説明

ポリイミドフィルム

【課題】絶縁不良の少ないプリント基板の調製に適したポリイミドフィルムの提供。
【解決手段】ポリイミドフィルムロールの、514mm又は1028mmの幅と1500mの長さを有する面積範囲を、光学欠陥検出器中を通過させて検出し、直径50μm以上の長軸を有する欠陥が含まれる場合、波長分散型蛍光X線分析装置によってC強度を測定したとき、欠陥ではない部位に対するC強度値との差が70〜250である欠陥の数が前記面積範囲に対して5個以下である、ポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性及び耐低温性などを備え、コンピュータ及びIC制御の電気・電子機器の部品材料として広く用いられているが、例えばフレキシブルプリント配線板、TAB用キャリアテープのベースフィルム、航空機などの電線被覆剤、磁気記録用テープのベースフィルム、超伝導コイルの線材被覆材などを挙げることができる。これらの各種用途には、それぞれの用途に適したポリイミドフィルムが適宜選択される。
【0003】
このようにポリイミドフィルムに対する需要は更に増大しており、優れた品質を有するポリイミドフィルムの開発が求められている。
【0004】
一方、ポリイミドフィルムは、前駆体であるポリアミド酸の有機溶媒中溶液を、支持体上に流延又は塗布して固化させた後、更に加熱処理する方法によって製造される場合が多い。更に具体的には、ジアミンと二無水物単量体からポリイミドの前駆体溶液を重合し、熱的イミド化又は化学的イミド化させるが、熱的イミド化の場合は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸ワニスから溶媒を除去してポリアミド酸フィルムを形成した後、加熱することにより、ポリイミドフィルムに変換される。化学的イミド化の場合は、ポリアミド酸ワニスに化学イミド化剤を混合してゲルフィルムを得、これを更に硬化・乾燥させてポリイミドフィルムを得る。
【0005】
このような一般の方法によって得られたポリイミドフィルムは、電気絶縁特性を満足させなければならず、その1つとして絶縁破壊電圧が一定の水準以上であることが要求されている。
【0006】
ところが、ポリイミドフィルムのように、溶液状の前駆体を流延又は塗布し、これを硬化させる過程を経てフィルムを製造する場合には、加熱時間、あるいは硬化及び/又は部分的に乾燥したポリアミド酸フィルム(ゲルフィルム)の製造時間、あるいはその温度の制御などが不適である場合、フィルムの内部に異物が存在するおそれがある。一例として、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が溶媒に溶解しているポリアミド酸溶液を、支持体の一面に塗布した後、約250℃程度までの処理温度で加熱処理して硬化させながらイミド化を行うことにより、ポリイミド樹脂が生成されるが、ポリイミド樹脂前駆体の塗膜の表面から熱風などによって加熱されるために、塗膜の表面と内部との温度差が大きくなり、その塗膜の表面からまず硬化及びイミド化が進行するため、内部にある溶剤の除去が遅くなるおそれがある。これは異物として残留する。このような異物は絶縁不良を生じさせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、絶縁不良の少ないプリント基板を得ることに適したポリイミドフィルムを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、25μmの厚さを基準とした絶縁破壊電圧が5kV以上を示すポリイミドフィルムを提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、25μmの厚さを基準とした絶縁破壊電圧が8kV以上を示すポリイミドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態では、ポリイミドフィルムロール上の、514mm又は1028mmの幅と1500mの長さを有する面積範囲を、光学欠陥検出器中を通過させて検出したとき、直径50μm以上の長軸を有する欠陥が含まれる場合、波長分散型蛍光X線分析装置によってC強度を測定したとき、欠陥ではない部位とのC強度値の差が70〜250である欠陥の数が前記面積範囲あたり5個以下である、ポリイミドフィルムの提供に関する。
【0011】
本発明の実施形態に係るポリイミドフィルムは、酸無水物とジアミンの反応によって合成されたポリイミド前駆体から形成されるか、或いは酸無水物とジアミンの反応によって合成されたポリイミド前駆体と有機溶媒を含むポリイミド前駆体溶液から形成される。この際、有機溶媒は100〜250℃の沸点であってもよい。
【0012】
また、本発明の実施形態に係るポリイミドフィルムは、酸無水物とジアミンの反応によって合成されたポリイミド前駆体と溶媒を含むポリイミド前駆体溶液を、支持体上に塗布した後、50〜200℃で1分〜1時間乾燥させる工程を経て得てもよい。この際、乾燥により溶媒残留量が50%以下となるように実施して得てもよく、前記乾燥の後に更に50〜500℃で1分〜1時間加熱硬化させてイミド化する工程を経て得てもよい。
【0013】
本発明の実施形態に係るポリイミドフィルムは、絶縁不良を考慮して、絶縁破壊電圧が5kV以上であってもよく、絶縁破壊電圧が8kV以上であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、所定の大きさの欠陥として認識される部位が若干検出されても、波長分散型蛍光X線分析装置によってC強度を検出したとき、欠陥ではない部位に対して70〜250のC強度差を示す欠陥の数が一定の面積範囲に対して5個以下であるポリイミドフィルムであれば、絶縁破壊電圧が高くて絶縁不良を起こすおそれが少ないため、可撓性プリント基板、TAB用キャリアテープのベースフィルム、磁気記録用テープのベースフィルムなどの絶縁材料として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0016】
本発明の一実施形態では、ポリイミドフィルムは、514mm又は1028mmの幅と1500mの長さを有するフィルムロールの面積範囲を、光学欠陥検出器を通過させて検出し、直径50μm以上の長軸を有する欠陥が含まれる場合において、波長分散型蛍光X線分析装置によってC強度を測定したとき、欠陥ではない部位に対するC強度値との差が75〜250である欠陥の数が、前記面積範囲あたり5個以下であることを特徴とする。
【0017】
ここで、光学欠陥検出器は、フィルムの形状を2次元イメージ化し、予め設定された大きさ以上の欠陥を分析して検出する機器であって、特に本発明における有意な欠陥とは、長軸を基準とした直径が50μm以上の欠陥である。50μmより小さい直径の欠陥は、フィルムの物性に影響を与えない程度の、無視しても構わない程度の大きさである。
【0018】
また、本発明のポリイミドフィルムは、このように光学欠陥分析器によって検出された欠陥を、波長分散型蛍光X線分析装置でC強度を測定したとき、欠陥ではない部位のC強度値との差が70〜250である欠陥の数が、前記面積範囲に対して5個以下であるが、この際、波長分散型蛍光X線分析装置で検出されるC強度とは、検出する測定試料における炭素の含量のことを指す。前記面積範囲を光学欠陥分析器で検出された際に検出された欠陥を、波長分散型蛍光X線分析装置によってC強度測定したとき、欠陥ではない部位におけるC強度値との差が70〜250である欠陥の数が前記面積範囲に対して5個以下のとき、フィルムの絶縁破壊電圧を高めることができる。
【0019】
このような様相を示すとき、絶縁破壊電圧は、フィルムの厚さが25μmのときに5kV以上、好ましくは8kV以上である。
【0020】
ポリイミドフィルムは、主鎖中に酸イミド結合を持つ高分子物質としてのポリイミド樹脂からなり、例えばピロメリット酸無水物、テトラカルボン酸無水物などの酸無水物と、例えばp−フェニレンジアミンなどのジアミンの重合反応によって合成されたポリイミド前駆体を、その後に再加熱などによる反応によって開環状態から閉環化させることにより生成する。
【0021】
この際、ポリイミド前駆体は溶媒に可溶である。溶媒に溶解することによりポリアミド酸溶液からなる状態で支持体上に塗布され、乾燥によってその溶媒がある程度除去されることにより、支持体上に接着する。
【0022】
使用可能な溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;ヘキサメチルリン酸アミド;γ−ブチロラクトンなどを挙げることができる。
【0023】
通常、イミド化のための加熱処理温度が約250℃であることを考慮し、好ましくは沸点100〜250℃の溶媒を使用し、具体的には150〜170℃の溶媒を使用する。
【0024】
本発明におけるポリイミド前駆体を得るために使用される酸無水物は、特に限定されないが、例えば2,2’−ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸2無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸2無水物、ブタンテトラカルボン酸2無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸2無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸2無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸2無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸2無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸2無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸2無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2無水物などの脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸2無水物;ピロメリット酸2無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸2無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸2無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸2無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸2無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸2無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸2無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸2無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド2無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン2無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン2無水物、3,3’,4,4’−ペルフルオロイソプロピリデンジフタル酸2無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキシド2無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)2無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)2無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル2無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン2無水物などの芳香族テトラカルボン酸2無水物;1,3,3a,4,5,9b−(ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a、4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオンなどを挙げることができ、これらの1種のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
本発明におけるポリイミド前駆体を得るために使用されるジアミンは、特に限定されないが、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノフェニルエタン、4,4’−ジアミノフェニルエーテル、4,4’−ジアミノフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェンなどの芳香環に結合した2つのアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,0,2,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン;などを挙げることができる。これらのジアミンは1種のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
その他に、本発明のポリイミドフィルムには、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性などのフィルムの様々な特性を改善させる目的で充填剤を添加してもよい。
【0027】
充填剤としては、特に限定されないが、好ましくは例えばシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などを挙げることができる。
【0028】
前記ポリアミド酸の重合では、酸成分とジアミン成分とを反応させる手法を適宜調製し、複数種の重合方法を使用することができる。具体的には、例えば以下の1)〜5)に示したような重合方法を使用するのが好ましい。
1)芳香族ジアミンを有機溶媒中に溶解し、この芳香族ジアミンと実質的に同モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物とを反応させて重合する方法;
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対して過少モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有する予備重合体を得、しかる後に、全体工程で芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に同モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法;
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対して過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を持つ予備重合体を得、しかる後に、ここに芳香族ジアミン化合物を更に添加した後、全体工程で芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に同モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法;
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機溶媒中に溶解及び/又は分散させた後、実質的に同モルとなるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法;
5)実質的に同モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの混合物を有機溶媒中で反応させて重合する方法。
【0029】
ポリイミド前駆体及び溶媒を含むポリイミド前駆体溶液を支持体上に塗布した後、乾燥過程を経て溶媒を除去し、この際、残留溶媒量が50%以下となるように乾燥を行うことが、ポリイミドフィルム内への異物の残留を防止するために好ましい。
【0030】
また、乾燥工程は、50〜200℃で1分〜1時間実施する。
【0031】
このような乾燥温度範囲のとき、ポリイミド前駆体溶液中の溶媒の揮発が効率よく行われる。
【0032】
支持体上に塗布、乾燥されたポリイミド前駆体は、加熱などによる反応によって開環状態から閉環化されることによりポリイミド樹脂が生成されるが、50〜500℃で1分〜1時間加熱硬化させることによりイミド化することができる。
【0033】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
[実施例1]
沸点150〜160℃のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)203.729gに4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)11.8962gとp−フェニレンジアミ(MDA)4.3256gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。4,4’−オキジフタル酸二無水物(ODPA)15.511gを徐々に添加し、1時間撹拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液に3,3’,4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)6.4446gを徐々に添加して1時間撹拌することにより完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)6.5436gを更に添加して1時間撹拌し、23℃における溶液粘度2500ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0035】
得られた溶液に溶液重量対比0.01〜10重量比の範囲で一定量の充填剤を分散させた後、撹拌しながら真空ポンプを用いて1時間脱泡し、更に0℃に冷却させた。このポリアミド酸溶液100gに酢酸無水物11.4g、イソキノリン4.8g及びDMF33.8gからなる硬化剤を混合してステンレス鋼材質の硬板に流延、塗布した。得られたポリアミド酸溶液の塗布されたアルミニウム箔を100℃で300秒間加熱してゲルフィルムを得た後(残留溶媒量50%)、アルミニウム箔から剥離してフィルムの一部の縁部をフレームに固定させた。
【0036】
固定されたフィルムを150℃、250℃、350℃、450℃で30秒〜240秒間加熱した後、更に遠赤外線オーブンで30秒〜180秒間加熱処理し、厚さ25μm、幅514mm、長さ1500mのポリイミドフィルムを得た。
【0037】
[実施例2]
DMF198.5288gにMDA9.9135gとPDA5.407gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ODPA21.7154gを徐々に添加し、1時間撹拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にPMDA6.5436gを更に添加して1時間撹拌し、23℃における溶液粘度3100ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0038】
このポリアミド酸溶液を使用した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを製造した。
【0039】
[実施例3]
DMF199.2985gにMDA10.9gとPDA4.8663gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ODPA15.511gを徐々に添加し、1時間撹拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA4.83345gを徐々に添加して1時間撹拌することにより完全に溶解させた後、PMDA7.6377gを更に添加して1時間撹拌し、23℃における溶液粘度2700ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0040】
このポリアミド酸溶液を使用した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを製造した。
【0041】
[実施例4]
DMF199.6231gにMDA9.9135gとPDA5.407gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ODPA15.511gを徐々に添加し、1時間撹拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA6.4446gを徐々に添加して1時間撹拌することにより完全に溶解させた後、PMDA6.5436gを更に添加して1時間撹拌し、23℃における溶液粘度2600ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0042】
このポリアミド酸溶液を使用した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを製造した。
【0043】
[実施例5]
DMF204.8232gにMDA11.8962gとPDA4.3256gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ODPA9.3066gを徐々に添加し、1時間撹拌することによりODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA12.8892gを徐々に添加して1時間撹拌することにより完全に溶解させた後、PMDA6.5436gを更に添加して1時間撹拌し、23℃における溶液粘度2400ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0044】
このポリアミド酸溶液を使用した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを製造した。
【0045】
[実施例6]
DMF222.1027gにMDA12.88755gとPDA3.7849gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ODPA6.2044gを徐々に添加し、1時間撹拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA19.3338gを徐々に添加して1時間撹拌することにより完全に溶解させた後、PMDA6.5436gを更に添加して1時間撹拌し、23℃における溶液粘度2200ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0046】
このポリアミド酸溶液を使用した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを製造した。
【0047】
[実施例7]
DMF198.1653gにMDA9.9135gとPDA5.407gを溶解し、この溶液を0℃に維持した。ODPA9.3066gを徐々に添加し、1時間撹拌してODPAを完全に溶解させた。この溶液にBTDA6.4446gを徐々に添加して1時間撹拌することにより完全に溶解させた後、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)5.8844gを徐々に添加して1時間撹拌することによりBPDAを完全に溶解させた後、PMDA6.5436gを更に添加して1時間撹拌し、23℃における溶液粘度2300ポアズ、固形分濃度18.0重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0048】
このポリアミド酸溶液を使用した以外は実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを製造した。
【0049】
[実施例8]
得られたポリアミド酸溶液の塗布されたアルミニウム箔を130℃で100秒間加熱してゲルフィルムを得た後(残留溶媒量40%)、アルミニウム箔から剥離してフィルムの一部の縁部をフレームに固定させたことを除き、実施例1と同様の方法によってポリアイミドフィルムを製造した。
【0050】
固定されたフィルムを150℃、250℃、350℃、450℃で30秒〜240秒間加熱した後、更に遠赤外線オーブンで30秒〜180秒間加熱処理して厚さ25μm、幅514mm、長さ1500mのポリイミドフィルムを得た。
【0051】
[実施例9]
溶媒として沸点160〜170℃のDMAcを使用したことを除き、実施例1と同様の方法によってポリイミドフィルムを製造した。
【0052】
[実施例10〜実施例18]
最終フィルムロールの規格が厚さ25μm、幅1028mm、長さ1500mとなるように製造したことを除き、実施例1〜9と同様の方法によってそれぞれのフィルムを製造した。
【0053】
実施例1〜18から得られたポリイミドフィルムに対して光学欠陥検出器(IMAGE2000.DA,朝日測器社)をライン速度1.5〜28m/分の条件で通過させ、長軸を基準とした直径50μm以上の欠陥を検出し、欠陥として指示された座標に該当する欠陥の数をカウントした。この際、光学欠陥検出器は、フィルムの形状を2次元イメージ化し、長軸の粒径が50μm以上の異物を検出するようにセットされたものであり、測定子又は測定環境が変わる点に対する誤差範囲が±10%程度のものである。
【0054】
光学欠陥検出器によって欠陥が検出されると、欠陥として指示された座標に該当する位置の欠陥部分を含んで試片化し、この試片に対して欠陥部分をスポットして波長分散型蛍光X線分析装置を用いてC強度を検出し、当該ロールで試片化された正常部位の試片部分のC強度を検出した。その後、正常試片のC強度に対してその差が70〜250のC強度を示す欠陥の数をカウントした。
この際、波長分散型蛍光X線分析装置としては、島津社のEPMA1600を使用し、加速電圧15kV、ビームサイズ10μmの条件下で検出した。
その結果は表1の通りである。
【0055】
【表1】

【0056】
一方、表1のような結果が絶縁破壊電圧に及ぼす影響を確認するために、実施例1〜18の試料の絶縁破壊電圧を測定した。
【0057】
絶縁破壊電圧の測定方法は次の通りである。
【0058】
絶縁破壊電圧測定器(モデル名DPA75、BAUR社製)を用いて、23℃、50%RHの下にASTM D149基準に基づいて0V〜500V/Sの速度で昇圧して絶縁破壊される電圧を測定した。
【0059】
【表2】

【0060】
表2の結果より、直径50μm以上の長軸を有する欠陥が光学欠陥検出器によって検出されても、波長分散型蛍光X線分析装置でC強度を検出したとき、欠陥ではない部位に対して70〜250の差を示す欠陥の数が5個以下の場合はいずれも、絶縁破壊電圧が8kV以上であって、絶縁性に優れるうえ、特にこのような特性を持つ欠陥の数が少ないほど絶縁破壊電圧が大きくなることが分かる。これは、波長分散型蛍光X線分析装置で検出されるC強度の値が均一な場合に絶縁材として有用であることを示す結果と言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルムロール上の、514mm又は1028mmの幅と1500mの長さを有する面積範囲を、光学欠陥検出器中を通過させて検出し、直径50μm以上の長軸を有する欠陥が含まれる場合、
波長分散型蛍光X線分析装置によってC強度を測定したとき、欠陥ではない部位とのC強度値の差が70〜250である欠陥の数が前記面積範囲あたり5個以下である、ポリイミドフィルム。
【請求項2】
酸無水物とジアミンとの反応によって合成されたポリイミド前駆体から形成されている、請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
酸無水物とジアミンとの反応によって合成されたポリイミド前駆体と、有機溶媒を含むポリイミド前駆体溶液から形成され、前記有機溶媒の沸点が100〜250℃である、請求項1又は2記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
酸無水物とジアミンとの反応によって合成されたポリイミド前駆体と溶媒とを含むポリイミド前駆体溶液を、支持体上に塗布した後、50〜200℃で1分〜1時間乾燥させる工程を経て得られる、請求項1又は2記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記乾燥により溶媒残留量が50%以下となっている、請求項4記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記乾燥の後、更に50〜500℃で1分〜1時間加熱硬化させてイミド化する工程を経て得られる、請求項4記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
絶縁破壊電圧が5kV以上である、請求項1記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
絶縁破壊電圧が8kV以上である、請求項1記載のポリイミドフィルム。

【公開番号】特開2009−57556(P2009−57556A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216536(P2008−216536)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(597114649)コーロン インダストリーズ インク (99)
【Fターム(参考)】