説明

ポリイミドフィルムの製造方法

【課題】外観不良や強度低下、さらにイミド化反応に伴う白化等を生じることがない、ポリイミドフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】a)特定のテトラカルボン酸二無水物と、特定のジアミンとを溶剤中で反応させてなる、ポリアミド酸を含むポリアミド酸含有溶液を、支持体上に塗布する工程と、b)前記ポリアミド酸含有溶液の塗膜からなるポリアミド酸含有フィルムがタックフリーとなるまで、前記ポリアミド酸含有溶液中の溶剤を150℃以下の温度で乾燥する工程と、c)前記ポリアミド酸含有フィルムを支持体から剥離する工程と、d)前記ポリアミド酸含有フィルムを固定し、150℃以下から、昇温させながら前記ポリアミド酸含有フィルムの加熱を行い、前記ポリアミド酸のイミド化してポリイミドフィルムを得る工程とを有する、ポリイミドフィルムの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは一般的に、他の汎用樹脂やエンジニアリングプラスチックと比べて、優れた耐熱性、機械特性、電気特性を有している。そのため、成形材料、複合材料、電気・電子材料、光学材料などとして、様々な用途で幅広く用いられている。特に、フレキシブルプリント基板などとして用いられる、金属箔とポリイミド層とを有するポリイミド金属積層体は、その反りが低減されている必要がある。ところが一般的に、金属と比較してポリイミドは熱膨張係数(CTE)が大きく、ポリイミド金属積層体の反りの発生の一因となることがある。
【0003】
また、液晶表示素子や有機EL表示素子などのディスプレイ分野において、透明材料である無機ガラスが、パネル基板などとして広く使用されている。無機ガラスは、高い比重(重さ)、脆さ、低屈曲性などが問題となっている。そこでガラスに代わる透明材料の検討が進められている。耐熱透明樹脂からなるプラスチックフィルムは、軽量化、耐衝撃化、かつ、加工性にも優れているなどの利点を有する。さらに、該プラスチックフィルムの使用により、無機ガラスでは非常に難しいフレキシブルディスプレイ化への展開も期待されている。
【0004】
耐熱透明樹脂からなるプラスチックフィルムの材料として、例えばシクロヘキサンジアミン(CHDA)をジアミン成分として含むポリイミドが報告されている(特許文献1、2、3、および4を参照)。シクロヘキサンジアミンをジアミン成分とするポリイミドは、熱膨張係数(CTE)が小さいという特徴を有しうる(例えば特許文献1の実施例3を参照)。また、脂環構造であることから、該ポリイミドの無色透明性は全芳香族と比べて格段に優れている。
【0005】
ところが、このような構造を有するポリイミドは、通常、溶剤に不溶であるため、一般的なフィルム成型方法である溶液キャスト法を用いることができない。そのため、ポリイミドフィルムを得る場合には、通常、酸無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミド酸含有溶液を、支持体上に塗布し、溶剤を除去すること等で、ポリアミド酸のフィルムを得る。さらに、このポリアミド酸のフィルムを加熱処理、もしくは化学的処理を行うことによりポリイミドフィルムを得ている。
【0006】
例えば特許文献5では、ポリアミド酸をガラス基板に塗布し、70℃で1時間乾燥してポリイミド前駆体膜を形成した後、350℃で1時間、熱的にイミド化を行うことにより15μm厚のポリイミド膜を得ている。しかしながら、特許文献5に記載の方法で得られるフィルムはカールがおきやすい。また、ガラス基板とポリイミドフィルムとが剥離困難なことから、ロールtoロールでのポリイミドフィルムの作製が困難であり、生産性に問題があった。
【0007】
そこで、支持体上にポリアミド酸を塗布してポリアミド酸含有フィルムとし、このポリアミド酸含有フィルムを支持体から剥がした後に、200℃以上で加熱しイミド化するポリイミドフィルムの製造方法が開示されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−169304号公報
【特許文献2】特開2008−81718号公報
【特許文献3】特開2007−231224号公報
【特許文献4】特開平9−176315号公報
【特許文献5】特許第3972600号
【特許文献6】特開2009−275090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献6の方法では、カールのないポリイミドフィルムが得られるものの、得られるポリイミドフィルムに外観不良(発泡等)が生じやすい。また強度低下、イミド化反応に伴う白化、線膨張係数の増大といった問題も生じやすい。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、外観不良(発泡等)や強度低下、さらにイミド化反応に伴う白化等を生じさせることなく、ポリイミドフィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述したように、ポリイミドフィルムのカールの抑制のためには、ポリアミド酸含有フィルムを支持体から剥離した状態で、ポリアミド酸のイミド化を行うことが、重要である。本発明者らは、このポリアミド酸のイミド化に際し、ポリアミド酸含有フィルムを低温から昇温することによって、得られるポリイミドフィルムに外観不良や白化が生じることがないことを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明は、以下のポリイミドフィルムの製造方法に関する。
[1]a)下記一般式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(B−1)〜(B−3)で表されるジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むジアミンとを溶剤中で反応させてなる、ポリアミド酸を含むポリアミド酸含有溶液を、支持体上に塗布する工程と、b)前記ポリアミド酸含有溶液の塗膜からなるポリアミド酸含有フィルムがタックフリーとなるまで、前記ポリアミド酸含有溶液中の溶剤を150℃以下の温度で乾燥する工程と、c)前記ポリアミド酸含有フィルムを支持体から剥離する工程と、d)前記ポリアミド酸含有フィルムを固定し、150℃以下から昇温しながら前記ポリアミド酸含有フィルムの加熱を行い、前記ポリアミド酸をイミド化してポリイミドフィルムを得る工程とを有する、ポリイミドフィルムの製造方法。
【化1】

(一般式(A)中、Rは炭素数4〜27の4価の基を示し、かつ
脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基を示すか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基を示すか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示す。)
【化2】

【化3】

【化4】

【0013】
[2]前記工程d)の後に、さらにe)200℃以上で前記ポリイミドフィルムを加熱する工程、を含む[1]に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
[3]前記工程e)と同時、または工程e)終了後に、f)200℃以上で加熱しながら前記ポリイミドフィルムの周囲を固定し、前記ポリイミドフィルムを0%〜300%延伸する工程、を含む[2]に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
[4]前記工程d)が、150℃以下から200℃以上まで、昇温しながら前記ポリアミド酸含有フィルムを加熱する工程である、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
[5]前記工程d)の、150℃〜200℃の温度領域における平均昇温速度が0.25〜50℃/分である、[4]に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0014】
[6]前記工程b)が、ポリアミド酸含有フィルムに残存する溶剤濃度を、1〜50重量%とする工程である[1]〜[5]のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【0015】
[7]前記ポリアミド酸含有溶液が、下記一般式(C)で表される繰り返し構造単位で構成されるポリアミド酸ブロックと、下記一般式(D)で表される繰り返し構造単位で構成されるポリイミドブロックとを含むブロックポリアミド酸イミドを含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【化5】

(一般式(C)及び(D)中、R及びR”はそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基を示し、かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基を示すか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基を示すか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示す。一般式(D)において、R’は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4−シクロヘキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
【0016】
[8]前記ポリアミド酸が下記一般式(E)で表される繰り返し単位を有し、一般式(E)における1,4-ビスメチレンシクロヘキサン骨格(X)は、式(X1)で表されるトランス体と、式(X2)で表されるシス体とからなり、前記トランス体とシス体の含有比(トランス体+シス体=100%)は、60%≦トランス体≦100%,0%≦シス体≦40%である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【化6】

【化7】

(一般式(E)中、Rは炭素数4〜27の4価の基を示し、かつ
脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基を示すか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基を示すか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法によれば、ポリアミド酸含有フィルムを剥離した状態で、イミド化を行うことから、得られるポリイミドフィルムがカールしないものとできる。また、イミド化を低い温度から昇温することによって、白化や発泡がなく、外観性が良好であり、かつ線膨張係数も低いポリイミドフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、a)特定の構造を有するテトラカルボン酸二無水物と、特定の構造を有するジアミンを含むジアミンとを、溶剤中で反応させてなるポリアミド酸を含むポリアミド酸含有溶液を、支持体上に塗布する工程と、b)前記ポリアミド酸含有溶液の塗膜からなるポリアミド酸含有フィルムがタックフリーとなるまで、前記ポリアミド酸含有溶液中の溶剤を150℃以下の温度で乾燥する工程と、c)前記ポリアミド酸含有フィルムを支持体から剥離する工程と、d)前記ポリアミド酸含有フィルムを固定し、150℃以下から昇温しながら前記ポリアミド酸含有フィルムの加熱を行い、前記ポリアミド酸をイミド化してポリイミドフィルムを得る工程とを有する。
【0019】
上述したように、ポリアミド酸のイミド化を行う際、急激に高温に加熱した場合には、溶剤の急激な揮発等によって、表面の平滑性が低くなり、外観不良が生じやすい。一方、本発明では、ポリアミド酸のイミド化を行う工程d)において、150℃以下から昇温して、ポリアミド酸のイミド化を行う。したがって、溶剤を緩やかに揮発させることができ、得られるポリイミドの表面の平滑性を優れるものとできる。
【0020】
またポリアミド酸フィルムの温度を急激に高温に加熱してイミド化を行う場合、線膨張係数の増大が生じやすい。線膨張係数は、ポリイミドの配向度に依存し、配向度が高いほど線膨張係数が低くなる。本発明では、150℃以下からから昇温してポリアミド酸のイミド化を行うため、ポリイミドの配向度を高いものとでき、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が低くなる。
【0021】
また上述したように、ポリアミド酸のイミド化を行う際、急激に高温に加熱した場合には、イミド化に伴う白化が生じやすい。イミド化に伴う白化は、ポリイミドの結晶化が主原因であり、イミド化反応の際に、フィルム中に生成水が多量に存在すると、ポリイミドの結晶化が生じやすいと推察される。本発明では、150℃以下から昇温してポリアミド酸のイミド化を行うため、イミド化反応中の、フィルム内に存在する生成水の量を少なく維持でき、ポリイミドの結晶が生じ難く、得られるポリイミドフィルムに白化が生じ難い。
【0022】
(1)工程a)
工程a)では、特定の構造を有するテトラカルボン酸二無水物と、特定の構造を有するジアミンを含むジアミンとを、溶剤中で反応させてなるポリアミド酸(以下、「特定のポリアミド酸」ともいう)を含むポリアミド酸含有溶液を、支持体上に塗布する。本発明において、ポリアミド酸とは、ポリアミド酸ユニットの一部がイミド閉環されたポリアミド酸イミドであってもよい。
【0023】
(テトラカルボン酸二無水物)
特定のポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸二無水物は、下記一般式(A)で表される。
【化8】

一般式(A)中、Rは、炭素数4〜27である4価の有機基であり、脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基でありうる。あるいは置換基Rは、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基でありうる。
【0024】
一般式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。
【0025】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4'-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,3-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(2,3-ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシベンゾイル)ベンゼン二無水物、4,4'-イソフタロイルジフタリックアンハイドライドジアゾジフェニルメタン-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物、ジアゾジフェニルメタン-2,2',3,3'-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-チオキサントンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラキノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-キサントンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
【0026】
脂環族テトラカルボン酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5-トリカルボン酸-6-酢酸二無水物、1-メチル-3-エチルシクロヘキサ-1-エン-3-(1,2),5,6-テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ-1,4,5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-テトラリン-1,2-ジカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
【0027】
テトラカルボン酸二無水物がベンゼン環などの芳香環を含む場合には、芳香環上の水素原子の一部もしくは全ては、フルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、およびトリフルオロメトキシ基などから選ばれる基で置換されていてもよい。また、テトラカルボン酸二無水物がベンゼン環などの芳香環を含む場合には、目的に応じて、エチニル基、ベンゾシクロブテン-4'-イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、ニトリロ基、及びイソプロペニル基などから選ばれる架橋点となる基を有していてもよい。テトラカルボン酸二無水物には、好ましくは成形加工性を損なわない範囲内で、ビニレン基、ビニリデン基、およびエチニリデン基などの架橋点となる基を、主鎖骨格中に組み込まれていてもよい。
【0028】
なお、テトラカルボン酸二無水物の一部は、ヘキサカルボン酸三無水物類、オクタカルボン酸四無水物類であってもよい。ポリアミドまたはポリイミドに分岐を導入するためである。
【0029】
これらテトラカルボン酸二無水物は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
さらに一般式(A)における置換基Rは、例えば下記式(R1)〜(R4)で表されうる。
【化9】

〔−Y−は、単結合,−CO−,−O−,−SO−,−S−,−CH−,−C(CH−,−CF−,−C(CF−,−O−Ph−O−,−O−Ph−C(CH−Ph−O−を示す〕
【0031】
置換基Rの構造を、得ようとするポリイミドフィルムの特性に応じて、決定することができる。置換基Rを適切に選択すれば、成形後のポリイミドフィルムの立体安定性が高まりうる効果に加えて、熱線膨張係数、寸法安定性、機械的強度、柔軟性や接着性などのフィルム特性を任意に制御されうる。
【0032】
このように、ポリイミドフィルムの用途に応じて、置換基Rを選択することが好ましい。また、置換基Rは1種単独であってもよく、2種以上の組合せであってもよい。例えば、2種以上のRが、ポリアミド酸にランダムに配列されていてもよい。
【0033】
(ジアミン)
特定のポリアミド酸を構成するジアミンは、下記一般式(B−1)〜(B−3)で表されるジアミンを少なくとも一種含む。ジアミンには、下記(B−1)〜(B−3)で表されるジアミンが2種以上含まれていてもよく、また(B−1)〜(B−3)で表されるジアミン以外のジアミン(B−4)が含まれていてもよい。
【化10】

【化11】

【化12】

【0034】
一般式(B−1)で表されるシクロヘキサジアミンにおけるシクロヘキサン骨格は、以下の2種類の幾何異性体(シス体/トランス体)をとりうる。トランス体は、下記一般式(B−11)示され、シス体は下記一般式(B−12)で表される。
【化13】

【0035】
一般式(B−1)におけるシクロヘキサン骨格のシス/トランス比は、50/50〜0/100であることが好ましく、30/70〜0/100であることがより好ましい。トランス体の割合が高くなると、一般的にポリアミド酸の分子量が増大しやすいため、自己支持性のある膜の形成が容易になり、工程c)において、ポリアミド酸からなる膜を剥離しやすくなる。
【0036】
ポリアミド酸に含まれるシクロヘキサン由来のユニットのシス/トランス比は、核磁気共鳴分光法によって測定されうる。
【0037】
また、一般式(B−2)で表されるノルボルナンジアミンのアミノメチル基の位置は特に制限はない。例えば、一般式(B−2)で表されるノルボルナンジアミンとして、アミノメチル基の位置が異なる構造異性体、あるいはS体、R体を含む光学異性体等を含んでもよい。これらはどのような割合で含まれてもよい。
【0038】
一般式(B−3)で表される1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンにおける下記一般式(X)で表される1,4-ビスメチレンシクロヘキサン骨格は、2種類の幾何異性体(シス体/トランス体)をとりうる。トランス体は、下記一般式(X1)で示され、シス体は下記一般式(X2)で表される。
【化14】

【0039】
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニットのシス/トランス比は、40/60〜0/100であることが好ましく、20/80〜0/100であることがより好ましい。一般式(B−3)で表されるジアミンを構成成分として含む特定ポリアミド酸から得られるポリイミドのガラス転移温度は、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニットのシス/トランス比によって制御されうる。つまり、トランス体(X1)の割合の向上にしたがって、得られるポリイミドのガラス転移温度が高まり、つまり耐熱性が高まる。
【0040】
ポリアミド酸に含まれる1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のユニットのシス/トランス比は、核磁気共鳴分光法によって測定されうる。
【0041】
前記シス/トランス比は、ポリアミド酸の原料モノマーである1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンにおける、シス/トランス比によって調整されうる。つまり、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンは、その幾何異性を保ったまま、酸二無水物と反応してポリアミド酸を与える。
【0042】
ジアミンには、上述の一般式(B−1)〜(B−3)で表されるジアミン以外のジアミンが含まれていてもよい。他のジアミンは、下記の一般式(B−4)で表される。
【化15】

【0043】
一般式(B−4)において、R’は、炭素数4〜51の2価の基であり;かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4−シクロヘキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である。
【0044】
上記一般式(B−4)で表されるジアミンの例には、ベンゼン環を有するジアミン、芳香族置換基を有するジアミン、スピロビインダン環を有するジアミン、シロキサンジアミン類、エチレングリコールジアミン類、アルキレンジアミン類、脂環族ジアミン類等が含まれる。
【0045】
ベンゼン環を有するジアミンの例には、
<1>p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミンなどのベンゼン環を1つ有するジアミン;
<2>3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、3,4'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタンなどのベンゼン環を2つ有するジアミン;
<3>1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジンなどのベンゼン環を3つ有するジアミン;
<4>4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン環を4つ有するジアミン;
<5>1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼンなどのベンゼン環を5つ有するジアミン;
<6>4,4'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4'-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホンなどのベンゼン環を6つ有するジアミンが含まれる。
【0046】
芳香族置換基を有するジアミンの例には、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン等が含まれる。
【0047】
スピロビインダン環を有するジアミンの例には、6,6'-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビインダン、6,6'-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビインダン等が含まれる。
【0048】
シロキサンジアミン類の例には、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン等が含まれる。
【0049】
エチレングリコールジアミン類の例には、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス(2-アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(3-アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2-ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,2-ビス[2-(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2-ビス[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル等が含まれる。
【0050】
アルキレンジアミンの例には、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン等が含まれる。
【0051】
脂環族ジアミン類の例には、シクロブタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ジ(アミノメチル)シクロヘキサン〔1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを除くビス(アミノメチル)シクロヘキサン〕、ジアミノビシクロヘプタン、ジアミノメチルビシクロヘプタン(ノルボルナンジアミンなどのノルボルナンジアミン類を含む)、ジアミノオキシビシクロヘプタン、ジアミノメチルオキシビシクロヘプタン(オキサノルボルナンジアミンを含む)、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデカン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロへキシル)メタン〔またはメチレンビス(シクロヘキシルアミン)〕、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデン等が含まれる。
【0052】
(好ましいポリアミド酸)
ポリアミド酸含有溶液に含まれるポリアミド酸としては、特に一般式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物と一般式(B−1)で表されるジアミンとのポリアミド酸ブロック(下記一般式(C)で表される)と、一般式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物と一般式(B−4)で表されるジアミンとのポリイミド酸ブロック(下記一般式(D)で表される)とが、結合したブロックポリアミド酸イミドが好ましい。
【化16】

一般式(C)及び(D)中、R及びR”はそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり、かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基を示すか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基を示すか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示す。具体的には、上述の一般式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物におけるRと同様である。
【0053】
また、一般式(D)において、R’は、炭素数4〜51の2価の基であり、かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4−シクロヘキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である。具体的には、上記一般式(B−4)で表されるジアミンのR’と同様である。
【0054】
本発明においては、特に、一般式(D)におけるR’がノルボルナン類であることが好ましい。すなわち、R’が上述の一般式(B−2)で表されるジアミンを含むポリイミドであることが好ましい。
【0055】
式(C)と式(D)におけるmとnは、各ブロックにおける繰返し構造単位の繰返し数を示す。mの平均値とnの平均値はそれぞれ独立して、2〜1000であることが好ましく、5〜500であることがさらに好ましい。
【0056】
mとnの比率は、mの平均値:nの平均値=9:1〜1:9であることが好ましく、mの平均値:nの平均値=8:2〜2:8であることがより好ましい。式(C)で表される繰返し構造単位の繰返し数mの割合が一定以上であると、ブロックポリイミドの熱膨張係数が小さくなる。また、繰返し数mの割合が一定以上であると、ブロックポリイミドの可視光透過率も高まる。一方、シクロヘキサンジアミンは一般的に高価であるため、式(C)で表される繰返し構造単位の繰返し数mの割合を小さくすると、低コスト化が図られる。
【0057】
ブロックポリイミドに含まれる、式(C)で表される繰返し構造単位の総数と、式(D)で表される繰返し構造単位の総数との比も、(C):(D)=9:1〜1:9であることが好ましく、(C):(D)=8:2〜2:8であることがより好ましい。
【0058】
また、ブロックポリアミド酸イミドに含まれる、一般式(C)で表される全てのブロックにおいて、式(C)で表される繰返し構造単位の繰返し数が、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。このように、ブロックポリイミドに含まれる式(C)で表されるブロックの全てが、一定数以上の繰返し構造単位を含むことで、そのブロック由来の特性が得られやすくなる。
【0059】
各ブロックにおける繰返し構造単位の繰返し数は、例えば以下の方法で測定することができる。すなわち、下記一般式(C’)で表されるオリゴマーと標識付封止剤とを反応させて、第1の標識付オリゴマーを得る。同様に、下記一般式(D’)で表されるオリゴマーと標識付封止剤とを反応させて第2の標識付オリゴマーを得る。そして、それぞれのオリゴマーの標識付きの末端基数を、H-NMR測定法などにより定量することによって、各ブロックにおける繰返し構造単位の繰返し数を求めることもできる。
【0060】
【化17】

【0061】
【化18】

一般式(C’)及び(D’)におけるR、R’、R”、m、nは、上述した一般式(C)及び(D)と同様である。
【0062】
また、本発明の工程a)で用いるポリアミド酸含有溶液は、式(B−3)で表されるジアミンを用いたポリアミド酸の繰り返し単位を含むポリアミド酸を含むことも好ましい。すなわち、下記一般式(E)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸を含有するポリアミド酸含有溶液とすることも好ましい。
【化19】

一般式(E)中、Rは炭素数4〜27の4価の基を示し、かつ
脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基を示すか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基を示すか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示す。具体的には、上記一般式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物におけるRと同様である。
【0063】
式(B−3)で表されるジアミンを用いたポリアミド酸の繰り返し単位を含むポリアミド酸のジアミンユニットには、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン以外のジアミン由来のユニットが含まれていてもよい。例えば、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンと、他のジアミンとが、ポリアミド酸にランダムに配列されていてもよい。ただし、ポリアミド酸の全ジアミンユニットのうちの10〜100モル%は、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン由来のジアミンユニットであることが好ましい。
【0064】
(ポリアミド酸含有溶液)
ポリアミド酸含有溶液中のポリアミド酸の濃度は、1〜50重量%とすることが好ましく、より好ましくは5〜40重量%である。ポリアミド酸、もしくはポリアミド酸イミドの濃度が上限値を超えると粘度が高くなり、支持体への塗布が困難となる恐れがある。一方、下限値未満であると、ポリアミド酸含有溶液の粘度が低く、ポリアミド酸含有溶液の塗布後の膜厚を均一にすることが困難となる恐れがある。
【0065】
また、N-メチル-2-ピロリドンを溶媒としたときの、本発明のポリアミド酸含有溶液(濃度0.5g/dl)の35℃での対数粘度は、0.1〜3.0dl/gであることが好ましい。ポリアミド酸含有溶液の塗布が容易になるからである。
【0066】
溶剤としては、上述のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤または水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。
【0067】
非プロトン性極性溶剤の例には、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等;エーテル系化合物である、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが含まれる。
【0068】
水溶性アルコール系溶剤の例には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ジアセトンアルコールなどが含まれる。
【0069】
これらの溶剤を単独、もしくは2種以上を混合して用いることができる。なかでも、溶剤の好ましい例には、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンもしくはこれらの組み合わせが含まれる。
【0070】
ポリアミド酸含有溶液は、上述のテトラカルボン酸二無水物と、上述のジアミンとを、溶剤中で反応させて得られる。溶剤中のジアミンのモル数をX、テトラカルボン酸二無水物のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9〜1.1とすることが好ましく、0.95〜1.05とすることがより好ましく、0.97〜1.03とすることがさらに好ましく、0.99〜1.01とすることが特に好ましい。このような範囲とすることにより得られるポリアミド酸の分子量(重合度)を適度に調整することができる。
【0071】
重合反応の手順に特に制限はない。例えばまず、撹拌機及び窒素導入管を備えた容器を用意する。窒素置換した容器内に後述の溶媒を投入し、得られるポリアミド酸の固形分濃度が50重量%以下となるようにジアミンを加えて、温度調整して攪拌及び溶解させる。この溶液に、ジアミン化合物に対して、モル比率が1となるようにテトラカルボン酸二無水物を加え、温度を調整して1〜50時間程度攪拌することにより、ポリアミド酸を含有するポリアミド酸含有溶液を得ることができる。
【0072】
ポリアミド酸としてブロックポリアミド酸イミドを用いる場合には、例えば、アミン末端のポリアミド酸溶液に、酸無水物末端のポリイミド溶液を加えて、攪拌することによりポリアミド酸イミドを生成させればよい。ポリアミド酸のジアミンユニットとして、シクロヘキサン含有ジアミン(ジアミン(B−1)または(B−3))を含むことが好ましく;ポリイミドのジアミンユニットとして、シクロヘキサン含有ジアミン以外のジアミン(ジアミン(B−2)または(B−4))を含むことが好ましい。ジアミンユニットとして、シクロヘキサン含有ジアミン(ジアミン(B−1)または(B−3))を含むポリイミドは、溶媒に溶解しにくいことがあるからである。ポリアミド酸は、前述の通り製造すればよい。
【0073】
(ポリアミド酸含有溶液の塗布)
工程a)では、上述のようにして得られるポリアミド酸含有液を、支持材上に塗布する。ポリアミド酸の塗布手段は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
【0074】
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。本発明においては、工程b)によりポリアミド酸含有フィルムをタックフリーとなるまで乾燥することから、ポリアミド酸含有フィルムと支持体との積層体をロールに巻き取ることが可能である。
【0075】
ポリアミド酸含有液を塗布する支持材は、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板、ポリイミドやポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルム、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持材の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
【0076】
(2)工程b)
工程b)では、前記ポリアミド酸含有液の塗膜からなるポリアミド酸含有フィルムがタックフリーとなるまで、150℃以下の温度、好ましくは30〜120℃で前記塗布膜中の溶剤を乾燥する。工程b)における溶剤の乾燥温度を150℃以下とすることにより、ポリアミド酸をイミド化させることがない。
【0077】
溶剤の乾燥は、得られるポリアミド酸含有フィルムがタックフリーとなるまで、具体的には、ポリアミド酸含有フィルム中の溶剤濃度が1〜50重量%、より好ましくは10〜35重量%となるまで、溶剤の乾燥を行うことが好ましい。フィルム中に残存する溶剤量の測定は、熱分解ガスクロマトグラフィー等により行い得る。
【0078】
溶剤の乾燥時、温度は一定としてもよく、また温度を数段階に分けて変化させてもよい。さらに一定の昇温速度で温度を変化させながら行ってもよい。
なお、ポリアミド酸含有フィルムの乾燥時間は、ポリアミド酸フィルムの膜厚や、溶剤の種類、乾燥温度等に応じて適宜決定されるが、通常1分〜60分、好ましくは2分〜30分とすることが好ましい。上限値を超える場合には、ポリイミドフィルムの作製効率の面から好ましくない。一方、下限値を下回る場合には、急激な溶剤の乾燥によって、得られるポリイミド酸フィルムの外観性等に影響を与えるおそれがある。
【0079】
溶剤の乾燥方法は、上記温度で溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、印刷機に併設される乾燥炉等を用いることが可能である。なお、支持体としてロールに巻き取り可能なシートを用いた場合等には、工程b)において、支持体と、乾燥されたポリアミド酸フィルムとの積層体を、ロールに巻き取る作業を行ってもよい。
【0080】
(3)工程c)
工程c)では、前記ポリアミド酸含有フィルムを支持体から剥離する。本発明では、ポリアミド酸含有フィルム中に溶剤が残存している状態で支持体を剥離することから、この剥離を容易に行うことができる。また、工程c)により、ポリアミド酸含有フィルムを支持体から剥離した状態でイミド化を行うことから、ポリアミド酸フィルムの両面から同時にポリイミド化を行うことができ、イミド化をムラなく行うことが可能となる。したがって、得られるポリイミドフィルムがカールすること等を防止できる。
【0081】
工程c)における剥離はポリアミド酸含有フィルムの形状に合わせて、任意の方法で行うことができる。例えばポリアミド酸含有フィルムがロール状に巻き取られている場合には、ポリアミド酸含有フィルムの一端を把持し、ポリアミド酸フィルムを巻きだしながら、支持体からポリアミド酸含有フィルムを剥離すること等が可能である。
【0082】
(4)工程d)
工程d)では、前記ポリアミド酸含有フィルムを固定し、150℃以下から昇温させながら前記ポリアミド酸含有フィルムの加熱を行い、前記ポリアミド酸をイミド化し、ポリイミドフィルムを得る。
【0083】
ポリアミド酸含有フィルムの固定方法は、ポリアミド酸含有フィルムの形状等に応じ、適宜選択される。ポリアミド酸含有フィルムを固定することにより、得られるポリイミドフィルムの均一性や平坦性を保つことが可能となる。
例えば枚葉型のポリアミド酸含有フィルムの場合には、金型等にクリップ、ピン、テープ等を用いて周囲を固定し得る。また長尺のポリアミド酸含有フィルムの場合には、一方の端部をテンタークリップ等により把持すること等により固定し得る。
【0084】
工程d)では、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は200℃以上とすることが好ましい。また昇温終了温度は300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。このような範囲に昇温することにより、作業効率が良好となり、ポリアミド酸のイミド化が可能となる。
【0085】
工程d)における昇温速度は、ポリイミドフィルムの製造効率の観点から、0.25℃/分以上とすることが好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分、さらに好ましくは30℃/分である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良(発泡等)や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光学特性(透過率、反射率、ヘイズ)の制御が出来る点から好ましい。
【0086】
昇温は、連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、連続的とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化のコントロールの面から好ましい。また、上述の全温度範囲において、昇温速度を一定としてもよく、また途中で変化させてもよい。
【0087】
特に、150〜200℃の範囲においては、平均昇温速度を0.25℃/分以上、50℃/分以下とすることが好ましく、より好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下とする。上記温度範囲において、昇温速度を一定とすることが好ましいが、平均速度が上記範囲内にある限り、2段階以上に変えてもよい。2段階以上に変える場合には、各昇温速度を0.25℃/分以上、50℃/分以下とすることが好ましいが、昇温速度の平均値が前記範囲である限り、一時的にこの範囲外としてもよい。
【0088】
また、上記昇温速度は、得られるポリイミドフィルムの膜厚によって適宜選択することが好ましく、ポリイミドフィルムの膜厚が厚い場合には、昇温速度を遅くすることが好ましい。本発明では、得られるポリイミドフィルムの膜厚の上限を500μm以下、好ましくは200μm以下とすることが好ましい。得られるポリイミドフィルムの膜厚が500μmを超えると、上記昇温速度でポリイミドフィルムを乾燥させることが困難となる場合がある。
【0089】
工程d)では、ポリアミド酸含有フィルム中のポリアミド酸のイミド化率を30%以上とすることが好ましく、50%以上とすることがより好ましい。イミド化率を30%以上とすることにより、工程d)後に、高い温度で一定時間加熱を行い、イミド化を行った場合であっても、フィルムの外観不良(発泡)や白化が生じることがないものとでき、線膨張係数の増大等も生じないものとできる。なお、工程d)において、イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させてもよい。イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行い得る。
【0090】
工程d)において、ポリアミド酸含有フィルムを昇温しながら加熱する方法としては、ポリアミド酸含有フィルムが枚葉である場合には、ポリアミド酸含有フィルムをオーブン内に静置し、オーブン内温度を昇温していく方法とし得る。この場合、昇温速度の調整は、オーブンの設定によって行うことが可能である。
【0091】
また、例えばポリアミド酸含有フィルムが長尺である場合には、テンター等のフィルム搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通過させる方法とし得る。この際、加熱炉は、ポリアミド酸含有フィルムの走行方向に沿って、加熱温度が異なるものとする。この場合、昇温速度の調整は、ポリアミド酸含有フィルムの搬送速度等により調整可能である。
【0092】
また昇温加熱時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。空気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
【0093】
なお、工程d)において、上記加熱と同時に延伸を行ってもよい。延伸倍率は−10%〜200%とすることが好ましく、−5%〜100%がより好ましい。
延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。
【0094】
(5)工程e)
上述の工程d)で得られたポリイミドフィルムを、必要に応じて200℃以上で加熱する工程を行ってもよい。本工程によりポリイミドフィルムを加熱することにより、さらにポリアミド酸のイミド化を進行させることができる。本工程における加熱温度は、より好ましくは200℃〜300℃である。このような範囲で加熱を行うことにより、ポリアミド酸を効率よくイミド化可能である。なお、本工程における加熱は、通常一定温度で行う。
【0095】
本工程では、ポリアミド酸のイミド化率を90%以上とすることが好ましく、より好ましくは100%まで反応を進行させる。
【0096】
なお、工程e)は、工程d)と連続して行ってもよく、また工程d)終了後、時間をおいてから行ってもよいが、工程d)と連続して行うことが、ポリイミドフィルムの製造効率等の面から好ましい。
【0097】
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムの厚みに特に制限はないが、0.1μm以下のポリイミドフィルムは、本発明の製造方法により製造が困難となる場合がある。
【0098】
(6)工程f)
また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、上記工程e)と同時、もしくは工程e)終了後、前記ポリイミドフィルムを固定し、200℃以上に加熱しながら、0%〜300%延伸する工程を行ってもよいが、工程e)と同時に行うことが製造効率の点から好ましい。加熱温度としては、工程e)における温度と同様とできる。
【0099】
工程f)によるポリイミドフィルムの延伸倍率は、好ましくは0〜200%であり、さらに好ましくは0〜100%である。上記範囲延伸を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数をより低いものとできる。
【0100】
延伸時におけるポリイミドフィルムの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリイミドフィルムは、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施形態の変更が可能である。
【0102】
実施例および比較例で得られたサンプルの各種試験の試験方法を以下に示す。
【0103】
1)ポリアミド酸の固有対数粘度(η)
固形分濃度が0.5dL/gとなるように、サンプルをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の希釈溶剤に溶解して、ポリアミド酸含有溶液を作製し、ウベローデ粘度計を用いて35℃で測定を行った。
【0104】
2)フィルム中に残存する溶剤量
熱分解ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−8A)を用いて測定した。
【0105】
3)ガラス転移温度(Tg)および線膨張係数(CTE)
島津製作所製TMA−50型を用い、窒素気流下、昇温速度10℃/分、単位断面積当たりの荷重14g/mmで測定した。線膨張係数は100〜200℃の範囲で測定した。
【0106】
4)全光線透過率およびヘイズ
日本電色工業製NDH2000を用いて測定した。測定の際、C光源を用いた。
【0107】
5)反射率
日立ハイテクノロジーズ社製U−3010型分光光度計を用いて、ポリイミドフィルムの300〜800nmの波長毎の反射率を測定し、波長550nmの光に対する反射率を「反射率」とした。
【0108】
6)透明性(b*)
ミノルタ社製の色彩式差計CR−300を用いて測定した。
7)引張強度、引張弾性率および伸び
ダンベル型打ち抜き試験片を作製し、引張試験機(島津製作所製、EZ−S)にて、標線幅5mm、引張速度30mm/分の条件で測定を行った。5回の測定より得られた応力―歪曲線の、最大応力を「引張強度(単位MPa)」、破断に至るまでの応力の面積(積分値)の平均を「引張弾性率(単位GPa)」、またその時点の歪みを「伸び(単位%)」とした。
【0109】
8)フィルム外観(平滑性)および形状
得られたフィルムを目視で観察し、ゆず肌や発泡などにより平滑性が損なわれていないかどうかを確認した。また、曲がっている(カールしている)かどうか確認した。
【0110】
ポリアミド酸またはブロックポリアミド酸イミドの合成原料としたジアミンとテトラカルボン酸二無水物を示す。
【0111】
化合物1:1,4-シクロヘキサンジアミン(CHDA)(トランス比99%)
【化20】

化合物2:ノルボルナンジアミン(NBDA)
【化21】

化合物3:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)
【化22】

化合物4:1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4BAC)
【化23】

【0112】
(実施例1)
工程a)
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、1,4-ジアミノシクロヘキサン(CHDA)16.0g(0.140モル)と、有機溶媒のN-メチルピロリドン(NMP)168gとを加え攪拌した。透明溶液としたところへ、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)37.1g(0.126モル)を粉状のまま装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴した。BPDA装入後しばらくして塩が析出し、不均一系のまま粘度が増大した。オイルバスを外してから、更に18時間室温で攪拌し、末端にCHDA由来のアミノ基を有するポリアミド酸オリゴマーを含む溶液(ポリイミド前駆体ポリマーワニス)を得た。
【0113】
上記とは異なる、温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、ノルボルナンジアミン(NBDA)12.3g(0.0800モル)と、N-メチルピロリドン(NMP)125gとを加えて攪拌した。透明溶液としたところへ、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)29.4g(0.100モル)を粉状のまま装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴した。BPDA装入後、一時的に塩が析出したが、すぐに粘度増大を伴いながら再溶解し均一透明溶液となることを確認した。
【0114】
該セパラブルフラスコに冷却管とディーンスターク型濃縮器を取付けて、キシレン80.0gを反応溶液に追加して、脱水熱イミド化反応を180℃で4時間攪拌しながら行った。キシレン留去後、末端にBPDA由来の酸無水物構造を有するポリイミドオリゴマー溶液(ポリイミドオリゴマーワニス)を得た。
【0115】
上記で得られた末端にCHDA由来のアミノ基を有するポリアミド酸オリゴマー溶液(ポリアミド酸オリゴマーワニス)と、末端にBPDA由来の酸無水物構造を有するポリイミドオリゴマー溶液(ポリイミドオリゴマーワニス)とを混合した。これらを攪拌後、脱泡して、ブロックポリアミド酸イミドワニスを得た。得られたブロックポリアミド酸イミドワニスの固有対数粘度は、0.74dL/g(35℃、0.5g/dL)であった。また、得られたブロックポリアミド酸イミドは、ポリアミド酸オリゴマーと、ポリイミドオリゴマーとがそれぞれランダム化されることなく、ポリマー化したものであり、ポリアミド酸ブロックの数:ポリイミドブロックの数は、ほぼ2:1であった。ブロックポリアミド酸イミドワニスを、ガラス基板に固定した宇部興産製のUPILEXフィルム(75S)上に、スロットダイを搭載した枚葉型コーティング装置を用いて塗工した。
【0116】
工程b)及びc)
支持体であるUPILEXフィルムに塗工したポリアミド酸イミドワニス膜を、オーブンに移して、窒素気流中、30分かけて、30℃から120℃まで昇温し、タックフリーとした。これにより、ポリアミド酸含有フィルムとUPILEXフィルムの積層体を得た。ポリアミド酸含有フィルムをUPILEXフィルムより剥離した。
【0117】
工程d)及びe)
剥離したポリアミド酸含有フィルムをステンレス製の金属枠にカプトンテープを用いて、全周固定した。これをオーブンに移して、窒素気流中、2時間かけて30℃〜270℃まで昇温した。続いて270℃で更に1時間保持して自己支持性を有する膜厚30μmの無色透明のポリイミドフィルムを得た。
【0118】
得られたポリイミドフィルムは、平滑であり、カールは無かった。得られたポリイミドフィルムに残存する溶剤量(Nメチル−2−ピロリドン)は0.2重量%、ガラス転移温度(Tg)は280℃、100〜200℃の線膨張係数は17ppm/Kであった。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0119】
(実施例2)
工程a)
実施例1と同様にして得られたブロックポリアミド酸イミドワニスを、東洋紡績製のPETフィルム(TN−100)上に、スロットダイを搭載したロールtoロールのコーティング装置を用いて塗工した。
【0120】
工程b)及びc)
PETフィルム上に塗工したポリアミド酸塗工膜を前述のコーティング装置に付属された乾燥炉内(空気換気)で、10分かけて、60℃〜120℃まで昇温し、タックフリーとした。それにより、ポリアミド酸含有フィルムとPETフィルムとの積層体のロールフィルムを得た。ポリアミド酸含有フィルム及びPETフィルムのロール状の積層体を巻き出しながら、ポリアミド酸含有フィルムをPETフィルムより剥離した。
【0121】
工程d)
剥離したポリアミド酸含有フィルムの端部をクリップテンターで保持しながら乾燥炉に搬送し、窒素気流中、30分かけて120℃〜270℃まで昇温した。乾燥炉を出たところでポリイミドフィルムを保持していたクリップテンターを外し、巻取装置を用いてロール状のポリイミドフィルムを得た。
【0122】
得られたポリイミドフィルムは、自己支持性を有し、膜厚30μmの無色透明であった。また得られたポリイミドフィルムは、平滑であり、カールは無かった。得られたポリイミドフィルムに残存する溶剤量(Nメチル−2−ピロリドン)は0.3重量%、ガラス転移温度(Tg)は280℃、100〜200℃の線膨張係数は22ppm/Kであった。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0123】
(比較例1)
実施例1と同様にして得られたブロックポリアミド酸イミドワニスをガラス基板上に、スロットダイを搭載した枚葉型コーティング装置を用いて塗工した。
【0124】
支持体に塗工したポリアミド酸イミドワニス膜をオーブンに移して、窒素気流中、2時間かけて30℃から270℃まで昇温し、続いて更に270℃で1時間保持して乾燥、イミド化しポリイミドフィルムを得た。ガラス基板上で作製したポリイミドフィルムを水中に浸漬させて、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離した。付着した水分を乾燥させて、自己支持性を有する膜厚30μmの無色透明のポリイミドフィルムを得た。
【0125】
得られたポリイミドフィルムは、平滑であったが、カールが生じた。得られたポリイミドフィルムに残存する溶剤量(Nメチル−2−ピロリドン)は0.3重量%、ガラス転移温度(Tg)は280℃、100〜200℃の線膨張係数は17ppm/Kであった。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0126】
(比較例2)
実施例1と同様にして得られたブロックポリアミド酸イミドワニスをガラス基板上に、スロットダイを搭載した枚葉型コーティング装置を用いて塗工した。
【0127】
支持体に塗工したポリアミド酸イミドワニス膜をオーブンに移して、窒素気流中、48分かけて30℃から270℃まで昇温し、続いて更に270℃で1時間保持して乾燥、イミド化しポリイミドフィルムを得た。ガラス基板上に作製したポリイミドフィルムを水中に浸漬させて、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離し、付着した水分を乾燥させて、自己支持性を有する膜厚30μmの無色透明のポリイミドフィルムを得た。
【0128】
得られたポリイミドフィルムは、平滑であったが、カールが生じた。得られたポリイミドフィルムに残存する溶剤量(Nメチル−2−ピロリドン)は0.3重量%、ガラス転移温度(Tg)は280℃、100〜200℃の線膨張係数は22ppm/Kであった。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0129】
(比較例3)
実施例1と同様にして得られたブロックポリアミド酸イミドワニスをガラス基板上に、スロットダイを搭載した枚葉型コーティング装置を用いて塗工した。
【0130】
支持体に塗工したポリアミド酸イミドワニス膜をオーブンに移して、窒素気流中、16分かけて30℃から270℃まで昇温し、続いて更に270℃で1時間保持して乾燥、イミド化しポリイミドフィルムを得た。ガラス基板上に作製したポリイミドフィルムを水中に浸漬させて、ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離し、付着した水分を乾燥させて、自己支持性を有する膜厚30μmのやや白濁したポリイミドフィルムを得た。
【0131】
得られたポリイミドフィルムは、ゆず肌や発泡があり、平滑性が損なわれ、カールも生じた。得られたポリイミドフィルムに残存する溶剤量(Nメチル−2−ピロリドン)は0.3重量%、ガラス転移温度(Tg)は280℃、100〜200℃の線膨張係数は30ppm/Kであった。このポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
上記結果から、ポリアミド酸のイミド化前に、支持体からポリアミド酸含有フィルムを剥離し、これを150℃以下から昇温させてイミド化することにより、自己支持性を有し、平滑で、カールの無いフィルムが得られることが明らかである(実施例1及び2)。また、支持体からポリアミド酸含有フィルムを剥離しながら、ポリイミド化を行うことにより、連続フィルムの形成も可能である(実施例2)。また、150℃以下から昇温させてイミド化することにより、線膨張係数の低いポリイミドフィルムが得られた(実施例1、2、及び比較例1〜3)。なお、比較例1〜3ではポリアミド酸含有フィルムを支持体から剥離せずにポリイミド化を行ったため、ポリイミドフィルムにカール生じ、フィルム品質に問題を有する。また、比較例1〜3の製造方法では、ロール品の作製が困難なことから、生産性にも問題がある。一方、本願の製造方法により得られるフィルムは、カールがなく、かつ透明性や外観性等にも優れ、画像表示装置等の用途に用いられる光学フィルムに好適に使用する事ができる。
【0134】
(実施例3)
工程a)
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4BAC)と、有機溶剤としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)とを加えて攪拌した。1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4BAC)のシス/トランス比は9/91であった。
ここに、粉状の3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を装入し、攪拌、脱泡してポリアミド酸(ポリイミド前駆体ポリマー)を含む溶液(ポリイミド前駆体ポリマーワニス)を得た。得られたポリアミド酸の固有対数粘度は、0.94dL/g(35℃、0.5g/dL)であった。該ポリアミド酸含有溶液を、ガラス基板に固定した宇部興産製のUPILEXフィルム(75S)上に、スロットダイを搭載した枚葉型コーティング装置を用いて塗工した。
【0135】
工程b)及びc)
支持体に塗工したポリアミド酸ワニス膜をオーブンに移して、空気気流中、30分かけて、30℃から100℃まで昇温し、タックフリーとした。
ポリアミド酸含有フィルムとUPILEXフィルムとの積層体を得た。このポリアミド酸含有フィルムをUPILEXフィルムより剥離した。
【0136】
工程d)及びe)
剥離したポリアミド酸含有フィルムをステンレス製の金属枠にカプトンテープを用いて、全周固定した。これをオーブンに移して、窒素気流中、25分かけて100℃〜250℃まで昇温し、続いて更に250℃で1時間保持して自己支持性を有する膜厚30μmの無色透明のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムは、平滑であり、カールは無かった。得られたポリイミドフィルムに残存する溶剤量(N,N-ジメチルアセトアミド)は0.1重量%、ガラス転移温度(Tg)は265℃、100〜200℃の線膨張係数は51ppm/Kであった。製造条件を表2に、評価結果を表3に示す。
【0137】
(実施例4、5)
工程a)における膜厚、及び工程d)における昇温速度を表2に示す通りに変更した以外は、実施例3と同様にしてポリイミドフィルムを作製した。評価結果を表3に示す。
【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
実施例3〜5の結果から、本発明のポリイミドフィルムの製造方法によれば、自己支持性を有し、平滑で、カールの無い、無色透明のフィルムが得られることがわかる。また、昇温速度やポリアミド酸含有フィルムの膜厚を変更しても、150℃以下から昇温させてイミド化することにより、透明性の高いポリイミドフィルムを作製する事ができる。本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、画像表示装置等の用途に用いられる光学フィルムに好適に使用する事ができる。
【0141】
(実施例6)
工程a)
CHDAとNBDAとの重量比率を3.15/1と変更した以外は、実施例1と同様にしてブロックポリアミド酸イミドワニスを得た。得られたブロックポリアミド酸イミドワニスの固有対数粘度は、0.84dL/g(35℃、0.5g/dL)であった。得られたブロックポリアミド酸イミドワニスを、東洋紡績製のPETフィルム(TN−100)上に、スロットダイを搭載した枚葉型コーティング装置を用いて塗工した。
【0142】
工程b)及びc)
支持体に塗工したポリアミド酸イミドワニス膜をオーブンに移して、空気気流中、30分かけて30℃から100℃まで昇温し、タックフリーとした。それにより、ポリアミド酸含有フィルムとPETフィルムの積層体を得た。積層体より、ポリアミド酸含有フィルムをPETフィルムより剥離した。
【0143】
工程d)〜f)
剥離したポリアミド酸含有フィルムをステンレス製の金属枠にカプトンテープを用いて、全周固定した。これをオーブンに移して、窒素気流中、1時間かけて30℃〜270℃まで昇温した。続いて更に270℃で1時間保持して自己支持性を有する膜厚30μmの無色透明のポリイミドフィルムを得た。
【0144】
得られたポリイミドフィルムの両端を、クリップテンターを有する延伸装置に挟み、加熱炉内にセットし、加熱炉を300℃まで昇温させた後に、フィルムの1軸方向を25%延伸した。
【0145】
得られたポリイミドフィルムは、平滑であり、カールは無かった。得られたポリイミドフィルムに残存する溶剤量(N-メチル-2-ピロリドンおよび1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)の総量は0.01重量%以下であり、ガラス転移温度(Tg)は271℃、100〜200℃の線膨張係数は−3ppm/K(延伸方向)であった。製造条件を表4に、得られたポリイミドフィルムの評価結果を表5に示す。
【0146】
(実施例7)
ポリイミドフィルムの延伸倍率を表4に示す通りに変更した以外は、実施例6と同様にしてポリイミドフィルムを作製した。得られたポリイミドフィルムの評価結果を表5に示す。
【0147】
(実施例8)
工程a〜c)
実施例6と同様にしてポリアミド酸含有溶液およびポリアミド酸含有フィルムとPETフィルムの積層体を得た。ポリアミド酸含有フィルムをPETフィルムより剥離した。
【0148】
工程d)及びe)
剥離したポリアミド酸含有フィルムに張力を加えないようにステンレス製の金属枠にカプトンテープを用いて、4角を固定した。これをオーブンに移して、窒素気流中、1時間かけて30℃〜270℃まで昇温し、続いて更に270℃で1時間保持して自己支持性を有する膜厚30μmの無色透明のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの寸法は5%収縮した。製造条件を表4に、得られたポリイミドフィルムの評価結果を表5に示す。
【0149】
(実施例9)
延伸を行わなかった以外は、実施例6と同様にしてポリイミドフィルムを得た。製造条件を表4に、得られたポリイミドフィルムの評価結果を表5に示す。
【0150】
【表4】

【0151】
【表5】

【0152】
実施例6〜9の結果から、本発明のポリイミドフィルムの製造方法によれば、自己支持性を有する平滑で、カールの無い、無色透明のフィルムが得られることがわかる。また、150℃以下から昇温させてイミド化することにより、線膨張係数が低く、かつ透明性の高いポリイミドフィルムを作製する事ができる。なお、延伸を行うことにより、線膨張係数が低下することも明らかである(実施例6及び7)。また、同じ未延伸でも、工程d)の金属枠への固定を、全周固定した場合には(実施例9)、全周固定しない場合(実施例8)と比較して、線膨張係数が低くなる。
なお、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、いずれも外観が良好であり、かつカールもなく、線膨張係数も低いため、画像表示装置等の用途に用いられる光学フィルムに好適に使用する事ができる。
【0153】
(実施例10及び11)
工程a〜e)
1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4BAC)と、有機溶剤としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)とを加えて攪拌した。1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンのシス/トランス比は14/86であった。
ここに、粉状の3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を装入し、攪拌、脱泡してポリアミド酸(ポリイミド前駆体ポリマー)を含む溶液(ポリイミド前駆体ポリマーワニス)を得た。得られたポリアミド酸の固有対数粘度は、1.22dL/g(35℃、0.5g/dL)であった。
得られたポリアミド酸含有溶液を用いて、実施例6と同様にして延伸前のポリイミドフィルム得た。
【0154】
工程f)
ポリイミドフィルムの延伸方法、延伸倍率、温度を表6に示す通りに変更した以外は、実施例6と同様にしてポリイミドフィルムを作製した。得られたポリイミドフィルムの評価結果を表7に示す。なお、実施例10は、2軸方向に延伸しているため、線膨張係数を、それぞれの延伸方向について測定した。
【0155】
【表6】

【0156】
【表7】

【0157】
実施例10及び11の結果から、本発明のポリイミドフィルムの製造方法によれば、自己支持性を有する平滑で、カールの無い、無色透明のフィルムが得られることがわかる。また、延伸倍率が高いほうが、線膨張係数が低くなることがわかる(実施例10)。また、150℃以下から昇温させてイミド化することにより、線膨張係数が低く、かつ透明性の高いポリイミドフィルムを作製する事ができる。なお、1軸方向及び2軸方向のいずれの延伸を行ったフィルムおいても、外観性が優れ、かつカールもなかった。この様な本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、画像表示装置等の用途に用いられる光学フィルムに好適に使用する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法により製造されるポリイミドフィルムは、カールがなく、熱膨張係数が小さく、さらに白化等がない。したがって、画像装置等の光学フィルムや、回路基板用のポリイミド金属積層板などに好ましく用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記一般式(A)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記一般式(B−1)〜(B−3)で表されるジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むジアミンとを溶剤中で反応させてなる、ポリアミド酸を含むポリアミド酸含有溶液を、支持体上に塗布する工程と、
b)前記ポリアミド酸含有溶液の塗膜からなるポリアミド酸含有フィルムがタックフリーとなるまで、前記ポリアミド酸含有溶液中の溶剤を150℃以下の温度で乾燥する工程と、
c)前記ポリアミド酸含有フィルムを支持体から剥離する工程と、
d)前記ポリアミド酸含有フィルムを固定し、150℃以下から昇温しながら前記ポリアミド酸含有フィルムの加熱を行い、前記ポリアミド酸をイミド化してポリイミドフィルムを得る工程と
を有する、ポリイミドフィルムの製造方法。
【化1】

(一般式(A)中、Rは炭素数4〜27の4価の基を示し、かつ
脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基を示すか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基を示すか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示す)
【化2】

【化3】

【化4】

【請求項2】
前記工程d)の後に、さらに
e)200℃以上で前記ポリイミドフィルムを加熱する工程、を含む請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記工程e)と同時、または工程e)終了後に、
f)200℃以上で加熱しながら前記ポリイミドフィルムの周囲を固定し、前記ポリイミドフィルムを0%〜300%延伸する工程、を含む請求項2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記工程d)が、150℃以下から200℃以上まで、昇温しながら前記ポリアミド酸含有フィルムを加熱する工程である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記工程d)の、150℃〜200℃の温度領域における平均昇温速度が0.25〜50℃/分である、請求項4に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記工程b)が、ポリアミド酸含有フィルムに残存する溶剤濃度を、1〜50重量%とする工程である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ポリアミド酸含有溶液が、下記一般式(C)で表される繰り返し構造単位で構成されるポリアミド酸ブロックと、下記一般式(D)で表される繰り返し構造単位で構成されるポリイミドブロックとを含むブロックポリアミド酸イミドを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【化5】

(一般式(C)及び(D)中、R及びR”はそれぞれ独立して、炭素数4〜27の4価の基であり、かつ脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基を示すか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基を示すか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示し;
一般式(D)において、R’は、炭素数4〜51の2価の基であり、かつ脂肪族基、単環式脂肪族基(但し、1,4-シクロヘキシレン基を除く)、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基もしくは縮合多環式芳香族基であるか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基であるか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基である)
【請求項8】
前記ポリアミド酸が下記一般式(E)で表される繰り返し単位を有し、
一般式(E)における1,4-ビスメチレンシクロヘキサン骨格(X)は、式(X1)で表されるトランス体と、式(X2)で表されるシス体とからなり、
前記トランス体とシス体の含有比(トランス体+シス体=100%)は、60%≦トランス体≦100%,0%≦シス体≦40%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【化6】

【化7】

(一般式(E)中、Rは炭素数4〜27の4価の基を示し、かつ
脂肪族基、単環式脂肪族基、縮合多環式脂肪族基、単環式芳香族基、もしくは縮合多環式芳香族基を示すか、環式脂肪族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式脂肪族基を示すか、または芳香族基が直接もしくは架橋員により相互に連結された非縮合多環式芳香族基を示す)


【公開番号】特開2012−233021(P2012−233021A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100333(P2011−100333)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】