説明

ポリイミドフィルムの製造方法

【課題】 耐熱性、平面性に優れ、300℃熱処理後のカール度が10%以下、吸水率が4%以下で破断伸度が25%以上のポリイミドフィルムとそれに好適な製造方法を提供する。
【解決手段】 イミド化工程の少なくとも熱処理最終工程において、IR設定温度T(℃)(650℃以上900℃以下)と、滞留時間τ(分)と、ポリイミドフィルムの厚みt(μm)とが特定関係式で規定される条件で熱処理されることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法とそれに合致する加熱イミド化にIR加熱装置を設け、IR輻射板およびまたは反射板を設けたポリイミドフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた性能のポリイミドフィルム、およびそのポリイミドフィルムの製造方法に関するものであり、高温処理しても反りやカールの少ない耐熱性に優れた、吸水率、破断伸度が所定の値を有する従来にないポリイミドフィルムを製造する際のイミド化における最終熱処理時に、IR加熱手段を用いそのIR設定温度とフィルムの滞留時間と得られるポリイミドフィルムの厚みとの関係に所定の条件を設定することに特徴を有するポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムを製造するとき、溶媒の一部が残っているポリアミド酸フィルム(前駆体フィルムまたはグリーンフィルムともいう)を高温でイミド化する。この場合該前駆体フィルムを搬送しながら加熱して乾燥および熱処理を行うが、これらの溶媒を少なからず保有しているフィルムは一般的に乾燥されるに従って収縮する。このようなフィルムの搬送・乾燥・熱処理において、フィルムの幅方向の両側端部を多数のピンやクリップで保持することによりフィルムの幅方向を張設した状態で搬送しフィルムを製造する装置として、所謂テンターと呼ばれるフィルム(シート)のテンター式搬送装置が知られている(特許文献1参照)。
また、ポリイミドフィルムの製造にテンター式搬送装置を使用することも多数知られている(特許文献2参照)。
【0003】
また、高分子フィルムの製造方法において、900℃のIRヒーター設定温度でフィルムを加熱して延伸してポリエステルフィルムを製造することが開示されている(特許文献3参照)。
さらに、ポリアミド酸フィルム(前駆体フィルムまたはグリーンフィルムともいう)を高温でイミド化するポリイミドフィルムの製造方法において、赤外線または遠赤外線ヒーターで150℃〜450℃に加熱することが開示されている(特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭39−029211号公報
【特許文献2】特開平09−188763号公報
【特許文献3】特開平07−003130号公報
【特許文献4】特開平05−025295号公報
【特許文献5】特開平11−286025号公報
【0005】
ポリアミド酸フィルム(前駆体フィルムまたはグリーンフィルムともいう)を高温でイミド化するポリイミドフィルムの製造方法において、イミド化の工程が得られるポリイミドフィルムの物性に大きく寄与し、単に高温においてアミド酸部位をイミド化することだけでは優れたポリイミドフィルムの物性は得られず、ポリイミドフィルムの表層、内層、裏層における、イミド化の均一化がポリイミドフィルムの物性に重要な因子となるが、従来の開示技術においては、特にイミド化の工程において熱風加熱手段を使用したときにはフィルムの揺れ、加熱の均一さなどからポリイミドフィルムの表層、内層、裏層における、イミド化の均一化を得ることが困難であった。比較的前記課題の軽減に効果のあるIR手段による加熱の場合においても、このポリイミドフィルムの表層、内層、裏層における、イミド化の均一化という観点からイミド化の工程における、少なくとも設定温度、滞留時間、フィルム厚さとの関係における考察がなされておらず、従来技術によってはポリイミドフィルムの表層、内層、裏層におけるイミド化の均一化を得ることが困難であり、結果的に高温処理しても反りやカールの少ない耐熱性に優れた、吸水率と破断伸度とが所定の値を有する、すなわち、300℃熱処理後のカール度が10%以下、吸水率が4.0%以下、破断伸度が25%以上のポリイミドフィルムを安定的に得ることが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電子部品の基材などとして好適である平面性および均質性に優れ、しかも高温処理しても反りやカールの少ない耐熱性に優れた、吸水率が4.0%以下、破断伸度が25%以上であるポリイミドフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
ポリイミドフィルムの製造方法におけるイミド化時に熱風加熱手段を使用した場合は、フィルム厚み方向のイミド化率が不均一となりがちであり、そのため、フィルムの反りが生じやすく、特に、高温処理によって潜在的に存在する歪みが顕在化してカールが発生し、ユーザー加工時の歩留まり低下につながり、また、電気特性等を低下させる吸水率の低減が困難となり吸水率低減と力学特性、特に生産上の歩留まり低下につながる破断伸度の維持の両立が困難であり、IRによる高温加熱でフィルム厚み方向のイミド化率が均一に向上せんとする試みにおいても、ある程度の効果が見られるが、単純にIR設定温度を上げていくと、フィルム厚み方向のイミド化率の均一化は達成されそれによって吸水率が所定値以下にすることもできるが、脆くなる(破断伸度低下)ことが多くなり、フィルム厚さ、設定温度に応じた滞留時間の設定が必要となるが過度の試行錯誤を要する。IR加熱部におけるフィルム走行下部に輻射板(または反射板)を設けることで、更に厚み方向の均一性が向上し、吸水率を低下させかつ破断伸度の維持が可能なことを見出し本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下の構成によるものである。
1.芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を、支持体上に流延・乾燥し、自己支持性のポリアミド酸フィルムを得て、次いで該ポリアミド酸フィルムを、熱処理しイミド化するイミド化工程を経てポリイミドフィルムを得るポリイミドフィルムの製造方法であって、該イミド化工程の少なくとも熱処理最終工程においてIR加熱装置により熱処理し、該IR加熱装置設定温度T(℃)と、滞留時間τ(分)と、ポリイミドフィルムの厚みt(μm)が下記関係式1で規定される条件で熱処理されることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【0008】
【数1】

(上記関係式において、650≦T≦900(℃))
2.芳香族ジアミン類が、ベンゾオキサゾール構造を有するジアミン類である1.に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
3.芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を、支持体上に流延・乾燥し、自己支持性のポリアミド酸フィルムを得て、次いで該ポリアミド酸フィルムを、熱処理しイミド化するイミド化工程を少なくとも含むポリイミドフィルムを得るポリイミドフィルムの製造装置であって、該イミド化工程において少なくともフィルム走行部の上部にIR加熱装置を設け、フィルム走行部の下部にIR輻射板およびまたは反射板を設けたことを特徴とする1.に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリイミドフィルムは、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を、支持体上に流延・乾燥し、自己支持性のポリアミド酸フィルムを得て、該ポリアミド酸フィルムはイミド化工程を経て得られるポリイミドフィルムであり、300℃熱処理後のカール度が10%以下、吸水率が4.0%以下、破断伸度が25%以上であることを特徴とするポリイミドフィルムであり、電子部品の基材などとして好適である平面性および均質性に優れたポリイミドフィルムであり、前記ポリイミドフィルム製造の生産性に寄与し、工業的に極めて有効にポリイミドフィルムを製造する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリイミドフィルムは、芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、乾燥、イミド化(熱処理)してフィルムとなす。
本発明のポリイミドフィルムの300℃におけるフィルムのカール度は、より好ましくは8%以下、更により好ましくは0.2%程度以上5%以下である。300℃におけるカール度が10%を超えると、本発明にかかるポリイミドフィルムを基材とする電子部品を製造する際に、フィルムに内在する歪みが発現してカールが発生し、電子部材の位置ズレや浮きなどの問題を引き起こす場合がある。
また、吸水率は、より好ましくは3.5%以下、更により好ましくは0.2%程度以上3.0%以下である。吸水率が4.0%を超えると、本発明かかるポリイミドフィルムを基材とする電子部品を製造する際に、吸水により電気絶縁性を低下させたり、フィルムに内在する歪みが発現してクラックを発生させるなどの問題を引き起こす場合がある。
また、破断伸度は、より好ましくは30%以上80%程度以下、更により好ましくは35%以上60%程度以下である。破断伸度が25%未満の場合、ポリイミドフィルムの製造工程、或いは加工工程において、工程内で発生する張力変動により、破断トラブルを発生させる場合がある。
本発明のポリイミドフィルムの製造装置および製造方法は、特にポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液やポリイミドベンゾオキサゾールの前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶液を使用する流延製膜方法による場合に最も好ましく適用し得る。
本発明に好ましく適用し得る、ポリイミドフィルムを得るための芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸類との反応は、溶媒中で芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類とを(開環)重付加反応に供してポリイミド前駆体であるポリアミド酸の溶液を得て、次いで、このポリアミド酸の溶液から前駆体フィルム(ポリアミド酸フィルムまたはグリーンフィルムともいう)を成形した後に乾燥・熱処理・脱水縮合(イミド化)することにより製造される。
【0011】
本発明におけるポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例として挙げられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル構造を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸構造を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン構造を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸構造を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
本発明で特に好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
【化3】

【0015】
【化4】

【0016】
2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール。
【0017】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0018】
本発明におけるジアミノジフェニルエーテル構造を有する芳香族ジアミン類としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,3′−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4′−ジアミノジフェニルエーテルおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるフェニレンジアミン構造を有する芳香族ジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムには前記に限定されない下記の芳香族ジアミンを使用してもよい。
【0019】
例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0020】
3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0021】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0022】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0023】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0024】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0025】
本発明におけるポリイミドフィルムに置ける好ましく使用できる芳香族テトラカルボン酸類として、ピロメリット酸構造を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちピロメリット酸およびその無水物またはハロゲン化物、ビフェニルテトラカルボン酸構造を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちビフェニルテトラカルボン酸およびその無水物またはハロゲン化物が挙げられる。
前記に限定されないで下記の芳香族テトラカルボン酸を使用してもよい。
【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

これらのテトラカルボン酸は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0030】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく適用される。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの重量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%となるような量が挙げられる。
【0031】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の重量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0以上が好ましく、4.0以上がさらに好ましく、なおさらに5.0以上が好ましい。
【0032】
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の溶液を製造するのに有効である。
さらに、以下述べるポリアミド酸の溶液を支持体上に流延・塗布するに際して予め減圧などの処理によって該溶液中の気泡や溶存気体を除去しておくことも、本発明のポリイミドフィルムを得るために有効な処理である。
【0033】
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。また、適度な剛性と高い平滑性を有するポリイミドフィルムを利用する方法も好ましい態様である。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。また支持体の差によって乾燥における風量や温度は適宜選択採用すればよく、支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0034】
イミド化・熱処理として、閉環(イミド化)触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)により行われるが、ポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を併用しても良い。
熱閉環法の熱処理温度は、少なくても2段階熱処理工程以上の多段階熱処理工程が好ましく、初期段階熱処理工程、及び中間段階熱処理工程において、熱風加熱により、熱風設定温度を150〜250℃で1〜20分間処理した後に、引き続き、最終熱処理工程において、IR加熱により、IR設定温度T(℃)と、滞留時間τ(分)と、ポリイミドフィルムの厚みt(μm)とが下記関係式で規定される条件で熱処理されることが好ましく、300℃熱処理後のカール度が10%以下、吸水率が4.0%以下、破断伸度が25%以上である電子部品の基材などとして好適である平面性および均質性に優れたポリイミドフィルムを得るのに有効である。初期段階熱処理工程、及び、又は中間段階熱処理工程において、熱処理温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、また、最終熱処理工程においては、熱処理温度Tがこの範囲より低いと熱処理が不足し、得られたフィルムを高温処理した場合、反りやカールが発生し、吸水率が増加し、寸法安定性に欠け好ましくない。またこの熱処理温度が、この範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなり好ましくない。ここで、IR加熱手段としては、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーター等が挙げられるが、これらに限られず、従来公知のIR加熱手段を適宜用いることができる。また、IR加熱装置設定温度Tとは、IRヒーター表面温度を示す。
【0035】
【数1】


(上記関係式において、650≦T≦900(℃))
【0036】
また、ポリイミドフィルムの厚みt(μm)は特に限定されないが、例えばプリント配線基板用ベース基板に用いることを考慮すると、3〜150μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは5〜50μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
また、滞留時間τは、IR設定温度を制御している流れ方向のゾーン長L(m)とフィルムの製膜速度V(m/分)により、τ=L/V を用いて算出し、製膜速度Vにより制御した。滞留時間τは、上記関係式より長くなった場合、過剰な熱処理が施され、フィルムが脆くなり好ましくない。また、滞留時間τが関係式1より短くなった場合、得られたフィルムを高温処理した場合、反りやカールが発生し、熱処理が不足し、吸水率が増加し、寸法安定性に欠け好ましくない。
より好ましい範囲は、以下に示す通りである。
【0037】
【数2】


(上記関係式2において、650≦T≦900(℃))
【0038】
また、IR加熱部におけるフィルム走行下部に輻射板(または反射板)を設けることで更に厚み方向の均一性が向上し、300℃熱処理後のカール度と吸水率を低下させ、かつ破断伸度の維持が可能なことを見出し本発明に到達した。
【0039】
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0040】
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンシート、フィルム)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
本発明のポリイミドフィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0041】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法において、その前駆体からなるフィルムをフィルム端部固定式テンターにてイミド化のために熱処理をする際に、フィルムの幅方向の両側端部におけるフィルム端部把持が、多数のピンシートと個々のピンシートに配された多数のピンで構成され、該ピンが押さえブラシロールによりフィルム両側端部を突き刺すことでなされ、幅方向および又は搬送方向に張設した状態でフィルムを搬送するテンター式処理部を有するポリイミドフィルム製造方法が好ましく採用でき、フィルムの揺動や蛇行を防止するための、フィルム下方からの支え治具と、フィルム上方からの押さえロールである治具を、フィルムがピンシートに把持される位置の前に設け、ピンシートに把持されるフィルム部の折れ、重なりなどを防止することが好ましい態様の一とするものであり、好ましい態様としてこの治具を、ピンシートに把持される位置より200mm以下の前方に設置する、フィルム下方からの支え治具がロール形状である製造方法であり、またピンシートが幅方向において外側に設置されたピン台座よりも高い部位を有するものである製造方法またはその製造装置である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
【0043】
2.ポリイミドフィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1254D)を用いて測定した。
【0044】
3.ポリイミドフィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(登録商標)、機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定し、破断伸度は、MD方向とTD方向の算術平均により求めた。
【0045】
・ ポリイミドフィルムの吸水率
測定対象のポリイミドフィルムを約50cm×50cmにカットして試験片とした。まず試験片を150℃のドライオーブンにて3時間真空乾燥し、直後にその質量を測定し初期値とし、ついで25℃のイオン交換水に試験片を72時間入れ、その後に表面の水滴を十分に拭き取って再秤量し吸水値とした。下記式より吸水率を求めた。
吸水率W =100×(吸水値 − 初期値)/(初期値) [質量%]
【0046】
・ 300℃処理後のポリイミドフィルムの反り度
測定対象のポリイミドフィルムを50mm×50mmにカットして試験片とした。まず、試験片を300℃で10分間熱風処理した後に、平面上に試験片を凹状となるように静置し、四隅の平面からの距離(h1、h2、h3、h4;単位mm)の平均値をカール量(mm)とし、試験片の各頂点から中心までの距離(35.36mm)に対するカール量の百分率(%)で、300℃処理後のカール度を求めた。
試験片は、ポリイミドフィルムに対して5分の1の長さピッチで幅方向に2点(幅長の1/3と2/3の点)を試験片の中心点として、n=10の計10点をサンプリングし(取りきれない場合は最大n点をもってサンプリングし)、測定値は10点(又はn)の平均値とする。
カール量(mm)=(h1+h2+h3+h4)/4
カール度(%)=100×(カール量)/35.36
【0047】
〔参考例1〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(日本触媒株式会社製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8dl/gであった。
【0048】
〔実施例1〕
参考例1で得たポリアミド酸溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(塗工幅760mm)、110℃にて30分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、幅720mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、ピンシートやブラシロール、押さえロール、支え治具を備えた装置のピンテンターにて両端を把持し熱処理を行った。
テンターの熱処理設定は以下の通りである。
3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通してかつその加熱手段、温度、滞留時間は下記のようにした。
1段目熱風加熱手段で150℃×2分、
2段目熱風加熱手段で220℃×2分、
3段目がIR加熱手段を使用してのイミド化工程の少なくとも熱処理最終工程であり、かつフィルム走行下部に炭化珪素からなるIR輻射板を設け、IR表面設定温度830℃、滞留時間2分。
得られたポリイミドフィルム厚みは15μmであり、300℃熱処理後のカール度=4.8%、吸水率=2.8%、破断伸度=33%であった。
また、以下の関係式1で算出される滞留時間τ(分)の下限滞留時間τminは0.8分、上限滞留時間τmaxは3.7分であった。
【0049】
【数1】

【0050】
〔比較例1〕
参考例1で得たポリアミド酸溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(塗工幅1240mm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、ピンシートやブラシロール、押さえロール、支え治具を備えた装置のピンテンターにて両端を把持し熱処理を行った。
テンターの熱処理設定は以下の通りである。
3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通してかつその加熱手段、温度、滞留時間は下記のようにした。
1段目熱風加熱手段で150℃×2分、
2段目熱風加熱手段で220℃×2分、
3段目がIR加熱手段を使用してのイミド化工程の少なくとも熱処理最終工程であり、かつフィルム走行下部に炭化珪素からなるIR輻射板を設け、IR表面設定温度830℃、滞留時間8分。
得られたポリイミドフィルム厚みは15μmであり、300℃熱処理後のカール度=3.0%、吸水率=2.7%、破断伸度=8%であった。
また、上述の関係式1で算出される滞留時間τ(分)の下限滞留時間τminは0.8分、上限滞留時間τmaxは3.7分であった。
【0051】
〔実施例2〜9、比較例2〜3〕
実施例1と同様にして、表1に示す条件で各例のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの性能などを表1に示す。
なお、表中IR設定温度をT(℃)、滞留時間をτ(分)、下限滞留時間をτmin(分)、上限滞留時間τmax(分)と、ポリイミドフィルムの厚みをt(μm)と示し、300℃熱処理後のカール度をC(%)、吸水率をW(質量%)、破断伸度をE(%)で示す。
【0052】
〔比較例4〕
参考例1で得たポリアミド酸溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑材面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(塗工幅1240mm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。
得られたこれらのグリーンフィルムを、ピンシートやブラシロール、押さえロール、支え治具を備えた装置のピンテンターにて両端を把持し熱処理を行った。
テンターの熱処理設定は以下の通りである。
3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通してかつその加熱手段、温度、滞留時間は下記のようにした。
1段目熱風加熱手段で150℃×2分、
2段目熱風加熱手段で220℃×2分、
3段目熱風加熱手段で520℃×10分
得られたポリイミドフィルム厚みは5μmであり、300℃熱処理後のカール度=13.2%、吸水率=7.2%、破断伸度=45%であった。また、上述の関係式1で算出される滞留時間τ(分)の下限滞留時間τminは0.8分、上限滞留時間τmaxは3.7分であった。
【0053】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0054】
以上述べてきたように、本発明においては耐熱性、平面性に優れかつ、表裏と内面のイミド化などの均一性に優れたポリイミドフィルムであって、300℃熱処理後のカール度が10%以下、吸水率が4.0%以下であって、かつ破断伸度が25%以上である性能バランスの優れたポリイミドフィルムが得られ、これらのポリイミドフィルムを得るための製造方法を提供することができる。
当該製造方法、ポリイミドフィルム、特に、ポリベンザオキサゾールフィルムに好適に使用することができ、ポリイミドフィルムの流延製膜方法として産業上きわめて有意義なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を、支持体上に流延・乾燥し、自己支持性のポリアミド酸フィルムを得て、次いで該ポリアミド酸フィルムを、熱処理しイミド化するイミド化工程を経てポリイミドフィルムを得るポリイミドフィルムの製造方法であって、該イミド化工程の少なくとも熱処理最終工程においてIR加熱装置により熱処理し、該IR加熱装置設定温度T(℃)と、滞留時間τ(分)と、ポリイミドフィルムの厚みt(μm)が下記関係式1で規定される条件で熱処理されることを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【数1】


(上記関係式において、650≦T≦900(℃))
【請求項2】
芳香族ジアミン類が、ベンゾオキサゾール構造を有するジアミン類である請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸溶液を、支持体上に流延・乾燥し、自己支持性のポリアミド酸フィルムを得て、次いで該ポリアミド酸フィルムを、熱処理しイミド化するイミド化工程を少なくとも含むポリイミドフィルムを得るポリイミドフィルムの製造装置であって、該イミド化工程において少なくともフィルム走行部の上部にIR加熱装置を設け、フィルム走行部の下部にIR輻射板およびまたは反射板を設けたことを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−57782(P2011−57782A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206865(P2009−206865)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】