説明

ポリイミド前駆体又はポリイミド及び感光性樹脂組成物

【課題】柔軟性及び絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物及び当該感光性樹脂組成物に用いられるポリイミド前駆体又はポリイミドを提供すること。
【解決手段】本発明のポリイミド前駆体又はポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体又はポリイミドであって、前記テトラカルボン酸二無水物として、下記一般式(1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とする。
【化1】


(式(1)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜炭素数18のアルキレン基を示し、nは1以上の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関し、例えば、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、半導体パッケージ基板、フレキシブルプリント基板用保護絶縁膜として有用な感光性樹脂組成物及び当該感光性樹脂組成物に用いられるポリイミド前駆体又はポリイミド及び感光性樹脂組成物を用いた感光性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブルプリント基板(以下、「FPC」ともいう。)と呼ばれるフィルム状のプリント基板が活況を得ている。このフレキシブルプリント基板は、配線加工されたFCCL(Flexible Copper Clad Laminate)上にポリイミドフィルムなどから構成されるカバーレイを具備した構造を有しており、主に携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどの機器に用いられている。FPCは折り曲げても機能を維持することから、機器の小型化、軽量化に向けて無くてはならない材料となっている。特に近年、携帯電話に代表される電子機器の高機能化、軽量化に伴い、FPCも薄膜化や部品実装などの高機能化が進められている。
【0003】
このようなフレキシブルプリント基板用保護絶縁膜の材料においては、柔軟性、難燃性、現像性(アルカリ溶解性及び解像性)、高解像性、絶縁信頼性、半田耐熱性といった特性が求められている。柔軟性、絶縁信頼性などの要求特性を満たすため、カーボネート骨格を含む材料が用いられている。カーボネート骨格を含む材料としては、ポリカーボネートジオール由来のポリカーボネート基をウレタン結合やウレア結合を介してポリマー主鎖に導入した変性ポリイミドなどが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。また、ポリカーボネートジオール由来のポリカーボネート基を、ウレタン結合やウレア結合を介してポリマー主鎖に導入した変性ポリイミド樹脂や(例えば、特許文献2参照)、アルカリ溶解性を向上させるために側鎖にカルボキシル基を導入した変性ポリイミド樹脂(例えば、特許文献3参照)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−51949号公報
【特許文献2】特開2008−120954号公報
【特許文献3】特開2009−69664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたポリイミド樹脂は、非感光性の絶縁材料であるため、工業プロセスが煩雑となり、十分な解像度を得ることが難しい。また、仮にカルボキシル基を有するポリイミド前駆体構造として用いたとしてもアルカリ溶解性が低く、かつウレタン結合に由来する現像残渣が発生しやすくなるので、感光性材料としては適さない。また、特許文献2に記載された変性ポリイミド樹脂においても、ウレタン結合に由来する現像残渣が発生しやすくなるので、感光性材料として十分な性能が得られない問題がある。さらに、特許文献3に記載れた変性ポリイミド樹脂においても、特許文献2に記載された変性ポリイミド樹脂と同様に、ウレタン結合に由来する現像残渣が発生しやすくなると共に、焼成後においても側鎖に導入されたカルボキシル基が残存するため、絶縁信頼性が十分に得られない問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みて為されたものであり、柔軟性及び絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物及び当該感光性樹脂組成物に用いられるポリイミド前駆体又はポリイミドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリカーボネート骨格を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体又はポリイミドを用いることにより、上記課題を解決できる感光性樹脂組成物が得られること、及び当該感光性樹脂組成物が感光性フィルム、感光性カバーレイとして好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下に示すものである。
【0008】
本発明のポリイミド前駆体又はポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体又はポリイミドであって、前記テトラカルボン酸二無水物として、下記一般式(1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とする。
【化1】

(式(1)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜炭素数18のアルキレン基を示し、nは1以上の整数である。)
【0009】
このポリイミド前駆体又はポリイミドによれば、カーボネート骨格を有するテトラカルボン酸とジアミンとを反応させることにより分子鎖中にカーボネート骨格が導入される。これにより、分子鎖に適度な柔軟性が付与されるので、感光性樹脂組成物に用いた場合に硬化時の反りを低減することができる。また、アルキレンオキシドなどに対して相対的に疎水性の高いカーボネート骨格によってポリイミド前駆体又はポリイミドに柔軟性を付与されるので、感光性樹脂組成物として用いた場合に高い絶縁信頼性を実現することができる。さらに、ポリイミド前駆体においては、カルボキシル基を有するポリアミド酸構造を含むので、アルカリ溶解性も向上する。
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)上記ポリイミド前駆体又はポリイミドと、(B)感光剤と、を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記感光剤として、(B1)光重合開始剤と、(B2)分子内に少なくとも2個以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する光重合性化合物と、を含むことが好ましい。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記分子内に少なくとも2個以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する光重合性化合物として、二重結合を2個有する化合物と二重結合を3個以上有する化合物を共に含むことが好ましい。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物においては、(C)リン化合物を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記リン化合物として、リン酸エステル化合物及び/又はホスファゼン化合物を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物においては、ポリイミド前駆体又はポリイミドとの反応性を有する(D)反応性化合物及び/又は熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の感光性フィルムは、基材と、前記基材上に設けられた上記感光性樹脂組成物と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の感光性フィルムにおいては、前記感光性樹脂組成物上に設けられたカバーフィルムを具備することが好ましい。
【0018】
本発明のカバーレイは、上記感光性樹脂組成物をイミド化して得られたことを特徴とする。
【0019】
本発明の積層体は、銅張積層板と、前記銅張積層板上に設けられた上記カバーレイとを備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明のフレキシブルプリント配線板は、配線を有する基材と、前記基材上においてイミド化された上記感光性樹脂組成物とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、柔軟性及び絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物及び当該感光性樹脂組成物に用いられるポリイミド前駆体又はポリイミドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態に係るテトラカルボン酸二無水物の赤外吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド
本発明に係るポリイミド前駆体又はポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られる。このポリイミド前駆体又はポリイミドは、下記一般式(1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含む少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより得られる。
【0025】
【化2】

【0026】
上記一般式(1)において、Rは、それぞれ独立した炭素数1〜炭素数18のアルキレン基であり、好ましくは炭素数4〜炭素数10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数4〜炭素数6のアルキレン基である。Rとしては、具体的には、−(CH−(m=3〜10)、−(CH)C(CH)−、−(CH)C(CH)(CH)−、−(CHC(CH)(CHなどが挙げられるが、この中でも好ましくは、−(CH−(m=4〜6)、−(CH)C(CH)(CH)−、−(CHC(CH)(CHであり、特に好ましくは−(CH−(m=5,6)である。
【0027】
また、上記一般式(1)において、nは1以上の整数であるが、好ましくは1以上30以下であり、より好ましくは2以上25以下であり、特に好ましくは5以上10以下である。得られるポリイミド樹脂(ポリイミド前駆体又はポリイミド)の柔軟性の点から、nは2以上が好ましく、アルカリ溶解性の点から25以下が好ましい。
【0028】
本発明に係るポリイミド前駆体又はポリイミドにおいては、ポリカーボネート骨格を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることにより、ポリカーボネート骨格がポリイミド前駆体又はポリイミドに導入されるので、ポリイミド前駆体又はポリイミドの分子鎖に適度な柔軟性が付与され、硬化時の反りを低減することができる。ここで、一般的にポリイミド前駆体又はポリイミド中に柔軟性を付与する構造(例えば、アルキルエーテルジアミンなど)を導入すると絶縁信頼性が低下するが、ポリカーボネート骨格はアルキレンオキシドなどに対して相対的に疎水性が高いことから、高い柔軟性を維持しながら、高い絶縁信頼性を達成することができる。これらにより、ポリカーボネート骨格由来の柔軟性及び絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物を実現できる。
【0029】
特に、本発明においては、アルカリ溶解性の観点からポリイミド前駆体を用いることが好ましい。本発明に係るポリイミド前駆体においては、カルボキシル基を有するポリアミド酸構造を含むことから、ポリマー中にカルボキシル基を効率良く導入できるので、酸価を高めることができ、高いアルカリ溶解性が発現する。一方、ウレタン結合、ウレア結合などを有するポリマーにアルカリ現像性を向上するためには、側鎖にカルボキシル基を導入し、酸価を高める方法が一般的であるが(例えば、特許文献3:特開2009−69664号公報参照)、この場合、焼成後にも残存するカルボキシル基が吸水率を高める要因となり、絶縁信頼性が低下する。これに対し、本発明においては、ポリイミド前駆体のポリアミド酸構造中のカルボキシル基が焼成後にイミド化して消失するため、高い絶縁信頼性が発現される。
【0030】
ポリイミド前駆体としては、ポリアミド酸構造を主成分とするポリイミド前駆体を用いてもよく、感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性を損なわない範囲で、ポリアミド酸の一部がイミド化されたポリイミド構造とポリアミド酸構造とを繰り返し構成単位として有するものを用いてもよい。
【0031】
次に、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造方法について説明する。上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、下記一般式(2)で表されるポリカーボネートジオール化合物を出発原料とし、このポリカーボネートジオール化合物とトリメリット酸クロリドとをアルカリ触媒存在下でエステル化反応を行うことにより得られる。反応条件、精製及び脱水環化の条件については、公知のテトラカルボン酸二無水物の製造方法の条件を適用することが可能である。
【0032】
【化3】

(式(2)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜炭素数18のアルキレン基を表し、nは1以上の整数である。)
【0033】
ここで、上記一般式(2)において、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜炭素数18のアルキレン基であるが、好ましくは炭素数4〜炭素数10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数4〜炭素数6のアルキレン基である。具体的には、−(CH−(m=3〜10)、−(CH)C(CH)−、−(CH)C(CH)(CH)−、−(CHC(CH)(CHなどが挙げられるが、この中でも好ましくは、−(CH−(m=4〜6)、−(CH)C(CH)(CH)−、−(CHC(CH)(CHであり、特に好ましくは−(CH−(m=5,6)である。
【0034】
なお、上記一般式(2)のポリカーボネートジオールに関しては、市販のものを使用することができ、市販のポリカーボネートジオールとしては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の商品名デュラノール T−4671(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CH−、n=約7、数平均分子量1000)、T−4672(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CH−、n=約14、数平均分子量1000)、T−4691(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CH−、n=約7、数平均分子量1000)、T−4692(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CH−、n=約14、数平均分子量2000)、T−5650J(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CH−、n=約5、数平均分子量800)、T−5651(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CH−、n=約7、数平均分子量1000)、T−5652(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CH−、n=約14、数平均分子量2000)、T−6001(一般式(2)中のR=−(CH−、n=約6、数平均分子量1000)、T−6002(一般式(2)中のR=−(CH−、n=約13、数平均分子量2000)、ダイセル化学工業社製の商品名プラクセルCD CD−205(数平均分子量500)、CD−205PL(数平均分子量500)、CD−205HL(数平均分子量500)、CD−210(数平均分子量1000)、CD−210PL(数平均分子量1000)、CD−210HL(数平均分子量1000)、CD−220(数平均分子量2000)、CD−220PL(数平均分子量2000)、CD−220HL(数平均分子量2000)、クラレ社製の商品名クラレポリオールC−590(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CHC(CH)(CH−、n=約3、数平均分子量500)、C−1050(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CHC(CH)(CH−、n=約6、数平均分子量1000)、C−1090(一般式(2)中のR1=−(CH−及び、−(CHC(CH)(CH−、n=約6、数平均分子量1000)、C−2050(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CHC(CH)(CH−、n=約13、数平均分子量2000)、C−2090(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CHC(CH)(CH−、n=約13、数平均分子量2000)、C−3090(一般式(2)中のR=−(CH−及び、−(CHC(CH)(CH−、n=約20、数平均分子量3000)などが挙げられる。
【0035】
また、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、ポリスチレン換算で好ましくは、500〜5000、より好ましくは500〜3000の範囲内であることにより、得られるポリイミド前駆体又はポリイミド及び感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性、柔軟性を向上させることができる点で好ましい。得られるポリイミド樹脂の柔軟性の観点から500以上が好ましく、アルカリ溶解性の観点から3000以下が好ましい。
【0036】
本発明においては、ポリイミド前駆体又はポリイミドの一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の成分含有量としては、20質量%〜75質量%であることが好ましい。得られるポリイミド前駆体又はポリイミド及び感光性樹脂組成物の柔軟性の観点から、20質量%以上であることが好ましく、ポリイミド前駆体又はポリイミドの酸価及びアルカリ溶解性の観点から、75質量%以下であることが好ましい。
【0037】
本発明においては、ポリイミド前駆体又はポリイミドを構成する一般式(2)の成分含有量としては、本発明の効果を奏する範囲であれば特に限定されないが、得られるポリイミド前駆体又はポリイミド及び感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性及び柔軟性を向上させることができる観点から、ポリマーを構成する全成分中の20質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、30質量%〜60質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0038】
また、ポリイミド前駆体又はポリイミドとしては、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とその他のテトラカルボン酸二無水物とを併用したポリイミド前駆体又はポリイミドを用いることができる。
【0039】
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と併用されるテトラカルボン酸二無水物としては、公知のテトラカルボン酸二無水物を単独で又は複数用いることができる。具体的には、無水ピロメリット酸、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下、「ODPA」とも略称する)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ペンタンジオールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、デカンジオールビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(以下「10BTA」とも略称する)、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)エーテル二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、メタ−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタトリカルボン酸−2,6:3,5−二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物などが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
ジアミンとしては、公知のジアミンを単独で又は複数用いることができ、特に限定されるものではない。具体的には1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、APBとも略称する)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4、4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、2−メチル−4−アミノフェニル−4−アミノベンゾエート、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(以下、「MBAA」とも略称する)、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)、ポリオキシアルキレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリオキシアルキレンジアミンなどが例示される。これらの中でも、得られるポリイミド前駆体又はポリイミドの柔軟性の点から、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4、4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニルが好ましい。
【0041】
また、本発明において、ポリイミド前駆体又はポリイミドの主鎖末端は特に限定されない。ポリイミド前駆体又はポリイミドを製造する際に用いる酸二無水物、ジアミンに由来する末端でもよいし、その他の酸無水物、アミン化合物などにより末端を封止してもよい。
【0042】
本発明に係るポリイミド前駆体又はポリイミドは、感光性樹脂組成物に好適に用いることができる。本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記(A)ポリイミド前駆体又はポリイミドと、(B)感光剤とを含有する。
【0043】
この感光性樹脂組成物においては、ポリカーボネート骨格を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体又はポリイミドを含むことから、ポリカーボネート骨格がポリイミド前駆体又はポリイミドに導入されるので、ポリイミド前駆体又はポリイミドの分子鎖に適度な柔軟性が付与され、硬化時の反りを低減することができる。ここで、一般的にポリイミド前駆体又はポリイミド中に柔軟性を付与する構造(例えば、アルキルエーテルジアミンなど)を導入すると絶縁信頼性が低下するが、ポリカーボネート骨格は相対的に疎水性が高いことから、高い柔軟性を維持しながら、高い絶縁信頼性を達成することができる。これらにより、ポリカーボネート骨格由来の柔軟性及び絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物を実現できる。
【0044】
特に、本発明に係る樹脂組成物においては、アルカリ溶解性の観点からポリイミド前駆体を含むことが好ましい。この感光性樹脂組成物においては、ポリイミド前駆体がカルボキシル基を有するポリアミド酸構造を含むことから、ポリマー中にカルボキシル基を効率良く導入できるので、酸価を高めることができ、高いアルカリ溶解性が発現する。このため、側鎖にカルボキシル基を導入することなく高いアルカリ溶解性が発現すると共に、焼成後にポリイミド前駆体のポリアミド酸構造中のカルボキシル基がイミド化して消失するので、高いアルカリ溶解性及び高い絶縁信頼性を両立できる。
【0045】
(B)感光剤
本発明において、(B)感光剤とは、光照射により樹脂組成物の溶媒に対する溶解性を変化させる性質を有する化合物である。感光剤としては、ポジ型、ネガ型のいずれも用いることができる。ネガ型の感光剤としては、(B1)光重合開始剤及び(B2)不飽和二重結合を有する光重合性化合物を含む感光剤が挙げられる。
【0046】
(B1)光重合開始剤
光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンのようなベンジルジメチルケタール類、ベンジルジプロピルケタール類、ベンジルジフェニルケタール類、ベンゾインメチルエーテル類、ベンゾインエチルエーテル、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−イソプロピルチオキサントン、2−フルオロチオキサントン、4−フルオロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの芳香族ケトン化合物、ロフィン二量体などのトリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジンなどのアクリジン化合物、α、α―ジメトキシ−α−モルホリノ−メチルチオフェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、N−アリール−α―アミノ酸などのオキシムエステル化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、p−ジイソプロピルアミノ安息香酸、p−安息香酸エステル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンなどのα―ヒドロキシアルキルフェノン類、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホニル)フェニル]−1−ブタノンなどのα―アミノアルキルフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド類、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)などのオキシムエステル類などが挙げられる。これらの中で、感度の観点から、オキシムエステル類が好ましい。
【0047】
光重合開始剤の量としては、ポリイミド前駆体又はポリイミド100質量部に対して、感度及び解像度の観点から、0.01質量部〜40質量部が好ましく、0.5質量部〜35質量部がより好ましい。
【0048】
また、本発明に係る感光性組成物においては、その現像性(アルカリ溶解性及び解像性)に悪影響を与えない範囲で増感剤を添加してもよい。増感剤の量としては、ポリイミド前駆体又はポリイミド100質量部に対して、0.01質量部〜40質量部が好ましく、0.1質量部〜30質量部がより好ましい。
【0049】
(B2)不飽和二重結合を有する光重合性化合物
不飽和二重結合を有する光重合性化合物としては、分子内に少なくとも2個以上の光重合可能な不飽和二重結合を有するものが好ましい。分子内に2個以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する光重合性化合物としては、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、エチレンオキシド(EO)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、β―ヒドロキシプロピル−β’−(アクリロイルキシ)−プロピルフタレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ/テトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、焼成後の反り及び耐薬品性の観点から、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0050】
2つ以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する(メタ)アクリレート化合物の量としては、ポリイミド前駆体又はポリイミド100質量部に対して、現像性(アルカリ溶解性及び解像性)の観点から、5質量部以上80質量部以下が好ましく、10質量部以上70質量部以下がより好ましい。
【0051】
また、不飽和二重結合を有する光重合性化合物としては、解像性及び絶縁性を向上する観点から、光重合可能な二重結合を2つ有する化合物と二重結合を3つ以上有する化合物とを共に含むものが好ましい。
【0052】
(C)リン化合物
本発明に係る感光性樹脂組成物においては、難燃性を向上する観点から、リン化合物を含有することが好ましい。リン化合物としては、構造中にリン原子を含む化合物であれば限定されない。このようなリン化合物としては、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物などが挙げられる。
【0053】
リン酸エステル化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリイソブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどの脂肪族炭化水素基を置換基とするリン酸エステル、トリス(ブトキシエチル)ホスフェートなどの酸素原子を含む脂肪族有機基を置換基とするリン酸エステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などの芳香族有機基を置換基とするリン酸エステル化合物などが挙げられる。これらの中でも、現像性(アルカリ溶解性及び解像性)の観点からトリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリイソブチルホスフェートが好ましい。
【0054】
ホスファゼン化合物としては、下記一般式(3)、下記一般式(4)で表される構造を有するホスファゼン化合物などが挙げられる。
【0055】
【化4】

【0056】
上記一般式(3)及び上記一般式(4)で表されるホスファゼン化合物におけるR、R、R、Rとしては、炭素数1〜炭素数20の有機基であれば限定されない。炭素数1以上であれば、難燃性が発現する傾向にあるため好ましい。炭素数20以下であれば、ポリイミド前駆体又はポリイミドと相溶する傾向にあるため好ましい。これらの中でも、難燃性発現の観点から、炭素数6〜炭素数18の芳香族性化合物に由来する有機基が特に好ましい。このような有機基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基などのフェニル基を有する有機基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などのナフチル基を有する有機基、ピリジン、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾールなどの含窒素複素環化合物に由来する有機基、などが挙げられる。これらの化合物は、必要に応じて1種類でも2種類以上の組み合わせで用いてもよい。この中で、入手の容易さからフェニル基、3−メチルフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−シアノフェニル基、を有する化合物が好ましい。
【0057】
上記一般式(3)で表されるホスファゼン化合物におけるvとしては、3〜25であれば限定されない。vが3以上であれば難燃性を発現し、25以下であれば有機溶剤に対する高い溶解性を有する。この中で特に、入手の容易さからvが3〜10であることが好ましい。具体的には、Rabitle(登録商標)FP−300、FP−100、(伏見製薬所社製、略称FP−300(R=R=4−シアノフェニル基)、略称FP−100(R=R=フェニル基)が挙げられる。
【0058】
上記一般式(4)で表されるホスファゼン化合物におけるwとしては、3〜10000であれば限定されない。wが3以上であれば、難燃性を発現し、10000以下であれば、有機溶剤に対する溶解性が高い。これらの中でも、特に、入手の容易さから3〜100が好ましい。
【0059】
上記一般式(4)で表されるホスファゼン化合物におけるA及びBは、炭素数3〜炭素数30以下の有機基であれば限定されない。これらの中でも、Aとしては、−N=P(OC、−N=P(OC(OCOH)、−N=P(OCOH)、−N=P(OC)(OCOH)、−N=P(O)(OC)、−N=P(O)(OCOH)が好ましい。
【0060】
Bとしては、−P(OC、−P(OC(OCOH)、−P(OC(OCOH)、−P(OC)(OCOH)、−P(OCOH)、−P(O)(OC、−P(O)(OCOH)、−P(O)(OC)(OCOH)などが好ましい。リン化合物としては、1種類を用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
リン化合物の添加量としては、ポリイミド前駆体又はポリイミド100質量部に対して、現像性(アルカリ溶解性及び解像性)などの観点から、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
【0062】
(D)ポリイミド前駆体又はポリイミドと反応性を有する反応性化合物、熱硬化性樹脂
本発明に係る感光性樹脂組成物においては、焼成後のフィルムの靭性や耐溶剤性、耐熱性(熱安定性)を向上させる観点から、ポリイミド前駆体又はポリイミドと反応性を有する反応性化合物及び/又は熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。
【0063】
ポリイミド前駆体又はポリイミドと反応性を有する反応性化合物としては、ポリマー中のカルボキシル基、アミノ基、または末端のジカルボン酸無水物基と反応して、三次元架橋構造を形成できる化合物などが挙げられる。このような化合物の中でも、現像性(アルカリ溶解性及び解像性)や保存安定性などの観点から、分子内に2個以上のイソシアネ−ト基を有するイソシアネ−トにブロック剤を反応させることにより得られるブロックイソシアネートが好ましい。
【0064】
イソシアネ−トとしては、1,6−ヘキサンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−水酸化ジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、4,4−ジフェニルジイソシアネ−ト、1,3―ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、フェニレン−1,4−ジイソシアネ−ト、フェニレン−2,6−ジイソシアネ−ト、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネ−ト、及びヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0065】
ブロック剤としては、アルコ−ル類、フェノ−ル類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン類、メルカプタン類、アミン類、イミド類、酸アミド類、イミダゾ−ル類、尿素類、カルバミン酸塩類、イミン類、及び亜硫酸塩類などが挙げられる。
【0066】
ブロックイソシアネートの具体例としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名デュラネートSBN−70D、TPA−B80E、TPA−B80X、17B−60PX、MF−B60X、E402−B80T、ME20−B80S、MF−K60X、K6000などのヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネートが挙げられる。また、三井化学ポリウレタン社製の商品名タケネートB−882N、トリレンジイソシアネート系ブロックイソシアネートである商品名タケネートB−830、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト系ブロックイソシアネートである商品名タケネートB−815N、1,3―ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン系ブロックイソシアネートであるタケネートB−846Nが挙げられる。また、日本ポリウレタン工業社製の商品名コロネートAP−M、2503、2515、2507、2513、又はミリオネートMS−50などや、イソホロンジイソシアネート系ブロックイソシアネートであるBaxenden社製の品番7950,7951,7990などが挙げられる。これらのブロックイソシアネートは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾリン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、マレイミド化合物などが挙げられる。
【0068】
熱硬化性樹脂及びポリイミド前駆体又はポリイミドと反応性を有する反応性化合物の添加量としては、ポリイミド前駆体又はポリイミド100質量部に対して、現像性(アルカリ溶解性及び解像性)の観点から、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
【0069】
(E)その他化合物
感光性樹脂組成物には、その性能に悪影響を及ぼさない範囲でその他化合物を含むことができる。その他化合物としては、例えば、密着性向上のための複素環化合物やフィルムの着色を目的とした顔料や染料などが挙げられる。
【0070】
複素環化合物としては、ヘテロ原子を含む環式化合物であれば限定されない。ヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素、リンが挙げられる。複素環化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールのようなイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾールのようなN−アルキル基置換イミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールなどの芳香族基含有イミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどのシアノ基含有イミダゾール、イミダゾールシランなどのケイ素含有イミダゾールなどのイミダゾール化合物、5−メチルベンゾトリアゾール、1−(1’,2’−ジカルボキシエチルベンゾトリアゾール)、1−(2−エチルヘキシアミノメチルベンゾトリアゾール)などのトリアゾール化合物、2−メチル−5−フェニルベンゾオキサゾールなどオキサゾール化合物などが挙げられる。
【0071】
顔料や染料としては、フタロシアニン系化合物が挙げられる。
【0072】
その他化合物の添加量としては、ポリイミド前駆体又はポリイミド100質量部に対して、0.01質量部以上、30質量部以下であれば限定されない。0.01質量部以上であれば十分に密着性やフィルムへの着色性が向上する傾向にあり、30質量部以下であれば感光性などへの悪影響がない。
【0073】
本発明に係る感光性樹脂組成物においては、任意で、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、ポリイミド前駆体又はポリイミドを均一に溶解及び/又は分散させうるものであれば限定されない。このような有機溶剤としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上炭素数6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上炭素数10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、安息香酸メチルのような炭素数3以上炭素数9以下のエステル化合物;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上炭素数10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物が挙げられる。
【0074】
これらの有機溶剤は必要に応じて1種、あるいは2種以上の混合物として用いてもよい。特に好ましい有機溶剤としては、炭素数2以上炭素数9以下のエーテル化合物、炭素数3以上炭素数9以下のエステル化合物、炭素数6以上炭素数10以下の芳香族炭化水素化合物、炭素数2以上炭素数10以下の含窒素化合物である。また、ポリイミド前駆体又はポリイミドの溶解性の観点から、トリエチレングリコールジメチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0075】
有機溶剤を含有する感光性樹脂組成物において、ポリイミド前駆体又はポリイミドの濃度としては、樹脂成型体を形成できる濃度であれば、特に制限されない。ポリイミド前駆体又はポリイミドの濃度としては、作製する樹脂成型体の膜厚の観点から、10質量%以上であることが好ましく、樹脂成型体の膜厚の均一性の観点から、90質量%以下であることが好ましい。また、ポリイミド前駆体又はポリイミドの濃度としては、得られる樹脂成型体の膜厚の観点から、20質量%以上、80質量%以下がより好ましい。
【0076】
<感光性フィルム>
本発明に係る感光性樹脂組成物は、感光性フィルムとして好適に用いることができる。本発明に係る感光性フィルムは、基材と、当該基材上に設けられた上記感光性樹脂組成物とを備える。この感光性フィルムにおいては、感光性樹脂組成物上に設けられたカバーフィルムを備えることが好ましい。
【0077】
感光性樹脂組成物におけるポリイミド前駆体又はポリイミドの濃度としては、感光性フィルムを製造するという観点からは、10質量%以上、90質量%以下が好ましい。また、ポリイミド前駆体又はポリイミドの濃度としては、感光性フィルムの膜厚の観点から10質量%以上が好ましく、感光性樹脂組成物の粘度、膜厚の均一性の観点から90質量%以下が好ましい。さらに、ポリイミド前駆体又はポリイミドの濃度としては、得られる感光性フィルムの膜厚の観点から、20質量%以上、80質量%以下がより好ましい。
【0078】
次に、感光性フィルムの製造方法について説明する。まず、感光性樹脂組成物の溶液を任意の方法で任意の上に基材にコートする。次に、基材上に塗布した感光性樹脂組成物を乾燥してドライフィルム化する。これにより、例えば、基材としてのキャリアフィルムと、キャリアフィルム上に設けられた感光性樹脂組成物からなるドライフィルムとを備えた感光性フィルム(積層フィルム)を製造できる。
【0079】
基材としては、感光性フィルム形成の際に損傷しない基材であれば、限定されない。このような基材としては、シリコンウエハ、ガラス、セラミック、耐熱性樹脂、キャリアフィルム(支持フィルム)などが挙げられる。キャリアフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムや金属フィルムが挙げられる。取扱いの良さから、耐熱性樹脂及びキャリアフィルムが好ましく、基板圧着後の剥離性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0080】
コート方法としてはバーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、などが挙げられる。コート後、必要に応じてホットプレートなどによりプリベークと呼ばれる加熱処理を行ってもよい。
【0081】
感光性樹脂組成物を用いて感光性フィルムを製造する場合、感光性樹脂組成物の溶液を任意の方法で任意の基材上に塗布後、乾燥してドライフィルム化する。例えば、キャリアフィルム上に感光性樹脂組成物を塗布することにより、キャリアフィルムと感光性フィルムとを有する積層フィルムが得られる。
【0082】
また、感光性フィルム上に、任意の防汚用や保護用のカバーフィルムを少なくとも一層設けて積層フィルムとしてもよい。本発明に係る積層フィルムおいて、カバーフィルムとしては、低密度ポリエチレンなど感光性フィルムを保護するフィルムであれば限定されない。
【0083】
<フレキシブル配線板>
本発明に係る感光性フィルムは、フレキシブルプリント配線板に好適に用いることが可能である。本発明に係るフレキシブルプリント配線板は、配線を有する基材と、この基材上の配線を覆うように設けられた上記感光性フィルムとを具備する。このフレキシブル配線板は、配線を有する基材上に感光性フィルムを圧着し、アルカリ現像した後、焼成を行うことにより得ることができる。
【0084】
フレキシブルプリント配線板における配線を有する基材としては、ガラスエポキシ基板、ガラスマレイミド基板などのような硬質基材、又はポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムなどのフレキシブルな基板などが挙げられる。この中で、折り曲げ可能の観点からフレキシブルな基板が好ましい。
【0085】
フレキシブルプリント配線板の形成方法としては、感光性フィルムが配線を覆うように基材に形成されるものであれば、限定されない。このような形成方法としては、基材の配線が設けられた表面と本発明に係る感光性フィルムとを接触させた状態で、熱プレス、熱ラミネート、熱真空プレス、熱真空ラミネートなどを行う方法などが挙げられる。これらの中で、配線間への感光性フィルムの埋め込みの観点から、熱真空プレス、熱真空ラミネートが好ましい。
【0086】
配線を有する基材上に感光性フィルムを積層する際の加熱温度としては、感光性フィルムが基材に密着しうる温度であれば限定されない。基材への密着の観点や感光性フィルムの分解や副反応の観点から、30℃以上、400℃以下が好ましく、50℃以上、150℃以下がより好ましい。
【0087】
配線を有する基材には、必要に応じて整面処理を施してもよい。配線を有する基材の整面処理としては、特に限定されないが、塩酸処理、硫酸処理、過硫酸ナトリウム水溶液処理などが挙げられる。また、必要に応じて整面後に防錆処理を施してもよい。
【0088】
本発明の感光性フィルムにおいては、光照射後、光照射部位をアルカリ現像にて溶解することにより、ポジ型のフォトリソグラフィーが可能である。また、光照射後、光照射部位以外をアルカリ現像にて溶解することにより、ネガ型のフォトリソグラフィーが可能である。この場合において、光照射に用いる光源は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーなどが挙げられる。この中で、高圧水銀灯、超高圧水銀灯が好ましい。
【0089】
現像に用いるアルカリ水溶液としては、ポジ型の場合は光照射部位を溶解しうる溶液であり、ネガ型の場合は光照射部位以外を溶解しうる溶液であれば限定されない。このような溶液として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などが挙げられる。現像性(アルカリ溶解性及び解像性)及び作業性の観点から、炭酸ナトリウム水溶液が好ましい。現像方法としては、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像などが挙げられる。
【0090】
次いで、感光性フィルムを圧着したプリント配線板を焼成することによりプリント配線板を形成する。焼成は、溶媒の除去の観点や副反応や分解などの観点から、30℃以上、400℃以下の温度で実施することが好ましく、100℃以上、300℃以下の温度で実施することがより好ましい。
【0091】
焼成における反応雰囲気としては、空気雰囲気下でもよく、不活性ガス雰囲気下でもよい。プリント配線板の製造において、焼成に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好適には3時間以内の範囲で実施される。
【0092】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、焼成後の反りが良好であり、かつアルカリ溶解性も良好であり、硬化体とした際に耐薬品性を示すことから、エレクトロニクス分野で各種電子機器の操作パネルなどに使用されるプリント配線板や回路基板の保護層形成、積層基板の絶縁層形成、半導体装置に使用されるシリコンウエハ、半導体チップ、半導体装置周辺の部材、半導体搭載用基板、放熱板、リードピン、半導体自身などの保護や絶縁及び接着に使用するための電子部品への膜形成用途に利用される。このように、シリコンウエハ、銅張積層板、プリント配線板などの上に形成された配線を保護する保護膜をカバーレイという。本発明に係るカバーレイは、上記感光性樹脂組成物をイミド化することにより得られる。また、本発明に係る積層体は、銅張積層板上と、この銅張積層板上に設けられたカバーレイを具備する。
【0093】
また、ポリイミド前駆体又はポリイミド及び感光性樹脂組成物は、フレキシブルプリント配線板(FPC)、リジッドプリント配線板の積層体、テープオートメーションボンディング(TAB)用基材、各種電子デバイスにおける電気絶縁膜及び液晶ディスプレー用基板、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレー用基板、電子ペーパー用基板、太陽電池用基板、特にフレキシブルプリント配線回路用のカバーレイに好適に用いることができる。
【実施例】
【0094】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0095】
<試薬>
実施例及び比較例において、用いた試薬は以下のとおりである。
【0096】
ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、デュラノールT5650J(一般式(2)中のR=−(CH−及び−(CH−、n=約5、数平均分子量800)、T5650E(一般式(2)中のR=−(CH−及び−(CH−、n=約3、数平均分子量500)T5651(一般式(2)中のR=−(CH−及び−(CH−、n=約7、数平均分子量1000)、T5652(一般式(2)中のR=−(CH−及び−(CH−、n=約14、数平均分子量2000)、クラレ社製ポリオール(クラレポリオール、C−2090(一般式(2)中のR=−(CH−及び−(CHC(CH)(CH−、n=約13、数平均分子量2000、C−3090(一般式(2)中のR=−(CH−及び−(CHC(CH)(CH−、n=約20、数平均分子量3000)、無水トリメリット酸クロリド(アルドリッチ社製)、ODPA(商標名:ODPA−M(マナック社製))、10BTA(黒金化成社製)、APB(商標名:APB−N(三菱化学社製))、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(商標名:MBAA(和歌山精化工業社製)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製、略称MDI)、2−アミノエタノール(和光純薬工業社製)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸(和光純薬工業社製、略称BHMBA)、4−シアノフェニル基を有する環状ホスファゼン化合物(商標名:FP−300(伏見製薬所社製))、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(商標名:IRGACURE OXE−02(チバ・ジャパン社製))、EO変性ビスフェノールAジメタクリレート(商標名:BPE−500(新中村化学工業社製))、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート(東亞合成社製、商標名:アロニックスM−310、略称M−310)、ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製、デュラネートSBN−70D)、ピリジン(和光純薬工業社製)、テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製)、γ―ブチロラクトン(和光純薬工業社製)、炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製)。なお、以上の試薬は全て特別な精製を実施せずに用いた。
【0097】
<重量平均分子量測定>
重量平均分子量の測定法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、下記の条件により測定を行った。溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
また、重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
【0098】
<酸価の測定>
実施例及び比較例で得られたポリマーの反応溶液2.00gをジエチレングリコールジメチルエーテル(和光純薬工業社製)27.2gとエタノール(和光純薬工業社製)22.8gの混合溶媒に溶解した。これに0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム液(和光純薬社製)を自動滴定し、中和した。この中和滴定を1つのサンプルにつき3回行い、滴定液のファクター、中和に要した滴下量平均値とポリマー反応溶液の固形分濃度に基づき、酸価を算出した。なお、エタノール性水酸化カリウムのファクターは0.1mol/L塩酸(酸アルカリ滴定用;和光純薬工業社製)を用いて、あらかじめ算出した値を使用した。
自動滴定装置:GT−100型(三菱化学社製)
【0099】
<感光性フィルムの製造方法>
感光性樹脂組成物のコートは、FILMCOATER(TESTER SANGYO社製、PI1210)を用いるドクターブレード法により実施した。PETフィルム(帝人デユポンフィルム社製、G2)に上記感光性樹脂組成物を滴下し、クリアランス125μmでコートを行った。感光性樹脂組成物をコートした上記PETフィルムを、乾燥器(ESPEC社製、SPHH−10l)を用いて95℃で12分間乾燥することにより、感光性フィルムを得た。
【0100】
<ラミネート条件>
ラミネートは、真空プレス機(名機製作所社製)を用いて実施した。プレス温度70℃、プレス圧0.5MPa、プレス時間60秒間にて行った。
【0101】
<現像性評価>
現像性評価は、以下のようにして実施した。銅張積層板上に感光性フィルムを上記ラミネート条件でラミネートした後に、30−200mJ/cmにて露光した。続いて30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によるアルカリ現像処理及びイオン交換水によるリンスを行い、乾燥後にパターンを光学顕微鏡にて観察した。マスクには50μm〜100μmのラインアンドスペース(L/S)パターンを用い、アルカリ溶解性、解像性の2点に関して評価した。
【0102】
アルカリ溶解性:フィルム厚25μm時の未露光部の溶解に最低限必要な時間を最小現像時間とし、40秒以内のものを◎とし、40〜60秒のものを○とし、60〜120秒のものを△とし、120秒〜現像できないものを×とした。
【0103】
解像性:最小現像時間の2倍の時間現像処理を施した後、未露光部(溶解部)の銅面が現れている部分を読み取った。70μmのL/Sが解像できたものを◎とし、100μmのL/Sパターンが解像出来たものを○とし、現像残渣などにより、完全に解像しなかったものを×とした。
【0104】
<柔軟性評価(焼成後の反り測定)>
得られた感光性フィルムを、ポリイミドフィルム(商品名:カプトン(登録商標))に上記ラミネート条件にてラミネートした後に、180℃で2時間焼成を行った。該フィルムを5cm角に切り出し、端部の浮き高さが5mm以内のものを◎とし、10mm以内のものを○とし、それ以上に浮き高さがあるものを×とした。
【0105】
<絶縁信頼性評価(イオンマイグレーション試験)>
絶縁信頼性評価は、以下のように実施した。ラインアンドスペースが20μm/20μmのくし型基板上に、感光性フィルムを上記ラミネート条件にてラミネートした後、上記条件にて露光・現像を行い、180℃で2時間焼成を行った。感光性フィルムにマイグレーションテスタのケーブルを半田付けし、下記条件にて絶縁信頼性試験を行った。
絶縁劣化評価システム:SIR−12(楠本化成社製)
恒温恒湿チャンバー:SH−641(エスペック社製) 温度:85℃
湿度:85%
印加電圧:20V
印加時間:1000時間
【0106】
絶縁抵抗値:1.0×10Ω未満を×、1.0×10Ω〜1.0×10Ω未満を△とし、1.0×10Ω以上〜1.0×10Ω未満を○とし、1.0×10Ω以上を◎とした。
【0107】
<耐熱性評価>
感光性フィルムをそのまま30−200mJ/cmにて全面露光し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液によるアルカリ現像処理及びイオン交換水によるリンスを行った後、感光性樹脂組成物の膜をPETから剥離した。剥離した膜を、表面処理したPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製、N152Q)に高耐熱粘着テープで貼り付け、乾燥器(ESPEC社製、SPHH−10l)を用いて180℃で2時間焼成を行った。焼成によって得られた膜を剥離し、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DTA6200)を用いて、260℃で10分間保持したときの熱重量減少を測定した。重量減少が5%未満の場合を○とし、5%以上の場合を×とした。
【0108】
[合成例1]
攪拌装置、温度計、塩化カルシウム付冷却管を備えた1Lの4つ口フラスコに無水トリメリット酸クロリド42.1g(0.2mol)、テトラヒドロフラン(略称THF)400mLを加え、完全に溶解した後5℃以下に冷却した。この溶液にポリカーボネートジオールとしてのデュラノール:T5650Jを80.0g(0.1mol)とピリジン20.0gをTHF200mLに溶解した溶液を反応溶液の温度が5℃を超えないように滴下した。滴下完了後、室温で1時間、40℃で1時間反応した後、放冷した。析出したピリジン塩酸塩を濾過によって取り除いた後、THFを留去し、酸二無水物(1)を得た。酸二無水物(1)を以下TCA−D800と略称する。
【0109】
得られたTCA−D800の1H−NMRデータを以下に示す。また、図1にTCA−D800のIRスペクトルを示す。
1H−NMR測定条件
測定装置(日本電子社製、JEOL RESONANCE ECS400)
溶媒(重水素化DMSO:0.03%TMS含有)
試料濃度(5wt/vol%)
測定温度:室温
1H−NMR(DMSO−d6);1.311(brs,16H),1.447(brs,4H),1.601(brs,16H),1.766(brs,4H),4.042(brs,22H),4.363(brs,4H),8.211(d,2H),8.408(s,2H),8.480(d,2H)
【0110】
[合成例2]
デュラノール:T5650Jの代わりにデュラノール:T5651 100.0g(0.1mol)を用い、合成例1に準じて酸二無水物(2)を得た。酸二無水物(2)を以下TCA−D1000と略称する。
【0111】
[合成例3]
デュラノール:T5650Jの代わりにデュラノール:T5652 200.0g(0.1mol)を用い、合成例1に準じて酸二無水物(3)を得た。酸二無水物(3)を以下TCA−D2000と略称する。
【0112】
[合成例4]
デュラノール:T5650Jの代わりにデュラノール:T5650E 50.0g(0.1mol)を用い、合成例1に準じて酸二無水物(4)を得た。酸二無水物(4)を以下TCA−D500と略称する。
【0113】
[合成例5]
デュラノール:T5650Jの代わりにクラレポリオール:C−2090 200.0g(0.1mol)を用い、合成例1に準じて酸二無水物(5)を得た。酸二無水物(5)を以下TCA−C2000と略称する。
【0114】
[合成例6]
デュラノール:T5650Jの代わりにクラレポリオール:C−3090 300.0g(0.1mol)を用い、合成例1に準じて酸二無水物(6)を得た。酸二無水物(6)を以下TCA−C3000と略称する。合成例1から合成例6で使用したポリカーボネートジオールを下記表1に示す。
【0115】
[実施例1]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにTCA−D800(23.00g:20mmol)とODPA−M(9.31g:30mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(68.63g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(1)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(1)の重量平均分子量及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0116】
[実施例2]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにTCA−D800(17.25g:15mmol)とODPA−M(10.86g:35mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(62.33g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(2)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(2)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0117】
[実施例3]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにTCA−D800(28.75g:25mmol)とODPA−M(7.76g:25mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(74.93g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(3)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(3)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0118】
[実施例4]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにTCA−D1000(23.63g:17.5mmol)とODPA−M(10.08g:32.5mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(70.73g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(4)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(4)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0119】
[実施例5]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにTCA−D2000(25.85g:11mmol)とODPA−M(12.10g:39mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(77.09g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(5)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(5)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0120】
[実施例6]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにTCA−D2000(58.76g:25mmol)とODPA−M(7.76g:25mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(119.96g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(6)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(6)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0121】
[実施例7]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにTCA−D500(34.00g:40mmol)とODPA−M(3.10g:10mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(75.83g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(7)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(7)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0122】
[実施例8]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにTCA−C2000(25.85g:11mmol)とODPA−M(12.10g:39mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(77.09g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(8)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(8)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0123】
[実施例9]
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにTCA−C3000(16.75g:5mmol)とODPA−M(13.96g:45mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(66.24g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(9)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(9)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0124】
[実施例10]
比較の為、ポリカーボネートジオールの代わりに、柔軟性を有するメチレン鎖を含むリイミド前駆体(10)を合成した。
【0125】
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコに10BTA(26.13g:50mmol)を入れ、γ−ブチロラクトン(59.36g)を加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−N(13.45g:46mmol)を加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体(10)溶液を得た。得られたポリイミド前駆体(10)の重量平均分子量及び酸価を下記表2に示す。
[比較例1]
特許文献1(特開2009−51949号公報)を参考にポリウレタンアミック酸(1)を合成した。
【0126】
まず、MDI(18.25g:73mmol)と、デュラノール:T5651(46.00g:46mmol)とを、攪拌機およびガス導入管を備えた500mlの四つ口セパラブルフラスコにそれぞれ加え、窒素雰囲気下、80℃で2時間攪拌して、分子両末端にイソシアナート基を有するウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーをγ−ブチロラクトン132.59gに溶解させたものに、APB−N(15.77g:54mmol)を加え、窒素雰囲気下、40℃で12時間攪拌して、ポリウレタン−ウレア化合物の溶液を得た。この溶液中にODPA−M(8.37g:27mmol)を加え、窒素雰囲気下、40℃で5時間攪拌して、ポリウレタンアミック酸(1)を得た。得られたポリウレタンアミック酸(1)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0127】
[比較例2]
特許文献2(特開2008−120954号公報)を参考にポリウレタンアミック酸(2)を合成した。
【0128】
セパラブルフラスコに、MDI(15.00g:60mmol)、デュラノール:T5651(30.00g:30mmol)、γ−ブチロラクトン(112.38g)を加え、窒素雰囲気下140℃に加熱して5時間反応させてジイソシアネートを得た。この反応溶液を10℃以下に冷却して、APB−N(17.52g:60mmol)を加え、1時間均一攪拌させた後、140℃まで徐々に加熱を行い、140℃で3時間反応させてウレタンウレアジアミンを合成した。この溶液を室温まで冷却した後、ODPA−M(12.40g:40mmol)を加えて、40℃で5時間攪拌し、ポリウレタンアミック酸(2)を得た。得られたポリウレタンアミック酸(2)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0129】
[比較例3]
特許文献2を参考にポリウレタンアミック酸(3)を合成した。
【0130】
セパラブルフラスコに、MDI(15.00g:60mmol)、デュラノール:T5651(30.00g:30mmol)、γ−ブチロラクトン(111.87g)を加え、窒素雰囲気下140℃に加熱して5時間反応させてジイソシアネートを得た。この反応溶液を10℃以下に冷却して、MBAA(17.18g:60mmol)を加え、1時間均一攪拌させた後、140℃まで徐々に加熱を行い、140℃で3時間反応させてウレタンウレアジアミンを合成した。この溶液を室温まで冷却した後、ODPA−M(12.40g:40mmol)を加えて、40℃で5時間攪拌し、ポリウレタンアミック酸(3)を得た。得られたポリウレタンアミック酸(3)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0131】
[比較例4]
特許文献3(特開2009−69664号公報)を参考にポリウレタンアミック酸(4)を合成した。
【0132】
セパラブルフラスコに、ODPA−M(24.2g:78mmol)、APB−N(11.2g:39mmol)、2−アミノエタノール(4.8g:78mmol)γ−ブチロラクトン(60.1g)を投入し、窒素雰囲気下40℃で5時間攪拌を行った。この反応溶液にデュラノール:T5651を(85.0g:85mmol)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸(BHMBA)(20.0g:135mmol)、MDI(67.5g:270mmol)、γ−ブチロラクトン(258.7g)を投入し、空気気流下で60℃に昇温させて5時間均一攪拌を行い、ポリウレタンアミック酸(4)を得た。得られたポリウレタンアミック酸(4)の重量平均分子量、酸価及びポリカーボネートジオール含有質量%を下記表2に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
[実施例11]
ポリイミド前駆体(1)100質量部に対して、光重合開始剤としてのOXE−02(1質量部)、光重合性化合物としてのBPE−500(40質量部)、M−310(20質量部)、リン化合物としてのFP−300(25質量部)、ブロックイソシアネートとしてのSBN−70D(10質量部)を混合し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を上述のドライフィルム製造方法にてドライフィルム化して感光性フィルムを得た。この感光性フィルムを上述のラミネート条件にて、銅張積層板上、くし型基板上、及びポリイミドフィルム上にそれぞれラミネートを行った。得られた積層フィルムの現像性(アルカリ溶解性及び解像性)、反り、絶縁信頼性について評価した。結果を下記表3に示す。実施例1において、アルカリ溶解性は◎であり、解像性は◎であり、柔軟性は◎であり、絶縁信頼性は◎であり、耐熱性は○であった。
【0136】
[実施例12]
ポリイミド前駆体(1)100質量部に対して、OXE−02(1質量部)、BPE−500(40質量部)、M−310(20質量部)、FP−100(25質量部)、SBN−70D(10質量部)を混合し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物から実施例1と同様の方法にて積層フィルムを作製し、評価した。結果を下記表3に示す。実施例2において、アルカリ溶解性は◎であり、解像性は◎であり、柔軟性は◎であり、絶縁信頼性は◎であり、耐熱性は○であった。
【0137】
[実施例13]
ポリイミド前駆体(1)100質量部に対して、OXE−02(1質量部)、BPE−500(40質量部)、M−310(20質量部)、FP−300(25質量部)を混合し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物から実施例1と同様の方法にて積層フィルムを作製し、評価した。結果を下記表3に示す。実施例3において、アルカリ溶解性は◎であり、解像性は◎であり、柔軟性は◎であり、絶縁信頼性は◎であり、耐熱性は○であった。
【0138】
[実施例14〜実施例21]
ポリイミド前駆体(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)それぞれ100質量部に対して、OXE−02(1質量部)、BPE−500(40質量部)、M−310(20質量部)、FP−300(25質量部)、SBN−70D(10質量部)を混合し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を上述のドライフィルム製造方法にてドライフィルム化して感光性フィルムを得た。得られた感光性樹脂組成物から実施例1と同様の方法にて積層フィルムを作製し、評価した。結果を下記表3に示す。
【0139】
[比較例5〜比較例9]
ポリイミド前駆体(10)、ポリウレタンアミック酸(1)、(2)、(3)、(4)それぞれ100質量部に対して、OXE−02(1質量部)、BPE−500(40質量部)、M−310(20質量部)、FP−300(25質量部)、SBN−70D(10質量部)を混合し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を上述のドライフィルム製造方法にてドライフィルム化して感光性フィルムを得た。得られた感光性樹脂組成物から実施例1と同様の方法にて積層フィルムを作製し、評価した。結果を下記表4に示す。
【0140】
【表3】

【0141】
【表4】

【0142】
表3及び表4に示す結果から、本発明に係るポリイミド前駆体(1)〜(9)を用いた感光性樹脂組成物においては、アルカリ溶解性が良好となり、現像性に優れると共に、フィルムの焼成後の反りが少なく柔軟性が良好であり、しかも、絶縁信頼性及び耐熱性が良好となることが分かる(実施例11〜実施例21参照)。なお、表3及び表4において、(A)成分とは、ポリイミド前駆体又はポリイミドを表し、(B1)成分とは、光重合開始剤を表し、(B2)成分とは、光重合性化合物を表し、(C)成分とは、リン化合物を表し、(D)成分とは、反応性化合物又は熱硬化性樹脂を表している。
【0143】
これに対して、ポリカーボネート骨格を含まずにメチレン鎖を含むポリイミド前駆体(10)を用いた比較例1においては、アルカリ溶解性、解像性、柔軟性及び絶縁信頼性が×であった。この結果は、ポリカーボネート骨格を有していないポリイミド前駆体(10)を用いたことから、分子鎖に柔軟性が付与されず、また、疎水性が非常に高いメチレン基を有することから、アルカリ溶解性が低下したためと考えられる。イソシアネートを用いたポリウレタンアミック酸(1)〜(4)を用いた比較例2から比較例5においては、何れもL/S=100/100μmのパターン間の銅上に現像残渣が残り、解像性が×であった。この結果は、ポリウレタンアミック酸(1)〜(4)のウレタン結合により現像残渣が生じたためと考えられる。また、比較例4及び比較例5から分かるように、側鎖にカルボキシル基を導入したポリウレタンアミック酸(3)、(4)を含む感光性樹脂組成物においては、絶縁信頼性が×となった。この結果は、感光性樹脂組成物中に残存するカルボキシル基によって絶縁信頼性が低下したためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、柔軟性及び絶縁信頼性に優れた感光性樹脂組成物及び当該感光性樹脂組成物に用いられるポリイミド前駆体又はポリイミドを提供できるという効果を有し、特に、半導体装置の表面保護膜、層間絶縁膜、及び再配線用絶縁膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、並びに液晶配向膜などとして好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体又はポリイミドであって、前記テトラカルボン酸二無水物として、下記一般式(1)で表される構造を有するテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とするポリイミド前駆体又はポリイミド。
【化1】

(式(1)中、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜炭素数18のアルキレン基を示し、nは1以上の整数である。)
【請求項2】
(A)請求項1記載のポリイミド前駆体又はポリイミドと、(B)感光剤と、を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記感光剤として、(B1)光重合開始剤と、(B2)分子内に少なくとも2個以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する光重合性化合物と、を含むことを特徴とする請求項2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記分子内に少なくとも2個以上の光重合可能な不飽和二重結合を有する光重合性化合物として、二重結合を2個有する化合物と二重結合を3個以上有する化合物を共に含むことを特徴とする請求項3記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(C)リン化合物を含むことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記リン化合物として、リン酸エステル化合物及び/又はホスファゼン化合物を含むことを特徴とする請求項5記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(D)ポリイミド前駆体又はポリイミドとの反応性を有する反応性化合物及び/又は熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
基材と、前記基材上に設けられた請求項2から請求項7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物と、を備えたことを特徴とする感光性フィルム。
【請求項9】
前記感光性樹脂組成物上に設けられたカバーフィルムを具備することを特徴とする請求項8記載の感光性フィルム。
【請求項10】
請求項2から請求項7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物をイミド化して得られたことを特徴とするカバーレイ。
【請求項11】
銅張積層板と、前記銅張積層板上に設けられた請求項10記載のカバーレイとを備えたことを特徴とする積層体。
【請求項12】
配線を有する基材と、前記基材上においてイミド化された請求項2から請求項7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物とを具備することを特徴とするフレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【公開番号】特開2013−95894(P2013−95894A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242343(P2011−242343)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】