
<カール量の測定>
カールの測定は、温度23℃、湿度50%Rhの条件で行う。カールの測定には、図1(b)に示すように水平部と垂直部とを有する測定台を用いる。カール量の測定試料は、直径86mmの円盤状の測定試料を切り取り、測定試料のまき癖を除去するために110℃で10分間熱処理した後、23℃、50%Rhで1時間調湿処理した後、測定を行う。測定試料は、長尺状ポリイミドフィルムの幅方向の中央、右端付近、左端付近の3箇所から切り出して、平均を採用する。
【0104】
図1(a)、図1(b)及び図1(c)は、測定試料の測定台への取り付け、及びカール量の測定方法を説明した模式図であり、図1(a)は正面図であり、図1(b)は側面図であり、図1(c)は上部より見た図である。
【0105】
円盤状の測定試料は、図1(a)及び図1(b)に示すように、測定台の水平部に接触させないように測定台の垂直部に対して測定試料を凸状になるように配置して、測定試料の中心を垂直部に固定させる。重力による影響を極力排除した状態で測定するために、垂直部に固定されている測定試料の最もカールしている外周部を、試料の中心を通る水平線と接するように回転させる。その後、試料の最もカールしている外周部が、測定台の垂直部より離れている長さを測定し、その測定値をカール量と定義する。
【0106】
カールは、B面(ポリイミド前駆体溶液の自己支持性フィルムが支持体と接する側の面)側へのカールを+値で表し、反対面(A面)へのカールを−値で表す。A面へのカールとは、図1(b)又は図1(c)に示すように、円盤状の測定試料はB面側に凸状のカール(A面側に凹状のカール)であり、測定試料のB面側を測定台の垂直部に接するように固定して測定するカール量である。
【0107】
円盤状の測定試料は、図1(c)に示すように放物線あるいは放物線に似た形状にカールしたものであり、ロール状にカールしたものを含まない。
【0108】
<線膨張係数の測定>
300℃で30分間加熱して応力緩和したサンプルを使用し、熱機械的分析装置(TMA)(圧縮モード、4g荷重、試料長10mm、20℃/分)で測定し、線膨張係数(50〜200℃)を得た。
【0109】
<実施例1>
重合槽に所定量のN,N−ジメチルアセトアミドを加え、次いで3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン二無水物、次いでパラフェニレンジアミンを加え、30℃で10時間重合反応させて、ポリマーの対数粘度(測定温度:30℃、濃度:0.5g/100ml溶媒、溶媒:N,N−ジメチルアセトアミド)が1.60、ポリマー濃度が18質量%であるポリイミド前駆体溶液を得た。このポリイミド前駆体溶液に、ポリイミド前駆体100質量部に対して0.1質量部の割合でモノステアリルリン酸エステルトリエタノールアミン塩および0.5質量部の割合で平均粒径0.08μmのコロイダルシリカを添加し、均一に混合してポリイミド前駆体溶液組成物を得た。このポリイミド前駆体溶液組成物の回転粘度は3000ポイズであった。
【0110】
得られたポリイミド前駆体溶液組成物を、第1工程において、Tダイ金型のスリットから連続的にキャスティング・乾燥炉の平滑な金属支持体に押出し、支持体上に薄膜を形成した。この薄膜を120〜160℃で10分間加熱後、支持体から剥離して自己支持性フィルムを得た。この自己支持性フィルムのB面上(支持体側表面)に、4質量%の濃度でシランカップリング剤(N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)を含有するN,N−ジメチルアセトアミド溶液を7g/mで塗布し、B面に約10g/mの塗布量でN,N−ジメチルアセトアミドを塗布し、80〜120℃の熱風で乾燥させた。
【0111】
次いで、第2工程において、この乾燥フィルムの幅方向の両端部を把持して連続加熱炉へ挿入し、フィルムを加熱、イミド化(最高温度500℃程度)して、平均膜厚が34μmで幅が524mmの長尺状ポリイミドフィルムを連続的に製造した。この間、全体の延伸倍率が7.6%で、そのうち、200℃以上の温度領域の延伸として、204℃での延伸が0.6%となる条件で延伸をおこなった。
【0112】
得られたポリイミドフィルムの物性は次のとおりである。
【0113】
TD方向の線膨張係数CTE(50−200℃):5.2 ppm/℃
カール:−6.7mm
【0114】
<実施例2>
204℃での延伸が1.5%となる条件で、それ以外は実施例1と同様にして、長尺状ポリイミドフィルムを製造した。得られたポリイミドフィルムの物性を表1に示す。
【0115】
<実施例3>
204℃での延伸が2.3%となる条件で、それ以外は実施例1と同様にして、長尺状ポリイミドフィルムを製造した。得られたポリイミドフィルムの物性を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
また、実施例1〜3のMD方向の線膨張係数は、約15ppm/℃であった。
【0118】
表1から、線膨張係数を変更することなく、カール量を制御できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明で製造されるポリイミドフィルムは、回路基板用ベースフィルム、フレキシブル基板(フレキシブル配線板用ベースフィルム)、太陽電池用ベースフィルム、有機EL用ベースフィルムとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体溶液を支持体上にキャストし、自己支持性フィルムとする第1工程と、前記自己支持性フィルムを、少なくとも幅方向に延伸する延伸処理と、加熱処理とを行う第2工程とを有するポリイミドフィルムの製造方法により製造されるポリイミドフィルムのカール制御方法であって、
前記第2工程において、(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)未満の温度領域での延伸量と(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)以上の温度領域での延伸量の割合を変更することで、カール量を制御することを特徴とするポリイミドフィルムのカール制御方法。
【請求項2】
前記第2工程において、全体の延伸倍率を変更せずに、(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)未満の温度領域での延伸量と(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)以上の温度領域での延伸量の割合を変更することを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルムのカール制御方法。
【請求項3】
(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)以上の温度領域での延伸が、(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+70℃)〜(自己支持性フィルムの熱変形開始温度T+120℃)の間で行われることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドフィルムのカール制御方法。
【請求項4】
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を主成分とする芳香族テトラカルボン酸成分とパラフェニレンジアミンを主成分とする芳香族ジアミン成分とを溶媒中で反応させて得られるポリイミド前駆体溶液を、支持体上にキャストし、自己支持性フィルムとする第1工程と、前記自己支持性フィルムを、少なくとも幅方向に延伸する延伸処理と、加熱処理とを行う第2工程とを有するポリイミドフィルムの製造方法により製造されるポリイミドフィルムのカール制御方法であって、
前記第2工程において、200℃未満の温度領域での延伸量と200℃以上の温度領域での延伸量の割合を変更することで、カール量を制御することを特徴とするポリイミドフィルムのカール制御方法。
【請求項5】
前記第2工程において、全体の延伸倍率を変更せずに、200℃未満の温度領域での延伸量と200℃以上の温度領域での延伸量の割合を変更することを特徴とする請求項4記載のポリイミドフィルムのカール制御方法。
【請求項6】
200℃以上の温度領域での延伸が、200〜250℃の間で行われることを特徴とする請求項4または5に記載のポリイミドフィルムのカール制御方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミドフィルムのカール制御方法によるポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のポリイミドフィルムの製造方法により製造されたポリイミドフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−213012(P2011−213012A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84458(P2010−84458)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】